(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記切り換え機構は、前記第一通液口及び/又は前記第二通液口の配置を、前記容器の第一面及び/又は前記第一面の対面方向に位置する第二面の中心部から最端部の間で移動させることが可能に構成されている請求項1又は2に記載の細胞分離フィルター。
前記回収工程において、前記切り換え機構によりデッドエンドフロー方式にし、前記細胞分離フィルターの前記第一通液口又は前記第二通液口から細胞濃縮液を回収する請求項13に記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、添付図面において、細胞分離フィルターの容器の第一面を上、第二面を下にした状態で側面に向かって見た図を正面図とする。
また、
図1〜
図10に示す細胞分離フィルターの容器1の構成例は、いずれも発明の概念を説明するための概略図であり、それらにおける切り換え機構の動作性やシール性等については、要求仕様等に応じて適宜の配慮を行った設計をすれば良い。
【0017】
<細胞分離フィルター>
本発明に係る細胞分離フィルターは、第一通液口及び第二通液口が配置された容器と、前記第一通液口及び前記第二通液口の間に充填されたろ材を備えるとともに、前記第一通液口及び/又は前記第二通液口の配置を移動させる切り換え機構を備える。
【0018】
細胞分離フィルターに用いられる容器は、任意の構造材料を使用して作成することができる。当該容器の構造材料としては特に限定されないが、非反応性ポリマー、生物親和性金属、合金、ガラス等が挙げられる。
【0019】
非反応性ポリマーとしては、アクリロニトリルブタジエンスチレンターポリマー等のアクリロニトリルポリマー;ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンのコポリマー、ポリ塩化ビニル等のハロゲン化ポリマー;ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルクロリドアクリルコポリマー、ポリカーボネートアクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリスチレン、ポリメチルペンテン等が挙げられる。
【0020】
生物親和性金属及び合金としては、ステンレス鋼、チタン、白金、タンタル、金、及びそれらの合金、並びに金メッキ合金鉄、白金メッキ合金鉄、コバルトクロミウム合金、窒化チタン被膜ステンレス鋼等が挙げられる。
【0021】
滅菌耐性を有する点から、当該容器の構造材料として、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリメチルペンテン等が好ましい。
【0022】
本発明において、細胞分離フィルターに用いられるろ材は、不織布や多孔質担体が挙げられる。
【0023】
本発明において不織布の材質は特に制限されないが、滅菌耐性や細胞への安全性の観点からは、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリビニルアルコール、塩化ビニリデン、レーヨン、ビニロン、ポリプロピレン、アクリル(ポリメチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリレート)、ナイロン、ポリイミド、アラミド(芳香族ポリアミド)、ポリアミド、キュプラ、カーボン、フェノール、ポリエステル、パルプ、麻、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリカーボネート等の合成高分子、アガロース、セルロース、セルロースアセテート、キトサン、キチン等の天然高分子、ガラス等の無機材料や金属等が挙げられる。好ましくは、細胞捕捉能が高いポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、アクリル、ナイロン、ポリウレタンである。さらに好ましくは、有核細胞捕捉能が高いポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタラート、ナイロンである。2種以上の材質を組み合わせて繊維とする場合の繊維の形態としては、1本の繊維が異成分同士の材質よりなる繊維でもよく、異成分同士が剥離分割した分割繊維でもよい。また異成分同士の材質よりなる繊維をそれぞれ複合化した形態でもよい。ここでいう複合化とは、特に制限は無く、2種以上の繊維が混在した状態より構成される形態、あるいは単独の材質よりなる形態をそれぞれ張り合わせたもの等が挙げられる。さらに、蛋白質、ペプチド、アミノ酸、糖類等のように、特定の細胞に親和性のある分子を固定してもよい。
【0024】
また、不織布に親水化処理を施してもよく、親水化処理により有核細胞以外の細胞の非特異的な捕捉が抑制され、体液や生体組織の処理液が偏りなく細胞分離フィルター中を通過するので、性能の向上、必要細胞の回収率の向上等を付与することができる。親水化処理としては、水溶性多価アルコール、又は水酸基やカチオン基、アニオン基を有するポリマー、あるいはその共重合体(例えば、ヒドロキシエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、あるいはその共重合体等)を吸着させる方法;水溶性高分子(ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等)を吸着させる方法;疎水性膜に親水性高分子を固定化する方法;細胞分離フィルターに電子照射する方法;含水状態で細胞分離フィルターに放射線を照射することで親水性高分子を架橋不溶化する方法;疎水性膜の表面をスルホン化する方法;親水性高分子と、疎水性ポリマードープとの混合物から膜をつくる方法;アルカリ水溶液処理(NaOH、KOH等)により膜表面に親水基を付与する方法;疎水性多孔質膜をアルコールに浸漬した後、水溶性ポリマー水溶液で処理、乾燥後、熱処理や放射線等で不溶化処理する方法;界面活性作用を有する物質を吸着させる方法等が挙げられる。親水性高分子としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、水溶性多価アルコール等が挙げられる。
【0025】
不織布に固定するタンパク質としては、特定の細胞に親和性のあるタンパク質であれば特に限定されないが、具体的にはフィブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチン、コラーゲン等が挙げられる。また、不織布に固定する糖類としては、細胞に親和性のある糖類であれば特に限定されないが、セルロース、キチン、キトサン等の多糖類やマンノース、グルコース、ガラクトース、フコース等のオリゴ糖等が挙げられる。
【0026】
本発明における多孔質担体としては、セルロース、アセチルセルロース、デクストリン等の多糖類、及びポリスチレン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリビニルアルコール等の、合成ポリマーからなる有機担体が含まれる。これらは、ヒドロキシエチルメタクリレートのようなヒドロキシル基含有のポリマー材料や、ポリエチレンオキサイド鎖含有モノマーや、他の重合化モノマーの共重合体のような、グラフト共重合体からなるコーティング層を有していても構わない。活性基が担体表面に容易に導入されることから、これらの中ではセルロースやポリビニルアルコールのような合成ポリマーが実用的には好ましい。特に多孔質セルロース粒子が最も好ましい。
【0027】
多孔質担体(特に多孔質セルロース粒子)には、logP(Pはオクタノール−水系での分配係数)値が2.50以上の化合物を固定化してなるものであることが好ましい。
logP値が2.50以上の化合物としては、トリプトファン誘導体、ポリアニオン性化合物等が挙げられ、トリプトファン誘導体及びポリアニオン性化合物が多孔質担体に固定されていることが好ましい。
【0028】
logP値とは、化合物の疎水性のパラメータであり、代表的なオクタノール−水系での分配係数Pは以下のように求められる。まず、化合物をオクタノール(又は水)に溶解し、これに等量の水(又はオクタノール)を加え、グリッフィン・フラスク・シェイカー(Griffin flask shaker)(グリッフィン・アンド・ジョージ・リミテッド(Griffin & George Ltd.)製)で30分間振盪する。そののち2000rpmで1〜2時間遠心分離し、オクタノール層及び水層中の化合物の各濃度を分光学的又はGLCなどの種々の方法で測定する。これらの値を次式に代入することにより、Pが求められる。
【0029】
P=Coct/Cw(Coct:オクタノール層中の化合物濃度、Cw:水層中の化合物濃度)
【0030】
これまでに多くの研究者らにより種々の化合物のlogP値が実測されているが、それらの実測値はシー・ハンシュ(C.Hansch)らによって整理されている(「パーティション・コーフィシエンツ・アンド・ゼア・ユージズ;ケミカル・レビューズ(PARTITION COEFFICIENTS AND THEIR USES;Chemical Reviews)、71巻、525頁、1971年」参照)。
【0031】
また実測値の知られていない化合物についてはアール・エフ・レッカー(R.F.Rekker)がその著書「ザ・ハイドロフォビック・フラグメンタル・コンスタント(THE HYDROPHOBIC FRAGMENTAL CONSTANT)」,エルセビア・サイエンティフィック・パブリッシング・カンパニー・アムステルダム(Elsevier Sci.Pub.Com.,Amsterdam)(1977)中に示している疎水性フラグメント定数fを用いて計算した値(Σf)が参考となる。疎水性フラグメント定数は数多くのlogP実測値をもとに、統計学的処理を行い決定された種々のフラグメントの疎水性を示す値であり、化合物を構成するおのおののフラグメントのf値の和はlogP値とほぼ一致すると報告されている。本発明においては、logP値とはΣfをも包含するものである。
【0032】
(実施の形態1)
図1(a)の斜視図に示すように、本発明の実施の形態1に係る細胞分離フィルターは、円形状の第一面1A、第一面の対面方向に位置する(第一面と平行な)円形状の第二面1B、及び第一面1A及び第二面1Bの最端部間を繋ぐ円筒面である側面1Cを有する。
また、
図1(c)及び(d)の縦断面斜視図に示す容器1内の収容空間Sには、前記ろ材が収容される。なお、図面を見やすくするために前記ろ材の図示を省略している。
【0033】
図1(b)の部分縦断面分解斜視図、並びに
図1(c)及び(d)の縦断面斜視図に示すように、容器1の第一面1Aには、その中心から偏心した位置に円形のガイド穴4Aが形成され、第一面1Aに対向する第二面1Bには、その中心からガイド穴4Aの偏心方向と逆方向へ偏心した位置に円形のガイド穴4Bが形成される。
そして、第一面1Aに形成された円形のガイド穴4Aに対し、円盤状の回転体2に形成された円形のガイド溝2Aが係合するので、回転体2は容器1の本体に対して回転可能に支持される。
また、同様に、第二面1Bに形成された円形のガイド穴4Bに対し、円盤状の回転体3に形成された円形のガイド溝3Aが係合するので、回転体3は容器1の本体に対して回転可能に支持される。
さらに、回転体2の外周寄り位置に第一通液口11が取り付けられるとともに、回転体3の外周寄り位置に第二通液口12が取り付けられているので、容器1の本体に対して回転体2,3を回転させた位置に応じて第一通液口11及び第二通液口12の位置が移動する。
【0034】
このように回転体2,3を回転可能に支持して通液口11,12を移動させる機構が、回転移動式の切り換え機構A1,B1を構成する。
このような切り換え機構A1,B1を備えた細胞分離フィルターは、
図1(c)で示すように、通液口11,12を、それぞれ第一面1A、第二面1Bの中心部に移動させることでデッドエンドフロー方式を実現できる。さらに、
図1(d)で示すように通液口11,12をそれぞれ第一面1A、第二面1Bの最端部に移動させることでクロスフロー方式を実現できる。従って、切り替え機構A1、B1により容易にフロー方式を切り換えることができる。
【0035】
(実施の形態2)
図2(a)の斜視図、
図2(b)の分解斜視図、並びに
図2(c)及び(d)の縦断面斜視図における本発明の実施の形態2に係る細胞分離フィルターにおいて、実施の形態1と同一の符号は同一又は相当部分を示しているので、共通する部分の説明は省略する。
【0036】
図2(b)の分解斜視図、並びに
図2(c)及び(d)の縦断面斜視図に示すように、容器1の第一面1Aには、その中心位置に管路6Aが、中心から径方向へ離間した最端部近傍位置に管路7Aが形成され、管路6A及び7A間の中点に支持孔5Aが形成される。また、第一面1Aに対向する第二面1Bには、その中心位置に管路6Bが、管路7Aの中心から径方向への離間方向と逆方向である、中心から径方向へ離間した最端部近傍位置に管路7Bが形成され、管路6B及び7B間の中点に支持孔5Bが形成される。
ここで、管路6Aは第一面1Aから、第一面1Aに対し垂直下方に収容空間Sまで導通している。管路6Bは第二面1Bから、第二面1Bに対し垂直上方に収容空間Sまで導通している。
ここで、管路7Aは、第一面1Aから第一面1Aに対し垂直下方に伸びた後に、第一面1Aに対し水平に径方向内方へ伸びるように屈曲しており、収容空間Sまで導通している。管路7Bは、第二面1Bから第二面1Bに対し垂直上方に伸びた後に第二面1Bに対し水平に径方向内方へ延びるように屈曲しており、収容空間Sまで導通している。
【0037】
そして、第一面1Aに形成された支持孔5Aに対し、円盤状の回転体2中央の支軸2Bが嵌合するので、回転体2は容器1の本体に対して回転可能に支持される。
また、同様に、第二面1Bに形成された支持孔5Bに対し、円盤状の回転体3中央の支軸3Bが嵌合するので、回転体3は容器1の本体に対して回転可能に支持される。
よって、実施の形態2における第一通液口11、第二通液口12を移動させる機構は、実施の形態1と同様の回転移動式の切り換え機構A1,B1である。
【0038】
このような切り換え機構A1,B1を備えた細胞分離フィルターは、
図2(c)で示すように、第一面1Aの中心位置の管路6Aに第一通液口11が連通するとともに、第二面1Bの中心位置の管路6Bに第二通液口12が連通することで、デッドエンドフロー方式を実現する。さらに、
図2(d)で示すように、第一面1Aの最端部近傍位置の管路7Aに第一通液口11が連通するとともに、第二面1Bの最端部近傍位置の管路7Bに第二通液口12が連通することで、クロスフロー方式を実現できる。従って、切り替え機構A1、B1により容易にフロー方式を切り換えることができる。
【0039】
(実施の形態3)
図3(a)の斜視図、
図3(b)の分解斜視図、及び
図3(c)の部分縦断面分解斜視図、並びに
図4(a)及び(b)の縦断面正面図における本発明の実施の形態3に係る細胞分離フィルターにおいて、実施の形態1と同一の符号は同一又は相当部分を示しているので、共通する部分の説明は省略する。
【0040】
図3(b)の分解斜視図、並びに
図4(a)及び(b)の斜視図に示すように、容器1の第一面1Aには、その中央部から径方向へ伸びて最端部近傍までわたる矩形状の収容開口1Dが形成され、第一面1Aに対向する第二面1Bには、その中央部から、収容開口1Dが伸びる径方向と逆方向の径方向へ伸びて最端部近傍までわたる矩形状の収容開口1Eが形成される。
そして、第一面1Aに形成された収容開口1Dには、長手方向の前後位置に通孔8A,8Bを形成したスライドガイド体8が収容される。
同様に、第二面1Bに形成された収容開口1Eには、長手方向の前後位置に通孔9A,9Bを形成したスライドガイド体9が収容される。
さらに、閉止用スライド体13A、第一通液口11を備えた通液用スライド体10A、閉止用スライド体13Bは、スライドガイド体8により、スライド可能に支持される。また、閉止用スライド体14A、第二通液口12を備えた通液用スライド体10B、閉止用スライド体14Bは、スライドガイド体9により、スライド可能に支持される。
【0041】
よって、第一通液口11を備えた通液用スライド体10Aをスライドガイド体8に沿ってスライドさせることにより第一通液口11を移動させることができるとともに、第二通液口12を備えた通液用スライド体10Bをスライドガイド体9に沿ってスライドさせることにより第二通液口12を移動させることができる。
【0042】
このように通液用スライド体10A,10Bをスライド可能に支持して第一通液口11,第二通液口12を移動させる機構が、スライド移動式の切り換え機構A2,B2を構成する。
なお、
図4(a)で示すように、通孔8Bを閉止用スライド体13Bで塞ぎながら、通液用スライド体10Aを移動させて第一通液口11を通孔8Aに連通し、通孔9Bを閉止用スライド体14Bで塞ぎながら、スライド体10Bを移動させて第二通液口12を通孔9Aに連通することで、デッドエンドフロー方式を実現する。さらに、
図4(b)で示すように、通孔8Aは閉止用スライド体13Aで塞ぎながら、スライド体10Aを移動させて第一通液口11を通孔8Bに連通し、通孔9Aは閉止用スライド体14Aで塞ぎながら、スライド体10Bを移動させて第二通液口12を通孔9Bに連通することで、クロスフロー方式を実現する。従って、スライド移動式の切り替え機構A2,B2により容易にフロー方式を切り換えることができる。
【0043】
(実施の形態4)
図5(a)及び(b)の縦断面正面図における本発明の実施の形態4に係る細胞分離フィルターにおいて、実施の形態3と同一の符号は同一又は相当部分を示しているので、共通する部分の説明は省略する。
【0044】
図5(a)及び(b)の縦断面正面図に示すように、スライドガイド体8の通孔8A,8Bは、それぞれ管路6A,管路7Aと連通し、スライドガイド体9の通孔9A,9Bは、それぞれ管路6B,管路7Bと連通する。
実施の形態4における第一通液口11、第二通液口12を移動させる機構は、実施の形態3と同様のスライド移動式の切り換え機構A2,B2であり、
図5(a)のような供給液の流れの方向が前記ろ材による濾過方向と同じであるデッドエンドフロー方式、
図5(b)のような供給液の流れの方向が前記ろ材による濾過方向と直交するクロスフロー方式に容易に切り換えることができる。
【0045】
(実施の形態5)
図6(a)の斜視図、
図6(b)の部分縦断面分解斜視図、並びに
図6(c)及び(d)の縦断面斜視図、並びに
図7(a)及び(b)の縦断面正面図における本発明の実施の形態5に係る細胞分離フィルターにおいて、実施の形態3と同一の符号は同一又は相当部分を示しているので、共通する部分の説明は省略する。
【0046】
本実施の形態における第一通液口11を備えた通液用スライド体10Aは、実施の形態4で示されている通孔8A,8Bを塞ぐ閉止用スライド体も兼ねるように、実施の形態3で示されている通液用スライド体10Aよりも長い矩形状をしており、ガイド溝1Fに係合した状態で径方向へスライド可能に支持され、第一面1Aの中央部から径方向へ伸びる長穴1Hを通って外方へ、第一通液口11が突出する。
また、同様に、本実施の形態における第二通液口12を備えた通液用スライド体10Bは、実施の形態4で示されている通孔9A,9Bを塞ぐ閉止用スライド体も兼ねるように、実施の形態3で示されている通液用スライド体10Bよりも長い矩形状をしており、ガイド溝1Gに係合した状態で径方向へスライド可能に支持され、第二面1Bの中央部から長穴1Hが伸びる径方向と逆方向の径方向へ伸びる長穴1Iを通って外方へ、第二通液口12が突出する。
【0047】
実施の形態5における第一通液口11、第二通液口12を移動させる機構は、実施の形態3及び4と同様のスライド移動式の切り換え機構A2,B2であるが、実施の形態5では、第一通液口11が長穴1H内を移動できる範囲内で第一通液口11の配置を連続的に変えることができるとともに、第二通液口12が長穴1I内を移動できる範囲内で第二通液口12の配置を連続的に変えることができる。
【0048】
(実施の形態6)
図8(a)の斜視図、
図8(b)の分解斜視図、並びに
図8(c)及び(d)の縦断面斜視図における本発明の実施の形態6に係る細胞分離フィルターにおいて、実施の形態1と同一の符号は同一又は相当部分を示しているので、共通する部分の説明は省略する。
【0049】
図8(b)の分解斜視図、並びに
図8(c)及び(d)の縦断面斜視図に示すように、容器1の第一面1Aには、その中心位置に着脱穴17Aが、中心から径方向へ離間した最端部近傍位置に着脱穴18Aが形成され、容器1の第二面1Bには、その中心位置に着脱穴17Bが、着脱穴18Aの中心から径方向への離間方向と逆方向である、中心から径方向へ離間した最端部近傍位置に着脱穴18Bが形成される。
そして、第一面1Aに形成された着脱穴17A及び18Aには、第一通液口11を備えた通液用着脱体15A、及び閉止用着脱体16Aの一方がそれぞれ取り付けられ、第二面1Bに形成された着脱穴17B及び18Bには、第二通液口12を備えた通液用着脱体15B、及び閉止用着脱体16Bの一方がそれぞれ取り付けられる。
【0050】
このように、着脱穴17A,18A、並びに通液用着脱体15A及び閉止用着脱体16Aからなる、着脱穴17A,18Aに対して通液用着脱体15A及び閉止用着脱体16Aを付け替える機構が、着脱移動式の切り換え機構A3を構成する。
また、着脱穴17B,18B、並びに通液用着脱体15B及び閉止用着脱体16Bからなる、着脱穴17B,18Bに対して通液用着脱体15B及び閉止用着脱体16Bを付け替える機構が、着脱移動式の切り換え機構B3を構成する。
このような切り換え機構A3,B3によれば、
図8(c)で示すように、第一通液口11、第二通液口12を、それぞれ第一面1A、第二面1Bの中心部に移動させることでデッドエンドフロー方式を実現することができる。さらに、
図8(d)で示すように第一通液口11、第二通液口12をそれぞれ第一面1A、第二面1Bの最端部に移動させることでクロスフロー方式を実現できる。従って、着脱移動式の切り換え機構により容易にフロー方式を切り換えることができる。
【0051】
(実施の形態7)
図9(a)の斜視図、
図9(b)の分解斜視図、並びに
図9(c)及び(d)の縦断面斜視図における本発明の実施の形態7に係る細胞分離フィルターにおいて、実施の形態6と同一の符号は同一又は相当部分を示しているので、共通する部分の説明は省略する。なお、管路6A,6B,7A,7Bは、実施の形態2の
図2、及び実施の形態4の
図5と同様である。
【0052】
実施の形態7における第一通液口11、第二通液口12を移動させる機構は、実施の形態6と同様の着脱移動式の切り換え機構A3,B3である。
このような切り換え機構A3,B3によれば、
図9(c)で示すように、第一通液口11、第二通液口12を、それぞれ第一面1A、第二面1Bの中心部に移動させることでデッドエンドフロー方式を実現することができる。さらに、
図9(d)で示すように第一通液口11、第二通液口12をそれぞれ第一面1A、第二面1Bの最端部に移動させることでクロスフロー方式を実現できる。従って、着脱移動式の切り換え機構により容易にフロー方式を切り換えることができる。
ここで、
図9(c)の状態では、第一面1Aの中心位置の管路6Aに第一通液口11が連通するとともに、第二面1Bの中心位置の管路6Bに第二通液口12が連通する。
また、
図9(d)の状態では、第一面1Aの最端部近傍位置の管路7Aに第一通液口11が連通するとともに、第二面1Bの最端部近傍位置の管路7Bに第二通液口12が連通する。
【0053】
(実施の形態8)
図10(a)の斜視図、
図10(b)の分解斜視図、並びに
図10(c)及び(d)の縦断面斜視図における本発明の実施の形態8に係る細胞分離フィルターにおいて、実施の形態6と同一の符号は同一又は相当部分を示しているので、共通する部分の説明は省略する。
本実施の形態は、実施の形態6における第一面1Aに形成された着脱穴18A、及び第二面に形成された着脱穴18Bを無くし、側面1Cの上部に着脱穴19Aを形成するとともに、第一面1A及び第二面1B中央の着脱穴17A,17Bの中心を通って第一面1A及び第二面1Bから等距離の点を基準にして、側面1Cにおける着脱穴19Aと点対称位置である、側面1Cの下部に着脱穴19Bを形成したものである。第一面1Aに形成された着脱穴17A及び側面1Cの上部の着脱穴19Aには、第一通液口11を備えた通液用着脱体15A、及び閉止用着脱体16Aの一方がそれぞれ取り付けられ、第二面1Bに形成された着脱穴17B及び18Bには、第二通液口12を備えた通液用着脱体15B、及び閉止用着脱体16Bの一方がそれぞれ取り付けられる。
【0054】
本実施の形態において、着脱穴17A,19Aに対して第一通液口11を備えた通液用着脱体15A及び閉止用着脱体16Aを付け替える機構が、着脱移動式の切り換え機構A3を構成する。
また、着脱穴17B,19B、並びに通液用着脱体15B及び閉止用着脱体16Bからなる、着脱穴17B,19Bに対して通液用着脱体15B及び閉止用着脱体16Bを付け替える機構が、着脱移動式の切り換え機構B3を構成する。
このような切り換え機構A3,B3によれば、
図9(c)で示すように、第一通液口11、第二通液口12を、それぞれ第一面1A、第二面1Bの中心部に移動させることでデッドエンドフロー方式を実現することができる。さらに、
図9(d)で示すように第一通液口11、第二通液口12をそれぞれ第一面1A、第二面1Bの最端部に移動させることでクロスフロー方式を実現できる。従って、着脱移動式の切り換え機構により容易にフロー方式を切り換えることができる。
【0055】
前記実施の形態1〜8に係る細胞分離フィルターでは、前記第一通液口11及び第二通液口12が、前記第一通液口11及び第二通液口12に連結される配管34のキンク防止機構を有する配管34の連結部35を備えていてもよい。
【0056】
(実施の形態9)
例えば、
図12(a)の斜視図、
図12(b)の断面図および
図13の断面図に示すように、前記連結部35は、前記細胞分離フィルターの容器1に固定された、中空の柱状の基部36および前記基部36の内腔面と嵌合する配管接続部37を備える。
【0057】
図14(b)の斜視図に示すように、前記基部36は、前記容器1の前記着脱穴17A、17B、18A、18B、19A,19Bの周縁が肉厚のある管状に盛り上った状態で構成されていてもよいし、前記着脱穴17A、17B、18A、18B、19A,19Bに中空の柱状部材を装着してもよい。前記基部36の内腔面には、前記配管接続部37に設けた突起部38を挿入するためのガイド39が設けられる。
【0058】
例えば、前記配管接続部37は、
図14(a)の分解斜視図および
図14(b)の斜視図に示すように、第一通液口11(又は第二通液口12)を備えた管状部材である。前記第一通液口11(又は第二通液口12)とは反対側の端部の外周面37aには、配管接続部37から外れないように固定される形で突起部38が設けられている。
また、
図15(a)、
図15(b)に示すように、前記基部36に設けるガイド39を多段にしてもよい。多段のガイド39を用いることで、前記基部36と前記突起部38との固定強度を高めて、前記細胞分離フィルターに液体を導入した際に発生する圧力の変化にも十分対応でき、細胞の回収を好適に行うことができる。なお、前記多段の形状としては、段を2つ以上設けることで、ガイド39の端部まで差し込んだ突起部38がガイド39の入口まで戻りにくい形状になっていればよく、特に限定はない。
また、
図14(b)の斜視図に示すように、前記基部36のガイド39は、前記基部36の内腔面と外周面が貫通する形状でもよい。
【0059】
前記配管接続部37を前記基部36に固定する方法としては、例えば、前記配管接続部37の突起部38側の端部を、前記基部36の内腔に入れ、前記突起部38が前記ガイド39に沿うように、前記配管接続部37を回転させることで、前記配管接続部37を前記基部36に固定する(
図17(a))。
また、前記ガイド39の幅は、前記配管接続部37が前記基部36に固定される位置に到達するまでに、徐々に狭まるテーパー形状39aに設計してもよい(
図16(a))。前記突起部38は、取り外し可能な状態で締め付けられるようにして固定され、簡単に脱落することが無く、圧に耐えられるように設計することが好ましい。また、固定位置の確認が出来るよう、前記配管接続部37が前記基部36に固定される位置において、前記ガイド39の端部にはガイドの幅よりも広い幅の固定穴39bを有し、取り外し可能な状態で前記突起部38が固定されるように設計してもよい(
図16(b))。
前記配管接続部37を回転させる所定の角度としては、180°以下であればよく、キンク防止効果と前記基部36の強度とのバランスの観点から、90°以下が好ましく、45°以下がより好ましい。
前記所定の角度は、前記基部36の円周方向に設けたガイド39の長さで調整することができる。
【0060】
また、前記配管接続部37と前記基部36との間の任意の位置には、液漏れを防ぐ観点から、シール40を設けてもよい。特に、シール40としてシリコーン製のゴムパッキンやOリングが好適に用いることができる。
【0061】
また、細胞分離フィルターにおいて、通液しない着脱穴の基部36には、
図12(a)、
図12(b)、
図14(c)および
図17(b)に示すように、閉止用着脱体としてキャップ41を装着することができる。前記キャップ41は、第一通液口11(又は第二通液口12)を塞いでいる形態以外は、前記配管接続部37と同じ形態であればよい。
【0062】
また、
図18(a)の断面図および
図18(b)の斜視図に示すように、前記基部36のガイド39を溝状にしてもよい。溝状のガイド39を用いることで、前記基部36の強度を高めて、前記細胞分離フィルターに液体を導入した際に発生する圧力の変化にも十分対応でき、細胞の回収を好適に行うことができる。
また、前記溝状のガイド39の幅は、前記配管接続部37が前記基部36に固定される位置に到達するまでに、徐々に狭まる形状にしてもよい。或いは、前記溝状のガイド39の溝の高さを、前記配管接続部37が前記基部36に固定される位置に到達するまでに、徐々に低くなる形状にしてもよい。前記突起部38は、取り外し可能な状態で締め付けられるようにして固定され、簡単に脱落することが無く、圧に耐えられるように設計することが好ましい。また、
図18(c)に示すように、固定位置の確認が出来るよう、前記配管接続部37が前記基部36に固定される位置において、前記溝状のガイド39の端部には、前記溝状のガイド39の幅よりも広い幅で、前記溝状のガイド39の溝よりも高い固定穴39bを有し、取り外し可能な状態で前記突起部38が固定されるように設計してもよい。なお、
図18(c)は、基部16の内腔に配管接続部37を嵌合させた状態で、基部16の軸中心方向からの断面図を示す。
【0063】
(実施の形態10)
キンク防止機構を有する配管34の連結部35の別の態様としては、例えば、
図19(a)の断面図および
図19(b)の斜視図に示すように、前記基部36aの外周面と、前記配管接続部37aの内腔面とが嵌合する構成でもよい。この構成では、前記基部36aの外周面に突起部38を設ける。また、前記配管接続部37aの側面には前記突起部38のためのガイド39を設ける。
【0064】
また、前記配管接続部37aに設けるガイド39を多段にしてもよい。多段のガイド39を用いることで、前記配管接続部37aとガイド39との固定強度を高めて、前記細胞分離フィルターに液体を導入した際に発生する圧力の変化にも十分対応でき、細胞の回収を好適に行うことができる。なお、前記多段の形状としては、段を2つ以上設けることで、ガイド39の端部まで差し込んだ突起部38がガイド39の入口まで戻りにくい形状になっていればよく、特に限定はない。
また、
図19(b)の斜視図に示すように、前記配管接続部37のガイド39は、前記配管接続部の内腔面と外周面とが貫通する形状でもよい。
また、前記ガイド39の幅は、前記配管接続部37が前記基部36aに固定される位置に到達するまでに、徐々に狭まるテーパー形状にしてもよい。前記突起部38aは、取り外し可能な状態で締め付けられるようにして固定され、簡単に脱落することが無く、圧に耐えられるように設計することが好ましい。また、固定位置の確認が出来るよう、前記配管接続部37aが前記基部36aに固定される位置において、前記ガイド39にはガイドの幅よりも大きい幅の固定穴を有し、取り外し可能な状態で突起部38aが固定されるように設計してもよい。
【0065】
前記配管接続部37aを回転させる所定の角度としては、180°以下であればよく、キンク防止効果と基部36の強度とのバランスの観点から、90°以下が好ましく、45°以下がより好ましい。
前記所定の角度は、前記配管接続部37aに設けたガイド39の長さで調整することができる。
また、前記配管接続部37aの第一通液口11(又は第二通液口12)を塞ぐことで、閉止用着脱体とすることができる。
【0066】
前記実施の形態10に係る細胞分離フィルターでは、
図20(a)の断面図および
図20(b)の斜視図に示すように、配管接続部37aの内腔面に突起部38a、基部36aの外周面に溝状のガイド39を設けてもよい。
また、前記溝状のガイド39の幅は、前記配管接続部37が前記基部36に固定される位置に到達するまでに、徐々に狭まるテーパー形状にしてもよい。或いは、前記溝状のガイド39の溝の高さは、前記配管接続部37が前記基部36に固定される位置に到達するまでに、徐々に低くなる形状にしてもよい。前記突起部38は、取り外し可能な状態で締め付けられるようにして固定され、簡単に脱落することが無く、圧に耐えられるように設計することが好ましい。また、固定位置の確認が出来るよう、前記配管接続部37が前記基部36に固定される位置において、前記溝状のガイド39の端部には、前記溝状のガイド39の幅よりも広い幅で、前記溝状のガイド39の溝よりも高い固定穴を有し、取り外し可能な状態で前記突起部38が固定されるように設計してもよい。
【0067】
また、前記実施の形態1〜10に係る細胞分離フィルターでは、前記第一通液口及び第二通液口が、さらに液漏れ防止機構を備えてもよい。前記液漏れ防止機構は、前記配管接続部37aを取り外す際に細胞分離フィルター内部または配管34からの液体が流出することを防ぐための機構である。
例えば、
図21(a)の断面図に示すように、第一通液口11を有する配管接続部37aの内腔に液漏れ防止機構42を設ける。
また、液漏れ防止機構42は、
図21(b)の断面図に示すように、前記基部36aの内腔に設けられていてもよい。
さらに、
図21(a)、
図21(b)に示す2箇所の位置に液漏れ防止機構42を併用してもよい。
また、前記液漏れ防止機構42が設けられる配管接続部37aの内腔、基部36aの内腔の位置としては、
図21(a)、
図21(b)に示す以外の位置にあってもよい。
前記液漏れ防止機構としては、ボール式、ディスク式、スイング式などの逆止弁が挙げられる。
【0068】
<細胞濃縮液の製造方法>
本発明の細胞濃縮液の製造方法は、前記細胞分離フィルターの第一通液口11又は第二通液口12から細胞含有液を導入し、ろ材と接触させる接触工程、及び細胞分離フィルターSFの第一通液口11又は第二通液口12から細胞濃縮液を回収する回収工程、を有する。
【0069】
本発明における細胞含有液とは、末梢血、骨髄、臍帯血、月経血、組織抽出物等の有核細胞を含有する体液、あるいはこれらの体液を生理食塩液、カルシウムイオンやマグネシウムイオン等の2価カチオンを含むリンゲル液、細胞培養に使用するRPMI、MEM、IMEM、DMEM等の培地、PBS等のリン酸緩衝液で希釈したもの、あるいは体液から細胞を粗分離したものであっても構わない。また動物種も、哺乳動物であれば特に限定されず、例えばヒト、ウシ、マウス、ラット、ブタ、サル、イヌ、ネコ等が挙げられる。細胞含有液が抗凝固剤を含有する場合も、抗凝固剤の種類は限定されず、例えばヘパリン、低分子ヘパリン、フサン(メチル酸ナフォモスタット)、EDTA、ACD(acid-citrate-dextrose)液、CPD(citrate-phosphate-dextrose)液等のクエン酸抗凝固が挙げられる。使用する目的に影響がなければ、保存条件も限定されない。
【0070】
本発明における有核細胞とは、核を含有する細胞であれば特に限定されず、例えば、単核球、白血球、顆粒球、好中球、好酸球、好塩基球、赤芽球、骨髄芽球、前骨髄球、骨髄球、後骨髄球、リンパ球、単球、マクロファージ、Tリンパ球、Bリンパ球、NK細胞、NK/T細胞、樹状細胞、多核巨細胞、上皮細胞、内皮細胞、間葉系細胞、間葉系幹細胞、造血幹細胞、ES細胞、iPS細胞及び幹細胞等が挙げられる。
本発明における細胞濃縮液とは、有核細胞を含有する液体であって、前記細胞含有液と比較して液体中における有核細胞数が多い、又は細胞密度が高い液体をいう。なお、本発明における幹細胞とは、体液中から分離され、多分化能及び自己複製能を有する細胞をいう。
【0071】
本発明における間葉系幹細胞は、分化誘導因子の添加により骨芽細胞、軟骨細胞、血管内皮細胞、心筋細胞、あるいは、脂肪、歯周組織構成細胞であるセメント芽細胞、歯周靱帯繊維芽細胞等へ分化する細胞である。また、造血幹細胞は、白血球、リンパ球、好中球、好酸球、好塩基球、顆粒球、単球、マクロファージ、赤血球、血小板、巨核球、樹状細胞等の血球系細胞を分化する細胞である。
【0072】
本発明における細胞分離フィルターから細胞濃縮液を回収する工程は、フィルターを通過して得られる有核細胞を多く含有する液体を回収する工程であり、細胞分離フィルターの性質に応じて、細胞濃縮液を回収できればよい。
【0073】
フィルター内に充填されたろ材が、除去目的とする細胞や夾雑物と親和性を持つ場合は、フィルターの流入口から細胞含有液を導入し、ろ材と細胞含有液を接触させる接触工程の後、流出口から細胞濃縮液を回収することができる。フィルターの流出口から細胞濃縮液を回収する際に、回収液をフィルターの流入口から導入して細胞濃縮液を流出口から回収することが好ましい。除去目的の細胞としては、例えば顆粒球、単球、血小板、Bリンパ球、特定のサブクラスを有するリンパ球等が挙げられる。具体的には、顆粒球をフィルターに捕捉して除去し、単核球含有分画を回収する方法が挙げられる。
【0074】
フィルター内に充填されたろ材が、回収目的とする有核細胞と親和性を持つ場合は、フィルターの流入口から細胞含有液を導入して、除去目的とする細胞や夾雑物を流出口より流出させた後、流入口から細胞濃縮液を回収することができる。フィルターの流入口から細胞濃縮液を回収する際に、回収液をフィルターの流出口から導入し細胞濃縮液を流入口から回収することが好ましい。除去目的の細胞としては、例えば赤血球、Tリンパ球、特定のサブクラスを有するリンパ球等が挙げられる。具体的には、不要な細胞を通過させ、フィルターに捕捉された幹細胞を回収する方法が挙げられる。
【0075】
また、回収液をフィルターの流出口から導入して細胞濃縮液を回収する場合には、回収の前に、洗浄液をフィルターの流入口から導入することで、より効率的に、除去目的とする細胞や夾雑物を流出口より流出させることができる。洗浄液は除去目的とする細胞や夾雑物のみを洗い流すことができれば特に限定されず、例えば生理食塩水、リンゲル液、細胞培養に用いる培地、リン酸緩衝液等の一般的な緩衝液、あるいはこれら溶液に血清やタンパク質を添加した溶液が挙げられる。
【0076】
回収液は、フィルター内に捕捉された有核細胞、あるいはフィルター内に残留する単核球を回収する目的で好適に使用される。回収液は特に限定されず、例えば生理食塩水の他、マグネシクムイオンやカルシウムイオン等の2価カチオン、糖類、血清、蛋白質を含む液体、緩衝液、培地、血漿やそれらを含む液体等が挙げられる。フィルターに捕捉された有核細胞の回収率を上げるために、回収液の粘張度を上げても良い。粘張度を上げるために回収液に添加する物質は特に限定されず、例えばアルブミン、フィブリノーゲン、グロブリン、デキストラン、ヒドロキシエチルスターチ、ヒドロキシルセルロース、コラーゲン、ヒアルロン酸、ゼラチン等が挙げられる。
【0077】
細胞含有液及び回収液を通液する速度及びその方法は特に制限されず、例えば重力を利用して通液する方法、ローラークレンメやシリンジポンプを用いて流速を一定にしながら通液する方法、高い圧力をかけて一気に通液する方法等が挙げられる。フィルター内に捕捉された有核細胞を回収する目的には、有核細胞回収効率の点から、回収液を高い圧力をかけて一気に通液する方法が好ましい。シリンジを用いて手動もしくは、ポンプを用いて90mL/min以上での流速で通液する方法が、より多くの有核細胞を回収することができる点で好ましい。
【0078】
本発明の細胞分離フィルターを用いて閉鎖的に細胞を分離する回路の例を
図11に示す。
図11に記載の回路は、細胞含有液を収容する容器20は通液口を備え、通液可能な配管28を通して三方活栓25に接続されている。同様に、プライミング用の液体を収容する容器21も通液口を備え、通液可能な配管29を通して三方活栓25と接続している。三方活栓25と三方活栓26は通液可能な配管30で接続されている。細胞濃縮液を収容する容器22は通液口を備え、通液可能な配管31を通して三方活栓26と接続している。本発明の細胞分離フィルターについては、流入口が三方活栓27と、流出口が三方活栓26と接続している。細胞回収液を収納する容器23は通液口を備え、通液可能な配管32を通して三方活栓27と接続している。同様に、細胞分離フィルターSFを通過したプライミング用の液体および細胞含有液を収容する容器24は通液口を備え、通液可能な配管33を通して、三方活栓27と接続している。
【0079】
図11に記載の回路を用いた具体的な細胞濃縮液の製造手順は次の通りである。
まず初めに、細胞分離フィルター内のエアーを除去する目的、細胞捕捉効率を向上する目的、及び血液流路を確保する目的でプライミングを行う為に、容器21に収納されているプライミング用の液体を、細胞分離フィルターを通過させて、容器24へと流す。この時、三方活栓25は配管29と配管30を導通し、配管28への流れを遮断している。三方活栓26は配管30と細胞分離フィルターを導通し、配管31への流れを遮断している。さらに三方活栓27は、細胞分離フィルターと配管33を導通し、配管32への流れを遮断している。
【0080】
次に、細胞含有液を細胞分離フィルター内のろ材に接触させるために、容器20に収容されている細胞含有液を、細胞分離フィルターに通過させて、容器24へと流す。この時、三方活栓25は配管28と配管30を導通し、配管29への流れを遮断している。三方活栓26は配管30と細胞分離フィルターを導通し、配管31への流れを遮断している。さらに三方活栓27は、細胞分離フィルターと配管33を導通し、配管32への流れを遮断している。
【0081】
最後に、細胞濃縮液を回収するために、容器23に収容されている細胞回収液を細胞分離フィルターに通過させて、容器22へと流す。この時、三方活栓27は細胞分離フィルターと配管32を導通し、配管33への流れを遮断している。さらに三方活栓26は、細胞分離フィルターと配管31を導通し、配管30への流れを遮断している。
回路は、液の流れを制御するために、三方活栓、ローラークレンメ、クランプ等を備えていることが好ましい。
【0082】
細胞分離フィルターに細胞含有液を導入し、ろ材と接触させる接触工程を、細胞分離フィルターの切り換え機構によりクロスフロー方式にした状態で行うことにより、細胞含有液の流れが、ろ材表面への粒子の堆積や目詰まりによる流動抵抗の上昇を緩やかにし、ろ材の全面を使って大量の細胞含有液を濾過できる。
また、前記接触工程の後に行う細胞濃縮液を回収する回収工程を、細胞分離フィルターの切り換え機構によりデッドエンドフロー方式にした状態で行うことにより、回収液の流れの方向がろ材による濾過方向と同じであるため細胞回収率を向上できる。