特許第6722100号(P6722100)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6722100
(24)【登録日】2020年6月23日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】コンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/12 20060101AFI20200706BHJP
   H01G 9/08 20060101ALI20200706BHJP
【FI】
   H01G9/12 Z
   H01G9/12 C
   H01G9/08 Z
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-250411(P2016-250411)
(22)【出願日】2016年12月26日
(65)【公開番号】特開2018-107225(P2018-107225A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年6月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】特許業務法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】川崎 友彦
【審査官】 田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−092913(JP,A)
【文献】 特開2004−319463(JP,A)
【文献】 特開2003−243266(JP,A)
【文献】 実開昭51−027845(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/12
H01G 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張可能な底面を有する有底円筒状の金属製の外装ケースと、
前記外装ケースに設けられた圧力弁と、
セパレータを介して陽極箔と陰極箔の両電極箔を重ね合わせて巻回して駆動用電解液を含浸するとともに、前記外装ケースに収納したときに陰極箔が当該外装ケースの内壁と導通する素子と、
前記素子を収納した前記外装ケースの開口部を封止する封口体と、前記封口体を貫通して各電極箔と導通する端子とを有するコンデンサ本体と、
前記外装ケースの底面と対向配備し、前記外装ケースが膨張したときに前記圧力弁が開弁する前に前記外装ケースの底面と接触する金属部材と、
前記陽極箔に導通する端子と、前記金属部材とを導通接続する導電体と、
中央に開口部を有するとともに、前記外装ケースの底面側周縁部に装着される環状部材と、を備え、
前記金属部材は、前記環状部材の開口部に固定されることを特徴とするコンデンサ。
【請求項2】
請求項1に記載のコンデンサにおいて、
前記金属部材と前記導電体とを流れる電流経路内に電流調整用の抵抗器を介装した
ことを特徴とするコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外装ケースから駆動用電解液の漏れを防止することが可能なコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
外装ケースに駆動用電解液を含有する電子部品として、電解コンデンサおよび電気二重層コンデンサなどが知られている。これらコンデンサは、過電圧または過電流などの異常ストレスが印加されると、駆動用電解液が分解されてガスを発生する。ガスの発生に伴って素子を密封した外装ケースが破裂しないように、外装ケースの底面に弱体部である圧力弁を設けて所定の圧力で開弁するように構成されている(特許文献1を参照)。
【0003】
また、次のような技術が提案されている。駆動用電解液の飛散を防ぐために、内圧が上昇すると、樹脂製の封口端子板の中央に設けられた貫通孔を圧力ゴムがスライドし、当該圧力ゴムの先端側に装着したショートリングが、当該封口端子板から貫通孔に向けて露出する陽極箔と陰極箔の両電極端子と接触し、端子間をショートさせてコンデンサの機能を停止させる(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−138042号公報
【特許文献2】特開2010−272566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のコンデンサでは、圧力弁が開弁すると、開口部から駆動用電解液が外部に漏れて基板に付着し、基板の腐食またはショートを招く可能性があった。
【0006】
一方で、特許文献2に記載のコンデンサによれば、上記した問題の発生を防止することができる。しかしながら、特許文献2に記載のコンデンサは、構成が複雑であることに加え、封口部側を下方に向けて設置する基板端子形やリード線形には適用できないという課題がある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、簡素な構成で駆動用電解液の外部への漏れを防止可能なコンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下のようなコンデンサを提供する。
【0009】
すなわち、本発明の実施態様に係る電子部品は、下記の構成を有する。
膨張可能な底面を有する有底円筒状の金属製の外装ケースと、
前記外装ケースに設けられた圧力弁と、
セパレータを介して陽極箔と陰極箔の両電極箔を重ね合わせて巻回して駆動用電解液を含浸するとともに、前記外装ケースに収納したときに陰極箔が当該外装ケースの内壁と導通する素子と、
前記素子を収納した前記外装ケースの開口部を封止する封口体と、前記封口体を貫通して各電極箔と導通する端子とを有するコンデンサ本体と、
前記外装ケースの底面と対向配備し、前記外装ケースが膨張したときに前記圧力弁が開弁する前に前記外装ケースの底面と接触する金属部材と、
前記陽極箔に導通する端子と、前記金属部材とを導通接続する導電体と、
中央に開口部を有するとともに、前記外装ケースの底面側周縁部に装着される環状部材と、を備え、
前記金属部材は、前記環状部材の開口部に固定されることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、駆動用電解液が分解されて発生したガスによって外装ケースの内圧が上昇するのに伴って外装ケースが膨張する。このとき、当該外装ケースの底面と金属部材が接触する。すなわち、駆動用電解液によって陰極箔と導通する金属製の外装ケースと陽極箔と導通する金属部材との接触によって実質的に電極間がショートし、コンデンサの機能が停止する。したがって、ガスの発生により、内圧が所定値を超えて上昇した場合の外装ケースの開弁または破裂を未然に防止するので、外装ケースから外部に駆動用電解液が漏れるのを防止することができる。
また、この構成によれば、金属部材とコンデンサが一体的に構成されるので、回路基板への実装が容易になる。
【0011】
また、金属部材および導電体は、外装ケースの外部に設けられているので、複雑かつ微細な加工が不要となる。すなわち、簡素な構成でコンデンサの機能を確実に停止させることができる。
【0012】
なお、上記構成において、前記金属部材と前記導電体とを流れる電流経路内に電流調整用の抵抗器を介装することが好ましい。
【0013】
この構成によれば、導電体と外装ケースとが接触して大電流が流れるのを回避することができ、ひいては、ショート時の火花発生や、端子の焼損を防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、駆動用電解液の漏れを防止可能なコンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明による電解コンデンサの全体構成を示す斜視図である。
図2】本発明による電解コンデンサで使用されるコンデンサ素子の斜視図である。
図3】本発明による電解コンデンサ本体の縦断面図である。
図4】本発明による電解コンデンサの側面図である。
図5】本発明の電解コンデンサの機能停止を示す模式図である。
図6】本発明の変形例による電解コンデンサに装着する金属部材の構成を示す斜視図である。
図7】本発明の変形例による電解コンデンサの縦断面図である。
図8】本発明の変形例による電解コンデンサの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面に基づき詳細に説明する。なお、本実施形態では、コンデンサとして電解コンデンサを例にとって説明する。
【0019】
図1に示すように、本実施形態のコンデンサ1は、電解コンデンサ本体2、金属部材3および導電体4などから構成されている。
【0020】
電解コンデンサ本体2は、図2に示すように、さらにコンデンサ素子5、弾性封口材6(図3を参照)および外装ケース7を備える。なお、コンデンサ素子5は、本発明の素子に相当し、弾性封口材6は、本発明の封口体に相当する。
【0021】
図2に示すように、コンデンサ素子5は、陽極箔8と、陰極箔9とがセパレータ(電解紙)10を介して巻回された巻回部を構成している。また、本実施形態ではコンデンサ素子5の最外周は、陰極箔9である。当該陰極箔9は、金属製の外装ケース7の内壁と駆動用電解液を介して導通している。
【0022】
陽極箔8と陰極箔9には平坦状のリードタブ11A、11Bがそれぞれ接続されている。このリードタブ11A、11Bは、陽極箔8および陰極箔9からそれぞれから引き出されている。また、リードタブ11A、11Bは、加締め部材12(図3を参照)によって弾性封口材6に固定され、かつ、当該弾性封口材6を貫通する陽極端子13Aおよび陰極端子13Bのそれぞれに接続されている。なお、リードタブ11A、11Bと両端子13A、13Bは、加締め部材12に代えて溶接によって接続してもよい。
【0023】
陽極箔8は、アルミニウム、タンタル、ニオブなどの弁作用金属で形成されている。陽極箔5の表面は、エッチング処理により粗面化されるとともに、陽極酸化(化成)による陽極酸化皮膜(図示せず)が形成されている。
【0024】
また、陰極箔9も、陽極箔8と同様にアルミニウムなどで形成され、その表面は粗面化されるとともに、自然酸化皮膜(図示せず)が形成されている。なお、陰極箔9には、陽極酸化皮膜を形成した箔、チタン、窒化チタン等を表面に蒸着した箔、カーボンやチタン等を担持した箔を用いることもできる。
【0025】
また、セパレータ10には駆動用電解液が保持されている。これにより、陽極箔8とセパレータ10との間に駆動用電解液が保持され、陰極箔9とセパレータ10との間にも駆動用電解液が保持されている。駆動用電解液は、コンデンサ素子5を駆動用電解液中に含浸させることにより保持される。
【0026】
図1および図3に示すように、コンデンサ素子5は、有底円筒状に形成された外装ケース7に収納されている。
【0027】
外装ケース7は、アルミニウムなどの金属により形成されている。図3および図4に外装ケース7を記載しているが、説明の便宜上、底面を上向としている。
【0028】
外装ケース7の開口部は、図3に示すように、陽極端子13Aおよび陰極端子13Bが外部に引き出された状態で、弾性封口材6によって封止されている。弾性封口材6は、外装ケース7の開口部に形成された巻き締め部14によって圧縮された状態で配置されている。なお、外装ケース7の底部には、弱体部である圧力弁15(図1参照)が設けられており、内圧が上昇した際に、当該圧力弁15が開弁して内圧を外部に逃がすようになっている。なお、本実施形態は、底面7が膨張可能な限り、外装ケース7に当該圧力弁15を設けない構成であってもよい。
【0029】
弾性封口材6には、陽極端子13Aと陰極端子13Bがそれぞれ貫通される2つの貫通孔19が形成されている。弾性封口材6に力が作用していない無負荷状態での貫通孔19の径は、両端子13A、13Bの外径よりも若干小さい。
【0030】
弾性封口材6は、ゴムまたは熱可塑性エラストマーを基材とする組成物により形成されている。弾性封口材3を構成するゴムとしては、具体的には、EPT(エチレンプロピレンターポリマー)、EPDM(エチレンプロピレンジエンモノマー共重合体)、IIR(イソプレンイソブチレンラバー)などが用いられる。
【0031】
金属部材3は、1枚の金属プレートを折り曲げて形成した脚部3A、頂部3Bおよび設置部3Cとから構成されている。2つの脚部3Aは、コンデンサ1の電解コンデンサ本体2を回路基板20に実装した状態で、当該電解コンデンサ本体2を挟むように立設される。このとき、脚部3Aと外装ケース7とが接触しないように設定されている。
【0032】
頂部3Bは、両脚部3Aの上部で両脚部3Aを連結しており、外装ケース7の底面7Aと近接対向する。頂部3Bと底面7Aの距離Lは、例えば、外装ケース7の直径が18mmの場合、0.5〜1.0mmに設定されている。当該距離Lは、駆動用電解液が分解されて発生したガスによって外装ケース7の底面7Aが膨張したとき、圧力弁15が開弁する前に頂部3Bと外装ケース7の底面7Aとが接触するように設定されている。したがって、距離Lは、電解コンデンサのサイズなどによって適宜に設定変更される。
【0033】
設置部3Cは、電解コンデンサ1の本体2の外方に向かうように脚部3Aの下端で金属プレートを直角に折り曲げて形成されている。当該設置部には、回路基板20にネジ固定するための貫通孔が形成されている。
【0034】
導電体4は、図4に示すように、回路基板20の裏面側に2本に分割形成されている。一方の導電体4Aの一端は、回路基板20を貫通する電解コンデンサ1の陽極端子13Aと接続している。他方の導電体4Bの一端は、回路基板20を貫通して金属部材3を固定するボルト16およびナット17と接続している。また、2本の導電体4A、4Bは、ディスクリートタイプの抵抗器18のリード端子を介して導通するよう接続されている。すなわち、金属部材3は、導電体4を介して陽極端子13Aと導通している。
【0035】
抵抗器18は、外装ケース7と金属部材3とが接触したときに大電流が流れないように突入電流を調整する。したがって、後述するように、電解コンデンサ1がショートしたときに火花が発生したり、端子が焼損するのを防止する。
【0036】
次に、上記構成の電解コンデンサ1の外装ケースの内圧が上昇してガスが発生した場合の動作について説明する。
【0037】
例えば、電解コンデンサ1への過電圧の印加によって外装ケース内の駆動用電解液が分解され、ガスの発生により内圧が所定値を超えて上昇した場合、図5に示すように、外装ケース7の底面7Aが膨張して金属部材3の頂部3Bと接触する。このとき、外装ケース7の内壁に陰極箔9が駆動用電解液を介して導通しているとともに、陽極端子13Aと金属部材3とが導通しているので、両電極箔8、9がショートする。すなわち、電解コンデンサ1は、外装ケース7の圧力弁15が開弁する前に、放電して機能を停止する。
【0038】
上述のように、本実施形態に係る電解コンデンサ1は、ガスの発生によって外装ケース7が膨張しても圧力弁15が開弁する前に機能が停止するので、圧力弁15の開弁または外装ケース7の破裂などに伴う駆動用電解液の漏れや飛散などによる回路基板20の汚染や腐食などを防止することができる。
【0039】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されず、以下の構成も開示している。
【0040】
(1)実施形態は、陰極箔9が駆動用電解液を介して外装ケース7の内壁と導通しているが、外装ケース7の外周から凹部を形成し、当該凹部に応じて内壁に形成された隆起部を陰極箔に直接接触させてもよい。
【0041】
(2)上記実施形態では、電解コンデンサ本体2と金属部材3とを分離した構成であったが、一体的に構成してもよい。例えば、図6に示すように、外装ケース7の周縁に嵌合する中央部に開口を有する環状部材21を形成し、環状部材21の開口部に金属部材3を装着する(図7を参照)。
【0042】
環状部材21は、絶縁体で構成されている。また、環状部材21は、図7に示すように、環状周縁部の内壁面から径方向中心に向けて突き出た鍔部22を有する。当該鍔部22は、通常状態で平板状の金属部材3と外装ケース7の底面7Aとが接触するのを防止するようクリアランスを形成する。すなわち、鍔部22の厚みは、上述のように、ガスの発生によって外装ケース7が膨張するときに、圧力弁15が開弁する前に金属部材3と底面7Aが接触するように設定されている。なお、鍔部22は、金属部材3と底面7Aのクリアランスを確保できればよいので、環状部材21の内壁の全周に設けてもよいし、部分的に設けてもよい。
【0043】
金属部材3は、円板状であって、鍔部22によって支持されるとともに、外周が環状部材21に埋設されている。埋設された金属部材3の一部に抵抗器18が接続されている。抵抗器18は、基板20に搭載してもよいが、環状部材21に埋設されているのが好ましい。
【0044】
環状部材21を外装ケース7に装着した状態で、絶縁体で被覆したリード線23によって抵抗器18と陽極端子13Aとを接続する。
【0045】
上記構成によれば、金属部材3が環状部材21を介して電解コンデンサ本体2と一体的に構成されるので、コンデンサ1を回路基板20に実装するのが容易になる。
【0046】
なお、上記構成において、平板状の金属部材3に代えて金網を環状部材21に装着してもよい。この構成によれば、外装ケース7の底面7Aが開放されるので放熱性が向上する。
【0047】
また、上記構成では、環状部材21に抵抗器18を埋設しているが、図8に示すように、環状部材21の一部を切欠いて金属部材3を露出させ、当該切欠き部内に抵抗器18を設けるとともに、金属部材3と接続するように構成してもよい。
【0048】
(3)上記実施形態では、電解コンデンサを例にとって説明したが、電解コンデンサに限らず、例えば、電気二重層コンデンサなどの駆動用電解液を素子に含浸させたコンデンサに、上記各実施形態に記載の構成を適用することができるのはいうまでもない。
【符号の説明】
【0049】
1 コンデンサ
2 電解コンデンサ本体
3 金属部材
4 導電体
5 コンデンサ素子
6 弾性封口材
7 外装ケース
8 陽極箔
9 陰極箔
11A、11B リードタブ
13A 陽極端子
13B 陰極端子
18 抵抗器
20 回路基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8