特許第6722009号(P6722009)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6722009
(24)【登録日】2020年6月23日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】アルミニウム箔
(51)【国際特許分類】
   A47J 36/02 20060101AFI20200706BHJP
   A47J 37/00 20060101ALI20200706BHJP
   A23L 5/10 20160101ALN20200706BHJP
【FI】
   A47J36/02 B
   A47J37/00 C
   !A23L5/10 Z
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-52578(P2016-52578)
(22)【出願日】2016年3月16日
(65)【公開番号】特開2017-164298(P2017-164298A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2019年1月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001100
【氏名又は名称】株式会社クレハ
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】大森 麻希子
(72)【発明者】
【氏名】細田 友則
(72)【発明者】
【氏名】秀岡 誠
【審査官】 沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−072440(JP,A)
【文献】 実開昭56−027926(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0108689(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 36/02
A47J 37/00
A23L 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の面が被覆材により被覆されたアルミニウム箔であって、
前記被覆材により被覆された被覆面には、
複数の第1の線状模様部と、
前記第1の線状模様部のそれぞれと交差する複数の第2の線状模様部と、
前記第1の線状模様部と前記第2の線状模様部とによって囲まれた領域に位置し、微細加工が施された加工領域と
が形成され、
前記第1の線状模様部および前記第2の線状模様部は、微細加工が施された加工部分と、微細加工が施されていない非加工部分とを含み、
前記第1の線状模様部同士の間隔および前記第2の線状模様部同士の間隔はそれぞれ20mm以上であり、
前記第1の線状模様部の太さおよび前記第2の線状模様部の太さは、それぞれ0.5mm以上5.0mm以下であることを特徴とするアルミニウム箔。
【請求項2】
複数の前記第1の線状模様部が互いに平行に配置され、かつ複数の前記第2の線状模様部が互いに平行に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム箔。
【請求項3】
前記第1の線状模様部および前記第2の線状模様部の少なくとも一方が、前記加工部分と前記非加工部分とを交互に配置することにより破線状に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のアルミニウム箔。
【請求項4】
前記加工部分が、前記第1の線状模様部と前記第2の線状模様部との交差する交差部に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のアルミニウム箔。
【請求項5】
前記第1の線状模様部は、前記第2の線状模様部よりも前記加工部分の占める面積が大きいことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のアルミニウム箔。
【請求項6】
前記被覆材は、シリコーン樹脂であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のアルミニウム箔。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食品調理用アルミニウム箔、特に各種食品の加熱調理に用いられる食品調理用アルミニウム箔に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般家庭では、防汚目的で調理器具にアルミニウム箔を敷いて肉や魚などの食材を焼くことが行われている。
しかしこの方法ではアルミニウム箔に食材がこびりついてしまい、食べにくく、また食材の見た目が悪くなってしまうという課題があった。
【0003】
そのため、肉や魚などの食材が付着しないよう、アルミニウム箔と食材間の剥離強度を下げることが求められている。
剥離強度を下げる方法としては、例えば調理時に使用するアルミニウム箔にシリコーン樹脂を被覆し、剥離強度を下げる技術(例えば、特許文献1)が知られている。また、アルミニウム箔表面に微細加工の凹凸で形成された格子柄の模様を施すことにより、意匠性を向上させつつ剥離強度を下げる技術(例えば、特許文献2)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−170431号公報
【特許文献2】特開2002−346605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の技術を用いたアルミニウム箔でも、過度に加熱された状態で食材を載せて調理した場合には、食材のこびりつきがなお発生することがあった。そのため、さらなる剥離性能が求められていた。
【0006】
ここで、剥離性能を向上させる手段としてアルミニウム箔の表面の全面に微細加工の凹凸を施すことが考えられるが、格子柄の模様は、需要者の購買意欲を喚起し、アルミニウム箔の売り上げを上昇させる重要な要素であるため欠かすことはできない。
【0007】
本発明によれば、売上に繋がるデザインを維持し、かつ過加熱状態で調理してもこびりつきが発生しにくいアルミニウム箔を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は鋭意研究を重ねた結果、アルミニウム箔の微細加工が施されていない非加工部分にこびりつきが発生しやすいことを確認した。さらに本発明者は格子柄の模様を構成する非加工部分の面積を狭めることで、上記課題が解決することを見出した。
【0009】
すなわち、本発明のアルミニウム箔は、
少なくとも一方の面が被覆材により被覆されたアルミニウム箔であって、
前記被覆材により被覆された被覆面には、
複数の第1の線状模様部と、
前記第1の線状模様部のそれぞれと交差する複数の第2の線状模様部と、
前記第1の線状模様部と前記第2の線状模様部とによって囲まれた領域に位置し、微細加工が施された加工領域と
が形成され、
前記第1の線状模様部および前記第2の線状模様部は、微細加工が施された加工部分と、微細加工が施されていない非加工部分とを含み、
前記第1の線状模様部同士の間隔および前記第2の線状模様部同士の間隔はそれぞれ20mm以上であり、
前記第1の線状模様部の太さおよび前記第2の線状模様部の太さは、それぞれ0.5mm以上5.0mm以下であることを特徴とする。
これにより、需要者の購買意欲を喚起する模様を維持しつつ、こびりつきの原因となる非加工部分の面積を減少させることができる。また、線状模様部同士の間隔が20mm以上になるように非加工部分の面積を狭めることにより、アルミニウム箔の表面にこびりつきが発生し難くなる。また、線状模様部の太さを0.5mm以上とすることにより模様を視認し易くすることができる。また、太さを5.0mm以下とすることにより、アルミニウム箔の表面を占める非加工部分の面積を減少させて剥離性を向上させることができる。
【0010】
また、本発明のアルミニウム箔は、
複数の前記第1の線状模様部が互いに平行に配置され、かつ複数の前記第2の線状模様部が互いに平行に配置されていることを特徴とする。
これにより、需要者の購買意欲を喚起する格子柄の模様がアルミニウム箔の表面に形成される。
【0011】
また、本発明のアルミニウム箔は、
前記第1の線状模様部および前記第2の線状模様部の少なくとも一方が、前記加工部分と前記非加工部分とを交互に配置することにより破線状に形成されていることを特徴とする。
このように線状模様部を破線状にすることにより、加工部分の面積を増やすことができるため、こびりつきをさらに改善することができる。
【0012】
また、本発明のアルミニウム箔は、
前記加工部分が、前記第1の線状模様部と前記第2の線状模様部との交差する交差部に設けられていることを特徴とする。
これにより、線状模様部を構成する非加工部分の長さを適度な間隔で分断でき、こびりつきの改善につなげることができる。
【0013】
また、本発明のアルミニウム箔は、
前記第1の線状模様部は、前記第2の線状模様部よりも前記加工部分の占める面積が大きいことを特徴とする。
このように加工部分の占める面積を大きくすれば、微細加工によって形成されるデザインのバリエーションを増すことができ、需要者の購買意欲を喚起することができる。
【0016】
また、本発明のアルミニウム箔は、
前記被覆材が、シリコーン樹脂であることを特徴とする。
特にシリコーン樹脂で有れば、アルミニウム箔本体の表面への被覆を好適に行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、売上に繋がるデザインを維持し、かつ過加熱状態で調理してもこびりつきが発生しにくいアルミニウム箔を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施の形態の実施例1に係るアルミニウム箔を示す平面図である。
図2】実施の形態の実施例2に係るアルミニウム箔を示す平面図である。
図3】実施の形態の実施例3に係るアルミニウム箔を示す平面図である。
図4】実施の形態の実施例4に係るアルミニウム箔を示す平面図である。
図5】比較例に係るアルミニウム箔を示す平面図である。
図6】他の実施の形態に係るアルミニウム箔を示す平面図である。
図7】他の実施の形態に係るアルミニウム箔を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態に係るアルミニウム箔について説明する。図1は、本発明のアルミニウム箔の表面を示す図である。図1に示すように、アルミニウム箔2は、アルミニウム箔本体4と、その表面を被覆する被覆材である図示しないシリコーン樹脂により構成されている。また、アルミニウム箔2の表面には微細加工によって形成されたデザインが施されている。以下、アルミニウム箔2を構成するそれぞれの要素について詳述する。
【0020】
〔1〕アルミニウム箔本体4
アルミニウム箔本体4の原料は、特に限定されるものではないが、JISに規定されたIN30、1100、8021、8079等を用いることができる。
また、アルミニウム箔本体4の厚みは10μm以上20μm以下であることが好ましい。アルミニウム箔の厚みを10μm以上とすることにより調理中の破れを生じ難くすることができ、アルミニウム箔本体4の厚みを20μm以下とすることにより、アルミニウム箔2をカットし易くすることができる。
【0021】
〔2〕シリコーン樹脂
アルミニウム箔本体4の表面の被覆は、シリコーン樹脂を塗布し、処理を行うことで形成される。シリコーン樹脂としては、コーティング可能なシリコ−ン樹脂であれば特に制限がなく使用できる。例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリフェニルメチルシロキサン、ポリアルキルアルケニルシロキサン、ポリアルキル水素シロキサン等が好ましく例示できる。これらは単独で用いてもよく、二種以上混合して用いてもよい。
【0022】
また、必要に応じて、シランカップリング剤等のカップリング剤を併用してもよい。カップリング剤で予めアルミニウム箔本体4の表面を処理してもよいし、シリコーン樹脂に添加混合して用いてもよい。シリコーン樹脂は通常、溶媒に溶解し、アルミニウム箔本体4にコーティングする。塗布量に制限はないが、固形分で0.05g/m2以上0.8g/m2以下であることが好ましい。塗布量を固形分で0.05g/m2以上とすることにより剥離性を向上させることができ、塗布量を固形分で0.8g/m2以下とすることによりシリコーン樹脂によるべとつきが感じられなくなる。コーティング後、熱風乾燥により硬化させる。乾燥温度は通常100℃以上、好ましくは140〜170℃である。塗布はアルミニウム箔本体4の両面に施しても片面だけに施してもよく、片面だけに施す場合は艶面としても艶消面としてもよい。アルミニウム箔本体4のいずれの面にどのような形でシリコーン樹脂を塗布するかについては必要に応じて選択される。
【0023】
〔3〕微細加工
微細加工は、特に限定されるものではないが、エンボス加工によって行われることが好ましい。エンボス加工を行うことにより、シリコーン樹脂で被覆されたアルミニウム箔2の表面に凹凸が形成される。ここで、エンボス加工の方法は、エンボスロールを用いてアルミニウム箔2にエンボス加工を施すなどの既知の方法で足りる。なお、積層樹脂の厚みを均一に形成する等の観点を考慮すると、一旦アルミニウム箔本体4にシリコーン樹脂を塗布した後にエンボス加工を施すのがより好ましい。
微細加工が施された箇所は、本明細書の図面においては、アルミニウム箔2の中で、白色で表される。
【0024】
また、エンボス加工によって形成された凹凸深さは5μm以上30μm以下であることが好ましい。エンボス加工の深さが5μm以上とすることによりエンボスを見えやすくすることができ、エンボス加工の深さを30μm以下とすることによりアルミニウム箔2の強度を上昇させることができる。
【0025】
〔4〕デザイン
上述した微細加工を施すことにより、シリコーン樹脂で被覆されたアルミニウム箔2の表面に様々なデザインを形成させることができる。たとえば、図1に示すように、格子柄のデザインを形成させることができる。なお、デザインは、アルミニウム箔2の全体に亘って表示されることが好ましい。これにより、剥離性に優れる面がいずれの面なのかを認識し易くすることができる。
【0026】
格子柄のデザインは、複数の第1の直線状模様部6aと、第1の直線状模様部6aのそれぞれと交差する複数の第2の直線状模様部6bとにより構成される。ここで、複数の第1の直線状模様部6a、および複数の第2の直線状模様部6bは、それぞれ互いに平行に配置されている。また、第1の直線状模様部6aと前記第2の直線状模様部6bとによって囲まれた領域には、微細加工が施された四角形状の加工領域10が形成されている。
【0027】
また、第1の直線状模様部同士の間隔Bおよび第2の直線状模様部同士の間隔Bは、それぞれ20mm以上であることが好ましい。間隔Bが20mm以上になるように非加工部分の面積を狭めることにより、アルミニウム箔2の表面にこびりつきが発生し難くなる。
【0028】
なお、シリコーン樹脂で被覆されたアルミニウム箔2の表面には、格子柄の模様以外にも、剥離性が優れる面であることを示す「おもて」という表示や、肉や魚といった調理可能な食品を示すイラスト、商標名等の表示などをエンボス加工によって形成してもよい。
【0029】
また、格子柄デザインは、第1の直線状模様部6aや第2の直線状模様部6bを構成する加工部分の割合を変化させたり、第1の直線状模様部6aと第2の直線状模様部6bとの交差部12を加工部分とするか非加工部分とするかによりさまざまなパターンにすることができる。
【0030】
(直線状模様部6の形状)
直線状模様部6(第1の直線状模様部6aと第2の直線状模様部6bをまとめて指す場合の総称。)の形状は加工パターンと太さにより決定される。
ここで、第1の直線状模様部6aおよび第2の直線状模様部6bは、それぞれ微細加工が施された加工部分と、微細加工が施されていない非加工部分とを含むのが好ましい。
【0031】
たとえば、図1に示すように、第1の直線状模様部6aと第2の直線状模様部6bの交差する交差部12のみを加工部分としてもよく、図2に示すように、加工部分と非加工部分とを交互に配置することにより直線状模様部を破線状にしてもよい。なお、直線状模様部を破線状にした場合、非加工部分の長さを4mm、加工部分の長さを3mmとするのが剥離性と意匠性のバランスの観点から好ましい。
【0032】
直線状模様部6の太さAは、0.5mm以上5.0mm以下であることが好ましい。太さAを0.5mm以上とすることにより直線状模様部6を視認し易くすることができる。また、太さAを5.0mm以下とすることにより、アルミニウム箔2の表面を占める非加工部分の面積を減少させることができ剥離性を向上させることができる。
【0033】
(交差部12の形状)
第1の直線状模様部6aと第2の直線状模様部6bの交差部12は、アルミニウム箔2の剥離性に大きな影響を与える。また、交差部12の形状は、直線状模様部6の形状に応じて変化させることができる。具体的には、図2に示すように、交差部12をエンボス加工せずに非加工部分とすることもできるし、図1図3、4に示すように、交差部12にエンボス加工を施して加工部分とすることもできる。ただし、アルミニウム箔2の剥離性という観点を考慮すると、交差部12を加工部分とするのが好ましい。
【0034】
この実施の形態に係る発明によれば、アルミニウム箔2の表面に微細加工の凹凸で形成された格子柄の模様を施すことにより、売上に繋がるデザインを維持し、かつ過加熱状態で調理してもこびりつきが発生しにくいアルミニウム箔を提供することができる。
【実施例】
【0035】
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。
【0036】
(こびりつき判定方法)
実際に目玉焼きを作成し、アルミニウム箔2の表面にこびりつきがあるか否かを確認することにより、こびりつき判定を行った。具体的な判定方法を以下に示す。まず、フライパンに図1〜4に示す各アルミニウム箔2を敷き、強火で1分加熱した。次に、卵を1個割り入れて3分間加熱し、その時のこびりつきの有無を確認した(こびりつきテスト:1度目表)。その後、目玉焼きを裏返してさらに1分間加熱し、その時のこびりつきの有無を確認した(こびりつきテスト:1度目裏)。
引き続き同一デザインのアルミニウム箔2を新たにカットし、そのアルミニウム箔2を用いて、再度こびりつき判定を行った(こびりつきテスト:2度目)。
【0037】
なお、こびりつき判定は以下の方法で行った。こびりつきには、(1)ヘラ等を目玉焼きとアルミニウム箔2の間に挿入し、剥がすときに抵抗を感じるがこびりつきはない、(2)アルミニウム箔2に焦げ付き又はかすかなこびりつきがある、(3)アルミニウム箔2に目玉焼きがこびりつく、という3段階の度合がある。それに抵抗もこびりつきもなかった場合の段階を加え、表1に示す4段階で各アルミニウム箔2のこびりつき判定を行った。
【0038】
【表1】
【0039】
〔1〕実施例
厚さ11μmのアルミニウム箔本体4の片面に、シリコーン樹脂を0.4g/m2塗布し、シリコーン樹脂で被覆されたアルミニウム箔2を得た。次にアルミニウム箔2のシリコーン樹脂で被覆された面にエンボスロールを圧接させ、アルミニウム箔2の表面にエンボス加工が施された加工部分とエンボス加工が施されていない非加工部分とから成る格子柄の模様を形成した。なお、エンボス加工の凹凸の深さは約13μmである。
【0040】
以下、実施例1〜4、及び比較例に形成された格子柄の模様について説明する。
(実施例1)
実施例1に係るアルミニウム箔2の格子柄は、図1に示すように、第1の直線状模様部6a、第2の直線状模様部6b、および加工領域10によって構成される。また、図1、表2に示すように、第1の直線状模様部6aおよび第2の直線状模様部6bの太さAは、それぞれ4mmであり、第1の直線状模様部6aと第2の直線状模様部6bとの間の間隔Bは、25mmである。また、交差部12は、4mm四方の正方形状を有し、エンボス加工を施して加工部分とした。
【0041】
(実施例2)
実施例2に係るアルミニウム箔2の格子柄については、図2に示すように、直線状模様部6を破線状にした点、および交差部12にはエンボス加工を施さず交差部12を非加工部分とした点が実施例1と異なる。その他については、実施例1と同様であるため説明を省略する。なお、破線状の直線状模様部6は、加工部分と非加工部分を交互に配置して構成され、加工部分の長さが3mm、非加工部分の長さが4mmである。
【0042】
(実施例3)
実施例3に係るアルミニウム箔2の格子柄については、図3に示すように、直線状模様部6を細くし、第1の直線状模様部6aおよび第2の直線状模様部6bの太さAをそれぞれ1mmにし、交差部12を2.5mm四方の加工部分とした点が実施例1と異なる。その他については、実施例1と同様であるため説明を省略する。
【0043】
(実施例4)
実施例4に係るアルミニウム箔2の格子柄については、図4に示すように、第1の直線状模様部6aおよび第2の直線状模様部6bの太さAをそれぞれ1mmにし、交差部12を2.5mm四方の加工部分とした点が実施例2と異なる。その他については、実施例2と同様であるため説明を省略する。
【0044】
(比較例)
比較例に係るアルミニウム箔200の格子柄については、図5に示すように、交差部120をエンボス加工を施さない非加工部分とした点が実施例1と異なる。このため、格子柄を構成する直線状模様部60、交差部120がすべて非加工部分となり、実施例1〜4のアルミニウム箔2よりも非加工部分の面積が大きくなる。
【0045】
【表2】
【0046】
表2に示すこびりつきテストの結果によれば、実施例1〜4に係る格子柄の模様のアルミニウム箔2を使用した場合には、比較例に係る格子柄の模様のアルミニウム箔200を使用した場合と比較して、こびりつきが改善されていることがわかる。こびりつきが改善された理由としては、特に1度目のこびりつきテストにおいて、比較例では抵抗があったのに対し、実施例1〜4では抵抗がなくなっていること、比較例に係るアルミニウム箔200と比較して、実施例1〜4に係るアルミニウム箔2では、こびりつきの原因となる非加工部分の面積が減少していることから説明される。
【0047】
なお、上述の実施の形態においては、格子柄のデザインを構成する模様として直線状模様部6を例に説明しているが、線状の模様は必ずしも直線状に限定されない。たとえば、多少の折れや歪みを有する線状模様部であっても構わない。また、それぞれの直線状模様部6同士は、厳密に平行でなくともよい。
【0048】
また、上述の実施の形態においては、図1、3に示すように、直線状模様部6が実線状の場合、図2、4に示すように、直線状模様部6が破線状の場合のみが示されているが、図6図7に示すように、実線状の直線状模様部6と破線状の直線状模様部6を組み合わせてもよい。すなわち、第1の直線状模様部6aよりも第2の直線状模様部のほうが加工部分の占める面積が大きくてもよい。また、第1の直線状模様部6aよりも第2の直線状模様部のほうが加工部分の占める面積が小さくてもよい。
また、被覆材は、必ずしもシリコーン樹脂でなくともよく、アルミニウム箔本体4の両面に塗布されていてもよい。
また、上述の実施の形態においては、交差部12が正方形状であることを説明しているが、交差部12は必ずしも正方形状に限定される必要はなく、たとえばひし形などでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、売上に繋がるデザインを維持し、かつ過加熱状態で調理してもこびりつきが発生しにくいアルミニウム箔を提供することができる。
【符号の説明】
【0050】
2 アルミニウム箔
4 アルミニウム箔本体
6 直線状模様部
6a 第1の直線状模様部
6b 第2の直線状模様部
10 加工領域
12 交差部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7