(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1又は2に記載の血中尿酸値低下剤を含む、血中尿酸値低下用である、健康食品、機能性表示食品、特別用途食品、栄養補助食品、サプリメント又は特定保健用食品(ただし、キサンチンオキシダーゼ阻害用であるものを除く)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、新規な血中尿酸値低下剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、キサントフモール等のフラボノイドが、血中尿酸値を低減させる作用を有することを新たに見出した。
【0008】
本発明の血中尿酸値低下剤は、下記一般式(1)で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有する。
【化1】
[一般式(1)中、R
1は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、R
2は、ジメチルアリル基又はゲラニル基を表す。]
【0009】
本発明の血中尿酸値低下剤は、上記一般式(1)で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有することにより、血中の尿酸値を低下させることができる。
【0010】
上記一般式(1)で表される化合物は、下記式(1A)で表される化合物、すなわちキサントフモールであることが好ましい。
【化2】
【0011】
本発明はまた、上記血中尿酸値低下剤を含む、健康食品、機能性表示食品、特別用途食品、栄養補助食品、サプリメント、特定保健用食品及び医薬品を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、新規な血中尿酸値低下剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0015】
本発明の血中尿酸値低下剤は、下記一般式(1)で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有する。
【化3】
[一般式(1)中、R
1は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、R
2は、ジメチルアリル基又はゲラニル基を表す。]
【0016】
一般式(1)で示される化合物は、薬学的に許容可能な塩として血中尿酸低下剤に含まれていてもよい。このような薬学的に許容可能な塩は、上記一般式(1)で示される化合物と無毒な塩を形成する塩基とにより形成されるものである。具体的には、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0017】
一般式(1)において、R
1で表される炭素数1〜5のアルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。炭素数1〜5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、1−メチルエチル基(イソプロピル基)、1,1−ジメチルエチル基(tert−ブチル基)、プロピル基、1−メチルプロピル基(sec−ブチル基)、2−メチルプロピル基(イソブチル基)、2,2−ジメチルプロピル基(ネオペンチル基)、ブチル基、3−メチルブチル基、ペンチル基が挙げられる。
【0018】
一般式(1)で表される化合物としては、例えば、R
1が水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基(メチル基、エチル基、1−メチルエチル基、プロピル基)である化合物が好適であり、R
1が水素原子、メチル基又はエチル基で、R
2がジメチルアリル基である化合物が更に好適である。ホップ特有のフラボノイドであるキサントフモール(下記式(1A)で表される化合物)は、特に好適な化合物の1つである。
【化4】
【0019】
キサントフモールは、その構造中にフェノール性水酸基を複数有する、黄色で無味無臭の化合物である。キサントフモールは、フェノール性水酸基を有する他の多くの化合物と同様、アルカリ性領域においてのみ水溶性であり、酸性及び中性領域では水に不溶である。
【0020】
一般式(1)で表される化合物としては、天然物(植物、微生物等)に由来するものであっても、人為的に合成したものであってもよい。また、市販のものがあれば、それを使用してもよい。
【0021】
例えば、キサントフモールは、ホップ抽出物を分画又は精製することによって得ることができる。ホップ抽出物としては、例えば、市販のホップエキスを使用してもよい。
【0022】
ホップからの抽出を行う場合、抽出に供するホップ組織としては、毬花が好ましい。ホップは、乾燥、凍結、加工、粉砕、選別等の処理が施されたものであってもよく、例えば、ホップペレットを使用してもよい。
【0023】
ホップの品種は特に制限されず、既存の品種(例えば、チェコ産ザーツ種、ドイツ産ハラタウ・マグナム種、ドイツ産ハラタウ・トラディション種、ドイツ産ペルレ種)のいずれでもよい。1種を単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
ホップからの抽出は、例えば、ホップを溶媒に浸漬し、これを濾過することによって行うことができる。溶媒としては、例えば、水、食塩水、アルコール、エーテル、アセトン、酢酸エチル、ヘキサン、二酸化炭素等を用いることができ、エタノール、メタノール等のアルコール、又はアルコールと水の混合溶液が好適である。溶媒は、1種を単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。浸漬の際には超音波処理を行ってもよい。
【0025】
キサントフモール源としては、ホップ抽出物をそのまま用いてもよく、濾過、濃縮、乾燥等の処理を行った処理物を用いてもよく、ホップ抽出物から更に分画、精製を行ったものを用いてもよい。処理物は液状であってもよく、乾燥等により粉末状にしたものであってもよい。濃縮は公知の方法(例えば、減圧濃縮、凍結乾燥)により行うことができる。
【0026】
ホップ抽出物からのキサントフモールの分画、精製は、例えば次のようにして行うことができる。すなわち、まず、ホップ抽出物の水溶液又は水懸濁液をヘキサンで分配し、得られた水層を酢酸エチル(pH3)で分配する。そして、得られた有機層を、更に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(pH8以上9以下)で分配し、新たに生じた有機層を回収する。次に、この有機層に対して、シリカゲルカラムクロマトグラフィー[ジエチルエーテル/ヘキサン(3:7)→酢酸エチル/ヘキサン(4:6)→酢酸エチル/ヘキサン(6:4)→クロロホルム/メタノール(5:5)]を行って、キサントフモール溶出画分を分取する。最後に、これを、ODSカラムを用いて、又は再結晶により更に精製する。
【0027】
以上の抽出、分画、精製の際の温度は、キサントフモールのイソ化防止の観点から、5℃以上65℃以下が好ましく、5℃以上50℃以下がより好ましい。
【0028】
得られた化合物がキサントフモールかどうかは、公知の方法(例えば、質量分析、元素分析、核磁気共鳴分光法、紫外分光法、赤外分光法)により確認することができる。
【0029】
本実施形態に係る血中尿酸値低下剤は、一般式(1)で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩のうちの1種のみを含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。
【0030】
本実施形態に係る血中尿酸値低下剤は、有効成分として一般式(1)で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩を含有するため、当該血中尿酸値低下剤を摂取することによって、血中の尿酸値を低下させることができる。また、血中尿酸値濃度が高い状態が持続すると痛風の原因となるが、血中尿酸値濃度を低く保つことによって、痛風を予防することができる。したがって本発明の血中尿酸値低下剤は、痛風発症及び再発の予防のために用いることができる。
【0031】
本実施形態に係る血中尿酸値低下剤は、固体(例えば、粉末)、液体(水溶性又は脂溶性の溶液又は懸濁液)、ペースト等のいずれの形状でもよく、また、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳剤、軟膏剤、硬膏剤等のいずれの剤形をとってもよい。また、放出制御製剤の形態をとることもできる。また、一般式(1)で示される化合物又はその薬学的に許容可能な塩のみからなっていてもよい。
【0032】
上述の各種製剤は、一般式(1)で示される化合物又はその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容される添加剤(賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、乳化剤、界面活性剤、基剤、溶解補助剤、懸濁化剤等)と、を混和することによって調製することができる。
【0033】
例えば、賦形剤としては、ラクトース、スクロース、デンプン、デキストリン等が挙げられる。結合剤としては、ポリビニルアルコール、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク等が挙げられる。崩壊剤としては、結晶セルロース、寒天、ゼラチン、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、デキストリン等が挙げられる。乳化剤又は界面活性剤としては、Tween60、Tween80、Span80、モノステアリン酸グリセリン等が挙げられる。基剤としては、セトステアリルアルコール、ラノリン、ポリエチレングリコール、米糠油、魚油(DHA、EPA等)、オリーブ油等が挙げられる。溶解補助剤としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、Tween80等が挙げられる。懸濁化剤としては、Tween60、Tween80、Span80、モノステアリン酸グリセリン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0034】
本実施形態に係る血中尿酸値低下剤は、医薬品、医薬部外品、飲食品(飲料、食品)、飲食品添加物、飼料、飼料添加物等の製品の成分として使用することができる。例えば、飲料としては、水、清涼飲料水、果汁飲料、乳飲料、アルコール飲料、スポーツドリンク、栄養ドリンク等が挙げられる。食品としては、パン類、麺類、米類、豆腐、乳製品、醤油、味噌、菓子類等が挙げられる。また、健康食品、機能性表示食品、特別用途食品、栄養補助食品、サプリメント又は特定保健用食品等の成分として使用することもできる。
【0035】
本実施形態に係る血中尿酸値低下剤からなる、又は血中尿酸値低下剤を含む上記製品は、血中尿酸値低下用であってよい。また、上記製品には、血中尿酸値を低下させる旨等の表示が付されていてもよい。
【0036】
本実施形態に係る血中尿酸値低下剤は、ヒトに摂取されても、非ヒト哺乳動物に摂取されてもよい。本実施形態に係る血中尿酸値低下剤の投与量(摂取量)は、有効成分として、成人1日あたり、体重1kgあたり例えば0.1mg〜1gであってよく、好ましくは1〜500mgであり、より好ましくは、5〜200mgである。投与量は、個体の状態、年齢等に応じて適宜決定することができる。従来のレモン抽出物又はプロポリスは、血中尿酸値低下剤としての有効量が1日あたり体重1kgあたり500〜700mgと高用量である。一方、本実施形態に係る血中尿酸値低下剤は、1日あたり体重1kgあたり500mg以下、300mg以下又は150mg以下の投与量であっても充分に血中尿酸値低下作用を有する。
【0037】
本実施形態に係る血中尿酸値低下剤は、経口投与(摂取)されてもよく、非経口投与されてもよいが、経口投与されることが好ましい。血中尿酸値低下剤は、1日あたりの有効成分量が上記範囲内にあれば、1日1回投与されてもよく、1日複数回に分けて投与されてもよい。
【0038】
本実施形態に係る血中尿酸値低下剤は、継続的に投与されることによって、血中尿酸値を低下させる効果がより高まる。本実施形態に係る血中尿酸値低下剤は、4週間以上継続して投与されることがより好ましく、6週間以上継続して投与されることが更に好ましく、8週間以上継続して投与されることがより更に好ましい。
【実施例】
【0039】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
【0040】
マウス(8週齢、雄、C57BL/6Jマウス、日本エスエルシー社)18匹を、試験開始時の体重及び血中尿酸値が群間でばらつかないように各群9匹の2群(対照群及びキサントフモール投与群)に分けた。マウスは、1週間の馴化飼育を経た後、9週齢の時点で試験に供した。
【0041】
1週間の馴化飼育後、各群のマウスに表1に示す組成の各試験飼料及び水道水を8週間自由に摂餌及び摂水させた。馴化飼育期間及びその後の試験飼料投与期間を通じて、マウスは、飼育装置(温度23±5℃、相対湿度55±10%、イノケージ、オリエンタル技研)中で集団飼育(3匹/ケージ)した。なお、試験飼料である60%フルクトース食は、肝臓へのインスリンを介さない糖の取り込みを増やし、尿酸の基質であるプリン体合成を促進させる食餌であり、マウスにおいて血清尿酸値を増加させることが報告されている。また、マウスはヒトと異なり、プリン体代謝経路で合成された尿酸は速やかにウリカーゼという酵素によりアラントインに代謝されるため、血清尿酸値は通常低く保たれている。そこで、ウリカーゼ阻害薬であるオキソン酸カリウムを混餌し、高尿酸血症モデルマウスを作成した。更に3%の尿酸を混餌した。
【0042】
【表1】
(単位:g)
【0043】
試験開始直後から8週後にかけて、以下の方法により各群のマウスの血清尿酸値を測定した。非絶食下においてマウス尾静脈より採血を行い、遠心(5,000rpm、5分、室温)により血球を分離し、血清を得た。血清を水で10倍希釈した後、10%トリクロロ酢酸/水を加えて遠心し、除タンパクを行った。得られた上清中の尿酸濃度をLCMSMSを用いて下記条件で測定した。標品は尿酸(和光社製)を用いた。
【0044】
<HPLC>
カラム:SymmetryShield RP18、3.5μm、i.d.2.1x150mm(Waters社製)
HPLCシステム:Agilent1100(Agilent technologies社製)
注入量:5μl
溶媒:A,10mMギ酸アンモニウム水溶液+0.1%ギ酸;B,MeCN
流速:0.5ml/min
溶離液:B 0%(0→2min)−40%(4min)−40%(4→6min)
平衡化:6min
カラム温度:40℃
<検出>
MS systems:3200Qtrap(AB SCIEX社製)
イオン化:ESI negative
Scan Type:MRM(Q1:m/z=167.1、Q3:m/z=124.1)
Source/Gas:CUR 20, CAD 4,IS−4500、TEM600、GS1 50、GS2 80
Compound:DP−30、EP−10、CE−25、CXP−4
【0045】
測定した尿酸値について、同時期の対照群における血清尿酸値を基準とする、キサントフモール投与群の尿酸値低下率を算出した。結果を表2に示す。また、試験開始後4週、6週及び8週の、対照群及びキサントフモール投与群の血清尿酸値を、それぞれ
図1(a)、
図1(b)、
図1(c)の順に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
表1及び
図1に示すとおり、キサントフモールの投与により、投与しない場合と比較して血清尿酸値が顕著に低下した。尿酸値の低下傾向はキサントフモールの投与開始後遅くとも4週目には確認された。キサントフモール投与群の血清尿酸値は、対照群と比較して6週目及び8週目にも継続して有意に低下していた。
【0048】
上記試験において、マウスの8週間の摂餌量を測定したところ、1匹あたり摂餌量は約3g/日であった。また、マウスの平均体重は23.0gであった。よって、キサントフモール投与群におけるキサントフモール摂取量はマウスの体重1kgあたり約130mg/日と算出された。マウスにおいて約130mg/kg/日のキサントフモールを摂取することにより、高い血中尿酸値低下作用を有することが確認された。