【文献】
Protein Engineering,1996年,Vol.9, No.7,pp. 617-621
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0054】
詳細な説明
本開示の方法及び組成物をさらに記載する前に、本開示は、本明細書において記述する特定の実施形態に限定されないことを理解し、また本明細書において使用する専門用語は、特定の実施形態を記載することだけを目的としており、限定を意図したものではないことも理解されたい。
【0055】
値の範囲が示されている場合、その範囲の上限値と下限値との間の各介在値(文脈が別段に明確に指示しない限り、下限値の単位の10分の1まで)、及びその表示範囲の任意の他の表示値または介在値が本発明に包含されると理解される。これらのより小さい範囲の上限値及び下限値は独立して、より小さい範囲内に含まれてもよく、表示範囲内の任意の具体的に除外された値に従って本発明にも包含される。表示範囲がそれらの上限値及び下限値のうちの一方または両方を含む場合、それらの包含される上限値及び下限値のいずれかまたは両方を除外する範囲も本発明に包含される。別段に定義しない限り、本明細書において使用するすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する当業者が一般的に理解する意味と同一の意味を有する。
【0056】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が別段に明確に指示しない限り、複数指示物を含むことに留意すべきである。したがって、例えば、「当該複合体(the complex)」という言及は、1つまたは複数の複合体への言及を含む、などである。特許請求の範囲が任意の場合による要素を除外するように作成されてもよいことがさらに留意される。したがって、この記述は、特許請求の範囲の要素の列挙に関連した「単に」、「のみ」などの排他的専門用語の使用、または「否定的」限定の使用のための先行する根拠として役立つように意図されている。
【0057】
本明細書において論述する刊行物は、本出願の出願日前にそれらが開示されたということだけで提供されている。本明細書におけるいずれの内容も、本発明が、先行発明という理由でそのような出版物に先行する資格がないことを認めるものと解釈されるべきではない。さらに、提供している刊行物の日付は、実際の刊行日とは異なる場合があり、別々に確認する必要があり得る。
【0058】
定義
本明細書において互換的に使用される「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、遺伝的にコードされた、及び非遺伝的にコードされたアミノ酸、化学的に、または生化学的に修飾または誘導体化されたアミノ酸、ならびに修飾ポリペプチド骨格を有するポリペプチドを含み得る任意の長さのアミノ酸のポリマー形態を指す。この用語には、これらだけに限定されないが、同種アミノ酸配列を有する融合タンパク質、N末端メチオニン残基を含むか、または含まない異種及び同種リーダー配列を有する融合タンパク質を含む融合タンパク質;免疫的にタグ付けされたタンパク質などが含まれる。具体的な実施形態では、この用語は、遺伝的にコードされたアミノ酸を含む任意の長さのアミノ酸のポリマー形態を指す。特定の実施形態では、この用語は、異種アミノ酸配列に融合した遺伝的にコードされたアミノ酸を含む任意の長さのアミノ酸のポリマー形態を指す。特定の実施形態では、この用語は、場合により、異種配列に融合している98〜112アミノ酸長のアミノ酸を指す。具体的な実施形態では、適切な場合には、本明細書に開示及び記載のタンパク質及び分子に言及する場合、「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、本明細書において定義するとおりのポリペプチドを指す。
【0059】
「複合体」という用語は、本明細書において使用する場合、少なくとも2個のポリペプチドを含み、そのポリペプチドのそれぞれがN末端及びC末端を含むタンパク質複合体を指す。当該少なくとも2個のポリペプチドは、共有結合性及び非共有結合性相互作用(例えば、静電、π作用、ファンデルワールス力、及び疎水作用)の一方または両方を介して相互に会合していてよい。当該少なくとも2個のポリペプチドは、同じであってよい、すなわち、同一のアミノ酸配列を有してもよいし、または異なってもよい、すなわち、同一のアミノ酸配列を有さなくてもよい。両方のポリペプチドが同一である2個のポリペプチドを有する複合体は、ホモ二量体と称される。2個のポリペプチドを有し、それらのポリペプチドが異なる複合体は、ヘテロ二量体と称される。3個のポリペプチドを有し、それらの3個のポリペプチドが同一である複合体は、ホモ三量体と称される。3個のポリペプチドを有し、それらの3個のポリペプチドのうちの少なくとも1つが他のポリペプチド(複数可)とは異なる複合体は、ヘテロ三量体と称される。4個のポリペプチドを有し、それらの4個のポリペプチドが同一である複合体は、ホモ四量体と称される。4個のポリペプチドを有し、それらの4個のポリペプチドのうちの少なくとも1つが他のポリペプチド(複数可)とは異なる複合体は、ヘテロ四量体と称される。第1のポリペプチドが第2のポリペプチドと二量化してヘテロ二量体を形成しており、2個のそのようなヘテロ二量体が二量化してその複合体を形成している、4個のポリペプチド(第1のポリペプチドが2分子、第2のポリペプチドが2分子)の例示的な複合体は、2個のヘテロ二量体のホモ二量体複合体と称され得る。
【0060】
本開示は、これらだけに限定されないが、第2のポリペプチドに会合している第1のポリペプチドを有し、その際、第1のポリペプチドが「ノブ」Fcであり、第2のポリペプチドが「ホール」Fcであり、かつ第1のポリペプチドまたは第2のポリペプチドのいずれかが、GDF15(またはGDF15変異タンパク質、例えば、本明細書に記載のGDF15変異タンパク質)アミノ酸配列に融合しているヘテロ二量体を含む、上記で定義したとおりの複合体を企図する。当該第1及び第2のポリペプチドは、非共有結合性相互作用(例えば、当該Fcのノブとホール領域との間の疎水性相互作用などの疎水作用)、共有結合(例えば、当該第1及び第2のポリペプチドにおけるFcのヒンジ領域間での1つまたは2つまたはそれ以上のジスルフィド結合などのジスルフィド結合)、またはそれら両方を介して相互に物理的に会合していてよい。
【0061】
本開示はまた、相互に結合している2個のヘテロ二量体を含み、各ヘテロ二量体が第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドを含み、その際、第1のポリペプチドが「ノブ」Fcであり、第2のポリペプチドが「ホール」Fcであり、かつ第1のポリペプチドまたは第2のポリペプチドのいずれかがGDF15(またはGDF15変異タンパク質)アミノ酸配列に融合している複合体を企図する。当該複合体内で、2個のヘテロ二量体は、非共有結合性相互作用(例えば、疎水性作用)、共有結合(例えば、ジスルフィド結合)、またはそれら両方によって物理的に会合していてよい。当該複合体中のヘテロ二量体のそれぞれにおける第1及び第2のポリペプチドは、非共有結合性相互作用(例えば、疎水性作用)、共有結合(例えば、ジスルフィド結合)、またはそれら両方によって相互に物理的に会合していてよい。
【0062】
本開示はまた、相互に会合している2個のヘテロ二量体を含み、各ヘテロ二量体が第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドを含み、その際、第1のポリペプチドが「ノブ」Fcであり、第2のポリペプチドが「ホール」Fcであり、かつ第1のポリペプチドまたは第2のポリペプチドのいずれかがGDF15(またはGDF15変異タンパク質)アミノ酸配列に融合している複合体を企図する。当該複合体内で、2個のヘテロ二量体は、非共有結合性相互作用(例えば、疎水性作用)または共有結合性相互作用(例えば、ジスルフィド結合(複数可))によって、GDF15ポリペプチドの間で物理的に会合していてよく、ヘテロ二量体のそれぞれにおける第1及び第2のポリペプチドは、非共有結合性相互作用(例えば、ノブ−イントゥ−ホール)、共有結合(例えば、ジスルフィド結合)、またはそれら両方によって、相互に物理的に会合していてよい。
【0063】
「患者」または「対象」という用語は、ヒトまたは非ヒト動物(例えば、哺乳類)を指すために互換的に使用される。
【0064】
「処置する」「処置すること」、「処置」などの用語は、対象が罹患している疾患、障害、もしくは状態、または対象が罹患している疾患、障害、状態に関連する少なくとも1つの症状の根本的な原因の少なくとも1つを一時的、または永続的に除去、低減、抑制、緩和、または寛解するように、疾患、障害もしくは状態、またはその症状が診断、観察などされた後に開始される一連の行為(薬剤、例えば、ポリペプチド、複合体、またはポリペプチド、複合体を含む医薬組成物の投与など)を指す。したがって、処置には、活動性の疾患を(例えば、血流中のインスリン及び/またはグルコースのレベルを低下させるように、耐糖能を増大するように、グルコースレベルの変動を最小化するように、及び/またはグルコースホメオスターシスの破壊に起因する疾患に対して保護し、体重を減少させ、体重の増加を阻止するように)阻害すること(すなわち、疾患、障害、もしくは状態、またはそれらと関連する臨床症状の発症、あるいはさらなる進展を阻止すること)が含まれる。
【0065】
「処置を必要とする」という用語は、本明細書において使用する場合、対象が処置を必要としているか、処置によって利益を受けるという、医師または他の介護者によって成される判断を指す。この判断は、医師または介護者の専門知識の領域にある様々な因子に基づき成される。
【0066】
「予防する」、「予防すること」、「予防」などの用語は、疾患、障害、状態などを発症する対象のリスク(例えば、臨床症状の非存在によって決定される)を一時的か、または永続的に予防、抑制、阻害、または低減するか、または一般的に特定の疾患、障害、または状態を有する素因のある対象の状況において、その発症を遅延させるような手法で(例えば、疾患、障害、状態、またはその症状の発症前に)開始される、一連の行為(薬剤、例えば、ポリペプチド、複合体、またはポリペプチド、複合体を含む医薬組成物の投与など)を指す。ある種の例では、この用語はまた、疾患、障害、もしくは状態の進行を減速させること、または有害か、もしくは別段に望ましくない状況へのその進行を阻害することを指す。
【0067】
「予防を必要とする」という用語は、本明細書において使用する場合、対象が予防ケアを必要としているか、または予防ケアから利益を受けるであろうという、医師または他の介護者によって成される判断を指す。この判断は、医師または介護者の専門知識の領域にある様々な因子に基づき成される
【0068】
「治療有効量」という語句は、単独か、または医薬組成物の一部として、単回用量で、または一連の用量の一部として、患者に投与された場合に、疾患、障害または状態のいずれかの症状、態様、または特徴に対していずれかの検出可能なプラスの作用を有し得る量での対象への薬剤の投与を指す。関連生理学的作用を測定することによって、治療有効量を確認することができる。例えば、高血糖状態の場合には、その薬剤量が高血糖状態を処置するために有効であるかを決定するために、血糖の低下もしくは減少、または糖負荷試験における改善を使用することができる。例えば、治療有効量は、空腹時血漿中グルコース(FPG)の任意のレベル(例えば、基線レベル)を減少または低下させるために十分な量であり、例えば、その量は、200mg/dl超のFPGレベルを200mg/dl未満に減少させるために十分であり、その量は、175mg/dl〜200mg/dlのFPGレベルを出発レベル未満に減少させるために十分であり、その量は、150mg/dl〜175mg/dlのFPGレベルを出発レベル未満に減少させために十分であり、その量は、125mg/dl〜150mg/dlのFPGレベルを出発レベル未満に減少させるために十分である、などである(例えば、125mg/dl未満に、120mg/dl未満に、115mg/dl未満に、110mg/dl未満などにFPGレベルを減少させる)。HbA1cレベルの場合には、有効量は、レベルを約10%〜9%超、約9%〜8%超、約8%〜7%超、約7%〜6%、約6%〜5%超など減少または低下させるために十分な量である。より詳細には、約0.1%、0.25%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、1.5%、2%、3%、4%、5%、10%、20%、30%、33%、35%、40%、45%、50%、またはそれ以上のHbA1cレベルの減少または低下を、本開示は企図する。投薬レジメン及び対象の状態などの診断分析と関連して、治療有効量を調整することができる。
【0069】
「変化をもたらすために十分な量で」という語句は、特定の治療薬の投与前(例えば、基線レベル)とその後に測定された指標のレベルの間に検出可能な差違があることを意味する。指標には、任意の客観的パラメータ(例えば、グルコースまたはインスリンまたは食物摂取または体重のレベル)または主観的パラメータ(例えば、健康または食欲についての対象の感覚)が含まれる。
【0070】
「耐糖能」という語句は、本明細書において使用する場合、グルコース摂取が変動したときに、血漿中グルコース及び/または血漿中インスリンのレベルを制御する対象の能力を指す。例えば、耐糖能は、約120分以内に、血漿中グルコースのレベルを減少させて、グルコースの摂取前に決定されたレベルに戻す対象の能力を包含する。
【0071】
「糖尿病」及び「糖尿病性」という用語は、インスリンの不適切な産生または利用を伴い、高血糖症及び糖尿によって往々にして特徴づけられる炭水化物代謝の進行性疾患を指す。「糖尿病前症」及び「前糖尿病性」という用語は、対象が、糖尿病において典型的に観察される特徴、症状などは有しないが、処置せず放置すれば、糖尿病に進行し得る特徴、症状などは有する状態を指す。これらの状態の存在は、例えば、空腹時血漿中グルコース(FPG)検査または経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)のいずれかを使用して決定することができる。両方とも通常は、検査開始前に少なくとも8時間にわたって、対象が絶食することを必要とする。FPG検査では、絶食の完了後に、対象の血糖を測定し;一般的に、対象は終夜絶食し、対象が朝、食事を取る前に、血糖を測定する。健康な対象は一般的に、約90〜約100mg/dlのFPG濃度を有し、「糖尿病前症」を有する対象は一般的に、約100〜約125mg/dlのFPG濃度を有し、かつ「糖尿病」を有する対象は一般的に、約126mg/dl超のFPGレベルを有するであろう。OGTTでは、対象の血糖を、絶食後、及び再度、グルコースリッチな飲料を飲んでから2時間後に測定する。グルコースリッチな飲料の消費から2時間後に、健康な対象は一般的に、約140mg/dl未満の血糖濃度を有し、前糖尿病性対象は一般的に、約140〜約199mg/dlの血糖濃度を有し、糖尿病性対象は一般的に、約200mg/dlまたはそれを超える血糖濃度を有する。上述の血糖値は、ヒト対象に関するが、正常血糖、中程度高血糖症及び顕性高血糖症は、マウス対象では尺度が異なる。4時間の絶食後に健康なマウス対象は一般的に、約100〜約150mg/dlのFPG濃度を有し、「糖尿病前症」を有するマウス対象は一般的に、約175〜約250mg/dlのFPG濃度を有し、「糖尿病」を有するマウス対象は一般的に、約250mg/dl超のFPG濃度を有するであろう。
【0072】
「インスリン抵抗性」という用語は、本明細書において使用する場合、正常量のインスリンが正常な生理学的または分子応答を生成することができない状態を指す。一部のケースでは、内因的に産生されるか、または外因的に投与される過生理学的量のインスリンで、完全に、または部分的にインスリン抵抗性を克服し、生物学的応答を生成することができる。
【0073】
「代謝症候群」という用語は、これらだけに限定されないが、インスリン過剰血症、異常な耐糖能、肥満、腹部または上半身部分への脂肪の再分布、高血圧、異常フィブリノゲン血症(dysfibrinolysis)、ならびに高トリグリセリド、低値の高比重リポタンパク質(HDL)−コレステロール、及び高値の小型高密度低比重リポタンパク質(LDL)粒子を特徴とする脂質異常症を含む関連する一群の形質を指す。代謝症候群を有する対象は、2型糖尿病及び/または他の障害(例えば、粥状動脈硬化)を発症するリスクがある。
【0074】
「グルコース代謝障害」という語句は、健康な個体と比べて対象における上昇したグルコースレベル及び/もしくは上昇したインスリンレベルに関連する臨床症状または臨床症状の組み合わせによって特徴づけられる任意の障害を包含する。上昇したグルコース及び/またはインスリンレベルは、次の疾患、障害、及び状態において特に症状発現され得る:高血糖症、2型糖尿病、妊娠糖尿病、1型糖尿病、インスリン抵抗性、耐糖能障害、インスリン過剰血症、グルコース代謝不良、糖尿病前症、他の代謝障害(X症候群とも称される代謝症候群など)、ならびに肥満など。本開示の複合体及びその組成物は、例えば、グルコースホメオスターシスを達成する、及び/または維持するために、例えば、健康な対象において見出される範囲に血流中のグルコースのレベルを減少させる、及び/またはインスリンのレベルを減少させるために使用することができる。
【0075】
「高血糖症」という用語は、本明細書において使用する場合、健康な個体と比べて上昇したグルコース量が対象の血漿中に循環している状態を指す。高血糖症は、本明細書に記載のとおりの空腹時血糖値の測定を含む、当技術分野で公知の方法を使用して診断することができる。
【0076】
「インスリン過剰血症」という用語は、本明細書において使用する場合、血糖値が上昇しているか、または正常であるかのいずれかであるときに、同時に、循環インスリンのレベルが上昇している状態を指す。インスリン過剰血症は、高トリグリセリド、高コレステロール、高値の低密度リポタンパク質(LDL)、及び低値の高密度リポタンパク質(HDL)などの脂質異常症;高尿酸レベル;多嚢胞性卵巣症候群;2型糖尿病、ならびに肥満に関連するインスリン抵抗性に起因し得る。インスリン過剰血症は、約2μU/mL超の血漿中インスリンレベルを有すると診断され得る。
【0077】
本明細書において使用する場合、「体重障害」という語句は、過剰な体重及び/または食欲増進に関連する状態を指す。対象が参照の健康な個体と比較して過体重であるかを決定するために、様々なパラメータが使用され、それには、対象の年齢、身長、性別、及び健康状態が含まれる。例えば、対象は、対象のキログラムでの体重を対象のメートルでの身長の2乗で割ることによって計算される対象の肥満指数(BMI)の評価によって、過体重または肥満と判断され得る。約18.5〜約24.9kg/m
2の範囲のBMIを有する成人は正常な体重を有すると判断され;約25〜約29.9kg/m
2のBMIを有する成人は過体重(前肥満)と判断され得;約30kg/m
2以上のBMIを有する成人は肥満と判断され得る。食欲増進は往々にして、過剰体重に寄与する。例えば、多くの場合に不眠症に関連する朝の食欲不振及び夜の過食によって特徴付けられるが、視床下部の損傷に関連し得る夜食症候群を含む、食欲増進に関連する状態がいくつかある。
【0078】
「活性化物質」という用語は、例えば、代謝障害を処置または予防するために使用される1つまたは複数の薬剤、例えば、ポリペプチドまたは複合体の機能または活性を刺激する、増大させる、活性化させる、促進する、活性化を増強する、感受性を増加させる、または上方調節する薬剤を指す。加えて、活性化物質には、本発明のポリペプチドと同じ作用機序を通じて動作する薬剤(すなわち、当該ポリペプチドの手法と類似の手法で、当該ポリペプチドと同じシグナル伝達経路を調節する薬剤)が含まれ、それらは、当該ポリペプチドの生物学的応答に匹敵する(またはそれより大きい)生物学的応答を誘発することができる。活性化物質の例には、小分子化合物などのアゴニストが含まれる。
【0079】
「調節物質」という用語はまとめて、本発明のポリペプチド及び活性化物質を指す。
【0080】
「調節する」、「調節」などという用語は、直接的もしくは間接的のいずれかで1つもしくは複数のポリペプチド(もしくはそれらをコードする核酸分子)の機能もしくは活性を増大させる薬剤(例えば、活性化物質)の能力;または1つもしくは複数のポリペプチドの効果に匹敵する効果を生成する薬剤の能力を指す。
【0081】
本開示を通じて、1文字または3文字コードによってアミノ酸が言及されていることが分かるであろう。読者の便宜のために、1文字及び3文字のアミノ酸コードを以下に提示する。
【0082】
本明細書において使用する場合、「変異体」という用語は、天然に存在する変異体(例えば、同族体及び対立遺伝子変異体)及び天然に存在しない変異体(例えば、組換え修飾されたもの)を包含する。天然に存在する変異体は、同族体、すなわち、種によって、それぞれ、ヌクレオチドまたはアミノ酸配列が異なる核酸及びポリペプチドを含む。天然に存在する変異体は、対立遺伝子変異体、すなわち、種内で個体によってそれぞれヌクレオチドまたはアミノ酸配列が異なる核酸及びポリペプチドを含む。天然に存在しない変異体は、配列の変化が人工的に導入される、例えば、その変化がヒトの介入(「ヒトの手」)によって研究室または他の施設において生成される、ヌクレオチドまたはアミノ酸配列の変化をそれぞれ含む核酸及びポリペプチドを含む。
【0083】
GDF15に関して、「天然」または「野生型」という用語は、生物学的に活性な天然に存在するGDF15変異体を含む、生物学的に活性な天然に存在するGDF15を指す。この用語は、112アミノ酸ヒトGDF15成熟配列(配列番号:1)を含む。
【0084】
「変異タンパク質」という用語は、本明細書において使用する場合、組換えタンパク質、すなわち、アミノ酸配列に人工的に導入された変化、例えば、ヒトの介入(ヒトの手」)によって研究室または他の施設において生成されたアミノ酸配列の変化を含むポリペプチドを広く指す。これらのポリペプチドは通常、単一または複数のアミノ酸置換または欠失を保有し、部位特異的もしくはランダム変異誘発を受けているクローン化遺伝子、または完全に合成された遺伝子に往々にして由来する。したがって本開示の「GDF15変異タンパク質」は、参照ポリペプチドに対して、例えば、天然/野生型成熟ヒトGDF15(配列番号:1)に対して、例えば、アミノ酸置換及び/またはアミノ酸欠失(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14またはそれ以上のアミノ酸のN末端短縮化)を包含する。
【0085】
天然ヒトGDF15またはGDF15変異タンパク質に関して本明細書において使用する場合、「修飾された」、「修飾」などという用語は、ヒトGDF15、天然に存在するGDF15変異体、またはGDF15変異タンパク質の特性を修飾する1つまたは複数の変化を指し、その変化は、GDF15ポリペプチド(天然また変異タンパク質)自体の一次アミノ酸配列を変更しない。そのような特性には、例えば、溶解性、循環半減期、安定性、クリアランス、免疫原性またはアレルゲン性、及び製造可能性(例えば、費用及び効率)が含まれる。「修飾」には、GDF15ポリペプチド(天然または変異タンパク質)自体の一次アミノ酸配列を変更しない共有結合性化学修飾が含まれる。実行することができるヒトGDF15、天然に存在するGDF15変異体、またはGDF15変異タンパク質に対する変化には、これらだけに限定されないが、ペグ化(ポリエチレングリコール(PEG)の1個または複数の分子またはその誘導体の共有結合);グリコシル化(例えば、N−グリコシル化)、ポリシアル酸化、及びヘシル化(hesylation);マルトース結合タンパク質融合;アルブミン融合(例えば、HSA融合);例えば、コンジュゲートした脂肪酸鎖を介したアルブミン結合(アシル化);Fc融合;ならびにPEG模倣体との融合の1つまたは複数が含まれる。一部の特定の実施形態は、Fcへの融合を含む修飾を伴い、さらに他の特定の修飾は、グリコシル化、またはそれらの組合せを含む修飾を伴う。
【0086】
「DNA」、「核酸」、「核酸分子」、「ポリヌクレオチド」などという用語は、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドのいずれかの任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態、またはそれらの類似体を指すように、本明細書において互換的に使用される。ポリヌクレオチドの非限定的な例には、直線状及び環状核酸、メッセンジャーRNA(mRNA)、相補的DNA(cDNA)、組換えポリヌクレオチド、ベクター、プローブ、プライマーなどが含まれる。
【0087】
「プローブ」という用語は、問題の遺伝子または配列に対応するDNAまたはRNAの断片を指し、その断片は、放射性標識(例えば、
32Pもしくは
35Sの組み込みによって)されているか、またはいくつかの他の検出可能な分子、例えば、ビオチン、ジゴキシゲニン、もしくはフルオレセインを用いて標識されている。DNAまたはRNAのストレッチは相補的配列とハイブリダイズするので、例えば、ウイルスプラーク、細菌コロニー、または問題の遺伝子を含有するゲル上のバンドを標識するために、プローブを使用することができる。プローブはクローン化されたDNAであるか、または合成DNA鎖であり得;後者は、例えば、タンパク質の一部をミクロシークエンシングする、タンパク質をコードする核酸配列を推定する、その配列を保有するオリゴヌクレオチドを合成する、配列を放射標識する、及びそれをプローブとして使用してcDNAライブラリまたはゲノムライブラリをスクリーニングすることによって、単離したタンパク質からcDNAまたはゲノムクローンを得るために使用することができる。
【0088】
「異種」という用語は、異なる供給源に由来する構造によって定義される2つの成分を指す。例えば、ポリペプチドの文脈では、「異種」ポリペプチドは、異なるポリペプチド(例えば、組換えポリペプチドを含む第1の成分及び天然のGDF15ポリペプチドに由来する第2の成分)に由来する作動可能に連結されたアミノ酸配列を含んでよい。同様に、キメラポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの文脈では、「異種」ポリヌクレオチドは、異なる遺伝子(例えば、本明細書に開示する一実施形態によるポリペプチドをコードする核酸からの第1の成分及び担体ポリペプチドをコードする核酸からの第2の成分)に由来し得る作動可能に連結された核酸配列を含んでよい。他の例示的な「異種」核酸は、コード配列を含む核酸が、コード配列の起源とは異なる遺伝的起源に由来する調節要素(例えば、プロモーター)に作動可能に連結されている発現コンストラクトを含む(例えば、プロモーター、コード配列、またはその両方とは異なる遺伝的起源であってよい問題の宿主細胞において発現を提供するため)。例えば、GDF15ポリペプチドまたはそのドメインをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたT7プロモーターは、異種核酸と言われる。組換え細胞の文脈では、「異種」は、核酸が存在する宿主細胞とは異なる遺伝的起源のものである核酸(またはポリペプチドなどの遺伝子産物)の存在を指し得る。
【0089】
「作動可能に連結された」という用語は、所望の機能を提供するための分子間の連結を指す。例えば、核酸の文脈での「作動可能に連結された」とは、核酸配列間の機能的連結を指す。例として、核酸発現制御配列(プロモーター、シグナル配列、または一連の転写因子結合部位など)は、第2のポリヌクレオチドに作動可能に連結され得、その発現制御配列は、第2のポリヌクレオチドの転写及び/または翻訳に影響を及ぼす。ポリペプチドの文脈では、「作動可能に連結された」とは、ポリペプチドの記載の活性を提供するためのアミノ酸配列(例えば、異なるドメイン)の間の機能的連結を指す。
【0090】
ポリペプチドの構造の文脈で本明細書において使用する場合、「N末端」(または「アミノ末端」)及び「C末端」(または「カルボキシル末端」)は、それぞれ、ポリペプチドのアミノ最端及びカルボキシル最端を指す一方で、「N末端(の)」及び「C末端(の)」という用語は、それぞれ、N末端及びC末端に向かうポリペプチドのアミノ酸配列の相対的位置を指し、それぞれ、N末端及びC末端の残基を含み得る。「すぐN末端(の)」または「すぐC末端(の)」は、第1及び第2のアミノ酸残基が、連続アミノ酸配列を提供するように共有結合で結合されている、第2のアミノ酸残基に対する第1のアミノ酸残基の位置を指す。
【0091】
アミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列(例えば、GDF15ポリペプチドに「由来する」アミノ酸配列)の文脈では、「〜に由来する」は、そのポリペプチドまたは核酸が参照ポリペプチドまたは核酸(例えば、天然に存在するGDF15ポリペプチドまたはGDF15をコードする核酸)の配列に基づく配列を有することを示すことを意味し、そのタンパク質または核酸が作製される供給源または方法について限定することを意味しない。例として、「〜に由来する」という用語は、参照アミノ酸またはDNA配列の同族体または変異体を含む。
【0092】
ポリペプチドの文脈において、「単離された」という用語は、天然に存在する場合、天然に生じ得る環境とは異なる環境にある問題のポリペプチドを指す。「単離された」は、問題のポリペプチドが実質的に濃縮されている、及び/または問題のポリペプチドが部分的にまたは実質的に精製されているサンプル内に存在するポリペプチドを含むことを意味する。当該ポリペプチドが天然に存在しない場合、「単離された」は、そのポリペプチドが、合成または組換え手段のいずれかによって作製された環境から分離されていることを示す。
【0093】
「濃縮された」は、問題のポリペプチドがa)生物学的サンプルなどの出発サンプル(例えば、ポリペプチドが天然に存在しているサンプル、またはポリペプチドが投与後に存在しているサンプル)中のポリペプチドの濃度よりも高い濃度(例えば、少なくとも3倍高い、少なくとも4倍高い、少なくとも8倍高い、少なくとも64倍高い、またはそれ以上高い)で、またはb)ポリペプチドが作製された環境(例えば、細菌細胞においてなど)よりも高い濃度で存在するように、サンプルが非天然に操作される(例えば、実験室において、例えば、科学者または臨床医によって)ことを意味する。
【0094】
「実質的に純粋」は、成分(例えば、ポリペプチド、二量体、四量体、複合体)が組成物の全内容物の約50%超、典型的には、総ポリペプチド含量の約60%超を構成することを示す。より典型的には、「実質的に純粋」は、全組成物の少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも90%、またはそれ以上が問題の成分である組成物を指す。一部のケースでは、当該成分は、組成物の全内容物の約90%超、または約95%超を構成する。
【0095】
「抗体」(Ab)及び「免疫グロブリン」(Ig)という用語は、同一の構造的特徴を有する糖タンパク質を指す。抗体は特定の抗原に対して結合特異性を示すが、免疫グロブリンは、抗原特異性を欠く抗体及び他の抗体様分子の両方を含む。抗体を、本明細書において以下で詳細に記載する。
【0096】
「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均質の抗体集団から得た抗体を指す、すなわち、その集団を構成する個々の抗体は、少量で存在し得る可能な天然に存在する変異を除いて、同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位を指向する。異なる決定基(エピトープ)を指向する異なる抗体を含み得るポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基を指向する。
【0097】
抗体の文脈において、「単離された(isolated)」という用語は、その天然環境の混入成分から分離及び/または回収された抗体を指し;そのような混入成分には、抗体の診断または治療用途に干渉する可能性がある物質が含まれ、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性または非タンパク質性の溶質が含まれ得る。
【0098】
「保存的アミノ酸置換」という語句は、次の群の範囲内でのアミノ酸残基の置換を指す:1)L、I、M、V、F;2)R、K;3)F、Y、H、W、R;4)G、A、T、S;5)Q、N;及び6)D、E。保存的アミノ酸置換は、そのタンパク質中のアミノ酸(複数可)を、同様の酸性度、塩基性度、電荷、極性、または側鎖サイズの側鎖を有するアミノ酸と置き換えることによって、そのタンパク質の活性を保存し得る。置換、挿入、または欠失のための誘導は、異なる変異タンパク質または異なる種からのタンパク質のアミノ酸配列のアラインメントに基づき得る。
【0099】
増殖分化因子15(GDF15)
MIC−1(マクロファージ阻害性サイトカイン−1)としても知られるGDF15、PDF(前立腺分化因子)、PLAB(胎盤骨形成タンパク質)、NAG−1(非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)活性化遺伝子)、TGF−PL、及びPTGFBは、トランスフォーミング増殖因子β(TGF−β)スーパーファミリーのメンバーである。62kDa細胞内前駆体タンパク質として合成され、フューリン様プロテアーゼによって後に切断されるGDF15は、25kDaジスルフィド連結タンパク質として分泌される。(例えば、Fairlie et al., J. Leukoc. Biol 65:2−5 (1999)を参照されたい)。GDF15 mRNAは、肝臓、腎臓、膵臓、結腸、及び胎盤を含むいくつかの組織において見られ、肝臓におけるGDF15発現は、肝臓、腎臓、心臓、及び肺などの臓器の損傷中に顕著に上方制御され得る。
【0100】
GDF15前駆体は、29アミノ酸シグナルペプチド、167アミノ酸プロドメイン、及びフューリン様プロテアーゼによってプロドメインから切断される112アミノ酸の成熟ドメインを含有する308アミノ酸ポリペプチド(NCBI Ref.Seq.NP_004855.2)である。308アミノ酸GDF15ポリペプチドは「完全長」GDF15ポリペプチドと称され、112アミノ酸GDF15ポリペプチド(「全長」GDF15のアミノ酸197〜308)は、「成熟」GDF15ポリペプチドである(配列番号:1)。別段に示さない限り、用語「GDF15」は、112アミノ酸成熟ヒト配列を指す。加えて、特定のGDF15残基に対する数的言及は、112アミノ酸成熟配列を指す(すなわち、残基1はAla(A)であり、残基112はIle(I)である;配列番号:1を参照されたい)。留意すべきは、GDF15前駆体アミノ酸配列は3つの切断部位を予測し、3種の推定上の「成熟」ヒトGDF15形態(すなわち、110、112、及び115アミノ酸)をもたらす一方で、112アミノ酸成熟配列が正しいと認められる。
【0101】
本開示の範囲は、マウス(NP_035949)、チンパンジー(XP_524157)、オランウータン(XP_002828972)、アカゲザル(EHH29815)、ジャイアントパンダ(XP_002912774)、テナガザル(XP_003275874)、モルモット(XP_003465238)、フェレット(AER98997)、ウシ(NP_001193227)、ブタ(NP_001167527)、イヌ(XP_541938)、及びカモノハシ(Ornithorhynchus anatinus;AFV61279)を含む、他の哺乳類種からのGDF15オルソログ、及びその修飾形態ならびにそれらの使用を含む。ヒトGDF15の成熟形態は、マウスオルソログに対して約67%のアミノ酸同一性を有する。
【0102】
簡便にするために、下記の修飾ヒトGDF15分子、GDF15変異体(例えば、変異タンパク質)、及び修飾GDF15変異タンパク質をまとめて、本明細書において以下では「ポリペプチド(複数可)」と称する。本開示のポリペプチド及び核酸分子に関連する「ヒト」についてのいずれの言及も、そのポリペプチドまたは核酸を得る手法または供給源について限定することを意味したものではなく、むしろ、天然に存在するヒトポリペプチドまたは核酸分子の配列に対応し得るように、配列を参照しているに過ぎないことに留意すべきである。特定の実施形態では、修飾ヒトGDF15分子は、N−グリコシル化二量体である。ヒトポリペプチド及びそれらをコードする核酸分子に加えて、本開示は、GDF15関連ポリペプチド及び他の種からの対応する核酸分子を企図する。
【0103】
A.所望の物理的特性を有するポリペプチド
本開示は、一部では、配列番号:1(成熟112アミノ酸長ヒトGDF15)のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である連続アミノ酸配列を含むポリペプチドを企図する。当該ポリペプチドは、配列番号:1のアミノ酸配列に対して1つまたは複数のアミノ酸置換及び/または欠失を含んでよい。ある種の実施形態では、アミノ酸置換に加えて、本開示のポリペプチドはまた、配列番号:1のアミノ酸配列に対してアミノ酸欠失を含んでよい。一部の実施形態では、本開示のポリペプチドは、配列番号:1のアミノ酸配列に対してアミノ酸欠失を含んでよい。
【0104】
簡便さと明確さのために、配列番号:1のアミノ酸配列を、本明細書において提供するポリペプチドのための参照配列として使用する。したがって、アミノ酸残基位置は、本明細書では、配列番号:1を参照してナンバリングされている。配列番号:1の配列を下記に示す。
【0105】
一部の実施形態では、本開示のポリペプチドは、1つまたは複数のN連結グリコシル化コンセンサス部位(複数可)を、そのような部位が配列番号:1においては存在しない位置に導入する1つ、2つ、3つ、またはそれ以上のアミノ酸置換、付加、または欠失を含んでよい。当該N連結グリコシル化コンセンサス部位は、配列NXS/Tを含み、ここで、NはAsnであり;Xはプロリン以外のアミノ酸であり;Ser(S)またはThr(T)のいずれかが続く。
【0106】
本開示のポリペプチドの例には、1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上のグリコシル化コンセンサス部位(例えば、N連結グリコシル化コンセンサス部位)を、そのような部位が配列番号:1のアミノ酸配列においては存在しないアミノ酸位置に有するポリペプチドが含まれる。
【0107】
ある種の実施形態では、当該ポリペプチドは、1つのN連結グリコシル化コンセンサス部位をその置換位置に提供する、配列番号:1に対する1つのアミノ酸置換を含んでよい(例えば、配列番号:1中のNG
D配列を、1つの置換によってNGT/Sに変えてよい;置換位置に下線を引いた。他のケースでは、当該ポリペプチドは、1つのN連結グリコシル化コンセンサス部位をその置換位置に提供する、配列番号:1に対する2つのアミノ酸置換を含んでよい(例えば、配列番号:1中の
KT
D配列を、2つの置換によってNTT/Sに変えてよい;置換位置に下線を引いた)。一部の実施形態では、当該ポリペプチドは、1つのN連結グリコシル化コンセンサス部位をその置換位置に提供する、配列番号:1に対する3つのアミノ酸置換を含んでよい(例えば、配列番号:1中の
GPG配列を、3つの置換によってNTT/Sに変えてよい;置換位置に下線を引いた)。
【0108】
ある種の実施形態では、当該ポリペプチドは、N連結グリコシル化コンセンサス部位をその欠失の位置に提供する、配列番号:1に対する1つまたは複数のアミノ酸欠失を含んでよい。例えば、配列番号:1中のNG
DHCPLGPGRCCRLHT(配列番号:119)配列を、アミノ酸DからH(下線付き)の欠失によって変えてよく)、それによって、N連結グリコシル化コンセンサス部位:NGTを得る。
【0109】
ある種の実施形態では、当該ポリペプチドは、N連結グリコシル化コンセンサス部位をその付加部位(複数可)に提供する、配列番号:1に対する1つまたは複数のアミノ酸付加を含んでよい。1つのアミノ酸付加によるN連結グリコシル化コンセンサス部位の導入例には、配列番号:1中の配列LHTにNを付加して、配列LNHTを生じさせることが含まれ、ここで、NHTは、N連結グリコシル化コンセンサス部位である。
【0110】
上述のとおり、当該ポリペプチドは、配列番号:1に対する1つまたは複数の置換を含んでよく、その置換は、配列番号:1における対応するアミノ酸の位置としてナンバリングしてよい。
【0111】
ある種の実施形態では、当該ポリペプチドは、配列番号:1のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である連続アミノ酸配列を含んでよく、ここで、その連続アミノ酸配列は、置換D5T/SまたはR21Nを有する。
【0112】
ある種の実施形態では、当該ポリペプチドは、配列番号:1のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である連続アミノ酸配列を含んでよく、ここで、その連続アミノ酸配列は、配列番号:1における対応するアミノ酸に対する次の置換対の少なくとも1つを有する:
i. R16N及びH18T、またはR16N及びH18S;
ii. S23N及びE25T、またはS23N及びE25S;
iii. L24N及びD26T、またはL24N及びD26S;
iv. S50N及びF52T、またはS50N及びF52S;
v. F52N及びA54T、またはF52N及びA54S;
vi. Q51N及びR53T、またはQ51N及びR53S;
vii. R53N及びA55T、またはR53N及びA55S;
viii. S64N及びH66T、またはS64N及びH66S;
ix. L65N及びR67T、またはL65N及びR67S;
x. S82N及びN84T、またはS82N及びN84S;
xi. K91N及びD93T、またはK91N及びD93S;
xii. D93N及びG95T、またはD93N及びG95S;
xiii. T94N及びV96T、またはT94N及びV96S;
xiv. V96N及びL98T、またはV96N及びL98S;
xv. S97N及びQ99T、またはS97N及びQ99S;ならびに
xvi. A106N及びD108T、またはA106N及びD108S。
【0113】
例えば、上記i)中の置換は、当該ポリペプチドが、配列番号:1ではアミノ酸位18に対応するアミノ酸位にトレオニン(T)またはセリン(S)を有することを示しており、その際、配列番号:1では、ヒスチジン(H)がアミノ酸位18に存在する。同様に、5位のDの、TまたはSでの置換は、D5T/Sによって示され得る。配列番号:1に対するポリペプチドにおける対応するアミノ酸の位置は、それらのアミノ酸配列をアラインさせることによって決定し得る。
【0114】
ある種の実施形態では、当該ポリペプチドは、単一のN−グリコシル化コンセンサス配列を提供する2つのアミノ酸置換(置換対)を、配列番号:1ではN−グリコシル化コンセンサス配列が存在しない位置に含んでよい。そのような置換の例には、上記で列挙したR16N及びH18T/S;K91N及びD93T/S;T94N及びV96T/Sなどが含まれる。R16N及びH18T/Sは、当該ポリペプチドが、Nを、配列番号:1においてはRが存在する配列番号:1の16位に対応する位置に有することを示し、そのポリペプチドは、TまたはSのいずれかを、配列番号:1では18位に対応し、Hが存在する位置に有する。配列番号:1における配列RXH(16〜18位に)は、N連結グリコシル化コンセンサス配列のためのいずれの残基も含まないので、その置換対は、N連結グリコシル化コンセンサス配列の導入をもたらす。
【0115】
代替の実施形態では、N連結グリコシル化コンセンサス配列を提供するために、単一アミノ酸置換で十分であり得、例えば、配列番号:1には、配列NGD(3〜5位に)が存在するので、TまたはSでのDの単一置換は、それぞれ、両方ともN−グリコシル化コンセンサス配列である、配列NGTまたはNGSを生成する。
【0116】
ある種のケースでは、1つよりも多いN−グリコシル化コンセンサス配列を、野生型GDF15に導入してもよい。例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上のN−グリコシル化コンセンサス配列を得るために、野生型GDF15アミノ酸配列を置換及び/または欠失によって修飾してもよい。ある種の実施形態では、当該ポリペプチドは、配列番号:1の112アミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する112連続アミノ酸を含んでよく、その際、その112連続アミノ酸は、1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上のN−グリコシル化コンセンサス配列、例えば、1〜12、1〜10、1〜8、1〜6、1〜4、1〜3、または1〜2のN−グリコシル化コンセンサス配列を含む。
【0117】
ある種の実施形態では、当該ポリペプチドは、配列番号:1の112アミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する112連続アミノ酸を含んでよく、その際、その112連続アミノ酸は、1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の、本明細書において記述した置換対を含む。
【0118】
本開示はまた、上記のポリペプチドの活性断片であるポリペプチド(例えば、サブ配列)を企図する。活性断片またはサブ配列の長さは、40アミノ酸から111アミノ酸、例えば、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、98、106、109、または最高111アミノ酸であってよい。
【0119】
当該ポリペプチドは、連続アミノ酸の定義された長さ(例えば、「比較ウィンドウ」)にわたって参照配列と比較して、定義された配列同一性を有する。比較するための配列のアライメント方法は当技術分野において周知である。比較するための最適な配列のアライメントは、例えば、Smith & Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482 (1981)の局所相同性アルゴリズム、Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443 (1970)の相同性アライメントアルゴリズム、Pearson & Lipman, Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA 85:2444 (1988)の類似法の検索、これらのアルゴリズム(Wisconsin Genetics Software Package, Madison, Wis.)のGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA)のコンピュータによる実行、または手動アライメント及び視覚検査(例えば、Current Protocols in Molecular Biology (Ausubel et al., eds. 1995 supplement)を参照されたい)によって行うことができる。
【0120】
例として、適切なポリペプチドは、配列番号:1における40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、または最高112アミノ酸の連続ストレッチに対して、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。
【0121】
本明細書において開示するポリペプチドの例示的な断片には、配列番号:1に対するアミノ酸欠失を有するポリペプチドが含まれる。例えば、当該ポリペプチドは、配列番号:1に対するN末端短縮化及び/またはC末端短縮化を有してよい。当該短縮化は、参照ポリペプチド、例えば、配列番号:1に対して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、またはそれ以上のアミノ酸からなってよい。ある種の実施形態では、問題のポリペプチドは、配列番号:1に対して、本明細書において開示するものなどのN連結グリコシル化コンセンサス配列を導入する1つまたは複数の置換、ならびにN末端短縮化及び/またはC末端短縮化を含んでよい。
【0122】
ある種の実施形態では、当該ポリペプチドは、少なくとも98アミノ酸長であり、かつ配列番号:1における98アミノ酸の対応するストレッチに対して少なくとも90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有してよい。このポリペプチドは、配列番号:1のC末端に存在するアミノ酸を保持しながら、配列番号:1のN末端に存在する最初の2つから最初の14までのアミノ酸(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14アミノ酸)を欠失していてよい。言い換えると、欠失アミノ酸(複数可)は、配列番号:1のN末端アミノ酸に対応する。
【0123】
ある種の実施形態では、当該GDF15変異タンパク質は、少なくとも106アミノ酸長であり、かつ配列番号:1における106アミノ酸の対応するストレッチに対して少なくとも90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有してよい。当該GDF15変異タンパク質は、配列番号:1のN末端に存在する最初の6個のアミノ酸を欠失していてよい。
【0124】
ある種の実施形態では、当該ポリペプチドは、少なくとも109アミノ酸長であり、かつ配列番号:1における109アミノ酸の対応するストレッチに対して少なくとも90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有してよい。当該GDF15変異タンパク質は、配列番号:1のN末端に存在する最初の3個のアミノ酸を欠失していてよい。
【0125】
例示的な本開示のポリペプチドは、WT hGDF15に対して2個のN末端アミノ酸の欠失(ΔN2)を含んでよく、そのN末端でFc配列に融合していてよい。しかしながら、アミノ酸置換の位置に言及する場合、示されている残基番号は、WT成熟hGDF15(WT;配列番号:1)における位置に対応する残基番号である。したがって、N末端で最初の2個のアミノ酸を欠失しているポリペプチドのN末端にあるアミノ酸Nは、GDF15変異タンパク質ポリペプチドアミノ酸配列における最初のアミノ酸であり、異種アミノ酸配列(例えば、Fc)が先行するが、残基3と称され得る。
【0126】
上述のとおり、これらのポリペプチド断片は、配列番号:1の配列に対してN−グリコシル化コンセンサス配列を導入する1つまたは複数のアミノ酸置換、例えば、本明細書において開示する1つ、2つ、またはそれ以上のアミノ酸置換を含んでよい。
【0127】
上記で示したとおり、また下記でより詳細に記載するとおり、本開示のポリペプチドを、例えば、ペグ化(ポリエチレングリコール(PEG)の1つまたは複数の分子またはその誘導体の共有結合);グリコシル化(例えば、N−グリコシル化);ポリシアル酸化;血清アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)、イヌ血清アルブミン、またはウシ血清アルブミン(BSA))を含むアルブミン融合分子;例えば、コンジュゲートした脂肪酸鎖(アシル化)を介してのアルブミン結合;Fc融合;ならびにPEG模倣体との融合を介して修飾してもよい。ある種の実施形態では、当該修飾を、部位特異的手法で導入する。他の実施形態では、当該修飾はリンカーを含む。当該リンカーは、修飾部分をポリペプチドにコンジュゲートし得る。
【0128】
特定の実施形態では、本開示は、アルブミンとのコンジュゲーションによる、成熟ヒトGDF15及びGDF15変異タンパク質(上記のポリペプチドなど)の修飾を企図する。他の実施形態では、本開示は、N−グリコシル化またはO−グリコシル化を介しての、当該ポリペプチドの修飾を企図する。アルブミン及びそのポリペプチドコンジュゲート(例えば、融合タンパク質)、及びグリコシル化ポリペプチドの特徴を本明細書において下記でさらに記載する。
【0129】
Fc−GDF15融合ポリペプチド及びその複合体
例示的な実施形態では、本明細書において開示するGDF15ポリペプチドは、本明細書に記載のポリペプチド(例えば、ヒトGDF15分子、修飾ヒトGDF15分子、GDF15変異タンパク質、及び修飾GDF15変異タンパク質)の1つまたは複数のアミノ酸配列に融合したFcポリペプチドまたはその断片を含む融合ポリペプチドとして存在し得る。本明細書において提供するとおり、当該GDF15ポリペプチドは、野生型ポリペプチドまたは変異タンパク質、例えば、グリコシル化変異タンパク質であってよい。本明細書において使用する場合、ポリペプチド、例えば、GDF15ポリペプチドの文脈における「グリコシル化変異タンパク質」または「糖変異タンパク質」または「グリコシル化変異体」または「糖変異体」は、1つまたは複数のグリコシル化コンセンサス部位を、参照(野生型)ポリペプチドがその位置にグリコシル化コンセンサス部位を含まないアミノ酸配列における位置に含むポリペプチドを指す。ある種のケースでは、当該融合ポリペプチドは、本明細書において開示するGDF15糖変異タンパク質のN末端に融合しているFc−配列を含んでよい。
【0130】
本明細書において記載しているか、または当技術分野で公知の任意のFcポリペプチド配列は、本開示の融合タンパク質の成分であり得る。当該融合タンパク質の成分を場合により、本明細書に記載のリンカーなどのリンカーを介して共有結合で結合することができる。本開示の実施形態の一部では、当該融合タンパク質は、Fcポリペプチド配列をN末端部分として、かつ本明細書に記載のポリペプチドをC末端部分として含む。
【0131】
ある種のケースでは、本明細書において開示するFc−GDF15融合ポリペプチドのFcパートナーは、ヒトIgG Fc(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4)またはその変異体の配列を有するFcであってよい。ヒトIgG1 Fcのアミノ酸配列を配列番号:2として示す。
【0132】
ヒンジ領域は、斜字体であり、CH2ドメインは、下線が引かれ、CH3ドメインは、二重下線が引かれている。当該Fc配列におけるアミノ酸位置のナンバリングは、EUナンバリング(Edelman, G.M. et al., Proc. Natl. Acad. USA, 63, 78−85 (1969))による。したがって、配列番号:2において1位にあるグルタミン酸残基「E」は、EUナンバリングによると、216とナンバリングされ;CH2ドメインは、231とナンバリングされるアラニン(A)で始まり;CH3ドメインは、341とナンバリングされるグリシン(G)で始まる。
【0133】
本明細書において開示するFc−GDF15融合ポリペプチドのFcパートナーは、配列番号:2と少なくとも90%同一、例えば、配列番号:2と少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、またはそれ以上同一である連続アミノ酸配列を有するFcであってよい。ある種の実施形態では、当該Fcパートナーは、配列番号:2におけるCH3ドメインと少なくとも90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるCH3ドメインまたは連続アミノ酸配列を含むFcの断片であってよい。ある種の実施形態では、当該Fcパートナーは、配列番号:2におけるCH2及びCH3ドメインと少なくとも90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるCH2ドメイン及びCH3ドメインまたは連続アミノ酸配列を含むFcの断片であってよい。ある種の実施形態では、当該Fcパートナーは、配列番号:2におけるヒンジ領域、CH2ドメイン、及びCH3ドメインと少なくとも90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である部分ヒンジ領域、CH2ドメイン、及びCH3ドメイン、または連続アミノ酸配列を含むFcの断片であってよい。ある種の実施形態では、当該Fcパートナーは、配列番号:2において記述されたアミノ酸配列と少なくとも90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を有してよい。
【0134】
ある種のケースでは、当該Fc−GDF15融合ポリペプチドのFcパートナーは、組み込まれた突起を含んでよく、その突起は、組み込まれた空隙を含む別のFcポリペプチドと会合し得る。他のケースでは、当該Fc−GDF15融合ポリペプチドのFcパートナーは、組み込まれた空隙を含んでよく、その空隙は、組み込まれた突起を含む別のFcポリペプチドと会合し得る。組み込まれた突起及び/または空隙を有する例示的なFc配列は、米国特許第8,216,805号において記載されている。ある種のケースでは、当該突起及び空隙を、FcポリペプチドのCH3ドメインに組み込んでよい。ある種のケースでは、本開示のFc−GDF15融合ポリペプチドと会合するFcパートナーは、GDF15ポリペプチドにコンジュゲートされていない。したがって、当該Fcパートナーは、当該Fc−GDF15融合ポリペプチドと二量化して、ヘテロ二量体1個当たり1個のGDF15分子を有するヘテロ二量体を形成する。
【0135】
「突起」または「ノブ」を、第1のポリペプチドのCH3ドメインにおける小さなアミノ酸側鎖をより大きな側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)に置き換えることによって組み込んでよい。当該突起に対して同一または同様のサイズの補償的「空隙」または「ホール」を場合により、大きなアミノ酸側鎖をより小さなもの(例えば、アラニンまたはトレオニン)に置き換えることによって、第2のポリペプチドのCH3ドメインに作製する。
【0136】
「第1のポリペプチド」は、第2のポリペプチドと会合することとなる任意のポリペプチドであってよい。第1及び第2のポリペプチドは、「インターフェース」(下記で定義)で接する。当該インターフェースに加えて、第1のポリペプチドは、CH2ドメインまたはヒンジ領域などの1つまたは複数の追加のドメインを含んでよい。ある種のケースでは、第1のポリペプチドは、第1のポリペプチドのインターフェースを形成し得るCH3ドメインを含む。
【0137】
「第2のポリペプチド」は、「インターフェース」を介して第1のポリペプチドと会合することとなる任意のポリペプチドであってよい。当該インターフェースに加えて、第2のポリペプチドは、CH2ドメインまたはヒンジ領域などの1つまたは複数の追加のドメインを含んでよい。ある種のケースでは、第2のポリペプチドは、第2のポリペプチドのインターフェースを形成し得るCH3ドメインを含む。
【0138】
当該「インターフェース」は、第2のポリペプチドのインターフェースにおける1個または複数の「コンタクト」アミノ酸残基(または他の非アミノ酸基)と相互作用する、第1のポリペプチドにおける「コンタクト」アミノ酸残基(または炭水化物基、NADH、ビオチン、FAD、またはhaem基などの他の非アミノ酸基)を含む。ある種のケースでは、当該インターフェースは、定常ドメイン(またはその断片)などの免疫グロブリンのドメインであってよい。ある種のケースでは、当該インターフェースは、IgG抗体、例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4抗体に由来する免疫グロブリンのCH3ドメインを含む。
【0139】
「突起」は、第1のポリペプチドのインターフェースから突出しており、したがって、隣接するインターフェース(すなわち、第2のポリペプチドのインターフェース)における補償的空隙に位置し得て、ヘテロ二量体を安定化し、それによって、例えば、ホモ二量体形成よりもヘテロ二量体形成を支持するような少なくとも1個のアミノ酸側鎖を指す。当該空隙は、元のインターフェース中に存在してもよいし、または合成で(例えば、そのインターフェースをコードする核酸を変更することによって)導入してもよい。当該突起を、合成で(例えば、そのインターフェースをコードする核酸を変更することによって)、例えば、組換えの手段によって導入してもよい。
【0140】
「空隙」は、第2のポリペプチドのインターフェースからくぼんでいて、したがって、第1のポリペプチドの隣接するインターフェース上の対応する突起を収容する少なくとも1個のアミノ酸側鎖を指す。当該空隙は、元のインターフェース中に存在してもよいし、または合成で(例えば、そのインターフェースをコードする核酸を変更することによって)導入してもよい。例えば、第2のポリペプチドのインターフェースをコードする核酸を、空隙をコードするように変更する。
【0141】
突起は、「ノブ」とも称され、空隙は、「ホール」とも称される。例示的な突起及び空隙は、米国特許第8,216,805号において開示されており、次のアミノ酸位での置換を含む:347、366、368、394、405、及び407。アミノ酸の位置のナンバリングは、EUナンバリングによる。組み込まれた突起は、ヒトIgG1 Fc配列における対応するアミノ酸の少なくとも1つの置換を含んでよく、その置換は、アミノ酸残基347、366、及び394からなる群から選択される位置にある。例えば、少なくとも1つの置換は、Q347W/Y、T366W/Y、及びT394W/Yからなる群から選択される。ある種のケースでは、組み込まれた空隙は、ヒトIgG1 Fc配列における対応するアミノ酸の少なくとも1つの置換を含み、その置換は、アミノ酸残基366、368、394、405、及び407からなる群から選択される位置にある。例えば、少なくとも1つの置換は、T366S、L368A、T394S、F405T/V/A、及びY407T/V/Aからなる群から選択される。
【0142】
ある種のケースでは、当該突起は、置換T366W/Yを含んでよく、当該空隙は、置換T366S、L368A、及びY407T/V/Aを含んでよい。
【0143】
例えば、当該突起は、置換T366W/Yを含んでよく、当該空隙は、置換Y407T/V/Aを含んでよい。他のケースでは、当該突起は、置換T366Yを含んでよく、当該空隙は、置換Y407Tを含んでよい。他の実施例では、当該突起は、置換T366Wを含んでよく、当該空隙は、置換Y407Aを含んでよい。さらなる例では、当該突起は、置換T394Yを含んでよく、当該空隙は、置換Y407Tを含んでよい。
【0144】
ある種の実施形態では、当該融合ポリペプチド中のGDF15ポリペプチドのFcパートナーは、融合ポリペプチドの特性を改善する追加の変異を含んでよい。したがって、本明細書に記載の第1及び第2のポリペプチド中のFc配列は、追加の変異を含んでよい。例えば、当該Fcパートナー配列は、さもなければFcパートナーに特徴的であり得るIgGエフェクター機能を排除(例えば、低下または除去)する変異(複数可)を含んでよい。ある種のケースでは、当該Fcパートナー配列は、補体依存性細胞毒性(CDC)、抗体依存性細胞毒性(ADCC)、及び抗体依存性細胞食作用(ADCP)などのエフェクター機能を排除する変異(複数可)を含んでよい。
【0145】
4種のヒトIgGアイソタイプは、活性化Fcγ受容体(FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIIa)、阻害性FcγRIIb受容体、及び補体第一成分(C1q)に、異なる親和性で結合して、非常に異なるエフェクター機能をもたらす。したがって、結合領域内の変異は、エフェクター機能に対して重大な影響を有し得る。
【0146】
IgGとFcγRsまたはC1qとの結合は、ヒンジ領域及びCH2ドメインに位置する残基に左右される。CH2ドメインの2つの領域が、FcγRs及びC1q結合には重要であり、IgG2及びIgG4において独特の配列を有する。ヒトIgG1における、233〜236位にあるIgG2残基、ならびに327、330、及び331位にあるIgG4残基の置換は、ADCC及びCDC活性を多大に減少させることが示された(Armour KL. et al., 1999. Eur J Immunol. 29(8):2613−24; Shields RL et al., 2001, J Biol Chem. 276(9):6591−604)。さらに、Idusogie らは、K322を含む異なる位置でのアラニン置換が、相補的活性化を有意に減少させることを実証した(Idusogie EE. et al., 2000. J Immunol. 164(8):4178−84)。同様に、マウスIgG2AのCH2ドメイン中の変異は、FcγRI及びC1qへの結合を減少させることが示された(Steurer W. et al., 1995. J Immunol. 155(3):1165−74)。ある種の実施形態では、当該Fcポリペプチドは、IgGエフェクター機能(複数可)を排除するCH2ドメインにおける変異を含んでよい。CH2領域における例示的な変異には、
が含まれる。
【0147】
一部の実施形態では、当該GDF15糖変異タンパク質にコンジュゲートされたFcポリペプチドは、野生型ヒンジ配列(一般的に、そのN末端にある)の一部またはすべてを含む。一部の実施形態では、Fcポリペプチドは、機能性または野生型ヒンジ配列を含まない。ある種のケースでは、当該Fc配列は、次のヒンジ配列:EPKSCDKTHTCPPCP(配列番号:100);KSCDKTHTCPPCP(配列番号:101);SCDKTHTCPPCP(配列番号:102);CDKTHTCPPCP(配列番号:103);DKTHTCPPCP(配列番号:104);KTHTCPPCP(配列番号:105);THTCPPCP(配列番号:106);もしくはCPPCP(配列番号:107);または1つもしくは複数の置換(例えば、1〜6つの置換、例えば、1〜5、1〜4、1、2、3、4、5、または6つの置換)を有するそれらの変異体の1つを含んでよい。ある種のケースでは、当該Fc配列は、別のFcのヒンジ領域と共有結合(例えば、1つまたは複数のジスルフィド結合)を形成するヒンジ領域を含んでよい。したがって、ある種の実施形態では、本明細書において開示する複合体における第1及び第2のポリペプチドは、第1及び第2のポリペプチドのヒンジ領域間の共有結合性相互作用を介して会合していてよい。共有結合性相互作用は、1つまたは2つの分子間ジスルフィド結合を含んでよい。
【0148】
本明細書において詳細に記載するとおり、GDF15糖変異タンパク質にコンジュゲートされているFcノブ配列またはホール配列を含む第1のポリペプチドを企図する。そのようなポリペプチドは、第2のFcポリペプチドとの複合体であってよく、その第2のポリペプチドと第1のポリペプチドとは、Fc配列のノブがホール内に位置することによって物理的に会合し得る。
【0149】
ある種のケースでは、第1のFcポリペプチド及び第2のFcポリペプチドの複合体を開示する。第1または第2のポリペプチドの一方は、Fc及びGDF15の融合ポリペプチドであってよい。本明細書において記述するとおり、当該GDF15ポリペプチドは、GDF15ポリペプチドのグリコシル化をもたらすグリコシル化変異(複数可)を含んでよい。グリコシル化GDF15ポリペプチドは、GDF15−グリカンまたはGDF15−糖変異タンパク質とも称され得る。当該GDF15−グリカンまたはGDF15−糖変異タンパク質は、本明細書において開示するとおりであってよい。ある種のケースでは、本明細書において提供するFc−ノブポリペプチドまたはFc−ホールポリペプチドに融合しているGDF15−グリカンまたはGDF15−糖変異タンパク質は、配列番号:1のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である連続アミノ酸配列を含むポリペプチドであってよく、その際、その連続アミノ酸配列は、配列番号:1のアミノ酸配列に対して置換D5T;D5S;またはR21Nを有する。ある種の実施形態では、当該Fc−ノブポリペプチドまたはFc−ホールポリペプチドに融合しているGDF15−グリカンまたはGDF15−糖変異タンパク質は、配列番号:1のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドであってよく、その際、そのアミノ酸配列は、配列番号:1のアミノ酸配列に対して次の置換対の1つまたは複数を含む:
xvii. R16N及びH18T、またはR16N及びH18S;
xviii. S23N及びE25T、またはS23N及びE25S;
xix. S50N及びF52T、またはS50N及びF52S;
xx. F52N及びA54T、またはF52N及びA54S;
xxi. R53N及びA55T、またはR53N及びA55S;
xxii. S64N及びH66T、またはS64N及びH66S;
xxiii. K91N及びD93T、またはK91N及びD93S;
xxiv. D93N及びG95T、またはD93N及びG95S;
xxv. T94N及びV96T、またはT94N及びV96S;
xxvi. V96N及びL98T、またはV96N及びL98S;
xxvii. S97N及びQ99T、またはS97N及びQ99S;ならびに
xxviii. A106N及びD108T、またはA106N及びD108S。
【0150】
ある種のケースでは、当該複合体は、第1及び第2のポリペプチドを含んでよい。当該第1のポリペプチドは、IgG Fc配列を含んでよく、そのIgG Fc配列は、少なくとも1つの組み込まれた突起を含むCH3配列を含んでよく;第2のポリペプチドは、IgG Fc配列を含み、そのIgG Fc配列は、少なくとも1つの組み込まれた空隙を含むCH3配列を含み、その際、第1のポリペプチドは、第1のポリペプチドの突起が第2のポリペプチドの空隙内に位置することを介して、第2のポリペプチドと二量化しており、かつ第1のポリペプチドのC末端または第2のポリペプチドのC末端のいずれかが、少なくとも1つのN連結グリコシル化コンセンサス部位を含むGDF15変異タンパク質のN末端にコンジュゲートされている。したがって、当該複合体は、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドのヘテロ二量体を含む。第1または第2のポリペプチドのいずれかが、本明細書において開示するGDF15変異タンパク質に融合しているので、ヘテロ二量体1個当たり1個のGDF15分子が存在する。ある種のケースでは、当該GDF15変異タンパク質は、本明細書に記載のGDF15変異タンパク質であってよい。
【0151】
本明細書において論述するとおり、第1及び第2のポリペプチドは相互作用して、疎水性相互作用、ジスルフィド結合、またはその両方などの共有結合性及び/または非共有結合性相互作用を介してヘテロ二量体を形成してよい。
【0152】
ある種の実施形態では、第1のヘテロ二量体及び第2のヘテロ二量体を含む複合体を開示する。第1のヘテロ二量体及び第2のヘテロ二量体のそれぞれは、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドを含んでよく、その第1のポリペプチドは、IgG Fc配列を含んでよく、そのIgG Fc配列は、少なくとも1つの組み込まれた突起を含むCH3配列を含んでよく;第2のポリペプチドは、IgG Fc配列を含んでよく、そのIgG Fc配列は、少なくとも1つの組み込まれた空隙を含むCH3配列を含んでよく;その際、第1のポリペプチドは、第1のポリペプチドの突起が第2のポリペプチドの空隙内に位置することを介して、第2のポリペプチドと二量化しており、第1のポリペプチドのC末端または第2のポリペプチドのC末端のいずれかが、少なくとも1つのN連結グリコシル化コンセンサス部位を含むGDF15変異タンパク質のN末端にコンジュゲートされており、第1のヘテロ二量体におけるGDF15変異タンパク質が第2のヘテロ二量体におけるGDF15変異タンパク質と二量化し、それによって、第1のヘテロ二量体及び第2のヘテロ二量体を含む複合体を形成している。第2のヘテロ二量体と物理的に会合している第1のヘテロ二量体を含む本開示の複合体では、ヘテロ二量体−ヘテロ二量体複合体1個当たり2個のGDF15分子が存在する。
【0153】
本明細書において言及するとおり、第1及び第2のポリペプチドは相互作用して、疎水性相互作用、ジスルフィド結合、またはその両方などの共有結合性及び/または非共有結合性相互作用を介してヘテロ二量体を形成してよく、かつ第1及び第2のヘテロ二量体二量体は相互作用して、疎水性相互作用、ジスルフィド結合、またはその両方などの共有結合性及び/または非共有結合性相互作用によって二量体−二量体複合体を形成してよい。
【0154】
ある種のケースでは、本明細書に記載のヘテロ二量体のそれぞれに、例えば、2個のヘテロ二量体の複合体に存在するGDF15変異タンパク質は、配列において同一でも、または異なってもよい。ある種のケースでは、2個のヘテロ二量体の複合体におけるGDF15変異タンパク質は、配列において同一であってよい。
【0155】
GDF15変異タンパク質に融合するための、かつFc−GDF15融合タンパク質への結合パートナーとしての例示的なFc配列を本明細書において開示する。ある種の実施形態では、本開示の複合体中に存在するFc配列は、組み込まれた「ノブ」及び「ホール」配列以外は、配列において同様または同一であってよい。
【0156】
ある種のケースでは、相互作用して、本明細書において開示する複合体を形成し得る第1及び第2のポリペプチドは、対I〜VIIIとして下記で記述するとおりであってよい。下記に提示する配列では、ヒト免疫グロブリン(immunoglobin)G1(hIgG1)Fc配列の後に、リンカー配列(下線付き)、続いて、GDF15変異タンパク質配列(太字)が続く。
【0157】
対I:
第1のポリペプチド:hIgG1−Fc(AA)(T366W)−(G
4S)
2−ΔN2−GDF15(N3−I112)(D5T)
(配列番号:3)
【0158】
第2のポリペプチド:hIgG1−Fc(AA)(T366S)(L368A)(Y407V)
(配列番号:4)
【0159】
対II:
第1のポリペプチド:hIgG1−Fc(AA)(T366W)−(G
4S)
5−ΔN2−GDF15(N3−I112)(D5T)
(配列番号:5)
【0160】
第2のポリペプチド:hIgG1−Fc(AA)(T366S)(L368A)(Y407V)
(配列番号:6)
【0161】
対III:
第1のポリペプチド:hIgG1−Fc(AA)(T366W)−(G
4S)
5−ΔN3−GDF15(G4−I112)(R21N)
(配列番号:7)
【0162】
第2のポリペプチド:hIgG1−Fc(AA)(T366S)(L368A)(Y407V)
(配列番号:8)
【0163】
対IV:
第1のポリペプチド:hIgG1−Fc(AA)(T366W)−(G
4S)
5−ΔN3−GDF15(G4−I112)(S23N/E25T)
(配列番号:9)
【0164】
第2のポリペプチド:hIgG1−Fc(AA)(T366S)(L368A)(Y407V)
(配列番号:10)
【0165】
対V:
第1のポリペプチド:hIgG1−Fc(AA)(T366W)−(G
4S)
5−ΔN3−GDF15(G4−I112)(F52N/A54T)
(配列番号:11)
【0166】
第2のポリペプチド:hIgG1−Fc(AA)(T366S)(L368A)(Y407V)
(配列番号:12)
【0167】
対VI:
第1のポリペプチド:hIgG1−Fc(AA)(T366W)−(G
4S)
5−ΔN3−GDF15(G4−I112)(R53N/A55T)
(配列番号:13)
【0168】
第2のポリペプチド:hIgG1−Fc(AA)(T366S)(L368A)(Y407V)
(配列番号:14)
【0169】
対VII:
第1のポリペプチド:hIgG1−Fc(AA)(T366W)−(G
4S)
5−ΔN3−GDF15(G4−I112)(K91N/D93T)
(配列番号:15)
【0170】
第2のポリペプチド:hIgG1−Fc(AA)(T366S)(L368A)(Y407V)
(配列番号:16)
【0171】
対VIII:
第1のポリペプチド:hIgG1−Fc(AA)(T366W)−(G
4S)
5−ΔN3−GDF15(G4−I112)(D93N/G95T)
(配列番号:17)
【0172】
第2のポリペプチド:hIgG1−Fc(AA)(T366S)(L368A)(Y407V)
(配列番号:18)
【0173】
ある種のケースでは、相互作用して本明細書において開示する複合体を形成し得る第1及び第2のポリペプチドは、対IからVIIIにおいて上記で開示したとおりのそれぞれ第1及び第2のポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%同一なアミノ酸配列を有し得る。例えば、配列同一性は、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、またはそれ以上であってよい。
【0174】
ある種の実施形態では、当該複合体は、配列番号:3のアミノ酸配列と少なくとも90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一なアミノ酸配列を有する第1のポリペプチドと;配列番号:4のアミノ酸配列と少なくとも90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一なアミノ酸配列を有する第2のポリペプチドとを含んでよく、その際、第1及び第2のポリペプチドは、少なくとも1つの分子間ジスルフィド結合を介して共有結合性に連結している。第1のヘテロ二量体及び第2のヘテロ二量体を含み、第1のヘテロ二量体及び第2のヘテロ二量体のそれぞれが、配列番号:3のアミノ酸配列と少なくとも90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一なアミノ酸配列を有する第1のポリペプチドと;配列番号:4のアミノ酸配列と少なくとも90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一なアミノ酸配列を有する第2のポリペプチドとを含む複合体も本明細書において提供する。
【0175】
ある種の実施形態では、当該複合体は、配列番号:5のアミノ酸配列と少なくとも90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一なアミノ酸配列を有する第1のポリペプチドと;配列番号:6のアミノ酸配列と少なくとも90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一なアミノ酸配列を有する第2のポリペプチドとを含んでよく、その際、第1及び第2のポリペプチドは、少なくとも1つの分子間ジスルフィド結合を介して共有結合性に連結している。第1のヘテロ二量体及び第2のヘテロ二量体を含み、第1のヘテロ二量体及び第2のヘテロ二量体のそれぞれが、配列番号:5のアミノ酸配列と少なくとも90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一なアミノ酸配列を有する第1のポリペプチドと;配列番号:6のアミノ酸配列と少なくとも90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一なアミノ酸配列を有する第2のポリペプチドとを含む複合体も本明細書において提供する。
【0176】
ある種の実施形態では、当該複合体は、配列番号:7のアミノ酸配列と少なくとも90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一なアミノ酸配列を有する第1のポリペプチドと;配列番号:8のアミノ酸配列と少なくとも90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一なアミノ酸配列を有する第2のポリペプチドとを含んでよく、その際、第1及び第2のポリペプチドは、少なくとも1つの分子間ジスルフィド結合を介して共有結合性に連結している。第1のヘテロ二量体及び第2のヘテロ二量体を含み、第1のヘテロ二量体及び第2のヘテロ二量体のそれぞれが、配列番号:7のアミノ酸配列と少なくとも90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一なアミノ酸配列を有する第1のポリペプチドと;配列番号:8のアミノ酸配列と少なくとも90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一なアミノ酸配列を有する第2のポリペプチドとを含む複合体も本明細書において提供する。
【0177】
特定の実施形態では、本明細書において開示する複合体は、2個のヘテロ二量体を含んでよく、その際、各ヘテロ二量体は:
(a)ノブ(Fc−ノブ)を含み、かつ下記の配列を有するhIgG1−Fcポリペプチド:
(配列番号:127);及び
(b)ホール(Fc−ホール)を含み、かつ下記の配列を有するhIgG1−Fcポリペプチド:
(配列番号:4)
を含み、
Fc−ノブ(a)またはFc−ホール(b)のいずれかは、C末端で、GDF15糖変異タンパク質のN末端に融合している。当該GDF15糖変異タンパク質の配列は、下記のとおりであってよい。
ある種の例では、当該Fc−ノブのアミノ酸配列は、配列番号:127のアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一であってよい。ある種の例では、当該Fc−ホールのアミノ酸配列は、配列番号:4のアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一であってよい。ある種の例では、当該GDF15変異タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号:128〜136のいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一であってよい。
【0178】
当該Fc−ノブまたは当該Fc−ホールは、リンカー配列(G
4S)
n(ここで、n=1〜10、例えば、2、3、4、または5)を介して、当該GDF15糖変異タンパク質と一緒になっていてよい。
【0179】
ある種の例では、本開示の複合体は、少なくとも50mg/L、例えば、少なくとも55mg/L、60mg/L、65mg/L、70mg/L、75mg/L、80mg/L、85mg/L、90mg/L、95mg/L、100mg/L、110mg/L、120mg/L、130mg/L、140mg/L、150mg/L、160mg/L、170mg/L、180mg/L、190mg/L、200mg/L超、またはそれ以上の回収量を有してよい。ある種のケースでは、本開示の複合体は、少なくとも50mg/L〜300mg/L、例えば、60mg/L〜300mg/L、75mg/L〜300mg/L、75mg/L〜250mg/L、75mg/L〜200mg/L、75mg/L〜175mg/L、75mg/L〜150mg/L、100mg/L〜300mg/L、100mg/L〜250mg/L、100mg/L〜200mg/L、100mg/L〜150mg/L、100mg/L〜125mg/L、110mg/L〜300mg/L、または150mg/L〜300mg/Lの回収量を有してよい。当該複合体の回収量は、それぞれの完全にアセンブルされた複合体において存在する2個の二量体を形成する第1及び第2のポリペプチドを発現する宿主細胞が培養されている培養培地から得られた、完全にアセンブルされた二量体−二量体複合体の量を指す。
【0180】
本開示はまた、Fcポリペプチド融合パートナー、及びそのFcポリペプチド融合パートナーが修飾されて、荷電Fc対の一方のパートナーとなっているようなものを含む融合タンパク質を企図する。「荷電Fc対のパートナー」は、(i)(場合により、ヒンジ領域を欠失し)、かつ荷電対変異を含む「負に荷電した」Fc配列、または(ii)(場合により、ヒンジ領域を欠失し)、かつ荷電対変異を含む「正に荷電した」Fc配列を指す。Fc配列における電荷対変異の性質を記載し、全体配列またはコンストラクトが陽電荷または負電荷を必ずしも有さないことを示すことに平易に言及するために、本明細書では「正に荷電した」及び「負に荷電した」を使用する。本開示のポリペプチドコンストラクト(例えば、GDF15糖変異タンパク質、修飾GDF15糖変異タンパク質)において使用するために適した荷電Fcアミノ酸配列は、例えば、WO2013/113008において記載されている。
【0181】
正に荷電したFc(「Fc(+)」)の例には、ヒンジ領域を欠失したFc配列のアスパラギン酸からリシンへの変異(E356K)及びグルタミン酸からリシンへの変異(D399K)を含むFcが含まれる。負に荷電したFc(「Fc(−)」)の例には、ヒンジ領域を欠失したFc配列における2つの、リシンからアスパラギン酸への変異(K392D、K409D)を含むFcが含まれる。C末端リシン(K477)もまた、場合により欠失していてよい。Fc(+)ポリペプチド融合タンパク質(例えば、Fc(+)GDF15変異タンパク質融合タンパク質)及びFc(−)ポリペプチド融合タンパク質(例えば、Fc(−)GDF15変異タンパク質融合タンパク質)を一緒にインキュベートすると、アスパラギン酸残基が静電力によってリシン残基と会合して、GDF15ポリペプチド融合タンパク質のFc(+)とFc(−)配列との間でのFcヘテロ二量体の形成を促進する。
【0182】
本開示はまた、「ヘミ」または「ヘミFc」コンストラクトと指定されるコンストラクトを企図し、これは、第1のFc配列のN末端を第2のFc配列のC末端に接続するリンカーによって、縦に並んで接合された2つのFc配列を含む。一部の実施形態では、単量体は、GDF15配列のN末端を第1のFc配列のC末端に接続する第1のリンカーによって、第1のFc配列に連結されたポリペプチド(例えば、修飾された成熟GDF15またはGDF15糖変異タンパク質)配列を含み、その際、第1のFc配列は、第1のFc配列のN末端を第2のFc配列のC末端に接続する第2のリンカーによって、第2のFc配列に連結されている。第1及び第2のFc配列はまた、Fcヒンジ領域によって会合されている。2個のそのような単量体は会合して、二量体を形成し、その中で、単量体は、2つのポリペプチド配列間の鎖間ジスルフィド結合を介して連結されている。本開示のGDF15変異タンパク質との使用に適したヘミFcポリペプチドの例については、WO2013/113008を参照されたい。
【0183】
本開示はまた、荷電Fc対(例えば、Fcの多量体)のパートナーを含む、Fcポリペプチドまたはその断片の多量体を有する融合タンパク質を企図する。
【0184】
本開示の複合体は、溶解性の上昇、凝集の低下、及び/または血清半減期の延長などの改善された特性を有する。ある種のケースでは、当該複合体の溶解性は一般的に、非コンジュゲートの組換えヒトGDF15及びFc(ノブまたはホール)コンジュゲートされた野生型GDF15に対して改善されている。ある種の実施形態では、当該複合体は、pH7.0でリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に少なくとも1mg/mLの溶解性を有する。他の実施形態では、当該複合体は、少なくとも2mg/mL、少なくとも3mg/mL、少なくとも4mg/mL、または少なくとも5mg/mLの溶解性を有する。他の実施形態では、当該複合体は、pH7.0でリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に少なくとも6mg/mL、少なくとも7mg/mL、少なくとも8mg/mL、少なくとも9mg/mL、または少なくとも10mg/mLの溶解性を有する。特定の実施形態では、当該複合体は、10mg/mL超の溶解性を有する。
【0185】
グリコシル化:本開示の目的では、「グリコシル化」は、グリカンをタンパク質、脂質、または他の有機分子に結合する酵素プロセスを広く指すことを意味する。本開示と関連した「グリコシル化」という用語の使用は一般的に、1つまたは複数の炭水化物部分を付加または欠失させる(潜在するグリコシル化部位を除去することによってか、または化学及び/もしくは酵素手段によってグリコシル化を欠失させることによってかのいずれか)、ならびに/または天然配列に存在しても存在しなくてもよい1つまたは複数のグリコシル化部位を付加することを意味することが意図される。加えて、この語句は、存在する様々な炭水化物部分の性質及び比率の変化を伴う天然タンパク質のグリコシル化の質的変化を含む。
【0186】
グリコシル化は、タンパク質の物理的特性に劇的に影響を与え得、タンパク質の安定性、分泌、及び細胞内局在にも重要であり得る。実際に、本明細書に記載のGDF15変異タンパク質ポリペプチドのグリコシル化は、それらの物理的特性に有益な改善を与える。例として、限定ではないが、GDF15変異タンパク質の溶解性を、グリコシル化によって改善することができ、そのような改善は多大であり得る(実施例を参照されたい)。そのような修飾GDF15変異タンパク質によって呈される溶解性の改善は、例えば、薬剤投与について、非グリコシル化GDF15/GDF15変異タンパク質よりも適切な製剤の生成を可能にすることができる。グリコシル化GDF15/GDF15変異タンパク質ポリペプチドはまた、増強された安定性を呈し得る。さらに、当該ポリペプチドは、半減期などの1つまたは複数の薬物動態特性を改善し得る。
【0187】
グリコシル化部位の付加は、上記のとおりアミノ酸配列を変更することによって達成することができる。当該ポリペプチドの変更は、例えば、1個もしくは複数のセリンもしくはトレオニン残基(O連結グリコシル化部位で)、またはアスパラギン残基(N連結グリコシル化部位で)の付加、またはそれによる置換によって成してもよい。各種類において存在するN連結及びO連結オリゴ糖及び糖残基の構造は、異なってもよい。両方に共通して存在する糖の種類の1つは、N−アセチルノイラミン酸(本明細書において下記では、シアル酸と称する)である。シアル酸は通常、N連結及びO連結オリゴ糖の両方の末端残基であり、その負電荷によって、糖タンパク質に酸性の特性を付与し得る。本開示の特定の実施形態は、上記のとおりのN−グリコシル化変異体の生成及び使用を含む。
【0188】
当該ポリペプチド上の炭水化物部分の数を増大させる別の手段は、グリコシドをそのポリペプチドに化学的または酵素的にカップリングさせることによる手段である。
【0189】
ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)欠損チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞は、組換え糖タンパク質の生成のために一般的に使用される宿主細胞である。これらの細胞は、酵素ベータ−ガラクトシドアルファ−2,6−シアリルトランスフェラーゼを発現せず、したがってアルファ−2,6連結におけるシアル酸を、これらの細胞で産生された糖タンパク質のN連結オリゴ糖に付加しない。
【0190】
特定の実施形態では、少なくとも1つのN連結グリコシル化コンセンサス部位を含むGDF15変異タンパク質をグリコシル化する。したがって、特定の実施形態では、本明細書において開示する複合体中のGDF15変異タンパク質は、そのGDF15変異タンパク質に導入されたN連結グリコシル化コンセンサス部位でグリコシル化されていてよい。ある種のケースでは、本明細書において開示する複合体は細胞系からの発現中に生成されたグリコシル化GDF15などのグリコシル化GDF15を含んでよいが、その複合体を、生成後に処理して炭水化物部分を除去してよい。炭水化物部分の生成後除去は、真核宿主細胞における発現中に、GDF15変異タンパク質(及びFc配列)に結合した実質的にすべての炭水化物基の除去をもたらし得る。
【0191】
したがって、本開示は、別のタンパク質(例えば、対象タンパク質とは異種のアミノ酸配列を有するタンパク質)などのポリペプチド配列のN末端及び/もしくはC末端での1つもしくは複数の追加の成分もしくは分子、または担体分子のコンジュゲーションを企図する。したがって、例示的なポリペプチド配列を、別の成分または分子とのコンジュゲートとして提供することができる。
【0192】
ポリペプチドを、タンパク質;セファロース、アガロース、セルロース、セルロースビーズなどの多糖;ポリグルタミン酸、ポリリシンなどのポリマー性アミノ酸;アミノ酸コポリマー;不活性化ウイルス粒子;ジフテリア、破傷風、コレラ、ロイコトキシン分子からの類毒素などの不活性化細菌性毒素;不活性化細菌;及び樹状細胞などの、大きく、ゆっくり代謝される高分子にコンジュゲートさせてもよい。所望の場合には、そのようなコンジュゲートされた形態を使用して、本開示のポリペプチドに対する抗体を生成することができる。ある種のケースでは、本明細書に記載の複合体におけるGDF15は、大きく、ゆっくり代謝される高分子にコンジュゲートされたポリペプチドであってよい。
【0193】
コンジュゲーションのための追加の候補成分及び分子には、単離または精製に適したものが含まれる。特定の非限定的な例には、ビオチン(ビオチン−アビジン特異的結合対)、抗体、受容体、リガンド、レクチン、または固体支持体(例えば、プラスチックもしくはポリスチレンビーズ、プレートもしくはビーズ、磁気ビーズ、試験片、及び膜を含む)を含む分子などの結合分子が含まれる。
【0194】
カチオン交換クロマトグラフィーなどの精製方法を使用して、コンジュゲートをそれらの様々な分子量に効率的に分離する電荷の差によってコンジュゲートを分離してもよい。例えば、カチオン交換カラムに装填し、次いで、約20mMの酢酸ナトリウム、pH約4で洗浄し、次いで、約3〜5.5のpH、例えば、pH約4.5で緩衝された(0M〜0.5M)NaClの直線勾配で溶離することができる。カチオン交換クロマトグラフィーによって得られた画分の内容物を従来の方法、例えば、質量分析、SDS−PAGE、または分子量によって分子実体を分離するための他の公知の方法を使用して、分子量によって特定してよい。
【0195】
リンカー:本開示のポリペプチド配列を修飾するために使用される上述の成分及び分子のいずれも場合により、リンカーを介して任意にコンジュゲートさせてよい。適切なリンカーには、一般的に、修飾ポリペプチド配列と連結された成分及び分子との間での多少の移動を可能にするために十分な長さのものである「柔軟なリンカー」が含まれる。当該リンカー分子は、約6〜50個の原子長であり得る。当該リンカー分子はまた、例えば、アリールアセチレン、2〜10の単量体単位を含有するエチレングリコールオリゴマー、ジアミン、二酸、アミノ酸、またはそれらの組み合わせであってもよい。適切なリンカーを容易に選択することができ、それは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、10〜20、20〜30、30〜50のアミノ酸などの任意の適切な長さのものであり得る。
【0196】
例示的な柔軟なリンカーには、グリシンポリマー(G)
n、グリシン−アラニンポリマー、アラニン−セリンポリマー、グリシン−セリンポリマー(例えば、(G
mS
o)
n、(GSGGS)
n(配列番号:120)、(G
mS
oG
m)
n、(G
mS
oG
mS
oG
m)
n(配列番号:121)、(GSGGS
m)
n(配列番号:122)、(GSGS
mG)
n(配列番号:123)、及び(GGGS
m)
n(配列番号:124)、ならびにそれらの組合せ(ここで、m、n、及びoはそれぞれ独立に、少なくとも1〜20、例えば、1〜18、2〜16、3〜14、4〜12、5〜10、1、2、3、4、5、6、7、8,9、または10の整数から選択される)、ならびに他の柔軟なリンカーが含まれる。グリシン及びグリシン−セリンポリマーは比較的構造不定であり、したがって、成分間の中性テザーとして機能し得る。例示的な柔軟なリンカーには、これらだけに限定されないが、GGSG(配列番号:21)、GGSGG(配列番号:22)、GSGSG(配列番号:23)、GSGGG(配列番号:24)、GGGSG(配列番号:25)、及びGSSSG(配列番号:26)が含まれる。
【0197】
追加の柔軟なリンカーには、グリシンポリマー(G)
nまたはグリシン−セリンポリマー(例えば、(GS)
n、(GSGGS)
n(配列番号:120)、(GGGS)
n(配列番号:125)、及び(GGGGS)
n(配列番号:126)(ここで、n=1〜50、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、10〜20、20〜30、30〜50)が含まれる。例示的な柔軟なリンカーには、これらだけに限定されないが、GGGS(配列番号:19)、GGGGS(配列番号:20)、GGSG(配列番号:21)、GGSGG(配列番号:22)、GSGSG(配列番号:23)、GSGGG(配列番号:24)、GGGSG(配列番号:25)、及びGSSSG(配列番号:26)が含まれる。これらのリンカー配列の多量体(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、10〜20、20〜30、または30〜50)を一緒に連結して、異種アミノ酸配列を本明細書において開示するポリペプチドにコンジュゲートするために使用され得る柔軟なリンカーを得てもよい。本明細書に記載のとおり、当該異種アミノ酸配列は、シグナル配列及び/または融合パートナー、例えば、アルブミン、Fc配列などであってよい。
【0198】
リンカーの例には、例えば、(GGGGS)
n(配列番号:126)(ここで、nは、1〜約10(例えば、n=1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10)の整数である);GGGSGGGSIEGR(配列番号:48);GGGGG(配列番号:27);EGGGS(配列番号:28)が含まれる。
【0199】
一部のケースでは、当該リンカーは、切断可能なリンカー、例えば、酵素的に切断可能なリンカーであってよい。他のケースでは、当該リンカーは、非切断性リンカー、例えば、in vivoで通常の生理学的条件下で酵素的に切断されないリンカーである。
【0200】
例えば、タンパク質分解的に切断可能なリンカーには、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)切断部位、例えば、コラゲナーゼ−1、−2、及び−3(MMP−1、−8、及び−13)、ゼラチナーゼA及びB(MMP−2及び−9)、ストロメライシン1、2、及び3(MMP−3、−10、及び−11)、マトリライシン(MMP−7)、ならびに膜メタロプロテイナーゼ(MT1−MMP及びMT2−MMP)から選択されるMMPの切断部位が含まれ得る。MMP−9の切断配列は、Pro−X−X−Hy(ここで、Xは、任意の残基;Hyは、疎水性残基を表す)(配列番号:29)、例えば、Pro−X−X−Hy−(Ser/Thr)(配列番号:30)、例えば、Pro−Leu/Gln−Gly−Met−Thr−Ser(配列番号:31)、またはPro−Leu/Gln−Gly−Met−Thr(配列番号:32)である。プロテアーゼ切断部位の別の例は、プラスミノゲンアクチベーター切断部位、例えば、uPAまたは組織プラスミノゲンアクチベーター(tPA)切断部位である。uPA及びtPAの切断配列の具体的な例には、Val−Gly−Argを含む配列が含まれる。別の例は、トロンビン切断部位、例えば、CGLVPAGSGP(配列番号:33)である。プロテアーゼ切断部位を含む追加の適切なリンカーには、以下のアミノ酸配列の1つまたは複数を含むリンカーが含まれる:1)カテプシンBによって切断されるSLLKSRMVPNFN(配列番号:34)またはSLLIARRMPNFN(配列番号:35);エプスタイン−バーウイルスプロテアーゼによって切断されるSKLVQASASGVN(配列番号:36)またはSSYLKASDAPDN(配列番号:37);MMP−3(ストロメライシン)によって切断されるRPKPQQFFGLMN(配列番号:38);MMP−7(マトリライシン)によって切断されるSLRPLALWRSFN(配列番号:39);MMP−9によって切断されるSPQGIAGQRNFN(配列番号:40);サーモリシン様MMPによって切断されるDVDERDVRGFASFL(配列番号:41);マトリックスメタロプロテイナーゼ2(MMP−2)によって切断されるSLPLGLWAPNFN(配列番号:42);カテプシンLによって切断されるSLLIFRSWANFN(配列番号:43);カテプシンDによって切断されるSGVVIATVIVIT(配列番号:44);マトリックスメタロプロテイナーゼ1(MMP−1)によって切断されるSLGPQGIWGQFN(配列番号:45);ウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベーターによって切断されるKKSPGRVVGGSV(配列番号:46);膜型1マトリックスメタロプロテイナーゼ(MT−MMP)によって切断されるPQGLLGAPGILG(配列番号:47);ストロメライシン3(またはMMP−11)、サーモリシン、線維芽細胞コラゲナーゼ、及びストロメライシン−1によって切断されるHGPEGLRVGFYESDVMGRGHARLVHVEEPHT(配列番号:94);マトリックスメタロプロテイナーゼ13(コラゲナーゼ−3)によって切断されるGPQGLAGQRGIV(配列番号:49);組織型プラスミノゲンアクチベーター(tPA)によって切断されるGGSGQRGRKALE(配列番号:50);ヒト前立腺特異的抗原によって切断されるSLSALLSSDIFN(配列番号:51);カリクレイン(hK3)によって切断されるSLPRFKIIGGFN(配列番号:52);好中球エラスターゼによって切断されるSLLGIAVPGNFN(配列番号:53);ならびにカルパイン(カルシウム活性化中性プロテアーゼ)によって切断されるFFKNIVTPRTPP(配列番号:54)。
【0201】
本明細書において提供する具体的なアミノ酸配列及び核酸配列に加えて、本開示はまた、配列において、それらのアミノ酸及び核酸と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一である配列を有するポリペプチド及び核酸を企図する。2つもしくはそれ以上のポリヌクレオチド配列、または2つもしくはそれ以上のアミノ酸配列に関しての「同一である(同一な)」または「同一性」パーセントという用語は、指定領域にわたって最大対応で比較及びアラインさせた場合に、同じであるか、または規定のパーセンテージの同じ(例えば、指定の領域にわたって少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一な)アミノ酸残基またはヌクレオチドを有する2つまたはそれ以上の配列またはサブ配列を指す。本開示は具体的には、その第1のポリペプチド及びその第2のポリペプチドが配列において、本明細書において提供する第1及び第2のポリペプチド対のそれぞれの第1及び第2のポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する、複合体中に存在する第1及び第2のポリペプチドを企図する。
【0202】
ポリペプチドの生成方法
本開示のポリペプチドを、組換え方法及び非組換え方法(例えば、化学合成)を含む任意の適切な方法によって生成することができる。
【0203】
A.化学合成
ポリペプチドを化学的に合成する場合、液相または固相を介して合成を進めることができる。固相ペプチド合成(SPPS)は、非天然アミノ酸及び/またはペプチド/タンパク質骨格の修飾の組み込みを可能にする。Fmoc及びBocなどのSPPSの様々な形態を、本開示のポリペプチドを合成するために利用可能である。化学合成の詳細は当技術分野において公知である(例えば、Ganesan A. 2006 Mini Rev. Med. Chem. 6:3−10;及びCamarero J.A. et al., 2005 Protein Pept Lett. 12:723−8)。
【0204】
B.組換え生成
ポリペプチドを、組換え技術を使用して生成する場合、そのポリペプチドを、任意の適切なコンストラクト、及び細菌(例えば、E.coli)または酵母宿主細胞などの、それぞれ、原核細胞または真核細胞であり得る任意の適切な宿主細胞を使用して、細胞内タンパク質として、または分泌タンパク質として生成してよい。宿主細胞として使用してよい真核細胞の他の例には、昆虫細胞、哺乳類細胞、及び/または植物細胞が含まれる。哺乳類宿主細胞を使用する場合、それらには、ヒト細胞(例えば、HeLa、293、H9、及びJurkat細胞);マウス細胞(例えば、NIH3T3、L細胞、及びC127細胞);霊長類細胞(例えば、Cos1、Cos7、及びCV1)、及びハムスター細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞)が含まれ得る。具体的な実施形態では、当該ポリペプチド及びそのポリペプチドを含む複合体をCHO細胞中で生成する。他の実施形態では、当該ポリペプチド及びそのポリペプチドを含む複合体を酵母細胞中で生成し、特定の実施形態では、酵母細胞は、哺乳類様N−グリカンを含む糖タンパク質を生成するように遺伝子操作された酵母細胞であってよい。
【0205】
ポリペプチドの発現に適切な様々な宿主−ベクター系を、当技術分野で公知の標準的な手順に従って使用してよい。例えば、Sambrook et al., 1989 Current Protocols in Molecular Biology Cold Spring Harbor Press, New York;及びAusubel et al. 1995 Current Protocols in Molecular Biology, Eds. Wiley and Sonsを参照されたい。遺伝物質を宿主細胞に導入するための方法には、例えば、形質転換、電気穿孔、コンジュゲーション、リン酸カルシウム法などが含まれる。トランスファーのための方法を、導入されたポリペプチドコード核酸の安定した発現を提供するように選択することができる。当該ポリペプチドコード核酸を、遺伝性エピソーム要素(例えば、プラスミド)として提供することができるか、またはゲノム的に統合することができる。問題のポリペプチドの生成において使用するための様々な適切なベクターが市販されている。
【0206】
ベクターは、宿主細胞における染色体外維持を提供することができるか、または宿主細胞ゲノムへの統合を提供することができる。当該発現ベクターは転写及び翻訳の制御配列を提供し、そのコード領域が転写開始領域ならびに転写及び翻訳の停止領域の転写制御下で作動可能に連結されている場合、誘導性または構成的発現を提供し得る。一般的に、転写及び翻訳の制御配列には、これらだけに限定されないが、プロモーター配列、リボソーム結合部位、転写開始及び停止配列、翻訳開始及び停止配列、ならびにエンハンサーまたはアクチベーター配列が含まれ得る。プロモーターは、構成的または誘導性のいずれかであり得、強い構成的プロモーター(例えば、T7)であり得る。
【0207】
発現コンストラクトは一般的に、問題のタンパク質をコードする核酸配列の挿入を提供するために、プロモーター配列付近に位置する簡便な制限部位を有する。発現宿主において作動的な選択可能なマーカーが、ベクターを含有する細胞の選択を容易にするために存在してよい。さらに、当該発現コンストラクトは追加の要素を含んでよい。例えば、当該発現ベクターは、1つまたは2つの複製系を有してよく、したがって、発現のために生体、例えば、哺乳類または昆虫の細胞において、ならびにクローン化及び増幅のために原核宿主においてそれを維持することが可能である。加えて、当該発現コンストラクトは、形質転換された宿主細胞の選択を可能にするために、選択可能なマーカー遺伝子を含有してよい。選択可能な遺伝子は当技術分野において周知であり、使用される宿主細胞と共に変動するはずである。
【0208】
タンパク質の単離及び精製は、当技術分野で公知の方法に従って達成することができる。例えば、タンパク質を構成的に及び/または誘導時に発現するように遺伝的に修飾された細胞の溶解産物から;宿主細胞を増殖させた培養培地から;またはサンプル(細胞溶解産物、培養培地、または反応混合物)を、そのタンパク質と特異的に結合するタグと接触させ、非特異的に結合した材料を除去するために洗浄し、特異的に結合したタンパク質を溶離することを伴い得るアフィニティー精製によって合成反応混合物から、タンパク質を単離することができる。単離されたタンパク質を、透析及びタンパク質精製方法において通常使用される他の方法によってさらに精製することができる。一実施形態では、当該タンパク質を、金属キレートクロマトグラフィー方法を使用して単離してもよい。タンパク質は、単離を容易にするために修飾を含んでよい。ある種の実施形態では、本開示の複合体を、サイズに基づき分離してよい。
【0209】
ある種の実施形態では、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドを含む複合体であって、第1のポリペプチドがIgG Fc配列を含み、そのIgG Fc配列が少なくとも1つの組み込まれた突起を含むCH3配列を含み;第2のポリペプチドがIgG Fc配列を含み、そのIgG Fc配列が少なくとも1つの組み込まれた空隙を含むCH3配列を含み;その際、第1のポリペプチドの突起が第2のポリペプチドの空隙内に位置することによって、第1のポリペプチドが第2のポリペプチドと二量化しており、第1のポリペプチドのC末端または第2のポリペプチドのC末端のいずれかが、少なくとも1つのN連結グリコシル化コンセンサス部位を含むGDF15変異タンパク質のN末端にコンジュゲートされている複合体を、第1及び第2のポリペプチドを発現する宿主細胞が培養された培地から単離してよい。
【0210】
ある種の実施形態では、第1のヘテロ二量体及び第2のヘテロ二量体を含む複合体であって、第1のヘテロ二量体及び第2のヘテロ二量体のそれぞれが、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドを含み、第1のポリペプチドがIgG Fc配列を含み、そのIgG Fc配列が少なくとも1つの組み込まれた突起を含むCH3配列を含み;第2のポリペプチドがIgG Fc配列を含み、そのIgG Fc配列が少なくとも1つの組み込まれた空隙を含むCH3配列を含み;その際、第1のポリペプチドの突起が第2のポリペプチドの空隙内に位置することによって、第1のポリペプチドが第2のポリペプチドと二量化しており、第1のポリペプチドのC末端または第2のポリペプチドのC末端のいずれかが、少なくとも1つのN連結グリコシル化コンセンサス部位を含むGDF15変異タンパク質のN末端にコンジュゲートされていて、第1のヘテロ二量体におけるGDF15変異タンパク質が第2のヘテロ二量体におけるGDF15変異タンパク質と二量化し、それによって、第1のヘテロ二量体及び第2のヘテロ二量体を含む複合体を形成している複合体を、第1及び第2のポリペプチドを発現する宿主細胞が培養された培地から単離してよい。
【0211】
本明細書において言及するとおり、第1及び第2の核酸は、単一の宿主細胞または2つの異なる宿主細胞において単一のベクターまたは別々のベクター中に存在してよい。ある種のケースでは、本開示の第1及び第2のポリペプチドは、それぞれ、同じ細胞中に発現されて存在し得る第1及び第2の核酸によってコードされてよい。第1及び第2の核酸が異なる細胞中に存在する実施形態では、それらの細胞を、生成プロセス中のある時点で融合してもよい。
【0212】
当該複合体を、実質的に純粋か、または単離された形態(例えば、他のポリペプチドを非含有)で調製し得る。当該複合体は、存在し得る他の成分(例えば、他のポリペプチドもしくは他の複合体(例えば、ホモ二量体、ホモ四量体)または他の宿主細胞成分)に対して、複合体が濃縮された組成物で存在し得る。例えば、当該複合体が、他の発現タンパク質が実質的に非含有である、例えば、その組成物の90%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、または1%未満が、他の発現タンパク質からなる組成物で存在するように、精製された複合体(例えば、ヘテロ二量体−ヘテロ二量体複合体)を提供し得る。
【0213】
抗体
本開示は、本開示のポリペプチドまたは融合タンパク質に特異的に結合する単離抗体を含む抗体を提供する。「抗体」という用語は、インタクトなモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つのインタクトな抗体から形成される多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、ならびにFab及びF(ab)'
2を含む抗体結合断片を包含するが、ただし、それらが所望の生物学活性を呈することを条件とする。基本的な全抗体構造単位は四量体を含み、各四量体は2つの同一のポリペプチド鎖対から構成され、各対は、1つの「軽」鎖(約25kDa)と1つの「重」鎖(約50〜70kDa)とを有する。各鎖のアミノ末端部分は、主に抗原認識を担う約100〜110個またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を含む。対照的に、各鎖のカルボキシ末端部分は、主にエフェクター機能を担う定常領域を画定する。ヒトの軽鎖はカッパ及びラムダとして分類される一方で、ヒト重鎖はミュー、デルタ、ガンマ、アルファ、またはイプシロンとして分類され、それぞれ、IgM、IgD、IgG、IgA、及びIgEとして抗体のアイソタイプを定義する。結合断片は、組換えDNA技術によって、またはインタクトな抗体の酵素もしくは化学切断によって生成される。結合断片は、Fab、Fab'、F(ab')
2、Fv、及び単鎖抗体を含む。
【0214】
各重鎖は、一端に可変ドメイン(VH)を有し、続いて、いくつかの定常ドメインを有する。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(VL)を有し、そのもう他方の末端に定常ドメインを有し;その軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインとアラインされ、軽鎖可変ドメインは、重鎖の可変ドメインとアラインされる。軽鎖及び重鎖内で、可変領域及び定常領域は、約12個以上のアミノ酸の「J」領域によって結合され、重鎖は約10個以上のアミノ酸の「D」領域も含む。抗体の鎖はすべて、「相補性決定領域」または「CDR」とも呼ばれる3つの超可変領域によって結合された比較的保存されたフレームワーク領域(FR)の同じ一般構造を呈する。各対の2つの鎖からのCDRは、フレームワーク領域によってアラインされ、特定のエピトープへの結合を可能にする。N末端からC末端まで、軽鎖及び重鎖は両方とも、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4を含む。
【0215】
インタクトな抗体は2つの結合部位を有し、二機能性または二重特異性抗体を除き、その2つの結合部位は同一である。二重特異性または二機能性抗体は、2つの異なる重/軽鎖対、及び2つの異なる結合部位を有する人工的なハイブリッド抗体である。二重特異性抗体は、ハイブリドーマの融合、またはFab'断片の連結を含む様々な方法によって生成され得る。
【0216】
上述のとおり、結合断片は、インタクトな抗体の酵素または化学切断によって生成され得る。酵素パパインでの抗体の消化は、「Fab」断片としても公知の2つの同一な抗原結合断片、及び抗原結合活性を有しない「Fc」断片をもたらす。酵素ペプシンでの抗体の消化は、抗体分子の2つのアームが連結されたままであり、2つの抗原結合部位を含むF(ab')
2断片をもたらす。F(ab')
2断片は抗原を架橋する能力を有する。
【0217】
本明細書において使用する場合、「Fab」という用語は、VH及びVL領域、さらには、軽鎖の定常ドメインと重鎖のCH1ドメインとを含む抗体の断片を指す。
【0218】
本明細書において使用する場合、「Fv」という用語は、抗原認識及び抗原結合部位の両方を維持する抗体の最小断片を指す。2本鎖Fv種において、この領域は非共有結合性会合において1つの重鎖可変ドメイン及び1つの軽鎖可変ドメインの二量体を含む。単鎖Fv種において、1つの重鎖可変ドメイン及び1つの軽鎖可変ドメインは、軽鎖及び重鎖が2本鎖Fv種における構造に類似する「二量体」構造において会合することができるように、柔軟なペプチドリンカーによって共有結合性に連結され得る。各可変ドメインの3つのCDRがVH−VL二量体の表面上の抗原結合部位を画定するように相互作用するのは、この構成においてである。6つのCDRがまとまって、抗体に抗原結合特異性を付与するが、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的である3つのCDRのみを含むFvの半分)でさえ、抗原を認識し、結合する能力を有する。
【0219】
本明細書において使用する場合、「相補性決定領域」または「CDR」という用語は、特定のリガンドに接触し、その特異性を決定する免疫受容体の一部を指す。
【0220】
「超可変領域」という用語は、抗原結合性を担う抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は一般的に、CDRからのアミノ酸残基、及び/または「超可変ループ」からのそれらの残基を含む。
【0221】
本明細書において使用する場合、「エピトープ」という用語は、タンパク質抗原上の抗体の結合部位を指す。エピトープ決定基は通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面分類、さらには、特定の3次元構造特性及び電荷特性を含む。抗体は、解離定数が≦1μM、≦100nM、または≦10nMであるときに、抗体に結合すると言われている。平衡定数(「K
D」)の上昇は、エピトープと抗体との間の親和性が低いことを意味する一方で、平衡定数の低下は、エピトープと抗体との間の親和性が高いことを意味する。ある量を「超えない」K
Dを有する抗体は、抗体が所与のK
D以上で強くエピトープに結合することを意味する。K
Dはエピトープ及び抗体の結合特性を説明するが、「効力」は抗体の機能についての抗体自体の有効性を説明する。平衡定数と効力との間に相関は必ずしもなく;したがって、例えば、比較的低いK
Dが、高い効力を自動的に意味することはない。
【0222】
抗体に関して、「選択的に結合する」という用語は、その抗体が単一の物質だけに結合することを意味せず、むしろ第1の物質に対する抗体のK
Dが第2の物質に対する抗体のK
Dより低いことを意味する。1つのエピトープにのみ排他的に結合する抗体は、その単一エピトープに結合する。
【0223】
ヒトに投与する場合、げっ歯類(すなわち、マウスまたはラット)可変及び/または定常領域を含有する抗体は時折、例えば、身体からの迅速なクリアランス、または抗体に対する身体による免疫応答の発生に関連する。げっ歯類由来の抗体の利用を回避するために、完全ヒト抗体を、げっ歯類が完全ヒト抗体を生成するように、げっ歯類へのヒト抗体機能の導入を介して生成することができる。本明細書において特に特定されない限り、「ヒト」及び「完全ヒト」抗体を互換的に使用することができる。「完全ヒト」という用語は、部分的にのみヒトである抗体を、全く、または完全にヒトである抗体と識別するときに有用であり得る。当業者は、完全ヒト抗体を生成する様々な方法を分かっている。
【0224】
起こり得るヒト抗マウス抗体応答に対処するために、キメラまたはさもなければヒト化抗体を利用することができる。キメラ抗体は、ヒト定常領域及びマウス可変領域を有し、したがって、ヒト抗キメラ抗体応答が一部の患者において観察され得る。したがって、起こり得るヒト抗マウス抗体応答またはヒト抗キメラ抗体応答を避けるために、多量体酵素に対する完全ヒト抗体を提供することが有利である。
【0225】
完全ヒトモノクローナル抗体は、例えば、当業者に公知の技術によってハイブリドーマ細胞系を生成することによって調製され得る。他の調製方法は、CHO細胞などの適切な哺乳類宿主細胞の形質転換のための、特定の抗体をコードする配列の使用を伴う。形質転換は、例えば、ポリヌクレオチドをウイルス(またはウイルスベクターの中)にパッケージングし、そのウイルス(またはベクター)を宿主細胞に形質導入することを含む、ポリヌクレオチドを宿主細胞の中に導入するための任意の公知の方法によって、または当技術分野において公知の遺伝子導入手順によって行うことができる。異種ポリヌクレオチドを哺乳類細胞の中に導入するための方法は、当技術分野において周知であり、それには、デキストラン媒介遺伝子導入、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン媒介遺伝子導入、プロトプラスト融合、電気穿孔、リポソーム内へのポリヌクレオチド(複数可)の封入、及び核内へのDNAの直接微量注入が含まれる。発現の宿主として利用可能な哺乳類細胞系は、当技術分野において周知であり、それには、これらだけに限定されないが、CHO細胞、HeLa細胞、及びヒト肝細胞癌細胞が含まれる。
【0226】
当該抗体を、本開示のポリペプチドを検出するために使用することができる。例えば、対象において本開示の1つまたは複数のポリペプチドのレベルを検出し、かつ検出されたレベルを、標準的な対照レベルまたは以前に決定された対象における基線レベル(例えば、任意の病気前)のいずれかと比較することによって、当該抗体を診断剤として使用することができる。
【0227】
治療的及び予防的使用
本開示は、本明細書に記載のとおりの本開示の複合体またはその組成物を投与することによって、肥満及び他の体重障害、高血糖、インスリン過剰血症、グルコース不耐性、グルコース代謝障害などの代謝及び代謝関連の疾患を処置または予防するための方法を提供する。そのような方法は、例えば、症状の重症度または頻度を減少させることによって、疾患、障害、または状態に関連する1つまたは複数の症状に対して有利な作用も有し得る。
【0228】
対象が、本明細書において提供する方法によって体重障害(例えば、肥満)を処置または予防するための候補であり得るかを決定するために、これらだけに限定されないが、病因及び対象の状態の程度(例えば、参照の健康な個体と比較して、対象がどの程度過体重であるか)などのパラメータを評価すべきである。例えば、約25〜約29.9kg/m
2のBMIを有する成人は、過体重(肥満前)と判断され得る一方で、約30kg/m
2以上のBMIを有する成人は、肥満と判断され得る。本明細書において論述するとおり、本発明の複合体は、食欲抑制、例えば、食欲低下をもたらし、体重減少につながり得る。
【0229】
対象が、本明細書において提供する方法によって高血糖、インスリン過剰血症、グルコース不耐性、及び/もしくはグルコース障害を処置または予防するための候補であるかを決定するために、当技術分野において公知の様々な診断方法を利用してよい。そのような方法には、本明細書の別の箇所において記載するもの(例えば、空腹時血漿中グルコース(FPG)の評価及び経口ブドウ糖負荷試験(oGTT))が含まれる。
【0230】
本明細書において提供する複合体は、肥満及び他の体重障害、高血糖症、インスリン過剰血症、グルコース不耐性、グルコース代謝障害などの代謝及び代謝関連疾患を処置または予防するために対象に投与すると、血糖値の低下、体重の減少、及び/または食物摂取の減少をもたらし得る。
【0231】
ある種の実施形態では、本明細書において企図する複合体は、血糖値、体重、及び/または食物摂取を、その複合体の投与が非存在である場合と比較して少なくとも5%減少させ得る。例えば、本明細書において企図する複合体は、処置または予防の開始前のものと比較した場合に、血糖値、体重、及び/または食物摂取を少なくとも10%、20%、30%、50%、60%、70%、80%、または90%減少させ得る。
【0232】
ある種の実施形態では、代謝障害を処置するために使用される本開示の複合体は、複合体1つ当たり2個のヘテロ二量体分子を含み、その際、各ヘテロ二量体が同じで、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドを含み、第1のポリペプチドがIgG Fc配列を含み、そのIgG Fc配列が少なくとも1つの組み込まれた突起を含むCH3配列を含んでよく;第2のポリペプチドがIgG Fc配列を含み、そのIgG Fc配列が少なくとも1つの組み込まれた空隙を含むCH3配列を含み;その際、第1のポリペプチドの突起が第2のポリペプチドの空隙内に位置することを介して、第1のポリペプチドが第2のポリペプチドと二量化して、ヘテロ二量体を形成しおり、各ヘテロ二量体における第1のポリペプチドのC末端または第2のポリペプチドのC末端のいずれかが、少なくとも1つのN連結グリコシル化コンセンサス部位を含むGDF15変異タンパク質のN末端にコンジュゲートされており、ヘテロ二量体におけるGDF15変異タンパク質が、他方のヘテロ二量体におけるGDF15変異タンパク質と二量化し、それによって、2個のヘテロ二量体を含む複合体を形成している複合体であってよい。
【0233】
また他の実施形態では、代謝障害を処置するために使用される本開示の複合体は、複合体1個当たり2個のヘテロ二量体分子を含み(ヘテロ二量体と会合したヘテロ二量体)、その際、各ヘテロ二量体が同じであり、各ヘテロ二量体が、IgG Fc配列を有し、そのIgG Fc配列が少なくとも1つの組み込まれた突起を含むCH3配列を含み得、その際、第1のポリペプチドのC末端が、GDF15糖変異タンパク質のN末端に融合している第1のポリペプチドと、IgG Fc配列を含み、そのIgG Fc配列が少なくとも1つの組み込まれた空隙を含むCH3配列を含む第2のポリペプチドとを含み;その際、第1のポリペプチドの突起が第2のポリペプチドの空隙内に位置することを介して、第1のポリペプチドが第2のポリペプチドと二量化して、ヘテロ二量体を形成しており、ヘテロ二量体におけるGDF15変異タンパク質が、他方のヘテロ二量体におけるGDF15変異タンパク質と二量化し、それによって、2個のヘテロ二量体を含む複合体を形成している複合体であってよい
【0234】
医薬組成物
本開示の複合体は、対象に投与するために適した組成物の形態であり得る。一般的に、そのような組成物は、1つもしくは複数の複合体、及び1つもしくは複数の薬学的に許容される、もしくは生理学的に許容される希釈剤、担体、または添加剤を含む「医薬組成物」である。ある種の実施形態では、当該複合体は、医薬組成物中に治療有効量で存在する。当該医薬組成物を、本開示の方法において使用してよく;したがって、例えば、当該医薬組成物は、本明細書に記載の治療法及び予防法ならびに使用を実践するために、ex vivoまたはin vivoで対象に投与することができる。本明細書において言及するとおり、当該複合体は、グリコシル化されていても、またはされていなくてもよい。例えば、当該複合体は、真核宿主細胞において生成されるときにグリコシル化されてもよいし、医薬組成物へと製剤化する前に炭水化物部分を除去するためのプロセスを受けてもよい。炭水化物部分の除去は、当該複合体におけるポリペプチドのグリコシル化の顕著な低減または当該複合体におけるポリペプチドのグリコシル化の完全な非存在をもたらし得る。
【0235】
具体的な実施形態では、本開示は、複合体、N−グリコシル化複合体、またはその組成物を投与することによって、グルコース代謝障害または体重障害を処置するための方法を提供する。特定の実施形態では、本開示は、当該複合体、N−グリコシル化複合体、またはその組成物を投与することによる、食物摂取を減少させるか、または体重を減少させるための方法。本開示はさらに、肥満及び他の体重障害、高血糖症、インスリン過剰血症、グルコース不耐性、及びグルコース代謝障害などの代謝及び代謝関連疾患から選択される状態の処置において使用するための医薬品の製造における、上述の配列、複合体、N−グリコシル化複合体、またはその組成物の使用を提供する。本開示はさらに、グルコース代謝障害または体重障害の処置において使用するための医薬品の製造における、上述の配列、複合体、N−グリコシル化複合体、またはその組成物の使用を提供する。本開示はさらに、食物摂取または体重の減少において使用するための医薬品の製造における、上述の配列、複合体、N−グリコシル化複合体、またはその組成物の使用を提供する。
【0236】
肥満及び他の体重障害、高血糖症、インスリン過剰血症、グルコース不耐性、及びグルコース代謝障害などの代謝及び代謝関連疾患から選択される状態を処置または予防するための本明細書において開示する組成物、例えば、配列、複合体、及びN−グリコシル化複合体の医薬組成物も、本明細書において提供する。本開示はさらに、グルコース代謝障害または体重障害を処置するための上述の配列、複合体、またはN−グリコシル化複合体の組成物(例えば、医薬組成物)を提供する。本開示はさらに、食物摂取または体重を減少させるための上述の配列、複合体、またはN−グリコシル化複合体の組成物(例えば、医薬組成物)を提供する。
【0237】
本開示の医薬組成物は、意図する方法または投与経路に適合するように製剤化することができ;例示的な投与経路を本明細書において記述する。さらに、本開示によって企図される疾患、障害、及び状態を処置または予防するために、当該医薬組成物を、本明細書に記載のとおりの他の治療活性な薬剤または化合物(例えば、グルコース低下剤)と併用してよい。
【0238】
当該医薬組成物は典型的には、本開示によって企図される複合体の少なくとも1つの治療有効量と、1つまたは複数の薬学的及び生理学的に許容される製剤用薬剤とを含む。適切な薬学的に許容される、もしくは生理学的に許容される希釈剤、担体、または添加剤には、これらだけに限定されないが、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸及び重硫酸ナトリウム)、防腐剤(例えば、ベンジルアルコール、メチルパラベン、エチルもしくはn−プロピル、p−ヒドロキシベンゾアート)、乳化剤、懸濁化剤、分散剤、溶媒、充填剤、増量剤、界面活性剤、緩衝剤、ビヒクル、希釈剤、及び/またはアジュバントが含まれる。例えば、適切なビヒクルは、生理食塩水またはクエン酸緩衝生理食塩水であってよく、非経口投与用の医薬組成物に一般的な他の材料が補充されることもある。中性緩衝生理食塩水または血清アルブミンと混合された生理食塩水が、さらなる例示的なビヒクルである。当業者であれば、医薬組成物及び剤形において使用することができる様々な緩衝剤を容易に認識するであろう。典型的な緩衝剤には、これらだけに限定されないが、薬学的に許容される弱酸、弱塩基、またはそれらの混合物が含まれる。例として、緩衝剤の成分は、リン酸、酒石酸、乳酸、コハク酸、クエン酸、酢酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、及びそれらの塩などの水溶性材料であってよい。許容される緩衝剤には、例えば、トリス緩衝液、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N'−(2−エタンスルホン酸)(HEPES)、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸ナトリウム塩(MES)、3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、及びN−トリス[ヒドロキシメチル]メチル−3−アミノプロパンスルホン酸(TAPS)が含まれる。
【0239】
医薬組成物を製剤化した後、それを、溶液、懸濁液、ゲル、エマルジョン、固体、または無水もしくは凍結乾燥された粉末として減菌バイアルに保管し得る。そのような製剤は、直ちに使用可能な形態、使用前に再構成を必要とする凍結乾燥形態、使用前に希釈を必要とする液体形態、または他の許容される形態のいずれかで保管し得る。一部の実施形態では、当該医薬組成物を、単回使用容器(例えば、単回使用バイアル、アンプル、シリンジ、または自動注入装置(例えば、EpiPen(登録商標)に類似する))で提供する一方で、多回使用容器(例えば、多回使用バイアル)を他の実施形態では提供する。任意の薬物送達装置を、当該複合体を送達するために使用してよく、それには、移植片(例えば、移植可能なポンプ)及びカテーテル系が含まれ、その両方は当業者に周知である。一般的に皮下または筋肉内投与されるデポー注射剤も、定義された期間にわたって、本明細書に開示する複合体を放出するために利用してよい。デポー注射剤は通常、固系または油系のいずれかであり、本明細書に記述する製剤成分の少なくとも1つを一般的に含む。当業者であれば、デポー注射剤の考えられ得る製剤及び使用を熟知している。
【0240】
当該医薬組成物は、減菌注射用水性または油性懸濁液の形態であってよい。この懸濁液を、本明細書において上述したそれらの適切な分散剤または湿潤剤及び懸濁化剤を使用する公知の技術に従って製剤化してよい。当該減菌注射用製剤はまた、例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液などの非毒性で非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の減菌注射用液剤または懸濁剤であってよい。使用してもよい許容される希釈剤、溶媒、及び分散剤には、水、リンゲル溶液、等張性塩化ナトリウム溶液、Cremophor EL(商標)(BASF,Parsippany,NJ)、またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール)、及びそれらの適切な混合物が含まれる。加えて、減菌不揮発性油を、溶媒または懸濁媒として従来どおり使用する。この目的のために、合成モノまたはジグリセリドを含む、任意の無刺激性不揮発性油を使用してよい。さらに、オレイン酸などの脂肪酸を、注射剤の調製において使用する。特定の注射用製剤の吸収の延長を、吸収を遅延させる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチン)を含むことによって達成することができる。
【0241】
活性成分(例えば、本開示の複合体)を含有する医薬組成物は、例えば、錠剤、カプセル剤、トローチ剤、ロゼンジ剤、水性もしくは油性懸濁剤、分散性散剤もしくは顆粒剤、乳剤、硬カプセル剤もしくは軟カプセル剤、またはシロップ剤、液剤、ミクロビーズ剤、またはエリキシル剤として、経口使用に適切な形態であってよい。経口使用を意図されている医薬組成物は、医薬組成物を製造する分野において公知の任意の方法に従って調製され得、そのような組成物は、薬学的に優れていて、味の良い調製物を提供するために、例えば、甘味剤、香味剤、着色剤、及び防腐剤などの1つまたは複数の薬剤を含有してよい。錠剤、カプセル剤などは、錠剤の製造に適した非毒性の薬学的に許容される添加剤との混合物中に活性成分を含有する。これらの添加剤は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、またはリン酸ナトリウムなどの希釈剤;造粒剤及び崩壊剤、例えば、トウモロコシデンプンまたはアルギン酸;結合剤、例えば、デンプン、ゼラチン、またはアラビアゴム、ならびに潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、またはタルクであってよい。
【0242】
経口投与に適した錠剤、カプセル剤などを、胃腸管における崩壊及び吸収を遅延させ、それによって持続作用を提供するための公知の技術によってコーティングしてもよいし、またはコーティングしなくてもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの時間遅延材料を使用してもよい。それらを、当技術分野において公知の技術によってコーティングして、制御放出用の浸透性治療錠剤を形成してもよい。追加の薬剤には、投与された組成物の送達を制御するために、ポリエステル、ポリアミン酸、ヒドロゲル、ポリビニルピロリドン、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、エチレン−酢酸ビニル、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、硫酸プロタミン、もしくはラクチド/グリコリドコポリマー、ポリラクチド/グリコリドコポリマー、またはエチレン酢酸ビニルコポリマーなどの生分解性もしくは生体適合性粒子またはポリマー物質が含まれる。例えば、経口剤を、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセルもしくはポリ(メタクリル酸メチル)マイクロカプセルの使用によって、それぞれ、コアセルベーション技術によって、または界面重合によって調製されたマイクロカプセル、あるいはコロイド薬物送達系に封入することができる。コロイド状分散系には、高分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフェア、ミクロビーズ、及び脂質に基づく系(水中油型乳剤、ミセル、混合されたミセル、及びリポソームを含む)が含まれる。リポソームを調製する方法は、例えば、米国特許第4,235,871号、同第4,501,728号、及び同第4,837,028号において記載されている。上述の製剤を調製するための方法は当業者に明らかである。
【0243】
経口使用のための製剤をまた、活性成分が、不活性固形希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、カオリン、または微結晶セルロースと混合される硬ゼラチンカプセル剤として、あるいは活性成分が、水、または油性媒質、例えば、ラッカセイ油、流動パラフィン、もしくはオリブ油と混合される軟ゼラチンカプセル剤として提示してもよい。
【0244】
水性懸濁剤は、その製造に適した添加剤との混合物中に活性物質を含有する。そのような添加剤は、懸濁化剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニル−ピロリドン、トラガントガム、及びアラビアゴムであり得;分散剤もしくは湿潤剤は、例えば、天然に存在するリン脂質(例えば、レシチン)、またはアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合物(例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン)、またはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、またはエチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトール由来の部分エステルとの縮合物(例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレアート)、またはエチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトール無水物由来の部分エステルとの縮合物(例えば、ポリエチレンソルビタンモノオレアート)であり得る。水性懸濁剤は、1つまたは複数の防腐剤も含んでよい。
【0245】
油性懸濁剤は、活性成分を植物油、例えば、ラッカセイ油、オリブ油、ゴマ油、もしくはヤシ油中に、または流動パラフィンなどの鉱油中に懸濁させることによって製剤化し得る。油性懸濁液は、増粘剤、例えば、蜜蝋、固形パラフィン、またはセチルアルコールを含有してよい。上述のものなどの甘味剤及び香味剤を、味の良い経口剤を提供するために添加してよい。
【0246】
水の添加によって水性懸濁剤を調製するために適した分散性粉末及び顆粒は、分散剤または湿潤剤、懸濁化剤、及び1つまたは複数の防腐剤との混合物中に活性成分を提供する。適切な分散剤もしくは湿潤剤、及び懸濁化剤は、本明細書において例示する。
【0247】
本開示の医薬組成物はまた、水中油型乳剤の形態であってもよい。油相は、植物油、例えば、オリブ油もしくはラッカセイ油、または鉱油、例えば、流動パラフィン、またはこれらの混合物であってよい。適切な乳化剤は、天然に存在するガム、例えば、アラビアゴムもしくはトラガントガム;天然に存在するリン脂質、例えば、ダイズ、レシチン、及び脂肪酸由来のエステルまたは部分エステル;ヘキシトール無水物、例えば、ソルビタンモノオレアート;ならびに部分エステルとエチレンオキシドとの縮合物、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートであってよい。
【0248】
製剤は、移植片、リポソーム、ヒドロゲル、プロドラッグ、及びミクロ封入された送達系を含む制御放出製剤などの、迅速な分解または身体からの排除に対して組成物を保護するための担体も含むことができる。例えば、モノステアリン酸グリセリル、もしくはステアリン酸グリセリルなどの時間遅延材料を単独で、または蝋との組合せで使用してもよい。
【0249】
本開示は、薬物を直腸投与するための坐剤の形態での当該複合体の投与を企図する。当該坐剤は、通常の温度では固体であるが、直腸温度では液体であり、したがって、直腸で溶融して薬物を放出するために適切な非刺激性添加剤と薬物を混合することによって調製することができる。そのような材料には、これらだけに限定されないが、カカオバター及びポリエチレングリコールが含まれる。
【0250】
本開示によって企図される複合体は、現在既知の、また将来開発される任意の他の適切な医薬組成物の形態(例えば、鼻または吸入用途のためのスプレー)であってよい。
【0251】
製剤中のポリペプチドの複合体の濃度は、幅広く変動し得(例えば、約0.1質量%未満から、通常約2質量%または少なくとも約2質量%、多くて20質量%〜50質量%またはそれ以上)、主に、例えば、選択される特定の投与様式に従って、流体量、粘度、及び対象に基づく要因に基づき、通常選択される。
【0252】
Nano Precision Medicalデポー送達技術(Nano Precision Medical;Emeryville、CA)の使用を、本明細書において企図する。当該技術は、タンパク質及びペプチド治療薬などの高分子のゼロ次放出速度を生成するチタニアナノチューブ膜を利用する。その生体適合膜は、治療薬高分子の長期(例えば、最高1年)にわたる一定速度の送達をもたらす小さな皮下インプラントに収容される。当該技術は、II型糖尿病を処置するためのGLP−1アゴニストを送達するために現在評価中である。ある種の実施形態では、本明細書において開示する複合体(複数可)は、膜を含む製剤であってよい。例えば、当該複合体を、膜に含浸し、その膜で囲んでよい。当該膜は、ディスク、チューブ、または球体の形状であってよい。ある種の実施形態では、当該チューブはナノチューブであってよいか、または当該球体はナノ球体であってよい。
【0253】
投与経路
本開示は、任意の適切な手法での、本開示の複合体及びその組成物の投与を企図する。適切な投与経路には、非経口(例えば、筋肉内、静脈内、皮下(例えば、注射または移植片)、腹腔内、槽内、関節内、腹腔内、脳内(実質内)、及び脳室内)、経口、経鼻、経膣、舌下、眼内、直腸内、局所(例えば、経皮)、舌下、及び吸入が含まれる。
【0254】
一般的に皮下または筋肉内投与されるデポー注射剤も、定義された期間にわたって、本明細書において開示している複合体を放出するために利用してよい。デポー注射剤は通常、固系または油系のいずれかであり、本明細書に記述の製剤成分の少なくとも1つを一般的に含む。当業者は、デポー注射剤の考えられ得る製剤及び使用を熟知している。
【0255】
抗体に関して、例示的な一実施形態では、本開示の抗体または抗体断片を、注射用の減菌等張性水性生理食塩溶液に10mg/mlで、4℃で保管し、対象に投与する前に、注射のために100mlまたは200mlのいずれかの0.9%塩化ナトリウム中で希釈する。当該抗体を、0.2〜10mg/kgの用量で、1時間にわたって静脈内注入によって投与する。他の実施形態では、当該抗体を、15分〜2時間の期間にわたって静脈内注入によって投与する。なお他の実施形態では、投与手順は、皮下大量注射による。
【0256】
本開示は、本開示の複合体を少なくとも1日2回、少なくとも1日1回、少なくとも48時間毎に1回、少なくとも72時間毎に1回、少なくとも週に1回、少なくとも2週毎に1回、または月に1回、対象に投与する方法を企図する。
【0257】
併用療法
本開示は、1つまたは複数の活性治療薬または他の予防もしくは治療モダリティと併用しての、本明細書において提供する複合体の使用を企図する。そのような併用療法では、様々な活性薬剤は往々にして、異なる作用機序を有する。そのような併用療法は、薬剤の1つまたは複数の用量低減を可能にし、それによって、薬剤の1つまたは複数に関連する有害な作用を減少または排除することによって特に有利であり得;さらに、そのような併用療法は、基礎疾患、障害、または状態に対して相乗的な治療または予防作用を有し得る。
【0258】
本明細書において使用する場合、「併用」は、別個に投与され得る、例えば、別個に投与するために別個に製剤化される(例えば、キットにおいて提供され得るような)治療薬、及び単一の製剤で一緒に投与することができる(すなわち、共製剤化(co−formulation))治療薬を含むことを意味する。
【0259】
ある種の実施形態では、複合体を、順次投与または適用し、例えば、1つの薬剤を1つまたは複数の他の薬剤の前に投与する。他の実施形態では、当該複合体を同時に投与し、例えば、2つ以上の薬剤を同時にまたはほぼ同時に投与し;それらの2つ以上の薬剤は、2つ以上の別個の製剤に存在するか、または単一製剤に組み合わされてよい(すなわち、共製剤化)。2種以上の薬剤を順次に、または同時に投与するかどうかに関わらず、それらは本開示の目的のために併用して投与されると考える。
【0260】
本開示の複合体を、肥満、摂食障害、高血糖症、インスリン過剰血症、グルコース不耐性、及び他のグルコース代謝障害に罹患している対象に通常投与されるものを含む、本明細書において記述する疾患、障害、または状態の処置、予防、抑制、または寛解において有用な他の薬剤と併用することができる。
【0261】
本開示は、多数の薬剤(及びそのクラス)との併用療法を企図しており、それらの薬剤には、1)インスリン、インスリン模倣物質、及びスルホニル尿素を含む、インスリン分泌の刺激を伴う薬剤(例えば、クロロプロパミド、トラザミド、アセトへキサミド、トルブタミド、グリブリド、グリメピリド、グリピジド)及びメグリチニド(例えば、レパグリニド(PRANDIN)及びナテグリニド(STARLIX));2)ビグアニド(例えば、メトホルミン(GLUCOPHAGE))及びその薬学的に許容される塩、特に、Glumetza(商標)、Fortamet(商標)及びGlucophageXR(商標)などのメトホルミン塩酸塩及びその延長放出製剤)ならびにグルコース利用を促進すること、肝グルコース産生を減少させること、及び/もしくは腸管グルコース排出を減少させることによって作用する他の薬剤;3)アルファ−グルコシダーゼ阻害薬(例えば、アカルボーズ、ボグリボース、及びミグリトール)ならびに炭水化物消化、及びその結果として腸からの吸収を減速させ、食後の高血糖を減少させる他の薬剤;4)インスリン、及びインスリン模倣物質(例えば、インスリンデグルデク、インスリングラルギン、インスリンリスプロ、インスリンデテミル、インスリングルリジン、及びそれぞれの吸入可能な製剤)を含むインスリン作用を増強して(例えば、インスリン増感によって)、末梢組織におけるグルコース利用を促進するチアゾリジンジオン(例えば、ロシグリタゾン(AVANDIA)、トログリタゾン(REZULIN)、ピオグリタゾン(ACTOS)、グリピジド、バラグリタゾン、リボグリタゾン、ネトグリタゾン、AMG131、MBX2044、ミトグリタゾン、ロベグリタゾン、IDR−105、トログリタゾン、エングリタゾン、シグリタゾン、アダグリタゾン、ダルグリタゾン;5)DPP−IV阻害薬(例えば、アログリプチン、オマリグリプチン、リナグリプチン、ビルダグリプチン(GALVUS)、及びシタグリプチン(JANUVIA))を含むグルカゴン様ペプチド、ならびにグルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、ならびにGLP−1アゴニスト及び類似体(例えば、エクセナチド(BYETTA及びITCA650(12ヶ月の期間にわたってエクセナチド類似体を送達する皮下に挿入される浸透圧ポンプ;Intarcia,Boston,MA))ならびにGLP−1受容体アゴニスト(例えば、鼻腔内、経皮、及びその週1回製剤を含むデュラグルチド、セマグルチド、アルビグルチド、エクセナチド、リラグルチド、リキシセナチド、タスポグルチド、CJC−1131、及びBIM−51077);6)ならびにDPP−IV耐性類似体(インクレチン模倣物質)、PPARガンマアゴニスト、フェノフィブル酸誘導体などのPPARアルファアゴニスト(例えば、ゲムフィブロジル、クロフィブラート、シプロフィブラート、フェノフィブラート、ベザフィブラート)、二重作用性PPARアゴニスト(例えば、ZYH2、ZYH1、GFT505、チグリタザル(chiglitazar)、ムラグリタザル、アレグリタザル、ソデルグリタザル、及びナベグリタザル)、汎作用性PPARアゴニスト、PTP1B阻害薬(例えば、ISIS−113715及びTTP814)、SGLT阻害薬(例えば、ASP1941、SGLT−3、エンパグリフロジン、ダパグリフロジン、カナグリフロジン、BI−10773、PF−04971729、レモグロフロジン、TS−071、トホグリフロジン、イプラグリフロジン、及びLX−4211)、インスリン分泌促進物質、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(例えば、アラセプリル、ベナゼプリル、カプトプリル、セロナプリル、シラザプリル、デラプリル、エナラプリル、エナラプリラート、フォシノプリル、イミダプリル、リシノプリル、モベルチプリル、ペリンドプリル、キナプリル、ラミプリル、スピラプリル、テモカプリル、またはトランドラプリル)、アンジオテンシンII受容体アンタゴニスト(例えば、ロサルタン、すなわち、COZAAR(登録商標)、バルサルタン、カンデサルタン、オルメサルタン、テルメサルタン、及びHYZAAR(登録商標)などのヒドロクロロチアジドと併用されるこれらの薬物のいずれか)、またはLCZ696などの他の抗高血圧薬、RXRアゴニスト、グリコーゲンシンターゼキナーゼ−3阻害薬、免疫調節物質、交感神経遮断薬(sympatholitics)、ベータ−アドレナリン遮断薬(例えば、プロプラノロール、アテノロール、ビソプロロール、カルベジロール、メトプロロール、またはメトプロロール酒石酸塩)、アルファアドレナリン遮断薬(例えば、ドキサゾシン、プラゾシン、またはアルファメチルドーパ)中枢性アルファアドレナリンアゴニスト、末梢血管拡張薬(例えば、ヒドララジン);ベータ−3アドレナリン受容体アゴニスト、11ベータ−HSD1阻害薬、中性エンドペプチダーゼ阻害薬(例えば、チオルファン及びホスホラミドン)、アルドステロンアンタゴニスト、アルドステロンシンターゼ阻害薬、レニン阻害薬(例えば、ジ−及びトリ−ペプチドの尿素誘導体(米国特許第5,116,835号を参照されたい)、アミノ酸及び誘導体(米国特許第5,095,119号及び同第5,104,869号)、非ペプチド結合によって連結したアミノ酸鎖(米国特許第5,114,937号)、ジ−及びトリ−ペプチド誘導体(米国特許第5,106,835号)、ペプチジルアミノジオール(米国特許第5,063,208号及び同第4,845,079号)及びペプチジルベータ−アミノアシルアミノジオールカルバマート(米国特許第5,089,471号);同じく、次の米国特許第5,071,837号;同第5,064,965号;同第5,063,207号;同第5,036,054号;同第5,036,053号;同第5,034,512号、及び同第4,894,437において開示されているとおりの様々な他のペプチド類似体、ならびに小分子レニン阻害薬(ジオールスルホンアミド及びスルフィニル(米国特許第5,098,924号)、N−モルホリノ誘導体(米国特許第5,055,466号)、N−複素環式アルコール(米国特許第4,885,292号)、及びピロルイミダゾロン(米国特許第5,075,451);同じく、ペプスタチン誘導体(米国特許第4,980,283号)ならびにスタトン含有ペプチドのフルオロ−及びクロロ誘導体(米国特許第5,066,643)、エナルクレイン、RO42−5892、A65317、CP80794、ES1005、ES8891、SQ34017、アリスキレン(2(S),4(S),5(S),7(S)−N−(2−カルバモイル−2−メチルプロピル)−5−アミノ−4−ヒドロキシ−2,7−ジイソプロピル−8−[4−メトキシ−3−(3−メトキシプロポキシ)−フェニル]−オクタンアミドヘミフマラート)SPP600、SPP630、及びSPP635を含む)、エンドセリン受容体アンタゴニスト、ホスホジエステラーゼ−5阻害薬(例えば、シルデナフィル、タダルフィル(tadalfil)、及びバルデナフィル)、血管拡張薬、カルシウムチャネル遮断薬(例えば、アムロジピン、ニフェジピン、ベラパルミル、ジルチアゼム、ガロパミル、ニルジピン、ニモジピン、ニカルジピン)、カリウムチャネル活性化物質(例えば、ニコランジル、ピナシジル、クロマカリム、ミノキシジル、アプリルカリム(aprilkalim)、ロプラゾラム(loprazolam))、脂質低下薬、例えば、ラクトンプロドラッグ形態でZOCOR(登録商標)及びMEVACOR(登録商標)として販売され、投与後に阻害薬として機能するシンバスタチン及びロバスタチンなどのHMG−CoAレダクターゼ阻害薬、ならびにアトルバスタチン(特に、LIPITOR(登録商標)で販売されているカルシウム塩)、ロスバスタチン(特に、CRESTOR(登録商標)で販売されているカルシウム塩)、プラバスタチン(特に、PRAVACHOL(登録商標)で販売されているナトリウム塩)、セリバスタチン、及びフルバスタチン(特に、LESCOL(登録商標)で販売されているナトリウム塩)などのジヒドロキシ開環酸HMG−CoAレダクターゼ阻害薬の薬学的に許容される塩;上述のHMG−CoAレダクターゼ阻害薬などの任意の他の脂質低下薬と、特に、シンバスタチン(VYTORIN(登録商標))と、またはアトルバスタチンカルシウムと併用されるエゼチミベ(ZETIA(登録商標))及びエゼチミベなどのコレステロール吸収阻害薬;HDL上昇薬(HDL−raising drug)、(例えば、ナイアシン及びニコチン酸受容体アゴニスト、ならびにその長期−もしくは制御放出バージョン、及び/またはHMG−CoAレダクターゼ阻害薬を含むバージョン;アシピモックス及びアシフランなどのナイアシン受容体アゴニスト、さらには、ナイアシン受容体部分アゴニスト;グルカゴン受容体アンタゴニスト(例えば、MK−3577、MK−0893、LY−2409021、及びKT6−971);胆汁酸金属イオン封鎖剤(例えば、コレスチラン、コレスチミド、コレセベラム(colesevalam)塩酸塩、コレスチポール、コレスチラミン、及び架橋デキストランのジアルキルアミノアルキル誘導体)、アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害薬(例えば、アバシミベ);アスピリン、非ステロイド系抗炎症薬またはNSAID、グルココルチコイド、及び選択的シクロオキシゲナーゼ−2またはCOX−2阻害薬などの、炎症性状態における使用が意図される薬剤;グルコキナーゼ活性化物質(GKA)(例えば、AZD6370);11β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ1型の阻害薬(例えば、米国特許第6,730,690号において開示されているもの及びLY−2523199など);CETP阻害薬(例えば、アナセトラピブ、エバセトラピブ、及びトルセトラピブ);フルクトース1,6−ビスホスファターゼの阻害薬(例えば、米国特許第6,054,587号;同第6,110,903号;同第6,284,748号;同第6,399,782号;及び同第6,489,476号において開示されているものなど);アセチルCoAカルボキシラーゼ−1または2(ACC1またはACC2)の阻害薬;PCSK9阻害薬;GPR−40部分アゴニスト;SCD調節物質;脂肪酸シンターゼの阻害薬;アミリン及びアミリン類似体(例えば、プラムリンチド)が、化学的に考えられ得る上記活性薬剤の薬学的に許容される塩形態を含めて含まれる。
【0262】
さらに、本開示は、代謝を刺激する、または食欲を減少させる薬剤などの、体重減少を促進するための薬剤及び方法、ならびに体重減少を促進するための食事の変更及び/または運動レジメンとの併用療法を企図する。
【0263】
本開示の複合体は、その状況下に適した任意の手法で、1つまたは複数の他の薬剤と併用してよい。一実施形態では、少なくとも1つの活性薬剤及び少なくとも1つの本開示の複合体での処置を、一定時間にわたって維持する。別の実施形態では、少なくとも1つの活性薬剤での処置を削減または中断する(例えば、対象が安定している場合)一方で、本開示の複合体での処置を一定の投薬レジメンで維持する。さらなる一実施形態では、少なくとも1つの活性薬剤での処置を削減または中断する(例えば、対象が安定している場合)一方で、本開示の複合体(複数可)での処置を削減する(例えば、低用量、投薬頻度の減少、または処置レジメンの短縮)。また別の実施形態では、少なくとも1つの活性薬剤での処置を削減または中断し(例えば、対象が安定している場合)、本開示の複合体での処置を増大させる(例えば、高用量、投薬頻度の増大、または処置レジメンの延長)。また別の実施形態では、少なくとも1つの活性薬剤での処置を維持し、本開示の複合体での処置を削減または中断する(例えば、低用量、投薬頻度の減少、または処置レジメンの短縮)。また別の実施形態では、少なくとも1つの活性薬剤での処置及び本開示の複合体(複数可)での処置を削減または中断する(例えば、低用量、投薬頻度の減少、または処置レジメンの短縮)。
【0264】
投薬
本開示の複合体を、例えば、投与の目標(例えば、所望される解消程度);処置される対象の年齢、体重、性別、ならびに健康及び身体状態;当該ポリペプチドの性質、及び/または投与される製剤;投与経路;ならびに疾患、障害、状態、またはその症状の性質(例えば、グルコース/インスリンの調節不全の重症度、及び障害の段階)に依存する量で、対象に投与してよい。当該投薬レジメンは、投与される薬剤に関連する任意の有害作用の存在、性質、及び程度も考慮に入れてよい。有効な投薬量及び投薬レジメンは、例えば、安全性及び用量漸増試験、in vivo研究(例えば、動物モデル)、及び当業者に公知の他の方法から容易に決定することができる。
【0265】
一般的に、投薬パラメータは、その投薬量が、対象に対して不可逆的に有害であり得る量未満(すなわち最大許容量、「MTD」)であり、対象に対して測定可能な作用を生成するために必要とされる量以上であることを必要とする。そのような量は、投与経路及び他の要因を考慮に入れて、例えば、吸収、分布、代謝、及び排出に関連する(「ADME」)薬物動態及び薬力学的パラメータによって決定される。
【0266】
有効量(ED)は、それを服用する対象の一部の割合において、治療反応または所望の作用を生成する薬剤の用量または量である。薬剤の「半有効量」またはED50は、それを投与される個体群の50%において、治療反応または所望の作用を生成する薬剤の用量または量である。ED50は通常、薬剤の作用の妥当な予測の尺度として使用されるが、これは、すべての関連要因を考慮に入れると、必ずしも、臨床医が適切であると判断し得る用量ではない。したがって、一部の状況では、有効量は計算されたED50超であり、他の状況では、有効量は計算されたED50未満であり、またさらに他の状況では、有効量は計算されたED50と同じである。
【0267】
加えて、本開示の複合体(複数可)の有効量は、対象に1つまたは複数の用量で投与した場合に、健康な対象に対して所望の結果を生成する量であり得る。例えば、有効用量は、高血漿中グルコース及び/または血漿中インスリンを有する対象に投与されたときに、健康な対象のそれらに対して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または80%超の所望の減少を達成する量であり得る。
【0268】
適切な投薬レベルは一般的に、1日当り約0.001〜100mg/患者体重1kgであり、これを単回または複数回の用量で投与することができる。一部の実施形態では、投薬レベルは、1日当り約0.01〜約25mg/kgであり、他の実施形態では、1日当り約0.05〜約10mg/kgである。適切な投薬レベルは、1日当り約0.01〜25mg/kg、1日当り約0.05〜10mg/kg、または1日当り約0.1〜5mg/kgであり得る。この範囲内で、投薬量は、1日当り0.005〜0.05、0.05〜0.5、または0.5〜5.0mg/kgであり得る。
【0269】
経口剤の投与では、当該組成物を、活性成分1.0〜1000ミリグラム、特に、活性成分1.0、3.0、5.0、10.0、15.0、20.0、25.0、50.0、75.0、100.0、150.0、200.0、250.0、300.0、400.0、500.0、600.0、750.0、800.0、900.0、及び1000.0ミリグラムを含有する錠剤、カプセル剤などの形態で提供することができる。当該複合体を、例えば、1日1〜4回、多くの場合には、1日1回または2回のレジメンで投与してよい。
【0270】
本開示の複合体(複数可)の投薬を、当該複合体の薬物動態(例えば、半減期)及び薬力学的応答(例えば、当該複合体の治療効果の持続時間)に応じて、1日1回〜毎月1回の範囲であってよい、適切な頻度で繰り返してよい。一部の実施形態では、投薬を1週間に1回、2週毎に1回、毎月1回の間で頻繁に繰り返す。他の実施形態では、複合体を、ほぼ1ヶ月に1回投与してよい。
【0271】
ある種の実施形態では、開示している複合体の投薬量は、「単位剤形」に含有される。「単位剤形」という語句は、物理的に分離した単位を指し、各単位は、単独か、または1つもしくは複数の追加の薬剤との併用のいずれかで、所望の作用を生成するために十分な所定量の本開示の複合体を含有する。単位剤形のパラメータは、特定の薬剤及び達成される作用に左右されることは分かるであろう。
【0272】
キット
本開示は、本開示の複合体(複数可)、及びその医薬組成物を含むキットも企図する。当該キットは一般的に、以下に記載するとおりの様々な成分を収容する物理的構造の形態であり、例えば、上述の方法の実行(例えば、体重減少を必要とする対象への複合体の投与)において利用され得る。
【0273】
キットは、対象への投与に適した医薬組成物の形態であってよい、本明細書において開示する複合体(複数可)の1つまたは複数を含むことができる(例えば、減菌容器内で提供される)。当該複合体(複数可)は、すぐに使用できる形態で、または例えば、投与前に再構成または希釈を必要とする形態で提供され得る。複合体(複数可)がユーザによって再構成される必要がある形態である場合、当該キットは、当該複合体(複数可)と共に、または別個にパッケージングされた緩衝液、薬学的に許容される添加剤なども含んでもよい。併用療法を企図する場合、当該キットは別個にいくつかの薬剤を含有してよいか、またはそれらは当該キットに既に組み合わされていてよい。当該キットの各成分を個々の容器内に封入することができ、様々な容器のすべては、単一のパッケージ内にあり得る。本開示のキットを、その中に収容された成分を適切に保持するために必要な状態(例えば、冷却または凍結)のために設計することができる。
【0274】
キットは、その中の成分についての情報及びそれらの使用説明書(例えば、作用機序、薬物動態及び薬力学、有害作用、禁忌などを含む、活性成分(複数可)の投薬パラメータ、臨床薬理)を特定することを含むラベルまたは添付文書を含んでよい。ラベルまたは文書は、ロット番号及び有効期限などの製造情報を含むことができる。当該ラベルまたは添付文書は、例えば、成分を収容する物理的構造に統合されるか、物理的構造内に別個に収容されるか、またはキットの成分(例えば、アンプル、チューブ、またはバイアル)に添付されてよい。例示的な説明書には、開示の調節物質、及びその医薬組成物での血糖の減少または低下、高血糖の処置、糖尿病の処置などのための説明書が含まれる。
【0275】
加えて、ラベルまたは文書には、ディスク(例えば、ハードディスク、カード、メモリディスク)、光学ディスク(CD−もしくはDVD−ROM/RAMなど)、DVD、MP3、磁気テープ、または電気記憶媒体(RAM及びROMなど)、またはこれらのハイブリッド(磁気/光学記憶媒体、FLASHメディア、もしくはメモリ型カードなど)などのコンピュータ可読媒体が含まれるか、それに組み込むことができる。一部の実施形態では、実際の説明書は、当該キットに存在しないが、例えば、インターネットを介して遠隔源から説明書を得るための手段が提供される。
【実施例】
【0276】
実験
次の実施例は、当業者に、本発明をどのように作製及び使用するかの完全な開示及び説明を提供するように提示され、本発明者らが自身の発明とみなすものの範囲を限定するようには意図されておらず、以下の実験が全てまたは唯一の実行される実験であると示すようにも意図されていない。使用される数値(例えば、量、温度等)に関して確度を確保する努力が成されているが、多少の実験誤差及び偏差が計上されるはずである。
【0277】
別段に示さない限り、部は、質量部であり、分子量は、重量平均分子量であり、温度は、摂氏温度(℃)であり、圧力は、大気圧であるか、またはそれに近い。次を含む標準的な略語を使用する:bp=塩基対(複数可);kb=キロベース(複数可);pl=ピコリットル(複数可);sまたはsec=秒(複数可);min=分(複数可);hまたはhr=時間(複数可);aa=アミノ酸(複数可);kb=キロベース(複数可);nt=ヌクレオチド(複数可);ng=ナノグラム;μg=マイクログラム;mg=ミリグラム;g=グラム;kg=キログラム;dlまたはdL=デシリットル;μlまたはμL=マイクロリットル;mlまたはmL=ミリリットル;lまたはL=リットル;μM=マイクロモル;mM=ミリモル;M=モル;kDa=キロダルトン;i.m.=筋肉内(に);i.p.=腹腔内(に);s.c.=皮下(に);bid=1日2回;HPLC=高速液体クロマトグラフィー;BW=体重;U=単位;ns=統計的に有意ではない;PG=空腹時血漿中グルコース;FPI=空腹時血漿中インスリン;ITT=インスリン耐性試験;PTT=ピルビン酸耐性試験;oGTT=経口ブドウ糖負荷試験;GSIS=グルコース刺激されたインスリン分泌;PBS=リン酸緩衝生理食塩水;PCR=ポリメラーゼ連鎖反応;NHS=N−ヒドロキシスクシンイミド;DMEM=ダルベッコ変法イーグル培地;GC=ゲノムコピー;EDTA=エチレンジアミン四酢酸。
【0278】
材料及び方法
次の方法及び材料を以下の実施例において使用した。
【0279】
動物。食餌誘発性肥満の(DIO)雄C57BL/6Jマウス(The Jackson Laboratory,Bar Harbor,ME)を、脂肪60kcal%、タンパク質20kcal%、及び炭水化物20kcal%を含有する高脂肪食(D12492、Research Diets,Inc,New Brunswick,NJ)で12〜20週間にわたって飼育した。すべての動物研究は、NGM Institutional Animal Care and Use Committeeによって承認された。DIO C57BL/6Jマウスは、その肥満がカロリーの過剰摂取に基づく、肥満のヒト様モデルを示す。C57BL/6Jマウスは肥満しやすく、顕著な体重増加、さらには、インスリン過剰血症及び時折、高血糖症が観察される。その系統は、食事性肥満をモデリングするために最も一般的に使用されるマウス系である。(Nilsson C., et al., Acta Pharmacologica Sinica (2012) 33: 173−181)。
【0280】
核酸及びアミノ酸配列。GenBankアクセッション番号BC000529.2は、ヒトGDF15変異体をコードするORFのcDNAを示し、GenBankアクセッション番号NP_004855.2は、cDNAによってコードされるアミノ酸配列を示す。Fc−融合パートナーのcDNAをInvivoGenで購入し(pFUSE−CHIg−hG1、GenBank:AY623427.1、タンパク質ID=AAT49050)、示されているとおりに修飾した。pFUSE−CHIg−hG1ベクターによってコードされるFc−融合パートナーのアミノ酸配列は:
(配列番号:55)
である。
【0281】
発現コンストラクトの構築。哺乳類発現ベクターpTT5(National Research Council Canada)を、PmeIとEcoRI部位との間にKozak要素及びヒトIgK−シグナルペプチド配列:
(配列番号:56)を挿入することによって修飾した。両方の制限部位を除去する一方で、分泌される因子のさらなるインフレームクローニングのために、AgeI部位を作製した。単一断片挿入(例えば、ヒトIgG1のFc部分)のために、In−Fusion技術(Clontech)を使用した。2つ以上のPCR生成断片(すなわち、hIgG1−Fc+GDF15)を挿入するために、本発明者らは、製造プロトコルに従ってGibson Assembly Master Mix(NEB)を使用した。すべてのPCR断片を、Sapphire PCRミックスによって増幅し、Qiagen Gel Extractionキットを使用してゲル精製した。TOP10 Electroコンピテント細胞(Life Technologies)をクローニング反応で形質転換し、カルベニシリンを含有するLB寒天プレート上に播種し、終夜37℃でインキュベートした。単一コロニーを取り出し、配列決定によって分析した。陽性コロニーからのDNAを増幅し(DNA−Maxi−prep、Qiagen)、全配列を確認し、組換えタンパク質発現のために哺乳類細胞に遺伝子導入するために使用した。
【0282】
特異的変異タンパク質を作製するために、製造プロトコルに従ってQuikChange LightningまたはQuikChange Lightning Multi Site−Directed Mutagenesis Kits(Agilent)のいずれか、及び適切なプライマーを用いて、部位特異的変異誘発を行った。
【0283】
(Fc/Fc)−GDF15融合分子、野生型GDF15、及びGDF15−糖変異タンパク質の発現。すべての分子を、一過性遺伝子導入されたin Expi 293F細胞(Invitrogen Corporation、Carlsbad、CA)から回収した。細胞を、Expi発現培地(Invitrogen)中で定期的に継代し、様々なサイズの振盪フラスコ内で懸濁培養として維持した。典型的には、細胞を5e5生細胞/mlの細胞密度で継代し、3日間にわたって増殖させた後に継代した。そのフラスコを、110RPMの撹拌速度でNew Brunswickシェーカープラットフォーム(New Brunswick Scientific Company,Edison,NJ)上で、加湿CO
2インキュベーター(37℃及び5%CO
2)内に維持した。
【0284】
培養物の細胞密度が95%超の生存率で2.5e6生細胞/mLに達したときに、遺伝子導入を行った。典型的には、遺伝子導入50mLで、2.5e6細胞/mL×50mLの細胞を、培養物体積42.5mLで250mL振とうフラスコに接種した。問題の遺伝子を含有する発現ベクターから成るプラスミドDNA50マイクログラム(50μg)を最初に、OPTI−MEM低血清培地(Invitrogen)2.5mL中で希釈した。同時に、Expifectamineトランスフェクション試薬(Invitrogen)2.67倍体積(プラスミドDNAの量に対して)も、OPTI−MEM低血清培地2.5mL中で希釈した。室温での5分間にわたるインキュベーションの後に、希釈した遺伝子導入試薬を、希釈したプラスミドDNAにゆっくりと添加して、遺伝子導入コンピテント複合体を形成した。さらに20分間にわたる室温でのインキュベーション期間の後に、遺伝子導入複合体5mLを、細胞培養物42.5mLに添加した。次いで、遺伝子導入された細胞を、110RPMで維持されるオービタルシェーカー上の加湿CO
2インキュベーターに配置した。遺伝子導入から24時間後に、遺伝子導入された培養物に、エンハンサー1溶液250μL(Invitrogen)及びエンハンサー2溶液2.5mL(Invitrogen)を供給した。次いで、培養物を、オービタルシェーカー上の加湿CO
2インキュベーターに再配置した。遺伝子導入から6〜7日後に、3000RPMで30分間にわたって遠心分離し、その後、0.2μmフィルター(Nalgene)を通して濾過することによって、培養物を採取した。次いで、サンプルを、発現に関してクマシー(commassie)染色ゲル上で分析した。
【0285】
組換えタンパク質の精製。馴化培地(CM)中で発現された(Fc/Fc)−GDF15分子を、精製後に回収量及び活性について評価した。CMを、20mg/樹脂mL以下の装填容量でmAb SelectSuReカラム(GE)に通した。回収量の評価では、CM体積は、50mL〜1000mLの範囲であった。CMのmAb SelectSuRe装填の後に、カラムを1倍PBS(Corning Cellgro)5〜10カラム体積で洗浄し、低pHグリシン緩衝液(Polysciences Inc)でのステップ溶離を続けた。溶離の後に、(Fc/Fc)−GDF15貯留物を、1MトリスpH8.0(Teknova)でpH中和し、次いで、1倍PBS(Corning Cellgro)中で予め平衡化させておいたSuperdex200(GE)カラム上に注入した。(Fc/Fc)−GDF15インタクトな完全にアセンブルされた分子の画分を貯留し、純度について評価し、適切な吸光係数及び分子量を使用してA280方法によって定量して、出発CM体積に基づき回収量を決定した。完全にアセンブルされた分子は、2個のヘテロ二量体の二量体−二量体複合体であった。各ヘテロ二量体は、ノブ−イン−ホール相互作用を介してFc−GDF15糖変異タンパク質と会合したFcを有し、2個のヘテロ二量体は、GDF15−GDF15相互作用を介して会合した。
【0286】
WT GDF15及びGDF15糖変異タンパク質の精製。イオン交換捕捉を使用して、Fcにコンジュゲートされていない野生型GDF15及びGDF15糖変異タンパク質を培養培地から精製した。宿主細胞タンパク質不純物からの最適な溶離及び分離に適した塩/pH導電性(conducive)の勾配を使用して、WT GDF15及びGDF15糖変異タンパク質を溶離した。次いで、GE HiTrap Phenyl HPを使用し、pH8.0で硫酸アンモニウムの漸減直線勾配を使用して、すべてのGDF15分子をさらに精製した。画分を評価し、非還元型SDS−PAGEゲル上でのゲルシフトによって、純度及びグリコシル化特性に基づき貯留した。(Fc/Fc)−GDF15分子と同様に、IgKシグナルペプチドを使用して、野生型GDF15及びGDF15糖変異タンパク質を発現させた。
【0287】
実施例1:ヘテロ二量体ノブ−イン−ホール(Fc/Fc)−GDF15融合分子の設計
Fc−GDF15設計は、
図1において記載されており、一次配列は、下記に示されている(コンストラクトB1a/b〜B19a/b)。Fc−GDF15分子の生成アセンブリを達成するために、効率的なシステムを設計して、GDF15/GDF15二量化を可能にしつつ、Fc/Fc二量化を可能にした。単鎖Fc−GDF15のミスフォールディング及び凝集の可能性を回避するために、ヘテロ二量体融合パートナーをFc/Fc相互作用のために設計して、高忠実度のGDF15/GDF15ホモ二量化を可能にした。ノブ−イン−ホールFc/Fcヘテロ二量体を、GDF15アセンブリ及びExpi293F一過性系からの分泌に対処するように設計した。(G
4S)
nリンカー(n=2、3、4、または5)及びGDF15とカップリングさせた[T366Y(ノブ)//Y407T(ホール)]または[T366W(ノブ)//T366S−L368A−Y407V(ホール)]システムを使用して、Fc/Fcヘテロ二量体ノブ−イン−ホールシステムを評価した。FcのCH3ドメインにおけるアミノ酸位のナンバリングは、EUナンバリングシステムに基づくことに留意する(Edelman, G.M. et al., Proc. Natl. Acad. USA, 63, 78−85 (1969))。すべてのケースにおいて、Fc−融合(ノブ/ホール)パートナーを、アミノ酸残基A1〜I112、R2〜I112、N3〜I112、G4〜I112、D5〜I112、H6〜I112、またはC7〜I112を含む成熟GDF15のN末端にカップリングさせた。N末端での配列(ARNGDH、配列番号:95)が、タンパク質分解感受性の部位として予め実証されていて、N末端短縮化が、これらのN末端短縮化を含まないGDF15よりも優れた安定性をもたらすので、GDF15のN末端短縮化(Δ1=R2〜I112、Δ2=N3〜I112、Δ3=G4〜I112、Δ4=D5〜I112、Δ5=H6〜I112、またはΔ6=C7〜I112)を安定性の増強のために導入した。
【0288】
図1A〜1Dは、2つの分子間ジスルフィド結合を含有する野生型IgGヒンジとカップリングしているか、ヒンジドメインを伴わない(Δヒンジ)かのいずれかで、Fc−GDF15上のノブ対ホール(鎖A)が、ヘテロ二量体Fcパートナー上の対応するホール対ノブ(鎖B)とカップリングした配置を示している。当該Fcヘテロ二量体ノブまたはホールA/B鎖では、AA変異
をIgG1エフェクター機能性の除去のために導入した。(Fc/Fc)−GDF15ヘテロ二量体ノブ−イン−ホール設計をアセンブリについて発現プロファイルし、
図2Aにおいて報告する。すべてのケースで、ノブ−イン−ホール(Fc/Fc)−GDF15の一過性発現は、精製の後に、正確にアセンブリされた生成物0mg/L〜74.9mg/Lの回収量をもたらした(0=凝集物/発現なし、<25mg/L、25mg/L〜49.9mg/L、50mg/L〜74.9mg/L、75mg/L〜99.0mg/L、>100mg/L)。すべての場合に、ノブ−イン−ホールヘテロ二量体Fc/Fc−GDF15分子のアセンブリ及び分泌は、Fc(ホール):Fc(ホール)、Fc(ノブ):Fc(ノブ)、Fc(ノブ)−GDF15:Fc(ノブ)−GDF15及びFc(ホール)−GDF15:Fc(ホール)−GDF15などのミスフォールディングされたホモ二量体種の様々な混入レベルを伴った。発現プロファイリングに基づき、ヘテロ二量体Fcパートナー鎖上のT366S−L368A−Y407V(ホール)とカップリングされた、Fc−GDF15鎖上に配置されたT366W(ノブ)(
図1D)は、Fc/Fc−ホモ二量体生成物の最大安定性及び最小化ミスペアリングで、生成物を生成することが見出された(
図2A、変異体B5a/B5b)。この設計が、さらなる発現操作及び最適化の焦点となった。
【0289】
一過性に発現されたExpi 293F源からの変異体B5a/B5bの回収量は、0.0mg/L〜24.9mg/Lの範囲の回収量を示した。発現、アセンブリ、及び回収量を増強するために、N−グリコシル化部位をGDF15の成熟配列内に導入した(
図1F)。設計されたコンストラクトにおいて、GDF15上の単一N連結グリカンコンセンサス部位の存在は、完全成熟(Fc/Fc)−GDF15ノブ−イン−ホールヘテロ二量体B5a/B5bの発現、アセンブリ、及び回収量を著しく改善した(
図2A、変異体B9a/B9b〜B19a/B19b)。リンカー長は、in vitroアッセイを介して受容体結合及び活性について、(G
4S)
nでn=5の場合に最適であることが見出された。D5T位上のグリカンの存在は、成熟GDF15のN3位上の一次脱アミド部位を完全に除去し、実施例2において証明されるとおり、分子の安定性をさらに増強すると考えられる。
【0290】
GDF15の配列内のN連結グリカンの存在は、発現を助け、分泌プロセス中の小胞体及びゴルジ体内での滞留時間の増大による蓄積から、ミスフォールディングされた生成物を最小化すると示される。この追加の滞留時間は、フォールディング反応速度に対して有益効果を有すると提案され、著しく改善されたヘテロ−二量体(Fc/Fc)ノブ−イン−ホールペアリング及び哺乳類組織培養からの回収量を可能にする。
【0291】
変異体(B1a/b−B19a/b)の配列を下記に示す。下記に示す配列において、ヒトIgKシグナルペプチドに、下記のケースでは、Fc配列が続く。リンカー及びGDF15配列も含む配列では、Fc配列に、リンカー配列(下線)が続き、それに、GDF15配列(太字)が続く。当該Fc配列におけるアミノ酸置換の位置のナンバリングは、EUナンバリングに基づき、その置換は、ヒトIgG1Fc(配列番号:2)において対応する位置に存在するアミノ酸を参照している。GDF15配列におけるN末端欠失及びアミノ酸置換(複数可)のナンバリングは、野生型ヒト成熟GDF15(配列番号:1)を参照している。
【0292】
【0293】
図2Bに列挙した野生型ヒト成熟GDF15(配列番号:1)及びGDF15糖変異タンパク質の配列は次のとおりである:
【0294】
IgK−野生型ヒト成熟GDF15
【0295】
【0296】
293細胞によって発現されるシグナルペプチダーゼによって、分泌されたポリペプチドから切断されるIgKシグナルペプチドを使用して、GDF15分子を発現させた。野生型ヒト成熟GDF15(配列番号:1)及びGDF15糖変異タンパク質の回収量を
図2Bにおいて列挙する。
【0297】
Fc−Fc(ノブ/ホール)GDF15糖変異タンパク質として発現され得る例示的なGDF15糖変異タンパク質は、2015年7月28日出願の米国特許出願第14/811,578号において記載されている。
【0298】
実施例2:DIOマウスモデルにおける体重及び食物摂取に対する、(Fc/Fc)−GDF15融合分子の効果
体重に対する、組換えヒトGDF15に融合した組換えFc−ヘテロ二量体(すなわち、各ヘテロ二量体がFc−GDF15糖変異タンパク質ポリペプチドと二量化したFcポリペプチドを有する2個のヘテロ二量体の複合体)を有する皮下投与された融合分子の効果を35日間にわたって評価した。簡単には、当該融合分子B9a/B9b、B11a/B11b、及びB13a/B13bを、0.4nmol/kg及び4nmol/kgの用量で、単一皮下大量注射(10mL/kg)として、体重約35〜40gのDIOマウスに毎週1回、21日間にわたって投与した。ビヒクル対照または融合分子の投与後に、21日間のタンパク質投薬、続く、14日間のウォッシュアウト(投与後)からなる35日間にわたる様々な時点で体重減少をモニターして、有効性をモニターした。
【0299】
図3〜6において図示されているとおり、0.4nmol/kg及び4nmol/kgの用量での当該Fc融合分子(ヘテロ二量体−ヘテロ二量体複合体)の投与は、有意な体重減少をもたらした。マウスの各群において、各規定の時点で、ビヒクル対照群と比較する独立ステューデントt検定によって、n=6及びp値(
*、p<0.05;
**、p<0.01;
***、p<0.001、ns=非有意)を決定した。
図7において図示されているとおり、合計体重がSEM分析と共に、全群について各サンプリング時点で示されている。
図8において示されているとおり、体重(g)の変化がSEM分析及びp値と共に、全群について各サンプリング時点で示されている。
図9において示されているとおり、体重(%)のパーセント変化がSEM分析及びp値と共に、全群について各サンプリング時点で示されている。
【0300】
図3及び5において図示されているとおり、0.4nmol/kg用量試験において、B9a/B9b及びB11a/B11bと比較した場合に、B13a/B13bで体重減少における有効性の増大が観察される。B13a/B13bでin vivo有効性の増大は、GDF15の2個のN末端残基の短縮化(ΔAR)による安定性の増強に帰せられる。
【0301】
本発明を実施するために発明者らに公知の最良の形態を含む、本発明の特定の実施形態が本明細書において記載されている。前述の記載を読むことで、開示している実施形態の変形形態は当業者に明らかとなり得、当業者であれば、そのような変形形態を適切に使用することができることが期待される。したがって、本発明が本明細書に特別に記載したものとは別段に実践され、かつ本発明が、適用法令に認められる限り、本明細書に添付の特許請求の範囲に記載の対象の全ての変更形態及び等価物を含むことが意図されている。さらに、それらの全ての考えられ得る変形形態での上記の要素のいずれの組み合わせも、本明細書において別段に示さない限り、または文脈によって別段に明らかに矛盾しない限り、本発明に包含される。
【0302】
本明細書において引用した全ての刊行物、特許出願、アクセッション番号、及び他の参照文献は、各個別の刊行物または特許出願が、具体的かつ個別に参照によって組み込まれることが示されている場合と同様に、参照によって本明細書に組み込まれる。