特許第6722186号(P6722186)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6722186コーティング法と対応するコーティング設備
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6722186
(24)【登録日】2020年6月23日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】コーティング法と対応するコーティング設備
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/02 20060101AFI20200706BHJP
   B05B 12/00 20180101ALI20200706BHJP
【FI】
   B05D1/02 B
   B05B12/00 A
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-529335(P2017-529335)
(86)(22)【出願日】2015年11月4日
(65)【公表番号】特表2018-502702(P2018-502702A)
(43)【公表日】2018年2月1日
(86)【国際出願番号】EP2015002215
(87)【国際公開番号】WO2016087016
(87)【国際公開日】20160609
【審査請求日】2018年10月12日
(31)【優先権主張番号】102014017707.6
(32)【優先日】2014年12月1日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】504389784
【氏名又は名称】デュール システムズ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】Durr Systems AG
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】フリッツ、ハンス−ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】ヴェール、ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】クライナー、マルクス
(72)【発明者】
【氏名】バイル、ティモ
(72)【発明者】
【氏名】ブベック、モーリッツ
【審査官】 高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−000706(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102010004496(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D
B05B1/00−3/18;7/00−9/08;12/00−12/14
B05B13/00−13/06
JSTPlus/JST7580/JMEDPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)コーティング対象の部品表面(9、19)の上方を所定のコーティング経路(1)に沿って塗布装置(18)を移動させる工程と、
b)前記塗布装置(18)により前記部品表面(9、19)上にコーティング媒体流(20)を塗布する工程であって、
b1)前記塗布装置(18)が前記部品表面(9、19)の上方で移動されている間に、前記コーティング媒体流(20)は塗布され、
b2)前記コーティング媒体流(20)は、前記コーティング媒体流の流軸(20)に対して円対称ではなく、その結果、前記部品表面(9、19)上に特定の長手方向(7)を有する細長いスプレーパターン(2)を形成する、
工程と、を備え、
c)前記スプレーパターン(2)の前記長手方向(7)の角度位置(α)が経路横断方向に対して前記コーティング経路(1)に沿って変化するように、前記塗布装置(18)を前記塗布装置(18)に対して前記流軸(20)を中心に回転させる工程をさらに備え
d)コーティング対象の前記部品表面(9、19)は全体として正確に長方形というわけではなく、
e)前記コーティング媒体は互いに隣接して配置された複数の前記コーティング経路(1)に沿って前記部品表面(9、19)上に塗布され、
f)非長方形の前記部品表面(9、19)に適合するために、個別の前記コーティング経路(1)は正確に長方形というわけではなく、且つ、
g)正確に長方形というわけではない前記コーティング経路(1)に沿った移動の間、所望の経路幅(SB1、SB2、SB3)が得られるように細長い前記スプレーパターン(2)を回転させるために、前記塗布装置(18)は前記流軸(20)を中心に回転されることを特徴とする、
装設備で自動車車体部品をコーティングするためのコーティング法。
【請求項2】
a)前記所望の経路幅(SB1、SB2、SB3)を得るために、前記塗布装置(18)は、前記流軸(20)を中心に、前記スプレーパターン(2)の前記長手方向(7)と前記経路横断方向との間の特定の回転角(α)で、回転され、
b)前記塗布装置(18)は、前記コーティング経路(1)に沿って、特定の移動速度で移動させられ、且つ、
c)前記塗布装置(18)は、特定のコーティング媒体流量で、前記コーティング媒体を塗布し、且つ、
d)層厚への前記回転の影響を相殺するために、前記移動速度及び/又は前記コーティング媒体流量は、前記回転角(α)に応じて、調節される、
請求項1に記載のコーティング法。
【請求項3】
前記塗布装置(18)の前記回転角(α)に応じた前記塗布装置(18)の前記移動速度の前記調節が、以下の式に従って行われる、請求項2に記載のコーティング法。
V(α)=V0/cos(α)
(但し、V0は、前記スプレーパターン(2)の前記長手方向(7)と前記経路横断方向との間の前記回転角(α)が0のときの前記塗布装置(18)の前記移動速度であり、
αは、前記スプレーパターン(2)の前記長手方向(7)と前記経路横断方向との間の前記回転角(α)であり、
V(α)は、現在の前記回転角(α)での調節移動速度である。)
【請求項4】
a)前記塗布装置(18)は多軸塗布ロボット(16)により前記部品表面(9、19)の上方で移動させられ、
b)前記塗布装置(18)と前記塗布ロボット(16)との動作はパラメータセットにより制御され、
c)前記パラメータセットは前記コーティング経路(1)に沿った移動の間に調節される、
請求項1からのいずれか1項に記載のコーティング法。
【請求項5】
前記パラメータセットは、前記塗布装置(18)及び前記塗布ロボット(16)を制御するためのパラメータとして、
a)前記コーティング経路(1)に沿った前記塗布装置(18)の移動速度、
b)前記コーティング経路(1)に沿った前記塗布装置(18)の加速度、
c)前記スプレーパターン(2)の前記長手方向(7)と前記経路横断方向との間における前記塗布装置(18)の回転角(α)、
d)前記塗布装置(18)の回転速度(ω)、
e)塗布される前記コーティング媒体の流量、
f)前記塗布装置(18)と前記部品表面(9、19)との間のコーティング間隔、
のうち少なくとも1つを備える、
請求項に記載のコーティング法。
【請求項6】
a)前記塗布装置(18)及び前記塗布ロボット(16)を制御するための前記パラメータセットは前記コーティング経路(1)に沿って連続して調節され、又は、
b)前記コーティング経路(1)は、順次配置される連続した複数の経路部に分割され、前記塗布装置(18)及び前記塗布ロボット(16)を制御するための前記パラメータセットは、個別の前記経路部内では一定に保たれ、前記経路部の間では変化する、
請求項又はに記載のコーティング法。
【請求項7】
長手方向(7)に特定のスプレー幅(SB1)を有するスプレーパターン(2)を形成するための以下の工程、
a)前記コーティング経路(1)の所望の経路幅(SB2)を求める工程と、
b)前記スプレーパターン(2)の前記長手方向(7)が前記経路横断方向に対して回転角(α)の角度をなすように、前記塗布装置(18)を前記流軸(20)を中心に回転させる工程と、
c)前記所望の経路幅(SB2)及び前記スプレー幅(SB1)に応じて前記回転角(α)を計算する工程であって、特に、
α=arccos(SB2/SB1)
(但し、SB1は、前記スプレーパターン(2)の前記長手方向(7)に沿った前記スプレーパターン(2)の幅であり、
SB2は、前記コーティング経路(1)の所望の経路幅であり、
αは、前記スプレーパターン(2)の前記長手方向(7)と前記経路横断方向との間の回転角である)
という式に従って計算する工程と、
を備える、
請求項1からのいずれか1項に記載のコーティング法。
【請求項8】
a)前記塗布装置(18)は前記コーティング経路(1)に沿った移動の間に連続して回転され、及び/又は、
b)前記スプレーパターン(2)は端が明瞭であり、及び/又は、
c)前記スプレーパターン(2)は実質的に長方形であり、及び/又は、
d)前記コーティング経路(1)の少なくとも1つは湾曲しており、及び/又は、
e)前記コーティング経路(1)の少なくとも1つは凸形状であり、及び/又は、
f)前記コーティング経路(1)の少なくとも1つは凹形状であり、及び/又は、
g)前記コーティング媒体流(20)の衝突点で前記コーティング媒体流(20)が前記部品表面(9、19)に実質的に直角を向くように、前記塗布装置(18)は前記部品表面(9、19)の上方でガイドされる、
請求項1からのいずれか1項に記載のコーティング法。
【請求項9】
a)コーティング媒体流(20)を部品表面(9、19)上に塗布するための塗布装置(18)であって、前記コーティング媒体流(20)は、前記コーティング媒体流(20)の流軸(20)に対して円対称ではなく、そのため、前記部品表面(9、19)上にある長手方向(7)を有する細長いスプレーパターン(2)を形成する、塗布装置(18)と、
b)前記部品表面(9、19)の上方で所定のコーティング媒体経路に沿って前記塗布装置(18)をガイドするための塗布ロボット(16)と、
c)前記塗布ロボット(16)を制御するためのロボット制御システム(17)と、
を備え、
d)前記ロボット制御システム(17)は前記コーティング経路(1)に沿った移動の間に前記流軸(20)を中心に前記塗布装置(18)を回転させることで、前記スプレーパターン(2)の前記長手方向(7)と前記コーティング経路(1)との間の回転角(α)を前記コーティング経路(1)に沿って変化させ、
e)コーティング対象の前記部品表面(9、19)は全体として正確に長方形というわけではなく、
f)前記コーティング媒体は互いに隣接して配置された複数の前記コーティング経路(1)に沿って前記部品表面(9、19)上に塗布され、
g)非長方形の前記部品表面(9、19)に適合するために、個別の前記コーティング経路(1)は正確に長方形というわけではなく、且つ、
h)正確に長方形というわけではない前記コーティング経路(1)に沿った移動の間、所望の経路幅(SB1、SB2、SB3)が得られるように細長い前記スプレーパターン(2)を回転させるために、前記塗布装置(18)は前記流軸(20)を中心に回転される、
ことを特徴とする、
求項1からのいずれか1項に記載のコーティング法を実行するためのコーティング設備。
【請求項10】
a)前記ロボット制御システム(17)は、前記塗布装置(18)が前記部品表面(9、19)の上方で前記コーティング経路(1)に沿って特定の移動速度で移動させられるように、前記塗布ロボット(16)を制御し、且つ、
b)前記ロボット制御システム(17)は、前記スプレーパターン(2)の前記長手方向(7)と前記経路横断方向との間の前記回転角(α)に応じて前記塗布装置(18)の前記移動速度を調節する、
請求項に記載のコーティング設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品をコーティングするための、特に、塗装設備で自動車車体部品をコーティングするための方法に関する。また、本発明は、対応するコーティング設備に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車車体部品の塗装では、塗布装置として、円対称なコーティング媒体流を放出し、これにより、部品表面に円対称なスプレーパターンを形成する回転噴霧器が最もよく用いられている。コーティング媒体流が円対称であることから、コーティング媒体流の長手軸に対するこうした回転噴霧器の角度方向は、通常、特段の影響をもたらさない。例外的に、コーティング媒体流がステアリング空気により非対称に吹き流され、これに応じて非対称なスプレーパターンが部品表面に形成されることになる場合には、回転噴霧器の角度方向は影響力を有し得る。しかし、運転中に回転噴霧器の角度方向を操ろうという具体的な試みはこれまでなされてこなかった。
【0003】
従来技術(例えば、特許文献1)では、他の塗布装置として、円対称ではなく、その結果、部品表面に円対称ではないスプレーパターンを形成するコーティング媒体流を塗布する塗布装置が知られていた。
【0004】
こうした塗布装置を、図7に示すように、隣接して配置された複数のコーティング経路1で部品表面に塗布するよう部品表面をコーティングするために用いる場合、こうしたコーティング媒体流は問題があり得た。この場合、塗布装置は長方形で端の明瞭なスプレーパターン2を放出するので、コーティング経路1は可能な限り隙間も重複もなく直接に隣接している必要がある。そのため、コーティング経路1は、隣接するコーティング経路1が重複も隙間もなく互いに隣接するよう、隣接して配置されたコーティング経路1の間に平行に延びる軌道3を有する。しかし、コーティング対象の部品が互いに平行ではない2つの部品端部4、5で縁取られている場合、この軌道3は問題を招く。即ち、図7は直線的な部品端部4と湾曲的な部品端部5を示しているが、コーティング経路1を湾曲的な部品端部5に整合させる場合、他方の部品端部4の領域に未コーティング領域6(unbeschichteten Bereiche6)が生じてしまう。ここで注意すべきなのは、塗布装置は軌道3に沿って移動する最中に回転しないため、スプレーパターン2は、常に、その長手方向7が軌道3に直角をなして経路横断方向に平行となっている点である。スプレーパターン2がこのような向きをしているため、コーティング経路7は最大経路幅となる。
【0005】
図7に示す未コーティング領域6の問題は、図8(対応する詳細については図7と同じ符号を付す)に示すように、個別のコーティング経路1が互いに正確に平行に延びるというわけではないようにすることで解消し得る。この場合、下側のコーティング経路1は、湾曲しており、下側の部品端部5と整合している。上側に向かうにつれ、コーティング経路1は、だんだんと直線的になり、だんだんと上側の部品端部4と整合するようになる。こうして、未コーティング領域6の発生は防止される。しかし、隣接するコーティング経路1の間で重複が生じ、これに応じた余剰層厚を有する重複コーティング領域8が生じてしまうので、やはり、好ましくない。また、この場合でも、塗布装置は軌道3に沿って移動する最中に回転しないため、スプレーパターン2は、常に、その長手方向7が軌道3に直角をなして経路横断方向に平行となっている。
【0006】
一般的な背景技術として、特許文献2も挙げられる。本特許文献は、非対称性を相殺するために、塗装中に、スプレー流を部品表面に対して傾けるコーティング法を開示する。しかし、この方法は、正確な長方形ではない経路を塗装するのには役立たない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許出願公開第102013002412号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102011114382号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、円対称ではなく、そのため、部品表面に特定の長手方向を有する細長いスプレーパターンを形成するコーティング媒体流を塗布する塗布装置が用いられる場合に、部品表面上での未コーティング領域6と重複コーティング領域8の発生を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、本発明に係るコーティング法により、及び、従属請求項に記載の対応するコーティング設備により、実現される。
【0010】
まず、本発明では、従来技術に従って、塗布装置はコーティング対象の部品表面の上方を所定のコーティング経路に沿ってガイドされる。この移動の間、塗布装置は部品表面上にコーティング媒体流を放出する。このコーティング媒体流は、その流軸に対して円対称ではなく、そのため、部品表面上に、特定の長手方向を有する細長いスプレーパターンを形成する。例えば、このスプレーパターンは、おおよそ長方形であってもよい。こうした細長いスプレーパターンでは、軌道に対する塗布装置の角度位置は、回転噴霧器の場合とは異なり、無価値などではない。
【0011】
そこで、本発明では、部品表面の上方での移動の間、経路横断方向に対する又は軌道に対するスプレーパターンの長手方向の角度位置がコーティング経路に沿って変化するように、塗布装置を軸流を中心に回転させる。こうして、塗布されたコーティング経路の幅をコーティング経路に沿って変化させることができる。
【0012】
最大経路幅とするには、スプレーパターンの長手方向が軌道と直角を向くように、塗布装置を回転させる。なぜなら、この場合、スプレーパターンは部品表面を最大幅でコーティングするからである。
【0013】
一方、塗布するコーティング経路を最少経路幅とするには、細長いスプレーパターンの長手方向が軌道に平行に延びるように、塗布装置を回転させる。なぜなら、この場合、細長いスプレーパターンは部品表面をより狭い幅でコーティングするからである。
【0014】
コーティング経路に沿った塗布装置の移動の間の塗布装置の回転により、最大値と最小値との間でコーティング経路の幅の調整を連続的に行うことが可能となる。この場合、コーティング経路の経路幅の最大値は、スプレーパターンの長手方向に沿ったスプレーパターンの長手範囲により決定される。一方、コーティング経路の経路幅の最大値は、長手範囲を横断する細長いスプレーパターンの横断範囲により決定される。塗布装置の適切な回転により、最大値及び最小値により決定されるこうした境界内で、経路幅を無段階的に調節することができる。
【0015】
本発明の文脈で用いられる『塗布装置の回転』という表現は、好ましくは、回転される塗布装置の全体に関する。これと区別されるべきものとしては、例えば、従来の回転噴霧器におけるベルカップの回転が挙げられる。具体的には、塗布装置の回転が部品表面上のスプレーパターンの対応する回転をもたらす点が決定的に異なる。
【0016】
ここで、軌道に対する塗布装置の回転角が層厚にも影響することは触れるべきだろう。最大経路幅となるよう塗布装置が回転される場合、他のコーティングパラメータが変わらないなら、最少層厚が得られる。経路幅が最小となるよう塗布装置が回転される場合、他のコーティングパラメータが変わらないなら、最大層厚が得られる。こうして、塗布装置の回転角は結果として生じる層厚に影響するが、層厚は可能な限り一定であるべきなので、このこと自体は望ましいものではない。
【0017】
そこで、本発明の文脈において、一定の層厚を得るために、この厄介な回転角の影響を相殺することが好ましい。しかし、許容される層厚の公差によっては、塗布器の回転を介したスライス厚の狂いを必ずしも相殺する必要がないこともある。
【0018】
層厚への回転角の厄介な影響を相殺する一案として、コーティング経路に沿って塗布装置の移動速度を適宜に調節することが挙げられる。コーティング経路の最大経路幅とこれに対応した最少層厚が得られるように塗布装置が回転される場合、コーティング厚の望ましくない減少は移動速度を遅くすることにより相殺される。一方、最少経路幅とこれに対応した最大コーティング厚が得られるように塗布装置が回転される場合、コーティング厚の望ましくない増加は移動速度を対応して上げることにより相殺される。
【0019】
層厚への塗布装置の回転の厄介な影響を相殺する別案として、コーティング媒体流量を適宜に調節することが挙げられる。塗布幅が最大で層厚が対応して最少となるように塗布装置が回転される場合、層厚の望ましくない低下はコーティング媒体流量(質量流量又は体積流量)を対応して増やすことにより相殺できる。一方、経路幅が最少で層厚が対応して最大となるように塗布装置が回転される場合、層厚の望ましくない増加はコーティング媒体流量を減らすことにより相殺できる。
【0020】
塗布装置の回転角に応じた塗布装置の移動速度の上述の調節は、本発明によれば、以下の式に従って、実行できる。
V(α)=V0/cos(α)
(但し、αは、スプレーパターンの長手方向と経路横断方向との間の回転角であり、
V0は、スプレーパターンの長手方向と経路横断方向との間の回転角αが0のときの塗布装置の移動速度であり、
V(α)は、可能な限り最も一定な層厚を得るための、現在の回転角αでの調節移動速度である。)
【0021】
また、広い部品表面(例えば、自動車車体の屋根)を塗装する場合、本発明では、重複コーティング領域及び下塗り領域(unterbeschichtete Bereiche)の発生を防ぐために、隣接する部品表面が可能な限り隙間なく且つ重複もなく互いに隣接して、複数の隣接するコーティング経路が部品表面に塗布されることが好ましい。
【0022】
これは、長方形の部品表面をコーティングする場合は比較的に簡単である。なぜなら、この場合、単に平行なコーティング経路を塗布できるからである。
【0023】
一方、本発明は、自動車車体部品で通常みられるように全体的に正確に長方形というわけではない部品表面をコーティングする場合にも適している。この場合、本発明では、非長方形部品表面に適合するよう、塗布されるコーティング経路も完全に長方形というわけではない。これは、本発明の文脈において、個別のコーティング経路に沿って移動する最中に、各コーティング経路で所望の経路幅が得られるように、塗布装置を継続的に回転させることにより実現できる。このため、個別のコーティング経路のそれぞれに沿って移動する最中に、隣接するコーティング経路の重複も隣接するコーティング経路間の隙間も生じないように、塗布装置を回転させる。
【0024】
本発明の好ましい例示的な実施形態では、塗布装置は多軸塗布ロボットにより部品表面の上方で移動させられる。こうした塗布ロボット自体は、従来技術より周知なので、詳細な記載は省略する。現時点で触れるべき唯一の点としては、塗布ロボットは、例えば、6又は7軸で連続キネマティクスを有し、任意に、塗布ロボットを固定式又は着脱式で局所的にマウントできる、多軸ロボットであることが好ましいことが挙げられる。
【0025】
塗布ロボット及び塗布装置は、運転中に、パラメータセットに従って、ロボット制御システムにより制御される。このパラメータセットは、例えば、塗布装置の移動速度、塗布装置の加速度、塗布装置の回転角、塗布装置の回転速度、塗布されるコーティング媒体の流量、又はコーティング間隔などを定義するものであってもよい。
【0026】
本発明の文脈において、このパラメータセットは、コーティング経路に沿った、即ち、コーティング経路内での移動の間に、調節されてもよい。
【0027】
このパラメータセットの調節は、例えば、連続的に実行してもよい。また、代わりに、コーティング経路を、順次移動の対象となる複数の連続した経路部に分割して、塗布装置及び塗布ロボットを制御するためのパラメータセットを、各個別経路部内では一定に保ち、ある経路部と次の経路部とでは変えることとしてもよい。
【0028】
上述したように、塗布されるコーティング経路の経路幅は、塗布装置がそれに応じて回転され得るように調節されてもよい。そこで、本発明の文脈において、塗布装置の回転角は、所望の経路幅及びスプレーパターンの長手方向に沿ったスプレーパターンの最大幅に応じて、計算されることが好ましい。例えば、この計算は以下の式に従って実行できる。
α=arccos(SB2/SB1)
(但し、SB1は、スプレーパターンの長手方向に沿ったスプレーパターンの幅であり、
SB2は、コーティング経路の所望の経路幅であり、
αは、スプレーパターンの長手方向と経路横断方向との間の回転角である。)
【0029】
上述したように、塗布ロボット及び塗布装置を制御するためのパラメータセットは、ある経路部から次の経路部にかけて、調節されてもよい。この調節は移行部で実行されることが好ましい。
【0030】
移行部の終端での塗布装置の回転角は以下の式に従って計算されることが好ましい。
α3=arccos(SB3/SB1)
(但し、α3は、移行部の終端での回転角であり、
SB1は、移行部の始端での経路幅であり、
SB3は、移行部の終端での経路幅である。)
【0031】
また、移行部の終端での塗布装置の移動速度は以下の式に従って計算されることが好ましい。
V3=V1/cos(α3)
(但し、V3は、移行部の終端での塗布装置の移動速度であり、
V1は、移行部の始端での塗布装置の移動速度であり、
α3は、移行部の終端での塗布装置の回転角である。)
【0032】
移行部に沿って塗布装置は加速度を受けるが、この加速度は以下の式に従って計算されることが好ましい。
a2=(V3−V1)/S2
(但し、a2は、移行部の間の塗布装置の加速度であり、
V3は、移行部の終端での塗布装置の移動速度であり、
V1は、移行部の始端での塗布装置の移動速度であり、
S2は、移行部の長さである。)
【0033】
移行部の部分長さS2は以下の式に従って計算されることが好ましい。
S2=[α3・(V3−V1)]/ω2
(但し、S2は、移行部の長さであり、
α3は、移行部の終端での塗布装置の回転角であり、
V3は、移行部の終端での塗布装置の移動速度であり、
V1は、移行部の始端での塗布装置の移動速度であり、
ω2は、移行部上での塗布装置の回転速度である。)
【0034】
移行部上での塗布装置の回転速度は以下の式に従って計算されることが好ましい。
ω2=V1/SB1・ΔSD%・360°/π
(但し、ω2は、移行部上での塗布装置の回転速度であり、
V1は、移行部の始端での塗布装置の移動速度であり、
SB1は、移行部の始端での経路幅であり、
ΔSD%は、層厚の公差である。)
【0035】
また、スプレーパターンは端が明瞭であることが好ましいので、塗布装置が例えば回転噴霧器などとは異なることにも触れるべきだろう。
【0036】
さらに、スプレーパターンはおおよそ長方形であってもよい。また、本発明の文脈において、スプレーパターンを他の形状とすることも可能であり、例えば、楕円形のスプレーパターンが挙げられる。
【0037】
コーティング経路について、これらを非直線部品端部に整合するように湾曲させてもよいことは触れるべきだろう。さらに、コーティング経路は、例えば、凸形状又は凹形状であってもよい。このため、本発明に係るコーティング法では、経路幅は塗布装置の対応する回転による影響を受けてもよいので、コーティング経路の側端部は互いに平行に延びる必要はない。
【0038】
また、コーティング媒体流の衝突点で、コーティング媒体流が部品表面に実質的に直角に向くように、塗布装置は部品表面の上方でガイドされることが好ましいことにも触れるべきだろう。
【0039】
最後に、本発明は、既に上で述べたように、対応するコーティング設備にも関連するので、コーティング設備に関する個別の記載は現時点では省略できることにも触れるべきだろう。
【0040】
本明細書では、ロボット制御システムはコーティング経路に沿った移動の間に流軸を中心に塗布装置を回転させるので、スプレーパターンの長手方向とコーティング経路との間の回転角はコーティング経路に沿って変化する。
【0041】
本明細書において、本発明の文脈において用いられる『ロボット制御システム』という表現は、本明細書では、広い意味に理解すべきであり、とりわけ、塗布装置及び塗布ロボットの制御に働く全てのハードウェア及びソフトウェア部品を含み得る。
【0042】
ロボット制御システムは、単一の組立体として、中枢に集約されていてもよい。また、代わりに、互いに通信し合う複数の組立体の間でロボット制御システムの異なる機能を分散させてもよい。
【0043】
ロボット制御システムの制御処理の統合は高次ソフトウェアツールにより自動的にもたらされることが好ましい。このソフトウェアツールは、コーティング対象の部品形状と幾つかのパラメータ(例えば、最少及び/又は最大許容移動速度、維持すべき層厚公差、塗布器の最大許容回転角など)とが入力されると、上述した数学的計算に基づき、対応した回転角を有する最適軌道と、塗布装置の適切な向きとを、独立して、計算する。
【0044】
他の有利な発展例については、従属請求項に記載し、又は、以下で、図面を参照しつつ、本発明の好ましい例示的な実施形態の記載とともに、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】塗装対象の自動車車体の屋根の平面図を示す。
図2図1の自動車車体の屋根を図1の下側領域で塗装するための隣接する塗装経路の模式図を示す。
図3図2の変形例を示す。
図4】塗装経路の移行部の模式図を示す。
図5図4の変形例を示す。
図6】本発明に係る塗装設備の模式図を示す。
図7】未コーティング領域が生じてしまう従来技術による平行な塗装経路を用いた塗装の模式図を示す。
図8】従来技術による隣接する塗装経路の間で重複が生じている隣接する塗装経路の模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下の本発明の記載では、繰り返しを避けるために、従来のコーティング法を示す図7及び8を参照し、以下では、対応する詳細について、同じ符号を用いる。
【0047】
図1及び2は、塗布装置による自動車車体の屋根9の塗装の模式図を示す。塗布装置は、図2に示すように、おおよそ長方形のスプレーパターン2を形成する。
【0048】
屋根9が長方形ではなくむしろ湾曲的な側端部10を有しているため、屋根9の塗装は厄介である。そのため、屋根9を平行なコーティング経路1で単純に塗装することはできない。なぜなら、そうすると、未コーティング領域6(図7参照)又は重複コーティング領域8(図8参照)が生じてしまうからである。
【0049】
そこで、本発明では、塗布装置は、軌道3に沿って、特に、塗布されるコーティング媒体流の流軸を中心に、回転され、これに応じて、スプレーパターン2も回転する。これにより、図2に示すように、細長いスプレーパターン2と経路横断方向12との間の各回転角αは各軌道3に直角に向く。図2から明らかなように、コーティング経路1が互いに隙間も重複もなく隣接し部品端部10と整合するように経路幅を適合するために、スプレーパターン2の回転角αは軌道3に沿って調節される。
【0050】
図3は、軌道3に沿った回転角αの別の調節がなされる図2の変形例を示す。なお、この場合、屋根9の全体が、隣接するコーティング経路1の間に重複も隙間もなく塗装される。
【0051】
図4は、最大経路幅SB1を有するある経路部13から実質的に減少した経路幅SB3を有する経路部14への移行の模式図を示す。
【0052】
この場合、2つの経路部13、14の間に移行部15が配置されている。移行部15の経路幅SB2は、経路部15の始端ではSB2=SB1となり、移行部15の終端ではSB2=SB3となるように調節されている。経路幅SB2のこうした調節のために、スプレーパターン2は、それぞれ、図4に示すように回転される。図4では、異なる回転角状態を軌道3に沿って示している。
【0053】
移行部15では、α2=α1=0°からα2=α3への回転角の変更が実行されるだけではない。移行部15では、さらに、軌道3に沿った塗布装置の移動速度も調節される。これにより、経路部13と経路部14との間の回転角αの変更による影響を受けぬように層厚が保たれる。そこで、経路部14での移動速度V3は、経路部13での移動速度V1と経路部14での回転角α3に応じて、以下の式に従って計算される。
V3=V1/cos(α3)
【0054】
そして、移行部15では、塗布装置は加速度a2を受けるが、この加速度は以下の式に従って計算される。
a2=(V3−V1)/S2
(但し、S2は軌道3に沿った移行部15の長さである。)
【0055】
移行部15では、塗布装置も、そして、スプレーパターン2も、回転速度ω2で回転される。回転速度ω2は、層厚公差ΔSD%、経路部15での移動速度V1、及び経路部13での経路幅SB1に応じて、以下の式に従って計算できる。
ω2=V1/SB1・ΔSD%・360°/π
【0056】
図5は、図4の変形例を示すので、繰り返しを避けるために、上述の記載を参照する。この変形例の特徴は、軌道3が、正確な直線ではなく、移行部15において、側方にオフセットしている点にある。
【0057】
最後に、図6は、相当に簡略化した模式図の形態で、上述した本発明に係る塗装法を実行するための本発明に係る塗装設備を示す。
【0058】
この塗装設備は多軸塗装ロボット16から実質的になる。この多軸塗装ロボット16は、従来通り実装することができるので、詳細な説明は省略する。
【0059】
塗装ロボット16はロボット制御システム17により制御される。また、ロボット制御システム17は、塗装ロボット16の前部に配置された塗布装置18も制御する。ロボット制御システム17は、上で詳細に述べたように、塗布装置18が塗装対象の部品表面19の上方において隣接するコーティング経路内でガイドされるように、塗装ロボット16を制御する。
【0060】
塗布装置18のこの移動では、ロボット制御システム17は、上で詳細に述べたように、塗布されるコーティング経路の経路幅に適合できるように塗布装置18がコーティング媒体流の流軸20を中心に回転され得るように、塗装ロボット16を制御する。
【0061】
本発明は、上述した好ましい例示的実施形態に限定されない。むしろ、本発明の思想を用いて、様々な変形例及び修正例が可能であり、これらも権利保護範囲に含まれる。特に、本発明は、従属請求項に記載の主題及び特徴について、これらの請求項が従属する請求項とは独立した、特に、独立請求項の特徴部を含まない形での権利保護を求める。
【0062】
[付記]
[付記1]
a)コーティング対象の部品表面(9、19)の上方を所定のコーティング経路(1)に沿って塗布装置(18)を移動させる工程と、
b)前記塗布装置(18)により前記部品表面(9、19)上にコーティング媒体流(20)を塗布する工程であって、
b1)前記塗布装置(18)が前記部品表面(9、19)の上方で移動されている間に、前記コーティング媒体流(20)は塗布され、
b2)前記コーティング媒体流(20)は、前記コーティング媒体流の流軸(20)に対して円対称ではなく、その結果、前記部品表面(9、19)上に特定の長手方向(7)を有する細長いスプレーパターン(2)を形成する、
工程と、を備え、
c)前記スプレーパターン(2)の前記長手方向(7)の角度位置(α)が経路横断方向に対して前記コーティング経路(1)に沿って変化するように、前記塗布装置(18)を前記塗布装置(18)に対して前記流軸(20)を中心に回転させる工程をさらに備えることを特徴とする、
部品をコーティングするための(特に、塗装設備で自動車車体部品をコーティングするための)コーティング法。
【0063】
[付記2]
a)所望の経路幅(SB1、SB2、SB3)を得るために、前記塗布装置(18)は、前記流軸(20)を中心に、前記スプレーパターン(2)の前記長手方向(7)と前記経路横断方向との間の特定の回転角(α)で、回転され、
b)前記塗布装置(18)は、前記コーティング経路(1)に沿って、特定の移動速度で移動させられ、且つ、
c)前記塗布装置(18)は、特定のコーティング媒体流量で、前記コーティング媒体を塗布し、且つ、
d)層厚への前記回転の影響を相殺するために、前記移動速度及び/又は前記コーティング媒体流量は、前記回転角(α)に応じて、調節される、
付記1に記載のコーティング法。
【0064】
[付記3]
前記塗布装置(18)の前記回転角(α)に応じた前記塗布装置(18)の前記移動速度の前記調節が、以下の式に従って行われる、付記2に記載のコーティング法。
V(α)=V0/cos(α)
(但し、V0は、前記スプレーパターン(2)の前記長手方向(7)と前記経路横断方向との間の前記回転角(α)が0のときの前記塗布装置(18)の前記移動速度であり、
αは、前記スプレーパターン(2)の前記長手方向(7)と前記経路横断方向との間の前記回転角(α)であり、
V(α)は、現在の前記回転角(α)での調節移動速度である。)
【0065】
[付記4]
a)コーティング対象の前記部品表面(9、19)は全体として正確に長方形というわけではなく、
b)前記コーティング媒体は互いに隣接して配置された複数の前記コーティング経路(1)に沿って前記部品表面(9、19)上に塗布され、
c)非長方形の前記部品表面(9、19)に適合するために、個別の前記コーティング経路(1)は正確に長方形というわけではなく、且つ、
d)正確に長方形というわけではない前記コーティング経路(1)に沿った移動の間、前記所望の経路幅(SB1、SB2、SB3)が得られるように細長い前記スプレーパターン(2)を回転させるために、前記塗布装置(18)は前記流軸(20)を中心に回転される、
付記1から3のいずれか1つに記載のコーティング法。
【0066】
[付記5]
a)前記塗布装置(18)は多軸塗布ロボット(16)により前記部品表面(9、19)の上方で移動させられ、
b)前記塗布装置(18)と前記塗布ロボット(16)との動作はパラメータセットにより制御され、
c)前記パラメータセットは前記コーティング経路(1)に沿った移動の間に調節される、
付記1から4のいずれか1つに記載のコーティング法。
【0067】
[付記6]
前記パラメータセットは、前記塗布装置(18)及び前記塗布ロボット(16)を制御するためのパラメータとして、
a)前記コーティング経路(1)に沿った前記塗布装置(18)の前記移動速度、
b)前記コーティング経路(1)に沿った前記塗布装置(18)の前記加速度、
c)前記スプレーパターン(2)の前記長手方向(7)と前記経路横断方向との間における前記塗布装置(18)の前記回転角(α)、
d)前記塗布装置(18)の回転速度(ω)、
e)塗布される前記コーティング媒体の流量、
f)前記塗布装置(18)と前記部品表面(9、19)との間のコーティング間隔、
のうち少なくとも1つを備える、
付記5に記載のコーティング法。
【0068】
[付記7]
a)前記塗布装置(18)及び前記塗布ロボット(16)を制御するための前記パラメータセットは前記コーティング経路(1)に沿って連続して調節され、又は、
b)前記コーティング経路(1)は、順次配置される連続した複数の経路部に分割され、前記塗布装置(18)及び前記塗布ロボット(16)を制御するための前記パラメータセットは、個別の前記経路部内では一定に保たれ、前記経路部の間では変化する、
付記5又は6に記載のコーティング法。
【0069】
[付記8]
長手方向(7)に特定のスプレー幅(SB1)を有するスプレーパターン(2)を形成するための以下の工程、
a)前記コーティング経路(1)の所望の経路幅(SB2)を求める工程と、
b)前記スプレーパターン(2)の前記長手方向(7)が前記経路横断方向に対して回転角(α)の角度をなすように、前記塗布装置(18)を前記流軸(20)を中心に回転させる工程と、
c)前記所望の経路幅(SB2)及び前記スプレー幅(SB1)に応じて前記回転角(α)を計算する工程であって、特に、
α=arccos(SB2/SB1)
(但し、SB1は、前記スプレーパターン(2)の前記長手方向(7)に沿った前記スプレーパターン(2)の幅であり、
SB2は、前記コーティング経路(1)の所望の経路幅であり、
αは、前記スプレーパターン(2)の前記長手方向(7)と前記経路横断方向との間の回転角である)
という式に従って計算する工程と、
を備える、
付記1から7のいずれか1つに記載のコーティング法。
【0070】
[付記9]
a)前記コーティング経路(1)は、経路幅を調節するために、部分長さS2を有する移行部(15)を含み、
b)前記移行部(15)の始端において、前記経路幅はSB1であり、移動速度はV1であり、且つ、回転角はα1であり、
c)前記移行部(15)内において、前記経路幅はSB2であり、前記移動速度はV2であり、加速度はa2であり、前記回転角はα2であり、回転速度はω2であり、
d)前記移行部(15)の終端において、前記経路幅はSB3であり、前記移動速度はV3であり、且つ、前記回転角はα3であり、
e)前記移行部(15)の前記終端での前記回転角α3は、
前記移行部(15)の前記始端での前記経路幅SB1、及び
前記移行部(15)の前記終端での前記経路幅SB3、
という変数に応じて計算され、特に、
α3=arccos(SB3/SB1)
という式に従って計算され、
f)前記移行部(15)の前記終端での前記移動速度V3は、
前記移行部(15)の前記終端での前記回転角α3、及び、
前記移行部(15)の前記始端での前記移動速度V1、
という変数に応じて計算され、特に、
V3=V1/cos(α3)
という式に従って計算され、
g)前記移行部(15)内の前記加速度a2は、
前記移行部(15)の前記始端での前記移動速度V1、
前記移行部(15)の前記終端での前記移動速度V3、及び、
前記移行部(15)の前記部分長さS2、
という変数に応じて計算され、特に、
a2=(V3−V1)2/S2
という式に従って計算され、
h)前記移行部(15)の前記部分長さS2は、
前記移行部(15)の前記終端での前記回転角α3、
前記移行部(15)の前記始端での前記移動速度V1、
前記移行部(15)の前記終端での前記移動速度V3、及び、
前記移行部(15)での前記回転速度ω2、
という変数に応じて計算され、特に、
S2=[α3・(V3−V1)]/ω2
という式に従って計算され、
i)前記移行部(15)での前記回転速度ω2は、
前記移行部(15)の前記始端での前記移動速度V1、
層厚公差百分率ΔSD%、及び、
前記移行部(15)の前記始端での前記経路幅SB1、
という変数に応じて計算され、特に、
ω2=V1/SB1・ΔSD%・(360°)/π
という式に従って計算される、
付記1から8のいずれか1つに記載のコーティング法。
【0071】
[付記10]
a)前記塗布装置(18)は前記コーティング経路(1)に沿った移動の間に連続して回転され、及び/又は、
b)前記スプレーパターン(2)は端が明瞭であり、及び/又は、
c)前記スプレーパターン(2)は実質的に長方形であり、及び/又は、
d)前記コーティング経路(1)の少なくとも1つは湾曲しており、及び/又は、
e)前記コーティング経路(1)の少なくとも1つは凸形状であり、及び/又は、
f)前記コーティング経路(1)の少なくとも1つは凹形状であり、及び/又は、
g)前記コーティング媒体流(20)の衝突点で前記コーティング媒体流(20)が前記部品表面(9、19)に実質的に直角を向くように、前記塗布装置(18)は前記部品表面(9、19)の上方でガイドされる、
付記1から9のいずれか1つに記載のコーティング法。
【0072】
[付記11]
a)コーティング媒体流(20)を部品表面(9、19)上に塗布するための塗布装置(18)であって、前記コーティング媒体流(20)は、前記コーティング媒体流(20)の流軸(20)に対して円対称ではなく、そのため、前記部品表面(9、19)上にある長手方向(7)を有する細長いスプレーパターン(2)を形成する、塗布装置(18)と、
b)前記部品表面(9、19)の上方で所定のコーティング媒体経路に沿って前記塗布装置(18)をガイドするための塗布ロボット(16)と、
c)前記塗布ロボット(16)を制御するためのロボット制御システム(17)と、
を備え、
d)前記ロボット制御システム(17)は前記コーティング経路(1)に沿った移動の間に前記流軸(20)を中心に前記塗布装置(18)を回転させることで、前記スプレーパターン(2)の前記長手方向(7)と前記コーティング経路(1)との間の回転角(α)を前記コーティング経路(1)に沿って変化させる、
ことを特徴とする、
コーティング設備(特に、付記1から10のいずれか1つに記載のコーティング法を実行するためのコーティング設備)。
【0073】
[付記12]
a)前記ロボット制御システム(17)は、前記塗布装置(18)が前記部品表面(9、19)の上方で前記コーティング経路(1)に沿って特定の移動速度で移動させられるように、前記塗布ロボット(16)を制御し、且つ、
b)前記ロボット制御システム(17)は、前記スプレーパターン(2)の前記長手方向(7)と前記経路横断方向との間の前記回転角(α)に応じて前記塗布装置(18)の前記移動速度を調節する、
付記11に記載のコーティング設備。
【符号の説明】
【0074】
1 コーティング経路
2 スプレーパターン
3 軌道
4 部品端部
5 部品端部
6 部品表面の未コーティング領域
7 スプレーパターンの長手方向
8 重複コーティング領域
9 自動車車体の屋根
10 屋根の側端
11 細長いスプレーパターンの長手方向
12 経路横断方向
13 最大経路幅の経路部
14 減少経路幅の経路部
15 移行部
16 塗装ロボット
17 ロボット制御システム
18 塗布装置
19 部品表面
20 コーティング媒体流の流軸
α スプレーパターンの長手方向と経路横断方向との間の回転角
α1 経路部13での回転角
α2 経路部15での回転角
α3 経路部14での回転角
ω 塗布装置の回転速度
v 塗布装置の移動速度
SB1 経路部13の最大経路幅
SB2 経路部15の経路幅
SB3 経路部14の減少経路幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8