【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記の目的を良好に達成し得る以下の要旨を有する本発明に到達した。
【0009】
次の工程を経て製造されるアルミニウム−黒鉛−炭化物複合体である。
コークス粉末、又は、コークス粉末と黒鉛粉末との混合粉末と、炭化物粉末、酸化物粉末、金属粉粉末の何れかとを混合する工程、前記工程で得た混合粉にタール又はピッチを加えてペースト状の物質を作り、これを押出成形し、その後1,000〜1,500℃にて焼成する一次焼成で固形物を得る工程、前記工程で得た固形物に対してタール又はピッチを含浸して1,000〜1,500℃で焼成する一次焼成により固形物を得る工程を複数回繰り返し、2,500〜3,000℃で焼成する最終焼成により押出成形体を得る工程、前記最終焼成により得た押出成形体に対して熔湯鍛造法によりアルミニウム又はアルミニウム合金を加圧含浸させる工程。
【0010】
また、次の工程を経て製造されるアルミニウム−黒鉛−炭化物複合体である。
コークス粉末、又は、コークス粉末と黒鉛粉末との混合粉末と、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化タンタル、炭化ニオブの中の一種以上の粉末とを混合する工程、
前記工程で得た混合粉にタール又はピッチを加えてペースト状の物質を作り、これを押出成形し、その後1,000〜1,500℃にて焼成する一次焼成で固形物を得る工程、
前記工程で得た固形物に対してタール又はピッチを含浸して1,000〜1,500℃で焼成する一次焼成により固形物を得る工程を複数回繰り返し、2,500〜3,000℃で焼成する最終焼成により押出成形体を得る工程、
前記最終焼成により得た押出成形体に対して熔湯鍛造法によりアルミニウム又はアルミニウム合金を加圧含浸させる工程。
【0011】
前記において、炭化物粉末(炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化タンタル、炭化ニオブの中の一種以上の粉末)は、粒度が20μ以下の粒子であることが望ましい。
【0012】
この実施形態の、押出成形体に対して熔湯鍛造法によりアルミニウム又はアルミニウム合金を加圧含浸させるアルミニウム−黒鉛−炭化物複合体は、押出成形における押出方向の熱伝導度が300W/mK以上である。
【0013】
また、次の工程を経て製造されるアルミニウム−黒鉛−炭化物複合体である。
コークス粉末、又は、コークス粉末と黒鉛粉末との混合粉末と、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ニオブの中の一種以上の粉末とを混合する工程、
前記工程で得た混合粉にタール又はピッチを加えてペースト状の物質を作り、これを押出成形し、その後1,000〜1,500℃にて焼成する一次焼成で固形物を得る工程、
前記工程で得た固形物に対してタール又はピッチを含浸して1,000〜1,500℃で焼成する一次焼成により固形物を得る工程を複数回繰り返し、2,500〜3,000℃で焼成する最終焼成により押出成形体を得る工程、
前記最終焼成により得た押出成形体に対して熔湯鍛造法によりアルミニウム又はアルミニウム合金を加圧含浸させる工程。
【0014】
前記において、酸化物粉末(酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ニオブの中の一種以上の粉末)は、粒度が20μ以下の粒子であることが望ましい。
【0015】
この実施形態の、押出成形体に対して熔湯鍛造法によりアルミニウム又はアルミニウム合金を加圧含浸させるアルミニウム−黒鉛−炭化物複合体は、押出成形における押出方向の熱伝導度が300W/mK以上である。
【0016】
酸化チタン、等の酸化物は、コークス粉末、又は、コークス粉末と黒鉛粉末との混合粉末の炭素中で加熱されると、基本的に、MO+C→MC+CO という反応を生じる(ここでMは金属元素、Oは酸素 Cは炭素)。この結果、実質的に炭化物を加えたことと同じ効果になる。
【0017】
更に、次の工程を経て製造されるアルミニウム−黒鉛−炭化物複合体である。
コークス粉末、又は、コークス粉末と黒鉛粉末との混合粉末と、金属チタン、金属ジルコニウム、金属ハフニウム、金属タンタル、金属ニオブの中の一種以上の粉末とを混合する工程、
前記工程で得た混合粉にタール又はピッチを加えてペースト状の物質を作り、これを押出成形し、その後1,000〜1,500℃にて焼成する一次焼成で固形物を得る工程、
前記工程で得た固形物に対してタール又はピッチを含浸して1,000〜1,500℃で焼成する一次焼成により固形物を得る工程を複数回繰り返し、2,500〜3,000℃で焼成する最終焼成により押出成形体を得る工程、
前記最終焼成により得た押出成形体に対して熔湯鍛造法によりアルミニウム又はアルミニウム合金を加圧含浸させる工程。
【0018】
前記において、金属粉末(金属チタン、金属ジルコニウム、金属ハフニウム、金属タンタル、金属ニオブの中の一種以上の粉末)は、粒度が20μ以下の粒子であることが望ましい。
【0019】
この実施形態の、押出成形体に対して熔湯鍛造法によりアルミニウム又はアルミニウム合金を加圧含浸させるアルミニウム−黒鉛−炭化物複合体は、押出成形における押出方向の熱伝導度が300W/mK以上である。
【0020】
金属チタン、等の金属は、炭素中で加熱されると、コークス粉末、又は、コークス粉末と黒鉛粉末との混合粉末の炭素中で加熱されると、基本的に、M+C→MC という反応を生じる(ここでMは金属元素、Cは炭素)。この結果、実質的に炭化物を加えたことと同じ効果になる。
【0021】
以上のように、実質的に炭化物を加える本発明は従来の黒鉛電極製造工程と同様の工程を経て作ることができる。特に押出工程を経て製造されるので、コークスの中で針状のものは押出方向に揃う。この結果、押出成形における押出方向の熱伝導度は極めて高いものとなる。
【0022】
すなわち、この発明のアルミニウム−黒鉛−炭化物複合体は、高伝熱媒体である。
【0023】
上述したいずれの実施形態においても、コークス粉末、又は、コークス粉末と黒鉛粉末との混合粉末に対して、上述した炭化物粉末、酸化物粉末、金属粉末を混合する割合は、コークス粉末、又は、コークス粉末と黒鉛粉末との混合粉末100質量部に対して、10〜30質量部にすることができる。
【0024】
本発明の目的を達成する上で、また、得られたアルミニウム−黒鉛−炭化物複合体の加工性の観点からこの範囲が望ましい。
【0025】
上述した特許文献2(特開2009−248164号公報=特許5061018号)の提案では、炭化ケイ素を利用し、押出工程を経ていない。そこで、熱伝導度は低いものしか得られない。
【0026】
本発明で利用する炭化物は3,000℃でも安定であるが炭化ケイ素は2,500℃以上ではケイ素が消失してしまう。そこで、本発明の製造工程では炭化ケイ素を利用することはできない。
【0027】
本発明による複合体は、炭化物を含む複合体、すなわち、アルミニウム−黒鉛−炭化物複合体である。
【0028】
このように炭化物を含む本発明の複合体は、上述した特許文献1(特開2000−203973号公報=特許3673436号)で提案されている金属複合材料と比較すると、その脆弱性を克服したものとなる。
【0029】
そこで、例えば、板状物の場合、その厚さは、特許文献1の金属複合材料製の板状物の1/4〜1/10にすることができる。これによって、コストを大きく削減できる。
【0030】
また、この発明の複合体は押出工程を経て製造されるので、押出工程を経た炭化物を含む黒鉛は、粒子が一方向に揃い、この結果、押出成形における押出方向の熱伝導度は極めて高いものとなる。
【0031】
そこで、この発明のアルミニウム−黒鉛−炭化物複合体は、放熱板、冷却板などの放熱部品に最適な部材として有用である。
【0032】
例えば、基板上に配線された所にLED素子を配したLEDモジュール、高出力半導体であるIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、Insulated Gate Bipolar Transistor)の基板、半導体の中央演算素子の放熱板、更に、ルーター、サーバーの素子の冷却板として好適なアルミニウム−黒鉛−炭化物の複合体を提供することができる。