特許第6722185号(P6722185)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6722185触媒およびその調製方法、ならびに当該触媒を利用することによるイソブチレンの調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6722185
(24)【登録日】2020年6月23日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】触媒およびその調製方法、ならびに当該触媒を利用することによるイソブチレンの調製方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/14 20060101AFI20200706BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20200706BHJP
   B01J 37/10 20060101ALI20200706BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20200706BHJP
   B01J 37/00 20060101ALI20200706BHJP
   B01J 23/835 20060101ALI20200706BHJP
   B01J 23/62 20060101ALI20200706BHJP
   C07C 1/20 20060101ALI20200706BHJP
   C07C 1/24 20060101ALI20200706BHJP
   C07C 11/09 20060101ALI20200706BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20200706BHJP
【FI】
   B01J23/14 Z
   B01J35/10 301G
   B01J37/10
   B01J37/04 102
   B01J37/00 F
   B01J23/835 Z
   B01J23/62 Z
   C07C1/20
   C07C1/24
   C07C11/09
   !C07B61/00 300
【請求項の数】26
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2017-529257(P2017-529257)
(86)(22)【出願日】2015年11月25日
(65)【公表番号】特表2017-537781(P2017-537781A)
(43)【公表日】2017年12月21日
(86)【国際出願番号】CN2015095547
(87)【国際公開番号】WO2016086781
(87)【国際公開日】20160609
【審査請求日】2018年8月29日
(31)【優先権主張番号】201410717045.0
(32)【優先日】2014年12月3日
(33)【優先権主張国】CN
(31)【優先権主張番号】201410717041.2
(32)【優先日】2014年12月3日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】509020424
【氏名又は名称】中國石油化工股▲フン▼有限公司撫順石油化工研究院
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】張淑梅
(72)【発明者】
【氏名】周峰
(72)【発明者】
【氏名】喬凱
(72)【発明者】
【氏名】▲テキ▼慶銅
(72)【発明者】
【氏名】王春梅
【審査官】 壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第1853772(CN,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0178955(US,A1)
【文献】 特開2008−055420(JP,A)
【文献】 米国特許第04254290(US,A)
【文献】 特表2003−505539(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/022544(WO,A1)
【文献】 特開2012−045516(JP,A)
【文献】 特開2002−320857(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0152596(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0184206(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第105148921(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J21/00−38/74
C07B31/00−61/00,63/00−63/04
C07C1/00−409/44
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア−シェル構造を有している触媒であって、
上記コアは、非晶質シリカ−アルミナ粒子および/または非晶質シリカ−アルミナ粒子の凝集体であり、
上記シェルは、ケイ素およびスズを含有している酸化アルミニウムであり、
上記ケイ素およびスズを含有している酸化アルミニウムの、上記非晶質シリカ−アルミナに対する重量比は、1:60〜1:3であり、
上記ケイ素およびスズを含有している酸化アルミニウムにおいて、上記ケイ素およびスズを含有している酸化アルミニウムの重量を基準とし、かつ元素として計算すると、
ケイ素の含有率は、0.5〜2重量%であり、
スズの含有率は、0.2〜1重量%である、
MTBEおよびTBAの混合物からイソブチレンを調製するために用いられる触媒。
【請求項2】
上記コアの大きさの、上記シェルの厚さに対する比率は、200:0.5〜200:20である、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
(1)上記コアは非晶質シリカ−アルミナ粒子であり、上記シェルの厚さは3〜15μmである、
あるいは、
(2)上記コアは粒子の凝集体であり、上記シェルの厚さは5〜300μmである、
請求項1または2に記載の触媒。
【請求項4】
上記コアにおいて、上記非晶質シリカ−アルミナの重量を基準とすると、
SiOに換算したケイ素の含有率は、60〜99重量%であり、
Alに換算したアルミニウムの含有率は、1〜40重量%である、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項5】
上記非晶質シリカ−アルミナは、以下の特性を有している、請求項1〜4のいずれか1項に記載の触媒。
比表面積:240〜450m/g
細孔容積:0.4〜0.9mL/g
【請求項6】
上記非晶質シリカ−アルミナは、ケイ素元素およびアルミニウム元素以外に、活性化剤をさらに含んでおり、
上記活性化剤は、IIA族金属元素およびVIII族金属元素の1つ以上から選択され、
上記活性化剤を含有している非晶質シリカ−アルミナにおいて、上記活性化剤を含有している非晶質シリカ−アルミナの重量を基準とすると、酸化物に換算した上記活性化剤の含有率は、0.1〜5重量%であり、
上記IIA族金属元素はBe、MgおよびCaの1つ以上であり、上記VIII族金属元素はNi、PdおよびPtの1つ以上である、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項7】
上記活性化剤を含有している非晶質シリカ−アルミナの重量を基準とすると、
SiOに換算したケイ素の含有率は、60〜95重量%であり、
Alに換算したアルミニウムの含有率は、1〜30重量%であり、
酸化物に換算した上記活性化剤の含有率は、0.1〜5重量%である、
請求項6に記載の触媒。
【請求項8】
(1)上記粒子の凝集体は、非晶質シリカ−アルミナおよび結着剤を含んでいる、
あるいは、
(2)上記コアは非晶質シリカ−アルミナ粒子であり、上記触媒はさらに結着剤を含んでいる、
触媒であって、
上記結着剤は、マイクロ多孔質アルミナであり、
上記マイクロ多孔質アルミナの細孔径は、0.8〜2.5nmである、
請求項1〜7のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項9】
非晶質シリカ−アルミナ粒子100重量部に対して、上記結着剤の含有率は、3〜20重量部である、請求項8に記載の触媒。
【請求項10】
上記触媒の大きさは、1〜5mmである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項11】
ケイ素含有化合物、スズ含有化合物および水酸化アルミニウムスラリーを混合して、ケイ素およびスズを含有している水酸化アルミニウムスラリーを得る工程、
上記ケイ素およびスズを含有している水酸化アルミニウムスラリーを、非晶質シリカ−アルミナ粒子および/または非晶質シリカ−アルミナ粒子の凝集体に噴霧する工程、ならびに、
その後に、生成物を乾燥させ、か焼する工程、
を含む、MTBEおよびTBAの混合物からイソブチレンを調製するために用いられる触媒の調製方法。
【請求項12】
得られる触媒におけるケイ素およびスズを含有している酸化アルミニウムの重量を基準として、
ケイ素の含有率が0.5〜2重量%
スズの含有率が0.2〜1重量%
となるように、上記ケイ素含有化合物、上記スズ含有化合物および上記水酸化アルミニウムスラリーの量を調整し、
得られる触媒において、上記ケイ素およびスズを含有している酸化アルミニウムの、上記非晶質シリカ−アルミナに対する重量比が、1:60〜1:3となるように、(1)上記ケイ素およびスズを含有している水酸化アルミニウムスラリーの量、ならびに(2)上記非晶質シリカ−アルミナ粒子および/または非晶質シリカ−アルミナ粒子の凝集体の量を調整する、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
上記ケイ素含有化合物、上記スズ含有化合物および上記水酸化アルミニウムスラリーを混合する方法は、
上記水酸化アルミニウムスラリーを攪拌しながら、上記ケイ素含有化合物および上記スズ含有化合物を、一度に加えるまたは滴下する工程を含む、
請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
上記非晶質シリカ−アルミナは、熱水処理によって得られ、
上記熱水処理の条件は、以下を含む、請求項11〜13のいずれか1項に記載の方法。温度:150〜450℃
時間:5〜24時間
【請求項15】
上記非晶質シリカ−アルミナは、ケイ素元素およびアルミニウム元素以外に、活性化剤をさらに含んでおり、
上記活性化剤は、IIA族金属元素およびVIII族金属元素の1つ以上から選択され、
上記活性化剤を含有している非晶質シリカ−アルミナの重量を基準とすると、酸化物に換算した上記活性化剤の含有率は、0.1〜5重量%である、
請求項11〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
上記IIA族金属元素は、Be、MgおよびCaの1つ以上であり、
上記VIII族金属元素は、Ni、PdおよびPtの1つ以上である、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
上記ケイ素含有化合物は、クロロシランおよびポリエーテル修飾シリコーン油の1つ以上であり、
上記クロロシランは、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシランおよびフェニルクロロシランの1つ以上であり、
上記スズ含有化合物は、二塩化スズ、四塩化スズ、硝酸スズ、硫酸スズ、オクチル酸スズ、および二塩化ジブチルスズの1つ以上である、
請求項11〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
上記触媒は成形触媒であり、上記触媒の成形方法は、
上記ケイ素およびスズを含有している水酸化アルミニウムスラリーを、上記非晶質シリカ−アルミナ粒子に噴霧する工程、ならびに、
その後に、生成物を成形する工程、
を含む、請求項11〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
上記粒子の凝集体は、(1)非晶質シリカ−アルミナ粒子を成形し、(2)上記ケイ素およびスズを含有している水酸化アルミニウムスラリーを、得られた非晶質シリカ−アルミナ粒子に噴霧し、その後に、(3)生成物を乾燥させ、か焼させることにより得られる、請求項11〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
上記成形は、結着剤によって接着することにより行われ、
上記結着剤は、マイクロ多孔質アルミナであり、
上記マイクロ多孔質アルミナの細孔径は、0.8〜2.5nmであり、
非晶質シリカ−アルミナ粒子100重量部に対して、上記結着剤の量は、3〜20重量部である、
請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
イソブチレンを調製するためのMTBEの分解反応、および/または、イソブチレンを調製するためのTBAの脱水反応における、請求項1〜10のいずれか1項に記載の触媒の使用。
【請求項22】
イソブチレンを調製する反応のために、請求項1〜10のいずれか1項に記載の触媒を、MTBEおよび/またはTBAに接触させる工程を含む、イソブチレンを調製する方法。
【請求項23】
上記触媒に、MTBEとTBAとの混合物を接触させ、
上記MTBEとTBAとの混合物は、MTBE、TBAおよび水を含んでおり、
上記MTBEとTBAとの混合物の総重量を基準とすると、水の含有率は1〜15重量%である、
請求項22に記載の方法。
【請求項24】
上記触媒に、MTBEとTBAとの混合物を接触させ、
MTBEとTBAとの混合物において、当該MTBEとTBAとの混合物の総重量を基準とすると、
メチルsec−ブチルエーテルの含有率は、0.2重量%以下であり、
メタノールの含有率は、0.05重量%以下であり、
イソブチレンオリゴマーの含有率は、0.05重量%以下であり、
C1〜C4炭化水素の含有率は、0.1重量%以下である、
請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
上記触媒によって触媒反応される、上記MTBEとTBAとの混合物の反応の反応条件は、以下を含む、請求項23または24に記載の方法。
全液時空間速度:0.5〜10h−1
温度:190〜260℃
圧力:常圧〜0.6MPa
【請求項26】
上記反応は、固定床反応器またはスラリー床反応器において行われる、請求項23〜25のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソブチレンの調製に関する。特に、本発明は、触媒、触媒の調製方法および当該方法により調製される触媒、当該触媒の使用、ならびに当該触媒を利用することによるイソブチレンの調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イソブチレンは重要な原料有機化合物であり、主としてファイン・ケミカル製品(例えば、メタクリル酸メチル(MMA)、ブチルゴム、ポリイソブチレン、tert−ブチルフェノール、tert−ブチルアミン、塩化メタリル、トリメチル酢酸、イソプレン、p−tert−オクチルフェノール、酸化防止剤、農薬および医薬品の中間体、tert−酢酸ブチル、ならびにシランなど)を製造するために用いられている。イソブチレンを製造するための原料は、主として、(1)ナフサから水蒸気分解によってエチレンを製造するための設備において得られる、C4画分の副生成物、(2)製油所の流動接触分解(FCC)設備において得られる、C4画分の副生成物、および、(3)ハルコン法による酸化プロピレンの合成において得られる、tert−ブチルアルコール副生成物、などである。イソブチレンを製造するための工業的な製造方法には、主として、硫酸抽出法、吸着分離法、tert−ブチルアルコール脱水法、メチル−tert−ブチルエーテル分解法、およびn−ブチレン異性化法などが含まれる。
【0003】
MTBE分解法は、イソブチレンの調製方法の中でも、技術的に先進的で高い経済性を有している製造方法である。MTBEを分解してイソブチレンとする反応工程において主要な反応であるのは、触媒の作用下における、MTBEのイソブチレンおよびメタノールへの分解である。最終的に、精留などの工程を経て、イソブチレンまたは高純度イソブチレンが得られる。MTBEを分解してイソブチレンとすることに用いることができる、種々の触媒が存在している。このような触媒には、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、非晶質シリカ−アルミナ、イオン交換樹脂、モレキュラーシーブ、固体リン酸、および他の酸性触媒システムが含まれる。例えば、CN1853772A、CN102451674A、JP2004115407、JP2004091443およびJP3220136などの特許文献において開示されている、MTBEを分解してイソブチレンとする触媒は、非晶質シリカ−アルミナ触媒である。DE3509292、DE3210435、US4447668、GB1482883、US4570026、US4551567などの特許文献においては、イオン交換樹脂触媒が用いられている。CN96123535.7、EP0118085、JP7626401およびJP7494602などの特許文献においては、固体リン酸、硫酸塩または活性炭が、MTBE分解触媒として用いられている。
【0004】
他の一般的なイソブチレンの調製方法に、TBAの脱水がある。TBAを脱水してイソブチレンを調製する反応には、副生成物が少ない、分離および精製が容易である、資本投下が少なくて済む、などの利点がある。一般的な触媒には、酸化アルミニウム、モレキュラーシーブ、および硫酸イオン交換樹脂などが含まれる。例えば、US3665048、CN101300211AおよびCN102516030Aなどの特許文献において開示されているイソブチレン脱水触媒は、酸化アルミニウム触媒である。US4423271およびUS2005/0014985A1などの特許文献においては、硫酸樹脂が触媒として用いられている。特許文献CN103611572AおよびCN103506158Aにおいて提供されている、tert−ブチルアルコールの分解反応のための触媒は、以下の方法によって調製される。すなわち、ポリスチレン、塩素化されているポリ塩化ビニル、ポリトリフルオロクロロエチレン、および、ポリフッ化ビニリデンもしくはポリトリブロモスチレンを混合する工程;上記の混合物を溶融させペレット化する工程;ならびに、上記のペレットを無水硫酸によってスルホン化反応させ、上記触媒を得る工程。
【0005】
製造工程においては、多くの場合、MTBEとTBAとの混合物が得られる。通常、TBAは、MTBEの調製において同時に生成する。第一に、TBAの製造に特有の、技術上の困難がいくつか存在している。すなわち、TBAの製造方法は複雑である;C4画分と水との相互溶解性が低いため、TBA生成物の濃度は45〜55%にしかならない;TBAは水と共沸性であり、水から分離することが困難であるため、濃度85%のTBAは、従来の精留によってしか得ることができない。通常、高濃度のTBA生成物は、多段階の抽出および精留によってのみ得ることができる。しかし、設備投資および操業コストが、非常に高価になる。第二に、MTBEの調製におけるTBAの同時製造は、技術上の利点を有している。(1)機構が単純で柔軟性がある。製品の市場需要に応じて、製造機構を適切に調節することができる。製造フローを切り替え、触媒を適切な触媒に交換するだけで、MTBEまたはTBAを分離して製造しうるか、あるいは、MTBEとTBAとの混合物を製造しうる。(2)製造方法の実施が容易であり、投資リスクも低い。分離されたMTBEの製造方法は、同時製造する方法に容易に更新されうる(また、同時製造する方法の実施は容易である)。加えて、従来の分離製造する方法は、簡単に修復可能である。また、使用していないMTBE/TBA分離塔は、C4画分からn−ブチレンを分離するために用いることができる。したがって、上述の技術には、投資リスクがない。最後に、同時製造用の設備の投資コストは低廉である。逆に、分離されたMTBEの製造に特化した設備および分離されたTBAの製造に特化した設備(これらの設備は互いに独立しており、装備を互いに共有できない)を採用した場合、より多くの装備単位が必要となり、資本投下が高騰する。組み合わされた製造設備は、MTBEおよびTBAを同時に製造するために用いることができる。したがって、MTBEおよびTBAを別々に製造するための、分離された同規模の2組の設備と比較すると、資本投下を40%以上低減させることができ、操業コストもまた大いに低減させることができる。以上のような理由により、MTBEの調製においてTBAを同時に製造するための技術は、大きな注目を集めている。西安石油大学のChunlong Luは、MTBEの調製においてTBAを同時に製造するための技術を丹念に分析し、修士論文「MTBE設備の最適化分析ならびにMTBEおよびTBAの同時製造の基礎調査」において明確な答えを得た。
【0006】
現在のところ、組み合された製造方法によって得られるMTBEとTBAとの混合物を、イソブチレンの調製に用いる場合、通常は、当該混合物を分離して、純粋なMTBE原料および純粋なTBA原料を得る。その後、上記純粋なMTBE原料および上記純粋なTBA原料を、MTBE分解設備およびTBA脱水設備においてそれぞれ用いて、別々にイソブチレンを調製する。
【0007】
現段階において、MTBEとTBAとの混合物から、分解によってイソブチレンを調製する技術は存在していない。MTBE分解設備とTBA脱水設備とは、要求される触媒の性能の点に関して互いに異なっていることが、主な理由である。通常、MTBE分解触媒の表面にある活性部位は、主としてブレンステッド酸(B酸)部位である。一方、TBAの脱水によりイソブチレンを調製するための触媒は、ルイス酸(L酸)の触媒反応工程を経る。単一の触媒は、主としてB酸またはL酸から構成されうるが、両方からは構成されない。上記触媒の要求する反応条件(特に反応温度)が異なることが、他の理由である。具体的には、TBAの脱水温度(通常260℃〜300℃)は、MTBEの分解温度(通常200℃〜230℃)よりも高い。温度が上記の値よりも低い場合は、変換効率が大幅に低下する。反応温度が上記の値よりも高い場合は、副生成物がより多く産生し、イソブチレンの選択性の低下を引き起こす。一般的に、純度99.5%超のイソブチレン生成物(高純度イソブチレン)は、需要がより高く、より広範に利用され、そしてより高い工業製品としての価値を有している。したがって、同じ装置・同じ反応条件において、高い活性および選択性を維持しつつ、MTBEとTBAとの混合物からイソブチレンを調製する方法が、技術的に重要な研究課題となっている。
【発明の概要】
【0008】
従来技術における上述の課題を解決するために、本発明は、触媒、触媒の調製方法、当該方法により調製される触媒、イソブチレンの調製における当該触媒の使用、および当該触媒を利用することによるイソブチレンの調製方法を提供する。本発明の触媒を、MTBEとTBAとの混合物を触媒反応させてイソブチレンを調製するために用いる場合、MTBEの切断反応と、TBAの脱水反応とを同時に行わせて、イソブチレンを製造することができる。併せて、TBAおよびMTBEのより高い変換効率、ならびに、イソブチレンの生成のより高い選択性が達成される。
【0009】
上記の目的を達成するために、第1の態様において、本発明は、コア−シェル構造を有している触媒であって;上記コアは、非晶質シリカ−アルミナ粒子および/または粒子の凝集体であり;上記シェルは、ケイ素およびスズを含有している酸化アルミニウムであり;上記ケイ素およびスズを含有している酸化アルミニウムの、上記非晶質シリカ−アルミナに対する重量比は1:60〜1:3、好ましくは1:40〜1:4、さらに好ましくは1:30〜1:6であり;上記ケイ素およびスズを含有している酸化アルミニウムにおいて、上記ケイ素およびスズを含有している酸化アルミニウムの重量を基準とし、かつ元素として計算すると、ケイ素の含有率は0.5〜2重量%、好ましくは0.8〜1.5重量%であり、スズの含有率は0.2〜1重量%、好ましくは0.3〜0.8重量%である、触媒を提供する。
【0010】
第2の態様において、本発明は、ケイ素含有化合物、スズ含有化合物および水酸化アルミニウムスラリーを混合して、ケイ素およびスズを含有している水酸化アルミニウムスラリーを得る工程;上記ケイ素およびスズを含有している水酸化アルミニウムスラリーを、非晶質シリカ−アルミナ粒子および/または粒子の凝集体に噴霧する工程;および、その後に生成物を乾燥させ、か焼する工程、を含む、触媒の調製方法を提供する。
【0011】
第3の態様において、本発明は、上記の方法によって調製される、触媒を提供する。
【0012】
第4の態様において、本発明は、イソブチレンを調製するためのMTBEの分解反応、および/または、イソブチレンを調製するためのTBAの脱水反応における、上述の本発明の触媒の使用を提供する。
【0013】
第5の態様において、本発明は、イソブチレンを調製する反応のために、上述の本発明の触媒を、MTBEおよび/またはTBAに接触させる工程を含む、イソブチレンを調製する方法を提供する。
【0014】
本発明の触媒は、新規な触媒である。上記触媒は、ケイ素およびスズを含有している酸化アルミニウム(改質酸化アルミニウム)をシェルとして採用しており、非晶質シリカ−アルミナをコアとして採用しているか、主として採用している。上記シェルおよび上記コアは互いに密接に協働するので、MTBEの切断反応と、TBAの脱水反応とを同時に行わせて、イソブチレンを調製することができる。併せて、より高いTBAの変換効率(99.0%以上)およびより高いMTBEの変換効率(99.0%以上)、ならびにイソブチレンの生成のより高い選択性(99.5%以上)が達成される。
【0015】
本発明に係る触媒の調製方法においては、ケイ素含有化合物およびスズ含有化合物を、水酸化アルミニウムスラリーに導入する。また、非晶質シリカ−アルミナ粒子および/または粒子の凝集体に、ケイ素およびスズを含有している水酸化アルミニウムスラリーを噴霧する。これにより、上記触媒は、均一で安定したコア−シェル構造を獲得し、上記コアと上記シェルとがより緊密に結合する。
【0016】
本発明の触媒を、MTBEとTBAとの混合物からイソブチレンを調製するための反応において用いる場合、TBAの脱水反応と、MTBEの切断反応とを同時に行わせて、イソブチレンを調製することができる。したがって、MTBEとTBAとの混合物の分離工程は行わない。また、イソブチレンを調製するために、MTBE分解設備およびTBA脱水設備を別々に建造する必要がない。さらに、作業工程および資本投下が低減される。加えて、より高いTBAの変換効率(99.0%以上)およびより高いMTBEの変換効率(99.0%以上)、ならびにイソブチレンの生成のより高い選択性(99.5%以上)が達成される。
【0017】
本発明の他の特徴および利点を、以下の実施形態において、さらに詳述する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施形態のいくつかを詳述する。本明細書において説明されている実施形態は、単に本発明を説明・解釈するために与えられており、本発明に対する何らかの限定を構成していると見做されてはならないことを理解すべきである。
【0019】
第1の態様において、本発明は、コア−シェル構造を有している触媒であって;上記コアは、非晶質シリカ−アルミナ粒子および/または粒子の凝集体であり;上記シェルは、ケイ素およびスズを含有している酸化アルミニウムであり;上記ケイ素およびスズを含有している酸化アルミニウムの、上記非晶質シリカ−アルミナに対する重量比は1:60〜1:3であり;上記ケイ素およびスズを含有している酸化アルミニウムにおいて、上記ケイ素およびスズを含有している酸化アルミニウムの重量を基準とし、かつ元素として計算すると、ケイ素の含有率は0.5〜2重量%であり、スズの含有率は0.2〜1重量%である、触媒を提供する。
【0020】
当業者は、以下のことを理解すべきである。すなわち、本発明の触媒は、コア−シェル構造を有している触媒であって;上記コアは、非晶質シリカ−アルミナ粒子および/または粒子の凝集体であり;上記シェルは、ケイ素およびスズを含有している酸化アルミニウムである触媒である。しかし、本発明の触媒は、コア−シェル構造を有している触媒であって;上記コアは、非晶質シリカ−アルミナ粒子のみから構成されており;上記シェルは、ケイ素およびスズを含有している酸化アルミニウムのみから構成されている触媒には限定されない。例えば、上記コアは、後述する結着剤をさらに含んでいてもよい。あるいは、上記シェルは、後述する結着剤をさらに含んでいてもよい。
【0021】
当業者は、以下のことを理解すべきである。すなわち、本発明の触媒において、上記コア構造の成分である、上記非晶質シリカ−アルミナ粒子および/または粒子の凝集体の表面にある活性部位は、主としてB酸部位である。上記B酸部位は、MTBEの分解反応を触媒して、イソブチレンを調製するための部位である。上記シェル構造の成分である、上記ケイ素およびスズを含有している酸化アルミニウムの表面にある活性部位は、主としてL酸部位である。上記L酸部位は、TBAの脱水反応を触媒して、イソブチレンを調製するための部位である。MTBEの分解反応およびTBAの脱水反応を同時進行させてイソブチレンを調製できることを前提として、(1)本発明の触媒のコア−シェル構造を安定させ、(2)上記触媒の構造をより均一とし、かつ、(3)上記コア−シェルをより緊密に結合させるために、上記ケイ素およびスズを含有している酸化アルミニウムの、上記非晶質シリカ−アルミナに対する重量比は、1:60〜1:3の範囲に調整されている。MTBEとTBAとの混合物を、本発明の触媒によってイソブチレンを調製するための原料として用いる場合、本発明の触媒における上記ケイ素およびスズを含有している酸化アルミニウムの上記非晶質シリカ−アルミナに対する重量比は、上記混合物におけるMTBEのTBAに対する重量比に応じて、適切に調整されてよい。例えば、上記混合物におけるMTBEの含有率が相対的に高い場合は、ケイ素およびスズを含有している酸化アルミニウムの非晶質シリカ−アルミナに対する重量比の範囲内(1:60〜1:3)で、上記非晶質シリカ−アルミナの量を適切に増加させてよい。逆に、上記混合物におけるTBAの含有率が相対的に高い場合は、ケイ素およびスズを含有している酸化アルミニウムの非晶質シリカ−アルミナに対する重量比の範囲内(1:60〜1:3)で、上記ケイ素およびスズを含有している酸化アルミニウムの量を適切に増加させてよい。
【0022】
本発明の触媒において、(1)上記触媒のコア−シェル構造をさらに安定させ、(2)上記触媒の構造をより均一とし、かつ、(3)上記コア−シェルをより緊密に結合させるために、上記ケイ素およびスズを含有している酸化アルミニウムの、上記非晶質シリカ−アルミナに対する重量比は、1:40〜1:4であることが好ましく、1:30〜1:6であることがさらに好ましい。
【0023】
本発明の触媒において、上記触媒による、TBAの変換効率およびイソブチレンの生成の選択性をさらに向上させるために、上記ケイ素およびスズを含有している酸化アルミニウムの重量を基準とし、かつ元素として計算すると、ケイ素の含有率は0.8〜1.5重量%であることが好ましく、スズの含有率は0.3〜0.8重量%であることが好ましい。
【0024】
本発明において、ケイ素元素およびスズ元素は、上記酸化アルミニウムにおいて均一に分布している。上述したように、ケイ素の含有率は0.5〜2重量%であり、好ましくは0.8〜1.5重量%である。また、スズの含有率は0.2〜1重量%であり、好ましくは0.3〜0.8重量%である。これは、同じ触媒粒子のシェルについて、任意の位置におけるケイ素元素およびスズ元素の含有率をICP法により測定したとき、それぞれの位置において測定されたケイ素元素およびスズ元素の含有率が、上述の含有率の範囲内にあることを意味している。併せて、それぞれの位置において測定されたケイ素の含有率が「(測定値−平均値)/平均値≦5%」を満たし、それぞれの位置において測定されたスズの含有率が「(測定値−平均値)/平均値≦10%」を満たすことも意味している。ここで、上記平均値は、異なる位置において測定された、上記元素の含有率の値の平均である。ケイ素元素およびスズ元素が、本発明の触媒における酸化アルミニウム中において均一に分布していることを充分に示すために、本発明においては、20箇所で測定を行う。また、上記20箇所は、コアまでの深さに応じて、3群に分類されている。A群は、上記シェル層の周囲(すなわち、上記コアまでの深さが、上記シェル層の厚さの100%と等しい表面上)に沿って均一に分布している、10箇所から構成されている。B群は、上記コアまでの深さが、上記シェル層の厚さの50%と等しい接平面上(すなわち、上記シェルから50%の厚さを除くことによって形成される表面上)に均一に分布している、5箇所から構成されている。C群は、上記コアまでの深さが、上記シェル層の厚さの10%と等しい接平面上(すなわち、上記シェルから90%の厚さを除くことによって形成される表面上)に均一に分布している、5箇所から構成されている。
【0025】
本発明の触媒において、(1)上記触媒のコア−シェル構造をさらに安定させ、(2)上記触媒の構造をより均一とし、かつ、(3)上記コア−シェルをより緊密に結合させるために、上記コアの大きさの、上記シェルの厚さに対する比率は、200:0.5〜200:20であることが好ましく、200:0.6〜200:15であることがさら好ましく、200:1.2〜200:6であることがよりさらに好ましい。
【0026】
本発明の触媒において、(1)上記触媒のコア−シェル構造をさらに安定させ、(2)上記触媒の構造をより均一とし、かつ、(3)上記コア−シェルをより緊密に結合させるために、上記シェルの厚さは、3〜300μmであることが好ましく、5〜280μmであることがさらに好ましく、5〜260μmであることがよりさらに好ましい。また、上記コアが非晶質シリカ−アルミナ粒子である場合には、上記シェルの厚さは3〜15μmであり、好ましくは5〜10μmであり、さらに好ましくは5〜8μmである。一方、上記コアが粒子の凝集体である場合には、上記シェルの厚さは5〜300μmであり、好ましくは8〜280μmであり、さらに好ましくは10〜260μmである。
【0027】
本発明において、上記「粒子の凝集体」とは、複数の非晶質粒子から構成される凝集体を表す。上記粒子の凝集体は、上記非晶質シリカ−アルミナ粒子を、結着剤とともに成形することによって得られる。粒子の凝集体に、ケイ素およびスズを含有している酸化アルミニウムを担持させることによって得られる触媒生成物は、後述するように、ケイ素およびスズを含有している水酸化アルミニウムスラリーを非晶質シリカ−アルミナに噴霧するより前に、触媒の成形を行うことによって得られる成形触媒生成物に相当する。
【0028】
本発明において、上記シェルの厚さ、上記触媒の大きさ、および上記コアの大きさは、SEMによって得られる。ここで、上記「大きさ」とは、最大粒子径を表す。特に球状の粒子に関しては、上記「大きさ」とは、粒子の直径を表す。
【0029】
(1)上記触媒のコア−シェル構造をさらに安定させ、(2)上記触媒の構造をより均一とし、(3)上記コア−シェルをより緊密に結合させ、(4)上記触媒のMTBEの変換効率をさらに向上させ、かつ(5)上記触媒のイソブチレンの生成の選択性をさらに向上させるために、上記コアにおいて、上記非晶質シリカ−アルミナの重量を基準とすると、SiOに換算したケイ素の含有率は、60〜99重量%であることが好ましく、70〜95重量%であることがさらに好ましく、80〜92重量%であることがよりさらに好ましい。また、Alに換算したアルミニウムの含有率は、1〜40重量%であることが好ましく、5〜30重量%であることがさらに好ましく、7〜20重量%であることがよりさらに好ましい。当業者は、以下のことを理解すべきである。すなわち、本発明の触媒において、上記「非晶質シリカ−アルミナ」とは、非晶質ケイ酸アルミニウムを表す。上記非晶質シリカ−アルミナは、通常、シリカ−アルミナゲルをか焼することによって得られ、ケイ酸アルミニウムを主に含んでいる。上述の「SiOに換算したケイ素の含有率」および「Alに換算したアルミニウムの含有率」は、単に、上記非晶質シリカ−アルミナにおけるケイ素元素およびアルミニウム元素の含有率を表している。そして、上記ケイ素が酸化ケイ素の形であり、上記アルミニウムが酸化アルミニウムの形であることを表しているのではない。
【0030】
本発明の触媒において、(1)上記触媒のコア−シェル構造をさらに安定させ、(2)上記触媒の構造をより均一とし、(3)上記コア−シェルをより緊密に結合させ、(4)上記触媒のMTBEの変換効率をさらに向上させ、かつ(5)上記触媒のイソブチレンの生成の選択性をさらに向上させるために、上記非晶質シリカ−アルミナは、以下の特性を有していることが好ましい。比表面積:240〜450m/g、好ましくは270〜410m/g。細孔容積:0.4〜0.9mL/g、好ましくは0.5〜0.7mL/g。
【0031】
本発明の触媒において、上記非晶質シリカ−アルミナの調製方法に関する、具体的な限定は存在しない。換言すれば、上記非晶質シリカ−アルミナは、任意の従来法(共沈法、分別沈殿法、または機械的混合法など)によって調製してよい。本発明者は、本研究において、以下のことをさらに見出している。すなわち、上記非晶質シリカ−アルミナが、150〜450℃にて5〜24時間熱水処理されている場合には、上記非晶質シリカ−アルミナの表面にあるB酸部位の量が顕著に増加しうる一方で、L酸部位の量が顕著に減少しうる。また、上記の場合には、上記非晶質シリカ−アルミナの細孔径が増大しうる。したがって、上記触媒の、MTBEの変換効率およびイソブチレンの生成の選択性が、さらに向上しうる。それゆえ、(1)上記触媒のMTBEの変換効率をさらに向上させ、かつ(2)上記触媒のイソブチレンの生成の選択性をさらに向上させるために、上記非晶質シリカ−アルミナは熱水処理によって得られ、上記熱水処理の条件は以下を含むことが好ましい。温度:150〜450℃。時間:5〜24時間。上記非晶質シリカ−アルミナは、上記の温度条件および時間条件に調整された飽和水蒸気処理によって得られる非晶質シリカ−アルミナであることが、さらに好ましい。上記熱水処理後には、上記非晶質シリカ−アルミナの特性(例えば、B酸部位の量および細孔径など)が、明瞭に変化する。
【0032】
本発明者は、本研究において、以下のことをさらに見出している。すなわち、本発明の触媒において、上記非晶質シリカ−アルミナが、ケイ素元素およびアルミニウム元素以外に、IIA族金属元素およびVIII族金属元素の1つ以上から選択される活性化剤をさらに含んでいる場合、上記触媒の、MTBEの変換効率およびイソブチレンの生成の選択性が、さらに向上しうる。それゆえ、(1)上記触媒のMTBEの変換効率をさらに向上させ、かつ(2)上記触媒のイソブチレンの生成の選択性をさらに向上させるために、上記非晶質シリカ−アルミナは、ケイ素元素およびアルミニウム元素以外に、IIA族金属元素およびVIII族金属元素の1つ以上から選択される活性化剤をさらに含んでいることが好ましい。また、上記活性化剤を含有している非晶質シリカ−アルミナにおいて、上記活性化剤を含有している非晶質シリカ−アルミナの重量を基準とすると、酸化物に換算した上記活性化剤の含有率は、0.1〜5重量%である。当業者は、以下のことを理解すべきである。すなわち、上述の「活性化剤の酸化物」とは、上記活性化剤が、上記非晶質シリカ−アルミナにおいて、安定な酸化物の形で存在している(すなわち、IIA族金属元素またはVIII族金属元素の、安定な酸化物の形で存在している)ことを意味している。上記IIA族金属元素はBe、MgおよびCaの1つ以上であり、上記VIII族金属元素はNi、PdおよびPtの1つ以上であることが、さらに好ましい。
【0033】
本発明の触媒において、(1)上記触媒のコア−シェル構造をさらに安定させ、(2)上記触媒の構造をより均一とし、(3)上記コア−シェルをより緊密に結合させ、(4)上記触媒のMTBEの変換効率をさらに向上させ、かつ(5)上記触媒のイソブチレンの生成の選択性をさらに向上させるために、上記活性化剤を含有している非晶質シリカ−アルミナの重量を基準とすると、SiOに換算したケイ素の含有率は、60〜99重量%であることが好ましく、70〜95重量%であることがさらに好ましく、80〜92重量%であることがよりさらに好ましい。また、Alに換算したアルミニウムの含有率は、1〜40重量%であることが好ましく、5〜30重量%であることがさらに好ましく、7〜20重量%であることがよりさらに好ましい。さらに、酸化物に換算した上記活性化剤の含有率は、0.1〜5重量%であることが好ましく、0.3〜2重量%であることがさらに好ましく、0.5〜1.5重量%であることがよりさらに好ましい。
【0034】
本発明の触媒は、成形触媒であっても、非成形触媒であってもよく、実際に応用するときの具体的な製造方法に応じて、当業者によって選択されうる。このことは、当業者にとって周知である。例えば、上記触媒を固定床反応器において用いる場合、通常、上記触媒は成形触媒として製造される。上記成形触媒は、実情に応じて、適切な大きさおよび形状(例えば、球状または帯状など)に製造されうる。上記触媒は、成形触媒である(すなわち、上記触媒は結着剤をさらに含んでいる)ことが好ましい。上記粒子の凝集体は、非晶質シリカ−アルミナおよび結着剤を含んでいることが、さらに好ましい。あるいは、上記コアは非晶質シリカ−アルミナ粒子であり、上記触媒はさらに結着剤を含んでいることが、さらに好ましい。上記結着剤に関する、具体的な限定は存在しない。換言すれば、上記結着剤は、任意の従来の結着剤であってよい。上記結着剤は、マイクロ多孔質アルミナであることが好ましい。上記マイクロ多孔質アルミナの細孔径は、0.8〜2.5nmであることが、さらに好ましい。非晶質シリカ−アルミナ粒子100重量部に対して、上記結着剤の量は、3〜20重量部であることが好ましく、5〜10重量部であることがさらに好ましい。
【0035】
本発明の触媒において、上記触媒は、球状であることが好ましい。上記の球状の触媒の直径は1〜5mmであり、好ましくは2〜5mmである。
【0036】
本発明において、上記触媒の上記コア−シェル構造は、TEMによる観察、電子回折解析および元素組成解析などによって確かめられてよい。これと併せて、上記コアおよび上記シェルの組成を測定してもよい。
【0037】
第2の態様において、本発明は、ケイ素含有化合物、スズ含有化合物および水酸化アルミニウムスラリーを混合して、ケイ素およびスズを含有している水酸化アルミニウムスラリーを得る工程;上記ケイ素およびスズを含有している水酸化アルミニウムスラリーを、非晶質シリカ−アルミナ粒子および/または粒子の凝集体に噴霧する工程;および、その後に生成物を乾燥させ、か焼する工程、を含む、触媒の調製方法を提供する。
【0038】
本発明に係る方法において、上記ケイ素含有化合物、上記スズ含有化合物および上記水酸化アルミニウムスラリーの量は、以下のように調整されていることが好ましい。すなわち、得られる触媒におけるケイ素およびスズを含有している酸化アルミニウムの重量を基準として、ケイ素の含有率は、0.5〜2重量%であることが好ましく、0.8〜1.5重量%であることがさらに好ましい。また、スズの含有率は、0.2〜1重量%であることが好ましく、0.3〜0.8重量%であることがさらに好ましい。すなわち、上記ケイ素およびスズを含有している酸化アルミニウムにおいて、上記ケイ素およびスズを含有している酸化アルミニウムの重量を基準として、ケイ素の含有率は、好ましくは0.5〜2重量%であり、さらに好ましくは0.8〜1.5重量%であり;また、スズの含有率は、好ましくは0.2〜1重量%であり、さらに好ましくは0.3〜0.8重量%である。(1)上記ケイ素およびスズを含有している水酸化アルミニウムスラリー、ならびに(2)上記非晶質シリカ−アルミナ粒子および/または粒子の凝集体の量は、以下のように調整されていることが好ましい。すなわち、得られる触媒において、上記ケイ素およびスズを含有している酸化アルミニウムの、上記非晶質シリカ−アルミナに対する重量比は、1:60〜1:3であることが好ましく、1:40〜1:4であることがさらに好ましく、1:30〜1:6であることがよりさらに好ましい。
【0039】
本発明の方法において、(1)上記ケイ素およびスズを含有している水酸化アルミニウムスラリー、ならびに(2)上記非晶質シリカ−アルミナ粒子および/または粒子の凝集体の量は、以下のように調整されていることが好ましい。すなわち、得られる触媒における上記シェルの厚さは3〜300μmであることが好ましく、5〜280μmであることがさらに好ましく、5〜260μmであることがよりさらに好ましい。さらに、上記コアが非晶質シリカ−アルミナ粒子である場合には、上記シェルの厚さは3〜15μmであり、好ましくは5〜10μmであり、さらに好ましくは5〜8μmである。一方、上記コアが粒子の凝集体である場合には、上記シェルの厚さは5〜300μmであり、好ましくは8〜280μmであり、さらに好ましくは10〜260μmである。
【0040】
本発明の方法において、(1)上記ケイ素およびスズを含有している水酸化アルミニウムスラリー、ならびに(2)上記非晶質シリカ−アルミナ粒子および/または粒子の凝集体の量は、以下のように調整されていることが好ましい。すなわち、得られる触媒における、上記コアの大きさの、上記シェルの厚さに対する比率は、200:0.5〜200:20であり、好ましくは200:0.6〜200:15であり、さらに好ましくは200:1.2〜200:6である。
【0041】
本発明において、噴霧および浸漬は、触媒調製の分野における周知の技術手段である。噴霧のための装置および操作方法は、従来技術を参照して選択してよく、本明細書ではこれ以上の詳述はしない。
【0042】
本発明に係る方法において、上記ケイ素含有化合物、上記スズ含有化合物および上記水酸化アルミニウムスラリーを混合する方法は、以下を含むことが好ましい。すなわち、上記水酸化アルミニウムスラリーを攪拌しながら、上記ケイ素含有化合物および上記スズ含有化合物を、一度に加えるまたは滴下する工程を含むことが好ましい。当業者は、以下のことを理解すべきである。すなわち、急速な発熱によって招かれる、あらゆる安全上の問題を防ぐために、ケイ素含有化合物およびスズ含有化合物は緩やかに加えられるべきである。
【0043】
本発明に係る方法において、上記非晶質シリカ−アルミナは、熱水処理によって得られることが好ましい。すなわち、本発明に係る方法は、上記非晶質シリカ−アルミナ生成物を熱水処理する工程を、さらに含むことが好ましい。上記熱水処理する工程は、(1)上記ケイ素およびスズを含有している水酸化アルミニウムスラリーを、上記非晶質シリカ−アルミナ粒子に噴霧する工程、または、(2)上記非晶質シリカ−アルミナ粒子を、上記ケイ素およびスズを含有している水酸化アルミニウムスラリーに浸漬する工程の前に行われる。上記熱水処理の条件は、以下を含む。温度:150〜450℃、好ましくは180〜350℃。時間:5〜24時間、好ましくは8〜16時間。
【0044】
本発明に係る方法において、上記非晶質シリカ−アルミナは、ケイ素元素およびアルミニウム元素以外に、IIA族金属元素およびVIII族金属元素の1つ以上から選択される活性化剤をさらに含んでいることが好ましい。また、上記活性化剤を含有している非晶質シリカ−アルミナの重量を基準とすると、酸化物に換算した上記活性化剤の含有率は、0.1〜5重量%であることが好ましい。上記IIA族金属元素はBe、MgおよびCaの1つ以上であり、上記VIII族金属元素はNi、PdおよびPtの1つ以上であることが、さらに好ましい。
【0045】
本発明に係る方法において、上記活性化剤成分を、飽和水蒸気による熱水処理の前に担持させて、活性化剤を含有している非晶質シリカ−アルミナを得てもよい。あるいは、上記活性化剤成分を、飽和水蒸気による熱水処理の後に担持させて、活性化剤を含有している非晶質シリカ−アルミナを得てもよい。担持方法に関する、具体的な限定は存在しない。換言すれば、上記担持方法は、当業者により想定されうる任意の方法でありうる。例えば、上記担持方法は浸漬法であり、具体的な工程は以下の通りであってよい。まず、非晶質シリカ−アルミナを、活性化剤を含んでいる可溶性の無機塩の水溶液に浸漬する。ここで、上記活性化剤に換算した、上記活性化剤を含んでいる上記可溶性の無機塩の水溶液の濃度は、0.08〜2.0mol/Lである。次に、浸漬の後、上記非晶質シリカ−アルミナを、200〜600℃にて、3〜8時間か焼する。
【0046】
本発明に係る方法において、上記非晶質シリカ−アルミナの特性(例えば、ケイ素、アルミニウムおよび活性化剤の含有率、比表面積、ならびに細孔容積など)は、上述の記載を参照して決定してよく、本明細書ではこれ以上の詳述はしない。
【0047】
本発明に係る方法において、上記水酸化アルミニウムスラリーは、通常は、擬ベーマイトスラリーである。擬ベーマイトは、アルミナ一水和物または偽水ベーマイトとしても知られている。擬ベーマイトの分子式は、AlOOH・nHO(n=0.08〜0.62)である。上記水酸化アルミニウムスラリーの調製方法に関する、具体的な限定は存在しない。換言すれば、任意の従来法を用いてよい。例えば、アルミニウムアルコキシドの加水分解、アルミニウム塩もしくはアルミン酸塩の酸もしくは塩基への溶解、または、NaAlO溶液へのCOの導入による炭素化、などを用いることができる。具体的な操作方法は当業者にとって周知であり、本明細書ではこれ以上の詳述はしない。
【0048】
本発明に係る方法において、上記ケイ素含有化合物に関する、具体的な限定は存在しない。換言すれば、上記ケイ素含有化合物は、ケイ素源として技術上用いることのできる、任意の、一般的な水溶性ケイ素含有化合物または加水分解性ケイ素含有化合物であってよい。上記ケイ素含有化合物は、クロロシランおよびポリエーテル修飾シリコーン油の1つ以上であることが好ましい。ここで、発明者は、本研究において、以下のことをさらに見出している。すなわち、クロロシランを上記水酸化アルミニウムスラリーに加える場合、上記クロロシランおよび上記スズ含有化合物を別々に加水分解することにより、上記シェル層の酸化アルミニウムに、TBA脱水反応のために好適な活性部位を与えることができる。さらに、ケイ素および他の基(有機基および酸性基などを含む)の存在は、(1)上記触媒の上記シェル層における細孔の分布、および、(2)上記シェル層における細孔と、上記コア層における細孔との間の接続性、にとって有利に働く。この接続性は、混合物が反応し、速やかに上記コア層へと拡散することに役立つ。加えて、上記クロロシランおよび上記スズ含有化合物の加水分解において生成する酸(塩酸などを含む)は、上記スラリーの粘性を上昇させることに役立つ。これによって、上記触媒の構造がより均一となり、上記コア−シェルがより緊密に結合する。したがって、上記ケイ素含有化合物は、クロロシランであることがさらに好ましい。ここで、上記クロロシランは、加水分解性クロロシランであることが好ましい。例えば、上記クロロシランは、モノクロロシラン、ジクロロシラン、または2個以上の塩素原子を含んでいるクロロシラン(アルキルクロロシランまたはアルコキシクロロシランなど。ここで、アルキルまたはアルコキシの炭素数は、それぞれ1〜7であることが好ましい)であってよい。具体的には、上記クロロシランは、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシランおよびフェニルクロロシランの1つ以上である。ここで、クロロシランの添加量(ケイ素に換算)は、水酸化アルミニウムの0.5〜2重量%(酸化アルミニウムに換算)であり、好ましくは0.8〜1.5重量%(酸化アルミニウムに換算)である。
【0049】
本発明に係る方法において、上記スズ含有化合物は、加水分解性スズ含有化合物または水溶性スズ含有化合物であることが好ましい。具体的には、上記スズ含有化合物は、二塩化スズ、四塩化スズ、硝酸スズ、硫酸スズ、オクチル酸スズおよび二塩化ジブチルスズの1つ以上である。ここで、スズ含有化合物の添加量(スズに換算)は、水酸化アルミニウムの0.2〜1重量%(酸化アルミニウムに換算)であり、好ましくは0.3〜0.8重量%(酸化アルミニウムに換算)である。
【0050】
本発明に係る方法において、噴霧工程に用いる、(1)ケイ素およびスズを含有している水酸化アルミニウムスラリー、ならびに(2)非晶質シリカ−アルミナ粒子および/または粒子の凝集体の量は、触媒に関する項目に上述の記載を参照して決定してよい。その結果、得られる触媒において、上記ケイ素およびスズを含有している酸化アルミニウムの、上記非晶質シリカ−アルミナに対する重量比は、1:60〜1:3であり、好ましくは1:40〜1:4であり、さらに好ましくは1:30〜1:6である。また、上記シェルの厚さは3〜300μmであり、さらに好ましくは5〜280μmであり、よりさらに好ましくは5〜260μmである。さらに、上記コアが非晶質シリカ−アルミナ粒子である場合には、上記シェルの厚さは3〜15μmであり、好ましくは5〜10μmであり、さらに好ましくは5〜8μmである。一方、上記コアが粒子の凝集体である場合には、上記シェルの厚さは5〜300μmであり、好ましくは8〜280μmであり、さらに好ましくは10〜260μmである。上記コアの大きさの、上記シェルの厚さに対する比率は、200:0.5〜200:20であってよく、好ましくは200:0.6〜200:15であり、さらに好ましくは200:1.2〜200:6である。
【0051】
本発明に係る方法において、上記触媒は、成形触媒であっても、非成形触媒であってもよく、実際に応用するときの具体的な製造方法に応じて選択されうる。上記触媒は、成形触媒であることが好ましい。上記触媒の成形工程は、(1)上記ケイ素およびスズを含有している水酸化アルミニウムスラリーを、上記非晶質シリカ−アルミナ粒子に噴霧する工程、または(1’)上記非晶質シリカ−アルミナ粒子を、上記ケイ素およびスズを含有している水酸化アルミニウムスラリーに浸漬する工程、ならびに、(2)その後に、上記触媒を成形する工程、を含む。
【0052】
本発明に係る方法において、上記粒子の凝集体は、非晶質シリカ−アルミナ粒子を成形する工程;上記ケイ素およびスズを含有している水酸化アルミニウムスラリーを、得られた非晶質シリカ−アルミナ粒子に噴霧する工程;ならびに、その後に、生成物を乾燥させ、か焼する工程、により得られることが好ましい。
【0053】
本発明において、上記成形は、結着剤(好ましくはマイクロ多孔質アルミナ)によって接着することにより行われることが好ましい。上記マイクロ多孔質アルミナの細孔径は、0.8〜2.5nmであることがさらに好ましい。非晶質シリカ−アルミナ粒子100重量部に対して、上記結着剤の量は、3〜20重量部であり、好ましくは5〜10重量部である。
【0054】
本発明に係る方法において、上記触媒の調製方法に関して、乾燥条件およびか焼条件に関しての具体的な限定は存在しない。換言すれば、上記条件は、それぞれ従来法の条件であってよい。上記乾燥条件は、以下を含むことが好ましい。温度:80〜150℃。時間:1〜24時間。また、か焼条件は、以下を含むことが好ましい。温度:400〜700℃、さらに好ましくは450〜600℃。時間:1〜24時間。
【0055】
本発明に係る方法において、上記触媒の成形は、上記触媒を球状に加工することであることが好ましい。上記成形方法に関する、具体的な限定は存在しない。換言すれば、任意の従来の成形方法が用いられうる。例えば、上記触媒を球状に加工する場合には、油滴法、回転造粒法またはペレット成形法などが用いられうる。上記の球状の触媒の幾何学直径は1〜5mmであり、好ましくは2〜5mmであり、最も好ましくは2〜3mmである。
【0056】
本発明に係る方法において、成形工程中に、成形助剤を加えてもよい。上記成形助剤の選択および添加量に関する、具体的な限定は存在しない。換言すれば、上記成形助剤およびその添加量は、従来の成形助剤およびその添加量としてよい。例えば、上記成形助剤は、セスバニア粉末またはメチルセルロースであってよい。また、上記添加量は、成形されるべき上記触媒の2〜7重量%であってよい。
【0057】
第3の態様において、本発明は、上記の方法によって調製される、触媒を提供する。上記方法によれば、新規な触媒を容易に調製することができる。上記新規な触媒においては、ケイ素およびスズが、上記シェル中に均一に分布している。上記触媒は、MTBEの分解反応およびTBAの脱水反応を同時進行させて、イソブチレンを調製することを後押しする。また、上記触媒によれば、より高いTBAの変換効率(99.0%以上)およびより高いMTBEの変換効率(99.0%以上)が達成され、かつ、より高いイソブチレンの生成の選択性も達成される(99.5%以上)。
【0058】
第4の態様において、本発明は、イソブチレンを調製するためのMTBEの分解反応、および/または、イソブチレンを調製するためのTBAの脱水反応における、上述の本発明の触媒の使用を提供する。
【0059】
第5の態様において、本発明は、イソブチレンを調製する反応のために、上述の本発明の触媒を、MTBEおよび/またはTBAに接触させる工程を含む、イソブチレンを調製する方法を提供する。上記触媒は、イソブチレンを調製する反応のために、MTBEとTBAとの混合物に接触させることが好ましい。すなわち、イソブチレンを調製するためのMTBEの分解反応と、イソブチレンを調製するためのTBAの脱水反応とは、上記触媒の触媒作用の下で、同時に行われてよい。
【0060】
本発明に係るイソブチレンを調製する方法においては、水の添加により、MTBEの分解を促進することができる。しかし、上記TBAの脱水反応により相当量の水が生成するため、当該水を上述の過程において利用してもよい。したがって、上記MTBEとTBAとの混合物中に、水は「必須」であるわけではない。つまり、上記MTBEとTBAとの混合物は、水を含有していてもよいし、含有していなくてもよい。MTBEの分解をさらに促進するために、上記MTBEとTBAとの混合物の総重量を基準として、MTBEおよびTBAの他に、1〜15重量%の水をさらに含んでいるMTBEとTBAとの混合物に対して、上記触媒を接触させることが好ましい。上記MTBEとTBAとの混合物中の不純物は、基本的に、従来の原料中に含まれている不純物と同じであってよい。すなわち、イソブチレンを調製するための原料としてMTBEを用いるときの不純物、および、脱水によってイソブチレンを調製するための原料としてTBAを用いるときの不純物、と基本的に同じであってよい。通常、上記MTBEとTBAとの混合物の総重量を基準として、メチルsec−ブチルエーテルの含有率は0.2重量%以下であり、メタノールの含有率は0.05重量%以下であり、イソブチレンオリゴマーの含有率は0.05重量%以下であり、C1〜C4炭化水素の含有率は0.1重量%以下である。
【0061】
本発明に係るイソブチレンを調製する方法においては、上記触媒に、MTBEとTBAとの混合物を接触させることが好ましい。加えて、上記MTBEとTBAとの混合物における、TBAのMTBEに対する重量比は、1:40〜1:1であり;上記触媒における、ケイ素およびスズを含有している酸化アルミニウムの非晶質シリカ−アルミナに対する重量比は、1:40〜1:4であることが好ましい。また、上記MTBEとTBAとの混合物における、TBAのMTBEに対する重量比は、1:20〜1:2であり;上記触媒における、ケイ素およびスズを含有している酸化アルミニウムの非晶質シリカ−アルミナに対する重量比は、1:30〜1:6であることがさらに好ましい。
【0062】
本発明に係るイソブチレンを調製する方法は、MTBEを分解してイソブチレンを調製するための既存の設備、または、TBAを脱水してイソブチレンを調製するための既存の設備、において行われてもよい。上記MTBEとTBAとの混合物を、上記触媒により触媒反応させてイソブチレンを調製する反応の反応条件は、以下を含むことが好ましい。すなわち、全液時空間速度:0.5〜10h−1、好ましくは2〜5h−1。温度:190〜260℃、好ましくは200〜230℃。圧力:常圧〜0.6MPa、好ましくは常圧〜0.3MPa。本発明における圧力はゲージ圧力であることを、当業者は理解すべきである。
【0063】
本発明に係るイソブチレンを調製する方法は、イソブチレンを調製するために、固定床処理またはスラリー床処理を採用してよい。すなわち、上述の反応は、固定床反応器またはスラリー床反応器において行われうる。
【0064】
スラリー床処理を利用する場合、通常、不活性溶媒が必要である。炭化水素液相媒は、スラリー床反応のための、よく知られた不活性溶媒である。スラリー床処理を採用してイソブチレンを調製する上述の方法は、以下の工程を含むことがさらに好ましい。すなわち、不活性溶媒を上記触媒と混合して、混合スラリーを調製する工程。次に、上記混合スラリーを、スラリー床反応器に入れる工程。ここで、上記不活性溶媒は、不活性鉱物油、加水分解のテール油、液体パラフィン系炭化水素の1つ以上である。また、上記混合スラリーの重量を基準として、上記触媒の含有率は、3〜40重量%である。
【実施例】
【0065】
以下、いくつかの実施例によって本発明を詳述する。しかし、本発明は、これらの実施例に限定されないことに注意すべきである。以下の実施例および比較例において、別途明記されていない限り、全ての原料は市場で入手できるものである。
【0066】
ここで、上記原料の純度および生成物の組成は、ガスクロマトグラフィによって分析した。
【0067】
比表面積は、ASTM D3663-2003により、極低温液体窒素吸着法で測定した。
【0068】
細孔容積は、ASTM D4222-2003により、極低温液体窒素吸着法で測定した。
【0069】
上記触媒の上記コア−シェル構造は、以下の方法によって確認した。JEM 2100 LaB6高分解能透過型電子顕微鏡(TEM)(分解能:0.23nm、JEOL製(日本国の企業))に、エネルギー分散X線分光器(EDX)(EDAX製)を装備して用いた。サンプルを瑪瑙乳鉢中で激しく磨り潰した後、超音波分散により、無水メタノール中で20分間分散させた。銅網に支持されている炭素膜微細回折格子上に、懸濁液を2、3滴、滴下した。上記サンプルを乾燥させた後、TEM観察、電子線回折分析および元素組成分析により、上記サンプルを観察および分析した。
【0070】
[実施例1]
本実施例は、本発明の触媒(イソブチレンの調製に用いられる)を調製する方法を説明するために、ここに与えられている。
【0071】
非晶質シリカ−アルミナ粉末FM1(SINOPEC Catalyst Co., Ltd.のFushun Branch Company製;上記非晶質シリカ−アルミナ粉末FM1の重量を基準として、SiOに換算したケイ素の含有率:92.1重量%、Alに換算したアルミニウムの含有率:7.9重量%;比表面積281m/g、細孔容積:0.58mL/g、粒子径200〜400メッシュ(すなわち約30〜80μm)の粒子に粉砕されている)を、0.15mol/LのNi(NO水溶液に、12時間浸漬した。次に、上記粒子を、400℃にて6時間か焼した。次に、上記粒子を、300℃の飽和水蒸気にて6時間処理した。このようにして、0.61重量%(非晶質シリカ−アルミナ粉末FM1−1の重量を基準とする)の酸化ニッケルを含んでいる、非晶質シリカ−アルミナ粉末FM1−1を得た。平均細孔径が1.5nmであるマイクロ多孔質アルミナ10重量%を、結着剤として、上記非晶質シリカ−アルミナ粉末FM1−1に加えた。上記粉末を、ペレット成形によって、ペレット状に成形した(ペレット径:2.2〜2.5mm)。次に、上記ペレットを120℃にて4時間乾燥させ、その後、400℃にて6時間か焼した。
【0072】
アルミニウムイソプロポキシド加水分解法により、水酸化アルミニウムスラリーLRJ1を調製した。水およびアルミニウムイソプロポキシドを、120:1のモル比にて混合した。加水分解温度は80〜85℃に調整し、上記アルミニウムイソプロポキシドを1.5時間かけて加水分解した。次に、90〜95℃にて18時間熟成させた。このようにして、固形分21.3重量%を含んでいる、水酸化アルミニウムスラリーLRJ1を得た。硝酸スズ、オクチル酸スズおよびジメチルジクロロシランを、上記水酸化アルミニウムスラリーLRJ1に、それぞれ攪拌しながら緩やかに加えて、ケイ素およびスズを含有している水酸化アルミニウムスラリーLRJ1−1を得た。ここで、スズに換算した硝酸スズおよびオクチル酸スズの添加量は、酸化アルミニウムに換算した擬ベーマイト(水酸化アルミニウム)の重量の、0.38重量%であった。また、硝酸スズのオクチル酸スズに対するモル比は、1:1であった。さらに、ケイ素に換算したジメチルジクロロシランの添加量は、酸化アルミニウムに換算した上記擬ベーマイト(水酸化アルミニウム)の重量の、1.23重量%であった。
【0073】
上記スズおよびケイ素を含有している水酸化アルミニウムスラリーLRJ1−1を、成形ペレットに噴霧した。スズおよびケイ素を含有している酸化アルミニウムの、上記非晶質シリカ−アルミナに対する重量比は、1:10であった。次に、上記ペレットを120℃にて4時間乾燥させ、その後、500℃にて6時間か焼した。このようにして、触媒SL−1を得た。
【0074】
TEMにより観察したところ、上記触媒SL−1は、コア−シェル構造を有していた。ここで、上記触媒ペレットの大きさは2.2〜2.5mmであり、上記シェルの厚さは20〜25μmであった。無作為に抽出した20個のペレットの統計結果によると、上記コアの半径の、上記シェルの厚さに対する比の平均は、100:2であった。上記触媒ペレットの上記シェルについて元素分析を行い、ケイ素元素およびスズ元素の含有率を、均一に分布している20点において測定した。結果を表1に示す。上記結果からは、以下のことが判る。すなわち、上記触媒ペレットの上記シェルにおいては、ケイ素およびスズが均一に分布している。また、ケイ素およびスズの含有率は、基本的に、それぞれの元素の投入量の計算結果と一致する。
【0075】
[実施例2]
本実施例は、本発明の触媒(イソブチレンの調製に用いられる)を調製する方法を説明するために、ここに与えられている。
【0076】
(1)平均細孔径が1.5nmであるマイクロ多孔質アルミナ7.5重量%、および(2)メチルセルロース2.0重量%を、それぞれ結着剤および成形助剤として、上記非晶質シリカ−アルミナ粉末FM1−1(実施例1において得られた)に加えた。上記粉末を、ペレット成形によって、ペレット状に成形した(ペレット径:2.6〜2.9mm)。次に、上記ペレットを90℃にて8時間乾燥させ、その後、650℃にて3時間か焼した。
【0077】
水酸化アルミニウムスラリーLRJ2を、二酸化炭素ガスをメタアルミン酸ナトリウム溶液に導入することによる炭素化法によって調製した。CO/N混合気体(30重量%のCOを含有)を、メタアルミン酸ナトリウム溶液に導入し、ゲル化反応を行わせた。上記反応は、30℃にて、反応終了後のpHが10.5〜11.0となるように調整して行った。上記反応の終了後、熟成させ、上記反応の生成物を脱イオン水で洗浄した。上記洗浄は、60℃にて、濾液のpHが6.5になるまで行った。このようにして、固形分31.2重量%を含んでいる、水酸化アルミニウムスラリーLRJ2を得た。四塩化スズおよびトリメチルクロロシランを、上記水酸化アルミニウムスラリーLRJ2に、それぞれ攪拌しながら緩やかに加えて、ケイ素およびスズを含有している水酸化アルミニウムスラリーLRJ2−1を得た。ここで、スズに換算した四塩化スズの添加量は、酸化アルミニウムに換算した擬ベーマイト(水酸化アルミニウム)の重量の、0.65重量%であった。また、ケイ素に換算したトリメチルクロロシランの添加量は、酸化アルミニウムに換算した上記擬ベーマイト(水酸化アルミニウム)の重量の、0.85重量%であった。
【0078】
上記スズおよびケイ素を含有している水酸化アルミニウムスラリーLRJ2−1を、成形ペレットに噴霧した。スズおよびケイ素を含有している酸化アルミニウムの、上記非晶質シリカ−アルミナに対する重量比は、1:20であった。次に、上記ペレットを90℃にて8時間乾燥させ、その後、600℃にて3時間か焼した。このようにして、触媒SL−2を得た。
【0079】
TEMにより観察したところ、上記触媒SL−2は、コア−シェル構造を有していた。ここで、上記触媒ペレットの大きさは2.6〜2.9mmであり、上記シェルの厚さは50〜56μmであった。無作為に抽出した20個のペレットの統計結果によると、上記コアの半径の、上記シェルの厚さに対する比の平均は、100:4であった。上記触媒ペレットの上記シェルについて元素分析を行い、ケイ素元素およびスズ元素の含有率を、均一に分布している20点において測定した。結果を表1に示す。上記結果からは、以下のことが判る。すなわち、上記触媒ペレットの上記シェルにおいては、ケイ素およびスズが均一に分布している。また、ケイ素およびスズの含有率は、基本的に、それぞれの元素の投入量の計算結果と一致する。
【0080】
[実施例3]
本実施例は、本発明の触媒(イソブチレンの調製に用いられる)を調製する方法を説明するために、ここに与えられている。
【0081】
非晶質シリカ−アルミナ粉末FM2(SINOPEC Catalyst Co., Ltd.のFushun Branch Company製;上記非晶質シリカ−アルミナ粉末FM2の重量を基準として、SiOに換算したケイ素の含有率:82.2重量%、Alに換算したアルミニウムの含有率:17.8重量%;比表面積335m/g、細孔容積:0.78mL/g、粒子径200〜400メッシュ(すなわち約30〜80μm)の粒子に粉砕されている)を、200℃の飽和水蒸気にて16時間処理した。次に、処理後の粉末を、1.50mol/LのBe(NO水溶液に、12時間浸漬した。次に、上記粒子を、500℃にて5時間か焼した。このようにして、1.02重量%(非晶質シリカ−アルミナ粉末FM2−1の重量を基準とする)の酸化ベリリウムを含んでいる、非晶質シリカ−アルミナ粉末FM2−1を得た。平均細孔径が2.5nmであるマイクロ多孔質アルミナ18重量%を、結着剤として、上記非晶質シリカ−アルミナ粉末FM2−1に加えた。上記粉末を、ペレット成形によって、ペレット状に成形した(ペレット径:2.2〜2.5mm)。次に、上記ペレットを120℃にて4時間乾燥させ、その後、400℃にて6時間か焼した。
【0082】
上記スズおよびケイ素を含有している水酸化アルミニウムスラリーLRJ1−1(実施例1において得られた)を、成形ペレットに噴霧した。スズおよびケイ素を含有している酸化アルミニウムの、上記非晶質シリカ−アルミナに対する重量比は、1:25であった。次に、上記ペレットを150℃にて1.5時間乾燥させ、その後、650℃にて4時間か焼した。このようにして、触媒SL−3を得た。
【0083】
TEMにより観察したところ、上記触媒SL−3は、コア−シェル構造を有していた。ここで、上記触媒ペレットの大きさは2.2〜2.5mmであり、上記シェルの厚さは52〜60μmであった。無作為に抽出した20個のペレットの統計結果によると、上記コアの半径の、上記シェルの厚さに対する比の平均は、100:5であった。さらに、上記触媒ペレットについて元素分析を行い、ケイ素元素およびスズ元素の含有率を、均一に分布している20点において測定した。それぞれの点において測定したケイ素の含有率は、「(測定値−平均値)/平均値≦5%」を満たしていた。また、それぞれの点において測定したスズの含有率は、「(測定値−平均値)/平均値≦10%」を満たしていた(具体的なデータは示さず)。上記結果はまた、上記触媒ペレットの上記シェルにおいては、ケイ素およびスズが均一に分布していることを示している。さらに、ケイ素およびスズの含有率は、基本的に、それぞれの元素の投入量の計算結果と一致することも示している。
【0084】
[実施例4]
本実施例は、本発明の触媒(イソブチレンの調製に用いられる)を調製する方法を説明するために、ここに与えられている。
【0085】
上記スズおよびケイ素を含有している水酸化アルミニウムスラリーLRJ2−1(実施例2において得られた)を、上記非晶質シリカ−アルミナ粉末FM2−1(実施例3において得られた)に噴霧した。スズおよびケイ素を含有している酸化アルミニウムの、上記非晶質シリカ−アルミナに対する重量比は、1:5であった。次に、上記粉末を80℃にて10時間乾燥させ、その後、500℃にて6時間か焼した。このようにして、触媒粉末を得た。次に、(1)平均細孔径が2.5nmであるマイクロ多孔質アルミナ5重量%、および(2)セスバニア粉末3.0重量%を、それぞれ結着剤および成形助剤として、上記触媒粉末に加えた。次に、ペレット成形によって、粉末を触媒ペレットに成形した(ペレット径:2.4〜2.7mm)。次に、上記ペレットを120℃にて4時間乾燥させ、その後、700℃にて6時間か焼した。このようにして、触媒SL−4を得た。
【0086】
TEMにより観察したところ、上記触媒粉末はペレット状(ペレット径:40μm〜1mm)であり、上記ペレットは全てコア−シェル構造を有していた。上記シェルの厚さは、5〜8μmであった。無作為に抽出した20個のペレットの統計結果によると、上記コアの半径の、上記シェルの厚さに対する比の平均は、100:10であった。さらに、上記触媒ペレットのシェルについて元素分析を行い、ケイ素元素およびスズ元素の含有率を、均一に分布している20点において測定した。それぞれの点において測定したケイ素の含有率は、「(測定値−平均値)/平均値≦5%」を満たしていた。また、それぞれの点において測定したスズの含有率は、「(測定値−平均値)/平均値≦10%」を満たしていた(具体的なデータは示さず)。上記結果はまた、上記触媒ペレットの上記シェルにおいては、ケイ素およびスズが均一に分布していることを示している。さらに、ケイ素およびスズの含有率は、基本的に、それぞれの元素の投入量の計算結果と一致することも示している。
【0087】
[実施例5]
実施例1において説明されている方法を用いた。ただし、上記非晶質シリカ−アルミナ粉末FM1を、0.15mol/LのNi(NO水溶液に、12時間浸漬した。次に、上記粉末を、450℃にて6時間か焼した。次に、上記粉末を、150℃の飽和水蒸気にて20時間処理した。このようにして、0.5重量%(非晶質シリカ−アルミナ粉末FM1−5の重量を基準とする)の酸化ニッケルを含んでいる、非晶質シリカ−アルミナ粉末FM1−5を得た。平均細孔径が2.5nmであるマイクロ多孔質アルミナ10重量%を、結着剤として、上記非晶質シリカ−アルミナ粉末FM1−5に加えた。上記粉末を、ペレット成形によって、ペレット状に成形した(ペレット径:2.2〜2.5mm)。次に、上記ペレットを100℃にて5時間乾燥させ、その後、600℃にて4時間か焼した。
【0088】
二塩化スズ、硫酸スズおよびフェニルクロロシランを、上記水酸化アルミニウムスラリーLRJ1に、それぞれ攪拌しながら緩やかに加えて、ケイ素およびスズを含有している水酸化アルミニウムスラリーLRJ1−5を得た。ここで、スズに換算した二塩化スズおよび硫酸スズの添加量は、酸化アルミニウムに換算した擬ベーマイト(水酸化アルミニウム)の重量の、0.8重量%であった。また、二塩化スズの硫酸スズに対するモル比は、1:1であった。さらに、ケイ素に換算したフェニルクロロシランの添加量は、酸化アルミニウムに換算した上記擬ベーマイト(水酸化アルミニウム)の重量の、1.5重量%であった。
【0089】
上記スズおよびケイ素を含有している水酸化アルミニウムスラリーLRJ1−5を、成形ペレットに噴霧した。スズおよびケイ素を含有している酸化アルミニウムの、上記非晶質シリカ−アルミナに対する重量比は、1:60であった。次に、上記ペレットを100℃にて5時間乾燥させ、その後、600℃にて4時間か焼した。このようにして、触媒SL−5を得た。
【0090】
TEMにより観察したところ、上記触媒SL−5は、コア−シェル構造を有していた。ここで、上記触媒ペレットの大きさは4.0〜4.5mmであり、上記シェルの厚さは210〜245μmであった。無作為に抽出した20個のペレットの統計結果によると、上記コアの半径の、上記シェルの厚さに対する比の平均は、100:12であった。さらに、上記触媒ペレットの上記シェルについて元素分析を行い、ケイ素元素およびスズ元素の含有率を、均一に分布している20点において測定した。それぞれの点において測定したケイ素の含有率は、「(測定値−平均値)/平均値≦5%」を満たしていた。また、それぞれの点において測定したスズの含有率は、「(測定値−平均値)/平均値≦10%」を満たしていた(具体的なデータは示さず)。上記結果はまた、上記触媒ペレットの上記シェルにおいては、ケイ素およびスズが均一に分布していることを示している。さらに、ケイ素およびスズの含有率は、基本的に、それぞれの元素の投入量の計算結果と一致することも示している。
【0091】
[実施例6]
実施例1において説明されている方法を用いた。ただし、上記非晶質シリカ−アルミナ粉末FM1を、0.15mol/LのPd(NO水溶液に、15時間浸漬した。次に、上記粉末を、600℃にて4時間か焼した。次に、上記粉末を、450℃の飽和水蒸気にて5時間処理した。このようにして、1.5重量%(非晶質シリカ−アルミナ粉末FM1−6の重量を基準とする)の酸化パラジウムを含んでいる、非晶質シリカ−アルミナ粉末FM1−6を得た。上記非晶質シリカ−アルミナ粉末FM1−6を、100℃にて8時間乾燥させ、その後、500℃にて8時間か焼した。次に、平均細孔径が2.5nmであるマイクロ多孔質アルミナ10重量%を、結着剤として、上記非晶質シリカ−アルミナ粉末FM1−6に加えた。上記粉末を、ペレット成形によって、ペレット状に成形した(ペレット径:2.2〜2.5mm)。次に、上記ペレットを100℃にて8時間乾燥させ、その後、500℃にて8時間か焼した。
【0092】
二塩化ジブチルスズおよびジメチルジクロロシランを、上記水酸化アルミニウムスラリーLRJ1に、それぞれ攪拌しながら緩やかに加えて、ケイ素およびスズを含有している水酸化アルミニウムスラリーLRJ1−6を得た。ここで、スズに換算した二塩化ジブチルスズの添加量は、酸化アルミニウムに換算した擬ベーマイト(水酸化アルミニウム)の重量の、1重量%であった。また、ケイ素に換算したジメチルジクロロシランの添加量は、酸化アルミニウムに換算した上記擬ベーマイト(水酸化アルミニウム)の重量の、2重量%であった。
【0093】
上記スズおよびケイ素を含有している水酸化アルミニウムスラリーLRJ1−6を、成形ペレットに噴霧した。スズおよびケイ素を含有している酸化アルミニウムの、上記非晶質シリカ−アルミナに対する重量比は、1:40であった。次に、上記ペレットを120℃にて4時間乾燥させ、その後、400℃にて16時間か焼した。このようにして、触媒SL−6を得た。
【0094】
TEMにより観察したところ、上記触媒SL−6は、コア−シェル構造を有していた。ここで、上記触媒ペレットの大きさは2.2〜2.5mmであり、上記シェルの厚さは80〜95μmであった。無作為に抽出した20個のペレットの統計結果によると、上記コアの半径の、上記シェルの厚さに対する比の平均は、100:8であった。さらに、上記触媒ペレットの上記シェルについて元素分析を行い、ケイ素元素およびスズ元素の含有率を、均一に分布している20点において測定した。それぞれの点において測定したケイ素の含有率は、「(測定値−平均値)/平均値≦5%」を満たしていた。また、それぞれの点において測定したスズの含有率は、「(測定値−平均値)/平均値≦10%」を満たしていた(具体的なデータは示さず)。上記結果はまた、上記触媒ペレットの上記シェルにおいては、ケイ素およびスズが均一に分布していることを示している。さらに、ケイ素およびスズの含有率は、基本的に、それぞれの元素の投入量の計算結果と一致することも示している。
【0095】
[実施例7]
実施例1において説明されている方法を用いた。ただし、上記非晶質シリカ−アルミナ粉末FM1を、0.15mol/LのMg(NO水溶液に、12時間浸漬した。次に、上記粉末を、400℃にて6時間か焼した。次に、上記粉末を、250℃の飽和水蒸気にて8時間処理した。このようにして、1.5重量%(非晶質シリカ−アルミナ粉末FM1−7の重量を基準とする)の酸化マグネシウムを含んでいる、非晶質シリカ−アルミナ粉末FM1−7を得た。平均細孔径が2.5nmであるマイクロ多孔質アルミナ15重量%を、結着剤として、上記非晶質シリカ−アルミナ粉末FM1−7に加えた。上記粉末を、ペレット成形によって、触媒ペレットに成形した(ペレット径:2.2〜2.5mm)。次に、上記ペレットを120℃にて4時間乾燥させ、その後、400℃にて6時間か焼した。
【0096】
二塩化ジブチルスズおよびジメチルジクロロシランを、上記水酸化アルミニウムスラリーLRJ1に、それぞれ攪拌しながら緩やかに加えて、ケイ素およびスズを含有している水酸化アルミニウムスラリーLRJ1−7を得た。ここで、スズに換算した二塩化ジブチルスズの添加量は、酸化アルミニウムに換算した擬ベーマイト(水酸化アルミニウム)の重量の、1重量%であった。また、ケイ素に換算したジメチルジクロロシランの添加量は、酸化アルミニウムに換算した上記擬ベーマイト(水酸化アルミニウム)の重量の、0.5重量%であった。
【0097】
上記スズおよびケイ素を含有している水酸化アルミニウムスラリーLRJ1−7を、成形ペレットに噴霧した。スズおよびケイ素を含有している酸化アルミニウムの、上記非晶質シリカ−アルミナに対する重量比は、1:3であった。次に、上記ペレットを120℃にて4時間乾燥させ、その後、650℃にて4時間か焼した。このようにして、触媒SL−7を得た。
【0098】
TEMにより観察したところ、上記触媒SL−7は、コア−シェル構造を有していた。ここで、上記触媒ペレットの大きさは2.2〜2.5mmであり、上記シェルの厚さは6〜8μmであった。無作為に抽出した20個のペレットの統計結果によると、上記コアの半径の、上記シェルの厚さに対する比の平均は、100:0.6であった。さらに、上記触媒ペレットの上記シェルについて元素分析を行い、ケイ素元素およびスズ元素の含有率を、均一に分布している20点において測定した。それぞれの点において測定したケイ素の含有率は、「(測定値−平均値)/平均値≦5%」を満たしていた。また、それぞれの点において測定したスズの含有率は、「(測定値−平均値)/平均値≦10%」を満たしていた(具体的なデータは示さず)。上記結果はまた、上記触媒ペレットの上記シェルにおいては、ケイ素およびスズが均一に分布していることを示している。さらに、ケイ素およびスズの含有率は、基本的に、それぞれの元素の投入量の計算結果と一致することも示している。
【0099】
[実施例8]
実施例1において説明されている方法を用いた。ただし、上記非晶質シリカ−アルミナ粉末1−1を調製するとき、か焼後に上記非晶質シリカ−アルミナの熱水処理を行わなかった。このようにして、触媒SL−8を得た。
【0100】
TEMにより観察したところ、上記触媒SL−8は、コア−シェル構造を有していた。ここで、上記触媒ペレットの大きさは2.2〜2.5mmであり、上記シェルの厚さは20〜25μmであった。無作為に抽出した20個のペレットの統計結果によると、上記コアの半径の、上記シェルの厚さに対する比の平均は、100:2であった。さらに、上記触媒ペレットの上記シェルについて元素分析を行い、ケイ素元素およびスズ元素の含有率を、均一に分布している20点において測定した。それぞれの点において測定したケイ素の含有率は、「(測定値−平均値)/平均値≦5%」を満たしていた。また、それぞれの点において測定したスズの含有率は、「(測定値−平均値)/平均値≦10%」を満たしていた(具体的なデータは示さず)。上記結果はまた、上記触媒ペレットの上記シェルにおいては、ケイ素およびスズが均一に分布していることを示している。さらに、ケイ素およびスズの含有率は、基本的に、それぞれの元素の投入量の計算結果と一致することも示している。
【0101】
[実施例9]
実施例1において説明されている方法を用いた。ただし、上記ケイ素およびスズを含有している水酸化アルミニウムスラリーLRJ1−1を調製するときに、上記ジメチルジクロロシランを、ケイ素に換算して同量のポリエーテル修飾トリシロキサン(H-350、Jiangxi Hito Chemical Co., Ltd.製)に変更した。このようにして、触媒SL−9を得た。
【0102】
TEMにより観察したところ、上記触媒SL−9は、コア−シェル構造を有していた。ここで、上記触媒ペレットの大きさは2.2〜2.5mmであり、上記シェルの厚さは20〜25μmであった。無作為に抽出した20個のペレットの統計結果によると、上記コアの半径の、上記シェルの厚さに対する比の平均は、100:2であった。さらに、上記触媒ペレットの上記シェルについて元素分析を行い、ケイ素元素およびスズ元素の含有率を、均一に分布している20点において測定した。それぞれの点において測定したケイ素の含有率は、「(測定値−平均値)/平均値≦5%」を満たしていた。また、それぞれの点において測定したスズの含有率は、「(測定値−平均値)/平均値≦10%」を満たしていた(具体的なデータは示さず)。上記結果はまた、上記触媒ペレットの上記シェルにおいては、ケイ素およびスズが均一に分布していることを示している。さらに、ケイ素およびスズの含有率は、基本的に、それぞれの元素の投入量の計算結果と一致することも示している。
【0103】
[実施例10]
実施例1において説明されている方法を用いた。ただし、上記非晶質シリカ−アルミナ粉末FM1を、300℃の飽和水蒸気にて6時間処理し、上記の熱水処理によって得られた非晶質シリカ−アルミナ粉末を、上記非晶質シリカ−アルミナ粉末FM1−1に代えて用いた(すなわち、活性化剤を全く含んでいない非晶質シリカ−アルミナ粉末FM1−1)。このようにして、触媒SL−10を得た。
【0104】
TEMにより観察したところ、上記触媒SL−10は、コア−シェル構造を有していた。ここで、上記触媒ペレットの大きさは2.2〜2.5mmであり、上記シェルの厚さは20〜25μmであった。無作為に抽出した20個のペレットの統計結果によると、上記コアの半径の、上記シェルの厚さに対する比の平均は、100:2であった。さらに、上記触媒ペレットの上記シェルについて元素分析を行い、ケイ素元素およびスズ元素の含有率を、均一に分布している20点において測定した。それぞれの点において測定したケイ素の含有率は、「(測定値−平均値)/平均値≦5%」を満たしていた。また、それぞれの点において測定したスズの含有率は、「(測定値−平均値)/平均値≦10%」を満たしていた(具体的なデータは示さず)。上記結果はまた、上記触媒ペレットの上記シェルにおいては、ケイ素およびスズが均一に分布していることを示している。さらに、ケイ素およびスズの含有率は、基本的に、それぞれの元素の投入量の計算結果と一致することも示している。
【0105】
[比較例1]
実施例1において説明されている方法を用いた。ただし、固形分21.3重量%を含んでいる水酸化アルミニウムスラリーLRJ1を、成形ペレットに噴霧した。酸化アルミニウムに換算した水酸化アルミニウムの、上記非晶質シリカ−アルミナに対する重量比は、1:10であった。次に、上記ペレットを120℃にて4時間乾燥させ、その後、500℃にて6時間か焼した。このようにして、触媒DB−1を得た。
【0106】
[比較例2]
実施例1において説明されている方法を用いた。ただし、得られたケイ素およびスズを含有している水酸化アルミニウムスラリーLRJ1−1を、120℃にて4時間乾燥させ、その後、500℃にて6時間か焼した。このようにして、ケイ素およびスズを含有している酸化アルミニウム粉末LRJ1−2を得た。
【0107】
実施例1における非晶質シリカ−アルミナ粉末FM1−1を、上記ケイ素およびスズを含有している酸化アルミニウム粉末LRJ1−2と、10:1の重量比で混合して、均一相にした。次に、平均細孔径が1.5nmであるマイクロ多孔質アルミナ10重量%を、結着剤として、上記の混合物に加えた。上記粉末を、ペレット成形によって、触媒ペレットに成形した(ペレット径:2.2〜2.5mm)。次に、上記ペレットを120℃にて4時間乾燥させ、その後、400℃にて6時間か焼した。このようにして、触媒DB−2を得た。
【0108】
[比較例3]
実施例1において説明されている方法を用いた。ただし、実施例1における水酸化アルミニウムスラリーLRJ1を、120℃にて4時間乾燥させ、その後、500℃にて6時間か焼した。次に、平均細孔径が1.5nmであるマイクロ多孔質アルミナ10重量%を、結着剤として、得られた粉末に加えた。上記粉末を、ペレット成形によって、触媒ペレットに成形した(ペレット径:2.2〜2.5mm)。次に、上記ペレットを120℃にて4時間乾燥させ、その後、400℃にて6時間か焼した。このようにして、触媒DB−3を得た。
【0109】
[比較例4]
実施例1において説明されている方法を用いた。ただし、平均細孔径が1.5nmであるマイクロ多孔質アルミナ10重量%を、結着剤として、比較例2において得られたケイ素およびスズを含有している酸化アルミニウム粉末LRJ1−2に加えた。上記粉末を、ペレット成形によって、触媒ペレットに成形した(ペレット径:2.2〜2.5mm)。次に、上記ペレットを120℃にて4時間乾燥させ、その後、400℃にて6時間か焼した。このようにして、触媒DB−4を得た。
【0110】
[比較例5]
実施例1において説明されている方法を用いた。ただし、上記非晶質シリカ−アルミナ粉末FM1−1と、実施例1におけるマイクロ多孔質アルミナと、から作製されるペレット(ペレット径2.2〜2.5mm)を、触媒DB−5として使用した。
【0111】
[比較例6]
実施例1において説明されている方法を用いた。ただし、ジメチルジクロロシランのみを、上記水酸化アルミニウムスラリーLRJ1に加え、硝酸スズおよびオクチル酸スズは加えなかった。得られたケイ素を含有している水酸化アルミニウムスラリーを、上記ケイ素およびスズを含有している水酸化アルミニウムスラリーLRJ1−1に代えて用いた。このようにして、触媒DB−6を得た。
【0112】
[比較例7]
実施例1において説明されている方法を用いた。ただし、硝酸スズおよびオクチル酸スズのみを、上記水酸化アルミニウムスラリーLRJ1に加え、ジメチルジクロロシランは加えなかった。得られたスズを含有している水酸化アルミニウムスラリーを、上記ケイ素およびスズを含有している水酸化アルミニウムスラリーLRJ1−1に代えて用いた。このようにして、触媒DB−7を得た。
【0113】
[比較例8]
実施例1において説明されている方法を用いた。ただし、硝酸スズ、オクチル酸スズおよびジメチルジクロロシランに代えて、硝酸マグネシウムを、上記水酸化アルミニウムスラリーLRJ1に加えた。得られたマグネシウムを含有している水酸化アルミニウムスラリーを、上記ケイ素およびスズを含有している水酸化アルミニウムスラリーLRJ1−1に代えて用いた。このようにして、触媒DB−8を得た。
【0114】
[比較例9]
実施例2において説明されている方法を用いた。ただし、上記水酸化アルミニウムスラリーLRJ2を、実施例2における成形ペレットと同じ成形ペレット状に噴霧した。スズおよびケイ素を含有している酸化アルミニウムの重量比は、実施例2と同じであった。次に、上記ペレットを90℃にて8時間乾燥させ、その後、600℃にて3時間か焼した。このようにして、半製品触媒ペレットを得た。次に、浸漬法によって、上記半製品触媒ペレットの表面にケイ素元素およびスズ元素を担持させた。ケイ素元素およびスズ元素の担持量は、実施例2と同じであった。次に、上記ペレットを90℃にて8時間乾燥させ、その後、600℃にて3時間か焼した。このようにして、触媒DB−9を得た。
【0115】
[実施例11〜20]
以下の方法により、固定床反応器中でイソブチレンを調製した。すなわち、イソブチレンを調製する反応のために、実施例1〜10において得られた触媒を、MTBEとTBAとの混合物に接触させた(実施例1〜10において得られた触媒を用いるイソブチレンの調製方法は、それぞれ、実施例11〜20に対応する)。反応条件(すなわち、全液時空間速度(LHVSV)、上記MTBEとTBAとの混合物におけるMTBE/TBA/水の重量比(すなわち、MTBEのLHVSV/TBAのLHVSV/水のLHVSV)、反応温度、および反応圧など)および結果を、表2に示す。
【0116】
ここで、上記MTBEとTBAとの混合物は、不純物をさらに含んでいた。上記MTBEとTBAとの混合物の総重量を基準とすると、メチルsec−ブチルエーテルの含有率は0.1重量%であり、メタノールの含有率は0.02重量%であり、イソブチレンオリゴマーの含有率は0.03重量%であり、C1〜C4炭化水素の含有率は0.05重量%であった。
【0117】
[比較例10〜18]
実施例11において説明されている方法によって、イソブチレンを調製した。ただし、比較例1〜9において得られた触媒を、イソブチレンの調製のために用いた(上記のイソブチレンの調製方法は、それぞれ、比較例10〜18に対応している)。その上で、比較例10〜18における反応条件(すなわち、全LHVSV、MTBE/TBA/水の重量比(すなわち、MTBEのLHVSV/TBAのLHVSV/水のLHVSV)、反応温度、および反応圧など)および結果を、表2に示す。
【0118】
【表1】
【0119】
【表2】
【0120】
【0121】
表2において、実施例のデータと比較例のデータとの比較から、以下のことが判る。すなわち、本発明の触媒(ケイ素およびスズを含有している酸化アルミニウムをシェルに採用し、非晶質シリカ−アルミナ粒子および/または粒子の凝集体をコアに採用し、上記シェルと上記コアとの密接な協働を利用している)によれば、MTBEの分解反応およびTBAの脱水反応が260℃未満にて同時に発生し、イソブチレンが生成する反応工程が提供される。また、TBAおよびMTBEのより高い変換効率、およびイソブチレンのより高い選択性が達成される。ここで、上記TBAの変換効率は99.0%以上、上記MTBEの変換効率は99.0%以上、上記イソブチレンの選択性は99.5%以上である。
【0122】
表2において、実施例11のデータと比較例10のデータとの比較から、以下のことが判る。すなわち、非改質酸化アルミニウムをシェルに採用している触媒によれば、MTBEおよびTBAの変換効率は高くならず、イソブチレンの選択性も低い。
【0123】
表2において、実施例11のデータと比較例11のデータとの比較から、以下のことが判る。すなわち、改質活性化酸化アルミニウムに非晶質シリカ−アルミナを混合することにより調製されている触媒(すなわち、コア−シェル構造でない触媒)によったとしても、MTBEおよびTBAの変換効率ならびにイソブチレンの選択性は幾分か向上するものの、理想的な結果とならない。
【0124】
表2において、実施例11のデータと、比較例12−1および比較例12−2のデータとの比較から、以下のことが判る。すなわち、TBAの分解反応に活性化アルミナ触媒を用いる場合、反応温度の上昇に伴って、上記触媒の触媒性能は向上しうる(すなわち、反応温度265℃における上記触媒の触媒性能は、反応温度210℃におけるそれよりも遥かに優れている)。しかし、温度が265℃まで上昇したときのTBAの変換効率およびイソブチレンの選択性は理想的ではなく、210℃において本発明の触媒により達成されるTBAの変換効率およびイソブチレンの選択性よりもさらに低い。
【0125】
表2において、実施例11のデータと、比較例13−1および比較例13−2のデータとの比較から、以下のことが判る。すなわち、スズおよびケイ素により改質されているアルミナ触媒をTBAの分解反応に用いる場合、反応温度の上昇に伴って、上記触媒の触媒性能は向上しうる(すなわち、反応温度265℃における上記触媒の触媒性能は、反応温度210℃におけるそれよりも遥かに優れている)。しかし、温度が265℃まで上昇したときのTBAの変換効率およびイソブチレンの選択性は理想的ではなく、210℃において本発明の触媒により達成されるTBAの変換効率およびイソブチレンの選択性よりもさらに低い。
【0126】
表2において、実施例11のデータと、比較例14−1および比較例14−2のデータとの比較から、以下のことが判る。すなわち、非晶質シリカ−アルミナ触媒をMTBEの分解反応に用いる場合、反応温度の上昇に伴って、上記触媒の触媒性能は向上しうる(すなわち、反応温度230℃における上記触媒の触媒性能は、反応温度210℃におけるそれよりも遥かに優れている)。しかし、温度が230℃まで上昇したときのMTBEの変換効率およびイソブチレンの選択性は理想的ではなく、210℃において本発明の触媒により達成されるMTBEの変換効率およびイソブチレンの選択性よりもさらに低い。
【0127】
表2において、実施例11のデータと、比較例15〜17のデータとの比較から、以下のことが判る。すなわち、ケイ素およびスズを含有している酸化アルミニウムを本発明の触媒のシェルとして用いる場合、TBAおよびMTBEの変換効率ならびにイソブチレンの選択性を顕著に向上させることができる。
【0128】
表2において、実施例11のデータと、実施例18のデータとの比較から、以下のことが判る。すなわち、本発明の触媒を調製するときに、非晶質シリカ−アルミナを熱水処理によって処理する場合、TBAおよびMTBEの変換効率ならびにイソブチレンの選択性をより向上させることができる。
【0129】
表2において、実施例11のデータと、実施例19のデータとの比較から、以下のことが判る。すなわち、ケイ素含有化合物としてクロロシランを用いてケイ素およびスズを含有している水酸化アルミニウムスラリーを調製し、さらに、本発明の触媒を調製するときに、上記ケイ素およびスズを含有している水酸化アルミニウムスラリーでシェルを調製する場合、TBAおよびMTBEの変換効率ならびにイソブチレンの選択性をより向上させることができる。
【0130】
表2において、実施例11のデータと、実施例20のデータとの比較から、以下のことが判る。すなわち、本発明の触媒を調製するときに、非晶質シリカ−アルミナが活性化剤を含有している場合、TBAおよびMTBEの変換効率ならびにイソブチレンの選択性をより向上させることができる。
【0131】
以上に、本発明のいくつかの好ましい実施形態が説明されている。しかし、本発明は、これらの実施形態における詳細な記載内容に限定されない。当業者は、本発明の本質を離れることなく、本発明の技術思想に修正および変更を施すことができる。しかし、このような修正および変更の全ては、本発明の保護される範囲に含まれると見做されるべきである。
【0132】
加えて、上述の実施形態において説明されている特定の技術的特徴は、矛盾が発生しない場合には、任意の適切な形式において組み合わせられることに注意すべきである。不要な繰り返しを避けるため、本発明における可能な組み合わせを、具体的には説明していない。
【0133】
さらに、本発明の異なる実施形態は、その組み合わせが本発明の理想および本質から逸脱しない限り、必要に応じて自由に組み合わせられる。しかし、このような組み合わせもまた、本発明の開示の範囲に含まれると見做されるべきである。