(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6722221
(24)【登録日】2020年6月23日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】発光ダイオード
(51)【国際特許分類】
H01L 33/10 20100101AFI20200706BHJP
H01L 33/40 20100101ALI20200706BHJP
H01L 33/14 20100101ALI20200706BHJP
【FI】
H01L33/10
H01L33/40
H01L33/14
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-71697(P2018-71697)
(22)【出願日】2018年4月3日
(62)【分割の表示】特願2016-216305(P2016-216305)の分割
【原出願日】2016年5月13日
(65)【公開番号】特開2018-113477(P2018-113477A)
(43)【公開日】2018年7月19日
【審査請求日】2018年4月3日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0032026
(32)【優先日】2016年3月17日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514121240
【氏名又は名称】ルーメンス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム,デ−ウォン
【審査官】
大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−026385(JP,A)
【文献】
特開2013−123057(JP,A)
【文献】
特開2014−103240(JP,A)
【文献】
特開2013−191848(JP,A)
【文献】
特開2006−100420(JP,A)
【文献】
特開2013−115435(JP,A)
【文献】
特表2011−504660(JP,A)
【文献】
特開2011−216882(JP,A)
【文献】
特開2001−060717(JP,A)
【文献】
特開2002−164620(JP,A)
【文献】
特開平04−280693(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0256722(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 − 33/64
H01S 5/00 − 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面及び背面を有する第1導電型半導体層と、
前面及び背面を有する第2導電型半導体層と、
前記第1導電型半導体層の背面と前記第2導電型半導体層の前面との間に形成された活性層と、
前記第2導電型半導体層の背面上に形成された第2導電型反射層と、
前記第2導電型半導体層とは反対側である前記第2導電型反射層の背面上に形成されてUVA波長帯域及び青色波長帯域の光を反射する反射部と、を備え、
前記第2導電型反射層は、
前記UVA波長帯域である315nm〜420nm波長帯域の光を反射させるDBR(distributed Bragg reflector)ユニット層を複数含み、前記DBRユニット層は、低屈折率層と、前記低屈折率層に隣接する高屈折率層と、を含み、
前記反射部は、
オーミックコンタクトを向上させるための第2導電型中間層と、
前記UVA波長帯域及び青色波長帯域の光を反射させるための金属反射層と、を含み、
前記複数のDBRユニット層のうちで、前記反射部に最も近く位置するDBRユニット層の第2導電型不純物ドーピング濃度は、残りのDBRユニット層よりも高いことを特徴とする発光ダイオード。
【請求項2】
前記第2導電型中間層の厚さは、10nm〜150nmであることを特徴とする請求項1に記載の発光ダイオード。
【請求項3】
前記第2導電型反射層の厚さは、60nm〜1500nmであることを特徴とする請求項1に記載の発光ダイオード。
【請求項4】
前記第1導電型半導体層はn型半導体層であり、前記第2導電型半導体層はp型半導体層であることを特徴とする請求項1に記載の発光ダイオード。
【請求項5】
前記金属反射層は銀(Ag)を含むことを特徴とする請求項1に記載の発光ダイオード。
【請求項6】
前記第1導電型半導体層の前面にサファイア基板が位置することを特徴とする請求項1に記載の発光ダイオード。
【請求項7】
前記第2導電型半導体層と前記第2導電型反射層との間に形成された位相整合層(phase−matching layer)をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の発光ダイオード。
【請求項8】
前記DBRユニット層の個数は、前記第2導電型反射層の反射率が80%以上になるように調節されることを特徴とする請求項1に記載の発光ダイオード。
【請求項9】
前記低屈折率層及び前記高屈折率層のそれぞれの厚さは、30nm〜50nmであることを特徴とする請求項1に記載の発光ダイオード。
【請求項10】
前記第2導電型反射層において、前記DBRユニット層は3つ以上繰り返され、前記第2導電型半導体層の背面に最も近く位置する最初の3つのDBRユニット層の第2導電型不純物ドーピング濃度である第1ドーピング濃度は、残りのDBRユニット層のドーピング濃度である第2ドーピング濃度よりも低いことを特徴とする請求項1に記載の発光ダイオード。
【請求項11】
前面及び背面を有する第1導電型半導体層と、
前面及び背面を有する第2導電型半導体層と、
前記第1導電型半導体層の背面と前記第2導電型半導体層の前面との間に形成された活性層と、
前記第2導電型半導体層の背面上に形成された第2導電型反射層と、
前記第2導電型半導体層とは反対側である前記第2導電型反射層の背面上に形成されてUVA波長帯域及び青色波長帯域の光を反射し、前記第2導電型半導体層に電気的に連結された反射部と、を備え、
前記第2導電型反射層は、
前記UVA波長帯域である315nm〜420nm波長帯域の光を反射させるDBR(distributed Bragg reflector)ユニット層を複数含み、
前記複数のDBRユニット層のうちで、前記反射部に最も近く位置するDBRユニット層の第2導電型不純物ドーピング濃度は、残りのDBRユニット層よりも高いことを特徴とする発光ダイオード。
【請求項12】
前記DBRユニット層は、低屈折率層と、前記低屈折率層に隣接する高屈折率層と、を含み、
前記低屈折率層及び前記高屈折率層のそれぞれの厚さは、30nm〜50nmであることを特徴とする請求項11に記載の発光ダイオード。
【請求項13】
前記反射部は、
前記第2導電型反射層に隣接して、前記第2導電型反射層と前記反射部とのオーミックコンタクトを向上させるための第2導電型中間層と、
前記UVA波長帯域及び青色波長帯域の光を反射させるための金属反射層と、を含むことを特徴とする請求項11に記載の発光ダイオード。
【請求項14】
前記第2導電型中間層の厚さは、10nm〜150nmであることを特徴とする請求項13に記載の発光ダイオード。
【請求項15】
前記第2導電型反射層の厚さは、60nm〜1500nmであることを特徴とする請求項11に記載の発光ダイオード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオードに関し、より詳しくは、p型半導体層を通過して進行する光のうち、短波長(UVA波長)帯域の光を反射させるためにp型半導体層上に導電型反射層を形成し、さらに、短波長帯域の光及び可視光帯域の光を反射させるために導電型半導体層上に金属電極を形成した白色発光ダイオードに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)などのIII族元素の窒化物は、熱的安定性に優れ、直接遷移型のエネルギーバンド構造を有するので、最近、可視光領域及び紫外線領域の発光素子用物質として多くの脚光を浴びている。特に、窒化インジウムガリウム(InGaN)を用いた青色及び緑色発光素子は、大規模なカラー平板表示装置、信号灯、室内照明、高密度光源、高解像度出力システム、及び光通信などの多様な応用分野に活用されている。
【0003】
このようなIII族元素の窒化物半導体層は、当該半導体層を成長させる同種の基板を作成することが難しいので、類似する結晶構造を有する異種基板上に金属有機化学気相蒸着法(MOCVD:metal organic chemical vapor deposition)又は分子線蒸着法(MBE:molecular beam epitaxy)などの工程よって成長させる。異種基板としては、六方晶系の結晶構造を有するサファイア(sapphire)基板が主に使用される。しかし、サファイアは、電気的に不導体であるので、発光ダイオードの構造を制限する。このため、最近は、サファイアなどの異種の成長基板上に窒化物半導体層などの各エピタキシャル層を成長させ、成長した各エピタキシャル層に支持基板をボンディングした後、レーザーリフトオフ技術などの基板除去技術を用いて成長基板を分離し、垂直型構造の高効率発光ダイオードを製造する技術が開発されている。このような垂直型構造の発光ダイオードは、成長基板上にn型GaN層、活性層、及びp型GaN層を順次形成し、p型GaN層上にp型のオーミック電極又はオーミック反射層を形成し、その上に支持基板をボンディングした後でサファイア基板を除去し、露出したn型化合物半導体層上に電極パッドを形成して製造される。
【0004】
一方、高輝度化及び高出力化を達成し、電極パッド側とのボンディングワイヤを省略するための構造であるフリップチップ型発光ダイオードは、一般にp型半導体層ではないサファイア基板を通じて発光することによって、厚いp型電極を用いてp型半導体層の電流拡がりを良好にし、サブマウント基板を介した熱放出によって熱抵抗を大きく減少させることができる。
【0005】
このようなフリップチップ型発光ダイオード及び垂直型発光ダイオードは、活性層からp型半導体層に放出される光を反射させて基板側に放出させなければならないので、p型半導体層に放出される光を反射するために、反射層の形成が必須の要素となっている。一般に、金属電極がこのような反射層の機能を果たす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−192821号公報
【特許文献2】特開2016−001740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、短波長(UVA波長)帯域の光を用いる発光ダイオードにおいて、従来のアルミニウムが反射層に使用される場合の多様な短所を克服し、光抽出効率を向上させた発光ダイオードを提供することにある。
【0008】
また、本発明の目的は、短波長帯域の光を含む広い波長領域で高い反射率を有し、光抽出効率が向上するように、短波長帯域の光を反射させる第1反射層と、短波長帯域及び青色波長帯域の光を反射させる第2反射層とを備える発光ダイオードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するためになされた本発明の一態様による発光ダイオードは、前面及び背面を有する第1導電型半導体層と、前面及び背面を有する第2導電型半導体層と、前記第1導電型半導体層の背面と前記第2導電型半導体層の前面との間に形成された活性層と、前記第2導電型半導体層の背面上に形成された第2導電型反射層と、前記第2導電型半導体層とは反対側である前記第2導電型反射層の背面上に形成されてUVA波長帯域及び青色波長帯域の光を反射する反射部と、を備え、前記第2導電型反射層は、
前記UVA波長帯域である315nm〜420nm波長帯域の光を反射させるDBR(distributed Bragg reflector)ユニット層を複数含み、前記DBRユニット層は、低屈折率層と、前記低屈折率層に隣接する高屈折率層と、を含み
、前記反射部は、オーミックコンタクトを向上させるための第2導電型中間層と、前記UVA波長帯域及び青色波長帯域の光を反射させるための金属反射層と、を含み、前記複数のDBRユニット層のうちで、前記反射部に最も近く位置するDBRユニット層の第2導電型不純物ドーピング濃度は、残りのDBRユニット層よりも高いことを特徴とする。
【0010】
前記第2導電型中間層の厚さは、10nm〜150nmであることが好ましい。
前記第2導電型反射層の厚さは、60nm〜1500nmであることが好ましい。
前記第1導電型半導体層はn型半導体層であり、前記第2導電型半導体層はp型半導体層であり得る。
前記金属反射層は、銀(Ag)を含み得る。
前記第1導電型半導体層の前面上にサファイア基板が位置し得る。
前記第2導電型半導体層と前記第2導電型反射層との間に形成された位相整合層(phase−matching layer)をさらに含み得る。
【0011】
前記DBRユニット層の個数は、
前記第2導電型反射層の反射率が80%以上になるように調節されることが好ましい
。
【0012】
前記低屈折率層及び前記高屈折率層のそれぞれの厚さは、30nm〜50nmであり得る。
前記第2導電型反射層において、前記DBRユニット層は3つ以上繰り返され、前記第2導電型半導体層の背面に最も近く位置する最初の3つのDBRユニット層の第2導電型不純物ドーピング濃度である第1ドーピング濃度は、残りのDBRユニット層のドーピング濃度である第2ドーピング濃度よりも低いことが好ましい。
【0013】
上記目的を達成するためになされた本発明の他の態様による発光ダイオードは、前面及び背面を有する第1導電型半導体層と、前面及び背面を有する第2導電型半導体層と、前記第1導電型半導体層の背面と前記第2導電型半導体層の前面との間に形成された活性層と、前記第2導電型半導体層の背面上に形成された第2導電型反射層と、前記第2導電型半導体層とは反対側である前記第2導電型反射層の背面上に形成され
てUVA波
長帯域及び青色波長帯域の光を反射し、前記第2導電型半導体層に電気的に連結された反射部と、を備え、前記第2導電型反射層は、前
記UVA波
長帯域である315nm〜420nm波長帯域の光を反射させるDBR(distributed Bragg reflector)ユニット層を
複数含み
、前記複数のDBRユニット層のうちで、前記反射部に最も近く位置するDBRユニット層の第2導電型不純物ドーピング濃度は、残りのDBRユニット層より
も高いことを特徴とする。
【0014】
前記
DBRユニット層は、低屈折率層と、前記低屈折率層に隣接する高屈折率層と、を含み、前記低屈折率層及び前記高屈折率層のそれぞれの厚さは、30nm〜50nmであることが好ましい。
前記反射部は、前記第2導電型反射層に隣接して、前記第2導電型反射層と前記反射部とのオーミックコンタクトを向上させるための第2導電型中間層と、前記UVA波長帯域及び青色波長帯域の光を反射させるための金属反射層と、を含み得る。
【0015】
前記第2導電型中間層の厚さは、10nm〜150nmであることが好ましい。
前記第2導電型中間層の厚さは、60nm〜1500nmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、短波長(UVA波長)帯域を反射させる第1反射層と、短波長(UVA波長)帯域及び青色波長帯域を反射させる第2反射層とを含む発光ダイオードを提供することによって、UVA波長帯域及び青色波長帯域を含む広い波長帯域で高い反射率を有するようにし、光抽出効率をさらに向上させる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】アルミニウム(Al)、金(Au)、及び銀(Ag)の波長帯域に対する反射率を示すグラフである。
【
図2】本発明の一実施形態による発光ダイオードの断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態による発光ダイオードの波長に対する反射率を示すグラフである。
【
図4】本発明の一実施形態による発光ダイオードにおいて、第2導電型反射層を構成するDBRユニット層の低屈折率層及び高屈折率層に対応する位置におけるアルミニウム(Al)の含量の一例を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態による発光ダイオードにおいて、第2導電型反射層を構成するDBRユニット層の低屈折率層及び高屈折率層に対応する位置におけるアルミニウム(Al)の含量の他の例を示す図である。
【
図6】DBRユニット層に含まれる多様な形態のアルミニウム組成プロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態の具体例を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
図1は、アルミニウム(Al)、金(Au)、及び銀(Ag)の波長帯域に対する反射率を示すグラフである。銀(Ag)を含む金属電極は、反射層として用いることができる。しかし、銀の場合、青色波長帯域では反射率が非常に良好(高い)であるが、概ね315nm〜420nmの波長帯域であるUVA波長帯域では、
図1に示すように反射率が良好でない。よって、UVA波長帯域の光を用いる白色発光ダイオードを具現しようとする場合、反射層として銀を使用することは難しい。
【0020】
そこで、UVA波長帯域の光を反射するために反射層又は電極としてアルミニウム(Al)を使用する。
図1に示すように、アルミニウム(Al)は、UVA波長帯域に対して反射率が良好(高い)であるが、p型半導体層とアルミニウムとの間のオーミックコンタクトが良好ではなく、さらにアルミニウム電極を使用するためには拡散障壁層(diffusion barrier layer)を使用しなければならないので、このための工程が必要になる。
【0021】
図2は、本発明の一実施形態による発光ダイオードの断面図であり、
図3は、本発明の一実施形態による発光ダイオードの波長に対する反射率を示すグラフであり、
図4は、本発明の一実施形態による発光ダイオードにおいて、第2導電型反射層を構成するDBRユニット層の低屈折率層及び高屈折率層に対応する位置におけるアルミニウム(Al)の含量の一例を示す図であり、
図5は、本発明の一実施形態による発光ダイオードにおいて、第2導電型反射層を構成するDBRユニット層の低屈折率層及び高屈折率層に対応する位置におけるアルミニウム(Al)の含量の他の例を示す図であり、
図6は、DBRユニット層に含まれる多様な形態のアルミニウム組成プロファイルを示す図である。各図に示した発光ダイオードは、フリップチップ型発光ダイオードであり、以下、これに関して集中的に記述するが、本発明は、フリップチップ型発光ダイオードに限定されるものではなく、垂直型発光ダイオードにもそのまま適用可能である。また、各図において、各層の厚さは、説明の便宜上、誇張又は概略的に示している。
【0022】
まず、
図2を参照して本発明の一実施形態による発光ダイオードを説明する。
図2に示すように、発光ダイオードは、サファイア基板10、第1導電型半導体層20、活性層30、第2導電型半導体層40、第2導電型反射層50、第1電極80、第2電極としての反射部(72、74)、及び位相整合層90を含む。
【0023】
第1導電型半導体層20及び第2導電型半導体層40は、それぞれ前面及び背面を有する。
図2において、第1導電型半導体層20はn型半導体層であり、第2導電型半導体層40はp型半導体層である。第1導電型半導体層20、第2導電型半導体層40、及び第2導電型反射層50のそれぞれの前面は、
図2上で上側に向いた面を示し、背面は、
図2上で下側に向いた面を示す。
【0024】
活性層30は、第1導電型半導体層20の背面と第2導電型半導体層40の前面との間に形成される。活性層30は、電子と正孔との再結合によって光が発生する層であって、多重量子井戸構造(MQW:multiple quantum well)に形成する。例えば、活性層30は、InGaN、AlGaN、AlGaInN、又はGaNなどの窒化物半導体層で構成される。
【0025】
第1導電型半導体層20、活性層30、及び第2導電型半導体層40は、化学気相蒸着法(CVD:chemical vapor deposition)、金属有機化学蒸着法(MOCVD)、プラズマ化学気相蒸着法(PECVD:plasma−enhanced chemical vapor deposition)、分子線成長法(MBE)、水素化物気相成長法(HVPE:hydride vapor phase epitaxy)などの蒸着及び成長方法によって形成される。
【0026】
第1電極80は、第1導電型半導体層20に電気的に連結される構成要素であり、反射部(72、74)は、第2導電型反射層50の背面上に形成されて、第2電極として機能するものであって、オーミックコンタクトを向上させるための第2導電型中間層72と、UVA波長帯域及び青色波長帯域の光を反射させるための金属反射層74とを含む。例えば、第1電極80は、n型半導体層20に電気的に連結される電極であり、反射部(72、74)は、p型半導体層40に電気的に連結される第2電極として機能する。反射部の金属反射層74は、以下で説明する第2導電型反射層50が第1反射層として機能する際に、第2反射層として機能する。第2導電型中間層72の厚さは、概ね10nm〜150nmである。
【0027】
第2導電型反射層50は、第2導電型半導体層40の背面上に、すなわち、第2導電型半導体層40の背面と反射部(72、74)との間に形成され、活性層から第2導電型半導体層40を通過して放出される短波長帯域の光を反射する。ここで、短波長帯域は、UVA波長帯域に該当し、概ね315nm〜420nm帯域の波長を有する。
【0028】
第2導電型反射層50は、複数のDBRユニット層(50a、50b、50c、…、50z)を含む。以下では、DBRユニット層(50a、50b、50c、…、50z)のうちのいずれか一つであって、代表的に50aを例に挙げて説明する。DBRユニット層50aは、低屈折率層50a1と、低屈折率層50a1に隣接する高屈折率層50a2とを含み、低屈折率層50a1は、Al
xGa
1−xN(0<x≦1)を含み、高屈折率層50a2は、Al
yGa
1−yN(0≦y<1、y<x)を含む。第2導電型反射層50に含まれるDBRユニット層(50a、50b、50c、…、50z)の個数は可変である。DBRユニット層の個数は、第2導電型反射層50の反射率が概ね80%以上になるように調節する。低屈折率層50a1及び高屈折率層50a2の説明で使用する「隣接する」という用語は、他の構成要素の介在なしに直接隣接することを意味するか、又は他の構成要素が介在した状態で隣接することを意味する。
【0029】
図2に示すように、第2導電型反射層50が複数のDBRユニット層(50a、50b、50c、…、50z)を含む状態である場合、低屈折率層50a1及び高屈折率層50a2が継続して交互に繰り返されるパターンになる。
【0030】
例えば、第2導電型半導体層40がp型半導体層である場合、第2導電型反射層50はp型DBRである。また、低屈折率層50a1及び高屈折率層50a2は、それぞれ上述したようにAl
xGa
1−xN(0<x≦1)及びAl
yGa
1−yN(0≦y<1、y<x)を含むが、GaNの屈折率(UV帯域で約2.4)に比べてAlNの屈折率がより低いので、低屈折率層50a1が高屈折率層50a2に比べて常にAlの含量をより高く含むように構成される。
【0031】
低屈折率層50a1及び高屈折率層50a2の一般式において、低屈折率層50a1はAl
xGa
1−xNであり、高屈折率層50a2はAl
yGa
1−yNである。ここで、xとyとの間の関係式は、0≦y<x≦1である。すなわち、低屈折率層50a1のアルミニウム(Al)の含量が高屈折率層50a2のアルミニウム(Al)の含量より高い。さらに、低屈折率層50a1及び高屈折率層50a2の組成を段階的に変化させて、エネルギーバンドの急激な変化を減少できるようにする。上記の式に基づいて説明すると、例えば、低屈折率層50a1はAlNからなり、高屈折率層50a2はGaNからなる。
【0032】
また、
図2に示すように、第2導電型反射層50が複数のDBRユニット層(50a、50b、50c、…、50z)を含む場合、複数のDBRユニット層(50a、50b、50c、…、50z)のうちで、第2電極となる反射部(72、74)に最も近く位置するDBRユニット層50zの第2導電型不純物ドーピング濃度は、残りのDBRユニット層より高い。その結果、第2電極となる反射部(72、74)とのオーミックコンタクトを向上させることができる。例えば、第2導電型不純物がp型不純物である場合、p型電極となる反射部(72、74)に最も近く位置する最後のDBRユニット層50zを、最大5×10
20cm
−3まで高濃度にドーピングされたp型半導体層で形成する。
【0033】
第2導電型反射層50のDBRユニット層(50a、50b、50c、…、50z)において、第2導電型半導体層40の背面に最も近く位置する最初の3つのDBRユニット層(50a、50b、50c)の第2導電型不純物ドーピング濃度である第1ドーピング濃度は、残りのDBRユニット層の第2導電型不純物ドーピング濃度である第2ドーピング濃度より低くする。これは、第2導電型反射層50において残りの部分に比べて相対的に活性層30に近く位置するDBRユニット層の場合、自由キャリア吸収(free−carrier absorption)が相対的に大きくなるので、これを減少させるためである。第2ドーピング濃度は、第2導電型反射層50において残りのDBRユニット層のドーピング濃度である。例えば、第2ドーピング濃度は、概ね1×10
18cm
−3〜1×10
21cm
−3であり、最初の3つのDBRユニット層(50a、50b、50c)の第2導電型不純物ドーピング濃度である第1ドーピング濃度は、概ね1×10
16cm
−3〜5×10
17cm
−3である。第2導電型反射層50の全体厚さは、例えば、概ね60nm〜1500nmであり、DBRユニット層(例えば、50a)の厚さは概ね60nm〜100nmである。また、DBRユニット層(例えば、50a)において、低屈折率層50a1及び高屈折率層50a2のそれぞれの厚さは概ね30nm〜50nmである。
【0034】
位相整合層90は、第2導電型半導体層40と第2導電型反射層50との間に追加されるものであって、有効反射率を極大化するための層である。この位相整合層90の第2導電型不純物ドーピング濃度も、最初の3つのDBRユニット層(50a、50b、50c)と同様に、自由キャリア吸収を減少させるために第2導電型不純物ドーピング濃度を第2ドーピング濃度より低下させる。例えば、第2ドーピング濃度は、概ね1×10
18cm
−3〜1×10
21cm
−3であり、最初の3つのDBRユニット層(50a、50b、50c)の第2導電型不純物ドーピング濃度及び位相整合層の第2不純物ドーピング濃度のすべては、1×10
16cm
−3〜5×10
17cm
−3である。例えば、位相整合層90は、Al
xGa
1−xN(0<x<1)を含み、厚さは5nm〜50nmである。
【0035】
このように、本発明は、UVA波長帯域を反射させる第1反射層として機能する第2導電型反射層50と、UVA波長帯域及び青色波長帯域を反射させる第2反射層として機能する金属反射層74と、を含む発光ダイオードを提供するものであって、本発明による発光ダイオードは、UVA波長帯域を含む広い波長帯域で高い反射率を有し、光抽出効率をより向上させるようになる。さらに、p型半導体層の方向に伝播する光を反射させて、光効率を向上させるために導電型DBRを追加することによって、既存の非導電型DBRを形成した場合に電流経路を形成するための追加工程を削減できるという長所がある。
【0036】
次に、
図2に示した本発明の一実施形態による発光ダイオードの波長(wavelength)に対する反射率(reflectance)を示す
図3を参照すると、セクション2(S2)より短波長の帯域(セクション1(S1)及びそれ以下の帯域)は、白色発光ダイオードの具現に使用されない波長帯域(UVB、UVCと定義される)であり、セクション2は、UVA波長帯域(315nm〜420nm)の一部であって、
図2における第2導電型反射層50によって主に反射される。セクション2において、図中の実線で示すように、この波長帯域で第2導電型反射層50は90%(0.9)以上の反射率を示す。そして、セクション3は、UVA波長帯域の一部と青色波長帯域であって、この部分の反射は、図中の破線で示すように、金属反射層74によって反射される。図中の破線は、銀を金属反射層74として使用した場合である。そのため、本実施形態は、UVA波長帯域を反射させる第1反射層として機能する第2導電型反射層50と、UVA波長帯域及び青色波長帯域を反射させる第2反射層として機能する金属反射層74とを含む発光ダイオードを提供することによって、UVA波長帯域を含む広い波長帯域で高い反射率を有し、光抽出効率がさらに向上するようになる。
【0037】
図2を参照して説明した本発明の一実施形態による発光ダイオードにおいて、DBRユニット層(例えば、50a)の低屈折率層50a1が、Al
xGa
1−xN(0<x≦1)を含み、高屈折率層50a2が、Al
yGa
1−yN(0≦y<1、y<x)を含む場合を説明した。これに対応して、第2導電型反射層50のアルミニウム(Al)の含量を図で説明する。それらの各例を、
図4〜
図6に示す。各図において、x軸は第2導電型反射層50の位置を示し、y軸はAlの含量を示す。ここで、
図2に示す第2導電型反射層50の上下方向に沿った位置がx軸に対応する。
【0038】
まず、
図4を参照すると、aは低屈折率層50a1であり、bは高屈折率層50a2であり、a+bはDBRユニット層50aである。このように低屈折率層50a1ではAlの含量が最も高いので、低屈折率層50a1は実質的にAlN層になる。そして、高屈折率層50a2では、Alの含量が最も低いので、高屈折率層50a2は実質的にGaN層になる。よって、この場合、第2導電型反射層50はAlN層とGaN層とが交互に繰り返されるパターンになる。
【0039】
次に、
図5を参照すると、aは低屈折率層50a1であり、bは高屈折率層50a2である。本例において、DBRユニット層50aは、低屈折率層50a1と高屈折率層50a2との間にAlの含量が漸次低くなる第1トランジション部t1を含み、高屈折率層50a2とその次のDBRユニット層(
図1の50b)における低屈折率層50a1との間に含量が漸次高くなる第2トランジション部t2を含む。
図5の場合、0.5t2+a+0.5t1が低屈折率層であり、0.5t1+b+0.5t2が高屈折率層であり、a+b+t1+t2は一つのDBRユニット層の全体厚さである。波長との関係を考慮すると、一つのDBRユニット層の光学的厚さ、すなわち、a+b+t1+t2は、λ/2になるように設計する。また、一つのDBRユニット層内において、低屈折率層50a1及び高屈折率層50a2のそれぞれの厚さは、λ/4になるように設計する。第1トランジション部t1と第2トランジション部t2のAlの含量プロファイルは多様な形態になり、例えば、線形又は二次曲線の形態である。
【0040】
図6を参照すると、第1トランジション部t1の開始点P3と終了点P4、そして、第2トランジション部t2の開始点P1と終了点P2、すなわち、各異種接合点(P1、P2、P3、P4)は、Alの含量が漸次変化せずに急激に変化するポイントであるが、この地点にのみデルタドーピングを行い、エネルギーバンドの急激な変化を減少させる。なお、本明細書中において、各図のプロファイルに関する説明は、Alの含量を基準にして説明しているが、DBRユニット層は、Al
xGa
1−xN(0<x≦1)及びAl
yGa
1−yN(0≦y<1、y<x)からなるので、Gaの含量もそれに対応して変化する。
【0041】
一般に、デルタドーピング(delta doping)は、デルタ関数(delta function)などのプロファイルでドーピングする方法であって、第2導電型反射層50におけるドーピング過程でバックグラウンドドーピングを高める場合、自由キャリア吸収が全体的に大きくなるので、これを防止するために、本実施形態のように、第2ドーピング濃度を1×10
18cm
−3〜1×10
21cm
−3の水準にし、Alの含量が変化する部分、すなわち、各トランジション部(t1、t2)にのみこのようなデルタドーピングを適用することによって、Alの含量の変化によって発生するエネルギーバンドの急激な変化を減少させ、第2導電型反射層50における抵抗を減少させる。
【0042】
以上のように、本発明は、新たな概念の発光ダイオードを提供することによって、従来のp型半導体層上に非導電型DBRを形成する場合に比べて、電流経路を形成するための銀やアルミニウムなどのp型半導体層との機械的/電気的接合性能が良好でない金属反射電極を使用する必要がないだけでなく、追加的な金属反射層を使用しなくても光効率を大幅に向上させることができる。
【0043】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲内で多様に変更実施することが可能である。
【符号の説明】
【0044】
10 サファイア基板
20 第1導電型半導体層
30 活性層
40 第2導電型半導体層
50 第2導電型反射層
50a、50b、50c、…、50z DBRユニット層
50a1 低屈折率層
50a2 高屈折率層
72 (反射部の)第2導電型中間層
74 (反射部の)金属反射層
80 第1電極
90 位相整合層