(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施の形態である車両用電源装置10が搭載された車両11を示す概略図である。
図1に示すように、車両11には、エンジン12を備えたパワーユニット13が搭載されている。エンジン12のクランク軸14には、ベルト機構15を介してスタータジェネレータ(発電機)16が機械的に連結されている。また、エンジン12にはトルクコンバータ17を介して変速機構18が連結されており、変速機構18にはデファレンシャル機構19等を介して車輪20が連結されている。
【0010】
エンジン12に連結されるスタータジェネレータ16は、発電機および電動機として機能する所謂ISG(integrated starter generator)である。スタータジェネレータ16は、クランク軸14に駆動される発電機として機能するだけでなく、アイドリングストップ制御等においてクランク軸14を始動回転させる電動機として機能する。スタータジェネレータ16は、ステータコイルを備えたステータ21と、フィールドコイルを備えたロータ22と、を有している。また、スタータジェネレータ16には、ステータコイルやフィールドコイルの通電状態を制御するため、インバータ、レギュレータおよびコンピュータ等からなるISGコントローラ23が設けられている。ISGコントローラ23によってフィールドコイルやステータコイルの通電状態が制御され、スタータジェネレータ16の発電電圧等が制御される。
【0011】
[電源回路]
車両用電源装置10が備える電源回路30について説明する。
図2は電源回路30の一例を示す回路図である。
図2に示すように、電源回路30は、スタータジェネレータ16に電気的に接続されるリチウムイオンバッテリ(蓄電体)31と、これと並列にスタータジェネレータ16に電気的に接続される鉛バッテリ(デバイス、第2の蓄電体)32と、を備えている。リチウムイオンバッテリ31や鉛バッテリ32には、容量低下や出力低下等の劣化を抑制する観点から、印加可能な上限電圧としての耐電圧が設定されている。なお、リチウムイオンバッテリ31を積極的に放電させるため、リチウムイオンバッテリ31の端子電圧は、鉛バッテリ32の端子電圧よりも高く設計されている。また、リチウムイオンバッテリ31を積極的に充放電させるため、リチウムイオンバッテリ31の内部抵抗は、鉛バッテリ32の内部抵抗よりも小さく設計されている。
【0012】
スタータジェネレータ16の正極端子16aには正極ライン(第1通電経路)33が接続され、リチウムイオンバッテリ31の正極端子31aには正極ライン(第2通電経路)34が接続され、鉛バッテリ32の正極端子32aには正極ライン(第3通電経路)35が接続される。これらの正極ライン33〜35は、接続点36を介して互いに接続されている。また、リチウムイオンバッテリ31の負極端子31bには負極ライン37が接続され、鉛バッテリ32の負極端子32bには負極ライン38が接続され、スタータジェネレータ16の負極端子16bには負極ライン39が接続される。これらの負極ライン37〜39は、基準電位点40に接続されている。
【0013】
リチウムイオンバッテリ31の正極ライン34には、導通状態と遮断状態とに切り替えられるスイッチSW1が設けられている。また、鉛バッテリ32の正極ライン35には、導通状態と遮断状態とに切り替えられるスイッチSW2が設けられている。これらのスイッチSW1,SW2は、後述するバッテリコントローラ45やメインコントローラ50によって制御される。また、スイッチSW1,SW2は、MOSFET等の半導体素子によって構成されるスイッチであるが、電磁力等を用いて接点を機械的に開閉させるスイッチであっても良い。なお、スイッチSW1,SW2は、リレーやコンタクタ等とも呼ばれている。
【0014】
鉛バッテリ32の正極ライン35には、正極ライン41を介して複数の電気機器42からなる電気機器群43が接続されている。電気機器群43を構成する電気機器42として、例えば、横滑り防止装置、電動パワーステアリング、ヘッドライトがある。また、図示していないが、鉛バッテリ32の正極ライン35には、ISGコントローラ23や後述するメインコントローラ50等の各種コントローラも電気機器42として接続される。これらの電気機器42には、電子部品等を損傷させることなく正常に機能させるため、印加可能な上限電圧として耐電圧が設定されている。
【0015】
図1に示すように、電源回路30には、バッテリモジュール44が設けられている。バッテリモジュール44には、リチウムイオンバッテリ31およびスイッチSW1が組み込まれている。また、バッテリモジュール44には、コンピュータ等からなるバッテリコントローラ45が設けられている。バッテリコントローラ45は、リチウムイオンバッテリ31の充電状態SOC、充放電電流、端子電圧、セル温度等を監視する機能や、スイッチSW1を制御する機能を有している。また、鉛バッテリ32の負極ライン38には、バッテリセンサ46が設けられている。このバッテリセンサ46は、鉛バッテリ32の充電状態SOC、充放電電流、端子電圧等を検出する機能を有している。なお、正極ライン35には、電気機器群43等を保護するヒューズ47が設けられている。
【0016】
[スタータジェネレータの発電制御]
スタータジェネレータ16の発電電圧を制御するため、車両用電源装置10には、コンピュータ等からなるメインコントローラ(発電制御部)50が設けられている。メインコントローラ50や前述した各コントローラ23,45は、CANやLIN等の車載ネットワーク51を介して互いに通信自在に接続されている。
【0017】
メインコントローラ50は、リチウムイオンバッテリ31の充電状態SOCに基づいて、スタータジェネレータ16の目標発電電圧を設定する。そして、メインコントローラ50は目標発電電圧をISGコントローラ23に出力し、ISGコントローラ23は目標発電電圧に従ってスタータジェネレータ16の発電電圧を制御し、スタータジェネレータ16を燃焼発電状態または発電休止状態に制御する。このように、リチウムイオンバッテリ31の充電状態SOCに基づいて、スタータジェネレータ16を燃焼発電状態または発電休止状態に制御することにより、後述するように、リチウムイオンバッテリ31の充放電が制御される。なお、充電状態SOC(state of charge)とは、バッテリの設計容量に対する蓄電量の比率である。この充電状態SOCは、バッテリコントローラ45からメインコントローラ50に送信される。
【0018】
図3はスタータジェネレータ16を燃焼発電状態に制御したときの電流供給状況の一例を示す図である。例えば、リチウムイオンバッテリ31の充電状態SOCが所定の下限値を下回る場合には、リチウムイオンバッテリ31を充電して充電状態SOCを高めるため、エンジン動力によってスタータジェネレータ16が発電駆動される。このように、スタータジェネレータ16を燃焼発電状態(通常発電状態)に制御する際には、スタータジェネレータ16の発電電圧が引き上げられ、リチウムイオンバッテリ31に印加される発電電圧が端子電圧よりも高く調整される。これにより、
図3に黒塗りの矢印で示すように、スタータジェネレータ16から、リチウムイオンバッテリ31、電気機器群43および鉛バッテリ32等に対して電流が供給され、リチウムイオンバッテリ31や鉛バッテリ32が緩やかに充電される。
【0019】
図4はスタータジェネレータ16を発電休止状態に制御したときの電流供給状況の一例を示す図である。例えば、リチウムイオンバッテリ31の充電状態SOCが所定の上限値を上回る場合には、リチウムイオンバッテリ31を積極的に放電させるため、エンジン動力によるスタータジェネレータ16の発電駆動が休止される。このように、スタータジェネレータ16を発電休止状態に制御する際には、スタータジェネレータ16の発電電圧が引き下げられ、リチウムイオンバッテリ31に印加される発電電圧が端子電圧よりも低く調整される。これにより、
図4に黒塗りの矢印で示すように、リチウムイオンバッテリ31から電気機器群43に電流が供給されるため、スタータジェネレータ16の発電駆動を抑制または停止させることができ、エンジン負荷を軽減することができる。
【0020】
前述したように、メインコントローラ50は、充電状態SOCに基づきスタータジェネレータ16を燃焼発電状態や発電休止状態に制御しているが、車両減速時には多くの運動エネルギーを回収して燃費性能を高めることが必要である。そこで、車両減速時には、スタータジェネレータ16の発電電圧が大きく引き上げられ、スタータジェネレータ16は回生発電状態に制御される。これにより、スタータジェネレータ16の発電電力を増大させることができるため、運動エネルギーを積極的に電気エネルギーに変換して回収することができ、車両11のエネルギー効率を高めて燃費性能を向上させることができる。
【0021】
このように、スタータジェネレータ16を回生発電状態に制御するか否かについては、アクセルペダルやブレーキペダルの操作状況等に基づき決定される。つまり、アクセルペダルの踏み込みが解除されるコースト時や、ブレーキペダルが踏み込まれる車両制動時には、エンジン12の燃料カットが実施されて車両11が減速する状況であり、車両11から多くの運動エネルギーが放出される状況であるため、スタータジェネレータ16が回生発電状態に制御される。一方、アクセルペダルが踏み込まれる加速走行や定常走行においては、エンジン12の燃料噴射が実施される状況であり、車両11から多くの運動エネルギーが放出される状況ではないため、スタータジェネレータ16は燃焼発電状態や発電休止状態に制御される。
【0022】
ここで、
図5はスタータジェネレータ16を回生発電状態に制御したときの電流供給状況の一例を示す図である。なお、
図5に示した黒塗りの矢印は、電流の流れ方向を示す矢印であり、電流が増加する程に太く示されている。スタータジェネレータ16を回生発電状態に制御する際には、前述した燃焼発電状態よりもスタータジェネレータ16の発電電圧が引き上げられ、リチウムイオンバッテリ31に印加される発電電圧が端子電圧よりも大幅に引き上げられる。これにより、
図5に黒塗りの矢印で示すように、スタータジェネレータ16から、リチウムイオンバッテリ31や鉛バッテリ32に対して大きな電流が供給されるため、リチウムイオンバッテリ31や鉛バッテリ32が急速に充電される。また、リチウムイオンバッテリ31の内部抵抗は、鉛バッテリ32や電気機器群43の内部抵抗よりも小さいことから、発電電流の大部分はリチウムイオンバッテリ31に供給される。
【0023】
なお、
図3〜
図5に示すように、スタータジェネレータ16を燃焼発電状態、回生発電状態および発電休止状態に制御する際に、スイッチSW1,SW2は導通状態に保持されている。つまり、車両用電源装置10においては、スイッチSW1,SW2の切替制御を行うことなく、スタータジェネレータ16の発電電圧を制御するだけで、リチウムイオンバッテリ31の充放電を制御することが可能である。これにより、簡単にリチウムイオンバッテリ31の充放電を制御することができるとともに、スイッチSW1,SW2の耐久性を向上させることができる。
【0024】
[回生発電状態および燃焼発電状態における電圧降下状況]
図6は電源回路30の各部位における電圧降下状況の一例を示す図である。
図6には、スタータジェネレータ16を燃焼発電状態や回生発電状態に制御したときの電圧降下状況が示されている。また、
図6には、スタータジェネレータ16の正極端子16aから接続点36に至るまでの電圧降下、つまり正極ライン(第1通電経路)33における電圧降下が実線L1で示されており、接続点36からリチウムイオンバッテリ31の正極端子31aに至るまでの電圧降下、つまり正極ライン(第2通電経路)34における電圧降下が破線L2で示されている。また、接続点36から鉛バッテリ32の正極端子32aに至るまでの電圧降下、つまり正極ライン(第3通電経路)35における電圧降下が一点鎖線L3で示されている。なお、
図6の横軸には、スタータジェネレータ16の正極端子16aが符号P1で示され、接続点36が符号P2で示され、リチウムイオンバッテリ31の正極端子31aが符号P3で示され、鉛バッテリ32の正極端子32aが符号P4で示されている。
【0025】
前述したように、車両減速時には、車両11の運動エネルギーを電気エネルギーに変換して回収するため、スタータジェネレータ16が回生発電状態に制御される。この回生発電状態において、多くの運動エネルギーを回収するためには、スタータジェネレータ16の発電電圧を大きく上昇させることが必要である。しかしながら、スタータジェネレータ16の発電電圧を過度に上昇させることは、耐電圧Pbmaxを超えた電圧を鉛バッテリ32に印加する要因であり、鉛バッテリ32の劣化を促進させる要因となっていた。このため、スタータジェネレータ16の発電電圧は、鉛バッテリ32の劣化を抑制する観点から、鉛バッテリ32の耐電圧Pbmax以下に制限されることが一般的である。
【0026】
そこで、本発明の一実施の形態である車両用電源装置10においては、鉛バッテリ32の劣化を抑制しつつ回生電力を増加させるため、以下に示すように、スタータジェネレータ16の目標発電電圧が設定されるとともに、正極ライン33,35の電気抵抗値が設定されている。つまり、
図6に符号a1で示すように、スタータジェネレータ16を回生発電状態に制御する際には、スタータジェネレータ16の目標発電電圧が、鉛バッテリ32の耐電圧Pbmaxを上回るV1に設定される。そして、
図6に符号a2で示すように、スタータジェネレータ16の発電電圧をV1まで上昇させた場合であっても、鉛バッテリ32に対する印加電圧VPbが耐電圧Pbmaxを下回るように、スタータジェネレータ16と鉛バッテリ32とを接続する正極ライン33,35の電気抵抗値が設定される。
【0027】
すなわち、
図6に符号a1で示すように、スタータジェネレータ16の発電電圧をV1まで上昇させた場合であっても、
図6に符号a2で示すように、鉛バッテリ32の印加電圧VPbが耐電圧Pbmaxを下回るように、正極ライン33、接続点36および正極ライン34を電流が流れる過程で電圧を降下させている。このように、正極ライン33,35の電気抵抗値を高めることにより、鉛バッテリ32の印加電圧VPbを耐電圧Pbmax以下に抑えつつ、スタータジェネレータ16の発電電圧を大幅に上昇させることができる。これにより、鉛バッテリ32の劣化を抑制することができるとともに、スタータジェネレータ16の回生電力を飛躍的に増やすことができる。なお、電線である正極ライン33,35の電気抵抗値は、正極ライン33,35の長さや太さを変更することや、正極ライン33,35の素材を適宜選定すること等によって調整可能である。
【0028】
ところで、正極ライン33,35の電気抵抗値を高めることは、発電電流の送電効率を低下させる要因であるため、スタータジェネレータ16を燃焼発電状態に制御する際には、送電効率の低下に伴うエネルギー損失を最低限に抑えることが必要である。そこで、
図6に符号b1で示すように、スタータジェネレータ16を燃焼発電状態に制御する際には、スタータジェネレータ16の目標発電電圧が鉛バッテリ32の耐電圧Pbmaxを下回るV2に設定される。このように、燃焼発電状態においては発電電圧をV2に下げることにより、回生発電時に比べて発電電流を大幅に絞ることができる。すなわち、正極ライン33,35の電気抵抗値を高めていた場合であっても、
図3に示すように、正極ライン33や正極ライン34を流れる電流を小さくすることができ、送電効率の低下に伴うエネルギー損失を最低限に抑えることができる。これにより、スタータジェネレータ16を燃焼発電状態に制御した場合であっても、エンジン12に供給される燃料エネルギーを効率良く電気エネルギーに変換することが可能である。
【0029】
これまで説明したように、スタータジェネレータ16の燃焼発電状態、つまりエンジン動力によってスタータジェネレータ16を発電駆動する状況においては、スタータジェネレータ16の発電電圧V2が、鉛バッテリ32の耐電圧Pbmaxよりも引き下げられる。これにより、正極ライン33,35の電気抵抗値が高い場合であっても、発電電流を減少させて送電効率の低下を抑制することができ、送電効率の低下に伴うエネルギー損失を抑制することができる。つまり、スタータジェネレータ16から鉛バッテリ32やリチウムイオンバッテリ31までの電圧降下量を小さく抑えることができる。
【0030】
一方、スタータジェネレータ16の回生発電状態、つまり車両11の運動エネルギーによってスタータジェネレータ16を発電駆動する状況においては、スタータジェネレータ16の発電電圧V1が、鉛バッテリ32の耐電圧Pbmaxよりも引き上げられる。この場合には、スタータジェネレータ16の発電電流が増加して送電効率が低下し、回生発電時のエネルギー損失が増加する。しかしながら、車両11の運動エネルギーが失われる車両減速時に実行される回生発電とは、運動エネルギーを電気エネルギーに変換して回収する発電モードであるため、エネルギー損失が増加したとしてもエネルギー回収量つまり発電電力を増加させることが重要である。このように、スタータジェネレータ16の回生発電状態においては、エネルギー損失が増加するものの発電電力を大幅に増加させることが可能である。これにより、より多くの運動エネルギーを回収することができ、車両11の燃費性能を向上させることができる。
【0031】
前述の説明では、鉛バッテリ32に対する印加電圧VPbが耐電圧Pbmaxを超えないように、回生発電時の目標発電電圧を設定するとともに、正極ライン33,35の電気抵抗値を設定しているが、これに限られることはない。例えば、
図6に符号c1で示すように、接続点36に対する印加電圧Vcが耐電圧Pbmaxを超えないように、回生発電時の目標発電電圧を設定するとともに、正極ライン33の電気抵抗値を設定しても良い。このように、接続点36の印加電圧Vcを耐電圧Pbmaxよりも下げることにより、確実に鉛バッテリ32の印加電圧VPbを耐電圧Pbmaxよりも下げることができる。なお、
図6に符号d1で示すように、スタータジェネレータ16の回生発電状態において、リチウムイオンバッテリ31には電圧VLiが印加されているが、この印加電圧VLiがリチウムイオンバッテリ31の耐電圧を下回ることはいうまでもない。
【0032】
また、前述の説明では、鉛バッテリ32の耐電圧Pbmaxが、電気機器42の耐電圧よりも低いことから、鉛バッテリ32の耐電圧Pbmaxを基準に、発電電圧や電気抵抗値が設定されている。つまり、電気機器42の耐電圧が鉛バッテリ32の耐電圧Pbmaxよりも低い場合には、電気機器42の耐電圧を基準に発電電圧や電気抵抗値が設定される。なお、電気機器42の耐電圧が鉛バッテリ32の耐電圧Pbmaxよりも低い場合には、電気機器42が本願発明を構成するデバイスとして機能することになる。
【0033】
[他の実施の形態]
前述の説明では、鉛バッテリ32の劣化を抑制する観点から、鉛バッテリ32の耐電圧Pbmaxを基準に、スタータジェネレータ16の発電電圧を設定するとともに、正極ライン33,35の電気抵抗値を設定しているが、これに限られることはない。つまり、鉛バッテリ32を備えていない車両用電源装置であっても、本発明を有効に適用することが可能である。ここで、
図7は本発明の他の実施の形態である車両用電源装置60が備える電源回路61の一例を示す回路図である。なお、
図7において、
図2に示す部品や部材と同様の部品や部材については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0034】
図7に示すように、電源回路61は、スタータジェネレータ16に電気的に接続されるリチウムイオンバッテリ31と、これと並列にスタータジェネレータ16に電気的に接続される電気機器(デバイス)62と、を備えている。電気機器62として、例えば、横滑り防止装置、電動パワーステアリング、ヘッドライトがある。電気機器62には、電子部品等を損傷させることなく正常に機能させるため、印加可能な上限電圧として耐電圧Emaxが設定されている。
【0035】
スタータジェネレータ16の正極端子16aには正極ライン(第1通電経路)33が接続され、リチウムイオンバッテリ31の正極端子31aには正極ライン(第2通電経路)34が接続され、電気機器62の正極端子62aには正極ライン(第3通電経路)63が接続される。これらの正極ライン33,34,63は、接続点36を介して互いに接続されている。また、リチウムイオンバッテリ31の負極端子31bには負極ライン37が接続され、電気機器62の負極端子62bには負極ライン64が接続され、スタータジェネレータ16の負極端子16bには負極ライン39が接続される。これらの負極ライン37,39,64は、基準電位点40に接続されている。
【0036】
このように、リチウムイオンバッテリ31に並列接続されるデバイスとして、前述した鉛バッテリ32ではなく電気機器62を備えた電源回路30であっても、電気機器62を正常に機能させる観点から、電気機器62の耐電圧Emaxを基準に、スタータジェネレータ16の発電電圧が設定されるとともに、正極ライン33,63の電気抵抗値が設定されている。すなわち、スタータジェネレータ16を回生発電状態に制御する際には、スタータジェネレータ16の目標発電電圧が、電気機器62の耐電圧Emaxを上回る電圧に設定される。そして、スタータジェネレータ16の発電電圧を目標発電電圧まで上昇させた場合であっても、電気機器62に対する印加電圧が耐電圧Emaxを下回るように、スタータジェネレータ16と電気機器62とを接続する正極ライン35,63の電気抵抗値が設定される。これにより、電気機器62を正常に機能させつつ、回生電力を増加させることができる。また、スタータジェネレータ16の燃焼発電状態においては、スタータジェネレータ16の発電電圧が、電気機器62の耐電圧Emaxよりも引き下げられる。これにより、正極ライン35,63の電気抵抗値が高い場合であっても、発電電流を減少させて送電効率の低下を抑制することができ、送電効率の低下に伴うエネルギー損失を抑制することができる。
【0037】
前述の説明では、電気機器62に対する印加電圧が耐電圧Emaxを超えないように、回生発電時の目標発電電圧を設定するとともに、正極ライン35,63の電気抵抗値を設定しているが、これに限られることはない。例えば、接続点36に対する印加電圧が耐電圧Emaxを超えないように、回生発電時の目標発電電圧を設定するとともに、正極ライン33の電気抵抗値を設定しても良い。このように、接続点36の印加電圧を耐電圧Emaxよりも下げることにより、確実に電気機器62の印加電圧を耐電圧Emaxよりも下げることができる。
【0038】
[他の実施の形態]
図6に示すように、スタータジェネレータ16を回生発電状態に制御する場合には、スタータジェネレータ16の発電電圧をV1まで上昇させているが、この発電電圧V1としては、実験やシミュレーション等に基づいて予め設定された値であっても良く、鉛バッテリ32や接続点36に対する印加電圧に基づき変化する値であって良い。
【0039】
図8は本発明の他の実施の形態である車両用電源装置70が備える電源回路71の一例を示す回路図である。なお、
図8において、
図2に示す部品や部材と同様の部品や部材については、同一の符号を付してその説明を省略する。また、
図9は電源回路71の各部位における電圧降下状況の一例を示す図である。
図9には、スタータジェネレータ16を回生発電状態に制御したときの電圧降下状況が示されており、スタータジェネレータ16から接続点36を介して鉛バッテリ32に至るまでの電圧降下、つまり第1および第3通電経路を構成する正極ライン33,35での電圧降下が実線Lx,Lyで示されている。なお、
図9において、
図6に示す箇所と同様の箇所については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0040】
図8に示すように、電源回路71には、鉛バッテリ32の正極端子32aに印加される電圧VPbを検出する電圧センサ(電圧検出部)72が設けられている。電圧センサ72によって検出された印加電圧VPbは、スタータジェネレータ16の発電電圧を制御するメインコントローラ50に送信される。そして、スタータジェネレータ16を回生発電状態に制御する場合に、メインコントローラ50は、印加電圧VPbが鉛バッテリ32の耐電圧Pbmaxを超えない範囲で、スタータジェネレータ16の発電電圧を上昇させる。つまり、
図9に符号a1,a2で示すように、鉛バッテリ32に対する印加電圧VPbを耐電圧Pbmaxに近づけるように、スタータジェネレータ16の発電電圧がV1aに引き上げられる。これにより、鉛バッテリ32の劣化を抑制しつつ、スタータジェネレータ16の回生電力を最大限に増やすことができる。
【0041】
前述の説明では、鉛バッテリ32に対する印加電圧VPbが耐電圧Pbmaxを超えない範囲で、スタータジェネレータ16の発電電圧を上昇させているが、これに限られることはなく、接続点36に対する印加電圧Vcが耐電圧Pbmaxを超えない範囲で、スタータジェネレータ16の発電電圧を上昇させても良い。
【0042】
図8に示すように、電源回路71には、接続点36に印加される電圧Vcを検出する電圧センサ(電圧検出部)73が設けられている。電圧センサ73によって検出された印加電圧Vcは、スタータジェネレータ16の発電電圧を制御するメインコントローラ50に送信される。そして、スタータジェネレータ16を回生発電状態に制御する場合に、メインコントローラ50は、印加電圧Vcが鉛バッテリ32の耐電圧Pbmaxを超えない範囲で、スタータジェネレータ16の発電電圧を上昇させる。つまり、
図9に符号b1,b2で示すように、接続点36に対する印加電圧Vcを耐電圧Pbmaxに近づけるように、スタータジェネレータ16の発電電圧がV1bに引き上げられる。これにより、鉛バッテリ32の劣化を抑制しつつ、スタータジェネレータ16の回生電力を増やすことができる。
【0043】
なお、
図8に示した例では、電源回路71に2つの電圧センサ72,73を設けているが、これに限られることはない。例えば、印加電圧VPbを基準に発電電圧を制御する場合には、電圧センサ72だけを設けても良く、印加電圧Vcを基準に発電電圧を制御する場合には、電圧センサ73だけを設けても良い。また、電圧センサ72によって鉛バッテリ32の印加電圧VPbを検出しているが、これに限られることはなく、前述したバッテリセンサ46によって鉛バッテリ32の印加電圧VPbを検出しても良い。また、
図8に示した例では、電源回路71にデバイスとして鉛バッテリ32を設けているが、これに限られることはなく、前述した電気機器42,62等をデバイスとして設けても良い。
【0044】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。前述の説明では、蓄電体としてリチウムイオンバッテリ31を採用し、第2の蓄電体として鉛バッテリ32を採用しているが、これに限られることはなく、他の種類のバッテリやキャパシタを採用しても良い。また、各蓄電体は、異なる種類の蓄電体に限られることはなく、同じ種類の蓄電体であっても良いことはいうまでもない。また、前述の説明では、発電機としてスタータジェネレータ16を採用しているが、これに限られることはなく、電動機として機能しないジェネレータを採用しても良い。また、前述の説明では、メインコントローラ50を発電制御部として機能させているが、これに限られることはなく、他のコントローラを発電制御部として機能させても良いことはいうまでもない。
【0045】
なお、図示する例では、リチウムイオンバッテリ31の正極ライン34にスイッチSW1を設けているが、これに限られることはない。例えば、
図2に一点鎖線で示すように、リチウムイオンバッテリ31の負極ライン37にスイッチSW1を設けても良い。また、図示する例では、リチウムイオンバッテリ31の異常発生時に充放電を停止させる観点からスイッチSW1が設けられており、電気機器群43に対する瞬間的な電圧低下つまり瞬低を防止する観点からスイッチSW2が設けられているが、これに限られることはなく、電源回路30からスイッチSW1やスイッチSW2を削除しても良い。