特許第6722266号(P6722266)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6722266電解銅箔、それを含む電極、それを含む二次電池、及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6722266
(24)【登録日】2020年6月23日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】電解銅箔、それを含む電極、それを含む二次電池、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 1/04 20060101AFI20200706BHJP
   C25D 11/38 20060101ALI20200706BHJP
   C25D 7/06 20060101ALI20200706BHJP
   C25D 5/48 20060101ALI20200706BHJP
   C25D 7/00 20060101ALI20200706BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20200706BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20200706BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20200706BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20200706BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20200706BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20200706BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20200706BHJP
   H01M 4/52 20100101ALI20200706BHJP
【FI】
   C25D1/04 311
   C25D11/38 306
   C25D7/06 A
   C25D5/48
   C25D7/00 G
   H01M4/66 A
   H01M4/133
   H01M4/134
   H01M4/13
   H01M10/052
   H01M4/38 Z
   H01M4/48
   H01M4/52
【請求項の数】6
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-237147(P2018-237147)
(22)【出願日】2018年12月19日
(62)【分割の表示】特願2016-571744(P2016-571744)の分割
【原出願日】2016年10月13日
(65)【公開番号】特開2019-65400(P2019-65400A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2019年1月18日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0156349
(32)【優先日】2015年11月9日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518133500
【氏名又は名称】ケイシーエフ テクノロジース カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100116872
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 和子
(72)【発明者】
【氏名】キム スン ミン
【審査官】 北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−078428(JP,A)
【文献】 特開2015−030917(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/105635(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第101906630(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第103469267(CN,A)
【文献】 特開2012−151106(JP,A)
【文献】 特開平11−158652(JP,A)
【文献】 特開2011−134651(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/002273(WO,A1)
【文献】 特開2004−256910(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 1/00−1/22
C25D 7/00−7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面及び前記第1面の反対側の第2面を有する電解銅箔(electrolytic copper foil)であって、
前記第1面側の第1保護層と、
前記第2面側の第2保護層と、
前記第1保護層と前記第2保護層との間の銅膜(copper film)とを含み、
ここで、(i)前記電解銅箔の中心部を5cm×5cmのX状の切断ラインに沿って、前記電解銅箔に形成されている転写跡と平行な縦方向と第1の角をなす第1方向、及び前記第1方向と垂直な第2方向に切断することによって、前記縦方向に沿って並んで配置される一対の第1セグメント、及び前記縦方向と垂直な横方向に沿って並んで配置される一対の第2セグメントを形成し、(ii)前記第1面又は前記第2面の方向への、前記一対の第1セグメント及び前記一対の第2セグメントの浮きを定規で測定し、(iii)前記一対の第1セグメントの浮きの程度のうち相対的に大きい値を縦方向の浮きとし、及び(iv)前記一対の第2セグメントの浮きの程度のうち相対的に大きい値を横方向の浮きとする場合に、
少なくとも1つの前記第1の角は、前記電解銅箔が、(a)30mm以下の前記縦方向の浮き及び(b)前記縦方向の浮きの8.5倍以下であり、25mm以下の前記横方向の浮きを有することを可能なように35°〜55°の範囲にある電解銅箔。
【請求項2】
前記第1及び第2保護層のそれぞれは、クロム酸塩、ベンゾトリアゾール、酸化クロム及びシラン化合物のうち少なくとも1つを含む防錆物質(anticorrosion material)から構成されている、請求項1に記載の電解銅箔。
【請求項3】
前記電解銅箔は4〜35μmの厚さを有する、請求項1に記載の電解銅箔。
【請求項4】
前記第1面及び第2面は、3.5μm以下の10点平均粗さ(ten−point mean roughness:RzJIS)を有し、
次式によって算出される前記第1面と第2面との10点平均粗さの偏差が70%以下である、請求項1に記載の電解銅箔:
式:R=[|R−R|/(R,Rmax]×100
ここで、Rは、前記第1面の10点平均粗さであり、Rは、前記第2面の10点平均粗さであり、Rは、前記第1面と第2面との10点平均粗さの偏差であり、|R−R|は、前記第1面と第2面との10点平均粗さの差であり、(R,Rmaxは、前記第1面及び第2面の10点平均粗さのうち相対的に大きい10点平均粗さである。
【請求項5】
請求項1に記載の電解銅箔と、
前記電解銅箔上の活物質層とを含み、
前記活物質層は、炭素;Si、Ge、Sn、Li、Zn、Mg、Cd、Ce、Ni又はFeの金属;前記金属を含む合金;前記金属の酸化物;及び前記金属と炭素の複合体からなる群から選択される1つ以上の活物質を含む、二次電池用電極。
【請求項6】
正極(cathode)と、
負極(anode)と、
前記正極と負極との間でリチウムイオンが移動できる環境を提供する電解質(electrolyte)と、
前記正極と前記負極を電気的に絶縁させる分離膜(separator)とを含み、
前記負極は、
請求項1に記載の電解銅箔と、
前記電解銅箔上の活物質層とを含み、
前記活物質層は、炭素;Si、Ge、Sn、Li、Zn、Mg、Cd、Ce、Ni又はFeの金属;前記金属を含む合金;前記金属の酸化物;及び前記金属と炭素の複合体からなる群から選択される1つ以上の活物質を含む、二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解銅箔、それを含む電極、それを含む二次電池、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電解銅箔は、二次電池の負極集電体、軟性印刷回路基板(Flexible Printed Circuit Board:FPCB)などの様々な製品を製造するのに用いられている。
【0003】
一般に、電解銅箔は、ロールツーロール(Roll To Roll:RTR)工程を通じて製造されるだけでなく、ロールツーロール(RTR)工程を通じた二次電池の負極集電体、軟性印刷回路基板(FPCB)などの製造に用いられる。
【0004】
ロールツーロール(RTR)工程は、連続的な生産を可能にするため、製品の大量生産に適した工程として知られている。しかし、現実的には、ロールツーロール(RTR)工程中に頻繁に引き起こされる電解銅箔の折れ及び/又はしわの発生により、ロールツーロール工程設備を中断し、このような問題を解決した後に前記設備を再稼働させなければならず、このような工程設備の中断及び再稼働の繰り返しによって、生産性の低下という深刻な問題が引き起こされている。
【0005】
すなわち、ロールツーロール(RTR)工程中に引き起こされる電解銅箔の折れ及び/又はしわの発生は、製品の連続的な生産を不可能にするため、ロールツーロール(RTR)工程固有の利点を損ない、その結果、製品の生産性低下をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、上記のような関連技術の制限及び欠点に起因する問題点を防止できる電解銅箔、それを含む電極、それを含む二次電池、及びその製造方法に関する。
【0007】
本発明の一観点は、ロールツーロール(RTR)工程中に折れ及び/又はしわの発生が防止又は最小化された電解銅箔を提供することである。
【0008】
本発明の他の観点は、ロールツーロール(RTR)工程を通じて電解銅箔で製造され、前記電解銅箔の折れ及び/又はしわの発生なしに製造されることによって高い生産性を保証することができる電極を提供することである。
【0009】
本発明の更に他の観点は、ロールツーロール(RTR)工程中に折れ及び/又はしわの発生が防止又は最小化された電解銅箔で製造されることによって高い生産性を保証することができる二次電池を提供することである。
【0010】
本発明の更に他の観点は、ロールツーロール(RTR)工程中に折れ及び/又はしわの発生が防止又は最小化された電解銅箔を製造する方法を提供することである。
【0011】
以上で言及された本発明の観点以外にも、本発明の他の特徴及び利点が、以下で説明されたり、そのような説明から、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記のような本発明の一観点によって、第1面及び前記第1面の反対側の第2面を有する電解銅箔であって、前記第1面側の第1保護層;前記第2面側の第2保護層;及び前記第1保護層と第2保護層との間の銅膜を含み、前記電解銅箔は、30mm以下の縦方向の浮き及び25mm以下の横方向の浮きを有し、前記横方向の浮きは前記縦方向の浮きの8.5倍以下である電解銅箔が提供される。
【0013】
前記縦方向の浮き及び前記横方向の浮きは、前記電解銅箔の中心部を5cm×5cmのX状の切断ラインに沿って切断するものの、前記電解銅箔に形成されている転写跡と平行な縦方向と35°〜55°の角をなす第1方向、及び前記第1方向と垂直な第2方向に切断することによって、前記縦方向に沿って並んで配置される一対の第1セグメント、及び前記縦方向と垂直な横方向に沿って並んで配置される一対の第2セグメントを形成する場合、前記第1セグメントの前記第1面又は第2面の方向への浮きの程度のうち相対的に大きい値、及び前記第2セグメントの前記第1面又は第2面の方向への浮きの程度のうち相対的に大きい値をそれぞれ意味する。
【0014】
本発明の他の観点によって、前記電解銅箔;及び前記電解銅箔上の活物質層を含み、前記活物質層は、炭素;Si、Ge、Sn、Li、Zn、Mg、Cd、Ce、Ni又はFeの金属(Me);前記金属(Me)を含む合金;前記金属(Me)の酸化物(MeO);及び前記金属(Me)と炭素の複合体からなる群から選択される1つ以上の活物質を含む、二次電池用電極が提供される。
【0015】
本発明の更に他の観点によって、正極(cathode);負極(anode);前記正極と負極との間でリチウムイオンが移動できる環境を提供する電解質(electrolyte);及び前記正極と前記負極を電気的に絶縁させる分離膜(separator)を含み、前記負極は、前記電解銅箔;及び前記電解銅箔上の活物質層を含み、前記活物質層は、炭素;Si、Ge、Sn、Li、Zn、Mg、Cd、Ce、Ni又はFeの金属(Me);前記金属(Me)を含む合金;前記金属(Me)の酸化物(MeO);及び前記金属(Me)と炭素の複合体からなる群から選択される1つ以上の活物質を含む、二次電池が提供される。
【0016】
本発明の更に他の観点によって、電解槽内の電解液中に互いに離隔して配置された陽極板と回転陰極ドラムを通電させることによって、前記回転陰極ドラム上に銅膜を形成する銅膜形成ステップ;及び前記銅膜を防錆液(anticorrosion solution)に浸漬させる浸漬ステップを含み、前記陽極板は、互いに電気的に絶縁された第1陽極板及び第2陽極板を含み、前記銅膜形成ステップは、前記第1陽極板と前記回転陰極ドラムとの間の通電によってシード層を形成し、次いで、前記第2陽極板と前記回転陰極ドラムとの間の通電によって前記シード層を成長させることによって行われ、前記第1陽極板によって提供される電流密度は、前記第2陽極板によって提供される電流密度の1.5倍以上である、電解銅箔の製造方法が提供される。
【0017】
上記のような本発明に対する一般的な記述は、本発明を例示又は説明するためのものに過ぎず、本発明の権利範囲を制限しない。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ロールツーロール(RTR)工程中に折れ及び/又はしわの発生が防止又は最小化された電解銅箔を用いて軟性印刷回路基板(FPCB)、二次電池などの中間部品及び最終品を製造することによって、前記中間部品はもとより、最終品の生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
添付の図面は、本発明の理解を助け、本明細書の一部を構成するためのもので、本発明の実施例を例示し、発明の詳細な説明と共に本発明の原理を説明する。
図1】本発明の一実施例に係る電解銅箔の断面図である。
図2】本発明において電解銅箔の縦方向及び横方向がどのように定義されるかを示す図である。
図3】電解銅箔の縦方向の浮き及び横方向の浮きをそれぞれ測定するための方法を示す図である。
図4】本発明の一実施例に係る二次電池用電極の断面図である。
図5】本発明の一実施例に係る電解銅箔の製造装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、添付の図面を参照して、本発明の実施例を詳細に説明する。
【0021】
本発明の技術的思想及び範囲を逸脱しない範囲内で本発明の様々な変更及び変形が可能であるということは当業者にとって自明である。したがって、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明及びその均等物の範囲内に含まれる変更及び変形を全て含む。
【0022】
図1は、本発明の一実施例に係る電解銅箔110の断面図である。
【0023】
図1に例示されたように、本発明の電解銅箔110は、第1面110a、及び前記第1面110aの反対側の第2面110bを有し、前記第1面110a側の第1保護層112、前記第2面110b側の第2保護層113、及び前記第1保護層112と第2保護層113との間の銅膜(copper film)111を含む。
【0024】
本発明の一実施例に係る電解銅箔110は4〜35μmの厚さを有する。4μm未満の厚さを有する電解銅箔110の製造は作業性の低下をもたらす。一方、35μmを超える電解銅箔110で二次電池を製造する場合、厚い電解銅箔110によって高容量の実現が難しくなる。
【0025】
前記銅膜111は、電気めっきを用いて回転陰極ドラム上に形成されてもよく、電気めっき過程で前記回転陰極ドラムと直接接触するシャイニー面(Shiny surface)111a、及びその反対側のマット面(Matte surface)111bを有する。
【0026】
前記第1及び第2保護層112,113は、防錆物質(anticorrosion material)が前記銅膜111上に電着されることによってそれぞれ形成される。前記防錆物質は、クロム酸塩(chromate)、ベンゾトリアゾール(benzotriazole:BTA)、酸化クロム及びシラン化合物(silane compound)のうち少なくとも1つを含むことができる。前記第1及び第2保護層112,113は、前記銅膜111の酸化及び腐食を防止し、耐熱性を向上させることによって、前記電解銅箔110を含む製品の寿命を延ばす。
【0027】
一方、電解銅箔110の折れ及び/又はカールを抑制するためには、前記電解銅箔110の前記第1及び第2面110a,110bにそれぞれ隣接する部分が互いに同一又はほぼ同様の物性を有することが好ましい。したがって、本発明の一実施例によれば、前記銅膜111は、互いに同一又はほぼ同様の粗さを有するシャイニー面111a及びマット面111bを有する。ここで使用される用語、「粗さ」は、10点平均粗さ(ten−point mean roughness: RzJIS)を意味する。また、前記銅膜111上に防錆物質が電着されることによってそれぞれ形成される前記第1及び第2保護層112,113は、防錆物質の電着量において2.5ppm/m以下の差だけを有することが好ましい。
【0028】
例えば、前記第1保護層112の防錆物質の電着量は0.6〜4.1ppm/mであり、前記第2保護層113の防錆物質の電着量は0.6〜4.1ppm/mである。前記第1及び第2保護層112,113の防錆物質の電着量の差が2.5ppm/mを超える場合、ロールツーロール工程中に電解銅箔110の折れ及び/又はカールを引き起こし、工程設備の中断が必要となる。
【0029】
本発明の電解銅箔110は、30mm以下の縦方向の浮き(LR)及び25mm以下の横方向の浮き(TR)を有し、前記横方向の浮き(TR)は、前記縦方向の浮き(LR)の8.5倍以下である。
【0030】
縦方向の浮き(LR)が30mmを超えると、ロールツーロール製造工程中に2つの互いに隣接するロールの間で電解銅箔110の折れが発生する。また、横方向の浮き(TR)が25mmを超えると、ロールツーロール製造工程中に電解銅箔110の左右末端部にしわが発生する。
【0031】
また、電解銅箔110の縦方向の浮き(LR)及び横方向の浮き(TR)が前記範囲を満足するが、前記横方向の浮き(TR)が前記縦方向の浮き(LR)の8.5倍を超える場合、ロールツーロール製造工程中に電解銅箔110に横方向の力が加えられることによって電解銅箔110の左右末端部にしわが発生する。
【0032】
以下では、図2及び図3を参照して、前記縦方向の浮き(LR)及び前記横方向の浮き(TR)の測定方法を具体的に説明する。
【0033】
まず、前記電解銅箔110の中心部を5cm×5cmのX状の切断ラインに沿って切断するものの、前記電解銅箔110に形成されている転写跡と平行な縦方向LDと35°〜55°の角をなす第1方向D1、及び前記第1方向D1と垂直な第2方向D2に切断することによって、前記縦方向LDに沿って並んで配置される一対の第1セグメントA、A’、及び前記縦方向LDと垂直な横方向HDに沿って並んで配置される一対の第2セグメントB、B’を形成する。ここで、前記転写跡は、前記銅膜111のシャイニー面111a側に形成された回転陰極ドラムの跡であって、前記シャイニー面111aに隣接する前記第1面110aを顕微鏡で観察することによって確認できる。
【0034】
次いで、前記第1セグメントA、A’の前記第1又は第2面(110a又は110b)の方向への浮きの程度をそれぞれ測定し、この測定値のうち相対的に大きい値を電解銅箔110の縦方向の浮き(LR)とみなす。これと同様に、前記第2セグメントB、B’の前記第1又は第2面(110a又は110b)の方向への浮きの程度をそれぞれ測定し、この測定値のうち相対的に大きい値を電解銅箔110の横方向の浮き(TR)とみなす。
【0035】
前述したように、本発明によれば、電解銅箔110の折れ及び/又はカールを抑制するために、前記電解銅箔110の前記第1及び第2面110a,110bにそれぞれ隣接する部分が互いに同一又はほぼ同様の物性を有する。
【0036】
したがって、本発明の一実施例によれば、前記第1及び第2面110a,110bは、3.5μm以下の10点平均粗さ(ten−point mean roughness:RzJIS)を有し、次式によって算出される前記第1面110aと第2面110bとの10点平均粗さの偏差が70%以下である。
式:R=[|R−R|/(R,Rmax]×100
【0037】
ここで、Rは、前記第1面110aの10点平均粗さであり、Rは、前記第2面110bの10点平均粗さであり、Rは、前記第1面110aと第2面110bとの10点平均粗さの偏差であり、|R−R|は、前記第1面110aと第2面110bとの10点平均粗さの差であり、(R,Rmaxは、前記第1及び第2面110a,110bの10点平均粗さのうち相対的に大きい10点平均粗さである。
【0038】
前記電解銅箔110の第1及び第2面110a,110bの10点平均粗さ(RzJIS)が3.5μmを超える場合、二次電池の製造のために負極活物質を電解銅箔110の両面にコーティングするとき、前記負極活物質と電解銅箔110との間の接着力が不十分になる。
【0039】
以下では、説明の便宜のためだけに、本発明の電解銅箔110が二次電池の製造に用いられる実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。しかし、前述したように、銅箔を用いてロールツーロール(RTR)工程を通じて製造可能なその他の様々な製品、例えば、軟性印刷回路基板(FPCB)の製造にも本発明の電解銅箔110を同様に用いることができる。
【0040】
リチウムイオン二次電池は、正極(cathode)、負極(anode)、前記正極と負極との間でリチウムイオンが移動できる環境を提供する電解質(electrolyte)、及び一つの電極で発生した電子が二次電池の内部を介して他の電極に移動することによって無益に消耗されることを防止するために、前記正極と負極を電気的に絶縁させる分離膜(separator)を含む。
【0041】
図4は、本発明の一実施例に係る二次電池用電極の断面図である。
【0042】
図4に例示されたように、本発明の一実施例に係る二次電池用電極100は、上述した本発明の実施例のいずれか1つの電解銅箔110及び活物質層120を含む。
【0043】
図4は、前記電解銅箔110の第1及び第2面110a,110bの両方の上に形成された活物質層120を例示しているが、本発明がこれに限定されるものではなく、前記活物質層120は、前記電解銅箔110の一面上にのみ形成されてもよい。
【0044】
リチウム二次電池において、正極活物質と結合される正極集電体としてはアルミニウム箔(foil)が使用され、負極活物質と結合される負極集電体としては電解銅箔110が使用されることが一般的である。
【0045】
本発明の一実施例によれば、前記二次電池用電極100は負極であり、前記電解銅箔110は負極集電体として使用され、前記活物質層120は負極活物質を含む。
【0046】
前記活物質層120は、炭素;Si、Ge、Sn、Li、Zn、Mg、Cd、Ce、Ni又はFeの金属;前記金属を含む合金;前記金属の酸化物;及び前記金属と炭素との複合体からなる群から選択される1つ以上の活物質を負極活物質として含む。
【0047】
二次電池の充放電容量を増加させるために、Siを所定量含む負極活物質の混合物で前記活物質層120が形成されてもよい。
【0048】
一方、二次電池の充放電が繰り返されることによって活物質層120の収縮及び膨張が交互に発生し、これは、前記活物質層120と前記電解銅箔110の分離を誘発し、二次電池の充放電効率を低下させる。したがって、二次電池が一定水準以上の容量維持率及び寿命を確保するためには(すなわち、二次電池の充放電効率の低下を抑制するためには)、前記電解銅箔110が前記活物質に対して優れたコーティング性を有することによって、前記電解銅箔110と活物質層120との接着強度が高くなければならない。
【0049】
巨視的にみると、前記電解銅箔110の第1及び第2面110a,110bの10点平均粗さ(RzJIS)が小さいほど、概ね、二次電池の充放電効率があまり低下しない傾向がある。
【0050】
したがって、本発明の一実施例に係る電解銅箔110の第1及び第2面110a,110bのそれぞれは、3.5μm以下の10点平均粗さ(RzJIS)を有する。前記電解銅箔110の第1及び第2面110a,110bが3.5μmを超える10点平均粗さ(RzJIS)を有する場合、前記電解銅箔110と活物質層120との間の接触均一性が一定水準に至ることができず、したがって、二次電池が、業界で要求する90%以上の容量維持率を満足させなくなる。
【0051】
以下では、図5を参照して、本発明の電解銅箔110の製造方法を具体的に説明する。
【0052】
本発明の方法は、電解槽10内の電解液20中に互いに離隔して配置された陽極板30と回転陰極ドラム40を通電させることによって、前記回転陰極ドラム40上に銅膜111を形成する銅膜111形成ステップ、及び前記銅膜111を防錆液(anticorrosion solution)60に浸漬させる浸漬ステップを含む。
【0053】
図5に例示されたように、前記陽極板30は、互いに電気的に絶縁された第1陽極板31及び第2陽極板32を含む。
【0054】
前記銅膜111形成ステップは、前記第1陽極板31と前記回転陰極ドラム40との間の通電によってシード層を形成し、次いで、前記第2陽極板32と前記回転陰極ドラム40との間の通電によって前記シード層を成長させることによって行われる。
【0055】
前記第1及び第2陽極板31,32によってそれぞれ提供される電流密度は、40〜70A/dmであってもよい。
【0056】
本発明によれば、前記第1陽極板31によって提供される電流密度は、前記第2陽極板32によって提供される電流密度の1.5倍以上である。すなわち、シード層の形成時に相対的に高い電流密度を加えることによって前記シード層のグレンサイズ(grain size)を減少させ、結果的に、前記銅膜111のシャイニー面111aとマット面111bとのグレンサイズを同一又はほぼ同様にすることができる。
【0057】
前記銅膜111のシャイニー面111aとマット面111bが同一又はほぼ同一のグレンサイズを有することによって、本発明の電解銅箔110が、30mm以下の縦方向の浮き(LR)及び25mm以下の横方向の浮き(TR)を有することができ、前記横方向の浮き(TR)が前記縦方向の浮き(LR)の8.5倍以下となり得る。
【0058】
本発明の他の実施例によれば、前記陽極板30は、前記第1陽極板31と第2陽極板32との間に第3陽極板をさらに含んでいてもよい。この場合、第3陽極板によって提供される電流密度は、前記第1陽極板31によって提供される電流密度よりも小さく、前記第2陽極板32によって提供される電流密度よりも大きい。
【0059】
本発明の一実施例によれば、前記電解液20は、50〜100g/Lの銅イオン、50〜150g/Lの硫酸、50ppm以下の塩素イオン、及び有機添加剤を含むことができる。前記有機添加剤は、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、有機硫化物、有機窒化物、チオ尿素(thiourea)系化合物、またはこれらのうちの2つ以上の混合物であってもよい。また、前記銅膜111形成ステップにおいて、前記電解液20は50〜60℃に維持され、前記電解槽10内に供給される前記電解液20の流量は40〜46m/hourであってもよい。前記電解液20の流量が40m/hour未満である場合、回転陰極ドラム40の表面に銅イオンが円滑に供給されないため、めっき薄膜が不均一に形成される。一方、前記電解液20の流量が46m/hourを超える場合、フィルタを通過する電解液20の流速が速すぎるため、フィルタの寿命が急激に短縮される原因となる。
【0060】
前記回転陰極ドラム40の表面は、前記銅膜111のシャイニー面111aの10点平均粗さ(RzJIS)に影響を及ぼす。本発明の一実施例によれば、#800〜#1500の粒度(Grit)を有する研磨ブラシで前記回転陰極ドラム40の表面が研磨されてもよい。
【0061】
前述したように、前記防錆液60は、クロムを含む化合物、ベンゾトリアゾール、シラン系化合物のうち少なくとも1種以上で構成される。例えば、0.2〜2.5g/Lの酸化クロム溶液に前記銅膜111を常温で0.2〜20秒間浸漬させることができる。
【0062】
本発明の方法は、前記防錆液60に浸漬された前記銅膜111を前記防錆液60から引き出す引き出しステップをさらに含むことができる。図5に例示されたように、前記浸漬ステップ及び前記引出しステップが行われるとき、前記銅膜111は、前記防錆液60中に配置されたガイドロール(guide roll)70によって案内される。
【0063】
ただし、前記のような浸漬コーティングが行われるとき、前記ガイドロール70に接触する前記銅膜111の面[例えば、シャイニー面111a]は、前記防錆液60に露出する反対面[例えば、マット面111b]に比べて防錆液60のコーティング量が少なくならざるを得ない。その結果、銅膜111のシャイニー面111aとマット面111bの上に第1及び第2保護層112,113をそれぞれ形成するとき、防錆物質の電着量に深刻な差が発生し、このような差は、電解銅箔110の折れ及び/又はカール(しわ)の原因となり得る。
【0064】
したがって、本発明の方法は、前記銅膜111が前記防錆液60から引き出された直後に、前記浸漬ステップ中に前記ガイドロール70と接触した前記銅膜111の面上に、ノズル80を用いて防錆液90を噴射する防錆液90噴射ステップをさらに含むことができる。このような防錆液90噴射ステップを通じて、前記第1及び第2保護層112,113をそれぞれ形成するときに発生し得る防錆物質の電着量の差をなくしたり、最小化することができる。
【0065】
前記のような方法により製造された本発明の電解銅箔110の第1面110a及び/又は第2面110bの上に、炭素;Si、Ge、Sn、Li、Zn、Mg、Cd、Ce、Ni又はFeの金属(Me);前記金属(Me)を含む合金;前記金属(Me)の酸化物(MeO);及び前記金属(Me)と炭素の複合体からなる群から選択される1つ以上の負極活物質をコーティングすることによって、本発明の二次電池用電極(すなわち、負極)を製造することができる。
【0066】
例えば、炭素100重量部の負極活物質用炭素に1〜3重量部のスチレンブタジエンゴム(SBR)及び1〜3重量部のカルボキシメチルセルロース(CMC)を混合した後、蒸留水を溶剤として使用してスラリーを調製する。次いで、ドクターブレードを用いて前記電解銅箔110上に20〜60μmの厚さに前記スラリーを塗布し、110〜130℃で0.5〜1.5ton/cmの圧力でプレスする。
【0067】
以上の方法で製造された本発明の二次電池用電極(負極)と共に、通常の正極、電解質、及び分離膜を用いてリチウム二次電池を製造することができる。
【0068】
以下では、実施例及び比較例を参照して本発明を具体的に説明する。ただし、以下の実施例は、本発明の理解を助けるためのものに過ぎず、本発明の権利範囲がこれらの実施例に制限されない。
【0069】
<実施例1>
電解槽内の電解液中に互いに離隔して配置された陽極板と回転陰極ドラムを通電させることによって、前記回転陰極ドラム上に銅膜を形成した。前記電解液は、85g/Lの銅イオン、75g/Lの硫酸、20ppmの塩素イオン、及び有機添加剤を含んでいる。前記有機添加剤としてはゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、有機硫化物、及び有機窒化物が使用された。前記銅膜111形成ステップにおいて、前記電解液は約55℃に維持され、前記電解槽内に供給される前記電解液の流量は40m/hourであった。
【0070】
前記陽極板は、互いに電気的に絶縁された第1陽極板及び第2陽極板で構成され、前記第1陽極板によって提供される電流密度は60A/dmであり、前記第2陽極板によって提供される電流密度は40A/dmであった。
【0071】
前記銅膜を2g/Lの酸化クロム溶液に常温で10秒間浸漬させた後、前記浸漬過程でガイドロールと接触した面に2g/Lの酸化クロム溶液を噴射した。次いで、前記酸化クロム溶液を乾燥させて前記銅膜の両面上に保護層を形成することによって、4μmの厚さを有する電解銅箔を完成した。
【0072】
<実施例2>
前記第1陽極板によって提供される電流密度が70A/dmであること以外は、実施例1と同様の方法で電解銅箔を製造した。
【0073】
<実施例3>
前記第1陽極板と第2陽極板との間に第3陽極板がさらに提供され、前記第3陽極板によって提供される電流密度が55A/dmであること以外は、実施例1と同様の方法で電解銅箔を製造した。
【0074】
<比較例1>
前記第1及び第2陽極板によって50A/dmの同じ電流密度が提供される以外は、実施例1と同様の方法で電解銅箔を製造した。
【0075】
<比較例2>
前記第1及び第2陽極板によって50A/dmの同じ電流密度が提供され、酸化クロム溶液の噴射過程を省略した以外は、実施例1と同様の方法で電解銅箔を製造した。
【0076】
<比較例3>
酸化クロム溶液の噴射過程を省略した以外は、実施例1と同様の方法で電解銅箔を製造した。
【0077】
前記の実施例及び比較例によって製造された電解銅箔の縦方向の浮き、横方向の浮き、前記縦方向の浮きに対する前記横方向の浮きの割合、防錆物質(クロム)の電着量、10点平均粗さ(RzJIS)、及び10点平均粗さの偏差を、以下の方法によりそれぞれ測定又は算出し、その結果を表1に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
電解銅箔の中心部を5cm×5cmのX状の切断ラインに沿って切断するものの、前記電解銅箔に形成されている転写跡と平行な縦方向と35°〜55°の角をなす第1方向、及び前記第1方向と垂直な第2方向に切断することによって、前記縦方向に沿って並んで配置される一対の第1セグメント、及び前記縦方向と垂直な横方向に沿って並んで配置される一対の第2セグメントを形成した。ここで、前記転写跡は、銅膜のシャイニー面側に形成された回転陰極ドラムの跡であって、顕微鏡観察を通じて確認された。
【0080】
次に、電解銅箔の第1面(前記銅膜のシャイニー面に隣接する面)又はその反対側の第2面の方向への前記第1及び第2セグメントの浮きの程度を定規(ruler)でそれぞれ測定した。前記第1セグメントの浮きの程度のうち相対的に大きい値及び前記第2セグメントの浮きの程度のうち相対的に大きい値を、それぞれ電解銅箔の縦方向の浮き(LR)及び横方向の浮き(TR)と見なした。次に、前記横方向の浮き(TR)を前記縦方向の浮き(LR)で割ることによって、前記縦方向の浮き(LR)に対する前記横方向の浮き(TR)の割合(TR/LR)を求めた。
【0081】
*防錆物質(クロム)の電着量
AAS(Atomic Absorption Spectrometry)分析を通じて、電解銅箔の第1面(銅膜のシャイニー面に隣接する面)及びその反対側の第2面のクロム電着量をそれぞれ測定した。
【0082】
*10点平均粗さ(RzJIS)及び10点平均粗さの偏差
JIS B 0601−1994の規定に準拠して、接触式表面粗さ測定機を用いて電解銅箔の第1面(銅膜のシャイニー面に隣接する面)及びその反対側の第2面の10点平均粗さ(RzJIS)をそれぞれ測定した。
【0083】
次に、次式によって電解銅箔の10点平均粗さの偏差(%)を算出した。
式:R=[|R−R|/(R,Rmax]×100
【0084】
ここで、Rは、前記第1面の10点平均粗さであり、Rは、前記第2面の10点平均粗さであり、Rは、前記電解銅箔の10点平均粗さの偏差であり、|R−R|は、前記第1面と第2面との10点平均粗さの差であり、(R,Rmaxは、前記第1面及び第2面の10点平均粗さのうち相対的に大きい10点平均粗さを意味する。
【0085】
前記表1から、電解銅箔の縦方向の浮き(LR)が30mmを超える場合(比較例1)は、ロールツーロール工程中に隣接ロールの間で電解銅箔の折れ現象が発生し、電解銅箔の横方向の浮き(TR)が25mmを超える場合(比較例2)は、ロールツーロール工程中に電解銅箔の左右末端部にしわが発生することがわかる。
【0086】
また、比較例3の場合のように、電解銅箔が30mm以下の縦方向の浮き(LR)及び25mm以下の横方向の浮き(TR)を有するとしても、前記横方向の浮き(TR)が前記縦方向の浮き(LR)の8.5倍を超える場合には、ロールツーロール工程中に電解銅箔の左右末端部にしわが発生することがわかる。

図1
図2
図3
図4
図5