【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年5月24日、株式会社リンガーハットが自社グループ会社である浜勝株式会社の浜かつ荒尾有明プラザ店、他14店舗にて、池田信、鈴木聡美、戸澤幸一が発明した弁当容器を使用した弁当を販売した。平成30年3月16日、株式会社リンガーハットが浜かつのウェブサイトにて、池田信、鈴木聡美、戸澤幸一が発明した弁当容器について公開した。
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の要旨は、最下層に敷設した保温材収納袋と、その上方に積層し方形外枠内に嵌着した合成樹脂製の惣菜用ケースと、更にその上方に積層し、同じく方形外枠内に嵌着した合成樹脂製の飯用ケースと、より構成し、しかも、惣菜用ケースの内底面には吸着シートを敷設すると共に、飯用ケースの上面には外蓋を閉蓋したことを特徴とする弁当容器を提供することにある。
【0022】
また、飯用ケースの上面には内蓋を、更にその上方には外蓋を重ねて閉蓋したことを特徴とする。
【0023】
また、保温材収納袋は、保温材として麦を素材に電子レンジで加熱して保温機能を果たすようにした略長方形袋収納の麦保温材としたことを特徴とする。
【0024】
また、惣菜用ケースと飯用ケースとを更に上方に積層して更に四段重ねとしたことを特徴とする。
【0025】
〔1.弁当容器の構成〕
以下、本発明の実施例に係る弁当容器の構成について図面を参照しながら説明する。
図1は弁当容器Aの斜視図、
図2は惣菜用ケース又は飯用ケースの分解斜視図、
図3は惣菜用ケース又は飯用ケースのA−A断面図、
図4は惣菜用ケース又は飯用ケースのA−A断面における部分拡大図、
図5は弁当容器のB−B断面図である。
【0026】
弁当容器Aは、
図1及び
図2に示すように、最下層に敷設した保温材収納袋10と、その上方に積層し方形外枠20内に嵌着した合成樹脂製の惣菜用ケース30と、更にその上方に積層し、同じく方形外枠40内に嵌着した合成樹脂製の飯用ケース50と、を備えている。
【0027】
なお、以下において飯用ケース50及び飯用ケース50の方形外枠40については、惣菜用ケース30及び惣菜用ケース30の方形外枠20の構成と同一の構成の説明を省略する。
【0028】
保温材収納袋10は、
図2に示すように綿製や合成樹脂製などの不織布にて形成された多孔質の略長方形袋12の内部に保温材として丸麦11を収納して麦保温材を構成しており、丸麦11を電子レンジで加熱することにより保温機能を果たすようにしている。
【0029】
ここで保温材収納袋10の保温機能とは、弁当容器Aに収納した調理物、特に油ちょう物の温度を収納から30分後においてもその余熱を保持できる機能のことを言う。具体的には、弁当容器Aに収納してから30分後の調理物の温度を65℃以上に保持する機能を意図する。
【0030】
略長方形袋12に収納する保温材は、丸麦11の他に例えば、小豆、緑豆、大麦、えん麦、などの穀物類であればよい。
【0031】
保温材として丸麦11を採用すれば、丸麦11は扁平楕円形であるために他の穀物類に比して略長方形袋12で嵩張らずに高密度収納でき、長方形袋12の収納容積を減容化して保温材収納袋10のコンパクト化を図ることができ、保温性に優れて低コストで使用することができる。
【0032】
保温材としての丸麦11の収納量は、略長方形袋12へ収容構成した保温材収納袋10を扁平状に均すことができ且つ加熱した際の保温機能が果たせる量にしており、具体的には80g〜150gとしている。
【0033】
丸麦11の収納量は、80g未満だと持続的な保温を行うことができない一方、150gより多くすると保温材収納袋10を徒に大型化させると共に電子レンジによる加熱時間を増加させてしまう。
【0034】
したがって、保温機能を果たすための丸麦11の略長方形袋12への収納量は、80g〜150gとすることが好適である。
【0035】
略長方形袋12は、丸麦11を収納して保温材収納袋10を扁平状に均した場合の下底面積を惣菜用ケース30の外底面積と略同じものを用いる。
【0036】
また、略長方形袋12を形成する素材としては、内部に収納した保温材からの熱を外部に伝えることができる伝熱素材であれば特に限定されることはなく、例えば、綿、絹などの天然素材、ポリエンチレンテフタレートなどの合成樹脂素材を採用することができる。
【0037】
このような保温材としての丸麦11を略長方形袋12内に収納形成した保温材収納袋10において、扁平状に均した場合の厚みは約7mm〜15mmとなる。
【0038】
かかる保温材収納袋10の電子レンジによる加熱時間は、電子レンジの出力や丸麦11の収納量によって異なる。
【0039】
例えば、出力700Wの電子レンジを用いた場合には、収納した丸麦100gに対して1分15秒〜1分45秒、丸麦200gに対して1分46秒〜2分15秒、丸麦300gに対して2分16秒〜2分45秒、丸麦400gに対して2分46秒〜3分45秒、加熱することにより保温材収納袋10に保温機能を確実に付与することができる。
【0040】
すなわち、出力700Wの電子レンジによる丸麦100g収納の保温材収納袋10の加熱時間は、保温材収納袋1個につき75秒〜135秒とし、保温材収納袋を1個増加させる毎に加熱時間を30秒間増加させる。
【0041】
出力700Wの電子レンジによる丸麦100g収納の保温材収納袋1個あたりの加熱時間は、75秒を下回ると保温材の加熱が不十分となる一方、135秒を上回ると保温材が燃焼してしまい保温機能を果たすことができない。
【0042】
したがって、保温材収納袋1個につき出力700Wの電子レンジによる加熱時間は75秒〜135秒、好適には90秒〜120秒とすることで良好な保温機能を果たすことができる。
【0043】
惣菜用ケース30は、可撓性を有する上方開口の略逆錐台形の箱体であり、方形外枠20内に嵌着可能に構成している。
【0044】
惣菜用ケース30の素材は、可撓性を有していれば特に限定されることはないが、可撓性に加えて高熱伝性を有する素材を採用することによりケース外部からケース内部に収納した調理物への熱伝効率を向上することができる。
【0045】
このような高熱伝性素材としては、例えば、ナイロン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂などのプラスチック樹脂、鋼、銅、アルミなどの金属を採用することができる。
【0046】
さらに、熱伝効率を向上すべく惣菜用ケース30を肉薄に形成することとしてもよい。例えば、惣菜用ケース30は、保温材収納袋10に接触するケース底部や後述する熱空気貯溜空間と接する周壁を肉薄に形成することも可能である。なお、本実施例の惣菜用ケース30の肉厚は約0.3mm〜0.5mmにしている。
【0047】
惣菜用ケース30の内部空間S1は、
図2及び
図3に示すように所定位置に設けた仕切壁31により、惣菜を収納するための惣菜収納部32aと、惣菜以外の薬味や煮物等を収納するための薬味等収納部32bと、に区画している。
【0048】
惣菜収納部32aや薬味収納部32bは、
図3に示すようにそれぞれ所定深さの逆錐台形状に形成しており、その外周面は内方にせり出すように下方傾斜したテーパー面30aを形成している。
【0049】
なお、本実施例では惣菜用ケース30の内部の約2/3空間を惣菜収納部32aとし、残り約1/3空間を薬味収納部32bとしている。
【0050】
惣菜用ケース30の内底面、すなわち惣菜収納部32aや薬味収納部32bの内底面は調理物を収納載置する調理物載置面としている。
【0051】
惣菜用ケース30の調理物載置面は、惣菜用ケース30の内底縁部よりケース内方に凸状に上方突出して形成することとしてもよい。
【0052】
すなわち、惣菜用ケース30の底部は、断面視において底部中央部を底部周縁部より上方隆起した凸状に形成し、底部周縁部を調理物から滲出する余分な水分や油分を貯溜するための貯溜溝部とすると共に、貯溜溝部より上方の底部中央部を調理物を載置するための調理物載置部として構成することとしてもよい。
【0053】
このような構成により調理載置部に載置した調理物から滲出する余分な水分や油分をその周りの貯溜溝部に貯溜することができる。また、惣菜用ケース30の底部を断面視凸形状としたことにより惣菜用ケース30の強度を向上させることができる。
【0054】
また、惣菜用ケース30の底部を断面視凸形状としたことにより、調理物載置部に相当する
反対側の惣菜用ケース30の外底
側には凹
状部を形成している。
【0055】
すなわち、惣菜用ケース30の外底側中央部の凹
状部は、惣菜用ケース30の底部に敷設した保温材収納袋1
0を嵌着する嵌着
凹状部として機能する。
【0056】
したがって、保温材収納袋10上部を凹溝にはめ込むことにより惣菜用ケース30の外底部から保温材収納袋10が不用意にずれることを防止でき、保温材収納袋10の上面と惣菜用ケース30の外底面とを確実に面接触させて調理物載置部に載置した調理物に対して保温材収納袋10からの熱を効果的に付与することができる。
【0057】
また、惣菜用ケース30の周壁には、肉薄形成したケース強度を確保すべく上下方向に伸延する補強用突条又は補強用凹部を、周方向に所定間隔を隔てて内方又は外方に突出形成することとしてもよい。
【0058】
また、惣菜用ケース30の上部外周には、
図2〜
図4に示すように惣菜用ケース30の上端周縁と平行に短線状の突状リブ33を一定間隔を隔てて外方に突出形成している。
【0059】
また、惣菜用ケース30の上端周縁には、
図3及び
図4に示すように断面視下方開放コ字状の雌側鍔部34を外方に突出形成している。なお、雌側鍔部34における下方開方の開口幅は、方形外枠20の肉厚よりやや狭くなるようにしている。
【0060】
方形外枠20は、
図3に示すように所定厚みを有する可撓性板体を無端状にした方形枠体であり、惣菜用ケース30外周を囲繞するように4つの折曲角部を有して折りたたみ可能に形成している。なお、本実施例の方形外枠20の厚みは2mm〜4mmにしている。
【0061】
また、方形外枠20の高さは、惣菜用ケース30の高さと略同じであり、本実施例では45mm〜50mmとなるように形成している。
【0062】
方形外枠20の素材は、可撓性を有していれば特に限定されることはないが、可撓性に加えて断熱性を有する素材を採用することにより方形外枠20外への熱の逸散による熱損失を可及的防止して保温効果を向上することができる。
【0063】
このような断熱性素材としては、例えば、発泡スチロール、発泡ウレタンなどの発泡樹脂、又は竹材や木材等の天然素材を採用することができる。
【0064】
方形外枠20の上部内周面には、
図1〜
図4に示すように惣菜用ケース30の突状リブ33に対応する凹状の雌側溝部21を形成している。
【0065】
このような構成により、方形外枠20内周の雌側溝部21に惣菜用ケース30上部外周の突状リブ33を嵌着係合可能とすると共に惣菜用ケース30上端周縁の雌側鍔部34の内方に方形外枠20の上端縁部を嵌合可能とした、惣菜用ケース30と方形外枠20との相互の嵌め込み式組み立て構造を実現している。
【0066】
特に惣菜用ケース30は逆錐台形状に形成しているため、方形外枠20に惣菜用ケース30を内嵌することによって、
図3に示すように方形外枠20の内周壁と惣菜用ケース30の外周壁との間には隙間空間として熱空気を貯溜するための熱空気貯溜空間S2を形成している。
【0067】
換言すれば、惣菜用ケース30は、その外周側全域を囲繞するジャケットとしての熱空気貯溜空間S2を方形外枠20との間に形成するように逆錐台状に形成している。
【0068】
また、惣菜用ケース30の上端縁の角部には、
図2に示すように平面視略L字状の係合突部35を立設している。
【0069】
具体的には、係合突部35は、惣菜用ケース30の上端周縁の角部の形状に沿うように同角部から平面視略L字形状で上方に突出形成しており、
図2及び
図5に示すように飯用ケース50の方形外枠40下部隅部と係合可能にしている。
【0070】
このような構成により、惣菜用ケース30と飯用ケース50とにおいて、上側の方形外枠40の隅部に惣菜用ケース30の係合突部35を係合して、下側の方形外枠20上方位置に惣菜用ケース30の雌側鍔部34を介して上側の方形外枠40を載置積載可能とし、惣菜用ケース30の上面(上部開口)を飯用ケース50の底面により閉蓋する、惣菜用ケース30と飯用ケース50との嵌め込み式積層構造を構築している。
【0071】
また、惣菜用ケース30の内底面には、吸着シート80を敷設すると共に飯用ケース50の上面(上部開口)には外蓋60を閉蓋している。
【0072】
吸着シート80は、
図2及び
図3に示すように惣菜用ケース30の内底面と略同一面積の矩形状とし、惣菜用ケース30内に収納した惣菜から滲出する油分や水分を吸着可能に構成している。
【0073】
すなわち、吸着シート80は、不織布又はビニール素材からなり、吸着機能として、惣菜から滲出する油分吸着量を6.0〜20.0gとする油分吸着機能と、内部に収納した惣菜表面の水分量を20.0%〜45.0%とする水分吸着機能を有するように構成している。
【0074】
具体的には、吸着シート80は、
図2に示すように惣菜収納部32aの内底面と略同一面積となるように形成した矩形状の扁平袋体81と、扁平袋体81内に収納する吸着材82と、で構成している。
【0075】
なお、扁平袋体81の表面には、調理物の水分や油分を袋体内部に導いて収納した吸着材82に吸着させるための複数の導通孔を形成している。
【0076】
また、扁平袋体81の表面は、惣菜底面との接触面積を可及的拡大するためのエンボス加工を施している。
【0077】
なお、扁平袋体81の素材はポリエチレン、ポリプロプレンなどの合成樹脂フィルムを採用することができ、吸着材82の素材は綿や綿、パルプなどの天然素材、ポリプロピレンなど合成素材、又はこれらの混合物を採用することができる。
【0078】
外蓋60は、可撓性のプラスチック素材で断面視略台形に形成したドーム状蓋体であり、
図1〜
図3に示すようにその全周縁部で飯用ケース50の上端周縁に外嵌可能に構成している。
【0079】
具体的には、外蓋60は、
図1〜
図4(a)に示すようにその大部分の面積を占める天板として断面視略台形状に上方突出した天板ドーム部61と、天板ドーム部61の周縁外側で飯用ケース50の上端周縁を外方囲繞するように下方折曲形成した蓋係止枠部62と、蓋係止枠部62の内側で下方突出し、内蓋70を上方から押圧規制するための内蓋規制突条64と、天板ドーム部61の隅部近傍でドーム部内部と連通し、飯用ケース50の嵌合突部55に対応した嵌合凹部63と、を備える。
【0080】
蓋係止枠部62は、
図3及び
図4(a)に示すように中途部で内方突出した突条62aを備えている。一方、飯用ケース50の雌側鍔部先端部54aは外方でやや反り返るように屈曲している。
【0081】
このような構成により、飯用ケース50と外蓋60において、鍔部先端部54aが突条62aより上方内側位置に入り込み突条62aと鍔部先端部54aとを係合可能とすると共に嵌合突部55と嵌合凹部63とを嵌着可能とした、飯用ケース50と外蓋60との嵌め込み式閉蓋構造を構築している。
【0082】
また、弁当容器Aは、
図2〜
図5に示すように、飯用ケース50の上面には内蓋70を、更にその上方には外蓋60を重ねて閉蓋する、いわゆる二重蓋構造としている。
【0083】
内蓋70は、
図2に示すように吸水吸湿性の厚紙で形成された矩形板体であり、惣菜用ケース30や飯用ケース50の上部開口(上面)と略同じ面積となるように形成している。
【0084】
内蓋70は、外装としての上層を表面に印刷加工を施した耐水層とすると共に惣菜用ケース30の内部側に向けた下層を水蒸気を吸水吸湿する吸水層として構成している。
【0085】
具体的には、内蓋70は、内蓋70の表面側から裏面側にかけて順番に、印刷が施され、水分の含浸を可及的抑制する耐水層、撥水性を有するバインダ層、吸湿吸水機能を有する吸水層の3層積層構造としている。
【0086】
耐水層は、加工原紙に耐水剤を抄き込み加工した厚紙で形成している。耐水層は、強度と耐水性を持ち、内蓋70の形状を保持すると共に強固とする芯層として機能する。
【0087】
吸水層は、液体としての水以外に、調理物から発生する水蒸気を効果的に吸水する素材であれば特に限定されることはなく、本実施例では天然パルプを採用している。
【0088】
また、耐水層と吸水層とを結合するバインダ層は、ポリエチレンやポリプロピレンなどの合成樹脂製であり、吸水層と耐水層との間における水分移動を規制する。
【0089】
このように構成した内蓋70の厚みは、米坪単位で300g/m
2〜400g/m
2、より好ましくは330g/m
2〜370g/m
2となるように形成している。
【0090】
かかる内蓋70は、内部に調理物を収納した惣菜用ケース30を閉蓋した場合には、調理物の上方に吸水層が位置して調理物から発生する水蒸気を効果的に吸着すると共に内蓋70が加温されて同内蓋70を保温材として機能することを可能としている。
【0091】
さらには、吸水層に吸水吸湿された水分の耐水層への移動をバインダ層により規制するため、内蓋70が同水分によりふやけて変形してしまうことを防止して平板形状を長時間に亘って保持することを可能としている。
【0092】
このような構成の内蓋70は、
図3〜
図5に示すように外蓋60と飯用ケース50とによりなす内部空間を、上側を外蓋60の天板ドーム部61によりなす蒸気貯溜空間S3と、下側を調理物収容空間S1(飯収納部52a、薬味等収納部52b)とに区画する。
【0093】
内蓋70は、
図4(a)に示すように飯用ケース50の上部開口を閉蓋してさらにその上方で外蓋60にて閉蓋した状態において、外蓋60の内蓋規制突条64と飯用ケース50の上部開口周縁部(雌側鍔部54の上面)との間に挟持されて上下方向の動きを規制される。
【0094】
また、内蓋70の角部近傍には、惣菜用ケース30や飯用ケース50の上部角部で立設した係合突部35、55に対応する平面視三角形状の挿入孔71を4つ貫通して形成しており、同挿入孔71に挿入した係合突部35、55に係合して前後左右方向の内蓋70の動きが規制される。
【0095】
また、挿入孔71は平面視略三角形状に形成しているため平面視略L字状の係合突部35、55により完全閉塞されることなく開口状態となるため、
図5に示すように内蓋70により区画された飯用ケース50の内部空間S1(飯収納部52a、薬味等収納部52b)と外蓋60の蒸気貯溜空間S3とが挿入孔71により連通する。
【0096】
同様に、惣菜用ケース30上面を内蓋70で閉蓋した場合には、
図5に示すように方形外枠40と飯用ケース50との間に形成された熱空気貯溜空間S2と下方の惣菜用ケース30の内部空間S1とが挿入孔71を介して連通する。
【0097】
このように内蓋70の挿入孔71に係合突部35、55を挿入して内蓋70を各ケース30、50に閉蓋固定すると共に挿入孔71により内蓋70で区画されたケース30、50の内部空間S1と、熱空気貯溜空間S2又は蒸気貯溜空間S3との連通を可能とした、内蓋70と各ケース30、50との嵌め込み式閉蓋構造を実現している。
【0098】
上述してきたように、弁当容器Aにおける各ケース30、50は、コンパクト化を図るべく互いに縦方向に積層可能に構成しつつも、確実に保温機能を果たすべく全周囲を加温保温機能を有する保温材収納袋10、内部空間S1、熱空気貯溜空間S2、蒸気貯溜空間S3で囲繞したジャケット構造を構成し、断熱加温効果を飛躍的に向上させている。
【0099】
具体的には、惣菜用ケース30は、外周側を方形外枠20と惣菜用ケース30との間に形成したジャケットとしての熱空気貯溜空間S2により、上方外側を飯用ケース50により、下方外側を保温材収納袋10により囲繞するように構成している。
【0100】
一方、飯用ケース50は、外周側を方形外枠40と飯用ケース50との間に形成されると共に惣菜用ケース30の内部空間と連通するジャケットとしての熱空気貯溜空間S2により、上方外側を内蓋70と外蓋60との間に形成したジャケットとしての蒸気貯溜空間S3により、下方外側を惣菜用ケース30の内部空間S1により、により囲繞するように構成している。
【0101】
〔2.弁当容器の保温機能〕
次に、弁当容器Aにおける保温機能について説明する。まず、折り畳み収納されている方形外枠20を方形枠状に広げ、同枠内に惣菜用ケース30を嵌着して調理物を収納可能状態とする。なお、収納する調理物に合わせて内部に吸着シート80を敷設する。
【0102】
かかる惣菜用ケース30と飯用ケース50とに、それぞれ加熱保温状態の惣菜Dと米飯Rを敷き詰め収納する。
【0103】
次いで、惣菜用ケース30上部開口を内蓋70で閉塞し、同惣菜用ケース30の上方、すなわち内蓋70の上に飯用ケース50を載置する。
【0104】
この際、飯用ケース50を囲繞する方形外枠40の下部内側に惣菜用ケース30の上部(内蓋上面)の4つの角部で上方突出する係合突部35を係合内嵌して惣菜用ケース30に飯用ケース50を固定する。
【0105】
そして、飯用ケース50を内蓋70で閉塞し、さらに外蓋60で閉塞して調理物を収納した弁当容器Aとする。
【0106】
一方、保温材収納袋10は、電子レンジにてレンジアップ後、内部に収容した丸麦11を均して扁平状にし、紙袋等の持ち帰り用袋の底部に敷設する。
【0107】
かかる保温材収納袋10内上に弁当容器Aを載置する。これにより保温材収納袋10の上面が惣菜用ケース30の外底面と面接触し、保温材収納袋10の熱が惣菜用ケース30底部を介して同ケース内の惣菜Dに伝わる。
【0108】
惣菜用ケース30の内部空間S1で発生した惣菜Dに由来する熱蒸気は、惣菜用ケース30と飯用ケース50との間に介設した内蓋70により吸水吸熱されると共にその4隅の挿入孔71を介して上層の飯用ケース50外部の熱空気貯溜空間S2へ導入され、熱空気貯溜空間S2を断熱加温ジャケットとして機能させる。
【0109】
すなわち、飯用ケース50内に収納した米飯Rは、飯用ケース50の外周全域、すなわち下方の惣菜用ケース30の内部空間S1に貯溜する熱蒸気より加温された内蓋70と、熱空気貯溜空間S2とにより保温される。
【0110】
また、飯用ケース50の内部で発生した米飯Rに由来する熱蒸気は、惣菜用ケース30と同様に、惣菜用ケース30と飯用ケース50との間に介設した内蓋70により吸水吸熱されるとともにその4隅の挿入孔71を介して外蓋60の蒸気貯溜空間S3へ導入され、蒸気貯溜空間S3を断熱加温ジャケットとして機能させる。
【0111】
さらには、内蓋70が、飯用ケース50の外周壁や外蓋60の天板に付着して形成された水滴を受けとめて吸水することにより、ケース内部に余剰水分が落下して調理物を浸水することを防止している。
【0112】
特に飯用ケース50の外周面は、
図3〜
図4に示すように内方に向かって下方傾斜するテーパー面50aに形成しているため、飯用ケース50の外周壁で形成された水滴が効果的に内蓋70上面に誘導される。
【0113】
また、ケース周壁に補強用突条又は補強用凹部を形成した場合には、テーパー面50aの補強用突条又は補強用凹部が、外周壁面上の水滴を集流誘導する樋として機能し、効果的に内蓋70上面に誘導する。
【0114】
このように、積層した各ケースは、保温材収納袋や調理物の熱上昇に沿うように熱移動経路を形成した全方位断熱加温ジャケット構造によりケース内部の調理物への段階的な加温を行い、しかもケース外部への熱エネルギーの損失を可及的抑制している。
【0115】
特に、各方形外枠20、40は熱損失を可及的抑制するための可撓性の断熱素材にて形成すると共に、方形外枠20、40にそれぞれ嵌着する惣菜用ケース30、飯用ケース50は外部から内部への熱伝動率を向上させた可撓性の伝熱素材にて形成することにより、外側の各方形外枠20、40により外部への熱の逸散を防止し内側の各ケース30、50によりその内部に収納した調理物へ効果的に伝熱する断熱加温機能をさらに向上することができる。
【0116】
なお、惣菜用ケース30と飯用ケース50とは、別途、更に既に積層配置した飯用ケース50の上方に積層して更に四段重ねとした場合であっても、熱移動経路を形成した全方位囲繞の断熱加温ジャケット構造によりケース内部の調理物への段階的な加温を行うことができる。
【0117】
すなわち、最下層に敷設した保温材収納袋と、その上方に積層し方形外枠内に嵌着した合成樹脂製の惣菜用ケースと、更にその上方に積層し、同じく方形外枠内に嵌着した合成樹脂製の飯用ケースと、更にその上方に積層し、同じく方形外枠内に嵌着した合成樹脂製の惣菜用ケースと、より構成し、しかも、惣菜用ケースの内底面には吸着シートを敷設すると共に、飯用ケースの上面には外蓋を閉蓋して四段重ねに構成することができる。
【0118】
以上、説明してきたように、本実施例にかかる弁当容器Aは、極めて簡易な嵌め込み式構造を各構成部材の特定部位に設けているため、店舗の限られたスペースを有効利用すべく各構成部材ごとに収納可能としつつも、容器組み立て作業を顧客を待たせることなく従業員の誰もが容易且つ迅速に行うことができる効果がある。
【0119】
しかも、接着剤などを一切用いることなく各構成部材同士を簡単な嵌め込み作業だけで弁当容器を組み立てることができるため、衛生的で且つ安心して食品容器として使用することができる効果がある。
【0120】
さらに、組み立て後には、調理物を収納するためのケースを縦方向に積載してコンパクト化を図ることができだけでなく、各ケースが断熱加温機能を有する空間や部材にて全方位囲繞するように構成されているためケース内部の調理物を長時間に亘って保温することができる効果がある。
【0121】
〔3.弁当容器の保温性の検証〕
次に、本発明に係る弁当容器の保温性の検証を行った。本検証には弁当容器A1において、内底面に吸着シートを敷設した惣菜用ケース内に収納する惣菜は揚げたてのとんかつDとし、飯用ケース内に収納する米飯Rは電子ジャーで保温されたものを使用した。なお、揚げたてのとんかつDの内部温度は約81.5℃であり、電子ジャーにより保温された米飯Rの内部温度は約75℃であった。
【0122】
また、最下層に敷設する保温材収納袋は、収納袋内部に収納する保温材として丸麦100gを使用し、電子レンジにより700Wで1分30秒加熱したものを用いた。
【0123】
また、比較検証用として、最下層に加熱しない保温材収納袋を敷設した弁当容器A2、保温材収納袋を使用しない弁当容器A3を用いた。
【0124】
かかる弁当容器A1〜A3は、方形外枠内に嵌着した惣菜用ケースと、更にその上方に積層して同じく方形外枠内に嵌着した合成樹脂製の飯用ケースと、より2段重ねとし、惣菜用ケースの上面には内蓋を閉蓋し、飯用ケースの上面には内蓋を、さらにその上方には外蓋を重ねて閉蓋した。
【0125】
また対照区として、一般的な使い捨てのプラスチック製の弁当容器Bを用いた。弁当容器Bは、扁平幅広のケース内部を仕切壁により惣菜用ケースに相当する惣菜収容部と飯用ケースに相当する米飯収容部とに区画して形成したものを使用した。なお、弁当容器Bには吸着シートを使用しなかった。
【0126】
各弁当容器A1〜Bにとんかつ及び米飯を収納して閉蓋した状態で、室温25℃の環境下で、とんかつ内部の温度変化と、米飯内部の温度変化とを、それぞれ2分毎に測定し、保温性の検証を行った。その結果を
図6及び
図7に示す。
【0127】
惣菜用ケースに収納したとんかつ内部の温度は、
図6に示すように収納後一定時間が経過するに伴い低下したものの、弁当容器A1、A2、A3、及びBの順番に高い保温性を示した。
【0128】
弁当容器A1〜A3におけるとんかつ内部の温度は、8分経過後には比較的緩やかな温度低下傾向となった。特に弁当容器A1及びA2におけるとんかつ内部の温度は、30分間ほぼ65℃前後を保持した高温状態であった。
【0129】
一方で、弁当容器Bにおけるとんかつ内部の温度は、直線的に降下し始め、30分後には40℃前後まで低下した。
【0130】
また、飯用ケースに収納した米飯内部の温度は、惣菜用ケースに収納したとんかつ内部の温度と同様に、収納後一定時間が経過するに伴い低下したものの、
図7に示すように弁当容器A1、A2、A3、及びBの順番に高い保温性を示した。
【0131】
弁当容器A1〜A3における米飯内部の温度は、比較的緩やかな温度低下傾向となり、弁当容器A1及びA2における米飯内部の温度は、30分間ほぼ平衡状態の65℃前後を保持して熱々の状態であった。
【0132】
このように本発明における弁当容器によれば、積層したケースに収納した惣菜や米飯といった調理物を冷ますことなく長時間に亘って保温可能であることが示された。
【0133】
〔4.弁当容器に収納した調理物の品質の検証〕
次に、本発明に係る弁当容器に収納した調理物の品質の検証を行った。品質評価は、とんかつ上面の水分量の観点、吸着シートの油分吸収量の観点、5人の被験者の官能試験観点の3つの観点により行った。
【0134】
調理物の品質の検証には、上述した保温性の検証の各弁当容器A1〜Bに収納した30分後のとんかつを用いた。なお、出来たてのとんかつ表面の水分量は25.7%であった。
【0135】
官能試験は、被験者に各弁当容器A1〜Bに収納した30分後のとんかつを食してもらい、評価基準として食感について「サクサク、ややサクサク、普通、ややベトベト、ベトべト」の順番に、温度について「アツアツ、ややアツアツ、普通、やや冷めている、冷めている」の順番にそれぞれ5〜1の数値をつける5段階評価として行ってもらい、それぞれ平均値を算出した。その結果を表1に示す。
【表1】
【0136】
とんかつ上面の水分量は、表1に示すように、弁当容器A1〜Bの順番に低い値を示し、特に弁当容器A1及び弁当容器A2で20%台の値となった。
【0137】
一方、弁当容器A3及び弁当容器Bではとんかつ上面の水分量が高かった。これは保温材収納袋を敷設していないために容器の内部温度が急低下し、これに伴い発生した水蒸気が急冷されて多量の水滴が付着したものと考えられる。
【0138】
また、吸着シートの油分吸収量は、弁当容器A1〜A3の順番に高い値を示した。弁当容器A3における吸着シートの油分吸収量が低い値を示したのは、吸着シートが水蒸気に由来する水分を早い段階で比較的多く含浸してしまったと考えられる。
【0139】
また、官能試験における食感及び温度の評価は、いずれも弁当容器A1〜Bの順番で高い値を示した。特に本発明における弁当容器A1〜A3と一般的な使い捨ての弁当容器Bにおいては約2倍近くの差があり、このことから本発明の弁当容器による調理物の優れた保温性能及び品質保持性能が示された。
【0140】
以上、説明してきたように、本発明に弁当容器は、惣菜用ケースの内底面の吸着シートにより惣菜から滲出する油分や発生蒸気に由来する水分を吸着して調理物の品質を損なうことなく、しかも惣菜用ケースと飯用ケースとの積層により弁当のコンパクト化を図ることができ、さらに最下層の保温材収納袋の熱を惣菜用ケースの底部を介して同ケース内の惣菜に伝えると共に一定温度に保温された惣菜の熱を惣菜用ケースの上方に積層した飯用ケース底部を介して同ケース内の米飯に段階的に伝えることで、最下層の保温材収納袋からの熱エネルギー損失を可及的抑制しつつ惣菜及び米飯への伝熱効率を向上させることができる。
【0141】
すなわち、本発明に係る弁当容器によれば、コンパクトで持ち運び時の携帯性に優れ、ケース内に収納した調理物の品質を損なうことなく調理物を長時間に亘って一定温度に保温することができ、低コストで製造できる使い捨て弁当容器として大量生産できる。
【0142】
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはなく、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。