特許第6722153号(P6722153)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6722153-ドリル、穿孔ユニット及び穿孔方法 図000002
  • 特許6722153-ドリル、穿孔ユニット及び穿孔方法 図000003
  • 特許6722153-ドリル、穿孔ユニット及び穿孔方法 図000004
  • 特許6722153-ドリル、穿孔ユニット及び穿孔方法 図000005
  • 特許6722153-ドリル、穿孔ユニット及び穿孔方法 図000006
  • 特許6722153-ドリル、穿孔ユニット及び穿孔方法 図000007
  • 特許6722153-ドリル、穿孔ユニット及び穿孔方法 図000008
  • 特許6722153-ドリル、穿孔ユニット及び穿孔方法 図000009
  • 特許6722153-ドリル、穿孔ユニット及び穿孔方法 図000010
  • 特許6722153-ドリル、穿孔ユニット及び穿孔方法 図000011
  • 特許6722153-ドリル、穿孔ユニット及び穿孔方法 図000012
  • 特許6722153-ドリル、穿孔ユニット及び穿孔方法 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6722153
(24)【登録日】2020年6月23日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】ドリル、穿孔ユニット及び穿孔方法
(51)【国際特許分類】
   B23B 51/06 20060101AFI20200706BHJP
   B23B 49/00 20060101ALI20200706BHJP
   B23Q 11/10 20060101ALI20200706BHJP
【FI】
   B23B51/06 C
   B23B49/00 A
   B23Q11/10 D
【請求項の数】16
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-146120(P2017-146120)
(22)【出願日】2017年7月28日
(65)【公開番号】特開2019-25573(P2019-25573A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2018年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100136504
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 毅彦
(72)【発明者】
【氏名】小野 遼平
(72)【発明者】
【氏名】中畑 達雄
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 政雄
【審査官】 久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−184056(JP,A)
【文献】 特開2015−120216(JP,A)
【文献】 特公昭43−029791(JP,B1)
【文献】 特開平11−138319(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 51/00 − 51/14
B23B 35/00 − 49/06
B23Q 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックテーパが無く、切削油の流路を内部に形成したボディと、
前記ボディと一体化され、前記切削油を被削材に向けて供給するための第1の供給口を形成した切刃部と、
を有するドリルであって
前記被削材に対する前記ドリルの位置決めを行うために前記ボディを挿入して使用される位置決め用のブッシュであって、穿孔治具に設けられた位置決め用の貫通孔に挿入して使用される前記ブッシュと、前記ボディとの間に形成される隙間に前記切削油を供給するための第2の供給口を前記ボディに設けたドリル。
【請求項2】
前記切削油の流路は、第1の流路及び第2の流路に分岐し、前記第1の流路によって前記第1の供給口に前記切削油が供給される一方、前記第2の流路によって前記第2の供給口に前記切削油が供給されるようにした請求項1記載のドリル。
【請求項3】
前記第2の供給口は、前記ボディの外周面に形成される請求項1又は2記載のドリル。
【請求項4】
工具軸方向において同一の位置に形成される前記第2の供給口の数は1つである請求項1乃至3のいずれか1項に記載のドリル。
【請求項5】
工具軸方向において異なる複数の位置に前記第2の供給口を形成した請求項1乃至3のいずれか1項に記載のドリル。
【請求項6】
前記第1の供給口に供給される前記切削油の量よりも、前記第2の供給口に供給される前記切削油の量の方が少なくなるように前記流路を形成した請求項1乃至5のいずれか1項に記載のドリル。
【請求項7】
前記ボディ及び前記切刃部は、切刃を交換可能に保持するためのホルダである請求項1乃至6のいずれか1項に記載のドリル。
【請求項8】
前記切刃部の直径は、前記ボディの前記切刃部側における直径よりも大きい請求項1乃至7のいずれか1項に記載のドリル。
【請求項9】
前記第2の供給口を異なるサイズで形成するための複数の部材のいずれかを交換可能に前記ボディに取付けた請求項1乃至8のいずれか1項に記載のドリル。
【請求項10】
前記第2の供給口を閉塞するための閉塞部材であって、前記ボディに着脱可能な前記閉塞部材を更に有する請求項1乃至9のいずれか1項に記載のドリル。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のドリルと、
前記ブッシュと、
を備える穿孔ユニット。
【請求項12】
請求項7記載のドリルと、
前記ブッシュとを備え、
前記ブッシュは、前記被削材側において前記切刃部をガイドする第1の直径を有する孔と、前記ボディをガイドする、前記第1の直径よりも小さい第2の直径を有する孔とを連結した段付きの貫通孔を有する穿孔ユニット。
【請求項13】
前記第2の供給口の少なくとも1つは、前記切刃部が前記ブッシュの内部から突出していない場合には、前記ブッシュの内部において開口する位置に設けられる請求項11又は12記載の穿孔ユニット。
【請求項14】
前記第2の供給口の少なくとも1つは、前記切刃部の先端が前記被削材に接触した時に、前記ブッシュ内の前記被削材と逆側における端部で開口する位置に設けられる請求項11乃至13のいずれか1項に記載の穿孔ユニット。
【請求項15】
前記ブッシュと連結されるノーズピースを有するドリル駆動装置を更に備える請求項11乃至14のいずれか1項に記載の穿孔ユニット。
【請求項16】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のドリルと、前記ブッシュとを少なくとも用いて前記切削油を供給しながら前記被削材を穿孔することによって被穿孔品を製作する穿孔方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ドリル、穿孔ユニット及び穿孔方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、穿孔方法の1つとして穿孔板やガイドブッシュ等の穿孔治具を用いて穿孔を行う方法が知られている。具体例として、切削油を内部に供給することが可能なガイドブッシュを用いて深穴加工を高精度に行う穿孔方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ドリルを用いた穿孔では、切削油を供給することが穿孔精度及び工具寿命の向上に繋がる。このため、ドリルの内部に切削油の流路を形成し、ドリルの刃先からワーク(被削材)に向けて切削油を供給する技術が知られている。具体例として、刃先に加えてランドにも切削油の排出口を形成したドリルが提案されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−120216号公報
【特許文献2】特開2009−83092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ガイドブッシュにドリルを挿入して穿孔を行う場合において、より高精度に穿孔を行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係るドリルは、バックテーパが無く、切削油の流路を内部に形成したボディと、前記ボディと一体化され、前記切削油を被削材に向けて供給するための第1の供給口とを形成した切刃部とを有する。前記被削材に対する前記ドリルの位置決めを行うために前記ボディを挿入して使用される位置決め用のブッシュであって、穿孔治具に設けられた位置決め用の貫通孔に挿入して使用される前記ブッシュと、前記ボディとの間に形成される隙間に前記切削油を供給するための第2の供給口を前記ボディに設けた。
【0007】
また、本発明の実施形態に係る穿孔ユニットは、上述したドリルと、上述した位置決め用のブッシュとを備える。
【0008】
また、本発明の実施形態に係る穿孔方法は、上述したドリルと、上述した位置決め用のブッシュとを少なくとも用いて前記切削油を供給しながら前記被削材を穿孔することによって被穿孔品を製作するものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係るドリルを含む穿孔ユニットの構成図。
図2図1に示す穿孔ユニットでワークを穿孔している状態を示す図。
図3】従来のバックテーパを有するストレートドリルとガイドブッシュを用いて穿孔を行う場合の例を示す図。
図4】本発明の第2の実施形態に係るドリルを構成するボディの構造を示す拡大縦断面図。
図5図4に示すボディの右側面図。
図6】本発明の第3の実施形態に係るドリルを含む穿孔ユニットの構成図。
図7図6に示す穿孔ユニットでワークを穿孔している状態を示す図。
図8図6に示す部材の挿入用の貫通孔を閉塞部材で閉塞した例を示すボディの縦断面図。
図9】ボディにねじれ溝を有し、かつ切刃を交換することが可能なインサートドリルで穿孔ユニットを構成した例を示す縦断面図。
図10図9に示す穿孔ユニットでワークを穿孔している状態を示す縦断面図。
図11図9に示すインサートドリルの先端付近における拡大縦断面図。
図12図9に示すインサートドリルの切刃部における構造例を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態に係るドリル、穿孔ユニット及び穿孔方法について添付図面を参照して説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
(構成及び機能)
図1は本発明の第1の実施形態に係るドリルを含む穿孔ユニットの構成図であり、図2図1に示す穿孔ユニットでワークを穿孔している状態を示す図である。
【0012】
穿孔ユニット1は、手持ち式のドリル駆動装置を用いてワークWの穿孔を行う装置である。穿孔ユニット1は、ドリル2、ガイドブッシュ3及び穿孔板4を有する。ガイドブッシュ3は、穿孔板4やその他の穿孔治具に設けられた位置決め用の貫通孔に挿入して使用されるドリル2の位置決め用のブッシュである。
【0013】
尚、穿孔板4の構造は、ワークWの構造に応じた設置し易い構造となるため、穿孔ユニット1のユーザによって製作することが適切である場合が多い。このため、穿孔板4を穿孔ユニット1の構成要素とせずに、ドリル2及びガイドブッシュ3で穿孔ユニット1を構成するようにしてもよい。図示された穿孔板4は、板状の部材にガイドブッシュ3を挿入するための貫通孔を設けた構造を有している。そして、穿孔板4の貫通孔に挿入されたガイドブッシュ3が、止めねじ4Aで穿孔板4に固定されている。
【0014】
また、ワークWは、3つの板材W1、W2、W3を重ね合わせたラミネート材となっている。具体例として、炭素繊維強化プラスチック(CFRP: Carbon Fiber Reinforced Plastics)で構成される板材W1、アルミニウムで構成される板材W2及びチタンで構成される板材W3を重ね合わせて成るワークWを穿孔ユニット1による穿孔対象とすることができる。もちろん、金属や複合材等の同一の素材で構成されたラミネート材、同一の素材で構成された単純な板状の部分、同一の素材で構成されたブロック状の部分等を穿孔ユニット1による穿孔対象とすることができる。
【0015】
ドリル2は、バックテーパが無いボディ5と、任意数の切刃を形成した切刃部6とを有する。手持ち式のドリル駆動装置等で保持されるドリル2は、ドリル駆動装置と区別するためにドリルビットとも呼ばれる。ボディ5の一端は、ドリル2をドリル駆動装置のホルダで保持するためのシャンク5Aとして使用され、ボディ5の他端は、切刃部6と一体化される。また、少なくともバックテーパが無いボディ5の切刃部6側は直径が一定であり、ガイドブッシュ3に挿入される。
【0016】
図1に示す例では、切刃部6の直径が、ボディ5の直径よりも長くなっている。従って、ガイドブッシュ3の構造は、ワークW側において切刃部6をガイドする第1の直径を有する孔と、ワークWと逆側においてボディ5をガイドする、第1の直径よりも小さい第2の直径を有する孔とを連結した段付きの貫通孔を有する円筒状の構造となる。
【0017】
また、ガイドブッシュ3は、穿孔板4等に設けられた位置決め用の貫通孔に挿入して使用されるため、ガイドブッシュ3のワークW側における外形と、穿孔板4等に設けられた位置決め用の貫通孔の直径との間における公差が、隙間嵌めに対応する公差となるように、ガイドブッシュ3のワークW側における外形が決定される。
【0018】
尚、図示されるように、ガイドブッシュ3の外表面にリング状の凸部を形成すれば、リング状で工具軸方向に垂直な段差面を穿孔板4等の表面に接触させることによって、ガイドブッシュ3の工具軸方向における位置決めを行うことができる。また、図示されるように、ガイドブッシュ3のリング状の凸部を止めねじ4Aと穿孔板4との間に挟み込むことによって、ガイドブッシュ3を穿孔板4に固定することができる。
【0019】
ドリル2の切刃は、切刃部6に交換可能に取付けるようにしてもよい。切刃をインサート又はヘッドとして交換可能なドリルは、インサートドリルとも称される。ドリル2をインサートドリルとする場合には、切刃を除く切刃部6の部分及びボディ5が、切刃を交換可能に保持するためのホルダとしても機能する。
【0020】
尚、従来のインサートドリル向けに2枚刃のインサートが市販されており、ドリル2用のインサートとして用いることもできる。このため、切刃を取付けることが可能な構造を有する切刃部6と、ボディ5とによってドリル2を構成し、切刃については、既存の汎用性のあるインサートを用いるようにしてもよい。
【0021】
ガイドブッシュ3に挿入されないボディ5のホルダ側の端部における直径は、剛性を確保するために、ガイドブッシュ3の内径のみならず、切刃部6の直径よりも長くするようにしてもよい。換言すれば、ボディ5のホルダ側にボディ5の直径よりも太いシャンク5Aやねじ等のその他の連結部材を連結してもよい。その場合には、ドリル2は、切刃部6の直径がボディ5の切刃部6側における直径よりも大きい非ストレートドリルとなる。その場合においても、ガイドブッシュ3に挿入して使用されるボディ5の切刃部6側における部分の直径は一定とされる。
【0022】
シャンク5Aの太さに関わらず、ボディ5の切刃部6側には、切粉の排出用に溝を形成することが適切である。例えば、ツイストドリルと同様に螺旋状のねじれ溝を、ボディ5の切刃部6側に形成することができる。或いは、直刃のドリルと同様に直線状の溝をボディ5の切刃部6側に形成してもよい。
【0023】
直径を一定とするバックテーパの無いボディ5の部分の長さは、ドリル2を工具軸方向に送り出すことが可能な距離となる。従って、バックテーパの無いボディ5の部分の長さを長くする程、ドリル2を工具軸方向に送り出すことが可能な距離を長くすることができる。このため、図示されるように、ホルダで保持するためのシャンク5Aとして使用される部分を含めてボディ5の直径を一定とするようにしてもよい。
【0024】
もちろん、図示された例に限らず、切刃部6の直径を、ボディ5の直径と同じにしてストレートドリルとしても良いし、切刃部6とボディ5とを同じ素材で構成してソリッドタイプのドリルとしてもよい。その場合においても、ボディ5の切刃部6側にはバックテーパが設けられず、工具径は一定とされる。
【0025】
但し、ドリル2を上述したようなインサートドリルとすれば、従来のインサートドリルと同様に、ボディ5の材質を高速度鋼等の安価な材質とする一方、超硬やセラミックス等の高価な材料で構成される切刃が消耗した場合に切刃のみを交換できるため、ドリル2の価格を低減することができる。また、バックテーパの無いストレートドリルは近年では殆ど無く、製造するためには大規模な設備が新たに必要となる。これに対し、刃先の直径がホルダの直径よりも大きいインサートドリルのホルダはワークと接触しないことからバックテーパが無いものも市販されている。従って、ドリル2をインサートドリルとすれば、できるだけ従来の設備を使用してドリル2を製造することが可能となる。
【0026】
ボディ5の内部には、切削油の流路7が形成される。切削油は、ボディ5のホルダ側からボディ5内の流路に供給される。従って、切削油の入口は、ボディ5のホルダ側における端面に形成することが実用的である。図示された例では、直径が一定のボディ5の工具軸上に直線的な切削油の流路7が形成されている。この場合、ボディ5は円筒構造となる。
【0027】
但し、ボディ5の工具軸上ではない位置に切削油の流路7を形成してもよい。また、工具軸に平行な複数の流路7をボディ5に形成してもよい。
【0028】
ボディ5内の流路7に供給された切削油は、ボディ5内の流路7を経由して主として切刃部6からワークWに向けて供給される。従って、切刃部6には、切削油の出口が形成される。切削油の出口は、ドリル2の先端から切削油をワークWに向けて供給するための第1の供給口8Aとして用いられる。図示された例では、第1の供給口8Aがドリル2の切刃部6に4箇所形成されている。
【0029】
更に、ボディ5内の流路7に供給された切削油の一部は、ガイドブッシュ3と、ボディ5との間に形成される隙間に供給される。そして、隙間に供給された切削油は、ガイドブッシュ3と、ボディ5との間における潤滑用に使用される。そのために、ボディ5には、ガイドブッシュ3と、ボディ5との間に形成される隙間に切削油を供給するための第2の供給口8Bが設けられる。
【0030】
従って、切削油の流路7を、ドリル2の内部において第1の流路7A及び第2の流路7Bに分岐させることができる。そして、第1の流路7Aによって第1の供給口8Aに切削油を供給する一方、第2の流路7Bによって第2の供給口8Bに切削油を供給することができる。これにより、ボディ5内への切削油の入口を1つとし、ボディ5の構造を簡易にすることができる。
【0031】
ガイドブッシュ3と、ボディ5との間に形成される隙間に十分な切削油を供給するためには、ボディ5の外周面に第2の供給口8Bを開口することが適切である。特に、第2の流路7B及び第2の供給口8Bを形成する孔の中心軸がガイドブッシュ3の内面に向かうように、第2の流路7B及び第2の供給口8Bを形成することが適切である。
【0032】
このため、例えば、工具軸に平行な流路7をボディ5に形成し、工具軸に垂直な方向に第2の流路7Bを分岐することによって、第2の供給口8Bをボディ5の外周面に開口させることができる。第2の流路7Bの中心軸を工具軸に垂直にすれば、ボディ5に第2の流路7Bを形成するための加工が容易となる。
【0033】
或いは、切削油がガイドブッシュ3とボディ5との間に形成される隙間を伝ってワークW側に速やかに浸透するように、ワークW側に向かって傾斜する第2の流路7Bをボディ5に形成してもよい。従って、第2の流路7Bの中心軸と工具軸とのなす角度が10度以上90度以下となるように第2の流路7Bをボディ5に形成することもできる。尚、ボディ5に切粉の排出用の溝を形成する場合には、第2の供給口8Bを溝に形成しても良いし、溝の間に形成されるマージン部分に形成しても良い。
【0034】
ガイドブッシュ3と、ボディ5との間における潤滑は、切削油の油膜が形成されれば十分に得ることができる。他方、切刃部6に形成される第1の供給口8AからワークWに向けて供給される切削油は、切粉の排出、切削抵抗の低減及び冷却等を目的として使用される。
【0035】
従って、切削油の大部分を第1の供給口8AからワークWに向けて供給する一方、第2の供給口8Bに供給される切削油の量を微量とすることが切削油の有効利用に繋がる。このため、第1の供給口8Aに供給される切削油の量よりも、第2の供給口8Bに供給される切削油の量の方が少なくなるように、ボディ5の内部に流路7を形成することが好ましい。そこで、図示されるように第2の供給口8Bの数を1つとすることができる。これにより、切削油の適切な配分を行いつつ、ボディ5の構造を簡易にすることができる。但し、穿孔条件に依らずガイドブッシュ3とボディ5との間における隙間への切削油の供給量を十分に得るために、複数の第2の供給口8Bをボディ5に形成するようにしてもよい。
【0036】
ドリル2でワークWを穿孔する際には、図2に示すように、ボディ5をガイドブッシュ3に滑合させながらドリル2を工具軸方向に送り出すことになる。従って、第2の供給口8Bとガイドブッシュ3との相対位置が変化する。切削油は、遅くとも穿孔の開始時、すなわちドリル2の切刃がワークWに接触するまでには、ガイドブッシュ3とボディ5との間に形成される隙間に供給されることが望ましい。
【0037】
そこで、図1に例示されるように、第2の供給口8Bを、切刃部6がガイドブッシュ3の内部から突出していない場合には、ガイドブッシュ3の内部において開口する位置に設けることができる。これにより、穿孔開始前において確実にガイドブッシュ3とボディ5との間に切削油を供給することができる。
【0038】
尚、ドリル2の送り量が、ボディ5と滑合するガイドブッシュ3の部分の長さよりも長い場合には、図2に例示されるように第2の供給口8Bが、ボディ5と滑合するガイドブッシュ3の部分の外部に露出することになる。それでも、一旦、切削油をガイドブッシュ3とボディ5との間に供給すれば、切削油の油膜がガイドブッシュ3とボディ5との間に残留するため、ガイドブッシュ3とボディ5との間における潤滑性を維持することができる。
【0039】
ドリル2に送りを付与した後、第2の供給口8Bをできるだけボディ5と滑合するガイドブッシュ3の内面に向けるためには、第2の供給口8Bを、切刃部6の先端がワークWに接触した時に、ガイドブッシュ3内のワークWと逆側における端部で開口する位置に設ければよい。従って、図示されるようにガイドブッシュ3とワークWとの間に空隙が形成される場合には、ガイドブッシュ3とワークWとの間における距離を考慮して第2の供給口8Bの位置を決定するようにしてもよい。
【0040】
このような構成を有するドリル2及びガイドブッシュ3を少なくとも用いて切削油を供給しながらワークWを穿孔することによって、被穿孔品を製作することができる。
【0041】
以上のような穿孔ユニット1及び穿孔方法は、ガイドブッシュ3に挿入して使用されるドリル2にバックテーパを設けず、かつガイドブッシュ3とドリル2との間に切削油を供給するためのオイルホールをドリル2に設けたものである。
【0042】
(効果)
穿孔ユニット1及び穿孔方法によれば、穿孔の精度を向上することができる。その理由は以下の通りである。
【0043】
図3は、従来のバックテーパを有するストレートドリル10とガイドブッシュ11を用いて穿孔を行う場合の例を示す図である。
【0044】
典型的なドリル10には、バックテーパが設けられる。バックテーパは、ドリル10が穿孔に伴って熱膨張しても、孔の内壁に接触しないようにすることを狙いとして設けられる。バックテーパは規格化されており、長さ100mmにつき0.04mmから0.1mmだけドリル10の直径が細くなるように、シャンク方向に向かって細くなるテーパがドリル10に設けられる。
【0045】
しかしながら、ガイドブッシュ11にドリル10を挿入して使用する場合、ドリル10をワークWに向けて送り出す程、ドリル10とガイドブッシュ11との間における隙間が大きくなる。その結果、ドリル10の位置決め精度が低下し、穿孔精度の劣化に繋がる。
【0046】
これに対して、バックテーパが無いドリル2の場合には、ガイドブッシュ3でガイドしながらドリル2を送り出しても、ドリル2とガイドブッシュ3との間における隙間が大きくならない。しかも、ドリル2とガイドブッシュ3との間には、潤滑油として切削油が供給されるため、ドリル2とガイドブッシュ3との間における摩擦力を十分に低減することができる。その結果、バックテーパが無いドリル2が熱膨張したとしても、ドリル2とガイドブッシュ3との間における滑合性を維持することができる。これにより、ドリル2の位置決め精度の低下を防止し、穿孔品質を向上させることができる。
【0047】
穿孔品質を向上させることが可能なワークWの材質の候補としては、上述したようにアルミニウムやチタン等の金属、CFRP等の樹脂を繊維で強化した複合材並びに金属と複合材を重ね合せたラミネート材が挙げられる。
【0048】
(第2の実施形態)
図4は本発明の第2の実施形態に係るドリルを構成するボディの構造を示す拡大縦断面図であり、図5図4に示すボディの右側面図である。
【0049】
図4に示された第2の実施形態における穿孔ユニット1Aでは、ドリル2を構成するボディ5に設けられる第2の流路7Bを交換可能にした点が第1の実施形態における穿孔ユニット1と相違する。第2の実施形態における穿孔ユニット1Aの他の構成及び作用については第1の実施形態における穿孔ユニット1と実質的に異ならないためドリル2を構成するボディ5のみ図示し、同一の構成又は対応する構成については同符号を付して説明を省略する。
【0050】
図4及び図5に示すように第2の流路7Bを設けるべきボディ5の位置に第2の流路7Bよりも直径が大きい貫通孔を設け、貫通孔の内面に雌ねじを形成することができる。一方、外表面に雄ねじを形成し、中心に第2の流路7Bを形成した円筒状の部材20を、ボディ5の貫通孔に形成した雌ねじに締付けることができる。すなわち、第2の流路7Bを形成した円筒状の部材20を、ボディ5に形成した貫通孔に挿入することができる。
【0051】
そうすると、部材20をドリル2のボディ5に着脱することができる。図4及び図5に示す例では、部材20をドリル2のボディ5に容易に着脱できるようにマイナスドライバー用の溝が部材20の外部側における端面に設けられている。
【0052】
このため、直径Dが異なる第2の流路7B及び第2の供給口8Bを形成した複数の部材20を準備しておけば、部材20の交換によって、第2の流路7B及び第2の供給口8Bのサイズを変えることができる。この場合、ドリル2のボディ5には、第2の供給口8B及び第2の流路7Bを異なるサイズで形成する複数の部材20のいずれか1つが交換可能に取付けられることになる。
【0053】
具体例として、第2の流路7B及び第2の供給口8Bの直径Dが0.5mmである部材20と、第2の流路7B及び第2の供給口8Bの直径Dが1mmである部材20を準備しておき、穿孔条件に応じていずれかを選択することができる。もちろん、他の直径Dの第2の流路7B及び第2の供給口8Bを形成した部材20を準備しておいてもよい。
【0054】
第2の流路7B及び第2の供給口8Bの直径Dを穿孔条件に応じた適切な大きさに決定すると、ドリル駆動装置からボディ5の流路7に供給される切削油を、第1の流路7A及び第2の流路7Bに適切な量で分配することができる。すなわち、第2の供給口8Bからガイドブッシュ3とボディ5との間における隙間に過剰に切削油が供給されたり、逆に、第2の供給口8Bからガイドブッシュ3とボディ5との間における隙間に供給される切削油の量が不十分となることを防止することができる。
【0055】
第2の流路7B及び第2の供給口8Bの直径Dを適切な大きさに決定するに当たり考慮すべき重要な穿孔条件としては、切削抵抗及びドリル駆動装置からドリル2に供給される切削油の油圧が挙げられる。すなわち、ドリル駆動装置からドリル2のボディ5に供給される切削油の油圧が十分に高ければ、切削抵抗が大きい場合であっても、第1の供給口8AからワークWに向けて十分な量の切削油を噴射することができる。逆に、ドリル駆動装置からドリル2のボディ5に供給される切削油の油圧が低く、切削抵抗が大きい場合において、第2の流路7B及び第2の供給口8Bの直径Dを過剰に大きく設定すると、第2の供給口8Bからガイドブッシュ3とボディ5との間における隙間に過剰な量の切削油が供給され、第1の供給口8AからワークWに供給される切削油の油量が不十分となる恐れがある。
【0056】
切削抵抗に影響を与える主な条件としては、穿孔対象となる孔の深さ、ワークWの材質及び切刃の材質が挙げられる。すなわち、穿孔対象となる孔の深さ、ワークWの材質及び切刃の材質によって切削抵抗が変化する。そこで、ドリル駆動装置からドリル2に供給される切削油の圧力、穿孔対象となる孔の深さ、ワークWの材質及び切刃の材質に応じて第2の流路7B及び第2の供給口8Bの直径Dを変えることができる。
【0057】
より具体的には、切削抵抗が小さく、ドリル駆動装置からの切削油の供給圧力が高い場合には、第2の流路7B及び第2の供給口8Bの直径Dを大きくすることによって、第2の流路7B及び第2の供給口8Bからガイドブッシュ3とボディ5との間における隙間に十分な量の切削油を導くことができる。逆に、切削抵抗が大きく、切削油の供給圧力が低い場合には、第2の流路7B及び第2の供給口8Bの直径Dを小さくすることによって、第2の流路7B及び第2の供給口8Bからガイドブッシュ3とボディ5との間における隙間に切削油の大半が供給されてしまうことを防止する一方、第1の供給口8AからワークWに供給される切削油の油量を確保することができる。
【0058】
ドリル駆動装置からドリル2に供給される切削油の圧力、穿孔対象となる孔の深さ、ワークWの材質及び切刃の材質等の条件ごとの適切な第2の流路7B及び第2の供給口8Bのサイズは、穿孔試験によって経験的に決定することができる。
【0059】
以上の第2の実施形態における穿孔ユニット1Aによれば、ガイドブッシュ3とボディ5との間における隙間に切削油を供給するための第2の流路7B及び第2の供給口8Bのサイズを調節することができる。このため、ドリル駆動装置からドリル2に供給される切削油を、ワークWの穿孔箇所と、ガイドブッシュ3とボディ5との間における隙間に適切な量で分配することができる。
【0060】
尚、ドリル2のボディ5に切粉の排出用の溝が設けられる場合には、第1の実施形態と同様に、第2の流路7B及び第2の供給口8Bを、ボディ5の溝に形成しても良いし、マージンに形成してもよい。従って、部材20を挿入するための貫通孔及び雌ねじについても、ボディ5の溝又はマージンに形成することができる。そして、部材20をボディ5の溝又はマージンに取付けることができる。
【0061】
(第3の実施形態)
図6は本発明の第3の実施形態に係るドリルを含む穿孔ユニットの構成図であり、図7図6に示す穿孔ユニットでワークを穿孔している状態を示す図である。
【0062】
図6に示された第3の実施形態における穿孔ユニット1Bでは、ドリル2の工具軸方向において異なる複数の位置に第2の流路7B及び第2の供給口8Bを形成する部材20を取付けることができるようにした点が第2の実施形態における穿孔ユニット1Aと相違する。第3の実施形態における穿孔ユニット1Bの他の構成及び作用については第2の実施形態における穿孔ユニット1Aと実質的に異ならないため、同一の構成又は対応する構成については同符号を付して説明を省略する。
【0063】
図6に示すように、第2の流路7B及び第2の供給口8Bを形成する部材20を挿入するための貫通孔及び雌ねじを、工具軸方向において異なるボディ5の位置に形成することができる。そうすると、ドリル2の工具軸方向において異なる複数の位置に第2の流路7B及び第2の供給口8Bを形成することができる。図6に示す例では、工具軸方向において異なる2個所に部材20が着脱可能にボディ5に取り付けられている。
【0064】
工具軸方向において異なる複数の位置に第2の流路7B及び第2の供給口8Bを形成すると、ワークWの穿孔が進行することによって、最も切刃部6側における第2の供給口8Bが、切削油を供給すべきガイドブッシュ3とボディ5との間における隙間から露出した場合であっても、工具軸方向において異なる位置に設けられた別の第2の供給口8Bから引き続きガイドブッシュ3とボディ5との間における隙間に切削油を供給することができる。このため、切削油の供給によってガイドブッシュ3と滑合させながらワークWに向かって工具軸方向に送り出すことが可能なボディ5の長さを長くすることができる。その結果、図7に示すようにガイドブッシュ3を利用した深孔の穿孔を行うことが可能となる。
【0065】
従って、隣接する第2の供給口8B間における距離は、ボディ5との間において潤滑性を付与すべきガイドブッシュ3の長さに合わせて決定することができる。第1の実施形態において説明したように、第2の供給口8Bから吐出された切削油はボディ5の表面及びガイドブッシュ3の内面においてある程度の期間は油膜として残留する。このため、ドリル2に工具軸方向における送りを与えてボディ5をガイドブッシュ3に対してスライドさせたとしても、ガイドブッシュ3とボディ5との間において油膜が途切れないように、隣接する第2の供給口8B間における距離を決定することが適切である。
【0066】
部材20の数を低減させることを重視する場合であれば、ガイドブッシュ3とボディ5との間において油膜が途切れないような間隔で複数の第2の供給口8Bを配置することができる。具体例として、切刃部6側における第2の供給口8Bが、切削油を供給すべきガイドブッシュ3とボディ5との間における隙間から露出する前に、ボディ5のシャンク5A側に隣接する第2の供給口8Bから吐出された切削油がボディ5を伝ってガイドブッシュ3とボディ5との間における隙間に到達するように、第2の供給口8B間における距離を決定することができる。
【0067】
或いは、ガイドブッシュ3とボディ5との間における確実な潤滑性の確保を重視する場合であれば、例えば、切刃部6側における第2の供給口8Bが、切削油を供給すべきガイドブッシュ3とボディ5との間における隙間から露出する前に、ボディ5のシャンク5A側に隣接する第2の供給口8Bが、ガイドブッシュ3とボディ5との間における隙間に到達するように、第2の供給口8B間における距離を決定することができる。つまり、第2の供給口8B間における距離を、切削油を供給すべきガイドブッシュ3とボディ5との間における隙間の工具軸方向における長さ、すなわちボディ5と滑合するガイドブッシュ3の長さ以下とすることができる。
【0068】
他方、工具軸方向において同一の位置に形成される第2の供給口8Bの数については、第1の実施形態において説明したように1つでも十分である。このため、工具軸方向において同一の位置に形成される第2の供給口8Bの数を1つとすることがドリル2の構造の簡易化及び製造コストの低減に繋がる。但し、穿孔条件に依らずガイドブッシュ3とボディ5との間における隙間への切削油の供給量を十分に得るために、工具軸方向において同一の位置に形成される第2の供給口8Bの数を複数にしてもよい。
【0069】
工具軸方向において異なる位置に複数の第2の供給口8Bを形成できるようにする場合において、浅い孔の穿孔を行う際にはボディ5のシャンク5A側における第2の供給口8Bが不要となる可能性もある。そこで、第2の流路7B及び第2の供給口8Bを形成するための部材20に代えて、第2の流路7B及び第2の供給口8Bを閉塞するための閉塞部材をボディ5に形成された貫通孔及び雌ねじに挿入できるようにすることができる。
【0070】
図8図6に示す部材20の挿入用の貫通孔を閉塞部材21で閉塞した例を示すボディ5の縦断面図である。
【0071】
図8に例示されるように、外周に雄ねじを形成した円柱状の閉塞部材21を製作すれば、閉塞部材21をボディ5に着脱可能に取付けることができる。これにより、浅い孔を穿孔する場合など、必要に応じて部材20の挿入用の貫通孔に形成された雌ねじに閉塞部材21の雄ねじを締付けることによって、第2の流路7B及び第2の供給口8Bを閉塞することができる。その結果、無駄な切削油の供給を低減することができる。
【0072】
第2の流路7B及び第2の供給口8Bを閉塞する閉塞部材21は、第2の実施形態におけるドリル2に対しても使用することができる。第2の実施形態におけるドリル2に形成することが可能な第2の流路7B及び第2の供給口8Bを閉塞部材21で閉塞すれば、ガイドブッシュ3を使用せずに穿孔を行う場合においても、ドリル2を使用することが可能となる。すなわち、ドリル2に汎用性を持たせることができる。
【0073】
次に切刃を交換することが可能なインサートドリルで穿孔ユニット1Bを構成した例につて説明する。
【0074】
図9はボディ5にねじれ溝を有し、かつ切刃を交換することが可能なインサートドリル2Aで穿孔ユニット1Bを構成した例を示す縦断面図、図10図9に示す穿孔ユニット1BでワークWを穿孔している状態を示す縦断面図、図11図9に示すインサートドリル2Aの先端付近における拡大縦断面図、図12図9に示すインサートドリル2Aの切刃部6Aにおける構造例を示す縦断面図である。
【0075】
図9乃至図12に例示されるように、インサートドリル2Aで穿孔ユニット1Bを構成することができる。インサートドリル2Aの切刃部6Aの構造は、例えば図12に示すようにボルト30を締付けることによってスリット31の幅を変化させることが可能な構造とすることができる。すなわち、ボルト30を締付けてスリット31の幅を狭くすると、切刃部6Aで切刃32を挟み込んで保持することができる。逆に、ボルト30を緩めてスリット31の幅を広げると、切刃部6Aから切刃32を取外すことができる。
【0076】
このような切刃部6Aの構造はオイルホール付のものも含めて既に実用化されており、容易に製作することができる。そして、切刃部6A及びボディ5が切刃32のホルダとして機能するインサートドリル2Aで穿孔ユニット1Bを構成することができる。
【0077】
図9及び図10に示す例では、ねじれ溝が形成されたインサートドリル2Aのボディ5に6箇所の第2の流路7B及び第2の供給口8Bが設けられている。すなわち、工具軸方向の異なる3箇所の位置に、それぞれ2つずつ第2の流路7B及び第2の供給口8Bが設けられている。このため、インサートドリル2Aを用いた深孔加工が可能である。第2の流路7B及び第2の供給口8Bは、図9及び図10に例示されるように、溝部分及びマージン部分のいずれにも形成することができる。
【0078】
インサートドリル2Aは、手持ち式のドリル駆動装置40に取付けて使用することができる。図9及び図10に示す例では、インサートドリル2Aの後端側に雄ねじ2Bが形成されており、インサートドリル2Aの雄ねじ2Bが手持ち式のドリル駆動装置40に形成された雌ねじ41に締付けられることによって、インサートドリル2Aがドリル駆動装置40に保持されている。
【0079】
また、ドリル駆動装置40には、インサートドリル2Aを保護する円筒状のノーズピース42が設けられており、ノーズピース42がガイドブッシュ3と連結されている。すなわち、ノーズピース42の先端側における内面に形成された雌ねじに、ガイドブッシュ3の外面に形成された雄ねじが締付けられることによって、ノーズピース42がガイドブッシュ3と連結されている。
【0080】
従って、インサートドリル2A及びガイドブッシュ3のみならず、ガイドブッシュ3と連結可能な構造を有するノーズピース42を設けた手持ち式のドリル駆動装置40を穿孔ユニット1Bの構成要素としてもよい。これは第1の実施形態及び第2の実施形態においても同様である。
【0081】
以上の第3の実施形態における穿孔ユニット1Bによれば、ドリル2の工具軸方向において異なる複数の位置に第2の流路7B及び第2の供給口8Bを形成することができるため、深孔加工が可能である。また、第2の流路7B及び第2の供給口8Bを閉塞部材21で閉塞することもできるため、浅い孔の加工にも対応することができる。
【0082】
(他の実施形態)
以上、特定の実施形態について記載したが、記載された実施形態は一例に過ぎず、発明の範囲を限定するものではない。ここに記載された新規な方法及び装置は、様々な他の様式で具現化することができる。また、ここに記載された方法及び装置の様式において、発明の要旨から逸脱しない範囲で、種々の省略、置換及び変更を行うことができる。添付された請求の範囲及びその均等物は、発明の範囲及び要旨に包含されているものとして、そのような種々の様式及び変形例を含んでいる。
【符号の説明】
【0083】
1、1A、1B 穿孔ユニット
2 ドリル
2A インサートドリル
2B 雄ねじ
3 ガイドブッシュ
4 穿孔板
4A 止めねじ
5 ボディ
5A シャンク
6、6A 切刃部
7 流路
7A 第1の流路
7B 第2の流路
8A 第1の供給口
8B 第2の供給口
10 ドリル
11 ガイドブッシュ
20 部材
21 閉塞部材
30 ボルト
31 スリット
32 切刃
40 ドリル駆動装置
41 雌ねじ
42 ノーズピース
W ワーク
W1、W2、W3 板材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12