特許第6722070号(P6722070)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6722070DC/DCコンバータおよびその制御回路、電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6722070
(24)【登録日】2020年6月23日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】DC/DCコンバータおよびその制御回路、電子機器
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20200706BHJP
【FI】
   H02M3/155 C
【請求項の数】16
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-182012(P2016-182012)
(22)【出願日】2016年9月16日
(65)【公開番号】特開2018-46715(P2018-46715A)
(43)【公開日】2018年3月22日
【審査請求日】2019年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】司 武人
(72)【発明者】
【氏名】福森 啓貴
【審査官】 麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−230073(JP,A)
【文献】 特開2013−192444(JP,A)
【文献】 特開2010−283950(JP,A)
【文献】 特開2011−71174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇圧または昇降圧型のDC/DCコンバータの制御回路であって、
前記DC/DCコンバータの入力電圧が供給される入力端子と、
インダクタの一端が接続されるスイッチング端子と、
前記スイッチング端子と接地端子の間に設けられる第1トランジスタと、
前記スイッチング端子と出力端子の間に設けられる第2トランジスタと、
前記DC/DCコンバータの出力電圧が目標電圧に近づくようにパルス信号を生成するパルス変調器と、
前記パルス信号にもとづいて前記第1トランジスタおよび前記第2トランジスタを駆動するドライバと、
前記第1トランジスタおよび前記第2トランジスタが両方オフとなる期間中に、前記入力端子の電位と前記第1トランジスタ、前記第2トランジスタおよびインダクタの間を接続する配線上の検出点の電位にもとづいて、リーク状態を検出するリーク検出回路と、
を備えることを特徴とする制御回路。
【請求項2】
前記検出点は、前記第1トランジスタ、前記第2トランジスタおよび前記インダクタの分岐点よりも前記第2トランジスタ側もしくは前記第1トランジスタ側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の制御回路。
【請求項3】
前記リーク検出回路は、前記入力端子の電圧と前記検出点の検出電圧の電位差が所定のしきい値を超えると、前記リーク状態と判定することを特徴とする請求項1または2に記載の制御回路。
【請求項4】
前記リーク検出回路は、
電圧コンパレータと、
前記電圧コンパレータの出力に応じて、前記リーク状態を検出する判定部と、
を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の制御回路。
【請求項5】
前記パルス変調器は、軽負荷状態において電流不連続モードで動作し、前記リーク検出回路は、前記第2トランジスタがターンオフしてから、前記第1トランジスタがターンオンするまでの期間に設定されるリーク検出区間においてリーク状態を検出することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の制御回路。
【請求項6】
前記パルス変調器は、PWM(Pulse Width Modulation)モードとPFM(Pulse Frequency Modulation)モードが切り替え可能であり、
前記リーク検出回路は、前記PFMモードにおいてリーク状態を検出することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の制御回路。
【請求項7】
前記リーク状態が検出されると、前記第1トランジスタおよび前記第2トランジスタのスイッチングを停止するロジック回路をさらに備えることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の制御回路。
【請求項8】
前記ロジック回路は、複数サイクル連続して前記リーク状態が検出されると、前記第1トランジスタおよび前記第2トランジスタのスイッチングを停止することを特徴とする請求項7に記載の制御回路。
【請求項9】
前記第1トランジスタはNチャンネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であり、前記第2トランジスタはPチャンネルMOSFETであることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の制御回路。
【請求項10】
ひとつの半導体基板に一体集積化されることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の制御回路。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の制御回路を備えることを特徴とするDC/DCコンバータ。
【請求項12】
昇圧または昇降圧型のDC/DCコンバータであって、
一端に入力電圧を受けるインダクタと、
前記インダクタの他端と接地ラインの間に設けられる第1トランジスタと、
前記インダクタの他端と出力ラインの間に設けられる第2トランジスタと、
前記出力ラインに生ずる出力電圧が目標電圧に近づくようにパルス信号を生成するパルス変調器と、
前記パルス信号に応じて前記第1トランジスタおよび前記第2トランジスタを駆動するドライバと、
前記第1トランジスタおよび前記第2トランジスタが両方オフとなる期間中に、前記入力電圧と前記第1トランジスタ、前記第2トランジスタ、前記インダクタの間を接続する配線上の検出点の検出電圧にもとづいて、リーク状態を検出するリーク検出回路と、
を備えることを特徴とするDC/DCコンバータ。
【請求項13】
前記検出点は、前記配線上の前記インダクタへの分岐点よりも前記第2トランジスタ側に設けられていることを特徴とする請求項12に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項14】
前記リーク検出回路は、前記入力電圧と前記検出電圧の電位差が所定のしきい値を超えると、前記リーク状態と判定することを特徴とする請求項12または13に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項15】
前記リーク検出回路は、
電圧コンパレータと、
前記電圧コンパレータの出力に応じて、前記リーク状態を検出する判定部と、
を含むことを特徴とする請求項12から14のいずれかに記載のDC/DCコンバータ。
【請求項16】
請求項11から15のいずれかに記載のDC/DCコンバータを備えることを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DC/DCコンバータ(スイッチングレギュレータ)に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の内部には、要求する電源電圧が異なるさまざまな回路部品が用いられる。これらの回路部品に適切な電源電圧を供給するために、DC/DCコンバータが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第08/133040号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
DC/DCコンバータは、スイッチング素子としてパワートランジスタを有する。パワートランジスタにリークが生じていると、無駄な電流が消費され、あるいは発熱の要因となるため好ましくない。
【0005】
本発明はかかる状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、リーク電流を検出可能なDC/DCコンバータの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、昇圧または昇降圧型のDC/DCコンバータの制御回路に関する。制御回路は、DC/DCコンバータの入力電圧が供給される入力端子と、インダクタの一端が接続されるスイッチング端子と、スイッチング端子と接地端子の間に設けられる第1トランジスタと、スイッチング端子と出力端子の間に設けられる第2トランジスタと、DC/DCコンバータの出力電圧が目標電圧に近づくようにパルス信号を生成するパルス変調器と、パルス信号にもとづいて第1トランジスタおよび第2トランジスタを駆動するドライバと、第1トランジスタおよび第2トランジスタが両方オフとなる期間中に、入力端子の電位と第1トランジスタ、第2トランジスタおよびインダクタの間を接続する配線上の検出点の電位にもとづいて、リーク状態を検出するリーク検出回路と、を備える。
【0007】
この態様によれば、パワートランジスタのリークを検出できる。
【0008】
検出点は、インダクタ、第1トランジスタ、第2トランジスタの分岐点よりも第2トランジスタ側もしくは第1トランジスタ側に設けられていてもよい。
【0009】
リーク検出回路は、入力端子の電圧と検出点の検出電圧の電位差が所定のしきい値を超えると、リーク状態と判定してもよい。
【0010】
リーク検出回路は、電圧コンパレータと、電圧コンパレータの出力に応じて、リーク状態を検出する判定部と、を含んでもよい。
【0011】
パルス変調器は、軽負荷状態において電流不連続モードで動作し、リーク検出回路は、第2トランジスタがターンオフしてから、第1トランジスタがターンオンするまでの期間に設定されるリーク検出区間においてリーク状態を検出してもよい。
【0012】
パルス変調器は、PWM(Pulse Width Modulation)モードとPFM(Pulse Frequency Modulation)モードが切り替え可能であり、リーク検出回路は、PFMモードにおいてリーク状態を検出してもよい。
PFMモードでは、第1トランジスタがオン、第2トランジスタがオフとなる第1状態φ1、第1トランジスタがオフ、第2トランジスタがオンとなる第2状態φ2、第1トランジスタおよび第2トランジスタがオフとなる第3状態φ3を繰り返す。したがって、第3状態φ3を利用することでリーク状態を検出できる。
【0013】
制御回路は、リーク状態が検出されると、第1トランジスタおよび第2トランジスタのスイッチングを停止するロジック回路をさらに備えてもよい。これにより回路の信頼性を高めることができる。
【0014】
ロジック回路は、複数サイクル連続してリーク状態が検出されると、第1トランジスタおよび第2トランジスタのスイッチングを停止してもよい。
【0015】
第1トランジスタはNチャンネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であり、第2トランジスタはPチャンネルMOSFETであってもよい。
【0016】
制御回路はひとつの半導体基板に一体集積化されてもよい。「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。回路を1つのチップ上に集積化することにより、回路面積を削減することができるとともに、回路素子の特性を均一に保つことができる。
【0017】
本発明の別の態様はDC/DCコンバータに関する。DC/DCコンバータは、上述のいずれかの制御回路を備えてもよい。
【0018】
本発明の別の態様もまた、昇圧または昇降圧型のDC/DCコンバータに関する。このDC/DCコンバータは、一端に入力電圧を受けるインダクタと、インダクタの他端と接地ラインの間に設けられる第1トランジスタと、インダクタの他端と出力ラインの間に設けられる第2トランジスタと、出力ラインに生ずる出力電圧が目標電圧に近づくようにパルス信号を生成するパルス変調器と、パルス信号に応じて第1トランジスタおよび第2トランジスタを駆動するドライバと、第1トランジスタおよび第2トランジスタが両方オフとなる期間中に、入力電圧と第1トランジスタと第2トランジスタの間を接続する配線上の検出点の検出電圧にもとづいて、リーク状態を検出するリーク検出回路と、を備える。
【0019】
本発明のさらに別の態様は電子機器に関する。電子機器は上述のいずれかのDC/DCコンバータを備える。
【0020】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0021】
本発明のある態様によれば、パワートランジスタのリークを検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施の形態に係るDC/DCコンバータの回路図である。
図2図1のDC/DCコンバータの正常時の動作波形図である。
図3図1のDC/DCコンバータのリーク状態の動作波形図である。
図4】DC/DCコンバータの構成例を示す回路図である。
図5】実施の形態に係るDC/DCコンバータを備える電子機器の一例を示す図である。
図6】第1変形例に係るDC/DCコンバータを示す図である。
図7】昇降圧コンバータの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0024】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0025】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0026】
図1は、実施の形態に係るDC/DCコンバータ100の回路図である。DC/DCコンバータ100は、昇圧コンバータ(Boost Converter)であり、入力ライン102の入力電圧VINを昇圧し、所定の目標電圧に安定化された出力電圧VOUTを、出力ライン104に接続される負荷(不図示)に供給する。
【0027】
DC/DCコンバータ100は、出力回路110および制御回路120を備える。出力回路110のトポロジーは一般的な同期整流型の昇圧コンバータと同様であり、インダクタL1、第1トランジスタM1、第2トランジスタM2、入力キャパシタC1、出力キャパシタC2を含む。インダクタL1の一端には入力電圧VINが入力される。第1トランジスタM1は、インダクタL1の他端と接地ライン106の間に設けられる。第2トランジスタM2は、インダクタL1の他端と出力ライン104の間に設けられる。第1トランジスタM1をスイッチングトランジスタ、第2トランジスタM2を同期整流トランジスタとも称する。本実施の形態において第1トランジスタM1はNチャンネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であり、第2トランジスタM2はPチャンネルMOSFETである。
【0028】
制御回路120は、第1トランジスタM1および第2トランジスタM2を制御する。制御回路120は、パルス変調器122、ドライバ124、リーク検出回路126、ロジック回路128を備える。パルス変調器122は、出力ライン104に生ずる出力電圧VOUTが目標電圧VOUT(REF)に近づくようにパルス信号S1を生成する。ドライバ124は、パルス信号S1に応じて第1トランジスタM1および第2トランジスタM2を駆動する。
【0029】
リーク検出回路126は、第1トランジスタM1および第2トランジスタM2が両方オフとなる期間中に、入力電圧VINと検出点130の検出電圧Vにもとづいて、第1トランジスタM1、第2トランジスタM2の少なくとも一方のリーク状態を検出する。検出点130は、第1トランジスタM1、第2トランジスタM2およびインダクタL1の間を接続する配線132上に設けられる。
【0030】
DC/DCコンバータ100は、軽負荷状態において不連続モード(PFMモード)で動作する。不連続モードでは、第1トランジスタM1がオン、第2トランジスタM2がオフとなる第1状態φ1、第1トランジスタM1がオフ、第2トランジスタM2がオンとなる第2状態φ2、第1トランジスタM1および第2トランジスタM2がオフとなる第3状態φ3を繰り返す。そこでリーク検出回路126は、第3状態φ3の間に、リーク検出区間τDETを設け、リーク検出区間τDETにおける2つの電圧VINとVにもとづいてリーク状態を検出してもよい。
【0031】
好ましくは検出点130は、第1トランジスタM1、第2トランジスタM2、インダクタL1の分岐点134よりも第2トランジスタM2側に設けられる。
【0032】
たとえばリーク検出回路126は、入力電圧VINと検出電圧Vの電位差ΔVが所定のしきい値VTHを超えると、リーク状態と判定し、リーク検出信号S2をアサートしてもよい。
【0033】
ロジック回路128は、リーク検出信号S2がアサートされると、回路保護のために第1トランジスタM1および第2トランジスタM2のスイッチングを停止する。
【0034】
以上がDC/DCコンバータ100の構成である。続いてその動作を図2図3を参照して説明する。図2は、図1のDC/DCコンバータ100の正常時の動作波形図である。ここでは不連続モードの動作が示される。
【0035】
本明細書において参照する波形図やタイムチャートの縦軸および横軸は、理解を容易とするために適宜拡大、縮小したものであり、また示される各波形も、理解の容易のために簡略化され、あるいは誇張もしくは強調されている。
【0036】
上述したように、軽負荷状態において、DC/DCコンバータ100は不連続モードで動作し、第1状態φ1〜第3状態φ3を繰り返す。第1状態φ1と第2状態φ2の間には、デッドタイムDTが挿入されている。第1状態φ1においてコイル電流ICOILが増加する。第2状態φ2では第2トランジスタM2がオンとなり、コイル電流ICOILが減少する。そしてコイル電流ICOILがゼロとなると、逆流電流検出信号S3がアサートされ、第3状態φ3に遷移する。そして出力電圧VOUTが所定電圧に低下すると、第1状態φ1に戻る。
【0037】
第3状態φ3の間に、リーク検出区間τDETが設けられる。検出区間指示信号S4は、リーク検出区間τDETを示す制御信号である。第1トランジスタM1や第2トランジスタM2のリークが無視できる正常状態では、インダクタL1に流れる電流ICOILはゼロであるから、インダクタL1の両端間の電位差はゼロであり、さらに配線132は等電位とみなすことができる。したがってVIN=VつまりΔV=0<VTHであるから、リーク検出信号S2はローレベルとなる。
【0038】
図3は、図1のDC/DCコンバータ100のリーク状態の動作波形図である。第2トランジスタM2あるいは第1トランジスタM1にリークが生じていると、インダクタLにリーク電流ILEAKが流れ、第3状態φ3においてもコイル電流ICOILはゼロとならない。リーク電流ILEAKによって、インダクタL1および配線132に電圧降下ΔVが発生し、検出点130の検出電圧Vは、VIN−ΔVとなる。この電圧降下ΔVが、しきい値VTHを超えると、リーク検出信号S2がアサート(ハイレベル)され、リーク状態が検出される。
【0039】
たとえば配線抵抗を200mΩ、リーク電流ILEAKを25mAとすると、電圧降下ΔVは5mVとなるため、リーク検出回路126は、電圧コンパレータを用いて構成することができる。2.5mAのリーク電流ILEAKを検出したい場合、電圧降下ΔVは0.5mVとなるため、より高精度な電圧コンパレータが必要となる。もしくは、電圧降下ΔVを増幅するアンプを追加し、増幅された電圧降下をしきい値と比較するようにすればよい。
【0040】
配線抵抗をなるべく大きくするために、検出点130は、第2トランジスタM2のドレインに可能な限り近づけることが望ましい。
【0041】
以上がDC/DCコンバータ100の動作である。このDC/DCコンバータ100によれば、パワートランジスタのリークを検出でき、必要に応じて適切な措置をとることができる。リーク状態の検出には、インダクタL1の寄生直列抵抗や配線132の寄生抵抗を利用するため、回路素子の増加も最小限である。
【0042】
本発明は、図1のブロック図や回路図として把握され、あるいは上述の説明から導かれるさまざまな装置、回路に及ぶものであり、特定の構成に限定されるものではない。以下、本発明の範囲を狭めるためではなく、発明の本質や回路動作の理解を助け、またそれらを明確化するために、より具体的な構成例や実施例を説明する。
【0043】
図4は、DC/DCコンバータ100の構成例を示す回路図である。DC/DCコンバータ100は電子機器300に搭載される。電子機器300は、DC/DCコンバータ100に加えて、直流電源302および負荷304を備える。直流電源302は、乾電池や再充電可能電池などであり、入力ライン102を介して直流の入力電圧VINをDC/DCコンバータ100に供給する。DC/DCコンバータ100の出力ライン104には、負荷304が接続される。
【0044】
このDC/DCコンバータ100において、図1の制御回路120の主要部および第1トランジスタM1、第2トランジスタM2は、制御IC(Integrated Circuit)200に集積化されている。制御IC200の入力(VIN)ピンには、電源電圧として入力電圧VINが供給される。ピンは端子とも称される。出力(OUT)ピンには出力キャパシタC2および出力ライン104が接続される。スイッチング(SW)ピンには、インダクタL1が接続される。第1トランジスタM1のソースは、パワー接地(PGND)ピンに接続され、ドレインはSWピンと接続される。第2トランジスタM2のソースはOUTピンと接続され、ドレインはSWピンと接続される。
【0045】
内部電源(レギュレータ)であるLDO(Low Drop Output)250は、入力電圧VINを安定化し、内部電圧VREGを生成する。LDOの出力は内部LDOピンを介して外付けの平滑キャパシタと接続されてもよい。電圧コンパレータ252は、UVLO(Under Voltage Lock Out)回路であり、入力電圧VINが規定電圧を超えるとシステムを起動可能とし、それより低い低電圧状態を検出すると、システムをリセットする。電圧コンパレータ252は、過電圧検出のためのコンパレータであってもよい。
【0046】
DC/DCコンバータ100の出力電圧VOUTは、フィードバックライン108を介して制御IC200のフィードバック(FB)ピンに入力される。抵抗R11,R12は、出力電圧VOUTを分圧してフィードバック電圧VFBを生成する。抵抗R11,R12は、外付け部品であってもよい。エラーアンプ202は、フィードバック電圧VFBとその目標電圧VREFの誤差を増幅し、誤差信号VERRを生成する。
【0047】
イネーブル(EN)ピンには、外部のホストプロセッサ、たとえばマイコンからイネーブル信号が入力される。インバータ形式の入力バッファ254は、イネーブル信号のハイ、ローを判定し、その反転信号であるENB信号を生成する。制御ロジック204は、EN信号がハイレベル、ENB信号がローレベルとなるとその動作を開始する。OUTピンには、放電回路256が接続される。放電回路256は、EN信号がローレベル、ENB信号がハイレベルとなると動作状態となり、OUTピンを介して出力キャパシタC2の電荷を放電し、出力電圧VOUTを低下させる。
【0048】
制御ロジック204は、図1のパルス変調器122に相当するパルス変調器205を含み、フィードバック電圧VFBにもとづいてパルス信号S11,S12を生成する。パルス変調器205は、オシレータ212が発生する周期信号S7と同期して、パルス信号S11,S12を生成してもよい。パルス信号S11,S12はそれぞれ、第1トランジスタM1、第2トランジスタM2のオン、オフ状態を示す。レベルシフタ206は、パルス信号S11,S12を適切な電圧レベルに変換し、ドライバ208は、レベル変換後のパルス信号S21,S22に応じて第1トランジスタM1、第2トランジスタM2を駆動する。逆流検出回路210は軽負荷状態において、インダクタL1のコイル電流ICOILの逆流を検出し、逆流電流検出信号S3を生成する。たとえば逆流検出回路210は、第1トランジスタM1のドレイン電圧を負のしきい値電圧と比較するコンパレータを含んでもよい。
【0049】
リーク検出回路220は、入力電圧VINと検出点130の検出電圧Vを比較する電圧コンパレータ222と、判定部224を含む。たとえばしきい値電圧に相当するオフセット付きのコンパレータを用いて、入力電圧VINと検出電圧Vを比較してもよい。判定部224は、リーク検出回路220の一部として構成され、第1トランジスタM1、第2トランジスタM2が両方オフである第3状態φ3において、電圧コンパレータ222の出力信号S5がハイレベルとなると、リーク検出信号S2をアサートする。
【0050】
なおリーク検出回路220は、複数サイクル連続してリーク状態が検出されたときに、リーク検出信号S2をアサートして第1トランジスタM1および第2トランジスタM2のスイッチングを停止してもよい。これによりノイズの影響によりリーク状態が誤検出された場合に、スイッチングが停止するのを防止できる。
【0051】
OVP(過電圧保護)回路260は、出力電圧VOUTを監視し、過電圧状態を検出する。TSD(サーマルシャットダウン)回路262は、制御IC200の過熱状態を検出する。制御ロジック204は過電圧状態や過熱状態が検出されると、スイッチングを停止するなど、適切な保護措置をとる。
【0052】
図4の制御IC200によれば、第1トランジスタM1や第2トランジスタM2のリークの自己診断機能が提供される。
【0053】
(用途)
図5は、実施の形態に係るDC/DCコンバータ100を備える電子機器700の一例を示す図である。電子機器700は、ICレコーダ、リモコン、ワイヤレスマウス、ポータブルオーディオプレイヤなどの乾電池を搭載するデバイスである。筐体702の内部には、乾電池704が収容される。DC/DCコンバータ100は、乾電池の電圧を入力電圧VINとして受け、それを負荷回路706に供給する。負荷回路706は、乾電池の電圧より高い電圧を必要とする回路であり、電子機器700の種類に応じてさまざまである。
【0054】
そのほか電子機器は、携帯電話端末、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、タブレット端末、ポータブルオーディオプレイヤなどの再充電可能電池を搭載するデバイスであってもよい。
【0055】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0056】
(第1変形例)
検出点130について考察する。図6は、第1変形例に係るDC/DCコンバータ100を示す図である。インダクタL1の抵抗成分をR31、インダクタL1と分岐点134の間の抵抗成分をR32、分岐点134と検出点130の間の抵抗成分をR33とする。第1トランジスタM1、第2トランジスタM2それぞれのリーク電流をILEAK1,ILEAK2とするとき、検出点130の検出電圧Vは、式(1)で与えられる。
=VIN−ΔV
ΔV=(R31+R32)×(ILEAK1+ILEAK2)+R33×ILEAK2 …(1)
つまり、第2トランジスタM2のリーク電流ILEAK2について、リーク電流ILEAK1よりも相対的に高い検出感度を有しているといえる。
【0057】
これに対して、検出点131を、分岐点134よりも第1トランジスタM1側にとってもよい。分岐点134と検出点131の間の抵抗成分をR34とするとき、検出点131の検出電圧V’は、式(2)で与えられる。
’=VIN−ΔV’
ΔV’=(R31+R32)×(ILEAK1+ILEAK2)+R34×ILEAK1 …(2)
この場合、第1トランジスタM1のリーク電流ILEAK1について、リーク電流ILEAK2よりも相対的に高い検出感度が得られる。
【0058】
(第2変形例)
実施の形態では、昇圧コンバータを例としたが、昇降圧コンバータにも本発明は適用可能である。図7は、昇降圧コンバータ160の回路図である。昇降圧コンバータ160は昇圧DC/DCコンバータ100に加えて、第3トランジスタM3および第4トランジスタM4を追加した構成と把握することができる。昇圧モードで動作するときには、第3トランジスタM3がオン、第4トランジスタM4がオフに固定され、そのときの等価回路図は図1のそれと同じである。したがってリーク検出回路126によって第1トランジスタM1、第2トランジスタM2のリークを検出できる。
【0059】
降圧モードで動作するときには、第2トランジスタM2がオン、第1トランジスタM1がオフに固定され、第3トランジスタM3および第4トランジスタM4がスイッチングする。
【0060】
降圧モードにおいて、電流不連続モードで動作させる場合、トランジスタM3、M4が両方オフとなる区間が存在する。このとき第3トランジスタM3にリークが発生していると、トランジスタM3、インダクタL1を介してリーク電流ILEAK3が流れ、出電圧Vと入力電圧VINの電位差が大きくなる。したがって、検出点130の電圧Vを監視することで、降圧モードにおけるパワートランジスタのリークを検出できる。
【0061】
(第3変形例)
本発明は、同期整流型ではなく、ダイオード整流型のコンバータにも適用可能である。
【0062】
(第4変形例)
実施の形態では、DC/DCコンバータ100のスイッチング動作中であって、第1トランジスタM1、第2トランジスタM2がオフの区間に、リーク状態を検出したが本発明はそれに限定されない。DC/DCコンバータ100の停止中において、第1トランジスタM1、第2トランジスタM2がオフである区間に、リーク状態を検出してもよい。
【0063】
(第5変形例)
実施の形態では、制御回路120あるいは制御IC200が、リークが検出されたときに第1トランジスタM1、第2トランジスタM2のスイッチングを停止したが本発明はそれに限定されない。たとえば制御回路120あるいは制御IC200から、ホストプロセッサにリークの発生を通知し、処理をホストプロセッサに委ねてもよい。
【0064】
実施の形態にもとづき、具体的な用語を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0065】
100…DC/DCコンバータ、102…入力ライン、104…出力ライン、106…接地ライン、110…出力回路、120…制御回路、122…パルス変調器、124…ドライバ、126…リーク検出回路、128…ロジック回路、130…検出点、132…配線、200…制御IC、202…エラーアンプ、204…制御ロジック、206…レベルシフタ、208…ドライバ、210…逆流検出回路、212…オシレータ、220…リーク検出回路、222…電圧コンパレータ、224…判定部、250…LDO、252…電圧コンパレータ、254…入力バッファ、256…放電回路、260…OVP回路、262…TSD回路、L1…インダクタ、C1…入力キャパシタ、C2…出力キャパシタ、M1…第1トランジスタ、M2…第2トランジスタ、SW…スイッチング端子、GND…接地端子、OUT…出力端子、S1…パルス信号、S2…リーク検出信号、S3…逆流電流検出信号、S4…検出区間指示信号、700…電子機器、702…筐体、704…電池、706…マイクロプロセッサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7