特許第6722120号(P6722120)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6722120フライアッシュの活性度指数の予測方法、及びフライアッシュの品質評価方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6722120
(24)【登録日】2020年6月23日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】フライアッシュの活性度指数の予測方法、及びフライアッシュの品質評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/38 20060101AFI20200706BHJP
【FI】
   G01N33/38
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-3769(P2017-3769)
(22)【出願日】2017年1月13日
(65)【公開番号】特開2018-112498(P2018-112498A)
(43)【公開日】2018年7月19日
【審査請求日】2019年9月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】中居 直人
(72)【発明者】
【氏名】引田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】内田 俊一郎
(72)【発明者】
【氏名】桐野 裕介
【審査官】 三好 貴大
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−013197(JP,A)
【文献】 特開2009−121988(JP,A)
【文献】 特開2012−47587(JP,A)
【文献】 米国特許第5521132(US,A)
【文献】 岸森智佳 et al.,粒子解析によるフライアッシュの反応性評価,Cement Science and Concrete Technology,2014年,68,1,61-67
【文献】 山本武志,フライアッシュのポゾラン反応性評価手法に関する研究,土木学会第54回年次学術講演会,1999年 9月,1032-1033
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/00−33/46
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フライアッシュのブレーン比表面積及びフライアッシュの45μmふるい残分値から特定した重相関関係に基づき、フライアッシュの材齢28日又は材齢91日の活性度指数を得る、フライアッシュの活性度指数の予測方法。
【請求項2】
フライアッシュの45μmふるい残分値が、エアジェットシーブを使用した乾式ふるい分け試験による値である、請求項1に記載のフライアッシュの活性度指数の予測方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のフライアッシュの活性度指数の予測方法により得られた活性度指数を用い、フライアッシュの品質を評価する、フライアッシュの品質評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート用混和材やセメント用混合材として用いられるフライアッシュの活性度指数の予測方法、及びかかる予測方法により得られた活性度指数を用いるフライアッシュの品質評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭火力発電所において、微粉炭を燃焼した際に燃焼ガスから集塵器で採取された石炭灰であるフライアッシュは、コンクリート用混和材やセメント用混合材に用いると、ポゾラン反応を生じてコンクリートの耐久性を向上することができるため、有用性の高い材料として知られる。その一方、こうしたフライアッシュの採取量は、石炭灰発生量全体の2%弱に過ぎず、品質が安定しにくい事情もあり、フライアッシュの活用率を充分に高められない要因ともなっている。
【0003】
このような状況から、フライアッシュをセメント用混合材等として利用する場合、かかるフライアッシュがロット毎に要求品質を満たすか否かの確認を要する。通常、フライアッシュのポゾラン反応性は、JIS A 6201「コンクリート用フライアッシュ」に規定される活性度指数の試験方法を用いて評価されるが、試験結果を得るまでに28日間または91日間もの長期間を要することから、実用性に乏しく、新たな代替方法の開発がなされている。
【0004】
例えば、非特許文献1には、温度80℃で12〜24時間反応させて得られる下記式(1)のAPI値を元に、フライアッシュのポゾラン反応性を評価する方法が開示されている。
API(%)=((Ca(C)−Ca(F+C))/Ca(C))×100 ・・・(1)
(式(1)中、Ca(C)はセメントのみが水和した際の液相(基準試料)中のCa2+濃度を表し、Ca(F+C)はフライアッシュとセメントの混合物が水和した際の液相(評価試料)中のCa2+濃度を表す。)
【0005】
また、非特許文献2では、フライアッシュのガラス相中の修飾酸化物の含有量(質量%)から求められる下記式(2)で表されるM値が、フライアッシュのポゾラン反応性の指標になるとしている。
M=(CaO+MgO+RO)/SiO ・・・(2)
【0006】
一方、特許文献1では、フライアッシュ硬化体の材齢7日以内の電気抵抗値を計測し、予め求めておいたフライアッシュの活性度指数とフライアッシュ硬化体の電気抵抗値との相関関係に基づいて、フライアッシュの活性度指数を予測している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−47587号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】山本武志 外1名、「フライアッシュのポゾラン反応に関する研究 −ポゾラン反応機構の解明と促進化学試験法(API法)の最適化−(研究報告:N04008)」、電力中央研究所報告、財団法人電力中央研究所、平成16年10月
【非特許文献2】大塚拓 外3名、「フライアッシュの鉱物組成とポゾラン反応性」、セメント・コンクリート論文集 2009 No.63、社団法人 セメント協会、2010年2月25日、p.16−21
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記非特許文献又は特許文献に記載の方法では、特別な測定装置や技術を必要とするものであるため、コンクリート用混和材やセメント用混合材としてフライアッシュを用いる生コンクリート工場やセメント製造工場等のような製造場所において実施するには、依然として困難を伴う状況にある。
【0010】
したがって、本発明の課題は、フライアッシュの活性度指数を、簡便かつ的確に予測することのできるフライアッシュの品質評価方法、及びこれから得られる活性度指数を用いるフライアッシュの品質評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで本発明者らは、種々検討したところ、フライアッシュの活性度指数と、ブレーン比表面積及び45μmふるい残分値との間に強い相関があり、これから簡便に精度よく活性度指数を予測できることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明は、フライアッシュのブレーン比表面積及びフライアッシュの45μmふるい残分値から特定した重相関関係に基づき、フライアッシュの材齢28日又は材齢91日の活性度指数を得る、フライアッシュの活性度指数の予測方法を提供するものである。
また、本発明は、上記フライアッシュの活性度指数の予測方法により得られた活性度指数を用い、フライアッシュの品質を評価する、フライアッシュの品質評価方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のフライアッシュの活性度指数の予測方法は、フライアッシュのブレーン比表面積とフライアッシュの45μmふるい残分値とから重相関関係を特定するのみの簡便な方法でありながら、フライアッシュの材齢28日及び材齢91日のいずれの活性度指数も、短時間のうちに的確に予測することができ、フライアッシュの品質評価方法にも大いに活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】材齢28日の活性度指数について、実施例1で得られた予測値と実測値の関係を説明する図である。
図2】材齢91日の活性度指数について、実施例2で得られた予測値と実測値の関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のフライアッシュの活性度指数の予測方法は、フライアッシュのブレーン比表面積(I)、及びフライアッシュの45μmふるい残分値(II)から特定した重相関関係に基づき、フライアッシュの材齢28日又は材齢91日の活性度指数を得る方法である。本発明において、これらフライアッシュのブレーン比表面積(I)とフライアッシュの45μmふるい残分値(II)の値を用いることにより、フライアッシュの活性度指数の予測精度を効果的に高めることができるとともに、いずれの値もセメント製造工場等の製造場所において通常測定されているものであることから、これらの値を取得するにあたって特別新たな作業を追加する必要がないため、簡便な予測方法を実現することができる。
【0016】
フライアッシュのブレーン比表面積(I)とは、フライアッシュ粒子の粉末度に関する品質項目として、JIS A 6201「コンクリート用フライアッシュ」に規定されているブレーン比表面積である。
【0017】
フライアッシュの45μmふるい残分値(II)とは、フライアッシュ粒子の粉末度に関する品質項目として、JIS A 6201「コンクリート用フライアッシュ」に規定されている45μmふるい残分である。
なお、かかる45μmふるい残分値(II)として、JIS A 6201「コンクリート用フライアッシュ」付属書Bに規定されている45μmふるい残分試験方法(網ふるい法)に代えて、エアジェットシーブを使用した乾式ふるい分け試験による45μmふるい残分値を使用してもよい。
【0018】
本発明の活性度指数の予測方法では、上記ブレーン比表面積(I)であるフライアッシュのブレーン比表面積(cm/g)と、上記45μmふるい残分値(II)であるフライアッシュの45μmふるい残分(質量%)とを説明変数とした、材齢28日又は材齢91日の活性度指数の重回帰分析を行い、下記評価式(A)、又は下記評価式(B)で表される重相関関係を求め、これを用いて材齢28日又は材齢91日の活性度指数を予測すればよい。
【0019】
材齢28日の活性度指数=α×(ブレーン比表面積)
+β×(45μmふるい残分)+a・・・(A)
上記式(A)中、α及びβは偏回帰係数であり、aは定数である。
【0020】
材齢91日の活性度指数=α×(ブレーン比表面積)
+β×(45μmふるい残分)+a・・・(B)
上記式(B)中、α及びβは偏回帰係数であり、aは定数である。
【0021】
本発明のフライアッシュの品質評価方法は、フライアッシュの活性度指数の予測方法により得られた活性度指数を用い、フライアッシュの品質を評価する方法である。すなわち、上記評価式(A)、又は評価式(B)を用いた方法により得られた活性度指数を用いてフライアッシュの品質を評価するため、短時間で、簡便かつ実情に即した精度の高い品質評価を行うことができる。
【実施例】
【0022】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0023】
《使用材料のブレーン比表面積(I)、及び45μmふるい残分値(II)の測定》
表1に示す、13の石炭火力発電所における21の発電ラインから採取された、79個のフライアッシュ(全ての試料がJIS A 6201「コンクリート用フライアッシュ」のII種〜IV種に相当する。同一発電ラインからの複数個の試料採取においては、試料毎に採取日を変更した。)について、JIS A 6201「コンクリート用フライアッシュ」に準拠したブレーン比表面積(I)、及びエアジェットシーブ(ALPINE製A200LS)を用いた乾式ふるい分け試験で45μmふるい残分値(II)を測定した。
測定結果を表1に示す。
【0024】
《実測値の測定》
上記79個のフライアッシュについて、JIS A 6201「コンクリート用フライアッシュ」に準拠した材齢28日及び材齢91日の活性度指数を測定した。
測定結果を表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
[実施例1]
得られたブレーン比表面積(I)、及び45μmふるい残分値(II)を説明変数として、材齢28日の活性度指数の重回帰分析を行い、下記評価式(A)を得た。材齢28日の活性度指数について、実測値と下記評価式(A)により得られた予測値との関係を図1に示す。
得られた評価式(A)の決定係数は0.72であった。
材齢28日活性度指数=0.0028×(ブレーン比表面積)
−0.2067×(45μmふるい残分値)+77.03 ・・・(A)
【0027】
[実施例2]
得られたブレーン比表面積、及び45μmふるい残分値(II)を説明変数として、91日活性度指数の重回帰分析を行い、下記評価式(B)を得た。材齢91日の活性度指数について、実測値と下記評価式(B)により得られた予測値との関係を図2に示す。
得られた評価式(B)の決定係数は0.63であった。
材齢91日活性度指数=0.0025×(ブレーン比表面積)
−0.3564×(45μmふるい残分値)+93.87 ・・・(B)
【0028】
以上より、本発明によれば、生コンクリート工場やセメント製造工場等のフライアッシュをコンクリート用混和材やセメント用混合材として用いる製造場所における、通常の品質試験値のみを使用して、フライアッシュの材齢28日又は材齢91日の活性度指数を、短時間で精度よく簡便に予測することができる。
図1
図2