(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された方法は、集光レンズ又はキャピラリセルを移動させる作業が必要であり、煩雑である。また、分析される散乱光の波長がレーザビームの波長と同じであるため、迷光の影響を受けやすい。さらに、キャピラリセルの断面方向におけるレーザビームの位置しか調整できない。
【0007】
特許文献2に記載された方法は、レーザ光の照射位置の調整のために、フローセルに粒子を流す必要がある。しかし、調整のために用いる粒子は、フローセルに残存するおそれがある。また、特許文献2に記載された発明は、特許文献1に記載された発明と同様に煩雑であり、迷光の影響を受けやすく、フローセルの位置しか調整できない。
【0008】
特許文献3に記載された方法においても、調整のために用いる粒子は、フローセルに残存するおそれがある。また、粒子で生じた散乱光の波長は、ビーム光と波長が同じであるため、迷光と区別がつかない。さらに、ある粒子で生じた散乱光は、他の粒子で再度散乱されることが繰り返されるため、散乱光の形状は不明瞭になる。またさらに、散乱光は、粒子がレーザ光を横切った時のみに生じるため、高濃度の粒子をフローセルに流し続けなければならない。
【0009】
本発明者らは、鋭意研究の末、従来技術の上記の課題を見出した。そこで、本発明は、フローセルを含む光学系の検査が容易な粒子検出装置及び粒子検出装置の検査方法を提供可能することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の態様によれば、(a)検査光を発する検査光源と、(b)検査光を照射される、流体で満たされるフローセルと、(c)フローセル内の流体を横切る検査光によって生じた、検査光とは波長が異なる反応光の形状を撮像する撮像装置と、を備える、粒子検出装置が提供される。
【0011】
上記の粒子検出装置において、反応光がラマン散乱光であってもよい。フローセルを満たす流体が水を含む液体であってもよい。
【0012】
上記の粒子検出装置において、反応光が蛍光であってもよい。フローセルを満たす流体が蛍光色素を含む液体であってもよい。
【0013】
上記の粒子検出装置が、フローセルの位置を第1焦点とする楕円鏡をさらに備え、撮像装置が、楕円鏡の頂点に設けられた孔を介して、反応光を撮像してもよい。
【0014】
上記の粒子検出装置において、フローセルが、反応光を反射する半球面反射膜と、半球面反射膜で反射された反応光が透過する半球面レンズ部と、を備えていてもよい。
【0015】
また、本発明の態様によれば、(a)粒子検出装置が備える検査光源から検査光を発することと、(b)粒子検出装置の流体で満たされるフローセル内の流体を横切る検査光によって生じた、検査光とは波長が異なる反応光の形状を撮像することと、を備える、粒子検出装置の検査方法が提供される。
【0016】
上記の粒子検出装置の検査方法において、反応光がラマン散乱光であってもよい。フローセルを満たす流体が水を含む液体であってもよい。
【0017】
上記の粒子検出装置の検査方法において、反応光が蛍光であってもよい。フローセルを満たす流体が蛍光色素を含む液体であってもよい。
【0018】
上記の粒子検出装置の検査方法が、所定の形状と、撮像装置が撮像した反応光の形状と、を比較することをさらに備えていてもよい。
【0019】
上記の粒子検出装置の検査方法が、撮像装置が撮像した反応光の形状に基づき、粒子検出装置の光学系を調整することをさらに備えていてもよい。
【0020】
上記の粒子検出装置の検査方法において、フローセルの位置を第1焦点とする楕円鏡の頂点に設けられた孔を介して、反応光を撮像してもよい。
【0021】
上記の粒子検出装置の検査方法において、フローセルが、検査光を照射された粒子で生じた反応光を反射する半球面反射膜と、半球面反射膜で反射された反応光が透過する半球面レンズ部と、を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、フローセルを含む光学系の検査が容易な粒子検出装置及び粒子検出装置の検査方法を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る粒子検出装置の模式図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態に係る基準マークの模式図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態に係る反応光(ラマン散乱光)の形状の模式図である。
【
図4】本発明の第1の実施の形態に係る反応光(ラマン散乱光)の形状の模式図である。
【
図5】本発明の第1の実施の形態に係る反応光(ラマン散乱光)の形状の模式図である。
【
図6】本発明の第1の実施の形態に係る反応光(ラマン散乱光)の形状の模式図である。
【
図7】本発明の第1の実施の形態に係る反応光(ラマン散乱光)の形状の模式図である。
【
図8】本発明の第1の実施の形態に係る反応光(ラマン散乱光)の形状の模式図である。
【
図9】本発明の第1の実施の形態に係る反応光(ラマン散乱光)の形状の模式図である。
【
図10】本発明の第1の実施の形態に係る反応光(ラマン散乱光)の形状の模式図である。
【
図11】本発明の第1の実施の形態に係る反応光(ラマン散乱光)の形状の模式図である。
【
図12】本発明の第3の実施の形態に係る粒子検出装置の模式図である。
【
図13】本発明の第3の実施の形態に係るフローセルをなす球状部材の模式図である。
【
図14】本発明の第3の実施の形態に係るフローセルの側面図である。
【
図15】本発明の第3の実施の形態に係るフローセルの断面図である。
【
図16】本発明の第3の実施の形態に係る反応光(ラマン散乱光)の形状の模式図である。
【
図17】本発明の第3の実施の形態に係る反応光(ラマン散乱光)の形状の模式図である。
【
図18】本発明の第3の実施の形態に係る反応光(ラマン散乱光)の形状の模式図である。
【
図19】本発明の第3の実施の形態に係る反応光(ラマン散乱光)の形状の模式図である。
【
図20】本発明の第3の実施の形態に係る反応光(ラマン散乱光)の形状の模式図である。
【
図21】本発明の第3の実施の形態に係る反応光(ラマン散乱光)の形状の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0025】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係る粒子検出装置は、
図1に示すように、検査光を発する検査光源30と、検査光を照射される、流体で満たされるフローセル40と、フローセル40内の流体を横切る検査光によって生じた、検査光とは波長が異なる反応光の形状を撮像する撮像装置90と、を備える。ここで、流体とは、例えば液体である。
【0026】
粒子検出装置が検出対象とする粒子は、微生物等を含む生体物質、細胞、化学物質、ごみ、ちり、及び埃等のダスト等を含む。微生物の例としては細菌及び真菌が含まれる。細菌の例としては、グラム陰性菌及びグラム陽性菌が挙げられる。グラム陰性菌の例としては、大腸菌が挙げられる。グラム陽性菌の例としては、表皮ブドウ球菌、枯草菌、マイクロコッカス、及びコリネバクテリウムが挙げられる。真菌の例としては、黒カビ等のアスペルギルスが挙げられる。ただし、微生物はこれらに限定されない。
【0027】
フローセル40には、検査対象粒子を含む流体が流れる貫通孔44が設けられている。例えば、フローセル40は直方体状であり、貫通孔44は直方体状である。フローセル40は、例えば石英ガラスからなる。
【0028】
フローセル40を流れる流体に、微生物等の蛍光性粒子が含まれていると、粒子は励起光を照射されて蛍光を発する。例えば、微生物に含まれるリボフラビン(riboflavin)、フラビンヌクレオチド(FMN)、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NAD(P)H)、ピリドキサミン(pyridoxamine)、ピリドキサールリン酸(pyridoxal−5’−phosphate)、ピリドキシン(pyridoxine)、トリプトファン(tryptophan)、チロシン(tyrosine)、及びフェニルアラニン(phenylalanine)等が、蛍光を発する。
【0029】
フローセル40内部を流れる蛍光性粒子を検出するための検査光としての励起光は、例えば、フローセル40の中心に焦点を結ぶよう、検査光源30から照射される。検査光源30としては、発光ダイオード(LED)及びレーザが使用可能である。検査光の波長は、例えば250ないし550nmである。検査光は、可視光であっても、紫外光であってもよい。検査光が可視光である場合、検査光の波長は、例えば400ないし550nmの範囲内であり、例えば405nmである。検査光が紫外光である場合、検査光の波長は、例えば300ないし380nmの範囲内であり、例えば340nmである。ただし、検査光の波長は、これらに限定されない。
【0030】
検査領域としての貫通孔44内部で励起光を照射された蛍光性粒子は蛍光を発する。また、励起光を照射された蛍光性粒子及び非蛍光性粒子において、例えばミー散乱による散乱光が生じる。ミー散乱による散乱光の波長は、検査光の波長と同じである。検査光を照射された粒子において生じた蛍光及び散乱光は、粒子から全方位的に発せられる。
【0031】
フローセル40の表面から出射した蛍光及び散乱光は、レンズ55で集光され、レンズ55の焦点に集光される。レンズ55とレンズ55の焦点の間には、波長選択的反射鏡70A、70Bが配置されている。
【0032】
波長選択的反射鏡70Aは、例えば、波長選択的に、ミー散乱による散乱光を反射する。波長選択的反射鏡70Aで反射された散乱光の焦点は、レンズ55の焦点と光学的に等価である。波長選択的反射鏡70Aで反射された散乱光の焦点に、散乱光を検出するための光検出器60Aが配置される。波長選択的反射鏡70Aと光検出器60Aの間に、誘電体多層膜等を含むバンドパスフィルタ、及びロングパスフィルタ等が配置されてもよい。
【0033】
波長選択的反射鏡70Bは、例えば、波長選択的に、第1の波長帯域の蛍光を反射し、第2の波長帯域の蛍光を透過させる。波長選択的反射鏡70Bで反射された蛍光の焦点は、レンズ55の焦点と光学的に等価である。波長選択的反射鏡70Bで反射された第1の波長帯域の蛍光の焦点に、第1の波長帯域の蛍光を検出するための光検出器60Bが配置される。波長選択的反射鏡70Bで透過した第2の波長帯域の蛍光の焦点に、第2の波長帯域の蛍光を検出するための光検出器60Cが配置される。波長選択的反射鏡70Bと光検出器60Bの間、及び波長選択的反射鏡70Bと光検出器60Cの間に、誘電体多層膜等を含むバンドパスフィルタ、及びロングパスフィルタ等が配置されてもよい。
【0034】
波長選択的反射鏡70A、70Bとしては、ダイクロイックミラー、干渉膜フィルタ、及び光学フィルタ等が使用可能である。
【0035】
第1の実施の形態に係る粒子検出装置において、光学系、例えば、検査光源30の位置、フローセルに対する検査光の入射位置及び入射角度を含む検査光の光路、検査光の焦点、並びにフローセル40の位置の少なくとも一つが正確であるか否かを検査する際には、フローセル40の貫通孔44に任意の液体を流すか、任意の液体を充填する。任意の液体とは、例えば水を含む液体である。水を含む液体は、水のみからなっていてもよい。水を含む液体は、粒子を含んでいなくてもよい。エタノール等も、任意の液体として使用可能である。任意の液体に検査光を照射すると、液体に反応光としてラマン散乱光が生じる。ラマン散乱光の波長は、検査光の波長よりも長い。ラマン散乱光は、任意の液体を検査光が横切った位置に生じる。したがって、ラマン散乱光の形状は、液体を横切る検査光の光路と一致する。ラマン散乱光は、液体がないところには生じない。
【0036】
第1の実施の形態に係る粒子検出装置は、例えば、ラマン散乱光を反射する部分反射鏡71をさらに備える。部分反射鏡71で反射されたラマン散乱光の焦点は、レンズ55の焦点と光学的に等価である。ラマン散乱光の焦点に撮像装置90が配置される。部分反射鏡71と撮像装置90の間には、検査光を透過させず、ラマン散乱光を波長選択的に透過させるバンドパスフィルタあるいはロングパスフィルタ等の波長フィルタ80が配置されていてもよい。ただし、部分反射鏡71が、ラマン散乱光を波長選択的に反射する場合は、波長フィルタ80は無くてもよい。
【0037】
撮像装置90は、検査光の進行方向、及びフローセル40の貫通孔44の延伸方向に対して垂直な方向から、ラマン散乱光を撮像し、画像データを出力する。
【0038】
撮像装置90は、撮像した画像に
図2に示す所定の形状の基準マークが写るよう設定されている。基準マークは、例えば十字型である。
図1に示すフローセル40の貫通孔44及び検査光の焦点が正確な位置にある場合、
図2に示す十字型の交点と、検査光の焦点と、が、一致するよう、基準マークは設定される。また、フローセル40の貫通孔44及び検査光の焦点が正確な位置にある場合、
図2に示す十字型の横線と、検査光の光路と、が、重なるよう、基準マークは設定される。そのため、
図3に示すように、十字型の横線と重なり、中心が十字型の交点と一致する線分形状のラマン散乱光が、撮像装置90で撮像される。なお、
図3においては、模式的にフローセル40の貫通孔44を示しているが、ラマン散乱光のみが撮像されればよい。
【0039】
検査光の光路が、本来の光路よりも垂直方向上側に平行にずれている場合、
図4に示すように、十字型の横線よりも上の位置に、ラマン散乱光が、撮像装置90で撮像される。検査光の光路が、本来の光路よりも垂直方向下側に平行にずれている場合、
図5に示すように、十字型の横線よりも下の位置に、ラマン散乱光が、撮像装置90で撮像される。
【0040】
ラマン散乱光が垂直方向にずれて撮像された場合、ずれが無くなるよう、例えば検査光源30の位置を垂直方向に移動させる。検査光源30の移動量は、例えば、撮像装置90のレンズの倍率や、撮像装置90で撮像された画像における十字型の横線と、ラマン散乱光と、の垂直方向におけるずれから算出することができる。
【0041】
検査光の光路が、本来の光路よりも垂直方向上側に傾いている場合、
図6に示すように、十字型の横線に対して上方斜めのラマン散乱光が、撮像装置90で撮像される。検査光の光路が、本来の光路よりも垂直方向下側に傾いている場合、
図7に示すように、十字型の横線に対して下方斜めのラマン散乱光が、撮像装置90で撮像される。
【0042】
傾斜したラマン散乱光が撮像された場合、ラマン散乱光の傾斜が無くなるよう、例えば検査光源30を傾斜させる。検査光源30の傾斜量は、例えば、線分状のラマン散乱光の両端の位置のずれや、十字型の横線に対する線分状のラマン散乱光の角度から算出することができる。
【0043】
フローセル40の貫通孔44が、検査光の進行方向と同じ方向、あるは検査光の進行方向と反対方向にずれていた場合、
図8に示すように、十字型の交点と、線分状のラマン散乱光の中心と、がずれた画像が、撮像装置90で撮像される。このような画像が撮像された場合、ずれがなくなるよう、フローセル40の貫通孔44を移動させる。フローセル40の貫通孔44の移動量は、例えば、撮像装置90で撮像された画像における十字型の交点と、線分状のラマン散乱光の中心と、のずれから算出することができる。
【0044】
フローセル40の貫通孔44が、傾いていた場合、
図9に示すように、検査光の入射点及び出射点に対応する線分状のラマン散乱光の両端が傾いたり、線分状のラマン散乱光の長さが、貫通孔44の延伸方向に対して垂直方向における幅より長くなったりする。このような画像が撮像された場合、例えば、線分状のラマン散乱光の両端の傾きがなくなるよう、あるいは線分状のラマン散乱光の長さが貫通孔44の幅と同じになるよう、フローセル40の貫通孔44の傾きを補正する。
【0045】
なお、検査光の焦点においては、
図10に示すように、検査光が最も細く絞られ、強いラマン散乱光が発生する。したがって、撮像装置90で撮像された画像における十字型の交点と、ラマン散乱光の形状が最も細く絞られる点、あるいは、ラマン散乱光の強度が最も強い点と、を比較して、例えば検査光源30の位置が正しいか判定してもよい。撮像装置90で撮像された画像における十字型の交点と、ラマン散乱光の形状が最も細く絞られる点、あるいは、ラマン散乱光の強度が最も強い点と、がずれている場合、ずれがなくなるよう、検査光源30等を移動させる。
【0046】
また、検査光の焦点がフローセル40の貫通孔44の中心軸上にあるよう設計されている場合、ラマン散乱光は、検査光の焦点を中心に左右対称的に発生する。これに対し、フローセル40が検査光の進行方向にずれている場合、
図11に示すように、ラマン散乱光は、検査光の焦点に対して左右非対称に現れる。この場合、ラマン散乱光が、検査光の焦点を中心に左右対称的に発生するよう、フローセル40を移動させる。
【0047】
以上説明した第1の実施の形態に係る粒子検出装置によれば、ラマン散乱光の形状を撮像することにより、光学系、例えば、
図1に示す検査光源30の位置、フローセルに対する検査光の入射位置及び入射角度を含む検査光の光路、検査光の焦点、並びにフローセル40の位置の少なくとも一つを把握することが可能である。また、把握した検査光源30の位置、フローセル40に対する検査光の入射位置及び入射角度を含む検査光の光路、検査光の焦点、並びにフローセル40の位置の少なくとも一つに基づいて、検査光の光学系や、フローセル40の位置及び角度の調整をすることが可能である。
【0048】
また、第1の実施の形態に係る粒子検出装置によれば、ラマン散乱光の形状を撮像することにより、例えば、検査光源30の位置、フローセル40に対する検査光の入射位置及び入射角度を含む検査光の光路、検査光の焦点、並びにフローセル40の位置の任意の複数を同時に把握することが可能である。
【0049】
さらに、第1の実施の形態に係る粒子検出装置によれば、粒子検出装置の光学系の検査の際に、フローセル40に粒子を含む流体を流す必要がない。そのため、検査のために用いる粒子がフローセル40を含む流路に残存することがない。また、検査光、及び検査光と波長が同じ散乱光とは波長が異なるラマン散乱光を波長選択的に観察することにより、検査光から生じた迷光の影響を抑制することが可能である。
【0050】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態に係る粒子検出装置では、光学系を検査する際に、
図1に示すフローセル40の貫通孔44に任意の液体を流すか、任意の液体を充填し、ラマン散乱光を撮像する例を説明した。これに対し、第2の実施の形態では、光学系を検査する際、フローセル40の貫通孔44に、検査光を励起光とする蛍光色素を含む液体を流すか、蛍光色素を含む液体を満たす。
【0051】
蛍光色素としては、検査光を励起光として蛍光を発する物質であればよく、リボフラビンや蛍光染料等が使用可能である。蛍光色素を含む液体は、粒子を含んでいなくてもよい。蛍光色素を含む液体に検査光を照射すると、液体に反応光として蛍光が生じる。蛍光は、蛍光色素を含む液体を検査光が横切った位置に生じる。したがって、蛍光の形状は、液体を横切る検査光の光路と一致する。蛍光は、蛍光色素を含む液体がないところには生じない。
【0052】
第2の実施の形態において、
図1に示す部分反射鏡71は蛍光を反射する。部分反射鏡71と撮像装置90の間には、蛍光を波長選択的に透過するバンドパスフィルタあるいはロングパスフィルタ等の波長フィルタ80が配置されていてもよい。ただし、部分反射鏡71が、蛍光を波長選択的に反射する場合は、波長フィルタ80は無くてもよい。
【0053】
第2の実施の形態に係る粒子検出装置によれば、撮像装置90で撮像される蛍光の形状から、光学系、例えば、
図1に示す検査光源30の位置、フローセルに対する検査光の入射位置及び入射角度を含む検査光の光路、検査光の焦点、並びにフローセル40の位置の少なくとも一つを把握することが可能である。
【0054】
(第3の実施の形態)
図12に示す第3の実施の形態に係る粒子検出装置において、フローセル40は、反応光を反射する半球面反射膜42と、半球面反射膜42で反射された反応光が透過する半球面レンズ部43と、を備える。また、第3の実施の形態に係る粒子検出装置は、フローセル40の位置を第1焦点とする楕円鏡50をさらに備え、撮像装置90が、楕円鏡50の頂点に設けられた孔を介して、反応光の形状を撮像する。光検出器60A、60B、60Cは、楕円鏡50の第2焦点に配置される。
【0055】
フローセル40は、
図13に示すように、検査対象粒子を含む流体が流れる貫通孔44が設けられた透明な球体部材41を備える。透明な球体部材41の表面及び貫通孔44の内壁は、例えば、研磨されている。貫通孔44は、例えば球体部材41の中心を通る。貫通孔44の延伸方向に対する貫通孔44の断面形状は、例えば円である。貫通孔44の断面形状を円とし、内壁に角がないようにすると、貫通孔44の内部に気泡が滞留したり、汚れが付着したりすることを抑制することが可能となる。貫通孔44の延伸方向は、検査光の進行方向に対して垂直、かつ楕円鏡50の長軸方向に対して垂直である。貫通孔44の直径は、これに限定されないが、例えば1mm未満である。球体部材41は、例えば石英ガラスからなる。
【0056】
図14及び
図15に示すように、半球面反射膜42は、球体部材41の一部、例えば貫通孔44を境に約半分を覆っている。半球面反射膜42は、例えば蒸着膜であり、金属等からなる。あるいは、半球面反射膜42は、誘電体多層膜であってもよい。球体部材41の半球面反射膜42で覆われていない部分が、半球面レンズ部43として機能する。半球面反射膜42と、半球面レンズ部43と、は、対向している。
【0057】
図12に示すように、フローセル40は、半球面レンズ部43の凸部及び半球面反射膜42の凹部が楕円鏡50と対向するように配置される。また、フローセル40は、貫通孔44が通るフローセル40の中心が、楕円鏡50の第1焦点と一致するよう、配置される。
【0058】
フローセル40内部を流れる蛍光性粒子を検出するための検査光としての励起光は、例えば、球状のフローセル40の中心に焦点を結ぶよう、検査光源30から照射される。
【0059】
検査光を照射された粒子で生じた蛍光及び散乱光であって、
図15に示すフローセル40の半球面レンズ部43の方に進行した蛍光及び散乱光は、半球面レンズ部43の表面から出射し、楕円鏡50に到達する。検査光の焦点が球体部材41の中心と一致する場合、検査光の焦点で生じた蛍光及び散乱光は、半球面レンズ部43の表面に対してほぼ垂直に入射する。そのため、蛍光及び散乱光は、半球面レンズ部43の表面でほぼ屈折することなく、半球面レンズ部43の表面から出射する。
【0060】
フローセル40の半球面反射膜42の方に進行した蛍光及び散乱光は、半球面反射膜42で反射され、半球面レンズ部43の表面から出射し、楕円鏡50に到達する。検査光の焦点が球体部材41の中心と一致する場合、検査光の焦点で生じた蛍光及び散乱光は、半球面反射膜42に対してほぼ垂直に入射する。そのため、蛍光及び散乱光は、半球面反射膜42でほぼ垂直に反射され、球体部材41のほぼ中心を経て、半球面レンズ部43の表面でほぼ屈折することなく、半球面レンズ部43の表面から出射する。
【0061】
図12に示す楕円鏡50の凹面は、半球面反射膜42の凹面、及び半球面レンズ部43の凸面と対向している。半球面レンズ部43の表面から出射した蛍光及び散乱光は、楕円鏡50で反射され、フローセル40の後方の楕円鏡50の第2焦点に集光される。例えば、フローセル40の半球面反射膜42と比較して楕円鏡を十分に大きくすることによって、楕円鏡50による蛍光及び散乱光の集光効率が向上する。楕円鏡50の幾何学的な第1焦点及び第2焦点の間に、波長選択的反射鏡70A、70Bが配置されている。
【0062】
波長選択的反射鏡70Aは、例えば、波長選択的に、ミー散乱による散乱光を反射する。波長選択的反射鏡70Aで反射された散乱光の焦点は、楕円鏡50の幾何学的な第2焦点と光学的に等価である。波長選択的反射鏡70Aで反射された散乱光の焦点に、散乱光を検出するための光検出器60Aが配置される。波長選択的反射鏡70Aと光検出器60Aの間に、誘電体多層膜等を含むバンドパスフィルタ、及びロングパスフィルタ等が配置されてもよい。
【0063】
波長選択的反射鏡70Bは、例えば、波長選択的に、第1の波長帯域の蛍光を反射し、第2の波長帯域の蛍光を透過させる。波長選択的反射鏡70Bで反射された蛍光の焦点は、楕円鏡50の幾何学的な第2焦点と光学的に等価である。波長選択的反射鏡70Bで反射された第1の波長帯域の蛍光の焦点に、第1の波長帯域の蛍光を検出するための光検出器60Bが配置される。波長選択的反射鏡70Bで透過した第2の波長帯域の蛍光の焦点に、第2の波長帯域の蛍光を検出するための光検出器60Cが配置される。波長選択的反射鏡70Bと光検出器60Bの間、及び波長選択的反射鏡70Bと光検出器60Cの間に、誘電体多層膜等を含むバンドパスフィルタ、及びロングパスフィルタ等が配置されてもよい。
【0064】
波長選択的反射鏡70A、70Bとしては、ダイクロイックミラー、干渉膜フィルタ、及び光学フィルタ等が使用可能である。なお、波長選択的反射鏡70A、70Bのそれぞれの設計入射角度が45度である場合、楕円鏡50の第1及び第2焦点の間隔を、波長選択的反射鏡70A、70Bに対する散乱光又は蛍光の入射角が35度以上55度以下になるように設定すると、干渉膜フィルタの分光効率が高くなる傾向にあるが、これに限定されない。また、設計入射角度が0度の光学系がバンドパスフィルタ及びロングパスフィルタを含む場合、バンドパスフィルタ及びロングパスフィルタに対する散乱光又は蛍光の入射角が10度以下になるように設定するとよい。
【0065】
以上説明した第3の実施の形態に係る粒子検出装置によれば、当初、楕円鏡50と反対方向に進行した蛍光及び散乱光を半球面反射膜42で楕円鏡50の方向に反射し、光検出器60A、60B、60Cの位置に集光することが可能となる。そのため、フローセル40内において、当初、粒子から全方位的に発せられた蛍光及び散乱光を、レンズ集光系と同等以上の効率で集光し、検出することが可能となる。
【0066】
また、第3の実施の形態に係る粒子検出装置においては、フローセル40に半球面反射膜42を設けることにより、半球面反射膜42を小さくすることが可能となる。そのため、半球面反射膜42の影の面積を小さくすることが可能となり、蛍光及び散乱光の集光効率が向上し、高価な高開口数レンズを含む複雑な光学系を用いなくとも、微弱な蛍光や散乱光を効率よく検出することが可能となる。また、第3の実施の形態に係る粒子検出装置は、複雑な光学系を必要としないため、製造や調節が容易である。
【0067】
第3の実施の形態に係る粒子検出装置において、光学系、例えば、検査光源30の位置、フローセルに対する検査光の入射位置及び入射角度を含む検査光の光路、検査光の焦点、並びにフローセル40の位置の少なくとも一つが正確であるか否かを検査する際には、第1の実施の形態と同様に、フローセル40の貫通孔44に任意の液体を流すか、任意の液体を充填する。
【0068】
撮像装置90は、検査光の進行方向、及びフローセル40の貫通孔44の延伸方向に対して垂直である、楕円鏡50の長軸方向から、楕円鏡50の頂点に設けられた孔を介して、ラマン散乱光を撮像し、画像データを出力する。楕円鏡50の頂点に設けられた孔は、例えば、楕円鏡50の第2焦点から見て、フローセル40の影になる部分に設けられる。
【0069】
フローセル40の貫通孔44の断面形状が円である場合、
図16に示すように、検査光は、貫通孔44の中心を通るように設定される。この場合、
図17に示すように、ラマン散乱光の形状の長さは、貫通孔44の直径とほぼ等しくなる。これに対し、
図18に示すように、検査光の光路が貫通孔44の中心からずれている場合、
図19に示すように、ラマン散乱光の形状の長さは、貫通孔44の直径よりも短くなる。
【0070】
貫通孔44の直径よりも短い形状のラマン散乱光が撮像された場合、ラマン散乱光の形状の長さが貫通孔44の直径とほぼ等しくなるよう、検査光源30を含む光学系あるいはフローセル40の位置を移動させる。移動量は、例えば、撮像装置90のレンズの倍率や、貫通孔44の直径に対するラマン散乱光の形状の長さの比に基づいて算出することができる。
【0071】
また、検査光が球状のフローセル40の中心からずれている場合、
図20に示すように、半球面反射膜42を介さずに半球面レンズ部43の表面から出射するラマン散乱光の形状と、半球面反射膜42を介して半球面レンズ部43の表面から出射するラマン散乱光の反射光の形状と、は、
図21に示すように、ずれて現れる。この場合、半球面反射膜42を介さずに半球面レンズ部43の表面から出射するラマン散乱光の形状と、半球面反射膜42を介して半球面レンズ部43の表面から出射するラマン散乱光の反射光の形状と、が、重なるように、検査光源30を含む光学系あるいはフローセル40の位置を移動させる。
【0072】
また、第1の実施の形態と同様に、検査光の光路が、本来の光路よりも平行あるいは斜めにずれている場合、あるいはフローセル40の位置がずれている場合も、ラマン散乱光の形状からずれを把握可能である。
【0073】
(その他の実施の形態)
上記のように本発明を実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす記述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかになるはずである。例えば、
図1に示すフローセル40の形状が球であり、フローセル40の貫通孔44の断面形状が円であってもよい。また、第3の実施の形態に示す粒子検出装置において、第2の実施の形態と同様に、蛍光色素を含む液体をフローセル40に流して、粒子検出装置を検査してもよい。このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を包含するということを理解すべきである。