特許第6722284号(P6722284)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6722284アンモ酸化用触媒の製造方法、及びアクリロニトリルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6722284
(24)【登録日】2020年6月23日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】アンモ酸化用触媒の製造方法、及びアクリロニトリルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 37/00 20060101AFI20200706BHJP
   B01J 23/887 20060101ALI20200706BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20200706BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20200706BHJP
   C07C 255/08 20060101ALI20200706BHJP
   C07C 253/26 20060101ALI20200706BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20200706BHJP
【FI】
   B01J37/00 F
   B01J23/887 Z
   B01J37/04 102
   B01J37/08
   C07C255/08
   C07C253/26
   !C07B61/00 300
【請求項の数】7
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2018-523877(P2018-523877)
(86)(22)【出願日】2017年6月9日
(86)【国際出願番号】JP2017021543
(87)【国際公開番号】WO2017217343
(87)【国際公開日】20171221
【審査請求日】2018年11月19日
(31)【優先権主張番号】特願2016-118186(P2016-118186)
(32)【優先日】2016年6月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】相木 彰太
(72)【発明者】
【氏名】福澤 章喜
【審査官】 壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−188802(JP,A)
【文献】 特開昭55−056839(JP,A)
【文献】 特開2009−285581(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/051090(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/063771(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/050767(WO,A1)
【文献】 特表2009−511256(JP,A)
【文献】 特開2016−055271(JP,A)
【文献】 特開2000−005603(JP,A)
【文献】 特開平02−214543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J21/00−38/74
C07B31/00−61/00,63/00−63/04
C07C1/00−409/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモ酸化用触媒の製造方法であって、
モリブデンと、ビスマスと、鉄と、カルボン酸化合物とを含む原料スラリーを調製する工程(i)と、
前記原料スラリーを35〜45℃の温度範囲で20分〜8時間撹拌して前駆体スラリーを調製する工程(ii)と、
前記前駆体スラリーを噴霧乾燥し、乾燥粒子を得る工程と、
前記乾燥粒子を焼成する工程と、
を有し、
前記前駆体スラリーの粘度が1〜100cpであり、
前記アンモ酸化用触媒が、下記一般式(1)で表される組成を有する、アンモ酸化用触媒の製造方法。
Mo12BiaFebcdef (1)
(式(1)中、Xは、ニッケル、コバルト、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ストロンチウム及びバリウムからなる群より選ばれる1種以上の元素、Yはセリウム、クロム、ランタン、ネオジム、イットリウム、プラセオジム、サマリウム、アルミニウム、ガリウム及びインジウムからなる群より選ばれる1種以上の元素、Zはカリウム、ルビジウム及びセシウムからなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、ここで、元素Xにおいて、コバルトが占める割合が20原子%以上、及び/又はマグネシウムが占める割合が20原子%以下であり、a、b、c、d及びeは、それぞれ、0.1≦a≦2.0、0.1≦b≦3.0、0.1≦c≦10.0、0.1≦d≦3.0、及び0.01≦e≦2.0を満たし、fは存在する他の元素の原子価要求を満足させるのに必要な酸素の原子数である。)
【請求項2】
前記前駆体スラリーにおけるカルボン酸化合物の含有量が、前記アンモ酸化用触媒を構成する金属元素の総和に対して、0.01〜0.10モル当量である、請求項1に記載のアンモ酸化用触媒の製造方法。
【請求項3】
プロピレンと、分子状酸素と、アンモニアとを反応させてアクリロニトリルを製造する方法であって、請求項1又は2に記載の方法で製造されたアンモ酸化用触媒を用いる、アクリロニトリルの製造方法。
【請求項4】
モリブデンと、ビスマスと、鉄と、カルボン酸化合物とを含む原料スラリーを調製する工程(i)と、
前記原料スラリーを35〜45℃の温度範囲で20分〜8時間撹拌して前駆体スラリーを調製する工程(ii)と、
前記前駆体スラリーを噴霧乾燥し、乾燥粒子を得る工程と、
前記乾燥粒子を焼成してアンモ酸化用触媒を得る工程と、
前記アンモ酸化用触媒の存在下、プロピレンと、分子状酸素と、アンモニアとを反応させてアクリロニトリルを得る工程と、
を有し、
前記前駆体スラリーの粘度が1〜100cpであり、
前記アンモ酸化用触媒が、下記一般式(1)で表される組成を有する、アクリロニトリルの製造方法。
Mo12BiaFebcdef (1)
(式(1)中、Xは、ニッケル、コバルト、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ストロンチウム及びバリウムからなる群より選ばれる1種以上の元素、Yはセリウム、クロム、ランタン、ネオジム、イットリウム、プラセオジム、サマリウム、アルミニウム、ガリウム及びインジウムからなる群より選ばれる1種以上の元素、Zはカリウム、ルビジウム及びセシウムからなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、ここで、元素Xにおいて、コバルトが占める割合が20原子%以上、及び/又はマグネシウムが占める割合が20原子%以下であり、a、b、c、d及びeは、それぞれ、0.1≦a≦2.0、0.1≦b≦3.0、0.1≦c≦10.0、0.1≦d≦3.0、及び0.01≦e≦2.0を満たし、fは存在する他の元素の原子価要求を満足させるのに必要な酸素の原子数である。)
【請求項5】
前駆体スラリーにおけるカルボン酸化合物の含有量が、アンモ酸化用触媒を構成する金属元素の総和に対して、0.01〜0.10モル当量である、請求項4に記載のアクリロニトリルの製造方法。
【請求項6】
プロピレンと、分子状酸素と、アンモニアとを反応させてアクリロニトリルを製造するためのアンモ酸化用触媒であって、
モリブデンと、ビスマスと、鉄と、を含み、下記要件(1)及び(2)の両方を満たし、
下記一般式(1)で表される組成を有する、アンモ酸化用触媒。
要件(1):下記測定方法Aで算出される、プロピレンのアンモ酸化反応によるアクリロニトリル収率が84.1%以上である。
要件(2):下記測定方法Bで算出される、アンモ酸化用触媒の摩耗損失が0.9%以下である。
〔測定方法A〕
10メッシュの金網を1cm間隔で16枚内蔵した内径25mmのガラス管を反応器として使用し、当該反応器にアンモ酸化用触媒を50cc充填し、反応温度430℃、反応圧力0.17MPaに設定し、プロピレン9容積%であるプロピレン、アンモニア、酸素及びヘリウムの混合ガスを通過させ、アンモ酸化反応によって生成するアクリロニトリル収率を下記式により算出する。
【数1】
(ここで、プロピレンに対するアンモニアの容積比は、上記式で定義される硫酸原単位が20±2kg/T−ANとなるように設定し、プロピレンに対する酸素の容積比は、反応器出口ガスの酸素濃度が0.2±0.02容積%になるように設定し、混合ガスの流速を変更することで、下記式で定義される接触時間を変更し、これによって上記式で定義されるプロピレン転化率が99.3±0.2%となるように設定する。)
〔測定方法B〕
“Test Method for Synthetic Fluid Cracking Catalyst”(American Cyanamid Co.Ltd.6/31−4m−1/57)に記載の方法に準じて、アンモ酸化用触媒の耐摩耗性強度の測定を行い、以下のように定義される摩耗損失を算出する。
摩耗損失(%)=R/(S−Q)×100
(上記式において、Qは0〜5時間の間に測定系の外部に摩耗飛散した触媒の質量(g)、Rは5〜20時間の間に測定系の外部に摩耗飛散した触媒の質量(g)、Sは試験に供した触媒の質量(g)とする。)
Mo12BiaFebcdef (1)
(式(1)中、Xは、ニッケル、コバルト、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ストロンチウム及びバリウムからなる群より選ばれる1種以上の元素、Yはセリウム、クロム、ランタン、ネオジム、イットリウム、プラセオジム、サマリウム、アルミニウム、ガリウム及びインジウムからなる群より選ばれる1種以上の元素、Zはカリウム、ルビジウム及びセシウムからなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、ここで、元素Xにおいて、コバルトが占める割合が20原子%以上、及び/又はマグネシウムが占める割合が20原子%以下であり、a、b、c、d及びeは、それぞれ、0.1≦a≦2.0、0.1≦b≦3.0、0.1≦c≦10.0、0.1≦d≦3.0、及び0.01≦e≦2.0を満たし、fは存在する他の元素の原子価要求を満足させるのに必要な酸素の原子数である。)
【請求項7】
プロピレンと、分子状酸素と、アンモニアとを反応させてアクリロニトリルを製造する方法であって、請求項6に記載のアンモ酸化用触媒を用いる、アクリロニトリルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモ酸化用触媒の製造方法、及びアクリロニトリルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分子状酸素存在下でプロピレンとアンモニアを反応させてアクリロニトリルを製造する反応は「アンモ酸化反応」として知られており、この反応はアクリロニトリルの工業的製法として用いられている。
【0003】
この反応において、良好なアクリロニトリル収率を達成するために酸化物触媒が利用される。例えば、Mo−Bi−Fe又はFe−Sbを必須成分とした触媒が工業的に用いられている。更に良好なアクリロニトリル収率を達成するために、上述した必須成分に加えて、他の元素を添加した触媒も知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0004】
一方、金属組成の改良のみならず、触媒調製工程に改良を加えることで、アクリロニトリルの収率を向上させる試みも行われている。例えば、特許文献3には、モリブデン、ビスマス、及び鉄を必須成分として含むアンモ酸化用触媒の調製方法において、原料スラリーに配位性有機化合物を添加する方法が記載されている。
【0005】
特許文献4にはモリブデン、ビスマス、鉄、タングステン等を含むスラリーの温度を30〜70℃の範囲内で調製するアクリロニトリル製造用触媒の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−169482号公報
【特許文献2】特開2008−212779号公報
【特許文献3】特開2013−17917号公報
【特許文献4】特開2008−237963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3に記載の方法で調製された触媒はアクリロニトリル選択性が大きく向上するものの、流動床触媒として工業的に長期間使用すると、触媒が摩耗し、アクリロニトリル収率、触媒の流動性が悪化することがある。また、特許文献4に記載の触媒は、スラリーにカルボン酸を添加していないため、金属成分の分散性が悪化してアクリロニトリル収率が低くなる。上記のとおり、特許文献1〜4に記載の触媒製造技術では、高いアクリロニトリル収率を示し、かつ流動床触媒として長期間の使用に耐えうる摩耗強度を有するアンモ酸化用触媒を得ることはできていない。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、高いアクリロニトリル収率を示し、かつ流動床触媒として長期間の使用に耐えうる摩耗強度を有するアンモ酸化用触媒の製造方法、並びに、アクリロニトリルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために検討した結果、触媒製造の際の温度及び撹拌時間に係る条件を特定の範囲に調整することにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち本発明は以下のとおりである。
〔1〕
モリブデンと、ビスマスと、鉄と、カルボン酸化合物とを含む原料スラリーを調製する工程(i)と、
前記原料スラリーを30〜50℃の温度範囲で20分〜8時間撹拌して前駆体スラリーを調製する工程(ii)と、
前記前駆体スラリーを噴霧乾燥し、乾燥粒子を得る工程と、
前記乾燥粒子を焼成する工程と、
を有する、アンモ酸化用触媒の製造方法。
〔2〕
前記前駆体スラリーの粘度が1〜100cpである、〔1〕に記載のアンモ酸化用触媒の製造方法。
〔3〕
前記アンモ酸化用触媒が、下記一般式(1)で表される組成を有する、〔1〕又は〔2〕に記載のアンモ酸化用触媒の製造方法。
Mo12BiFe (1)
(式(1)中、Xは、ニッケル、コバルト、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ストロンチウム及びバリウムからなる群より選ばれる1種以上の元素、Yはセリウム、クロム、ランタン、ネオジム、イットリウム、プラセオジム、サマリウム、アルミニウム、ガリウム及びインジウムからなる群より選ばれる1種以上の元素、Zはカリウム、ルビジウム及びセシウムからなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、ここで、元素Xにおいて、コバルトが占める割合が20原子%以上、及び/又はマグネシウムが占める割合が20原子%以下であり、a、b、c、d及びeは、それぞれ、0.1≦a≦2.0、0.1≦b≦3.0、0.1≦c≦10.0、0.1≦d≦3.0、及び0.01≦e≦2.0を満たし、fは存在する他の元素の原子価要求を満足させるのに必要な酸素の原子数である。)
〔4〕
前駆体スラリーにおけるカルボン酸化合物の含有量が、アンモ酸化用触媒を構成する金属元素の総和に対して、0.01〜0.10モル当量である、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のアンモ酸化用触媒の製造方法。
〔5〕
プロピレンと、分子状酸素と、アンモニアとを反応させてアクリロニトリルを製造する方法であって、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の方法で製造されたアンモ酸化用触媒を用いる、アクリロニトリルの製造方法。
〔6〕
モリブデンと、ビスマスと、鉄と、カルボン酸化合物とを含む原料スラリーを調製する工程(i)と、
前記原料スラリーを30〜50℃の温度範囲で20分〜8時間撹拌して前駆体スラリーを調製する工程(ii)と、
前記前駆体スラリーを噴霧乾燥し、乾燥粒子を得る工程と、
前記乾燥粒子を焼成してアンモ酸化用触媒を得る工程と、
前記アンモ酸化用触媒の存在下、プロピレンと、分子状酸素と、アンモニアとを反応させてアクリロニトリルを得る工程と、
を有する、アクリロニトリルの製造方法。
〔7〕
前記前駆体スラリーの粘度が1〜100cpである、〔6〕に記載のアクリロニトリルの製造方法。
〔8〕
前記アンモ酸化用触媒が、下記一般式(1)で表される組成を有する、〔6〕又は〔7〕に記載のアクリロニトリルの製造方法。
Mo12BiFe (1)
(式(1)中、Xは、ニッケル、コバルト、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ストロンチウム及びバリウムからなる群より選ばれる1種以上の元素、Yはセリウム、クロム、ランタン、ネオジム、イットリウム、プラセオジム、サマリウム、アルミニウム、ガリウム及びインジウムからなる群より選ばれる1種以上の元素、Zはカリウム、ルビジウム及びセシウムからなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、ここで、元素Xにおいて、コバルトが占める割合が20原子%以上、及び/又はマグネシウムが占める割合が20原子%以下であり、a、b、c、d及びeは、それぞれ、0.1≦a≦2.0、0.1≦b≦3.0、0.1≦c≦10.0、0.1≦d≦3.0、及び0.01≦e≦2.0を満たし、fは存在する他の元素の原子価要求を満足させるのに必要な酸素の原子数である。)
〔9〕
前駆体スラリーにおけるカルボン酸化合物の含有量が、アンモ酸化用触媒を構成する金属元素の総和に対して、0.01〜0.10モル当量である、〔6〕〜〔8〕のいずれかに記載のアクリロニトリルの製造方法。
〔10〕
プロピレンと、分子状酸素と、アンモニアとを反応させてアクリロニトリルを製造するためのアンモ酸化用触媒であって、
モリブデンと、ビスマスと、鉄と、を含み、下記要件(1)及び(2)の両方を満たす、アンモ酸化用触媒。
要件(1):下記測定方法Aで算出される、プロピレンのアンモ酸化反応によるアクリロニトリル収率が84.1%以上である。
要件(2):下記測定方法Bで算出される、アンモ酸化用触媒の摩耗損失が0.9%以下である。
〔測定方法A〕
10メッシュの金網を1cm間隔で16枚内蔵した内径25mmのガラス管を反応器として使用し、当該反応器にアンモ酸化用触媒を50cc充填し、反応温度430℃、反応圧力0.17MPaに設定し、プロピレン9容積%であるプロピレン、アンモニア、酸素及びヘリウムの混合ガスを通過させ、アンモ酸化反応によって生成するアクリロニトリル収率を下記式により算出する。
【数1】
(ここで、プロピレンに対するアンモニアの容積比は、上記式で定義される硫酸原単位が20±2kg/T−ANとなるように設定し、プロピレンに対する酸素の容積比は、反応器出口ガスの酸素濃度が0.2±0.02容積%になるように設定し、混合ガスの流速を変更することで、下記式で定義される接触時間を変更し、これによって上記式で定義されるプロピレン転化率が99.3±0.2%となるように設定する。)
〔測定方法B〕
“Test Method for Synthetic Fluid Cracking Catalyst”(American Cyanamid Co.Ltd.6/31−4m−1/57)に記載の方法に準じて、アンモ酸化用触媒の耐摩耗性強度の測定を行い、以下のように定義される摩耗損失を算出する。
摩耗損失(%)=R/(S−Q)×100
(上記式において、Qは0〜5時間の間に測定系の外部に摩耗飛散した触媒の質量(g)、Rは5〜20時間の間に測定系の外部に摩耗飛散した触媒の質量(g)、Sは試験に供した触媒の質量(g)とする。)
〔11〕
下記一般式(1)で表される組成を有する、〔10〕に記載のアンモ酸化用触媒。
Mo12BiFe (1)
(式(1)中、Xは、ニッケル、コバルト、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ストロンチウム及びバリウムからなる群より選ばれる1種以上の元素、Yはセリウム、クロム、ランタン、ネオジム、イットリウム、プラセオジム、サマリウム、アルミニウム、ガリウム及びインジウムからなる群より選ばれる1種以上の元素、Zはカリウム、ルビジウム及びセシウムからなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、ここで、元素Xにおいて、コバルトが占める割合が20原子%以上、及び/又はマグネシウムが占める割合が20原子%以下であり、a、b、c、d及びeは、それぞれ、0.1≦a≦2.0、0.1≦b≦3.0、0.1≦c≦10.0、0.1≦d≦3.0、及び0.01≦e≦2.0を満たし、fは存在する他の元素の原子価要求を満足させるのに必要な酸素の原子数である。)
〔12〕
プロピレンと、分子状酸素と、アンモニアとを反応させてアクリロニトリルを製造する方法であって、〔10〕又は〔11〕に記載のアンモ酸化用触媒を用いる、アクリロニトリルの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高いアクリロニトリル収率を示し、かつ、流動床触媒として長期間の使用に耐えうる良好な摩耗強度を有するアンモ酸化用触媒の製造方法、並びに、アクリロニトリルの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について説明するが、本発明は下記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲でさまざまな変形が可能である。
【0013】
〔アンモ酸化用触媒の製造方法〕
本実施形態のアンモ酸化用触媒の製造方法は、モリブデンと、ビスマスと、鉄と、カルボン酸化合物とを含む原料スラリーを調製する工程(i)と、前記原料スラリーを30〜50℃の温度範囲で20分〜8時間撹拌して前駆体スラリーを調製する工程(ii)と、前記前駆体スラリーを噴霧乾燥し、乾燥粒子を得る工程と、前記乾燥粒子を焼成する工程と、を有する。
【0014】
本実施形態のアンモ酸化用触媒の製造方法は、上記構成を有することにより、高いアクリロニトリル選択率を示し、かつ、流動床触媒として長期間の使用に耐えうる良好な摩耗強度を有するアンモ酸化用触媒を得ることができる。これについて、本発明者らは、以下のように考察している。アンモ酸化反応における活性点はビスマスを含むモリブデートであるが、それのみでは高いアクリロニトリル選択率を得ることはできない。ビスマスを含むモリブデートが、鉄を含むモリブデート、その他の金属を含むモリブデートと複合化することが、アクリロニトリル選択率を向上させると考えられる。すなわち、前駆体スラリーの段階において、金属成分を単独成分で凝集せずに分散させて、ビスマスを含むモリブデートが、その他の金属を含むモリブデートと複合化しやすい状態にすることが、アクリロニトリル選択率向上に寄与すると考えられる。また、前駆体スラリー中の金属、担体の粒子の凝集を防ぐことで、触媒の摩耗強度も向上すると考えられる。ただし、作用機序は上記に限定されない。
【0015】
(組成)
本実施形態におけるアンモ酸化用触媒は、モリブデンと、ビスマスと、鉄と、を必須成分として含む。モリブデンは、プロピレンの吸着サイト及びアンモニアの活性化サイトとしての役割を担っている。また、ビスマスは、プロピレンを活性化させ、α位水素を引き抜いてπアリル種を生成させる役割を担っている。さらに、鉄は、3価/2価のレドックスによって気相に存在する酸素を触媒活性点に供給する役割を担っている。
【0016】
その他、本実施形態におけるアンモ酸化用触媒中に含まれていてもよい任意成分としては、特に限定されないが、例えば、ニッケル、コバルト、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ストロンチウム及びバリウムからなる群より選ばれる1種以上の元素X、セリウム、クロム、ランタン、ネオジム、イットリウム、プラセオジム、サマリウム、アルミニウム、ガリウム及びインジウムからなる群より選ばれる1種以上の元素Y、カリウム、ルビジウム及びセシウムからなる群より選ばれる1種以上の元素Zが挙げられる。元素Xは、適度の格子欠陥を有するモリブデートを形成し、酸素のバルク内移動を円滑にする役割を担っている。また元素Xにおいてコバルト、マグネシウムの占める割合は、触媒の摩耗強度に大きな影響を与える。元素Xのうち、コバルトの占める割合が多くなる、及び/又はマグネシウムを含む割合が少なくなると、アクリロニトリル選択率が高くなる傾向にあり好ましいが、工程(ii)で30℃未満における前駆体スラリーの粘度が高くなり、得られる触媒の摩耗強度が低くなることを本発明者は見出した。具体的には元素Xのうち、コバルトが20原子%以上、及び/又はマグネシウム20原子%以下のとき、工程(ii)で30℃未満における前駆体スラリーの粘度が高くなり、得られる触媒の摩耗強度が低くなる傾向がある。しかしながら、本実施形態の製造方法では、元素Xのうち、コバルトが20原子%以上、及び/又はマグネシウム20原子%以下のときであっても、工程(ii)で原料スラリーを30℃以上の温度で撹拌し、前駆体スラリーの粘度が高くならないようにすることにより、得られる触媒の摩耗強度を良好にすることができる。元素Yは鉄と同様に触媒におけるレドックス機能を担っている。さらに、元素Zは、触媒表面に存在する酸点をブロックすることで、主生成物、原料の分解反応を抑制する役割を担っている。
【0017】
すなわち、本実施形態のアンモ酸化用触媒の製造方法により得られるアンモ酸化用触媒は、下記一般式(1)で表される組成を有することが好ましい。このような組成を有することにより、アクリロニトリル選択率がより向上する傾向にある。
Mo12BiFe (1)
上記式(1)中、Xは、ニッケル、コバルト、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ストロンチウム及びバリウムからなる群より選ばれる1種以上の元素、Yはセリウム、クロム、ランタン、ネオジム、イットリウム、プラセオジム、サマリウム、アルミニウム、ガリウム及びインジウムからなる群より選ばれる1種以上の元素、Zはカリウム、ルビジウム及びセシウムからなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、
aは、モリブデン12原子に対するビスマスの原子比を示し、0.1≦a≦2.0であり、好ましくは0.15≦a≦1.0であり、より好ましくは0.2≦a≦0.7であり、
bは、モリブデン12原子に対する鉄の原子比を示し、0.1≦b≦3.0であり、好ましくは0.5≦b≦2.5であり、より好ましくは1.0≦b≦2.0であり、
cは、モリブデン12原子に対するXの原子比を示し、0.1≦c≦10.0であり、好ましくは3.0≦c≦9.0であり、より好ましくは5.0≦c≦8.5であり、
dは、モリブデン12原子に対するYの原子比を示し、0.1≦d≦3.0であり、好ましくは0.2≦d≦2.0であり、より好ましくは0.3≦d≦1.5であり、
eは、モリブデン12原子に対するZの原子比を示し、0.01≦e≦2.0であり、好ましくは0.05≦e≦1.0であり、
fは、モリブデン12原子に対する酸素の原子比を示し、存在する他の元素の原子価要求を満足させるのに必要な酸素の原子数である。
【0018】
工業的にアクリロニトリルを製造する場合、一般的に反応ガスによって触媒を流動させる流動床反応が選択される。そのため、アンモ酸化用触媒は一定以上の強度を有していることが好ましい。このような観点から、アンモ酸化用触媒は担体に担持されていてもよい。アンモ酸化用触媒の担体としては、特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア等の酸化物が挙げられる。このなかでも、アクリロニトリルの選択性低下が小さく、触媒の耐摩耗性、粒子強度を大きく向上させられるシリカが担体として適している。
【0019】
担体の含有量は、アンモ酸化用触媒と担体の合計質量に対して、好ましくは30〜70質量%であり、より好ましくは35〜65質量%である。担体の含有量が30質量%以上であることにより、触媒の耐摩耗性、粒子強度がより向上する傾向にある。また、担体の含有量が70質量%以下であることにより、アクリロニトリル選択性がより向上する傾向にある。
【0020】
担体として用いるシリカの原料としては特に限定されないが、シリカゾルが好ましい。シリカゾルに含まれるシリカの一次粒子径は特に限定されず、異なる一次粒子径のシリカを混合して使用してもよい。
【0021】
〔アンモ酸化用触媒の製造方法〕
〔工程(i)〕
工程(i)は、モリブデンと、ビスマスと、鉄と、カルボン酸化合物と、を含む原料スラリーを調製する工程である。この際、必要に応じて、シリカ、水をさらに混合してもよい。工程(i)において、各成分の混合順は特に限定されないが、例えば、モリブデンを含む溶液を調製した後、この溶液とその他の金属成分及びカルボン酸化合物とを混合し、原料スラリーを得ることができる。
【0022】
原料スラリーの調製に使用される各成分の原料は、水又は硝酸に可溶な塩であることが好ましい。モリブデン、ビスマス、鉄の各元素の原料としては、特に限定されないが、例えば、水又は硝酸に可溶な、アンモニウム塩、硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩、有機酸塩、無機塩が挙げられる。特に、モリブデンの原料としてはアンモニウム塩が好ましい。また、ビスマス、鉄の原料としては、それぞれの硝酸塩が好ましい。硝酸塩は、取扱いが容易であることに加え、塩酸塩を使用した場合に生じる塩素の残留や、硫酸塩を使用した場合に生じる硫黄の残留を生じない点でも好ましい。各成分の原料の具体例としては、以下に限定されないが、パラモリブデン酸アンモニウム、硝酸ビスマス、硝酸第二鉄が挙げられる。
【0023】
シリカ原料としてはシリカゾルが好ましい。その他の成分が混合されていない原料の状態におけるシリカゾルの好ましい濃度は10〜50質量%である。
【0024】
原料スラリーはカルボン酸化合物を含む。カルボン酸化合物は代表的な配位性有機化合物であり、金属成分と結合することにより、金属成分の高分散化を促進すると考えられる。カルボン酸化合物としては、特に限定されないが、例えば、シュウ酸、酒石酸、こはく酸、りんご酸、クエン酸が挙げられる。このなかでも、シュウ酸及び酒石酸が好ましく、シュウ酸がより好ましい。また、シリカ原料とシュウ酸原料は予め混合しておくことが好ましい。
【0025】
カルボン酸化合物の含有量は、後述する前駆体スラリーにおいて、アンモ酸化用触媒を構成する金属元素の総和に対して、0.01〜0.10モル当量となることが好ましい。より好ましくは0.02〜0.09モル当量であり、更に好ましくは0.02〜0.07モル当量である。カルボン酸化合物の含有量が0.01モル当量以上であることにより、得られる触媒のアクリロニトリル収率がより向上する傾向にある。また、カルボン酸化合物の含有量が0.10モル当量以下であることにより、触媒の製造段階においてカルボン酸化合物の分解又は放散による発熱や、触媒粒子のひび割れが抑制され、得られる触媒の強度がより向上する傾向にある。カルボン酸化合物の含有量は、各原料の仕込み比により上記範囲に調整することができる。
【0026】
〔工程(ii)〕
工程(ii)は前記原料スラリーを所定の温度で所定の時間撹拌し、前駆体スラリーを調製する工程である。
【0027】
撹拌時の温度は30〜50℃であり、好ましくは35〜45℃である。撹拌時の温度が30〜50℃であるとき、金属成分、及び含まれうる担体成分の高分散化が促進され、良好なアクリロニトリル収率、摩耗強度を有する触媒が得られる。撹拌時の温度が30℃より低い場合には、触媒の表面状態が粗くなり、摩耗強度の低下を招くことがある。撹拌時の温度が50℃より高い場合には、硝酸等の原料成分が揮発してスラリーのpHが上がり、金属成分が凝集してアクリロニトリル収率の低下を招くことがある。
【0028】
撹拌時間は20分〜8.0時間であり、好ましくは2.0〜5.0時間である。撹拌時間が8.0時間以下であるとき、高分散化した金属成分の再凝集が抑制され、良好なアクリロニトリル収率、摩耗強度を有する触媒が得られる。撹拌時間が8.0時間より大きい場合には、金属成分の凝集が顕著になり、アクリロニトリル収率の低下を招くことがある。撹拌時間が20分より小さい場合には、金属成分の混合が十分でなく、焼成した際に単一の酸化物が多く形成してしまい、アクリロニトリル収率の低下を招くことがある。
【0029】
前駆体スラリーの粘度は1〜100cpであることが好ましく、より好ましくは20〜90cp、更に好ましくは30〜90cpである。前駆体スラリーの粘度が1cp以上であるとき、撹拌における気泡の巻き込みがさらに抑制され、より良好な摩耗強度を有する触媒が得られる傾向にある。前駆体スラリーの粘度が100cp以下であるとき、金属成分の凝集がさらに抑制され、より良好なアクリロニトリル収率、摩耗強度を有する触媒が得られる。上記粘度は後述する実施例に記載の方法により測定することができる。また、上記粘度は、例えば、原料スラリーの温度、撹拌時間、撹拌速度等により上記範囲に調整することができる。具体的には、例えば、原料スラリーの温度を高くすると粘度としては低くなる傾向にあり、原料スラリーの温度を低くすると粘度としては高くなる傾向にあり、撹拌時間を長くすると粘度が低くなる傾向にあり、撹拌速度を大きくすると粘度が低くなる傾向にある。このような観点から、原料スラリーの温度を35℃以上とすることが好ましい。
【0030】
〔乾燥工程〕
乾燥工程は、工程(ii)で得られた前駆体スラリーを噴霧乾燥し、乾燥粒子を得る工程である。前駆体スラリーを噴霧乾燥することによって流動層反応に適した球形微粒子を得ることができる。噴霧乾燥装置としては、回転円盤式、ノズル式等の一般的なものを用いることができる。噴霧乾燥条件を調節することにより、触媒の粒径を調整することができる。流動層触媒として用いる場合には、触媒の粒径は、好ましくは25〜180μmである。好ましい粒径を有する触媒粒子を得るための条件の一例を記載すると、乾燥器上部の中央に設置された、皿型回転子を備えた遠心式噴霧化装置を用い、乾燥器の入口空気温度を180〜250℃、出口温度を100〜150℃に保持して行う噴霧乾燥が挙げられる。
【0031】
〔焼成工程〕
焼成工程は、乾燥工程で得られた乾燥粒子を焼成する工程である。乾燥粒子が硝酸を含有する場合は、焼成の前に脱硝処理を行うことが好ましい。脱硝処理は150〜450℃で1.5〜3時間行うことが好ましい。焼成は空気雰囲気下で行うことができる。焼成温度は、好ましくは550〜650℃である。焼成温度が550℃以上であることにより、結晶成長が十分に進行し、得られる触媒のアクリロニトリルの選択性がより向上する傾向にある。また、焼成温度が650℃以下であることにより、得られ得る触媒の表面積が増大し、プロピレンの反応活性がより向上する傾向にある。
【0032】
〔アンモ酸化用触媒〕
本実施形態のアンモ酸化用触媒は、プロピレンと、分子状酸素と、アンモニアとを反応させてアクリロニトリルを製造するためのアンモ酸化用触媒であって、モリブデンと、ビスマスと、鉄と、を含み、下記要件(1)及び(2)の両方を満たす。
要件(1):下記測定方法Aで算出される、プロピレンのアンモ酸化反応によるアクリロニトリル収率が84.1%以上である。
要件(2):下記測定方法Bで算出される、アンモ酸化用触媒の摩耗損失が0.9%以下である。
〔測定方法A〕
10メッシュの金網を1cm間隔で16枚内蔵した内径25mmのガラス管を反応器として使用し、当該反応器にアンモ酸化用触媒を50cc充填し、反応温度430℃、反応圧力0.17MPaに設定し、プロピレン9容積%であるプロピレン、アンモニア、酸素及びヘリウムの混合ガスを通過させ、アンモ酸化反応によって生成するアクリロニトリル収率を下記式により算出する。
【数2】
(ここで、プロピレンに対するアンモニアの容積比は、上記式で定義される硫酸原単位が20±2kg/T−ANとなるように設定し、プロピレンに対する酸素の容積比は、反応器出口ガスの酸素濃度が0.2±0.02容積%になるように設定し、混合ガスの流速を変更することで、下記式で定義される接触時間を変更し、これによって上記式で定義されるプロピレン転化率が99.3±0.2%となるように設定する。)
〔測定方法B〕
“Test Method for Synthetic Fluid Cracking Catalyst”(American Cyanamid Co.Ltd.6/31−4m−1/57)に記載の方法に準じて、アンモ酸化用触媒の耐摩耗性強度の測定を行い、以下のように定義される摩耗損失を算出する。
摩耗損失(%)=R/(S−Q)×100
(上記式において、Qは0〜5時間の間に測定系の外部に摩耗飛散した触媒の質量(g)、Rは5〜20時間の間に測定系の外部に摩耗飛散した触媒の質量(g)、Sは試験に供した触媒の質量(g)とする。)
【0033】
本実施形態のアンモ酸化触媒は、上記のように構成されているため、高いアクリロニトリル収率を示し、かつ、流動床触媒として長期間の使用に耐えうる良好な摩耗強度を有するものといえる。上述したアクリロニトリル収率及び摩耗損失は、例えば、上述した本実施形態に係るアンモ酸化触媒の製造方法における工程(ii)において所望とする条件を採用すること等により、上記した範囲に調整することができる。
【0034】
本実施形態のアンモ酸化触媒は、上記一般式(1)で表される組成を有するものであることが好ましい。
【0035】
〔アクリロニトリルの製造方法〕
本実施形態のアクリロニトリルの製造方法は、前述したアンモ酸化用触媒の存在下、プロピレンと、分子状酸素と、アンモニアと、を反応させてアクリロニトリルを製造する反応工程を有する。本実施形態のアクリロニトリルの製造方法は、前述したアンモ酸化触媒の製造方法に続けて行うこともできる。すなわち、本実施形態のアクリロニトリルの製造方法は、モリブデンと、ビスマスと、鉄と、カルボン酸化合物とを含む原料スラリーを調製する工程(i)と、前記原料スラリーを30〜50℃の温度範囲で20分〜8時間撹拌して前駆体スラリーを調製する工程(ii)と、前記前駆体スラリーを噴霧乾燥し、乾燥粒子を得る工程と、前記乾燥粒子を焼成してアンモ酸化用触媒を得る工程と、前記アンモ酸化用触媒の存在下、プロピレンと、分子状酸素と、アンモニアとを反応させてアクリロニトリルを得る工程と、を有するものとすることができる。
【0036】
アンモ酸化反応によるアクリロニトリルの製造は固定床反応器又は流動床反応器により実施することができる。このなかでも、反応の際に発生する熱を効率的に除去し、アクリロニトリルの収率を高める観点から、流動床反応器が好ましい。
【0037】
アンモ酸化反応の原料であるプロピレン及びアンモニアは必ずしも高純度である必要はなく、工業グレードのものを使用することができる。原料ガス中のプロピレンとアンモニアと酸素のモル比(プロピレン/アンモニア/酸素)は、好ましくは1.0/1.0〜1.5/1.6〜2.2である。
【0038】
反応温度は、好ましくは380〜480℃である。また、反応圧力は、好ましくは常圧〜0.3MPaである。原料ガスと触媒の接触時間は、好ましくは2〜7秒であり、より好ましくは3〜6秒である。
【実施例】
【0039】
以下に実施例を示して、本実施形態をより詳細に説明するが、本実施形態は以下に記載の実施例によって限定されるものではない。なお実施例及び比較例に記載した触媒組成は各元素の仕込み組成と同じ値である。
【0040】
[実施例1]
組成がMo12.00Bi0.37Fe1.53Co4.11Ni3.30Ce0.81Rb0.14で表される金属酸化物を40質量%のシリカに担持した触媒を、以下の手順で製造した。
【0041】
30質量%のSiOを含むシリカゾル1333gに、水200gに溶解させたシュウ酸二水和物25.0gを加えた(前駆体スラリーにおいて金属元素の総和に対し0.039モル当量)。次いで、866.3gの水に溶解させた481.9gのパラモリブデン酸アンモニウム[(NHMo24・4HO]を撹拌下で加え、さらに、16.6質量%の硝酸393.8gに溶解させた41.1gの硝酸ビスマス[Bi(NO・5HO]、140.6gの硝酸鉄[Fe(NO・9HO]、272.3gの硝酸コバルト[Co(NO・6HO]、218.2gの硝酸ニッケル[Ni(NO・6HO]、80.3gの硝酸セリウム[Ce(NO・6HO]、4.81gの硝酸ルビジウム[RbNO]を加え、原料スラリーを調製した。上記原料スラリーを33℃で3.5時間撹拌し、前駆体スラリーを調製した。得られた前駆体スラリーの粘度は62cpであった。なお、前駆体スラリーの粘度は、B形粘度計(東機産業株式会社製「TVB−10」)により測定することとし、以下の実施例及び比較例でも同様とした。次いで、前駆体スラリーを回転円盤式の噴霧乾燥器を用いて乾燥させた。このとき、乾燥機入口の空気温度は230℃とし、出口の空気温度は110℃とした。また、円盤の回転数は12500回転/分に設定した。得られた乾燥体を200℃で5分間保持し、200℃から450℃まで2.5℃/分で昇温し、450℃で20分間保持することで脱硝した。得られた脱硝粉を590℃で2時間焼成して、触媒を得た。
【0042】
[実施例2]
原料スラリーを40℃で3.5時間撹拌した以外は実施例1と同様にして、触媒を製造した。このときスラリーの粘度は51cpであった。
【0043】
[実施例3]
原料スラリーを46℃で3.5時間撹拌した以外は実施例1と同様にして、触媒を製造した。このときスラリーの粘度は45cpであった。
【0044】
[実施例4]
原料スラリーを40℃で1時間撹拌した以外は実施例1と同様にして、触媒を製造した。このときスラリーの粘度は63cpであった。
【0045】
[実施例5]
原料スラリーを41℃で6時間撹拌した以外は実施例1と同様にして、触媒を製造した。このときスラリーの粘度は42cpであった。
【0046】
[実施例6]
シュウ酸二水和物に代えて、200gの水に溶解させた酒石酸22.5gをシリカゾルに添加した(前駆体スラリーにおいて金属元素の総和に対し0.030モル当量)ことと、原料スラリーを40℃で3.5時間撹拌したこと以外は実施例1と同様にして、触媒を製造した。このときスラリーの粘度は46cpであった。
【0047】
[実施例7]
組成がMo12.00Bi0.39Fe1.60Ni6.97Mg0.77Ce0.63Rb0.17で表される金属酸化物を40質量%のシリカに担持した触媒を、以下の手順で製造した。
【0048】
30質量%のSiOを含むシリカゾル1333gに、水200gに溶解させたシュウ酸二水和物25.0gを加えた(前駆体スラリーにおいて金属元素の総和に対し0.038モル当量)。873.5gの水に溶解させた485.9gのパラモリブデン酸アンモニウム[(NHMo24・4HO]を撹拌下で加え、さらに、16.6質量%の硝酸396.7gに溶解させた43.1gの硝酸ビスマス[Bi(NO・5HO]、148.0gの硝酸鉄[Fe(NO・9HO]、464.7gの硝酸ニッケル[Ni(NO・6HO]、45.5gの硝酸マグネシウム[Mg(NO・6HO]、62.6gの硝酸セリウム[Ce(NO・6HO]、5.89gの硝酸ルビジウム[RbNO]を加え、原料スラリーを調製した。上記原料スラリーを32℃で3.5時間撹拌し、前駆体スラリーを調製した。得られた前駆体スラリーの粘度は105cpであった。次いで、前駆体スラリーを回転円盤式の噴霧乾燥器を用いて乾燥させた。このとき、乾燥機入口の空気温度は230℃とし、出口の空気温度は110℃とした。また、円盤の回転数は12500回転/分に設定した。得られた乾燥体を200℃で5分間保持し、200℃から450℃まで2.5℃/分で昇温し、450℃で20分間保持することで脱硝した。得られた脱硝粉を580℃で2時間焼成して、触媒を得た。
【0049】
[実施例8]
原料スラリーを41℃で3.5時間撹拌した以外は実施例7と同様にして、触媒を製造した。このときスラリーの粘度は81cpであった。
【0050】
[実施例9]
シュウ酸二水和物に代えて、200gの水に溶解させた酒石酸22.5gをシリカゾルに添加した(前駆体スラリーにおいて金属元素の総和に対し0.028モル当量)ことと、原料スラリーを40℃で3.5時間撹拌した以外は実施例7と同様にして、触媒を製造した。このときスラリーの粘度は74cpであった。
【0051】
[実施例10]
組成がMo12.00Bi1.20Fe0.60Ni7.80Cr1.200.48で表される金属酸化物を60質量%のシリカに担持した触媒を、以下の手順で製造した。
【0052】
30質量%のSiOを含むシリカゾル2000gに、水200gに溶解させたシュウ酸二水和物25.0gを加えた(前駆体スラリーにおいて金属元素の総和に対し0.059モル当量)。553.7gの水に溶解させた308.0gのパラモリブデン酸アンモニウム[(NHMo24・4HO]を撹拌下で加え、さらに、16.6質量%の硝酸387.6gに溶解させた84.6gの硝酸ビスマス[Bi(NO・5HO]、35.2gの硝酸鉄[Fe(NO・9HO]、329.8gの硝酸ニッケル[Ni(NO・6HO]、69.8gの硝酸クロム[Cr(NO・9HO]、7.06gの硝酸カリウム[KNO]を加え、原料スラリーを調製した。
上記原料スラリーを42℃で3.5時間撹拌し、前駆体スラリーを調製した。得られた前駆体スラリーの粘度は43cpであった。次いで、前駆体スラリーを回転円盤式の噴霧乾燥器を用いて乾燥させた。このとき、乾燥機入口の空気温度は230℃とし、出口の空気温度は110℃とした。また、円盤の回転数は12500回転/分に設定した。得られた乾燥体を200℃で5分間保持し、200℃から450℃まで2.5℃/分で昇温し、450℃で20分間保持することで脱硝した。得られた脱硝粉を590℃で2時間焼成して、触媒を得た。
【0053】
[実施例11]
組成がMo12.00Bi0.57Fe1.01Co6.83Ni0.98Mg0.98Ce0.38Rb0.12で表される金属酸化物を40質量%のシリカに担持した触媒を、以下の手順で製造した。
【0054】
30質量%のSiOを含むシリカゾル1333gに、水200gに溶解させたシュウ酸二水和物25.0gを加えた(前駆体スラリーにおいて金属元素の総和に対し0.038モル当量)。866.4gの水に溶解させた482.0gのパラモリブデン酸アンモニウム[(NHMo24・4HO]を撹拌下で加え、さらに、16.6質量%の硝酸395.2gに溶解させた62.7gの硝酸ビスマス[Bi(NO・5HO]、93.0gの硝酸鉄[Fe(NO・9HO]、452.3gの硝酸コバルト[Co(NO・6HO]、64.5gの硝酸ニッケル[Ni(NO・6HO]、56.9gの硝酸マグネシウム[Mg(NO・6HO]、37.4gの硝酸セリウム[Ce(NO・6HO]、3.93gの硝酸ルビジウム[RbNO]を加え、原料スラリーを調製した。
上記原料スラリーを32℃で3.5時間撹拌し、前駆体スラリーを調製した。得られた前駆体スラリーの粘度は73cpであった。次いで、前駆体スラリーを回転円盤式の噴霧乾燥器を用いて乾燥させた。このとき、乾燥機入口の空気温度は230℃とし、出口の空気温度は110℃とした。また、円盤の回転数は12500回転/分に設定した。得られた乾燥体を200℃で5分間保持し、200℃から450℃まで2.5℃/分で昇温し、450℃で20分間保持することで脱硝した。得られた脱硝粉を590℃で2時間焼成して、触媒を得た。
【0055】
[実施例12]
原料スラリーを40℃で3.5時間撹拌した以外は実施例11と同様にして、触媒を製造した。このときスラリーの粘度は58cpであった。
【0056】
[実施例13]
原料スラリーを47℃で3.5時間撹拌した以外は実施例11と同様にして、触媒を製造した。このときスラリーの粘度は50cpであった。
【0057】
[実施例14]
原料スラリーを41℃で1時間撹拌した以外は実施例11と同様にして、触媒を製造した。このときスラリーの粘度は74cpであった。
【0058】
[実施例15]
原料スラリーを40℃で6時間撹拌した以外は実施例11と同様にして、触媒を製造した。このときスラリーの粘度は49cpであった。
【0059】
[実施例16]
シュウ酸二水和物に代えて、200gの水に溶解させた酒石酸22.5gをシリカゾルに添加した(前駆体スラリーにおいて金属元素の総和に対し0.029モル当量)ことと、原料スラリーを40℃で3.5時間撹拌した以外は実施例7と同様にして、触媒を製造した。このときスラリーの粘度は40cpであった。
【0060】
[実施例17]
組成がMo12.00Bi0.57Fe1.01Co2.24Ni6.54Ce0.38Rb0.12で表される金属酸化物を40質量%のシリカに担持した触媒を、以下の手順で製造した。
30質量%のSiOを含むシリカゾル1333gに、水200gに溶解させたシュウ酸二水和物25.0gを加えた(前駆体スラリーにおいて金属元素の総和に対し0.039モル当量)。855.9gの水に溶解させた479.5gのパラモリブデン酸アンモニウム[(NHMo24・4HO]を撹拌下で加え、さらに、16.6質量%の硝酸393.2gに溶解させた61.9gの硝酸ビスマス[Bi(NO・5HO]、91.9gの硝酸鉄[Fe(NO・9HO]、146.8gの硝酸コバルト[Co(NO・6HO]、427.2gの硝酸ニッケル[Ni(NO・6HO]、36.9gの硝酸セリウム[Ce(NO・6HO]、3.88gの硝酸ルビジウム[RbNO]を加え、原料スラリーを調製した。
上記原料スラリーを38℃で3.5時間撹拌し、前駆体スラリーを調製した。得られた前駆体スラリーの粘度は85cpであった。次いで、前駆体スラリーを回転円盤式の噴霧乾燥器を用いて乾燥させた。このとき、乾燥機入口の空気温度は230℃とし、出口の空気温度は110℃とした。また、円盤の回転数は12500回転/分に設定した。得られた乾燥体を200℃で5分間保持し、200℃から450℃まで2.5℃/分で昇温し、450℃で20分間保持することで脱硝した。得られた脱硝粉を600℃で2時間焼成して、触媒を得た。
【0061】
[実施例18]
組成がMo12.00Bi0.82Fe1.45Co8.14Ce0.55Rb0.13で表される金属酸化物を40質量%のシリカに担持した触媒を、以下の手順で製造した。
【0062】
30質量%のSiOを含むシリカゾル1333gに、水200gに溶解させたシュウ酸二水和物25.0gを加えた(前駆体スラリーにおいて金属元素の総和に対し0.039モル当量)。855.9gの水に溶解させた462.7gのパラモリブデン酸アンモニウム[(NHMo24・4HO]を撹拌下で加え、さらに、16.6質量%の硝酸391.1gに溶解させた88.5gの硝酸ビスマス[Bi(NO・5HO]、128.2gの硝酸鉄[Fe(NO・9HO]、517.3gの硝酸コバルト[Co(NO・6HO]、52.4gの硝酸セリウム[Ce(NO・6HO]、4.06gの硝酸ルビジウム[RbNO]を加え、原料スラリーを調製した。
上記原料スラリーを39℃で3.5時間撹拌し、前駆体スラリーを調製した。得られた前駆体スラリーの粘度は80cpであった。次いで、前駆体スラリーを回転円盤式の噴霧乾燥器を用いて乾燥させた。このとき、乾燥機入口の空気温度は230℃とし、出口の空気温度は110℃とした。また、円盤の回転数は12500回転/分に設定した。得られた乾燥体を200℃で5分間保持し、200℃から450℃まで2.5℃/分で昇温し、450℃で20分間保持することで脱硝した。得られた脱硝粉を585℃で2時間焼成して、触媒を得た。
【0063】
[実施例19]
組成がMo12.00Bi1.05Fe1.40Co8.15Ce0.70Rb0.13で表される金属酸化物を40質量%のシリカに担持した触媒を、以下の手順で製造した。
【0064】
30質量%のSiOを含むシリカゾル1333gに、水200gに溶解させたシュウ酸二水和物25.0gを加えた(前駆体スラリーにおいて金属元素の総和に対し0.040モル当量)。810.3gの水に溶解させた450.8gのパラモリブデン酸アンモニウム[(NHMo24・4HO]を撹拌下で加え、さらに、16.6質量%の硝酸388.6gに溶解させた108.1gの硝酸ビスマス[Bi(NO・5HO]、120.1gの硝酸鉄[Fe(NO・9HO]、504.7gの硝酸コバルト[Co(NO・6HO]、64.5gの硝酸セリウム[Ce(NO・6HO]、3.96gの硝酸ルビジウム[RbNO]を加え、原料スラリーを調製した。
上記原料スラリーを40℃で3.5時間撹拌し、前駆体スラリーを調製した。得られた前駆体スラリーの粘度は74cpであった。次いで、前駆体スラリーを回転円盤式の噴霧乾燥器を用いて乾燥させた。このとき、乾燥機入口の空気温度は230℃とし、出口の空気温度は110℃とした。また、円盤の回転数は12500回転/分に設定した。得られた乾燥体を200℃で5分間保持し、200℃から450℃まで2.5℃/分で昇温し、450℃で20分間保持することで脱硝した。得られた脱硝粉を585℃で2時間焼成して、触媒を得た。
【0065】
[実施例20]
組成がMo12.00Bi0.84Fe2.06Co6.67Ce0.56Rb0.12で表される金属酸化物を40質量%のシリカに担持した触媒を、以下の手順で製造した。
【0066】
30質量%のSiOを含むシリカゾル1333gに、水200gに溶解させたシュウ酸二水和物25.0gを加えた(前駆体スラリーにおいて金属元素の総和に対し0.040モル当量)。849.4gの水に溶解させた472.5gのパラモリブデン酸アンモニウム[(NHMo24・4HO]を撹拌下で加え、さらに、16.6質量%の硝酸391.6gに溶解させた90.7gの硝酸ビスマス[Bi(NO・5HO]、185.4gの硝酸鉄[Fe(NO・9HO]、432.8gの硝酸コバルト[Co(NO・6HO]、54.4gの硝酸セリウム[Ce(NO・6HO]、3.96gの硝酸ルビジウム[RbNO]を加え、原料スラリーを調製した。
上記原料スラリーを40℃で3.5時間撹拌し、前駆体スラリーを調製した。得られた前駆体スラリーの粘度は106cpであった。次いで、前駆体スラリーを回転円盤式の噴霧乾燥器を用いて乾燥させた。このとき、乾燥機入口の空気温度は230℃とし、出口の空気温度は110℃とした。また、円盤の回転数は12500回転/分に設定した。得られた乾燥体を200℃で5分間保持し、200℃から450℃まで2.5℃/分で昇温し、450℃で20分間保持することで脱硝した。得られた脱硝粉を580℃で2時間焼成して、触媒を得た。
【0067】
[実施例21]
組成がMo12.00Bi0.27Fe0.95Co9.64Ce0.18Rb0.13で表される金属酸化物を40質量%のシリカに担持した触媒を、以下の手順で製造した。
【0068】
30質量%のSiOを含むシリカゾル1333gに、水200gに溶解させたシュウ酸二水和物25.0gを加えた(前駆体スラリーにおいて金属元素の総和に対し0.038モル当量)。869.3gの水に溶解させた483.6gのパラモリブデン酸アンモニウム[(NHMo24・4HO]を撹拌下で加え、さらに、16.6質量%の硝酸396.7gに溶解させた29.4gの硝酸ビスマス[Bi(NO・5HO]、88.0gの硝酸鉄[Fe(NO・9HO]、640.5gの硝酸コバルト[Co(NO・6HO]、17.5gの硝酸セリウム[Ce(NO・6HO]、4.31gの硝酸ルビジウム[RbNO]を加え、原料スラリーを調製した。
上記原料スラリーを41℃で3.5時間撹拌し、前駆体スラリーを調製した。得られた前駆体スラリーの粘度は90cpであった。次いで、前駆体スラリーを回転円盤式の噴霧乾燥器を用いて乾燥させた。このとき、乾燥機入口の空気温度は230℃とし、出口の空気温度は110℃とした。また、円盤の回転数は12500回転/分に設定した。得られた乾燥体を200℃で5分間保持し、200℃から450℃まで2.5℃/分で昇温し、450℃で20分間保持することで脱硝した。得られた脱硝粉を590℃で2時間焼成して、触媒を得た。
【0069】
[実施例22]
組成がMo12.00Bi0.27Fe0.95Co8.16Ni1.48Ce0.18Rb0.13で表される金属酸化物を40質量%のシリカに担持した触媒を、以下の手順で製造した。
【0070】
30質量%のSiOを含むシリカゾル1333gに、水200gに溶解させたシュウ酸二水和物25.0gを加えた(前駆体スラリーにおいて金属元素の総和に対し0.038モル当量)。869.4gの水に溶解させた483.7gのパラモリブデン酸アンモニウム[(NHMo24・4HO]を撹拌下で加え、さらに、16.6質量%の硝酸396.7gに溶解させた29.4gの硝酸ビスマス[Bi(NO・5HO]、88.0gの硝酸鉄[Fe(NO・9HO]、542.5gの硝酸コバルト[Co(NO・6HO]、98.0gの硝酸ニッケル[Ni(NO・6HO]、17.6gの硝酸セリウム[Ce(NO・6HO]、4.31gの硝酸ルビジウム[RbNO]を加え、原料スラリーを調製した。
上記原料スラリーを40℃で3.5時間撹拌し、前駆体スラリーを調製した。得られた前駆体スラリーの粘度は64cpであった。次いで、前駆体スラリーを回転円盤式の噴霧乾燥器を用いて乾燥させた。このとき、乾燥機入口の空気温度は230℃とし、出口の空気温度は110℃とした。また、円盤の回転数は12500回転/分に設定した。得られた乾燥体を200℃で5分間保持し、200℃から450℃まで2.5℃/分で昇温し、450℃で20分間保持することで脱硝した。得られた脱硝粉を585℃で2時間焼成して、触媒を得た。
【0071】
[実施例23]
組成がMo12.00Bi0.27Fe0.95Co7.67Ni1.97Ce0.18Rb0.13で表される金属酸化物を40質量%のシリカに担持した触媒を、以下の手順で製造した。
【0072】
30質量%のSiOを含むシリカゾル1333gに、水200gに溶解させたシュウ酸二水和物25.0gを加えた(前駆体スラリーにおいて金属元素の総和に対し0.038モル当量)。869.4gの水に溶解させた483.7gのパラモリブデン酸アンモニウム[(NHMo24・4HO]を撹拌下で加え、さらに、16.6質量%の硝酸396.8gに溶解させた29.4gの硝酸ビスマス[Bi(NO・5HO]、88.0gの硝酸鉄[Fe(NO・9HO]、509.9gの硝酸コバルト[Co(NO・6HO]、130.6gの硝酸ニッケル[Ni(NO・6HO]、17.6gの硝酸セリウム[Ce(NO・6HO]、4.31gの硝酸ルビジウム[RbNO]を加え、原料スラリーを調製した。
上記原料スラリーを39℃で3.5時間撹拌し、前駆体スラリーを調製した。得られた前駆体スラリーの粘度は74cpであった。次いで、前駆体スラリーを回転円盤式の噴霧乾燥器を用いて乾燥させた。このとき、乾燥機入口の空気温度は230℃とし、出口の空気温度は110℃とした。また、円盤の回転数は12500回転/分に設定した。得られた乾燥体を200℃で5分間保持し、200℃から450℃まで2.5℃/分で昇温し、450℃で20分間保持することで脱硝した。得られた脱硝粉を590℃で2時間焼成して、触媒を得た。
【0073】
[実施例24]
組成Mo12.00Bi0.27Fe0.95Co6.69Ni2.95Ce0.18Rb0.13で表される金属酸化物を40質量%のシリカに担持した触媒を、以下の手順で製造した。
【0074】
30質量%のSiOを含むシリカゾル1333gに、水200gに溶解させたシュウ酸二水和物25.0gを加えた(前駆体スラリーにおいて金属元素の総和に対し0.038モル当量)。869.5gの水に溶解させた483.7gのパラモリブデン酸アンモニウム[(NHMo24・4HO]を撹拌下で加え、さらに、16.6質量%の硝酸396.8gに溶解させた29.4gの硝酸ビスマス[Bi(NO・5HO]、88.0gの硝酸鉄[Fe(NO・9HO]、444.5gの硝酸コバルト[Co(NO・6HO]、195.9gの硝酸ニッケル[Ni(NO・6HO]、17.6gの硝酸セリウム[Ce(NO・6HO]、4.31gの硝酸ルビジウム[RbNO]を加え、原料スラリーを調製した。
上記原料スラリーを40℃で3.5時間撹拌し、前駆体スラリーを調製した。得られた前駆体スラリーの粘度は71cpであった。次いで、前駆体スラリーを回転円盤式の噴霧乾燥器を用いて乾燥させた。このとき、乾燥機入口の空気温度は230℃とし、出口の空気温度は110℃とした。また、円盤の回転数は12500回転/分に設定した。得られた乾燥体を200℃で5分間保持し、200℃から450℃まで2.5℃/分で昇温し、450℃で20分間保持することで脱硝した。得られた脱硝粉を595℃で2時間焼成して、触媒を得た。
【0075】
[比較例1]
原料スラリーを20℃で3.5時間撹拌した以外は実施例1と同様にして、触媒を製造した。このときスラリーの粘度は129cpであった。
【0076】
[比較例2]
原料スラリーを40℃で24時間撹拌した以外は実施例1と同様にして、触媒を製造した。このときスラリーの粘度は31cpであった。
【0077】
[比較例3]
原料スラリーを40℃で0.1時間撹拌した以外は実施例1と同様にして、触媒を製造した。このときスラリーの粘度は71cpであった。
【0078】
[比較例4]
シュウ酸二水和物を添加せず、原料スラリーを41℃で3.5時間撹拌した以外は実施例1と同様にして、触媒を製造した。このときスラリーの粘度は70cpであった。
【0079】
[比較例5]
シュウ酸二水和物を添加せず、原料スラリーを20℃で3.5時間撹拌した以外は実施例1と同様にして、触媒を製造した。このときスラリーの粘度は135cpであった。
【0080】
[比較例6]
原料スラリーを40℃で10時間撹拌した以外は実施例1と同様にして、触媒を製造した。このときスラリーの粘度は40cpであった。
【0081】
[比較例7]
原料スラリーを22℃で3.5時間撹拌した以外は実施例7と同様にして、触媒を製造した。このときスラリーの粘度は136cpであった。
【0082】
[比較例8]
原料スラリーを55℃で3.5時間撹拌した以外は実施例7と同様にして、触媒を製造した。このときスラリーの粘度は65cpであった。
【0083】
[比較例9]
原料スラリーを20℃で3.5時間撹拌した以外は実施例9と同様にして、触媒を製造した。このときスラリーの粘度は107cpであった。
【0084】
[比較例10]
原料スラリーを23℃で3.5時間撹拌した以外は実施例10と同様にして、触媒を製造した。このときスラリーの粘度は103cpであった。
【0085】
[比較例11]
原料スラリーを19℃で3.5時間撹拌した以外は実施例11と同様にして、触媒を製造した。このときスラリーの粘度は140cpであった。
【0086】
[比較例12]
原料スラリーを40℃で24時間撹拌した以外は実施例11と同様にして、触媒を製造した。このときスラリーの粘度は33cpであった。
【0087】
[比較例13]
原料スラリーを40℃で0.1時間撹拌した以外は実施例11と同様にして、触媒を製造した。このときスラリーの粘度は85cpであった。
【0088】
[比較例14]
シュウ酸二水和物を添加せず、原料スラリーを41℃で3.5時間撹拌した以外は実施例11と同様にして、触媒を製造した。このときスラリーの粘度は83cpであった。
【0089】
[比較例15]
シュウ酸二水和物を添加せず、原料スラリーを21℃で3.5時間撹拌した以外は実施例11と同様にして、触媒を製造した。このときスラリーの粘度は142cpであった。
【0090】
[比較例16]
原料スラリーを40℃で10時間撹拌した以外は実施例11と同様にして、触媒を製造した。このときスラリーの粘度は42cpであった。
【0091】
[比較例17]
原料スラリーを20℃で3.5時間撹拌した以外は実施例17と同様にして、触媒を製造した。このときスラリーの粘度は111cpであった。
【0092】
[比較例18]
原料スラリーを19℃で3.5時間撹拌した以外は実施例18と同様にして、触媒を製造した。このときスラリーの粘度は96cpであった。
【0093】
[比較例19]
原料スラリーを21℃で3.5時間撹拌した以外は実施例19と同様にして、触媒を製造した。このときスラリーの粘度は86cpであった。
【0094】
[比較例20]
原料スラリーを20℃で3.5時間撹拌した以外は実施例20と同様にして、触媒を製造した。このときスラリーの粘度は125cpであった。
【0095】
[比較例21]
原料スラリーを20℃で3.5時間撹拌した以外は実施例21と同様にして、触媒を製造した。このときスラリーの粘度は106cpであった。
【0096】
[比較例22]
原料スラリーを22℃で3.5時間撹拌した以外は実施例22と同様にして、触媒を製造した。このときスラリーの粘度は84cpであった。
【0097】
[比較例23]
原料スラリーを18℃で3.5時間撹拌した以外は実施例23と同様にして、触媒を製造した。このときスラリーの粘度は91cpであった。
【0098】
[比較例24]
原料スラリーを20℃で3.5時間撹拌した以外は実施例24と同様にして、触媒を製造した。このときスラリーの粘度は82cpであった。
【0099】
[比較例25]
原料スラリーを39℃で24時間撹拌した以外は実施例24と同様にして、触媒を製造した。このときスラリーの粘度は52cpであった。
【0100】
実施例1〜24及び比較例1〜25で得られた触媒の製造条件及び触媒の組成を表1に示した。
【0101】
〔アンモ酸化反応条件及び成績〕
プロピレンのアンモ酸化反応に使用する反応管には、10メッシュの金網を1cm間隔で16枚内蔵した内径25mmのパイレックス(登録商標)ガラス管を使用した。触媒量50cc、反応温度430℃、反応圧力0.17MPaに設定し、プロピレン9容積%の混合ガス(プロピレン、アンモニア、酸素、ヘリウム)を通過させた。各実施例及び比較例におけるアンモニア/プロピレンのモル比及び酸素/プロピレンのモル比は表2に示す値とした。プロピレンに対するアンモニアの容積比は、下記式で定義される硫酸原単位が20±2kg/T−ANとなるように設定した。プロピレンに対する酸素の容積比は、反応器出口ガスの酸素濃度が0.2±0.02容積%になるように設定した。また混合ガスの流速を変更することで、下記式で定義される接触時間を変更した。これによって下記式で定義されるプロピレン転化率が99.3±0.2%となるように設定した。反応によって生成するアクリロニトリル収率は下記式のように定義される値とした。
【0102】
【数3】
【0103】
〔耐磨耗性強度測定〕
“Test Method for Synthetic Fluid Cracking Catalyst”(American Cyanamid Co.Ltd.6/31−4m−1/57)に記載の方法(以下「ACC法」と称する。)に準じて、摩耗損失として触媒の耐摩耗性強度(アトリッション強度)の測定を行った。
アトリッション強度は摩耗損失で評価され、この摩耗損失は以下のように定義される値とした。
摩耗損失(%)=R/(S−Q)×100
上記式において、Qは0〜5時間の間に外部に摩耗飛散した触媒の質量(g)、Rは通常5〜20時間の間に外部に摩耗飛散した触媒の質量(g)、Sは試験に供した触媒の質量(g)とした。
【0104】
実施例及び比較例で得られた触媒の反応条件、反応成績、アトリッション強度を表2に示す。表2において、「AN収率」はアクリロニトリル収率を示し、「ATT強度」はアトリッション強度を示す。なお、反応時間は20時間とした。
【0105】
【表1】
【0106】
【表2】
【0107】
表2のとおり、本実施形態によって製造された触媒を使用したプロピレンのアンモ酸化反応において、良好な収率でアクリロニトリルを得ることができた。さらに本実施形態によって製造された触媒は流動床触媒として良好な摩耗強度を示した。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明のアンモ酸化用触媒の製造方法は、プロピレンのアンモ酸化反応に用いられる触媒の製造方法として、産業上の利用可能性を有する。