特許第6722112号(P6722112)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6722112患者の吸入過程を訓練及び/又は制御する方法、電子装置、吸入トレーニングシステム及び情報記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6722112
(24)【登録日】2020年6月23日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】患者の吸入過程を訓練及び/又は制御する方法、電子装置、吸入トレーニングシステム及び情報記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   G09B 9/00 20060101AFI20200706BHJP
   A61M 13/00 20060101ALI20200706BHJP
   A61M 15/00 20060101ALI20200706BHJP
【FI】
   G09B9/00 Z
   A61M13/00
   A61M15/00 Z
【請求項の数】12
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2016-561744(P2016-561744)
(86)(22)【出願日】2015年4月2日
(65)【公表番号】特表2017-513066(P2017-513066A)
(43)【公表日】2017年5月25日
(86)【国際出願番号】EP2015000720
(87)【国際公開番号】WO2015154864
(87)【国際公開日】20151015
【審査請求日】2018年2月5日
(31)【優先権主張番号】14001266.7
(32)【優先日】2014年4月7日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】14002327.6
(32)【優先日】2014年7月8日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】14003485.1
(32)【優先日】2014年10月10日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503385923
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100171675
【弁理士】
【氏名又は名称】丹澤 一成
(72)【発明者】
【氏名】アダムス パトリシア
(72)【発明者】
【氏名】フランク マリオン
(72)【発明者】
【氏名】ワクテル ヘルベルト
【審査官】 古川 直樹
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−522899(JP,A)
【文献】 特表2013−523395(JP,A)
【文献】 米国特許第05333106(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0116241(US,A1)
【文献】 特表2013−501566(JP,A)
【文献】 特表2013−514818(JP,A)
【文献】 特表2008−532587(JP,A)
【文献】 特表2013−516265(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/107533(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0128330(US,A1)
【文献】 特表2013−529972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 1/00 − 9/56
G09B 17/00 − 19/26
A61M 11/00 − 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の吸入過程を訓練及び/又は制御する方法であって、
− 吸入トレーニング装置(1)を吸入器(4)のマウスピース(3)上に取り外し可能に取り付けるステップと、
− 前記吸入トレーニング装置(1)を用いた前記患者の吸入過程中に、前記吸入器(4)の前記マウスピース(3)内の空気流を定量化するステップと、
− 前記吸入トレーニング装置(1)から受け取られた空気流信号を、前記吸入トレーニング装置(1)から分離したポータブル通信装置(7)によって評価するステップと、 − 前記ポータブル通信装置(7)により、前記評価した空気流信号の体積流量と共に変化する視覚フィードバックを前記患者に提供するステップと、
− 前記体積流量が第1の閾値未満である時に第1の視覚フィードバックを提供するステップと、
− 前記体積流量が第2の閾値を超えた時に第2の視覚フィードバックを提供するステップと、
− 前記体積流量が前記第1の閾値を超えて前記第2の閾値未満である時に第3の視覚フィードバックを提供するステップと、
− 前記空気流の継続時間に依存して前記第3の視覚フィードバックを変化させるステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
トレーニング中に薬剤の放出及び/又はあらゆる流体の小出しを防ぐように、前記吸入トレーニング装置(1)の阻止装置(2c)によって前記吸入器(4)の作動が阻止される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
トレーニング中に前記ポータブル通信装置(7)によって前記吸入トレーニング装置(1)及び/又は特定のタイプの前記吸入器(4)の存在を検出し、トレーニング中に前記吸入トレーニング装置(1)及び/又は特定のタイプの前記吸入器(4)が検出された時にのみ、空気流に関連するフィードバックを提供するステップを含む、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記吸入トレーニング装置(1)のマイク(5)が前記吸入器(4)の前記マウスピース(3)の空気孔を通る前記空気流のノイズを測定し、これにより前記吸入器(4)の前記マウスピース(3)内の前記空気流は、前記マイク(5)によって定量化される、
請求項1から3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記吸入トレーニング装置(1)は、トレーニング中に基準音を生成し、前記ポータブル通信装置(7)が前記基準音をモニタし、トレーニング中に前記吸入トレーニング装置(1)の存在を検出する、
請求項1から4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
患者の吸入過程を訓練及び/又は制御する吸入トレーニングシステム(35)であって、
吸入トレーニング装置(1)と、
吸入器(4)と、
ポータブル通信装置(7)であって、
− 前記吸入トレーニング装置(1)から受け取られた、前記患者の吸入過程中における前記吸入器(4)のマウスピース(3)内の空気流を定量化する信号を評価し、
− 前記評価した信号の体積流量と共に変化する視覚フィードバックを前記患者に提供し、
− 前記体積流量が第1の閾値未満である時に第1の視覚フィードバックを提供し、
− 前記体積流量が第2の閾値を超えた時に第2の視覚フィードバックを提供し、
− 前記体積流量が前記第1の閾値を超えて前記第2の閾値未満である時に第3の視覚フィードバックを提供し、
− 前記空気流の継続時間に依存して前記第3の視覚フィードバックを変化させる、
ように構成されたポータブル通信装置と、
を備え、
前記吸入トレーニング装置(1)は前記吸入器(4)の前記マウスピース(3)上に取り外し可能に取り付けられていることを特徴とする吸入トレーニングシステム。
【請求項7】
前記吸入トレーニング装置(1)は、トレーニング中に基準音を生成するように構成された電子機器を含む、
請求項6に記載の吸入トレーニングシステム。
【請求項8】
前記基準音は、前記吸入トレーニング装置(1)の前記電子機器内に定められた周波数及び振幅の発振器を実装して前記基準音をマイク信号に混合させることによって実現される、
請求項7に記載の吸入トレーニングシステム。
【請求項9】
前記基準音の前記発振器は、低電圧演算増幅器、及び1.2Vの振幅を定める精密電圧コントローラの周囲に構成される、
請求項8に記載の吸入トレーニングシステム。
【請求項10】
前記ポータブル通信装置(7)は、トレーニング中に前記吸入トレーニング装置(1)の存在を検出し、トレーニング中に前記吸入トレーニング装置(1)が検出された時にのみ、空気流に関連するフィードバックを提供するように構成される、
請求項6に記載の吸入トレーニングシステム。
【請求項11】
前記ポータブル通信装置(7)は、トレーニング中に前記吸入トレーニング装置(1)によって生成された基準音をモニタし、トレーニング中に前記吸入トレーニング装置(1)の存在を検出するように構成される、
請求項6に記載の吸入トレーニングシステム。
【請求項12】
前記ポータブル通信装置(7)は、前記吸入トレーニング装置(1)から受け取った前記信号内における特徴的音声信号の存在を検出し、特徴的音声信号が検出された場合は空気流評価を一時的に中断するように構成される、
請求項6に記載の吸入トレーニングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の吸入過程を訓練及び/又は制御する方法、患者の吸入過程を訓練及び/又は制御する電子装置、患者の吸入過程を訓練する吸入トレーニングシステム、並びに情報記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
吸入する薬剤は、喘息、慢性閉塞性肺疾患、或いは他の慢性又は急性気道状態又は疾患を伴う患者にとって好ましい療法を構成する。
【0003】
薬剤の吸入には、いわゆる吸入器が使用される。最も頻繁に使用されている吸入器は、加圧式定量噴霧式吸入器(pMDI)及び粉末吸入器(DPI)である。pMDIは、患者による吸入時に正確な薬剤量又は投薬量を雲状のエアロゾル液滴の形で患者の肺に供給するように開発されたものである。粉末吸入器は、患者による吸入時に定量の乾燥微紛粒子を肺に供給するようになっている。
【0004】
例えば、国際公開第2008/151796号には別の吸入器が示されている。この吸入器は、推進薬を用いることなくノズルシステムを通じて定量の薬剤を動きの遅い軟質ミストとして送達する。
【0005】
吸入される薬剤の効果は、主に患者による吸入器の使用方法に依存する。正しい時点に正しい量の薬剤が所望の肺領域に移動することが最適である。そうではなければ治療効果が低下し、及び/又は逆効果のリスクが増加する。
【0006】
この文献には、多くの患者が吸入器を正しく使用していないことを立証する数多くの例が記載されている。正しい吸入法に関する患者の指導が、吸入器の使用を改善することができる。そのためには、書面及び口頭による指導に加えて実践的な訓練が有用である。
【0007】
しかしながら、一般に吸入は無意識に行われ、一生涯にわたって習慣づけられるので、吸入する薬剤の効果を高めるために自身の吸入を変化させることは患者にとって特に困難である。むしろ、指導の短時間後であっても、多くの患者が再び最適でない吸入を使用することが分かっている。従って、吸入とそのチェックを反復的に、好ましくは規則的に実践(具体的には、トレーニングの同意語として使用)することが好ましい。
【0008】
この目的のために吸入トレーニングシステムを開発した。既知の吸入トレーニングシステムは、とりわけ、患者をトレーニングすべき吸入モデル、患者へのフィードバックのタイプ(例えば、音響的又は視覚的)、測定される変数(例えば、吸入量、吸入中に生じる体積流量、流速又は質量流、吸入過程中に吸入された粒子の速度)、センサ及びアクチュエータ(例えば、機械式、磁気式又は電子式)、並びにサイズ、取り扱い及びコストが異なる。吸入トレーニングシステムには、市販の吸入器を使用するものもあれば、吸入器又はその一部をコピー又は模倣したものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許出願公開第14001266号明細書
【特許文献2】国際公開第2009/115200号
【特許文献3】欧州特許第2614848号明細書
【特許文献4】国際公開第2008/151796号
【特許文献5】国際公開第1996/06011号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、患者の吸入過程の効果的で、単純で、信頼性が高く、快適で、及び/又はコスト効率の高いトレーニング、及び/又は患者による吸入過程の制御を可能にする方法、電子装置、吸入トレーニングシステム及び情報記憶媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、請求項1に記載の方法、請求項9に記載の電子装置、請求項16に記載の吸入トレーニングシステム、又は請求項17に記載の情報記憶媒体によって達成される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【0012】
本発明の1つの態様によれば、方法が、
− 吸入トレーニング装置を用いた患者の吸入過程中に、吸入器のマウスピース内の空気流を定量化するステップと、
− 吸入トレーニング装置から受け取られた空気流信号を電子装置によって評価するステップと、
− 電子装置により、評価した空気流信号の1又は2以上の時変特性と共に変化する視覚フィードバックを患者に提供するステップと、
を含む。
【0013】
適切な吸入トレーニング装置、吸入器及び電子装置については、以下でさらに説明する。
【0014】
本発明において使用する「定量化」という用語は、空気流の特性を数値面で求めることを示す。例えば、定量化は、1又は2以上の測定結果を含むことができる。
【0015】
本発明において使用する「評価」という用語は、例えば、空気流信号又は空気流信号値の分析、解釈、確認、フォーマット及び/又は処理を含むことができる。評価は、空気流信号又は空気流信号値に基づく計算及び/又は演算を含むこともできる。
【0016】
視覚フィードバックを提供するステップは、写真、写真シーケンス、アニメーション及び/又はビデオを表示するステップを含む。
【0017】
本発明の方法によれば、視覚フィードバックは、評価した空気流信号の1又は2以上の時変特性と共に変化する。換言すれば、視覚フィードバックの出現及び/又は発生は、評価した空気流信号の時間変動する少なくとも1つの特性に依存する。
【0018】
本発明の方法は、効果的で快適でコスト効率の高い吸入過程のトレーニングを可能にする。さらに、患者が自身の吸入過程を制御し、所望の吸入技術に向けて補正することを可能にする。患者は、電子装置によって提供されたフィードバックに基づいて、患者をコントローラとして制御が行われるように吸入過程を、従って空気流を変化させることができる。
【0019】
フィードバックの提供は相互作用的であり、すなわち個別学習のための介入及び制御の可能性を患者が利用できるようにすることが好ましい。これを行うために、例えば、情報の選択及び表現タイプを患者の予備知識、関心及び必要性に適合させることができ、又は患者によって操作することができる。本発明では、単に情報を利用可能にするだけでは相互作用的フィードバックは構成されない。
【0020】
視覚フィードバックは、空気流の体積流量及び/又は継続時間と共に変化することが好ましい。体積流量は、単位時間当たりに所与の表面を通過する空気の体積であり、多くの場合l/分として表される。
【0021】
この場合、本発明の方法は、
− 体積流量が第1の閾値未満である時に第1の視覚フィードバックを提供するステップと、
− 体積流量が第2の閾値を超えた時に第2の視覚フィードバックを提供するステップと、
− 体積流量が第1の閾値を超えて第2の閾値未満である時に第3の視覚フィードバックを提供するステップと、
を含むことが好ましい。
【0022】
従って、吸入過程を制御するための目標通路が定められる。
【0023】
この場合、本発明の方法は、空気流の継続時間に依存して第3の視覚フィードバックを変化させるステップをさらに含むことが好ましい。
【0024】
視覚フィードバックは2次元又は3次元オブジェクトを含み、方法は、空気流の体積流量及び/又は継続時間に依存してオブジェクトのサイズ及び/又は色及び/又は位置を変化させるステップを含むことが好ましい。
【0025】
本発明の方法は、患者の吸入過程の正しい吸入のための音声指示及び/又は最適化のためのアドバイスを提供するステップを含むことが好ましい。
【0026】
本発明の方法は、トレーニング中に吸入トレーニング装置及び/又は電子装置によって患者の呼気の存在を検出し、患者の呼気が検出された時に第4の視覚フィードバックを提供するステップを含むことが好ましい。トレーニング中に患者が吸入器のマウスピース内に意図せずに息を吐き出した場合、これによって誤った又は非効率的な患者の挙動が不当に強化される可能性がある。従って、トレーニング中に患者の呼気の存在を検出することにより、患者の吸入過程の効果的なトレーニングが可能になる。
【0027】
本発明の方法は、トレーニング中に電子装置によって吸入トレーニング装置及び/又は特定のタイプの吸入器の存在を検出し、トレーニング中に吸入トレーニング装置及び/又は特定のタイプの吸入器が検出された時にのみ、空気流に関連するフィードバックを提供し、及び/又はトレーニング中に吸入トレーニング装置又は特定のタイプの吸入器が検出されなかった時に患者に警告を示すステップを含むことが好ましい。
【0028】
吸入トレーニング装置及び/又は特定のタイプの吸入器の存在を検出するステップは、例えば、トレーニング中に吸入トレーニング装置によって生成される基準音によって実現することができる。
【0029】
本発明の別の態様は、患者の吸入過程を訓練及び/又は制御する電子装置に関する。電子装置は、情報の取り込み、送信及び/又は出力が可能であり、個人が容易に持ち運ぶことができるポータブル通信装置であることが好ましい。ポータブル通信装置の典型的な用途は、通話、データ送信、ゲーム、文書処理、テーブル処理、画像処理、写真撮影及び音楽再生である。ポータブル通信装置の典型的な例は、携帯電話機、スマートフォン、タブレットPC、ハンドヘルド装置及びPDAである。本発明の範囲内の電子装置は、吸入トレーニング装置から分離又は独立した装置である。
【0030】
本発明の電子装置は、
− 吸入トレーニング装置から受け取られた、患者の吸入過程中における吸入器のマウスピース内の空気流を定量化する信号を評価し、
− 評価した信号の1又は2以上の時変特性と共に変化する視覚フィードバックを患者に提供する、
ように構成される。
【0031】
この実施形態では、特に吸入トレーニング装置から受け取られた空気流信号を評価し、及び/又は単純で、直観的で、確実で、コスト効率の高い方法で患者にフィードバックを行うために電子装置の機能を活用することができる。同時に、この実施形態では、患者の吸入過程の訓練に関し、単純かつコスト効率の高い方法で電子装置の機能を拡張することができる。
【0032】
ポータブル通信装置の人気が高いので、吸入トレーニングのためだけに特別な電子装置を購入したいと望まない患者にも吸入トレーニングへのアクセスを提供することができる。ポータブル通信装置の所有者は、ポータブル通信装置の扱いに慣れているので、本発明において特許請求する実施形態は、より簡単でより速い最適な吸入過程の学習も可能にする。多くの個人は、常にポータブル通信装置を持ち運んでいるので、本発明において特許請求する実施形態は、頻度が高く、場合によっては規則正しい吸入トレーニングをもたらすことができる。さらに、本発明において特許請求する実施形態は、操作の容易さ及び吸入トレーニングの手軽さを高める。
【0033】
電子装置は、空気流の体積流量及び/又は継続時間と共に変化する視覚フィードバックを患者に提供するように構成されることが好ましい。
【0034】
本発明の電子装置は、
− 体積流量が第1の閾値未満である時に第1の視覚フィードバックを提供し、
− 体積流量が第2の閾値を超えた時に第2の視覚フィードバックを提供し、
− 体積流量が第1の閾値を超えて第2の閾値未満である時に第3の視覚フィードバックを提供する、
ように構成されることが好ましい。
【0035】
本発明の電子装置は、空気流の継続時間に依存して第3の視覚フィードバックを変化させるように構成されることが好ましい。
【0036】
本発明の電子装置は、患者の吸入過程の正しい吸入のための音声指示及び/又は最適化のためのアドバイスを提供するように構成されることが好ましい。
【0037】
本発明の電子装置は、トレーニング中に患者の呼気の存在を検出し、患者の呼気が検出された時に第4の視覚フィードバックを提供するように構成されることが好ましい。
【0038】
本発明の電子装置は、トレーニング中に吸入トレーニング装置の存在を検出し、トレーニング中に吸入トレーニング装置が検出された時にのみ、空気流に関連するフィードバックを提供し、及び/又はトレーニング中に吸入トレーニング装置が検出されなかった時に患者に警告を示すように構成されることが好ましい。
【0039】
本発明の電子装置は、吸入トレーニング装置から受け取られた信号内における特徴的な音声信号の存在を検出するように構成されることが好ましい。通常、人間の声は、平坦な音響スペクトルを有しておらず、むしろ最も低いフォルマント周波数から開始する一連の等間隔の山と谷で構成される。電子装置は、吸入トレーニング装置から受け取られた信号がそのような特徴的な音声信号又はスペクトルに偏っている場合には、空気流評価を一時的に中断するように構成することができる。従って、声の影響に対する堅牢性が向上する。
【0040】
電子装置は、例えばスピーカなどの、音響フィードバックのための装置、及び/又は、例えば画面などの、視覚フィードバックのための装置を有することが好ましい。
【0041】
電子装置は、測定され、処理され、及び/又は評価された信号を別の電子装置に無線送信するように設計されることが好ましい。このようにして、例えば医師に信号を送信し、医師は、この信号に基づいて診断結果を準備し、及び/又は吸入過程を改善するアドバイスを与えることができる。
【0042】
電子装置は、可能な限り最適な効果的吸入時間Tin,effを実践するように設計され、又はそのように使用できることが好ましい。このようにして、患者は、可能な限り最適な効果的吸入時間を達成することができる。効果的吸入時間は、吸入トレーニング過程の吸入中の時間であり、特に薬剤量又は投薬量の送達をシミュレートした模擬吸気時間である。具体的には、効果的吸入時間は、投薬量の吸入と模擬送達とが重複する時間部分である。
【0043】
この効果的吸入時間に基づいて、吸入投薬量(iDoD)を推定することができる。このiDoDは、特に薬剤が一般に一定速度で送達される場合に適用される。吸入投薬量は、送達投薬量の百分率として得ることができる。効果的吸入時間及び吸入投薬量は、吸入過程の質を表す。
【0044】
電子装置は、効果的吸入時間を実践するために、効果的吸入時間を決定するように設計されることが好ましい。電子装置は、効果的吸入時間を決定するために、送達時間又は噴霧時間を決定することができる。送達時間又は噴霧時間は、投薬量の送達をシミュレートした時間である。送達の終了は、一定の送達継続時間又は噴霧継続時間(SDur)によって固定されることが好ましい。効果的吸入時間は、噴霧継続時間の百分率で得られることが好ましい。
【0045】
1つの好ましい実施形態では、送達時間が吸入過程又は吸入の時間(Tin)外である場合、すなわち吸入過程の開始前に送達時間が過ぎた場合、効果的吸入時間は0%である。この実施形態では、送達時間が完全に吸入過程の時間内にある場合、効果的吸入時間は100%である。
【0046】
吸入過程の開始前に送達が開始され、吸入過程の終了後に終了した場合、効果的吸入時間は、以下の式に従って決定されることが好ましい。
in,eff[%]=Tin*100/SDur
【0047】
吸入過程の開始後であって終了前に送達が開始され、吸入過程の終了後に終了した場合、効果的吸入過程は、以下の式に従って決定されることが好ましい。
in,eff[%]=(1−(Δ+SDur−Tin)/SDur)*100
Δは、送達の開始と吸入過程の開始との間の差分であり、すなわち吸入過程の開始後に送達が開始された場合にはΔが正の値を有し、吸入過程の開始前に送達が開始された場合にはΔが負の値である。
【0048】
吸入過程の開始前に送達が開始され、吸入過程の開始後かつ終了前に送達が終了した場合、効果的吸入過程は、以下の式に従って決定されることが好ましい。
in,eff[%]=(Δ+SDur)/SDur*100
Δは、送達の開始と吸入過程の開始との間の差分である。
【0049】
具体的には、効果的吸入時間を決定する際には、吸気時間のみを吸入時間Tinとみなすことができる。従って、呼吸又は呼気を止めることによって吸気が中断された場合、これらの時間は、吸入時間から差し引かれることが好ましい。
【0050】
これとは別に、又はこれに加えて、電子装置は、吸入過程において生じた体積流量又は流量、及び/又はここでは生じた流速を決定又は推定するように設計することができる。これらの2つの物理量は、吸入過程の質を高度に表す。
【0051】
電子装置は、流速を決定又は推定するように設計することもできる。吸入される薬剤の速度は、薬剤をどこに定置すべきか(喉、肺)に応じて異なることが分かっている。従って、吸入が正しかったかどうかの判定においては、流速が関心事項になり得る。電子装置は、やはり吸入が適正又は十分であったことを保証するために、一定の流速間隔内に流れが存在していた時間、又は一定の下限を上回っていた時間を決定又は推定するように設計することもできる。
【0052】
本発明の別の態様は、患者の吸入過程を訓練及び/又は制御する吸入トレーニングシステムに関する。
【0053】
本発明の吸入トレーニングシステムは、後述するような吸入トレーニング装置と、後述するような吸入器と、上述したような電子装置とを含む。
【0054】
この吸入トレーニングシステムは、患者の吸入過程の効果的で、単純で、確実で、快適で、コスト効率の高いトレーニング、トレーニング中に患者によって生じた空気流の正確な定量化、患者に優しいリアルタイムなフィードバック、及び患者による吸入過程の制御を可能にする。
【0055】
吸入トレーニングシステムは、トレーニング中に患者の呼気の存在を検出するように構成されることが好ましい。トレーニング中に患者が吸入器のマウスピース内に意図せずに息を吐き出した場合、これによって誤った又は非効率的な患者の挙動が不当に強化される可能性がある。従って、トレーニング中に患者の呼気の存在を検出することにより、患者の吸入過程の効果的なトレーニングが可能になる。
【0056】
吸気流又は呼気流を測定し、各個々の流量レベルの周波数スペクトルを吸気及び呼気について別個に抽出した結果、一般に吸気流では、呼気流に比べて、より平坦なスペクトル応答が生じることが分かった。このことは、低周波エネルギー含量と高周波エネルギー含量との間の比率を計算した場合に、呼気では吸気よりも大きな比率が生じることを意味する。吸入トレーニングシステムは、これらの2つの周波数クラスタを分離する好適な閾値を定めることによってこの関係を利用する。例えば、300Hzのフィルタを用いて低周波信号のコンテンツを評価し、7000Hzのフィルタを用いて高周波信号のコンテンツを評価したところ、約10〜30l/分の低流量では、70という閾値が吸気と呼気を良好に分離することが確認された。
【0057】
しかしながら、高流量に向かうほど、吸気及び呼気のスペクトル曲線は、それぞれ次第に類似してくる傾向にあり、すなわちこの分離は、高流量では感度を有していない。この状況に対処するために、上記の流動音スペクトルの別の特徴的な傾向、すなわち低周波領域では呼気音スペクトルの方が相補的な吸気音スペクトルよりも高レベルに達するという傾向に基づいて別のキューを採用する。この観察に基づけば、呼気流の存在を表すさらなるインジケータは、低周波信号エネルギーである。吸入トレーニングシステムは、低周波信号エネルギーが7という閾値を超えた場合に呼気を検出したと判断することが好ましい。この閾値は、約50〜90l/分の高流量において吸気と呼気との間の適切な分離をもたらす。
【0058】
好ましい閾値の定義は、高度な検出特異性を有すること、すなわち吸入トレーニングシステムは、患者が実際に正しく吸入を行っている間に呼気についての警告を与えるべきではないという明らかな目的を持って行った。
【0059】
本発明の別の態様は、上述したような電子装置の情報記憶媒体に関する。情報記憶媒体には命令が記憶され、この命令は、プロセッサによって実行された時に、少なくとも、
− グラフィカルユーザインターフェイスを初期化するステップと、
− 吸入トレーニング装置から受け取られた信号値を処理するステップと、
− 処理した信号値の1又は2以上の時変特性と共に変化する視覚フィードバックを、グラフィカルユーザインターフェイスを介してユーザに提供するステップと、
を実行させる。
【0060】
本発明において特許請求する情報記憶媒体は、効果的で、単純で、確実で、コスト効率の高い患者の吸入過程訓練を可能にする。
【0061】
欧州特許出願公開第14001266号に、本発明の目的に適した、患者の吸入過程を訓練する吸入トレーニング装置が記載されており、この特許出願は引用により本明細書に組み入れられる。この吸入トレーニング装置は、患者に薬剤を供給するように設計された吸入器のマウスピースへの取り付け、及び好ましくマウスピースからの取り外しが可能なハウジングと、患者の吸入過程中に吸入器のマウスピース内に生じる空気流を測定するように適合されたマイクとを含む。
【0062】
吸入トレーニング装置のハウジングは、ハウジング組み立て中に共にスナップ嵌めされる2つのハウジング部分で構成されることが好ましい。2つのハウジング部分は、吸入器のマウスピースに適合するように設計された2つの単純な機械部品である。従って、マウスピース上にしっかりと収まる頑丈でコスト効率の高いユニットが最短の公差チェーンで形成され、これによって正確なマイク位置、吸入器のマウスピースと吸入トレーニング装置のハウジングとの間の漏れを最小化することに関して最良の性能が確実になり、これによって測定精度及び最終的に機械的安定度が裏付けられる。さらに、ハウジングは、その内部にマイク、さらなる電子機器及びケーブルを収容して保護するのに十分な空間を有する。
【0063】
吸入トレーニング装置は、効果的で快適で確実な吸入過程訓練を可能にする。
【0064】
両ハウジング部分は、滑らかな表面を有する成形プラスチック、具体的にはアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)で作製されることが好ましい。この実施形態は、コスト効率の高い構造と、吸入過程を訓練する患者が吸入トレーニング装置上を例えば指でなぞり又は引っ掻くことによって生じる取り扱いノイズの低減を可能にする。従って、この実施形態は、より高い測定精度を可能にする。
【0065】
測定精度は、両ハウジング部分を低摩擦層で、具体的には光沢のあるクロムで少なくとも部分的に被覆することによってさらに高めることができる。滑らかなABS面と、光沢のあるクロムで被覆した同じ表面との間には、15dBもの摩擦ノイズ差が存在し得ることが分かった。
【0066】
ハウジングは、吸入器のマウスピースに密封取り付けできるように、成形された分割線を含むことが好ましい。この実施形態は、確実な吸入過程トレーニング、頑丈な構造及び正確な流量測定を可能にする。
【0067】
マイクは、吸入器のマウスピースに吸入トレーニング装置を取り付けた時に、ハウジング内の、吸入器のマウスピースの外側の、吸入器のマウスピースの空気孔の近傍に位置することが好ましい。これにより、吸入器の機能に介入する必要なく、或いは吸入器の設計を変更する必要なく正確な流量測定が可能になる。この実施形態では、吸入器の流路の空気力学的挙動が変化しない。こうすることにより、吸入トレーニング装置の存在(又は不在)によって吸入器の医学的適応性が影響されなくなる。
【0068】
ハウジングは、マイクの周囲に、具体的には発泡プラスチック又は軟質シリコーンで作製されたパッド及び/又はスリーブを含むことが好ましい。これによってマイクの絶縁性が向上し、吸入トレーニング装置からマイク内への振動結合が減少する。これにより、取り扱いノイズがさらに減少し、流量測定精度が向上する。
【0069】
マイクは、エレクトレットマイクであることが好ましい。
【0070】
マイクは、吸入器のマウスピースの空気孔を通る空気流のノイズを測定するように適合されることが好ましい。音響学では、ほとんどの中実材料では音が良好に伝わることがよく知られている。患者が吸入器を用いて吸入を行うと、吸入器内の流路が、流量及び乱流に応じて特徴的な流動ノイズ音を生じる。この音の一部が、吸入器の中実構造を通じて伝わる。中実材料では損失が小さいので、この音は、原則的に吸入器表面のあらゆる場所で検出することができる。吸入器のマウスピースの空気孔を通る空気流のノイズを測定する好ましい実施形態は、効果的で確実なトレーニング、及びトレーニング中の正確な流量測定を可能にする。
【0071】
マイクは、指向性を示し、具体的にはカージオイド、スーパーカージオイド、ハイパーカージオイド、又は双方向特性を示すことが好ましい。指向性マイクの特性は、吸入器のマウスピースの外部から生じる信号をマイク自体が無効にするが、内部から生じる音には影響しないことを可能にする。従って、トレーニング中の周囲ノイズからの影響を低減して流量測定精度を高めることができる。
【0072】
吸入トレーニング装置は、上述した電子装置へのインターフェイスを提供することが好ましい。具体的には、電子装置へのインターフェイスは、オーディオジャック、特に3.5mmTRRSヘッドホンコネクタによって実現される。オーディオジャックは、典型的にはアナログオーディオ信号に用いられるコネクタファミリの総称である。通常、オーディオジャックは、典型的には2つ、3つ又は4つの接点を有する円筒形である。4接点バージョンは、TRRSコネクタとして知られており、Tは「先端」を表し、Rは「リング」を表し、Sは「スリーブ」を表す。最新のオーディオジャックでは、3つの標準サイズ、すなわち、6.35mm、3.5mm及び2.5mmが利用可能である。
【0073】
3.5mmTRRSヘッドホンコネクタは、ポータブル通信装置の世界的に最も一般的なコネクタであり、従って提案する実施形態は、吸入トレーニング装置が幅広いポータブル通信装置と互換性を有し、1つの変形例しか必要としないことを確実にする。提案する実施形態は、患者の吸入過程の快適でコスト効率の高いトレーニング、及び患者に優しいリアルタイムなフィードバックを可能にする。
【0074】
しかしながら、たとえメーカーが3.5mmTRRSヘッドホンコネクタの物理フォーマットについて同意していても、電子機器のインターフェイス接続に関連する様々な詳細については意見が食い違う。最も基本的な違いの1つはマイク接続の極性であり、例えば、Apple社の装置ファミリと、Samsung社、HTC社、LG社、Sony社、Motorola社、Microsoft社、Blackberry社及びNokia社などの他のほとんどのメーカーとの間で異なる。以下の表に、典型的な接続スキームを示す。
【表1】
【0075】
吸入トレーニング装置は、TRRSヘッドホンコネクタの接続スキームに応じて電気的接続をマイク及び接地に入れ替えるように構成された電子機器を含むことが好ましい。具体的には、マイクとTRRSヘッドホンコネクタとの間の接続部に配置されたアナログ電子スイッチを用いて、マイク接続の異なる極性を自動的に処理する。特に、マイクのバイアス電圧(すなわち、マイク接続部の正電圧)を用いて関連する切り換えを直接選択し、従って必要に応じてマイク接続と接地接続とを入れ替える。このようなアナログ切り換えは、優れた音声特性と、1オームを十分に下回る極めて限られた抵抗とをもたらす。
【0076】
マイク接続の極性に加え、マイクと接地コネクタとの間のインピーダンスレベルに関連して、外部接続が確立されていることを特定のポータブル通信装置がいつどのように認識するかにもわずかな違いがある。
【0077】
吸入トレーニング装置は、マイクが動作する周波数範囲を電子装置のアナログフロントエンド感度の関数として調整するように構成された電子機器を含むことが好ましい。空気流を評価するには、吸入トレーニング装置のマイクによって測定される、流れによって誘発されるノイズを分析すべきであり、通常、このことは、(例えば、選択した周波数帯域内の)音圧レベルを一定の音圧レベルに変換した後に、ノイズと流れとの間の確立された相関パターンを用いて適切な流量レベルを決定することを意味する。しかしながら、この処理は、十分に定められた電子装置の音響特性、具体的にはアナログフロントエンド感度と線形性、並びに(広帯域信号では)周波数範囲と線形性を想定したものである。
【0078】
通常、電子装置は、高品質な音声に対処するために、200Hz〜20000Hzの周波数範囲をフィルタ処理する。吸入トレーニング装置の観点からすれば、乱流ノイズは、一般に少なくとも100Hz〜10000Hzの周波数にわたる広帯域ノイズプロファイルを有するが、通常、流動信号は、例えば500Hz〜1000Hzの(とりわけ吸入器のタイプに依存する)狭帯域内で良好に伝わる。従って、吸入トレーニング装置の好ましい実施形態では、電子装置の音響特性、具体的にはそのアナログフロントエンド感度に応じて、マイクが動作する周波数範囲を調整することができる。
【0079】
増幅直線性については、吸入トレーニング装置は、潜在的な(未知の)圧縮を生じにくくするために、通常の音声振幅範囲を標的にすることが好ましい。しかしながら、吸入トレーニング装置の電子機器は、ほとんどの制限のある電子装置の線形領域内に留まるように調整可能であり、これによって全ての選択された電子装置に対する十分に一様な電子機器インターフェイスが確実になる。
【0080】
吸入トレーニング装置は、トレーニング中に基準音を生成するように構成された電子機器を含むことが好ましい。従って、この基準音は、常にマイク信号と共に生じて既知の基準を利用可能にする。この基準音は、吸入トレーニング装置の電子機器内に明確に定められた(例えば、約10kHzの)周波数及び振幅の正確な発振器を実装して基準音をマイク信号に混合させることによって実現される。
【0081】
基準音発振器は、低電圧演算増幅器、及び1.2Vの振幅を定める精密電圧コントローラの周囲に構成されることが好ましい。
【0082】
吸入トレーニング装置のハウジングは、吸入器のマウスピースに取り付けられる時に、ハウジングの誤った位置付け(例えば、正しい位置からの上/下及び/又は右/左の回転)を防ぐように設計されることが好ましい。
【0083】
ハウジングは、トレーニング中に薬剤の放出及び/又はあらゆる流体の小出しを防ぐように設計されることが好ましい。具体的には、吸入器のマウスピースに吸入トレーニング装置を取り付けた時に、吸入トレーニング装置のハウジングの一部が、吸入器の薬剤放出アクチュエータを覆う。この実施形態は、吸入トレーニング装置が、例えばEU医療機器指令(MDD/93/42/EEC)などの規制上の要件及び米国医療機器指針(FDA 21 CFR第820部)に従うことを確実にする。
【0084】
電子装置は、具体的にはトレーニング中に吸入トレーニング装置によって生じる基準音により、吸入トレーニング装置及び/又は特定のタイプの吸入器の存在を検出するように構成されることが好ましい。この目的のために、上述したような吸入トレーニング装置によって生じる基準音を利用して、特に特許請求する吸入トレーニング装置がインターフェイス(3.5mmTRRSヘッドホンコネクタ)を介して電子装置に差し込まれたことを確実に自動的に検出することができる。そうでない場合、電子装置は、流れの検出に関するフィードバックを提供しないように構成することができる。
【0085】
吸入訓練は、具体的にはオンラインポータルを介して注文してインストールできる、電子装置に適合するソフトウェアの支援によって行われることが好ましい。通常、このソフトウェアは「アプリ」と呼ばれる。アプリを使用することにより、柔軟性及び操作性が向上する。
【0086】
アプリは、例えば空気流信号の評価、並びに患者及び/又は第三者へのフィードバックに使用することができる。これを行うために、本発明の情報記憶媒体を用いてアプリを利用可能にし、又は実行することができる。情報記憶媒体は、ポータブル通信装置において使用されるように作製され、特に空間要件、エネルギー消費量、信頼性及びデータ伝送速度に関して最適化されることが好ましい。
【0087】
以下、アプリの好ましいステップについて説明する。
【0088】
アプリの好ましいステップでは、第1のステップにおいてアプリを開始する。その後のステップにおいて、グラフィカルユーザインターフェイス(GUI)を起動し、好ましくは電子装置の画面上に表示する。具体的には、視覚的開始指示又は視覚的トリガ指示も表示する。
【0089】
別のステップにおいて、例えば変更されたGUIの内容を表示するために、GUIが更新されたアプリを用いてループ機能を開始する。
【0090】
スタート指示又はトリガ指示は、アプリを用いて評価されることが好ましい。具体的には、ユーザ又は患者の入力、特にユーザ又は患者によるスタート指示又はトリガ指示の作動をモニタする。入力をモニタすることにより、スタート指示又はトリガ指示が作動したかどうかの判定が行われることが好ましい。スタート指示又はトリガ指示が作動したと判定された場合、アプリは、2つの平行分岐に従うことが好ましい。
【0091】
一方では、第1の分岐において、(特に画面上で)視覚的停止指示が作動したかどうかをモニタすることが好ましい。このモニタリングにより、停止指示が作動したかどうかの判定が行われることが好ましい。他方では、停止指示のモニタリングと平行な第2の分岐において、吸入トレーニング装置から受け取られた1又は複数の信号値が読み出される。アプリ又は電子装置は、信号値の処理、特に信号値のデジタル化及び格納を引き起こすことが好ましい。
【0092】
第2の分岐内の別のステップにおいて、アプリ又は電子装置を用いて体積流量プロファイルを求める。
【0093】
第2の分岐内では、アプリ又は電子装置によって吸入過程の開始がモニタされることが好ましい。このモニタリングにより、吸入過程が開始されたかどうかの判定が行われることが好ましい。ここでは、アプリ又は電子装置が、トリガ指示の作動が吸入過程の開始として解釈されるように設計され、これによって吸入過程が開始されたとの判定が行われることが好ましい。
【0094】
吸入過程が開始されたと判定された場合、一方では、アプリ又は電子装置によって開始時間が特定されることが好ましい。また、タイムキーパを介して、アプリ又は電子装置によってさらなる時間値を特定できることが好ましい。
【0095】
吸入過程が開始されたと判定された場合、他方では、アプリ又は電子装置によって吸入過程の終了がモニタされることが好ましい。このモニタリングにより、吸入過程が終了したかどうかの判定が行われることが好ましい。ここでは、アプリ又は電子装置が、(特に画面上の)トリガ指示の作動の繰り返し又は終了指示の作動の繰り返しが吸入過程の終了として解釈されるように設計され、これによって吸入過程が終了したという判定が行われることが好ましい。
【0096】
吸入過程が終了したと判定された場合、アプリ又は電子装置によって停止時間が特定されることが好ましい。
【0097】
規定の吸入過程の開始から開始して所定時間(例えば、20秒)が経過した後に吸入過程の終了をモニタすることによって吸入過程が終了した旨の判定が行われなかった場合、アプリ又はシーケンスは終了又は中止されることが好ましい。アプリ又は電子装置によって中止が確認された場合、アプリは終了する。例えば、GUIをそれ以上表示されないように終了させることができる。さらに、時間値をリセットすることができ、及び/又はメモリを解除することができる。
【0098】
停止時間が特定された場合、アプリ又は電子装置によってタイムキーパが特定されることが好ましい。さらに、電気信号値の評価が行われることが好ましい。従って、例えばアプリ又は電子装置を用いて、上述したような効果的吸入時間及び/又は吸入投薬量を決定することができる。
【0099】
評価の結果をGUI上に表示し、そのためにGUIを更新することができる。
【0100】
さらに、アプリ又は電子装置は、アプリ又は電子装置によって求められた流量が毎分約40リットルの値を上回った時、及び/又は毎分約20リットルの値を下回った時に、患者及び/又は第三者にフィードバックが行われ、特に警告表示が出力されるようにされることが好ましい。
【0101】
停止指示が作動したと判定された場合には、GUIが更新され、及び/又は中止が確認されることが好ましい。アプリは、(特に画面上で)中止指示を作動させることによって終了又は中止させることもできる。
【0102】
本発明の別の態様は、上述したような吸入トレーニングシステムによる吸入過程の実行時に、患者を、具体的には慢性閉塞性肺疾患を患う患者をトレーニングする方法に関する。患者は、この方法により、上述したような吸入トレーニングシステムの使用についてトレーニングされる。この方法は、
− 吸入トレーニングシステムの吸入トレーニング装置を吸入トレーニングシステムの吸入器上に、具体的には吸入トレーニングシステムの吸入器のマウスピース上に取り付けるステップと、
− 吸入トレーニングシステムの吸入トレーニング装置を吸入トレーニングシステムの電子装置に接続するステップと、
− 吸入トレーニングシステムの電子装置上で動作するアプリケーションを開始するステップと、
− 吸入過程を開始するステップと、
− 吸入過程を所定時間にわたって維持するステップと、
− 上述したような吸入トレーニングシステムの電子装置によって提供された視覚フィードバックに基づいて吸入過程を適合させるステップと、
− 吸入過程を停止するステップと、
のうちの少なくとも1つを含む。
【0103】
この方法は、吸入トレーニング装置及び/又は吸入器の位置を補正するステップを含むことが好ましい。この目的のために、電子装置は、吸入トレーニング装置及び/又は吸入器の誤った位置を検出するように構成されることが好ましい。
【0104】
この方法は、吸入トレーニング装置、吸入器及び/又は電子装置を、例えば保守のために交換するステップを含むことが好ましい。
【0105】
吸入トレーニングシステムの吸入トレーニング装置を吸入トレーニングシステムの電子装置に接続するステップは、(例えば、ワイヤの少なくとも1つのプラグに差し込むことによって)有線で、又は(例えば、Bluetooth(登録商標)によって)無線で行うことができる。方法は、吸入トレーニング装置を電子装置と再接続し、及び/又は吸入トレーニング装置を電子装置から分離するステップを含むことが好ましい。
【0106】
方法は、吸入トレーニング装置を吸入器から、具体的には吸入器のマウスピースから取り外すステップを含むことが好ましい。
【0107】
方法は、例えば故障後に、又は反復のために、吸入過程を再開するステップを含むことが好ましい。
【0108】
吸入過程を適合させるフィードバックは、吸入トレーニング装置から受け取られた信号の1又は2以上の時変特性と共に変化し、この信号は、患者の吸入過程中における吸入器のマウスピース内の空気流を定量化することが好ましい。
【0109】
この方法は、アプリケーションのトレーニングモード、具体的には上述したようなトレーニングモードを開始するステップを含むことが好ましい。
【0110】
本発明の別の態様は、吸入過程の実行時、及び/又は吸入トレーニングシステムの使用時に、患者を、具体的には慢性閉塞性肺疾患を患う患者をトレーニングするキットに関する。このキットは、
− 吸入トレーニング装置、具体的には上述したような吸入トレーニング装置と、
− 吸入器、具体的には上述したような吸入器と、
− 電子装置、具体的には上述したような電子装置と、
− 吸入トレーニング装置、吸入器及び/又は電子装置を使用するための指示と、
を含む。
【0111】
この指示は、電子装置によって視覚的及び/又は聴覚的に提供されることが好ましい。
【0112】
この指示は、上述したような吸入トレーニングシステムによる吸入過程の実行時に、患者をトレーニングする方法を患者にさらに伝えることが好ましい。具体的には、この指示は、上述したような方法ステップを行うように患者を導く。
【0113】
本発明の別の態様は、吸入トレーニング装置の奨励方法に関する。この方法は、
− 吸入トレーニング装置を通じて吸入過程をトレーニングすることが、正しい量の薬剤を正しい時点に肺の所望の領域に供給する役に立つこと、
− 吸入トレーニング装置を通じて吸入過程をトレーニングすることが、パッシブ(受動的)ドライパウダー吸入器に比べて相対的に低流量で長時間にわたって吸入を行う役に立つこと、
− 吸入トレーニング装置を通じて吸入過程をトレーニングすることが、吸入過程を制御し、所望の吸入法に向けて補正する役に立つこと、
− 吸入トレーニング装置が、薬剤を吸入しない吸入過程のトレーニングを可能にすること、
− 吸入トレーニング装置が、効果的で、単純で、確実で、快適で、コスト効率の高い吸入過程のトレーニングを可能にすること、及び、
− 吸入トレーニング装置が、トレーニング中に生成される空気流の正確な測定を可能にすること、
から成る群から選択された少なくとも1つのメッセージを患者に伝達するステップを含む。
【0114】
本発明の別の態様は、吸入トレーニング装置の奨励のための情報記憶媒体又は印刷物に関する。この視聴覚装置又は印刷物は、
− 吸入トレーニング装置を通じて吸入過程をトレーニングすることが、正しい量の薬剤を正しい時点に肺の所望の領域に供給する役に立つこと、
− 吸入トレーニング装置を通じて吸入過程をトレーニングすることが、パッシブ(受動的)ドライパウダー吸入器に比べて相対的に低流量で長時間にわたって吸入を行う役に立つこと、
− 吸入トレーニング装置を通じて吸入過程をトレーニングすることが、吸入過程を制御し、所望の吸入法に向けて補正する役に立つこと、
− 吸入トレーニング装置が、薬剤を吸入しない吸入過程のトレーニングを可能にすること、
− 吸入トレーニング装置が、効果的で、単純で、確実で、快適で、コスト効率の高い吸入過程のトレーニングを可能にすること、及び、
− 吸入トレーニング装置が、トレーニング中に生成される空気流の正確な測定を可能にすること、
から成る群から選択された少なくとも1つのメッセージを患者に伝達する。
【0115】
以下、図面の説明の前にいくつかの用語について詳述する。
【0116】
本発明における「吸入過程」という用語は、患者の吸入を含むことが好ましく、吸入は、短い時間間隔にわたって中断することができ、従って連続した素早い吸気を含むことができる。さらに、吸入過程は、空気又は患者の吸気及び/又は呼気及び/又は咳の停止を含むこともできる。
【0117】
本発明における「患者」という用語は、吸入器を使用しなければならない、及び/又は吸入器を使用したいと望む個人、特に気道疾患、具体的には喘息又は慢性閉塞性肺疾患を患っており、吸入器を用いて疾患を治療中の個人を意味することが好ましい。
【0118】
本発明における「流れ」及び「空気流」という用語は、乱流の有無に関わらず、測定可能な空気の流動として定義される。
【0119】
本発明の上記の態様及び特徴、並びにさらなる説明及び特許請求の範囲から導出される本発明の態様及び特徴は、互いに関係なく実装することも、いずれかの組み合わせで実装することもできる。
【0120】
本発明のその他の利点、特徴、特性及び態様は、特許請求の範囲、及び図面を用いた以下の好ましい実施形態の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0121】
図1】本発明による方法の実行に使用される、最終的な組み立て前の状態の吸入トレーニング装置の好ましい実施形態の斜視図、及び本発明による電子装置の好ましい実施形態の正面図を概略的に示す図である。
図2】最終的なハウジングの組み立て後の、吸入トレーニング装置のハウジングの断面を概略的に示す図である。
図3図1の電子装置によって提供される視覚フィードバックの例を概略的に示す図である。
図4図1の電子装置によって提供される視覚フィードバックの別の例を概略的に示す図である。
図5】本発明による吸入トレーニングシステムの好ましい実施形態の斜視図を概略的に示す図である。
図6】非引張状態の吸入器のマウスピースに図1の吸入トレーニング装置を取り付けた、吸入器の断面を概略的に示す図である。
図7図6の吸入トレーニング装置を引張状態で軸方向に約90°回転させた吸入器を概略的に示す図である。
図8】情報記憶媒体の好ましい実施形態、及び吸入トレーニング装置の奨励用印刷物の好ましい実施形態を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0122】
図では、同一又は同様の部品には同じ参照番号を使用し、繰り返しの説明を省略している場合でも対応する特性及び利点が得られる。
【0123】
図1に、本発明による、患者の吸入過程の訓練及び制御方法を実行するために使用する最終的な組み立て前の状態の吸入トレーニング装置1の好ましい実施形態の斜視図を概略的に示す。
【0124】
吸入トレーニング装置1は、吸入器4の、具体的には、例えば国際公開第2008/151796号に示されているようないわゆるRespimat(登録商標)吸入器のマウスピース3又は他のいずれかの構成部品に取り付け可能な、好ましくは取り外し可能なハウジング2を含む。吸入器4は、患者に薬剤を供給するように設計される。
【0125】
好ましい実施形態では、吸入トレーニング装置1が、Respimat吸入器4などの特定の又は限定された吸入器4との組み合わせでのみ機能する。具体的には、吸入トレーニング装置1は、吸入器4に、具体的にはそのマウスピース3に取り付けられた場合にのみ目的通りに機能する。
【0126】
吸入トレーニング装置1は、患者の吸入過程中にマウスピース3内で生じる、又はマウスピース3内への空気流を測定するように適合されたマイク5を含む。
【0127】
好ましい実施形態では、マイク5がエレクトレットマイクである。
【0128】
吸入トレーニング装置1又はマイク5は、吸入器4又はマウスピース3の、図6に示す開口部34などの空気孔を通る空気流のノイズを測定するように適合されることが好ましい。
【0129】
吸入トレーニング装置1のハウジング2は、2つのハウジング部分2a、2b、好ましくは下側ハウジング部分2a及び上側ハウジング部分2bを含み、又はこれらのハウジング部分から成ることが好ましい。
【0130】
ハウジング2又は下側ハウジング部分2aは、好ましくは楕円形の基部を有する中空の斜円柱の形状を有する保持区分又は円筒形区分2aaを有することが好ましい。区分2aaの形状は、好ましくはマウスピース3上に押し込むことができるように、吸入器4のマウスピース3の形状に類似し、又は適合されることが好ましい。
【0131】
具体的には、下側ハウジング部分2aの円筒形区分2aaの外周は、吸入器4のマウスピース3の外周よりも大きい。
【0132】
区分2aa又は下側ハウジング部分2aは、外向きの又は基本的に放射状の突出部2abを含むことが好ましい。
【0133】
下側ハウジング部分2aは、円筒形区分2aaから突出する又は円筒形区分2aaに接続されたフィンガ又はカバー2acを含むことが好ましい。フィンガ2acは、下側ハウジング部分2aの突出部2abから円筒形区分2aaの外周に沿って離間することが好ましい。
【0134】
上側ハウジング部分2bは、好ましくは楕円形の基部を有する中空の斜円柱形状を有する円筒形区分2baを含むことが好ましい。上側ハウジング部分2bの円筒形区分2baの外周は、下側ハウジング部分2aの円筒形区分2aaの外周よりも大きいことが好ましい。上側ハウジング部分2bの円筒形区分2baの高さは、下側ハウジング部分2aの円筒形区分2aaの高さよりも小さいことが好ましい。上側ハウジング部分2bの円筒形区分2baは、外向きの突出部2bbを含むことが好ましい。上側ハウジング部分2bは、フィンガ又はカバー2bcを含むことが好ましい。フィンガ又はカバー2bcは、上側ハウジング部分2bの円筒形区分2baから突出し、及び/又は上側ハウジング部分2bの突出部2bbから上側ハウジング部分2bの円筒形区分2baの外周に沿って離間することが好ましい。
【0135】
ハウジング2の組み立て中には、下側ハウジング部分2aの突出部2ac内にマイク5が取り付けられ、下側ハウジング部分2aの突出部2acからは、下側ハウジング部分2aの円筒形区分2aa及びカバー2acに沿って、マイク5に接続された音声ケーブル6が導かれる。さらに、上側ハウジング部分2bを下側ハウジング部分2a上に配置し、両ハウジング部分2a、2bを共にスナップ嵌めすることにより、上側ハウジング部分2bの円筒形区分2baが下側ハウジング部分2aの円筒形区分2aaを取り囲み、上側ハウジング部分2bの突出部2bbが下側ハウジング部分2aの突出部2abを覆い、上側ハウジング部分2bのカバー2bcが下側ハウジング部分2aのカバー2acを覆うようになる。
【0136】
ハウジング部品2a及び2bは、スナップ嵌め及び/又は成形嵌めによって互いに接続されることが好ましい。
【0137】
ハウジング2は、マイク5及び/又は関連するケーブル6を保持又は収容することが好ましい。
【0138】
マイク5は、ハウジング部分2a、2b間に収容されることが好ましい。
【0139】
ケーブル6は、ハウジング部分2a、2b間及び/又は区分2ac、2bc間に収容及び/又は誘導されることが好ましい。
【0140】
吸入トレーニング装置1又はハウジング2は、吸入器4の作動を阻止する阻止装置2cを含むことが好ましい。阻止装置2cは、区分2ac及び/又は2bcによって形成されることが好ましい。
【0141】
阻止装置2cは、図5及び図7に概略的に示すように、吸入器4の阻止要素15を覆うフィンガとして形成又は実現されることが好ましい。
【0142】
阻止装置2c及び/又は区分2ac、2bcは、少なくとも部分的に軸方向に、及び/又は吸入器4の長手方向及び/又はハウジング2又は保持区分2aaの長手方向軸と平行に延びることが好ましい。
【0143】
保持区分2aaは、吸入トレーニング装置1又はそのハウジング2を関連する吸入器4に、具体的には吸入器4のマウスピース3又は他のいずれかの構成部品に取り付けるように適合される。区分2aaは、圧力嵌めによるマウスピース3などへの機械的接続を可能にすることが最も好ましい。
【0144】
マウスピース3の外面形状及び区分2aaの内面形状は、自由端に向かってわずかにテーパ状であり、区分2aaをマウスピース3上に押し込んだ時に所望の締め付けを達成できるように適合されることが好ましい。しかしながら、他の形態及び/又は構造的解決策も可能である。
【0145】
図2に、ハウジング2の最終的な組み立て後の、ただしマイク5、ケーブル6などを省いた吸入トレーニング装置1のハウジング2の断面を概略的に示す。
【0146】
両ハウジング部分2a、2bは、滑らかな表面の成形プラスチックで作製されることが好ましい。従って、例えば、吸入過程を訓練する患者が吸入トレーニング装置1上を指でなぞり又は引っ掻くことによって生じる取り扱いノイズが低減される。従って、測定精度が向上する。
【0147】
吸入トレーニング装置1は、本発明による電子装置7へのインターフェイスを提供し、及び/又は電子装置7に接続可能である。図1の好ましい実施形態では、電子装置7がスマートフォンである。
【0148】
好ましい実施形態では、電子装置7とのインターフェイス及び/又は接続部が、オーディオジャック、具体的には3.5mmTRRSヘッドホンコネクタなどの、ケーブル6及び/又はコネクタ8によって実現されることが好ましい。
【0149】
3.5mmTRRSヘッドホンコネクタ8は、世界的に最も一般的なスマートフォンコネクタであるため、吸入トレーニング装置1は、様々なスマートフォンとの互換性を有し、変形が1つだけで済むことが好ましい。これにより、患者の快適でコスト効率の高い吸入過程トレーニング、及び患者に優しいリアルタイムなフィードバックが可能になる。
【0150】
これに加えて、又はこれとは別に、吸入トレーニング装置1は、Bluetooth(登録商標)などを介して電子装置7と無線で接続することもできる。
【0151】
好ましい実施形態では、吸入トレーニング装置1が、トレーニング中にあらゆるマイク信号の処理及び/又は基準音の生成を行うように構成された(図1及び図6に示す)電子機器5aを含む。従って、この基準音は、常にマイク5の信号と共に生じ、既知の基準を利用可能にする。具体的には、この基準音は、吸入トレーニング装置1の電子機器5a内に約10kHzの明確に定められた周波数及び好ましくは1.2Vの振幅の正確な発振器を実装して基準音をマイク信号に混合させることによって実現されることが好ましい。
【0152】
本発明による方法の好ましい実施形態では、方法が、
− 吸入トレーニング装置1を用いた患者の吸入過程中に吸入器4のマウスピース3内で又はマウスピース3内に生じる空気流を定量化するステップと、
− 電子装置7によって吸入トレーニング装置1から受け取られた空気流信号を評価するステップと、
− 電子装置7により、体積流量及び空気流の継続時間と共に変化する視覚フィードバックを患者に提供するステップと、
を含む。
【0153】
視覚フィードバックは、電子装置7の画面7a上に、写真、写真シーケンス、アニメーション及び/又はビデオの形で表示される。
【0154】
本発明の方法は、効果的で快適でコスト効率の高い吸入過程トレーニングを可能にする。さらに、患者が自身の吸入過程を制御し、所望の吸入技術に向けて補正できるようにする。患者は、電子装置によって提供されるフィードバックに基づいて、患者をコントローラとして制御が行われるように、吸入過程、従って空気流を変化させることができる。
【0155】
好ましい実施形態では、本発明の方法が、
− 体積流量が10l/分などの第1の閾値未満である時に第1の視覚フィードバックを提供するステップと、
− 体積流量が60l/分などの第2の閾値を上回る時に第2の視覚フィードバックを提供するステップと、
− 体積流量が第1の閾値を上回って第2の閾値未満である時に第3の視覚フィードバックを提供するステップと、
− 空気流の継続時間に応じて第3の視覚フィードバックを変更するステップと、
を含む。
【0156】
好ましい実施形態では、視覚フィードバックが、具体的には風船などの2次元オブジェクト又は記号7dを含むことが好ましく、方法は、体積流量及び空気流の継続時間に応じて風船7dの色及び位置を変化させるステップを含む。
【0157】
吸入が非常に弱い(すなわち、体積流量が第1の閾値未満である)と、例えば、風船7dが画面7aの底部に停止して赤色を有するような第1の視覚フィードバックが画面7a上に表示されるようになる。患者が力強い吸入を行った(すなわち、体積流量が第2の閾値を上回った)場合には、例えば、風船7dが画面7aの上部に舞い上がって赤色を有するような第2の視覚フィードバックが画面7a上に表示される。例えば、体積流量が20〜40l/分などの第1及び第2の閾値間の好ましい中心範囲では、例えば、(図3に示すように)風船7dが画面7aの中心領域を浮遊して色が赤色から緑色に変化するような第3の視覚フィードバックが画面7a上に表示される。この場合、第3の視覚フィードバックは空気流の継続時間によって変化し、例えば(図3に示すように)2つの矢印7eが画面7aの側部から閉じ始める。例えば、所望の体積流量が2秒間続いた後に矢印7eが風船7dを破裂させ、これによって吸入が上手くいったことを示す。
【0158】
好ましい実施形態では、画面7a上にさらなる視覚フィードバック又は他のオブジェクト/記号7dが表示され、具体的には、風船が割れると、例えば、好ましくは(図4に示すような)10秒間のカウントダウンクロックなどのカウントダウンクロック又は確認信号7fが示されて、(使用説明書と同様の)吸入の後に息を止めるトレーニングを可能にする。
【0159】
これに加えて、又はこれとは別に、体積流量及び空気流の継続時間に応じて風船7dのサイズが変化する。
【0160】
これに加えて、又はこれとは別に、風船7dの内部に、カウントダウン又は経過時間のような時間情報を表示するクロックなどの別のオブジェクトが視覚化される。
【0161】
好ましい実施形態では、電子装置7のスピーカ7bを介して、正しい吸入のための音声指示及び/又は患者の吸入過程を最適化するアドバイスが提供される。
【0162】
好ましい実施形態では、方法が、トレーニング中に吸入トレーニング装置1の存在を検出するステップを含む。このステップは、トレーニング中に吸入トレーニング装置1によって生じる基準音を電子装置7がモニタすることによって実現される。空気流に関するフィードバックは、トレーニング中に吸入トレーニング装置1が検出された場合にのみ提供される。そうでない場合には、患者に警告が示される。
【0163】
図1には、本発明による電子装置7の好ましい実施形態の正面図も示している。好ましい実施形態では、電子装置7がスマートフォンである。
【0164】
好ましい実施形態では、電子装置7が、
− 吸入トレーニング装置1から受け取られた、患者の吸入過程中における吸入器4のマウスピース3内の空気流を定量化する信号を評価し、
− 体積流量及び/又は空気流の継続時間と共に変化する視覚フィードバックを患者に提供する、
ように構成される。
【0165】
この実施形態は、特に吸入トレーニング装置1から受け取られた空気流信号の評価、及び単純で直観的で確実でコスト効率の高い患者へのフィードバックのために電子装置7の機能を活用できるようにする。同時に、この実施形態は、患者の吸入過程の訓練に関して電子装置7の機能を単純かつコスト効率の高い方法で拡張できるようにする。
【0166】
好ましい実施形態では、電子装置7が、本発明による方法の好ましい実施形態について上述したような視覚フィードバックを提供するように構成される。この目的のために、電子装置7は、説明した方法の定量化ステップ及び評価ステップを制御して画面7a上に視覚フィードバックをリアルタイムで表示できる専用アプリを備える。
【0167】
このアプリは、患者に単純かつ直観的な(非科学的な)形で空気流及び/又は吸入フィードバックを提供し、電子装置7にダウンロードすることができる。この目的のために、このアプリは、全てのメインプラットフォーム、特にiOS(登録商標)及びAndroid(登録商標)向けに開発される。
【0168】
このアプリは、たとえ上述したような全ての技術的分析能力を含むように開発されていても、患者という幅広い対象をターゲットとし、従って直観的なユーザインターフェイスを利用する。
【0169】
このアプリは、受動的ガイド部分及び能動的トレーニング部分という2つの部分に分かれており、患者は、実際のトレーニングを受ける前に入念にガイドの手ほどきを受ける。
【0170】
患者は、最初に利用規約を承諾した後に、アプリのガイド部分を開始し、吸入器4のマウスピース3上に吸入トレーニング装置1を取り付けてコネクタ8のプラグを電子装置7に差し込むという、全ての患者に関連する導入ステップを実行する。患者は、風船が飛んでいるアニメーションと息を止めているアニメーションの両方を使用してアプリの特徴を紹介される。患者は、ガイドのあらゆる時点で強調表示された「X」を押してガイドから出てトレーニングを開始することができ、そうでなければ、ガイドの最終ページで「トレーニング開始」ボタンを単純に確認することによってアプリのトレーニング部分に再び導かれる。トレーニング部分に入ると、アプリは、機能するために吸入トレーニング装置1の存在を必要とする。吸入トレーニング装置1が取り付けられていない場合、患者に警告が示される。
【0171】
一般に、ユーザ又は患者は、入力又は確認目的で電子装置7のボタン7c、画面7a(この場合はタッチ画面)などを押すこともできる。
【0172】
その後、吸入器4上に取り付けられた吸入トレーニング装置1を通じて吸入を行い、風船7dを2秒間にわたって「緑色」ゾーンに保った後に10秒間息を止めるという目標を完了することによって吸入トレーニングが行われる。両ステップが正常に完了すると、直近の5回の試行を示す履歴バーに緑色の記号が飛び込む。アプリは、患者が息を止めていることを検出する手段を有していないので、このトレーニングシーケンスの最後のステップでは、他の点で完全な吸入シーケンスを不認定とすることができず、履歴に加わる最終結果のみが10秒間待機する。
【0173】
吸入トレーニング装置1の主なトレーニング目標は、例えば受動的DPIで求められるよりもはるかに低いレベルまで患者が吸入フローを低減する手助けを行うことであるため、患者が2秒間(又はそれよりも長く)にわたって過度に強く(40l/分を上回る体積流量で)吸入を行った場合には、それが吸入の不成功を引き起こし得る1つの要素となる。この状況では、吸入シーケンスが不成功となり、息を止めるシーケンスを行うことなく履歴に直接、ネガティブな結果が追加される。
【0174】
患者には、成功又は不成功に関わらずテストの完了毎に、風船7dのバランスを毎回(少なくとも5回の連続試行にわたって)安全かつ確実に正しく保つことができるまで患者がトレーニングを継続する気にさせる「もう1度挑戦」というオプションが提示される。
【0175】
説明したアプリのステップには、他のステップを追加することもできる。アプリの個々のステップを省略することもできる。個々のステップのシーケンスを変更し、異なるステップを互いに組み合わせることもできる。アプリの個々のステップを、他のステップとは無関係に実装することもできる。
【0176】
アプリに関する命令は、電子装置7の情報記憶媒体に記憶することができる。これらの命令は、プロセッサによる実行時に、少なくとも、
− グラフィカルユーザインターフェイスを初期化するステップと、
− 吸入トレーニング装置1から受け取られた信号値を処理するステップと、
− グラフィカルユーザインターフェイスを介して、処理した信号値の1又は2以上の時変特性と共に変化する視覚フィードバックをユーザに提供するステップと、
を実行させる。
【0177】
好ましい実施形態では、電子装置7が、正しい吸入についての音声指示、及び患者の吸入過程を最適化するためのアドバイスを提供するように構成される。
【0178】
好ましい実施形態では、電子装置7が、吸入トレーニング装置1から受け取った信号内における特徴的音声信号の存在を検出するように構成される。通常、人間の声は、平坦な音響スペクトルを有しておらず、むしろ最も低いフォルマント周波数から開始する一連の等間隔の山と谷で構成される。電子装置7は、吸入トレーニング装置1から受け取られた信号がそのような特徴的な音声信号又はスペクトルに偏っている場合には、空気流評価を一時的に中断するように構成することができる。従って、声の影響に対する堅牢性が向上する。
【0179】
好ましい実施形態では、電子装置7が、評価した信号を別の電子装置7に無線送信するように設計される。このようにして、例えば医師に信号を送信し、医師は、この信号に基づいて診断結果を準備し、及び/又は吸入過程を改善するアドバイスを与えることができる。
【0180】
好ましい実施形態では、電子装置7が、トレーニング中に吸入トレーニング装置1によって生じる上述したような基準音を通じて吸入トレーニング装置1の存在を検出するように構成される。従って、電子装置7は、吸入トレーニング装置1がコネクタ8を介して電子装置7に差し込まれたかどうかを検出することができる。そうでない場合、電子装置7は、フロー検出に関するフィードバックを提供しないように構成される。
【0181】
電子装置7は、吸入トレーニング装置1の外部マイク5にインターフェイス接続することができる。
【0182】
空気流の定量化精度は、音響感度に±3dBの変動を示す可能性があるマイク5の製造公差にとりわけ依存する。他の誤差要因が一切存在しない場合でも、このようなマイク公差のばらつきは、約±35%の測定不確実性に換算されるようになる。この不確実性は、吸入トレーニング過程を実行する上で極めて重要とは思われず、例えば、±50%の測定不確実性が通信されても問題はない。
【0183】
マイク公差のばらつきを緩和するために、マイク利得及び/又は基準音振幅を較正することができる。マイク5を含む各電子機器モジュールは、(吸入トレーニング装置1のハウジング2内に取り付ける前に)理想基準からの変動を評価できる基準音響信号を用いたテストを受けることが好ましい。逸脱している場合には、例えば基準音振幅が、測定されたマイク信号との所望の関係を生じるように調整される。調整は、搬送用のフレキシブルプリント基板上のワイヤを切断するの(例えば、基準電圧減衰を制御する並列抵抗器の切断)と同じぐらい単純なものとすることができる。
【0184】
或いは、最終的に組み立てられた吸入トレーニング装置1をテストして、個々の音響偏差に基づくコードを作成することもできる。その後、このコードを、使用前にアプリにインポートすることができる。例えば、吸入トレーニング装置1は、吸入トレーニング装置1を分類するための1桁の参照記号を含む個々のシリアル番号を有することができる。患者は、測定精度を高めるために、アプリの起動時に手動でコードを入力することができる。或いは、吸入トレーニング装置1のハウジング2上にバーコードを印刷することもできる。その後、患者は、アプリの初期化手順中に、電子装置7のカメラを用いてバーコードをスキャンすることができる。
【0185】
図5に、本発明による吸入トレーニングシステム35の好ましい実施形態の斜視図を概略的に示す。
【0186】
吸入トレーニングシステム35は、患者の吸入過程の訓練及び制御のために使用され、使用可能であり、又は設計される。
【0187】
吸入トレーニングシステム35は、上述したような吸入トレーニング装置1と、好ましくは以下でさらに説明するような吸入器4と、上述したような電子装置7(すなわち、スマートフォン)とを含む。
【0188】
吸入トレーニングシステム35の目的は、様々な吸入器を用いて正しい吸入を行うように患者をさらに教育することである。患者の中には、短期間のみにわたって強く吸入を行うように明確に求める他の吸入器(例えば、受動型粉末吸入器)を以前に使用したことのある患者も存在するため、1〜1.5秒間持続する均質な液滴状のエアロゾル雲を生成し、長時間にわたって比較的低流量で吸入を行うように正しい吸入の指示を行う吸入器の好ましい軟質ミスト技術に起因して、正しい使用について混乱する可能性もある。
【0189】
吸入トレーニングシステム35は、効果的で、単純で、確実で、快適で、コスト効率の高い患者の吸入過程のトレーニング、トレーニング中に患者によって生じる空気流の正確な測定、及び患者に優しいリアルタイムなフィードバックを可能にする。
【0190】
好ましい実施形態では、吸入トレーニングシステム35が、少なくとも20〜40l/分の正しい吸入流を少なくとも±50%の精度で、好ましくは±20%よりも良好な精度で非侵襲的に(すなわち、吸入器4の一定の流れ抵抗を用いて)検出するように構成される。
【0191】
図6に、吸入器4のマウスピース3に吸入トレーニング装置1を取り付けた吸入器4の断面を概略的に示す。図7にも、吸入器4のマウスピース3に吸入トレーニング装置1を取り付けた吸入器4の断面を概略的に示しているが、吸入器4及び取り付けられた吸入トレーニング装置1を軸方向に約90°回転させている。
【0192】
2つのハウジング部分2a、2bは、共に正確に嵌まり合うとともに、吸入器4のマウスピース3上にしっかりと嵌め込まれるように設計されることが好ましい。これにより、吸入器4のマウスピース3と吸入トレーニング装置1のハウジング2との間の漏れが確実に最小化される。従って、高測定精度及び高機械的安定度が実現される。同時に、ハウジング2は、マイク5、音声ケーブル6及びさらなる電子機器5aを収容して保護するための適切な空間を内部に有する。
【0193】
さらに、説明したハウジング2の設計、具体的には区分2aa及びマウスピース3の非円形断面は、吸入器4のマウスピース3に取り付ける際にハウジング2が誤って位置付けられるのを防ぐ。
【0194】
図示の好ましい実施形態では、ハウジング2が、トレーニング中の薬剤放出を防ぐように設計される。具体的には、吸入器4のマウスピース3に吸入トレーニング装置1を取り付けると、2つのハウジング部分2a、2bの阻止装置2c又はカバー2ac、2bcが、吸入器4の阻止要素15などの薬剤放出アクチュエータを覆う。
【0195】
吸入器4のマウスピース3に吸入トレーニング装置1を取り付けた時には、吸入器4のマウスピース3の外側、及び/又は吸入器4のマウスピース3の空気孔又は開口部34の近傍にマイク5が自動的に位置付けられることが好ましい。これにより、吸入器4の機能に介入する必要なく正確な流量測定が可能になり、或いは吸入器4の設計を変更する必要なくマウスピース3内の流体流が可能になる。吸入器4の流路の空気力学的挙動は、吸入トレーニング装置1によって変化しないことが好ましい。こうすることにより、吸入トレーニング装置1の存在(又は不在)によって吸入器4の医学的適応性が影響されなくなる。
【0196】
較正済みのTetratec(商標)流量測定器を用いて測定を行い、単体の吸入器4を用いて、その後に吸入器4のマウスピース3上に吸入トレーニング装置1を取り付けた同じ吸入器4を用いて比較を行った。両状況において、(空気孔を覆っていない)マウスピース3に接続された管の流れ抵抗を測定した。測定の結果、吸入トレーニング装置1の存在によって空気流が制限されないことが分かった。吸入トレーニング装置1を使用した時の流れ抵抗は、単体の吸入器4に比べて変化がなく、このことは、別のタイプの吸入経験がある患者をトレーニングする必要がないことを裏付けている。
【0197】
以下、吸入器4についてさらに詳細に説明する。
【0198】
吸入器4は、非引張状態(図6)と引張状態(図7)で図式的に示され、流体9、具体的には極めて有効な医薬組成物、薬剤などを霧化するように設計される。吸入器4は、具体的にはポータブル吸入器として構成され、機械的にのみ、及び/又は推進剤ガスを伴わずに動作することが好ましい。
【0199】
吸入器4は、流体9を含む挿入又は交換が可能な容器10を有し又は含む。従って、容器10は、霧化すべき流体9のリザーバを形成する。容器10は、複数回分の投与量の、具体的には、例えば最大200回の投与単位又は投与量、すなわち最大200回の噴霧又は散布を行うのに十分な流体9又は活性物質を含むことが好ましい。国際公開第1996/006011号に開示されているような典型的な容器10は、例えば約2〜20mlの体積を保持する。
【0200】
投与量は、具体的には流体9又は薬剤に応じて変化し得ることに注意する必要がある。吸入器4は、それぞれに適合させることができる。
【0201】
さらに、容器10に含まれる投与回数及び/又は容器10に含まれる流体9の総体積も、流体9又はそれぞれの薬剤、及び/又は容器10、及び/又は必要な投薬などに応じて変化し得る。
【0202】
容器10は、置換又は交換できることが好ましく、同じ吸入器4で使用できる容器10の数は、例えば総数で4つ又は5つの容器10に制限されることが好ましい。
【0203】
容器10は、実質的に円筒形又はカートリッジ形であることが好ましく、吸入器4を開いた時点で容器10を好ましくは下側から挿入し、必要に応じて交換することができる。容器は剛性構造であり、流体9は、具体的には容器10内の圧壊可能なバッグ11内に保持されることが好ましい。具体的には、容器10は、初回使用前又は初回使用中に開かれる通気用開口部又は穴30を含む。
【0204】
吸入器4は、具体的には予め設定した量の、任意に調整可能な投与量の流体9を搬送して霧化する送達機構、好ましくは圧力発生器12を含む。
【0205】
吸入器4又は圧力発生器12は、容器10を解除可能に保持するホルダ13、ホルダ13に関連する、一部のみを示す駆動バネ14、及び/又は好ましくは手動作動又は押圧用の、好ましくはボタンの形の、又はこのようなボタンを有する阻止要素15を含むことが好ましい。阻止要素15は、ホルダ13を捕捉して阻止することができ、ホルダ13を解放して駆動バネ14の拡張を可能にするように手動操作することができる。
【0206】
吸入器4又は圧力発生器12は、伝達管16などの伝達要素、逆止弁17、圧力室18、及び/又は流体9をマウスピース3内に霧化するノズル19を含むことが好ましい。
【0207】
完全に挿入された容器10は、ホルダ13を介して吸入器4内に固定又は保持され、伝達要素が、容器10を吸入器4又は圧力発生器12に流体接続するようになる。伝達管16は、容器10内に進入することが好ましい。
【0208】
吸入器4又はホルダ13は、容器10を交換できるように構成されることが好ましい。
【0209】
引張過程において駆動バネ14が軸方向に引張すると、容器10とホルダ13及び伝達管16が図面の下向きに移動し、流体9が、逆止弁17を介して容器10から圧力発生器12の圧力室18に吸い込まれる。この状態では、ホルダ13が阻止要素15によって捕捉され、駆動バネ14が圧縮状態に保持されるようになる。この時、吸入器4は引張状態にある。
【0210】
(吸入トレーニング装置1を吸入器4に取り付ける場合とは異なって)阻止要素15の作動又は押圧が可能である場合には、霧化過程において弛緩が後続し、その間、この時点で逆止弁17が閉じている伝達管16が、駆動バネ14の弛緩又は力によって圧力室18内で図面内の上向きに逆行し、押圧ラム又はピストンの役割を果たすので、圧力室18内の流体9は圧力下に置かれるようになる。この圧力が流体9をノズル19内に強制し、この結果、流体9がエアロゾルに霧化されて小出しされる。
【0211】
一般に、吸入器4は、流体2に5〜200MPaの、好ましくは10〜100MPaのバネ圧が加わった状態で、及び/又は1ストローク当たり10〜50μlの、好ましくは10〜20μlの、最も好ましくは約15μlの流体2の体積が送達される状態で動作する。流体9は、エアロゾルに変換され、又はエアロゾルとして霧化され、その液滴は、最大20μmの、好ましくは3〜10μmの空気動力学的直径を有する。生成されるジェット噴霧は、20°〜160°の、好ましくは80°〜100°の角度を有することが好ましい。
【0212】
吸入器4は、ハウジング31及び/又は(上側)ハウジング部分23を含むとともに、好ましくはハウジング31及び/又は(上側)ハウジング部分23に対して回転可能な(図6)、及び/又は上部24a及び下部24b(図6)を有する付勢部分又は内側部分24を任意に含むことが好ましい。
【0213】
吸入器4又はハウジング31は、(下側)ハウジング部分25を含むことが好ましい。この部分25は、具体的には手動操作可能であり、及び/又は解除可能に固定され、好ましくは保持要素26によって内側部分24に取り付けられ又は保持されることが好ましい。
【0214】
ハウジング部分23及び25及び/又はその他の部分は、吸入器4のハウジング31を形成することが好ましい。
【0215】
容器10の挿入及び/又は交換を行うために、ハウジング31を開くことができ、及び/又はハウジング部分25を吸入器4、内側部分24又はハウジング31から分離できることが好ましい。
【0216】
一般に、容器10は、ハウジング31を閉じる前に、及び/又はハウジング部分25をハウジング31に接続する前に挿入できることが好ましい。容器10は、ハウジング部分25をハウジング31/吸入器4に(完全に)接続した時に、及び/又はハウジング31/吸入器4を(完全に)閉じた時に自動的に又は同時に挿入され、開き、及び/又は送達機構に流体接続されることが好ましい。
【0217】
吸入器4又は駆動バネ14は、具体的には作動部材の作動によって、ここでは好ましくはハウジング25又は他のいずれかの構成部品を回転させることによって手動で作動又は引張できることが好ましい。
【0218】
作動部材、好ましくはハウジング部分25は、上側ハウジング部分23に対して作動させ、ここでは回転させて、内側部分24を共に担持又は駆動させることができる。内側部分24は、歯車又は動力伝達部に作用して、回転を軸方向の動きに変換する。この結果、駆動バネ14は、内側部分24、具体的には上部24aとホルダ13との間に形成されてホルダ13に作用する歯車又は動力伝達部(図示せず)によって軸方向に引張するようになる。引張中、容器10は、図7に示すような終端位置を取るまで軸方向下向きに移動する。この作動又は引張状態では、駆動バネ14が張力下にあり、阻止要素15によって捕捉又は保持することができる。霧化過程中、容器10は、駆動バネ14(の力)によって元の位置(図6に示す非引張位置又は状態)に戻る。従って、容器10は、引張過程及び噴霧過程中に昇降運動又はストローク運動を実行する。
【0219】
ハウジング部分25は、キャップ状の下側ハウジング部分を形成し、及び/又は容器10の下部自由端部の周囲又は下部自由端部を覆って嵌合することが好ましい。駆動バネ14が引張すると、容器10とその端部がハウジング部分25内又はその端面の方に(さらに)移動する一方で、ハウジング部分25内に配置された軸方向作用バネ27などの曝気手段が容器10の基部28に接触し、容器3が貫通要素22と初めて接触した時に、この貫通要素22が容器3又は基部シール又はその上のホイル50を貫通して、好ましくは通気孔23を開き又は穿孔することによって空気の導入又は曝気を可能にする。
【0220】
吸入器4は、好ましくは上部23又はハウジング31に対する吸入器4の引張又は内側部分の回転24を検出することによって吸入器4の作動を具体的にカウントするインジケータ装置25を含むことが好ましい。カウンター装置32又は関連するロック装置33は、一定の作動回数又は動作回数又は投与回数に到達し又はそれを超えた時に、例えばハウジング部分25/内側部分24のさらなる回転、従って吸入器4又はその駆動バネ14の引張を阻止し、及び/又は阻止要素15の作動を阻止して、吸入器4を(さらなる)作動又は使用に対してロック状態にロックすることが好ましい。
【0221】
吸入器4は、独立設備などとは異なってポータブルに設計され、具体的にはモバイル手動操作装置であることが好ましい。
【0222】
流体9は、水性医薬製剤又はエタノール医薬製剤であることが好ましい。一方、流体9は、他の何らかの医薬製剤、懸濁剤などとすることもできる。
【0223】
或いは、流体9は、粒子又は粉体を含むこともできる。この場合、排出ノズル17の代わりに、他の何らかの種類の供給装置、特に流体又は粉体などをマウスピース3内に供給する排出開口部(図示せず)又は供給路(図示せず)を設けることができる。この場合、任意の給気開口部(図示せず)が、マウスピース3内の呼気又はマウスピース3を介した吸入にとって十分な体積の空気流を生成又は許容するように、好ましくは同時に周囲空気を供給する役割を果たす。
【0224】
必要であれば、流体9を推進剤ガスによって霧化することもできる。
【0225】
好ましくは薬剤流体9の好ましい成分及び/又は製剤は、具体的には国際公開第2009/115200号の好ましくは25〜40ページ、又は欧州特許第2614848号の段落0040〜0087に記載されており、これらの文献は引用により本明細書に組み入れられる。具体的には、これらの成分及び/又は製剤は、水性又は非水性溶液、混合物、エタノールを含む又は溶媒を含まない製剤などとすることができる。
【0226】
図5に、本発明の別の好ましい態様を示す。吸入トレーニング装置又はそのハウジング2は、吸入トレーニング装置1が吸入器4に取り付けられている時、又は吸入器4を有する時に、吸入器4による流体9のあらゆる小出しを阻止する阻止装置2cを含むことが好ましい。阻止装置2cは、あらゆる作動の可能性、従って流体9のあらゆる小出しの可能性を阻止又は防止するために、吸入器4の阻止要素15などの作動要素又はボタンを覆うことが好ましい。しかしながら、他の構造的解決策も可能である。
【0227】
吸入トレーニング装置1は、吸入中に少なくとも1つの開口部34を通じてマウスピース3内に吸い込まれる空気流を(著しく)修正又は制限しないことが好ましい。しかしながら、マイク5は、関連する開口部34に突出することができ、及び/又は、好ましくは1つの通気開口部34に隣接して、最も好ましくは通気開口部34のできるだけ近くに位置する。
【0228】
この実施形態では、吸入トレーニング装置1又はそのハウジング2が、他の開口部34を覆わない。この目的のために、吸入トレーニング装置1又はハウジング2は、図1図2及び図6に示すような凹部2dを含むことが好ましい。
【0229】
吸入トレーニング装置1又はそのハウジング2は、吸入中に(単複の)開口部34を通じてマウスピース3に吸い込まれる空気流を制限しないように、図1及び図3に概略的に示すような少なくとも1つの供給開口部2eなどを含むことが好ましい。
【0230】
ケーブル6は、吸入トレーニング装置1又はそのハウジング2内をマウスピース3から吸入器4の他端に向かって、好ましくは阻止装置2cを通じて導かれることが好ましく、及び/又は部分又は区分2ac及び/又は2bcと同様に肉薄化されることが好ましい。
【0231】
マイク5及び電子機器5aは、ユニット又はアセンブリを形成することが好ましい。具体的には、電子機器5aをマイク5に一体化し、或いはマイク5を電子機器5aに一体化する。
【0232】
トレーニング吸入装置1又はそのハウジング2は、マイク5及び/又は電子機器5aのユニット又はアセンブリをスナップ嵌め及び/又は成形嵌めによって保持することが好ましい。図6に、考えられる具現化を概略的に示している。例えば、このユニット又はアセンブリは、保持凹部2fなどに挿入又は挿通することができ、或いは、好ましくはマイク5がマウスピース3の方を向いて換気開口部34に隣接し、及び/又は吸入器4のノズル19に隣接し、及び/又は半径方向内側を向いた状態で取り付けることができる。
【0233】
阻止装置2cは、吸入器4の吸入器ハウジング31、好ましくは上側ハウジング部分23に対して支持され、又はこれらのハウジング部分に当接することが好ましい。この目的のために、阻止装置2c又は区分2acは、図4及び図5に示すようなそれぞれの突出部又は接触部分2caを含むことができる。
【0234】
阻止装置2cは、吸入トレーニング装置1を吸入器4に、又は吸入器4を吸入トレーニング装置1に取り付けた時に、流体9の吸入器4からのあらゆる小出しが確実に防がれるように、阻止要素15、或いは流体9の噴霧器4からの小出しをトリガ又は開始するために必要な他のいずれかの作動要素を好ましくは完全に覆うことが好ましい。
【0235】
図8には、情報記憶媒体としてのUSBスティック36、及び/又は吸入トレーニング装置1の奨励用印刷物としてのリーフレット37を、好ましくはキット38としての吸入トレーニング装置1及び/又は吸入器4と共に、好ましくは箱又はパッケージ39などの形で概略的に示す。他の情報記憶媒の例は、タブレット及びDVDである。他の印刷物の例は、添付文書及びポスターである。
【符号の説明】
【0236】
1 吸入トレーニング装置
2 1のハウジング
2a 下側ハウジング部分
2aa 2aの円筒形区分
2ab 2aの突出部
2ac 2aのカバー
2b 上側ハウジング部分
2ba 2bの円筒形区分
2bb 2bの突出部
2bc 2bのカバー
2c 阻止装置
2ca 接触部
2d 凹部
2e 開口部
2f 保持凹部
3 マウスピース
4 吸入器
5 マイク
5a 電子機器
6 ケーブル
7 電子装置
7a ディスプレイ
7b スピーカ
7c ボタン
7d オブジェクト/記号/風船
7e 矢
7f クロック/信号
8 ヘッドホンコネクタ
9 流体
10 容器
11 バッグ
12 圧力発生器
13 ホルダ
14 駆動バネ
15 阻止要素
16 伝達管
17 逆止弁
18 圧力室
19 ノズル
23 上側ハウジング部分
24 内側部分
24a 内側部分の上部
24b 内側部分の下部
25 ハウジング部分(下部)
26 保持要素
27 曝気バネ
28 容器基部
29 貫通要素
30 通気穴
31 吸入器ハウジング
32 インジケータ装置
33 ロック装
34 開口部
35 吸入トレーニングシステム
36 USBスティック
37 リーフレット
38 キット
39 パッケージ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8