(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6722246
(24)【登録日】2020年6月23日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】加熱装置および加熱方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/50 20060101AFI20200706BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20200706BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20200706BHJP
【FI】
H01L21/50 J
H01L21/30 567
H01L21/68 N
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-176048(P2018-176048)
(22)【出願日】2018年9月20日
(65)【公開番号】特開2020-47829(P2020-47829A)
(43)【公開日】2020年3月26日
【審査請求日】2019年4月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】梶屋 央子
(72)【発明者】
【氏名】上野 幸一
【審査官】
小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−339485(JP,A)
【文献】
特開2016−051877(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0310973(US,A1)
【文献】
特開2006−116454(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/48
H01L 21/50
H01L 21/67
H01L 21/027
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱位置に位置決めされる矩形状の基板を下方から加熱するホットプレートと、
前記ホットプレートに対して前記基板を鉛直方向において前記加熱位置よりも高い待機位置と前記加熱位置との間で昇降させる昇降機構と、
前記基板の上面の周縁部に対して当接可能な矯正部材を有する矯正機構とを備え、
前記矯正機構は、前記加熱位置に位置決めされた前記基板の四辺の近傍で前記矯正部材を前記加熱位置に位置させることで、前記ホットプレートによる前記基板の加熱前に前記基板のうち上方へ反っている前記周縁部を前記加熱位置に矯正し、前記基板の加熱中に前記基板の周縁部が前記加熱位置よりも上方に反るのを規制して前記ホットプレートにより加熱される前記基板の姿勢を制御し、
前記矯正部材は下端部を前記基板の上面と接触可能に仕上げられ、
前記矯正機構は、前記矯正部材を複数個有するとともに前記複数の矯正部材の上端部を支持する支持部を有し、
前記複数の矯正部材はそれぞれ独立して前記支持部に対して着脱自在である
ことを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱装置であって、
前記矯正部材は下端部を先細り形状に仕上げた矯正ピンであり、
前記矯正機構は、前記矯正ピンを複数個有し、各矯正ピンの前記下端部を前記基板の上面の周縁部に点接触させて前記基板の姿勢を制御する加熱装置。
【請求項3】
請求項2に記載の加熱装置であって、
前記複数の矯正ピンのうちの4本はそれぞれ前記基板の上面の四隅と点接触可能に設けられたコーナーピンである加熱装置。
【請求項4】
請求項2に記載の加熱装置であって、
前記矯正機構は、前記複数の矯正ピンの上端部を支持する支持部を有し、前記加熱位置に位置決めされた前記基板を前記ホットプレートにより加熱する前に前記複数の矯正ピンを支持したまま前記支持部を前記鉛直方向に移動させて各矯正ピンの前記下端部を前記加熱位置に位置させる加熱装置。
【請求項5】
請求項4に記載の加熱装置であって、
前記基板の昇降から独立して、各矯正ピンの前記下端部を前記加熱位置に位置させる下方位置と、各矯正ピンの前記下端部を前記加熱位置よりも高い位置に引き上げた上方位置との間で前記支持部を移動させる移動機構を備える加熱装置。
【請求項6】
請求項4に記載の加熱装置であって、
前記昇降機構は、前記基板の昇降と同期して、各矯正ピンの前記下端部を前記加熱位置に位置させる下方位置と、各矯正ピンの前記下端部を前記加熱位置よりも高い位置に引き上げた上方位置との間で移動させる加熱装置。
【請求項7】
請求項4ないし6のいずれか一項に記載の加熱装置であって、
前記複数の矯正ピンはそれぞれ独立して前記支持部に対して着脱自在である加熱装置。
【請求項8】
請求項7に記載の加熱装置であって、
前記矯正ピン毎に鉛直方向における前記支持部への前記矯正ピンの装着を調整可能である加熱装置。
【請求項9】
ホットプレートに対して矩形状の基板を所定の加熱位置に位置決めする工程と、
前記基板の上面の周縁部に対して当接可能な矯正部材を前記加熱位置よりも高い位置から前記加熱位置に位置決めされた前記基板に向けて下降させ、前記基板の四辺の近傍で前記矯正部材を前記加熱位置に位置決めし、前記矯正部材の下降中に前記基板のうち上方へ反っている前記周縁部を前記加熱位置に矯正する工程と、
前記矯正部材を前記加熱位置に位置決めした状態のまま前記ホットプレートにより前記基板を加熱するとともに前記基板の加熱中に前記基板の周縁部が前記加熱位置よりも上方に反るのを規制する工程と
を備えることを特徴とする加熱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、矩形状の基板を下方から加熱する加熱装置および加熱方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスのひとつとして、矩形状を有する基板を略水平姿勢で支持しながら基板を下方から加熱する、いわゆる加熱処理が存在している。この加熱処理では、近年、基板の大型化に伴って基板の反りがより大きくなり、均一な加熱処理が難しくなっている。そこで、例えば特許文献1に記載されている矯正技術を用いることが提案されている。この矯正技術では、チャンバーカバーの下面周縁部に傾斜面を設け、当該傾斜面を基板の周縁端を当接させた後、さらにチャンバーカバーをベークプレート(本発明の「ホットプレート」に相当)側に下降させて基板の反りを矯正する。この矯正によって基板とベークプレートとの距離を適切に維持して均一な加熱処理を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−339485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記加熱処理では、基板の反り矯正時にチャンバーカバーに設けられた傾斜面と基板の周縁端とが擦れ合うために、パーティクルが発生する可能性がある。このため、清浄な加熱雰囲気で基板を加熱することが難しい。
【0005】
また、上記加熱処理では、チャンバーカバーの傾斜面が基板の周縁端部をベークプレート側に押し付けているため、チャンバーカバーの下降量は矯正すべき反り量よりも大きい。したがって、基板の反り量が多くなると、それに応じて下降量を増大させる必要がある。しかしながら、チャンバーカバーが許容範囲を超えて移動することは妥当ではなく、反り量の増大に対応することが困難な場合がある。この場合、基板の反りを矯正し得ない。特に、近年、ウェーハレベルパッケージ(WLP:Wafer Level Packaging)やパネルレベルパッケージ(PLP:Panel Level Packaging)といった製造形態で製造される半導体パッケージでは、矩形状のガラス基板上に複数の半導体チップやチップ間の配線などが多層に組み合わされており、それらの熱収縮率や熱膨張率の相違量は単にレジスト層などを積層した半導体基板よりも大きくなっている。そのため、矯正することができる基板の反りの最大量(以下「最大矯正量」という)を高める技術の提供が望まれている。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、最大矯正量を高めつつ、清浄な加熱雰囲気で基板を加熱することができる加熱装置および加熱方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の一態様は、加熱装置であって、加熱位置に位置決めされる矩形状の基板を下方から加熱するホットプレートと、ホットプレートに対して基板を鉛直方向において加熱位置よりも高い待機位置と加熱位置との間で昇降させる昇降機構と、基板の上面の周縁部に対して当接可能な矯正部材を有する矯正機構とを備え、矯正機構は、加熱位置に位置決めされた基板の四辺の近傍で矯正部材を加熱位置に位置させることで、ホットプレートによる基板の加熱前に基板のうち上方へ反っている周縁部を加熱位置に矯正し、基板の加熱中に基板の周縁部が加熱位置よりも上方に反るのを規制してホットプレートにより加熱される基板の姿勢を制御
し、矯正部材は下端部を基板の上面と接触可能に仕上げられ、矯正機構は、矯正部材を複数個有するとともに複数の矯正部材の上端部を支持する支持部を有し、複数の矯正部材はそれぞれ独立して支持部に対して着脱自在であることを特徴としている。
【0008】
この発明の他の態様は、加熱方法であって、ホットプレートに対して矩形状の基板を所定の加熱位置に位置決めする工程と、基板の上面の周縁部に対して当接可能な矯正部材を加熱位置よりも高い位置から加熱位置に位置決めされた基板に向けて降下させ、基板の四辺の近傍で矯正部材を加熱位置に位置決めし、矯正部材の下降中に基板のうち上方へ反っている周縁部を加熱位置に矯正する工程と、矯正部材を加熱位置に位置決めした状態のままホットプレートにより基板を加熱するとともに基板の加熱中に基板の周縁部が加熱位置よりも上方に反るのを規制する工程とを備えることを特徴としている。
【0009】
このように構成された発明では、矯正部材が基板の上面の周縁部に対して当接可能となっている。そして、矯正部材が加熱位置に位置決めされた基板の四辺の近傍で加熱位置に位置する。ここで、ホットプレートによる基板の加熱前に基板のうち上方へ反っている周縁部は矯正部材に当接して加熱位置に矯正される。また、基板の加熱中に基板の周縁部が加熱位置よりも上方に反ろうとしても、矯正部材に当接して反りが規制される。このように基板の上面に対して矯正部材が鉛直下方に当接することにより基板の姿勢を制御しつつ当該基板をホットプレートにより加熱する。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、矯正部材が基板の上面に対して鉛直下方に当接して反りを矯正している。このため、パーティクルの発生を抑制して清浄な雰囲気で基板を加熱することができるとともに、従来技術よりも最大矯正量を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る加熱装置の第1実施形態を示す図である。
【
図3】支持部に対する矯正ピンの取付を説明するための図である。
【
図4】
図1に示す加熱装置による加熱動作を示すフローチャートである。
【
図5】加熱動作の主要工程を模式的に示す図である。
【
図6】矯正機構を有さない加熱装置で加熱処理を行った場合の温度特性を示すグラフである。
【
図7】本実施形態に係る加熱装置で加熱処理を行った場合の温度特性を示すグラフである。
【
図8】本発明に係る加熱装置の第2実施形態を示す図である。
【
図9】本発明に係る加熱装置の第3実施形態を示す図である。
【
図10】本発明に係る加熱装置の第4実施形態を示す図である。
【
図11】本発明に係る加熱装置の第5実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明に係る加熱装置の第1実施形態を示す図である。また、
図2は
図1のA−A線断面図である。この加熱装置1は、平面視で矩形状を有し、その表面上に半導体チップや配線などが積層された半導体パッケージ用ガラス基板(以下、単に「基板」という)Sを受け入れて加熱するものである。なお、基板の材質や積層物の種類については、これに限定されるものではなく、また例えば半導体パッケージ以外の半導体デバイスの製造に用いられる基板を加熱するものであってもよい。
【0013】
図1に示すように、加熱装置1は基板Sを受け入れるチャンバ10を備えている。チャンバ10内で処理を行うことで、加熱処理によって揮発した気体成分が周囲へ飛散するのを防止するとともに、加熱される基板Sの周囲を覆うことで熱の放散を抑制しエネルギー効率を高めることができる。これらの目的のために、チャンバ10は天板11、側板12、底板13およびシャッタ14を箱型に組み合わせた構造となっている。
【0014】
シャッタ14は、チャンバ10の一方側面に設けられた開口15に対して開閉自在に取り付けられており、閉状態ではパッキン(図示省略)を介してチャンバ10の側面に押し付けられることで開口15を塞ぐ。一方、
図1において点線で示すシャッタ14の開状態では、開放された開口15を介して外部との間で基板Sのやり取りを行うことができる。すなわち、図示しない外部の搬送ロボット等に保持される未処理の基板Sが、開口15を介してチャンバ10内に搬入される。またチャンバ10内の処理済みの基板Sが、搬送ロボット等によって外部へ搬出される。
【0015】
チャンバ10の底部にはホットプレート20が設けられている。ホットプレート20の上面には、複数の凹部(図示省略)が設けられ、各凹部に対して凹部の深さよりも若干大径の球体21が嵌め込まれている。これらの球体21の頂部で基板Sを下方から支持可能となっており、外部から搬入される基板Sは半導体チップなどが積層された面を上向きにして球体21上に載置される。こうしてホットプレート20の上面からプロキシミティギャップと呼ばれる微小空間が形成された状態で基板Sが位置決めされる。このように位置決めされて加熱処理される基板Sの位置(本明細書では、鉛直方向Zにおける基板Sの上面の高さ位置)を本明細書では「本加熱位置」と称する。また、後で詳述するように鉛直方向Zにおいて基板Sの受渡しを行うために一時的に待機させる待機位置と本加熱位置との間で予備加熱を行う位置を本明細書では「予備加熱位置」と称する。
【0016】
図1に示すように、本加熱位置(
図5中の符号P1)や予備加熱位置(
図5中の符号P2)に位置決めされた基板Sに加熱処理を施すために、ホットプレート20の内部にはヒータ22が内蔵されている。このヒータ22に対して装置全体を制御する制御部90から電力が供給されることでヒータ22が作動する。これによって、ホットプレート20の上面からの輻射熱によって基板Sが均一に加熱される。なお、球体21の個数や位置は、基板Sの平面サイズ等に応じて適宜に設定することができる。
【0017】
加熱装置1には、ホットプレート20と搬送ロボットとの間での基板Sの受け渡しをスムーズに行うために昇降機構30が設けられている。具体的には、チャンバ10の底板13およびホットプレート20には鉛直方向Zに延びる貫通孔31が複数設けられており、それらの貫通孔31の各々にリフトピン32が挿通されている。各リフトピン32の下端は昇降部材33に固定されている。昇降部材33はリフトピン駆動部34により上下方向に昇降自在に支持されている。制御部90からの昇降指令に応じてリフトピン駆動部34が作動して昇降部材33を昇降させる。これによって各リフトピン32が一体的に昇降し、リフトピン32は、その上端がホットプレート20の球体21よりも上方に突出する上部位置と、上端が球体21よりも下方に退避した下部位置との間で移動する。また、後で説明するように、リフトピン32は上部位置および下部位置の中間位置に移動して基板Sを予備加熱位置P2に位置決め可能となっている。
【0018】
図1はリフトピンが下部位置にある状態を示しており、この状態ではリフトピン32の上端は基板Sから離間している。このため、基板Sは球体21により下方から支持され、プロキシミティギャップが形成されている。こうして基板Sは本加熱位置P1に位置決めされる。一方、リフトピン32が上昇すると、リフトピン32の上端が基板Sの下面に当接して基板Sを押し上げる。これにより、基板Sが本加熱位置P1から上方に離れた予備加熱位置P2に位置させる。また、予備加熱位置P2からさらに上方に離れた待機位置に位置させることで搬送ロボットにより基板Sを受渡し可能となっている。一方、基板Sを支持していないリフトピン32が上部位置まで上昇すると、搬送ロボットにより未処理の基板Sを待機位置に搬入することができる。こうして、搬送ロボットと加熱装置1との間での基板Sの受け渡しが可能となる。
【0019】
本実施形態では、基板Sの反りを矯正して基板Sに対する加熱処理を均一に行うために矯正機構40が設けられている。具体的には、ホットプレート20の四隅部分に貫通孔41が鉛直方向Zに設けられている。また、これら4つの貫通孔41に対応してチャンバ10の底板13にも貫通孔42が鉛直方向Zに設けられている。ホットプレート20の各コーナーでは、貫通孔41、42を貫いてリフト柱43が挿通されている。各リフト柱43の上端には連結金具44が取り付けられている。そして、これら4つの連結金具44を介して額縁状(あるいは枠状)の支持部45がホットプレート20の上方で支持されている。一方、各リフト柱43の下端は昇降部材46に固定されている。この昇降部材46はリフト柱駆動部47により上下方向に昇降自在に支持されている。制御部90からの昇降指令に応じてリフト柱駆動部47が作動して昇降部材46を昇降させる。これによって各リフト柱43が一体的に昇降し、鉛直方向Zに支持部45を移動させる。
【0020】
支持部45はホットプレート20により加熱処理される基板Sの上方から当該基板Sの上面の周縁部Sa全体を臨むように配置されている。つまり、支持部45の下面451(
図3)は周縁部Saの全周と対向している。そして、支持部45の下面451から複数の矯正ピン48が鉛直下方に垂設されている。
【0021】
図3は支持部に対する矯正ピンの取付を説明するための図である。支持部45には、複数(本実施形態では
図2に示すように16個)の貫通孔452が穿設されており、各貫通孔452に対して矯正ピン48が着脱自在となっている。より具体的には、
図3に示すように、矯正ピン48の下端部481は鉛直下方に先細り形状で延設されている。一方、矯正ピン48の上端部482は貫通孔452に挿脱自在な太さに仕上げられ、その外周面に雄ネジが螺刻されている。そして、2つのナット483、484を用いることで、下端部481を支持部45から鉛直下方に向けて突設させた状態で矯正ピン48は支持部45に固定される。つまり、矯正ピン48の上端部482に下側ナット483を螺着させた状態で矯正ピン48の上端部482を貫通孔452に挿入して支持部45の上面から突出させ、それに続いて突出した部分に上側ナット484を装着し、下側ナット483および上側ナット484とで支持部45を挟み込むことで矯正ピン48が支持部45に支持される。本実施形態では、矯正ピン48は上記のように構成されていることから、矯正ピン48の上端部482に対する下側ナット483および上側ナット484の螺着位置を調整することで支持部45に対する支持部45の下端部481の垂下量DRを高精度に調整可能となっている。例えば基板Sの反り量が比較的大きい場合には、垂下量も比較的大きくなるように調整するのが好適である。
【0022】
なお、
図1および
図2では、16個の貫通孔452の全てに矯正ピン48が本発明の「矯正部材」として装着されており、それら16本の矯正ピン48のうち支持部45の四隅に装着された矯正ピン48aが本発明の「コーナーピン」に相当している。また、全貫通孔452に矯正ピン48を装着する代わりに、例えば交互に矯正ピン48を装着するように構成してもよい。
【0023】
このように矯正ピン48を支持部45に装着した状態で制御部90から上下移動指令が与えられると、昇降部材46がZ方向に昇降して矯正ピン48を一括して鉛直方向に移動させる。これによって基板Sの反りを矯正することが可能となっている。この点を含めて加熱装置1で実行される加熱処理について、
図4および
図5を参照しつつ説明する。
【0024】
図4は
図1に示す加熱装置による加熱動作を示すフローチャートである。また、
図5は加熱動作の主要工程を模式的に示す図である。この加熱処理は、制御部90が予め準備された制御プログラムを実行し装置各部に所定の動作を行わせることにより実現される。最初に、加熱装置1の各部が基板Sを受け入れるための初期状態に初期化される。初期状態においては、シャッタ14は閉じられ、ホットプレート20は基板Sを加熱するための所定温度に昇温される。そして、この状態から基板Sがチャンバ10内に搬入される。すなわち、この基板搬入時点では、リフトピン32が上部位置に位置決めされるとともに当該リフトピン32よりも十分に高い位置(退避位置)に矯正ピン48は位置決めされている。そして、シャッタ14が開かれることにより、外部から基板Sの搬入を受け入れることができる状態になる。この状態で、外部の搬送ロボットにより基板Sがチャンバ10内に搬入され、基板Sは搬送ロボットからリフトピン32に受け渡される(ステップS1)。
【0025】
こうして、加熱処理前の基板Sは待機位置でリフトピン32に支持されながら加熱処理の開始を待っており、搬送ロボットの退避後、シャッタ14が閉じられると、リフトピン32が所定距離だけ下降し、
図5の「S2時点」の欄に示すように、基板Sを予備加熱位置P2に位置決めする(ステップS2)。この「予備加熱位置」は、鉛直方向において、上記したように基板Sの受渡しを行う位置と本加熱位置P1との中間位置であり、この位置決めによって鉛直方向Zにおける基板Sの上面の高さ位置は予備加熱位置P2と一致している。
【0026】
次に、基板Sを予備加熱位置P2に位置させたまま基板Sと矯正ピン48との距離Daを算出し、その距離Daだけ支持部45が矯正ピン48とともに鉛直下方に移動する。これによって、矯正ピン48の下端部481の先端が予備加熱位置P2に位置する(ステップS3)。ここで、基板Sが凹状(あるいは「谷状」ということもある)に反っている、つまり基板Sの周縁部Saが同欄の左側図面において点線で示すように上方に反っている場合、この周縁部Saは矯正ピン48の移動中に矯正ピン48の下端部481により鉛直下方に押し付けられ、予備加熱位置P2に位置決めされる。こうして、矯正ピン48による反りの矯正が行われる。一方、基板Sが凸状(あるいは「山状」ということもある)に反っている、つまり基板Sの周縁部Saが同欄の右側図面において実線で示すように下方にお辞儀している場合、矯正ピン48は基板Sの周縁部Saと接触していない状態で予備加熱位置P2に位置決めされている。
【0027】
また、本実施形態では、基板Sおよび矯正ピン48を予備加熱位置P2に位置させたままの状態、つまり矯正ピン48により基板Sの周縁部Saの反りを矯正した状態を所定時間だけ保持する(ステップS4)。この保持中に予備加熱処理が実行される。この加熱処理中においては、多くの場合、ホットプレート20の上面からの輻射熱によって基板Sの下面の温度が高くなり、基板Sの周縁部Saは上方に反ろうとする。しかしながら、
図5の「予備加熱」の欄に示すように、矯正ピン48が予備加熱位置P2に位置した状態で加熱処理が実行される。したがって、同欄の右側図面において点線で示すように、加熱処理の開始当初において下方に反った状態であった周縁部Saは加熱処理に伴って上方に反ってくるが、予備加熱位置P2まで反った時点で矯正ピン48の下端部481に当接し、予備加熱位置P2に位置決めされる。また、それ以降も予備加熱位置P2に留め置かれる。一方、同欄の左側図面で示すように、矯正ピン48に当接して予備加熱位置P2に位置決めされている周縁部Saはそのまま矯正ピン48により予備加熱位置P2に留め置かれる。
【0028】
こうして矯正ピン48による反りの矯正を行いながら予備加熱が完了する(ステップS4で「YES」)と、リフトピン32が下部位置へ下降する。これにより基板Sはリフトピン32からホットプレート20の球体21に受け渡され、基板Sは本加熱位置P1に位置決めされる。また、矯正ピン48による基板Sの反り矯正を継続したまま支持部45がリフトピン32の下降と同期して下降して矯正ピン48を本加熱位置P1に位置決めする(ステップS5)。この時点より本加熱処理が開始される。この本加熱処理は所定時間が経過するまで実行される(ステップS6)。
【0029】
この本加熱処理中においても、予備加熱処理中と同様に、矯正ピン48の存在によって基板Sの周縁部Saが本加熱位置P1に位置決めされた状態で本加熱処理が実行される。そして、本加熱処理が完了する(ステップS6で「YES」)と、支持部45は
図5の「S2時点」の欄に図示された位置に移動して矯正ピン48を待機位置(基板Sの受渡位置)よりも上方の位置、つまり上記退避位置に位置させる(ステップS7)。それに続いて、基板Sは外部へアンローディングされる(ステップS8)。すなわち、リフトピン32が上昇することで基板Sをホットプレート20から離間させ、シャッタ14が開いて搬送ロボットを進入させることにより、リフトピン32から搬送ロボットへ基板Sが受け渡されて搬出される。
【0030】
以上のように、本実施形態によれば、矯正ピン48は基板Sの上面の周縁部Saに対して当接可能に設けられている。そして、加熱処理(予備加熱処理および本加熱処理)において、矯正ピン48は加熱位置(予備加熱位置P2および本加熱位置P1)に位置決めされた基板Sの四辺の近傍で当該加熱位置に位置している。このため、基板Sの全周縁部Saまたは一部が予備加熱前から既に反っていたとしても、矯正ピン48に当接して予備加熱位置P2に矯正することができる。また、基板Sの加熱中に基板Sの周縁部が加熱位置よりも上方に反ろうとしても、矯正ピン48への当接によって反りを規制することができる。その結果、基板Sの面内において加熱処理を均一に行うことができる。
【0031】
その効果を実証するために、縦510×横510×厚み1.1mmのガラス基板を、
図1の加熱装置1から矯正機構40を除外した装置と
図1に示す加熱装置1とで110℃に加熱したところ、それぞれ
図6および
図7に示す実験結果が得られた。
図6は矯正機構を有さない加熱装置で加熱処理を行った場合の温度特性を示すグラフであり、
図7は本実施形態に係る加熱装置で加熱処理を行った場合の温度特性を示すグラフである。これらのグラフにおいて、横軸は加熱時間を示し、縦軸は基板Sの上面中央および四隅に取り付けれた温度センサによる計測温度を示している。また、これらのグラフ中、点線は基板Sの上面中央の温度変化を示し、その他は基板Sの上面四隅の温度変化を示している。これらのグラフから明らかなように矯正機構40を設けたことで優れた温度均一性が得られる。
【0032】
また、本実施形態によれば、基板Sの上面に対して矯正ピン48が鉛直下方に当接することにより基板Sの姿勢を制御しつつ当該基板Sをホットプレート20により加熱することができる。したがって、基板の端面と傾斜面とが擦れ合う従来技術(特許文献1に記載の発明)に比べ、パーティクルの発生を抑制することができ、清浄な雰囲気で基板Sを加熱することができる。また、従来技術よりも最大矯正量を高めることができる。
【0033】
このような実施形態では、本加熱位置P1および予備加熱位置P2が本発明の「加熱位置」の一例に相当している。また、矯正ピン48が本発明の「矯正部材」の一例に相当している。また、リフト柱43、昇降部材46およびリフト柱駆動部47が本発明の「移動機構」として機能している。
【0034】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記実施形態では、額縁状の支持部45に対して16本の矯正ピン48を装着しているが、矯正ピン48の本数はこれに限定されるものではなく、基板Sのサイズや形状などに応じて適宜変更可能である。また、支持部45の構成については、例えば
図8や
図9に示すように、複数の支持部材45A〜45Dを組み合わせたものを用いてもよい(第2実施形態、第3実施形態)。また、支持部材45A〜45Dを一括して鉛直方向Zに移動させるように構成してもよいし、支持部材45A〜45Dを個々に鉛直方向Zに移動させるように構成してもよい。
【0035】
また、上記実施形態では、複数の矯正ピン48により基板Sの上面の周縁部Saを基板Sの四辺に沿って離散的に押さえ付けて基板Sの反りを矯正しているが、
図10に示すように基板Sの辺部に沿って延設されるとともに延設方向と直交する面内において下端部が先細り形状に仕上げられた矯正ブロック49を用いてもよい(第4実施形態)。この場合、基板Sの上面の周縁部Saを基板Sの辺部に沿って連続的に押さえ付けて基板Sの反りを矯正することができる。なお、同図中の符号491は矯正ブロック49を支持部45に取り付けるための軸部である。
【0036】
また、上記実施形態では、矯正部材(矯正ピン48や矯正ブロック49)の下端部を鋭利に仕上げ、基板Sの上面の周縁部Saと点接触あるいは線接触させているが、下端部の形状はこれに限定されるものではない。例えば
図11に示すように、矯正ブロック49の下端部を一定幅Wを有する当接面492に仕上げてもよく、この場合、矯正ブロック49は基板Sの上面の周縁部Saと面接触しながら基板Sの周縁部Saの反りを矯正することができる(第5実施形態)。
【0037】
また、上記実施形態では、昇降機構30による基板Sの昇降から独立して、各矯正ピン48を鉛直方向Zに移動させるために移動機構(リフト柱43、昇降部材46およびリフト柱駆動部47)が設けられているが、昇降機構30が基板Sの昇降と同期して矯正ピン48を鉛直方向Zに移動させるように構成してもよい。この場合、移動機構が不要となり、装置構成の簡素化およびコスト低減を図ることができる。
【0038】
また、上記実施形態では、プロキシミティギャップを介して加熱処理を行う加熱装置に本発明を適用しているが、ホットプレート20の上面に基板Sを直接載置して加熱処理を行う加熱装置や加熱処理時に基板の下面を吸着して加熱処理を行う加熱装置(例えば特開2006−319093号公報)等にも本発明を適用することができる。
【0039】
また、上記実施形態では、加熱処理として予備加熱と本加熱とを実行しているが、本加熱のみを実行する加熱装置に対しても本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
この発明は、矩形状の基板を下方から加熱する加熱技術全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1…加熱装置
20…ホットプレート
30…昇降機構
32…リフトピン
33,46…昇降部材
34…リフトピン駆動部
40…矯正機構
43…リフト柱
44…連結金具
45…支持部
45A〜45D…支持部材
47…リフト柱駆動部
48,48a…矯正ピン(矯正部材)
49…矯正ブロック(矯正部材)
P1…本加熱位置(加熱位置)
P2…予備加熱位置(加熱位置)
S…基板
Z…鉛直方向