特許第6722117号(P6722117)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6722117結晶シリコンを用いた太陽電池の受光面のパッシベーション
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6722117
(24)【登録日】2020年6月23日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】結晶シリコンを用いた太陽電池の受光面のパッシベーション
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0216 20140101AFI20200706BHJP
   H01L 31/068 20120101ALN20200706BHJP
【FI】
   H01L31/04 240
   !H01L31/06 300
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-569968(P2016-569968)
(86)(22)【出願日】2015年6月25日
(65)【公表番号】特表2017-525136(P2017-525136A)
(43)【公表日】2017年8月31日
(86)【国際出願番号】US2015037819
(87)【国際公開番号】WO2015200715
(87)【国際公開日】20151230
【審査請求日】2018年6月7日
(31)【優先権主張番号】14/317,672
(32)【優先日】2014年6月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516255873
【氏名又は名称】トータル マーケティング サービスィズ
(73)【特許権者】
【識別番号】505379467
【氏名又は名称】サンパワー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン、マイケル シー.
(72)【発明者】
【氏名】トレーシー、キエラン マーク
(72)【発明者】
【氏名】トマダ、プリンセス カーミ
(72)【発明者】
【氏名】スミス、デイヴィッド ディー.
(72)【発明者】
【氏名】リム、スン バム
(72)【発明者】
【氏名】ジャフレンノウ、ペリン
【審査官】 横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−056918(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/172056(WO,A1)
【文献】 特表2013−518426(JP,A)
【文献】 特表2014−504003(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0322199(US,A1)
【文献】 特表2012−525006(JP,A)
【文献】 特開2013−021095(JP,A)
【文献】 特開2012−114425(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/161668(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第102569478(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第102569479(CN,A)
【文献】 特開平03−070183(JP,A)
【文献】 特開2014−216334(JP,A)
【文献】 特開2012−049156(JP,A)
【文献】 米国特許第05030295(US,A)
【文献】 米国特許第07468485(US,B1)
【文献】 国際公開第2012/174421(WO,A2)
【文献】 中国実用新案第202134565(CN,U)
【文献】 特開2012−060080(JP,A)
【文献】 特開平04−226084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02−31/078
H01L 31/18−31/20
H01L 51/42−51/48
H02S 10/00−10/40,30/00−99/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光面を有するシリコン基板と、
前記シリコン基板の前記受光面の上方に配置されている真性シリコン層と、
前記真性シリコン層上に配置されているN型のシリコン層と、を備え、
前記真性シリコン層及び前記N型のシリコン層のうちの一方又は両方が、微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層であり、
前記基板の裏面上にP型のエミッタ領域とN型のエミッタ領域とが交互に形成され、前記裏面と前記エミッタ領域との間にシリコン酸化物層が形成され
前記シリコン基板の前記受光面上に配置されたパッシベーション誘電体層を更に備え、前記真性シリコン層が、前記パッシベーション誘電体層上に配置されている、太陽電池。
【請求項2】
前記N型のシリコン層は、およそ0.1〜0.9の範囲内の結晶画分と、非晶質の残部とを有するN型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層である、請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
受光面を有するシリコン基板と、
前記シリコン基板の前記受光面上に配置されたパッシベーション誘電体層と、
前記パッシベーション誘電体層上に配置されたN型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層と
を備え、
前記基板の裏面上にP型のエミッタ領域とN型のエミッタ領域とが交互に形成され、前記裏面と前記エミッタ領域との間にシリコン酸化物層が形成されている、太陽電池。
【請求項4】
前記N型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層におけるN型のドーパントの濃度が、およそ1E17〜1E20原子/cmの範囲内である、請求項2または3に記載の太陽電池。
【請求項5】
前記パッシベーション誘電体層は、およそ10〜200オングストロームの範囲内の厚さを有する二酸化ケイ素(SiO)層である、請求項1または2に記載の太陽電池。
【請求項6】
前記N型のシリコン層上に配置された反射防止コーティング(ARC)層を更に備える、請求項1または2に記載の太陽電池。
【請求項7】
前記受光面は、テクスチャ化されたトポグラフィーを有しており、前記真性シリコン層及び前記N型のシリコン層の両方は、前記受光面の前記テクスチャ化されたトポグラフィーと共形である、請求項1または2に記載の太陽電池。
【請求項8】
前記基板は、前記受光面とは反対側にある裏面を更に有しており、前記太陽電池は、
前記基板の前記裏面における又は前記基板の前記裏面の上方の、複数の交互のN型の半導体領域及びP型の半導体領域と、
前記複数の交互のN型の半導体領域及びP型の半導体領域に電気的に接続されている導電性コンタクト構造体と
を更に備える、請求項1からのいずれか一項に記載の太陽電池。
【請求項9】
前記反射防止コーティング(ARC)層が窒化シリコンを含む、請求項に記載の太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は再生可能エネルギーの分野におけるものであり、特に、結晶シリコンを用いた太陽電池の受光面をパッシベーションする方法、及びその結果得られる太陽電池である。
【背景技術】
【0002】
太陽電池として公知の光起電力電池は、太陽放射を電力に直接変換するためのデバイスとして周知である。一般に、太陽電池は、半導体処理技術を使用して半導体ウェハ上又は基板上に作製され、基板の表面近くにP−N接合が形成される。太陽光が基板の表面に衝突し、基板の中に入ると、基板のバルク内に電子及び正孔の対が生成される。電子及び正孔対は、基板内のPドープ領域及びNドープ領域に移動し、これによって、ドープ領域の間に電位差を発生させる。ドープ領域は、太陽電池の導電性領域に接続されて、電流を太陽電池から太陽電池と連結された外部回路へと方向付ける。
【0003】
効率は、太陽電池の発電能力に直接関係するために、太陽電池の重要な特性である。同様に、太陽電池を生産する上での効率は、このような太陽電池の費用効果に直接関連する。したがって、太陽電池の効率を向上させるための技術、又は太陽電池の製造における効率を向上させるための技術が、一般的に望ましい。本開示のいくつかの実施形態は、太陽電池構造体を製造するための新規なプロセスを提供することによって、太陽電池の製造効率の向上を可能にする。本開示のいくつかの実施形態は、新規な太陽電池構造体を提供することによって、太陽電池の効率向上を可能にしている。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1A】本開示の実施形態による、太陽電池を製造する様々な段階の断面図を例示する。太陽電池の出発基板を例示する。
【0005】
図1B】本開示の実施形態による、太陽電池を製造する様々な段階の断面図を例示する。基板の受光面上にパッシベーション誘電体層を形成した後の、図1Aの構造体を図示する。
【0006】
図1C】本開示の実施形態による、太陽電池を製造する様々な段階の断面図を例示する。パッシベーション誘電体層上に真性シリコン層を形成した後の、図1Bの構造体を図示する。
【0007】
図1D】本開示の実施形態による、太陽電池を製造する様々な段階の断面図を例示する。真性シリコン層上にN型のシリコン層の形成した後の、図1Cの構造体を図示する。
【0008】
図1E】本開示の実施形態による、太陽電池を製造する様々な段階の断面図を例示する。N型のシリコン層上に反射防止コーティング(ARC)層を形成した後の、図1Dの構造体を図示する。
【0009】
図2】本開示の実施形態による、図1A図1Eに対応する太陽電池の製造方法における操作を一覧にしたフローチャートである。
【0010】
図3】本開示の実施形態による、基板の裏面の上方に形成されているエミッタ領域を有し、また基板の受光面上に第1の例示的な積層体を有する、バックコンタクト太陽電池の断面図を図示する。
【0011】
図4】本開示の実施形態による、基板の裏面内に形成されているエミッタ領域を有し、また基板の受光面上に第1の例示的な積層体を有する、バックコンタクト太陽電池の断面図を図示する。
【0012】
図5】本開示の実施形態による、図3及び図4と関連して記載された太陽電池の受光面上に配置された第1の例示的な積層体のエネルギーバンド図である。
【0013】
図6A】本開示の実施形態による、基板の裏面の上方に形成されたエミッタ領域を有し、かつ、基板の受光面上に第2の例示的な積層体を有する、バックコンタクト太陽電池の断面図を図示する。
【0014】
図6B】本開示の実施形態による、図6Aと関連して記載された太陽電池の受光面上に配置された、第2の例示的な積層体のエネルギーバンド図である。
【0015】
図7A】本開示の実施形態による、基板の裏面の上方に形成されたエミッタ領域を有し、かつ、基板の受光面上に第3の例示的な積層体を有する、バックコンタクト太陽電池の断面図を例示する。
【0016】
図7B】本開示の実施形態による、図7Aと関連して記載された太陽電池の受光面上に配置された、第3の例示的な積層体のエネルギーバンド図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の発明を実施するための形態は、本質的には、単なる実例に過ぎず、本主題の実施形態、あるいは、かかる実施形態の応用及び用途を限定することを意図するものではない。本明細書で使用する場合、「例示の」という語は、「例、事例、実例としての役割を果たすこと」を意味する。本明細書で例示的として説明されるあらゆる実装は、必ずしも、他の実装よりも好ましいか又は有利であるとして解釈されるべきではない。更には、前述の技術分野、背景技術、概要、又は以下の発明を実施するための形態で提示される、明示又は暗示されるいずれの理論によっても、拘束されることを意図するものではない。
【0018】
本明細書は、「一実施形態」又は「ある実施形態」への言及を含む。「一実施形態において」又は「ある実施形態において」という語句の出現は、必ずしも、同じ実施形態を指すものではない。特定の機構、構造、又は特性を、本開示と矛盾しない任意の好適な方式で組み合わせることができる。
【0019】
用語法。以下のパラグラフは、本開示(添付の請求項を含む)で見出される用語に関する、定義及び/又はコンテキストを提供する。
【0020】
「備える」。この用語は、オープンエンド型である。添付の請求項で使用されるとき、この用語は、更なる構造又は工程を排除するものではない。
【0021】
「〜ように構成された」。様々なユニット又は構成要素は、タスクを実行する「ように構成された」として、説明又は特許請求される場合がある。そのようなコンテキストでは、「〜ように構成された」は、それらのユニット/構成要素が、動作中にそれらのタスクを実行する構造を含むことを示すことによって、その構造を含意するために使用される。それゆえ、それらのユニット/構成要素は、指定のユニット/構成要素が現時点で動作可能ではない(例えば、オン/アクティブではない)場合であっても、そのタスクを実行するように構成されていると言うことができる。ユニット/回路/構成要素が、1つ以上のタスクを実行する「ように構成された」と記載することは、そのユニット/構成要素に関して、米国特許法第112条第6項が適用されないことを、明示的に意図するものである。
【0022】
「第1の」、「第2の」など。本明細書で使用するとき、これらの用語は、それらが前に置かれる名詞に関する指標として使用されるものであり、いずれのタイプの(例えば、空間的、時間的、論理的などの)順序付けも暗示するものではない。例えば、「第1の」太陽電池への言及は、この太陽電池がシーケンス内の最初の太陽電池であることを必ずしも意味するものではなく、その代わりに、用語「第1の」は、この太陽電池を別の太陽電池(例えば、「第2の」太陽電池)から区別するために使用される。
【0023】
「結合された」−以下の説明は、素子又はノード又は機構が一体に「結合された」ことについて言及する。本明細書で使用するとき、明示的に別段の定めがある場合を除き、「結合された」とは、1つの素子/ノード/機構が、別の素子/ノード/機構に、直接的又は間接的に接続される(又は、直接的若しくは間接的に連通する)ことを意味するものであり、これは、必ずしも機械的なものではない。
【0024】
「抑制する」−本明細書で使用する場合、抑制する、は影響の低減又は最小化を表すために用いる。構成要素又は機構が、作用、動作、又は状況を抑制すると記載される場合、これらの構成要素又は機構は完全に、結果、又は効果、又は将来の状態が起こらないように完全に阻止してもよい。更に、「抑制する」はまた、そうでなければ発生したであろう効果、性能、及び/又は影響を低減する又は減少させることにも言及し得る。したがって、構成要素、素子、又は機構について結果若しくは状態を抑制すると述べる場合、これらの構成要素、素子、又は機構は必ずしも結果若しくは状態を完全に阻止したり、排除したりするものではない。
【0025】
更には、特定の用語法もまた、参照のみを目的として、以下の説明で使用される場合があり、それゆえ、それらの用語法は、限定的であることを意図するものではない。例えば、「上側」、「下側」、「上方」、及び「下方」などの用語は、参照される図面内での方向を指す。「前部」、「後方」、「後部」、「側部」、「外側」、及び「内側」などの用語は、論考中の構成要素を説明するテキスト及び関連図面を参照することによって明確にされる、一貫性はあるが任意の基準系の範囲内での、構成要素の諸部分の向き及び/又は位置を説明するものである。そのような用語法は、具体的に上述された語、それらの派生語、及び類似の意味の語を含み得る。
【0026】
太陽電池の受光面を結晶シリコンを用いてパッシベーションする方法、及び得られる太陽電池が、本明細書で記載される。以下の説明では、本開示の実施形態の完全な理解を提供するために、特定のプロセスフロー操作などの多数の具体的詳細が記載される。これらの具体的な詳細なしに、本開示の実施形態を実践することができることは、当業者には明らかであろう。他の場合には、本開示の実施形態を不必要に不明瞭にしないために、リソグラフィ及びパターニング技術などの、周知の製造技術は詳細に説明されない。更に、図に示された様々な実施形態は、例示的な表示であって、必ずしも原寸に比例して描写されたものではないことを理解されるべきである。
【0027】
太陽電池が本明細書に開示されている。一実施形態において、太陽電池は受光面を有するシリコン基板を備える。真性シリコン層が、シリコン基板の受光面の上方に配置されている。N型のシリコン層が、真性シリコン層上に配置されている。真性シリコン層及びN型のシリコン層の一方又は両方が、微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層である。
【0028】
別の態様において、太陽電池は受光面を有するシリコン基板を備える。パッシベーション誘電体層が、シリコン基板の受光面上に配置されている。N型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層は、パッシベーション誘電体層上に配置されている。
【0029】
また、太陽電池を製造する方法も本明細書に開示されている。一実施形態において、太陽電池を製造する方法は、シリコン基板の受光面上にパッシベーション誘電体層を形成する工程を備える。この方法はまた、パッシベーション誘電体層の上方にN型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層を形成する工程を備える。この方法はまた、N型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層上に反射防止コーティング(ARC)層を形成する工程を備える。
【0030】
本明細書に記載された1つ又は2つ以上の実施形態は、太陽電池用の改良された前面フィールド(front surface field(FSF))の性能を得るための手法を目的とする。一実施形態において、改善された効率と信頼性を提供する結晶シリコン(Si)中間層を用いて、改良されたFSFの性能が得られる。
【0031】
背景を説明すると、光誘起劣化(light induced degradation(LID))及び/又は紫外線((UV))劣化が、太陽電池の性能の長期間の安定性に関する長年の問題を引き起こす。高効率の太陽電池は、特に前面パッシベーションの増大した感度のために、このような劣化状態に晒される。減少したパッシベーション又は太陽スペクトルの吸収(例えば、Jsc損失)の形態における性能に関し妥協することなく、このような太陽電池の安定性を向上させる努力がなされてきた。性能安定性は、性能保証及び製品品質の差別化のために重要であり得る。より具体的には、前面パッシベーションは、高効率太陽電池の性能のために重要であり得る。通常は、前面パッシベーションは、拡散プロセスを使用して実行され、その後、高温酸化を行い、最終的に、プラズマ強化化学蒸着法(PECVD)を用いて反射防止コーティング(ARC)で覆われる。シリコン窒化物(SiN又はSiN:H)は、その光学特性により、またその優れたパッシベーション品質のためにARCとしてよく使われる。シリコン窒化層は、結晶シリコン/熱酸化物(cーSi/TOX)界面にH+を提供するために使用可能である。残念ながら、界面は、既存のSi−H結合を破壊する界面を横切ったホットエレクトロンの注入により、紫外線に長期間晒すことによって劣化し得る。ホットエレクトロンは次の層に捕獲され得、また界面にわたって行ったり来たり跳ね返って再励起され得るが、これは界面の摩耗として知られているプロセスである。
【0032】
本明細書に記載された1つ又は2つ以上の実施形態に従って、上記の問題の1つ又は2つ以上に取り組みながらパッシベーション酸化物層とSiN又はSiN:H層などのARC層との間に、結晶シリコン(Si)の中間層を挿入することにより、太陽電池の効率及び信頼性が向上される。一実施形態において、熱酸化物及びSiN又はSiN:HのARC層の間に、結晶化させた又は部分的に結晶化させたSiの中間層を挿入することによって、cーSi/TOX界面のパッシベーション及び安定性は、改善される。また、太陽電池により透明な中間層を使用する工程により、Jscの増加が達成され得る。多くの適した方法によって、そのような中間層は堆積され得る。一実施形態において、微結晶又は多結晶N型のシリコン(μc−Si:n)層又は多結晶のSi:n層の直接的な堆積が行なわれる。別の態様において、最初に非晶質N型のシリコン(aSi:n)層を堆積し、また次に、この堆積層をアニール工程を用いて結晶化するという後処理が実行される。後処理は、ARC層の存在を伴って、又は伴わずに、実行可能である。
【0033】
理論に束縛されるものではないが、ある実施形態において、直接堆積又は、より結晶化された相への相変換によってもたらされる安定性を改善することにより、N型のシリコンの中間層の応力状態を改善し、下にある熱酸化物の圧縮性質を相殺する。結果は、よりエネルギー的に好ましい、SiーO結合シナリオである。更に、結晶化状態への変換は、下にある熱酸化物の表面のO−H結合の合計数を減少させることができ、ホットエレクトロン捕獲の捕獲状態量を減少させ、界面の摩耗を減らす結果となる。
【0034】
より一般的には、1つ以上の実施形態において、真性の微結晶シリコン又は非晶質シリコン:N型の微結晶シリコン又は多結晶シリコンの構造体(i:nとして表される)は、パッシベーションの向上のための薄い酸化物を伴って、又は伴わずに製造される。別の態様において、薄い酸化物が、良いパッシベーションを維持するのに十分に高品質である限り、N型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層は単独で使用され得る。真性の微結晶シリコン又は多結晶シリコン又は非晶質シリコンが実装されている場合、材料は、欠陥酸化物の問題を抱えている場合に、付加的なパッシベーション保護を提供する。いくつかの実施形態において、真性層に加えてリンドープの微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層を備えることにより、紫外線劣化に抗する安定性を向上させる。リンドープ層は、少数キャリアの再結合の量を減らすことによって、界面の遮蔽の助けとなる、バンドベンディングが可能となるように実装できる。
【0035】
図1A図1Eは、本開示の実施形態による、太陽電池の製造における様々な段階の断面図を例示する。図2は、本開示の実施形態による、図1A図1Eに対応する太陽電池の製造方法における操作を一覧にしたフローチャートである。
【0036】
図1Aは、太陽電池の出発基板を例示する。図1Aを参照して、基板100は受光面102及び裏面104を有する。ある実施形態において、基板100は単結晶シリコン基板、例えばバルク単結晶のN型のドープシリコン基板である。しかしながら、基板100は、大域的太陽電池基板上に設けられた、多結晶シリコン層などの層であり得ることを理解すべきである。ある実施形態において、受光面102はテクスチャ化されたトポグラフィー106を有する。1つのこのような実施形態において、水酸化物ベースの湿式エッチング液を用いて、基板100の前面をテクスチャ化する。テクスチャ化された表面は、太陽電池の受光面への入射光を散乱させ、太陽電池の受光面から反射される光の量を減少させる、規則的な又は不規則的な形状の表面を有し得ることを理解されたい。
【0037】
図1Bは、基板の受光面上にパッシベーション誘電体層を形成した後の、図1Aの構造体を図示する。図1B及びフローチャート200の対応する操作202を参照して、パッシベーション誘電体層108は、基板100の受光面102上に形成されている。一実施形態において、図1Bに示すように、受光面102はテクスチャ化されたトポグラフィー106を有し、またパッシベーション誘電体層108は、テクスチャ化されたトポグラフィー106と共形である。
【0038】
ある実施形態において、パッシベーション誘電体層108は、二酸化ケイ素(SiO)の層である。1つのこのような実施形態において、二酸化ケイ素(SiO)の層は、およそ10〜200オングストロームの範囲内の厚さを有する。一実施形態において、パッシベーション誘電体層108は、親水性である。ある実施形態において、パッシベーション誘電体層108は、シリコン基板の受光面の一部分の化学酸化、二酸化ケイ素(SiO)のプラズマ強化化学蒸着法(PECVD)、シリコン基板の受光面の一部分の熱酸化、SiO若しくはAlOxの原子層堆積(ALD)、又は、シリコン基板の受光面の、O若しくはO環境での紫外線(UV)放射への露出、などの手法によって形成されているが、これらに限定されるわけではない。
【0039】
図1Cは、パッシベーション誘電体層上に真性シリコン層を形成した後の、図1Bの構造体を図示する。図1Cを参照して、真性シリコン層110は、パッシベーション誘電体層108上に形成されている。一実施形態において、図1Cに示されているように、真性シリコン層110は、テクスチャ化されたトポグラフィー106と共形である。
【0040】
ある実施形態において、真性シリコン層110は、真性の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層である。1つのこのような実施形態において、真性の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層は、およそ1〜5ナノメートルの範囲内の厚さを有する。一実施形態において、真性の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層は、およそ0.1〜0.9(すなわち、10〜90%)の範囲内の結晶画分と、非晶質の残部を有する。一実施形態において、真性の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層は、ミクロン径又はナノ径を有する小さな粒子を備える。小さな粒子は、一般的に非晶質シリコンマトリックスに埋め込まれ得、本質的に長距離秩序はない。
【0041】
ある実施形態において、真性の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層は真性非晶質シリコン層の堆積、またその後の、真性非晶質シリコン層の真性の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層への相変換によって、形成されている。1つのこのような実施形態において、真性非晶質シリコン層は、プラズマ強化化学蒸着法(PECVD)、低圧化学気相成長(LPCVD)、又は、スパッタリング(物理蒸着法、PVD)などの堆積プロセスによって形成されているが、これらに限定されるわけではない。一実施形態において、相変換は、炉における加熱、急速熱処理(RTP)、レーザアニール、又は、成形ガスアニール(FGA)、などの手法を使用して得られるが、これらに限定されるわけではない。別の態様において、真性の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層は真性の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層を堆積させることによって形成されている。1つのこのような実施形態において、真性の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層は、PECVD法を用いて堆積される。
【0042】
別の態様において、真性シリコン層110は、真性非晶質シリコン層である。1つのこのような実施形態において、真性非晶質シリコン層は、およそ1〜5ナノメートルの範囲内の厚さを有する。一実施形態において、パッシベーション誘電体層108上の真性非晶質シリコン層の形成は、摂氏約400度未満の温度で行なわれる。ある実施形態において、真性非晶質シリコン層は、プラズマ強化化学蒸着法(PECVD)を用いて形成され、a−Si:Hで表され、層全体にわたるSi−H共有結合を備える。
【0043】
図1Dは、真性シリコン層上にN型のシリコン層を形成した後の、図1Cの構造体を図示する。図1D及びフローチャート200の対応する操作204を参照し、N型のシリコン層112は、真性シリコン層110上に形成されている。一実施形態において、図1Dに示すように、N型のシリコン層112はテクスチャ化されたトポグラフィー106と共形である。
【0044】
ある実施形態において、N型のシリコン層112は、N型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層である。1つのこのような実施形態において、真性の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層は、およそ1〜20ナノメートルの範囲内の厚さを有する。一実施形態において、N型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層は、およそ0.1〜0.9(すなわち、10〜90%)の範囲内の結晶部分と、非晶質の残部を有する。ある実施形態において、N型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層のN型のドーパント(例えば、リン)の濃度は、およそ1E17〜1E20原子/cmの範囲内である。一実施形態において、N型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層は、ミクロン径又はナノ径を有する小さな粒子を備える。小さな粒子は、一般的に非晶質シリコンマトリックスに埋め込まれ得、本質的に長距離秩序はない。ある実施形態において、N型のドーパントが非晶質部分、結晶部分、又はその両方に含まれる。
【0045】
ある実施形態において、N型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層は、N型の非晶質シリコン層を堆積させること、またその後の、N型の非晶質シリコン層をN型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層に相変換することによって形成される。1つのこのような実施形態において、N型の非晶質シリコン層は、プラズマ強化化学蒸着法(PECVD)、低圧化学気相成長(LPCVD)、又は、スパッタリング(物理蒸着法、PVD)などの堆積プロセスによって形成されているが、これらに限定されない。一実施形態において、相変換は、炉による加熱、急速熱処理(RTP)、レーザアニール、又は、成形ガスアニール(FGA)、などの手法を使用して得られるが、これらに限定されるわけではない。別の態様において、N型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層は、N型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層を堆積させる工程によって形成されている。1つのこのような実施形態において、N型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層は、PECVD法を用いて堆積されている。
【0046】
別の態様において、N型のシリコン層112はN型の非晶質シリコン層である。一実施形態において、真性シリコン層110上のN型の非晶質シリコン層の形成は、摂氏約400度未満の温度で行なわれる。ある実施形態において、N型の非晶質シリコン層は、プラズマ強化化学蒸着法(PECVD)を使用して生成され、層全体にわたるSi−H共有結合を含む、リンドープされたa−Si:Hによって表される。
【0047】
いずれにしても、ある実施形態において、N型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層又は非晶質シリコン層112は、リンのドーパントなどの不純物を含んでいる。1つのこのような実施形態において、リンのドーパントは、膜蒸着、又はポスト注入操作のいずれかの間に結合されている。
【0048】
図1Dを再び参照し、第1の実施形態において、真性シリコン層110は非晶質真性シリコン層であり、またN型のシリコン層112はN型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層である。第2の実施形態において、真性シリコン層110は、真性の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層であり、またN型のシリコン層112は非晶質N型のシリコン層である。第3の実施形態において、真性シリコン層110は真性の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層であり、またN型のシリコン層112はN型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層である。
【0049】
図1Eは、N型のシリコン層上に反射防止コーティング(ARC)層を形成した後の、図1Dの構造体を図示する。図1E及びフローチャート200の対応する操作206を参照して、反射防止コーティング(ARC)層114は、N型のシリコン層112上に形成されている。一実施形態において、図1Eに示すように、ARC層114はテクスチャ化されたトポグラフィー106と共形である。
【0050】
ある実施形態において、ARC層114は非導電性のARC層である。1つのこのような実施形態において、非導電性ARC層は、シリコン窒化物を備える。特定のこのような実施形態において、シリコン窒化物は、摂氏約400度未満の温度で形成されている。別の態様において、ARC層114は導電性ARC層である。1つのこのような実施形態において、導電性ARC層はインジウム錫酸化物(ITO)の層を備える。
【0051】
図3は、本開示の実施形態による、基板の裏面の上方に形成されているエミッタ領域を有し、基板の受光面上に第1の例示的な積層体を有する、バックコンタクト太陽電池の断面図を例示する。
【0052】
図3を参照し、太陽電池は、受光面102を有するシリコン基板100を備える。パッシベーション誘電体層108が、シリコン基板100の受光面上に配置されている。真性シリコン層110が、パッシベーション誘電体層108上に配置されている。N型のシリコン層112が、真性シリコン層110上に配置されている。反射防止コーティング(ARC)層114が、N型のシリコン層112上に配置されている。したがって、図3の太陽電池の受光面上の積層体は、図1A図1Eに関して記載されたのと同じである。
【0053】
図3を再び参照し、第1の実施形態において、真性シリコン層110は非晶質真性シリコン層であり、N型のシリコン層112はN型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層である。第2の実施形態において、真性シリコン層110は、真性の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層であり、N型のシリコン層112は非晶質N型のシリコン層である。第3の実施形態において、真性シリコン層110は真性の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層であり、N型のシリコン層112はN型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層である。
【0054】
図3を再び参照し、基板100の裏面上に、交互になるP型のエミッタ領域120及びN型のエミッタ領域122が形成されている。1つのこのような実施形態において、溝部121が交互になるP型のエミッタ領域120及びN型のエミッタ領域122間に配置されている。より具体的に、ある実施形態において、第1の多結晶シリコンエミッタ領域122は、薄い誘電体層124の第1の部分上に形成され、またN型の不純物でドープされている。第2の多結晶シリコンエミッタ領域120は、薄い誘電体層124の第2の部分上に形成され、またP型不純物でドープされている。ある実施形態において、トンネル誘電体124は、およそ2ナノメートル以下の厚さを有するシリコン酸化物層である。
【0055】
図3を再び参照し、導電性コンタクト構造体128/130は、開口部を有するように最初に絶縁層126を堆積及びパターニングし、その後、開口部内に1つ以上の導電層を形成する工程によって作製されている。ある実施形態において、導電性コンタクト構造体128/130は、金属を備え、堆積、リソグラフ法、及びエッチング法、又はその代わりに、印刷若しくはめっき工程、又はあるいは、箔接着工程によって形成されている。
【0056】
図4は、本開示の実施形態による、基板の裏面内に形成されているエミッタ領域を有し、また基板の受光面上に第1の例示的な積層体を有する、バックコンタクト太陽電池の断面図を例示する。
【0057】
図4を参照し、太陽電池は、受光面102を有するシリコン基板100を備える。パッシベーション誘電体層108が、シリコン基板100の受光面上に配置されている。真性シリコン層110が、パッシベーション誘電体層108上に配置されている。N型のシリコン層112が、真性シリコン層110上に配置されている。反射防止コーティング(ARC)層114が、N型のシリコン層112上に配置されている。したがって、図4の太陽電池の受光面上の積層体は、図1A図1Eに関して記載されたのと同じである。
【0058】
図4を再び参照し、第1の実施形態において、真性シリコン層110は非晶質真性シリコン層であり、またN型のシリコン層112はN型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層である。第2の実施形態において、真性シリコン層110は、真性の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層であり、またN型のシリコン層112は非晶質N型のシリコン層である。第3の実施形態において、真性シリコン層110は真性の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層であり、またN型のシリコン層112はN型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層である。
【0059】
図4を再び参照し、基板100の裏面内で、交互になるP型のエミッタ領域150及びN型のエミッタ領域152が形成されている。より具体的に、ある実施形態において、第1のエミッタ領域152が、基板100の第1の部分内で形成され、またN型の不純物でドープされている。第2のエミッタ領域150は、基板100の第2の部分内で形成され、またP型不純物でドープされている。図4を再び参照し、導電性コンタクト構造体158/160は、開口部を有するように最初に絶縁層156を堆積及びパターニングし、その後、開口部内に1つ以上の導電層を形成する工程によって作製されている。ある実施形態において、導電性コンタクト構造体158/160は、金属を備え、堆積、リソグラフ法、及びエッチング法、又はその代わりに、印刷若しくはめっき工程、又はあるいは、箔接着工程によって形成されている。
【0060】
図5は、本開示の実施形態による、図3及び図4に関連して記載された太陽電池の受光面上に配置された第1の例示的な積層体のエネルギーバンド図の500である。エネルギーバンド図の500を参照して、バンド構造体が、N型のドープシリコン(n)、真性シリコン(i)、薄い酸化物層(Tox)、及び結晶シリコン基板(c−Si)を備える材料の積層体に対して提供されている。フェルミレベルは502で示され、この材料の積層体を有する基板の受光面の良いパッシベーションを明示する。
【0061】
図6Aは、本開示の実施形態による、基板の裏面の上方に形成されたエミッタ領域を有し、基板の受光面上に第2の例示的な積層体を有する、バックコンタクト太陽電池の断面図を例示する。
【0062】
図6Aを参照し、太陽電池は、受光面102を有するシリコン基板100を備える。真性シリコン層110が、シリコン基板100の受光面102上に配置されている(この場合、成長法はエピタキシャルであり得る)。N型のシリコン層112が、真性シリコン層110上に配置されている。反射防止コーティング(ARC)層114が、N型のシリコン層112上に配置されている。したがって、図6Aの太陽電池の受光面上の積層体は、図3に関連して記載されたパッシベーション誘電体層108を含まない。しかしながら、図3に関連して記載されるその他の特徴は似ている。更に、図4に関連して記載されるように、エミッタ領域は、基板内に形成され得る工程が、理解されるであろう。
【0063】
図6Aを再び参照し、第1の実施形態において、真性シリコン層110は非晶質真性シリコン層であり、N型のシリコン層112は、N型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層である。第2の実施形態において、真性シリコン層110は、真性の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層であり、N型のシリコン層112は非晶質N型のシリコン層である。第3の実施形態において、真性シリコン層110は、真性の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層であり、N型のシリコン層112はN型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層である。
【0064】
図6Bは、本開示の実施形態による、図6Aと関連して記載された太陽電池の受光面に配置された、第2の例示的な積層体に対するエネルギーバンド図の600である。エネルギーバンド図の600を参照して、バンド構造体は、N型のドープシリコン(n)、真性シリコン(i)、及び結晶シリコン基板(c−Si)を含んだ材料の積層体に提供されている。フェルミレベルが602で示されており、酸化物層が経路604をブロックするのに適所にないにもかかわらず、この材料の積層体を有する基板の受光面の良いパッシベーションを明示している。
【0065】
図7Aは、本開示の実施形態による、基板の裏面の上方に形成されたエミッタ領域を有し、また基板の受光面上に第3の例示的な積層体を有する、バックコンタクト太陽電池の断面図を例示する。
【0066】
図7Aを参照し、太陽電池は、受光面102を有するシリコン基板100を備える。パッシベーション誘電体層108は、シリコン基板100の受光面102上に配置されている。N型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層112は、パッシベーション誘電体層108上に配置されている。反射防止コーティング(ARC)層114が、N型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層112上に配置されている。したがって、図7Aの太陽電池の受光面上の積層体は、図3に関連して記載された、微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層又は非晶質真性シリコン層110を含まない。しかしながら、図3に関連して記載されるその他の特徴は似ている。更に、図4に関連して記載されるように、エミッタ領域が基板内に形成され得る工程が、理解されるであろう。
【0067】
図7Bは、本開示の実施形態による、図7Aに関連して記載された太陽電池の受光面上に配置されている、第3の例示的な積層体に対する、エネルギーバンド図の700である。エネルギーバンド図の700を参照すると、バンド構造体は、微結晶シリコン層又は多結晶N型のドープシリコン(n)、薄い酸化物層(Tox)、及び結晶シリコン基板(c−Si)を備える材料の積層体に対して提供されている。フェルミレベルは702で示されており、この材料の積層体を有する基板の受光面の良いパッシベーションを明示している。
【0068】
全体として、特定の材料が具体的に上述されたが、いくつかの材料は、本開示の実施形態の趣旨及び範囲を逸脱しない限り、他のそのような実施形態の他の材料と直ちに置換され得る。例えば、ある実施形態において、III−V族材料又は多結晶基板などの異なる材料基板が、シリコン基板の代わりに使用され得る。また、基板はN+又はP+型材料のいずれかであり得ることが理解されるべきである。更に、特に、太陽電池の裏面のエミッタ領域に関して、N+型ドーピング、及び、P+型ドーピングで記載されている場合、意図される他の実施形態は、反対の導電型、例えば、それぞれP+型ドーピング及びN+型ドーピングを備えることは理解されるべきである。これは又、前側のコンタクトセル及び両面セルのアーキテクチャに適用できる。
【0069】
したがって、結晶シリコンを用いて太陽電池の受光面をパッシベーションする方法、及び得られる太陽電池が開示された。
【0070】
具体的な実施形態が上述されてきたが、これらの実施形態は、特定の機構に関して単一の実施形態のみが説明される場合であっても、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。本開示で提供される機構の実施例は、別段の定めがある場合を除き、制約的であることよりも、むしろ例示的であることを意図するものである。上記の説明は、本開示の利益を有する当業者には明らかとなるような、変更、修正、及び等価物を包含することを意図するものである。
【0071】
本開示の範囲は、本明細書で対処される問題のいずれか又はすべてを軽減するか否かにかかわらず、本明細書で(明示的又は暗示的に)開示される、あらゆる機構又は機構の組み合わせ、若しくはそれらのあらゆる一般化を含む。したがって、本出願(又は、本出願に対する優先権を主張する出願)の実施の間に、任意のそのような機構の組み合わせに対して、新たな請求項を形式化することができる。具体的には、添付の請求項を参照して、従属請求項からの機構を、独立請求項の機構と組み合わせることができ、それぞれの独立請求項からの機構を、任意の適切な方式で、単に添付の請求項で列挙される具体的な組み合わせのみではなく、組み合わせることができる。
【0072】
ある実施形態において、太陽電池は、受光面を有するシリコン基板を備える。真性シリコン層が、シリコン基板の受光面の上方に配置されている。N型のシリコン層は、真性シリコン層上に配置され、また真性シリコン層及びN型のシリコン層の一方又は両方が、微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層である。
【0073】
一実施形態において、N型のシリコン層は、結晶部分がおよそ0.1〜0.9の範囲内で、残部が非晶質である、N型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層である。
【0074】
一実施形態において、N型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層におけるN型のドーパントの濃度は、およそ1E17〜1E20原子/cmの範囲内である。
【0075】
一実施形態において、太陽電池は、シリコン基板の受光面上に配置されたパッシベーション誘電体層を更に備え、また真性シリコン層がパッシベーション誘電体層上に配置されている。
【0076】
一実施形態において、パッシベーション誘電体層は、およそ10〜200オングストロームの範囲内の厚さを有する、二酸化ケイ素(SiO)の層である。
【0077】
一実施形態において、太陽電池は、N型のシリコン層上に配置された反射防止コーティング(ARC)層を更に備える。
【0078】
一実施形態において、受光面は、テクスチャ化されたトポグラフィーを有し、真性シリコン層及びN型のシリコン層の両方は、受光面のテクスチャ化されたトポグラフィーと共形である。
【0079】
一実施形態において、基板は受光面の反対側にある裏面を更に有しており、また太陽電池は、基板の裏面において又は基板の裏面の上方に、複数の交互になるN型の半導体領域及びP型の半導体領域、並びに、複数の交互になるN型の半導体領域及びP型の半導体領域に電気的に接続された、導電性のコンタクト構造体を更に備える。
【0080】
ある実施形態において、太陽電池は受光面を有するシリコン基板を備える。パッシベーション誘電体層が、シリコン基板の受光面上に配置されている。N型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層が、パッシベーション誘電体層上に配置されている。
【0081】
一実施形態において、N型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層は、およそ0.1〜0.9の範囲内の結晶部分と、非晶質の残部とを有する。
【0082】
一実施形態において、N型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層におけるN型のドーパント濃度は、およそ1E17〜1e20原子/cmの範囲内である。
【0083】
一実施形態において、太陽電池は、N型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層上に配置された反射防止コーティング(ARC)層を更に備える。
【0084】
一実施形態において、パッシベーション誘電体層は、およそ10〜200オングストロームの範囲内の厚さを有する、二酸化ケイ素(SiO)の層である。
【0085】
一実施形態において、基板の受光面はテクスチャ化されたトポグラフィーを有し、またN型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層は、受光面のテクスチャ化されたトポグラフィーと共形である。
【0086】
一実施形態において、基板は、受光面の反対側にある裏面を更に有しており、太陽電池は、基板の裏面において又は基板の裏面の上方に複数の交互になるN型の半導体領域及びP型の半導体領域、並びに、複数の交互になるN型の半導体領域及びP型の半導体領域に電気的に接続された導電性のコンタクト構造体を更に備える。
【0087】
ある実施形態において、太陽電池を製造する方法は、シリコン基板の受光面上にパッシベーション誘電体層を形成する工程を備える。この方法はまた、パッシベーション誘電体層の上方にN型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層を形成する工程を備える。この方法はまた、N型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層上に反射防止コーティング(ARC)層を形成する工程を備える。
【0088】
一実施形態において、N型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層を形成する工程は、N型の非晶質シリコン層を堆積し、続いて、N型の非晶質シリコン層を、N型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層に相変換する工程を有する。
【0089】
一実施形態において、N型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層を形成する工程は、N型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層を堆積させる工程を有する。
【0090】
一実施形態において、方法は、パッシベーション誘電体層に真性の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層又は非晶質シリコン層を形成する工程を更に有し、N型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層を形成する工程は、真性の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層又は非晶質シリコン層に形成する工程を有する。
【0091】
一実施形態において、パッシベーション誘電体層を形成する工程は、シリコン基板の受光面の一部の化学酸化、二酸化ケイ素(SiO)のプラズマ強化化学蒸着法(PECVD)、SiO又はAlOxの原子層堆積(ALD)、シリコン基板の受光面の一部の熱酸化、及び、シリコン基板の受光面の、O又はO環境での紫外線(UV)放射への露出からなる群から選択される手法を使用する工程を有する。
[項目1]
受光面を有するシリコン基板と、
上記シリコン基板の上記受光面の上方に配置されている真性シリコン層と、
上記真性シリコン層上に配置されているN型のシリコン層であって、上記真性シリコン層及び上記N型のシリコン層のうちの一方又は両方が、微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層である、N型のシリコン層と
を備える、太陽電池。
[項目2]
上記N型のシリコン層は、およそ0.1〜0.9の範囲内の結晶画分と、非晶質の残部とを有するN型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層である、項目1に記載の太陽電池。
[項目3]
上記N型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層におけるN型のドーパントの濃度が、およそ1E17〜1E20原子/cmの範囲内である、項目2に記載の太陽電池。
[項目4]
上記シリコン基板の上記受光面上に配置されたパッシベーション誘電体層を更に備え、上記真性シリコン層が、上記パッシベーション誘電体層上に配置されている、項目1に記載の太陽電池。
[項目5]
上記パッシベーション誘電体層は、およそ10〜200オングストロームの範囲内の厚さを有する二酸化ケイ素(SiO)層である、項目4に記載の太陽電池。
[項目6]
上記N型のシリコン層上に配置された反射防止コーティング(ARC)層を更に備える、項目1に記載の太陽電池。
[項目7]
上記受光面は、テクスチャ化されたトポグラフィーを有しており、上記真性シリコン層及び上記N型のシリコン層の両方は、上記受光面の上記テクスチャ化されたトポグラフィーと共形である、項目1に記載の太陽電池。
[項目8]
上記基板は、上記受光面とは反対側にある裏面を更に有しており、上記太陽電池は、
上記基板の上記裏面における又は上記基板の上記裏面の上方の、複数の交互のN型の半導体領域及びP型の半導体領域と、
上記複数の交互のN型の半導体領域及びP型の半導体領域に電気的に接続されている導電性コンタクト構造体と
を更に備える、項目1に記載の太陽電池。
[項目9]
受光面を有するシリコン基板と、
上記シリコン基板の上記受光面上に配置されたパッシベーション誘電体層と、
上記パッシベーション誘電体層上に配置されたN型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層と
を備える、太陽電池。
[項目10]
上記N型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層は、およそ0.1〜0.9の範囲内の結晶画分と、非晶質の残部とを有する、項目9に記載の太陽電池。
[項目11]
上記N型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層におけるN型のドーパントの濃度が、およそ1e17〜1e20原子/cmの範囲内である、項目10に記載の太陽電池。
[項目12]
上記N型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層上に配置された反射防止コーティング(ARC)層を更に備える、
項目9に記載の太陽電池。
[項目13]
上記パッシベーション誘電体層が、およそ10〜200オングストロームの範囲内の厚さを有する二酸化ケイ素(SiO)層である、項目9に記載の太陽電池。
[項目14]
上記基板の上記受光面は、テクスチャ化されたトポグラフィーを有しており、上記N型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層は、上記受光面の上記テクスチャ化されたトポグラフィーと共形である、項目9に記載の太陽電池。
[項目15]
上記基板は、上記受光面とは反対側にある裏面を更に有しており、上記太陽電池は、
上記基板の上記裏面における又は上記基板の上記裏面の上方の、複数の交互のN型の半導体領域及びP型の半導体領域と、
上記複数の交互のN型の半導体領域及びP型の半導体領域に電気的に接続されている導電性コンタクト構造体と
を更に備える、項目9に記載の太陽電池。
[項目16]
太陽電池を製造する方法であって、
シリコン基板の受光面上にパッシベーション誘電体層を形成する工程と、
上記パッシベーション誘電体層の上方にN型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層を形成する工程と、
上記N型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層上に反射防止コーティング(ARC)層を形成する工程と
を備える、方法。
[項目17]
N型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層を形成する工程は、N型の非晶質シリコン層を堆積させる工程と、その後、上記N型の非晶質シリコン層を、上記N型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層に相変換する工程とを有する、項目16に記載の方法。
[項目18]
N型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層を形成する工程は、上記N型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層を堆積させる工程を有する、項目16に記載の方法。
[項目19]
上記パッシベーション誘電体層上に真性の微結晶シリコン層若しくは多結晶シリコン層又は非晶質シリコン層を形成する工程を更に備え、上記N型の微結晶シリコン層又は多結晶シリコン層を形成する工程は、上記真性の微結晶シリコン層若しくは多結晶シリコン層又は非晶質シリコン層上に形成する工程を有する、項目16に記載の方法。
[項目20]
上記パッシベーション誘電体層を形成する工程は、上記シリコン基板の上記受光面の一部分の化学酸化、二酸化ケイ素(SiO)のプラズマ強化化学蒸着法(PECVD)、SiO又はAlOxの原子層堆積法(ALD)、上記シリコン基板の上記受光面の一部分の熱酸化、及び、上記シリコン基板の上記受光面のO又はO環境で紫外線(UV)放射への暴露からなる群から選択される手法を使用する工程を有する、項目16に記載の方法。
[項目21]
項目16に記載の方法に従って製造される太陽電池。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B