(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂は優れた機械的特性、耐熱性等の性質を有しており、エンジニアプラスチックとして多くの用途に用いられている。
【0003】
しかしながら、優れた耐熱性を有するポリアミド樹脂といえども、自動車部品に用いる場合のように長期に亘り高温に晒され続けるような場合には、樹脂が加熱時に雰囲気酸素と反応して劣化する熱老化が生じる。
【0004】
熱老化は、加熱によって樹脂の骨格炭素上で発生するラジカルと酸素との反応によって形成されるパーオキサイドラジカルがポリマー鎖を連続的に切断するために生じると言われている。
【0005】
この樹脂の熱老化の抑制を目的として、樹脂に熱安定剤を添加する技術が特許文献1に開示されている。具体的には、特許文献1には、バイオマス由来の原料を使用したポリアミド樹脂に熱安定剤としてハロゲン化銅を配合したポリアミド樹脂組成物が開示されている。
【0006】
特許文献1に記載されたハロゲン化銅以外にも、ポリアミド樹脂組成物に熱安定剤としてフェノール化合物を添加することが従来から行われている。
【0007】
また、ポリアミド樹脂組成物の成形品が複数部品を組み合わせてなる製品の一部品である場合には、他の部品との良好な接着性能が要求される。かかる接着性能の一例としては、部品相互の接合部に介在するシリコーン系シール部材との接着性能が挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1のポリアミド樹脂組成物によれば、ハロゲン化銅により熱老化が抑制されるものの、ポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形品の接着性能については何ら触れられていない。熱安定剤として使用されるフェノール系化合物についても同様である。
【0010】
また、ポリアミド樹脂中に上記添加剤を添加することにより、ポリアミド樹脂成形品の強度に影響を与えるおそれもある。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、成形後の成形品の強度を損ねることなく、熱安定性及びシリコーン系シール材との良好な接着性能を兼ね備えた樹脂組成物の成形品及びこの樹脂組成物の成形品の接合構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、ポリアミド樹脂を含有する樹脂組成物の成形品であって
、該成形品は、チェーンカバー、インテークマニホールド、シリンダーヘッドカバー、タイミングベルトカバー、インタークラータンク、オイルリザーバータンク、オイルパン、オイルストレーナー、キャニスター、プロテクター、バンパー、フェンダー及びエンジンフードからなる群から選択される車両部品である
とともに、表面部に、分子量が300以上で且つ分子中に占めるOH基のモル濃度が9%以上である熱安定剤を局在させたものであり、前記熱安定剤が局在する表面部が、成形品の表面から50μm以上100μm以下の厚さを有することを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、外部からの熱が真っ先に伝達され、熱老化の原因となるラジカルが発生する成形品の表面部に分子量が300以上で且つ分子中に占めるOH基のモル濃度が9%以上である熱安定剤が局在しているので、ラジカル発生の場において効果的なラジカル除去がなされ、成形品の樹脂の熱老化を効果的に抑制することができる。
【0014】
また、上記所定の熱安定剤によってシリコーン系シール材との接着の場となる成形品の表面部に極性が付与されることで、このシリコーン系シール材との良好な接着性能が付与される。そのうえ、成形品の強度も損なわれることがない。
【0015】
本発明の樹脂組成物の好ましい態様は以下の通りである。
【0016】
(1)表面部への前記熱安定剤の局在は、成形品の表面部の全面に該熱安定剤が存在するようになされている。
(2)強化材として繊維を樹脂組成物の総質量に対して最大60質量%の量で含む。
【0017】
また、上記目的は、本発明の樹脂組成物の成形品と該成形品と接合される被接合部材とが液状の硬化型シリコーンゴム組成物の硬化物を介して接合されたことを特徴とする樹脂組成物の成形品の接合構造によっても達成される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、外部からの熱が真っ先に伝達され、熱老化の原因となるラジカルが発生する成形品の表面部に分子量が300以上で且つ分子中に占めるOH基のモル濃度が9%以上である熱安定剤が局在しているので、ラジカル発生の場において効果的なラジカル除去がなされ、成形品の樹脂の熱老化を効果的に抑制することができる。
【0019】
また、上記所定の熱安定剤によってシリコーン系シール材との接着の場となる成形品の表面部に極性が付与されることで、このシリコーン系シール材との良好な接着性能が付与される。また、成形品の強度も損なわれることがない。
【0020】
したがって、車両の一部に本発明の樹脂組成物の成形品を用いた場合に、当該成形品自体として耐熱性・強度に優れるだけでなく、シリコーン系シール部材を介して接合された場合に車体骨格部材との良好な接合強度を有する接合構造を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。
[樹脂組成物の成形品]
本発明の樹脂組成物の成形品は、その表面部に局在する熱安定剤を含む。
【0023】
熱安定剤は、分子量が300以上で且つ分子中に占めるOH基のモル濃度が9%以上であるフェノール系化合物である。
【0024】
フェノール系化合物としては、例えば、ヒンダードフェノール化合物、トコフェロール等が挙げられる。
【0025】
ヒンダードフェノール化合物の具体例としては、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ブタン、2−t−ブチル−4−メトキシフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール、4−ヒドロキシメチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール、スチレン化フェノール、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコールビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2'−メチレンビス(6−t−ブチル−4−エチルフェノール)、2,2'−メチレンビス[4−メチル−6−(1,3,5−トリメチルヘキシル)フェノール]、4,4'−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、1,1,3−トリス[2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル]ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス[3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル]ベンゼン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、トリス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、4,4'−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−チオビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、チオビス(β−ナフトール)が挙げられる。
【0026】
トコフェロールの具体例としては、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロールが挙げられる。
【0027】
フェノール系化合物は、ヒンダードフェノール化合物であることが好ましく、特に好ましくは、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ブタンである。
【0028】
なお、フェノール化合物はこれらのみに限定されるものではなく、本発明の目的を達成し得る限りどのようなものであってもよい。
【0029】
熱安定剤が局在する表面部は、成形品の表面から10μm以上200μm以下の厚さを有する。すなわち、熱安定剤は、成形品の表面から10μm以上200μm以下の範囲、好ましくは、50μm以上100μm以下の範囲に局在する。
【0030】
熱安定剤が、成形品の表面から10μm未満の範囲にしか存在しない場合、熱により表面部において樹脂の炭化水素鎖上に発生したラジカルの成形品内部への侵入防止が不十分となり、樹脂組成物の成形品の熱老化を十分に抑制することができない。
【0031】
熱安定剤が成形品の表面から200μm以上の範囲に存在する場合には、樹脂組成物中に繊維が添加されていると樹脂内部の熱安定剤が樹脂組成物中の樹脂と繊維の各ネットワークを分断し、その状態で高温放置されることで各界面相互作用が低下し、強度維持率が低下することとなる。
【0032】
熱安定剤は、成形品の表面部の全面に存在することが好ましい。しかし、必ずしも成形品の表面部の全面に存在することが必須というわけではない。成形品の表面部のうち、後述する液状ガスケット(FIPG)との接着面に存在してFIPGとの接着性能を向上し、且つこれらの面のみ(上記接着面及び熱による影響を受ける部位となる面のみ)に局在させることも可能である。
【0033】
成形品の内部は、樹脂組成物の固化物により形成される。樹脂組成物は、ポリアミド樹脂を含む。ポリアミド樹脂は、ω−アミノ酸の重縮合反応により合成されるn−ナイロン、ジアミンとジカルボン酸の共縮合重合反応で合成されるn,m−ナイロンを用いることができる。
【0034】
n−ナイロンとしては、例えば、ナイロン−6、ナイロン−11、ナイロン12を挙げることができる。n,m−ナイロンとしては、例えば、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン6T、ナイロン6I、ナイロン9T、ナイロンM5Tを挙げることができる。
【0035】
樹脂組成物には、さらに強化材として繊維を含ませることができる。繊維としては、ガラス繊維、カーボン繊維、セラミック繊維(アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維等)、石綿繊維、金属繊維(ステンレス繊維、アルミニウム繊維、黄銅繊維等)を挙げることができる。好ましくは、ガラス繊維、カーボン繊維である。
【0036】
繊維は、樹脂組成物の総質量に対して最大60質量%の量で含ませることができる。60質量%を超えると、射出成形による成形品の製造が困難となる。
【0037】
また、樹脂組成物の成形品の初期強度向上の観点から、繊維は、樹脂組成物の総質量に対して15質量%以上の量で含ませることが好ましい。
【0038】
さらに、本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、各種添加材を含ませることも可能である。各種添加材としては、有機又は無機の顔料、染料、可塑剤、脂肪酸、脂肪酸塩、脂肪酸アミド等の滑剤、発泡剤、リン酸エステル等の難燃剤、紫外線吸収剤、モノグリセライド等の帯電防止剤、有機リン化合物等の結晶核剤、シリコーン系化合物等の離型剤、フェノール系化合物等の熱安定剤が挙げられる。これらは、1種のみ添加してもよく、2種以上を添加してもよい。
【0039】
次に、本発明の樹脂組成物の成形品の製造方法について説明する。本発明の樹脂組成物の成形品は、樹脂組成物の成形物の表面を、熱安定剤を含むフィルム又は塗料で被覆することにより製造し得る。
【0040】
熱安定剤を含むフィルムは、例えば、本発明の樹脂組成物と同じ組成物に熱安定剤を添加して溶融混練したものをTダイ法により押し出して得ることができる。なお、必要により延伸加工を行うことができる。また、フィルムの製造に用いる樹脂組成物は、本発明の樹脂組成物と全く同じ組成物とする必要はなく、例えば、繊維(強化剤)を除いたものとしてもよい。
【0041】
熱安定剤を添加する樹脂組成物から繊維(強化材)を除いたものとしてもよい。
【0042】
また、熱安定剤を含む塗料は、例えば、極性を付与した、光硬化型(例えば、紫外線硬化型)の変性ナイロン塗料に熱安定剤を添加することで得ることができる。このような変性ナイロン塗料は市販されているものを用いることができる。
【0043】
上記樹脂組成物の成形物の表面を、熱安定剤を含むフィルム又は塗料で被覆する方法としては、(i)樹脂組成物の成形物を形成し、当該成形物の表面を熱安定剤を含むフィルム又は塗料で被覆する方法、又は(ii)フィルムと樹脂組成物を金型内に入れ、樹脂組成物の表面をフィルムで被覆すると同時に成形する方法が挙げられる。
【0044】
前者(i)は二次加飾、後者(ii)は一次加飾と呼ばれる。
【0045】
(i)について、樹脂組成物の成形物の形成は、従来公知の成形法(例えば、射出成形法、押出成形法、プレス成形法、真空成形法、ブロー成形法)を用いることができる。成形物の形成後、フィルムによる成形物表面の被覆を行う場合、オーバーレイ成形、TOM工法(Thrree−dimension Over−lay Method)により成形物表面にフィルムを適用することができる。成形物の形成後、塗料による成形物表面の被覆を行う場合、吹付け塗装、ローラー塗り、ロールコーター、静電塗装、粉体塗装、紫外線硬化塗装等、種々の塗布方法を適用することができる。なお、塗布された塗料は硬化処理等により固定される。
【0046】
(ii)については、金型内に熱安定剤を含むフィルムをインサートし、その後に樹脂組成物を金型内に射出する射出成形、あるいは、樹脂組成物を金型内に射出した後にプレスする射出プレス成形等により、樹脂組成物の成形品を得ることができる。
【0047】
本発明の樹脂組成物の成形品によれば、外部からの熱が真っ先に伝達され、熱老化の原因となるラジカルが発生する成形品の表面部に分子量が300以上で且つ分子中に占めるOH基のモル濃度が9%以上である熱安定剤が局在しているので、ラジカル発生の場において効果的なラジカル除去がなされ、成形品の樹脂の熱老化を効果的に抑制することができる。
【0048】
また、上記所定の熱安定剤によってシリコーン系シール材との接着の場となる成形品の表面部に極性が付与されることで、このシリコーン系シール材との良好な接着性能が付与される。また、成形品の強度も損なわれることがない。
【0049】
本発明の樹脂組成物の成形品としては、車両部品として、例えば、チェーンカバー、インテークマニホールド、シリンダーヘッドカバー、タイミングベルトカバー、インタークラータンク、オイルリザーバータンク、オイルパン、オイルストレーナー、キャニスター、プロテクター、バンパー、フェンダー、エンジンフード等を挙げることができる。
【0050】
[樹脂組成物の成形品の接合構造]
また、本発明は、本発明の樹脂組成物の成形品とこの成形品と接合される被接合部材とが液状の硬化型シリコーンゴム組成物の硬化物を介して接合されたことを特徴とする樹脂組成物の成形品の接合構造を提供する。
【0051】
本発明の成形品と接合される被接合部材としては、樹脂からなる成形品に限らず、金属成形品等が含まれる。金属成形品に含まれる金属としては、鋳鉄、アルミニウム、マグネシウム合金等を挙げることができる。
【0052】
液状の硬化型シリコーンゴム組成物としては、液状ガスケット(FIPG:Formed In Place Gasket)として市販されている公知のものを用いることができる。FIPGは、互いに接合される部材の一方の接合面に塗布され、接合面を介して両者を圧接して養生硬化されるガスケットである。例えば、湿気硬化性シリコーンや2液混合硬化型シリコーンが挙げられる。
【0053】
次に、本発明の樹脂組成物の成形品の接合構造の製造方法について説明する。
【0054】
まず、本発明の樹脂組成物の成形品の接合面及び被接合部材の少なくとも一方に液状の硬化型シリコーンゴム組成物を塗布し、この液状の硬化型シリコーンゴム組成物を介して両者を圧接する。その状態で液状のシリコーンゴム組成物を硬化させることで、上記樹脂組成物の成形品及び被接合部材とが接合され、本発明の樹脂組成物の成形品の接合構造を得ることができる。
【0055】
この樹脂組成物の成形品の接合構造によれば、外部からの熱が真っ先に伝達され、熱老化の原因となるラジカルが発生する成形品の表面部に上記所定の熱安定剤が局在しているので、ラジカル発生の場において効果的なラジカル除去がなされ、成形品の樹脂の熱老化が効果的に抑制され、且つ液状のシリコーンゴム組成物の硬化物との接着性が向上し、より強固な成形品と被接着部材との接合構造を得ることができる。
【0056】
また、上記所定の熱安定剤によってシリコーン系シール材(液状のシリコーンゴム組成物の硬化物)との接着の場となる成形品の表面部に極性が付与されることで、このシリコーン系シール材との良好な接着性能が付与される。また、成形品の強度も損なわれることがない。
【0057】
本発明の樹脂組成物の成形品の接合構造としては、例えば、上記例示の車両部品と車両骨格部材との接合構造を挙げることができる。
【0058】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
【実施例】
【0059】
[実施例1〜4及び比較例1]
1−1.樹脂組成物
ポリアミド樹脂を含有する樹脂組成物としては、ガラス繊維30質量%添加ポリアミド6樹脂であるPA−6−GF30−01(ダイセルポリマー株式会社製)を用いた。
【0060】
1−2.成形品の表面部作成用のフィルム
ポリアミド樹脂100質量部に対して1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタンを20質量部の割合で配合し、2軸混練押出機(株式会社パーカーコーポレーション製HK25D−41)を用いてTダイ押出成型(株式会社創研製)により溶融混練後の樹脂を押出し、厚さ10μm、50μm、100μm及び200μmのフィルムをそれぞれ作成した。
【0061】
1−3.成形品の製造
「1.樹脂組成物」のPA−6−GF30−01を80℃、減圧下で4時間乾燥し、射出成型機(日精樹脂工業株式会社製PNX−III)、シリンダー温度;C1=230℃、C2=240℃、C3=250℃、ノズル=240℃、樹脂=250℃、金型=60℃)を用いて射出成型を行い、JIS K7161に準拠した試験片及びISO19095−3に準拠した試験片を得た。
【0062】
次に、射出成形後のそれぞれの試験片を、真空チャンバー内においてオーバーレイ成形を行い、
図1に示すように、底面10aaの一部を除いて表面部10aが厚さ10μmのフィルムで被覆された成形品10(実施例1)を得た。
【0063】
同様に、実施例1からフィルムの厚さのみを50μm(実施例2)、100μm(実施例3)及び200μm(実施例4)にそれぞれ変更した成形品10を得た。
【0064】
[比較例4]
2−1.樹脂組成物
ガラス繊維30質量%添加ポリアミド6樹脂であるPA−6−GF30−01(ダイセルポリマー株式会社製)100質量部に対して1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタンを1質量部の割合で配合し、2軸混練押出機(株式会社パーカーコーポレーション製HK25D−41)を用いて溶融混練し、ペレット化した。
【0065】
2−2.成形品の製造
「2−1.樹脂組成物」で得られたペレットを80℃、減圧下で4時間乾燥し、射出成型機(日精樹脂工業株式会社製PNX−III、シリンダー温度;C1=230℃、C2=240℃、C3=250℃、ノズル=240℃、樹脂=250℃、金型=60℃)を用いて射出成型を行い、JIS K7161に準拠した試験片及びISO19095に準拠した試験片を得た。これらの試験片が、比較例4に係る成形品とした。
【0066】
3.評価試験
3−1.プラスチック−引張特性の試験
「1−3.成形品の製造」及び「2−2.成形品の製造」で得られた成形品(JIS K7161に準拠した試験片)を用い、JIS K7161に準拠したプラスチック−引張特性の試験を行った。
【0067】
試験は、上記成形品のそれぞれの区分につき、成形直後の未被熱成形品及び成形後、150℃で3000時間の熱劣化試験を行った被熱成形品の双方について行った。
【0068】
表1中、初期強度比(%)は、熱安定剤含有フィルムにより被覆されていない未被熱成形品(比較例1)の引張強さ(引張試験中に加わった最大引張応力)を100%としたときの、熱安定剤含有フィルムにより被覆した未被熱成形品(実施例1〜4)及び熱安定剤を成形品全体に分散させた未被熱成形品(比較例2)の引張強さの比を示している。
【0069】
また、表1中、強度維持率(%)は、各区分において、未被熱成形品の引張強さ(引張試験中に加わった最大引張応力)を100%としたときの、被熱成形品の引張強さの比を示している。
【0070】
3−2.樹脂−金属複合体の接合界面特性評価
「1−3.成形品の製造」及び「2−2.成形品の製造」で得られた成形品(ISO19095に準拠)の一端面10b(
図1参照)にシリコーン系材料の液状ガスケット(FIPG)を塗布し、この塗布面にアルミニウム片を接触させた後に液状ガスケットを硬化し、接合界面特性評価用の突合せ接着試験体を作成した。
【0071】
この試験体に対してISO19095に準拠した方法により、試験体の接合強度を求めた。接合強度は、接合部分の破断が生じたときの接合部の単位体積あたりの荷重(MPa)として求めた。求められた値を、表1中のFIPG接着性(MPa)として示す。
【0072】
【表1】