特許第6722341号(P6722341)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6722341-粘着式捕虫用具 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6722341
(24)【登録日】2020年6月23日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】粘着式捕虫用具
(51)【国際特許分類】
   A01M 1/14 20060101AFI20200706BHJP
【FI】
   A01M1/14
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-221773(P2019-221773)
(22)【出願日】2019年12月9日
【審査請求日】2019年12月9日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519438464
【氏名又は名称】大石 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100186451
【弁理士】
【氏名又は名称】梅森 嘉匡
(74)【代理人】
【識別番号】100134533
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 夏香
(72)【発明者】
【氏名】大石 真紀
【審査官】 佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3014286(JP,U)
【文献】 実開昭62−144485(JP,U)
【文献】 実開昭53−154869(JP,U)
【文献】 特開平07−241269(JP,A)
【文献】 実開平06−041170(JP,U)
【文献】 韓国公開特許第10−2008−0001693(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/14
A47L 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と、
前記軸体に巻き付けられた粘着シートと、
を有し、
前記粘着シートが、
前記軸体に巻き付けられた状態において、前記軸体の軸心方向に直交する方向に伸びる3つの帯状の領域に区画されており、
前記区画された領域のうち中間に配置される中帯部には、表面側にのみ粘着成分が付けられており、
前記区画された領域のうち前記中帯部を挟み込むように両端側に配置される端帯部のそれぞれには、裏面側にのみ粘着成分が付けられており、
前記中帯部の幅寸法が、前記端帯部のそれぞれの幅寸法の合計よりも小さくなるように設定されており、
前記中帯部の表面と折り曲げた一方の前記端帯部の表面とが互いに接着され、折り曲げた一方の前記端帯部の裏面と他方の前記端帯部の表面とが互いに接着されることにより、前記中帯部および折り曲げた前記端帯部は互いに接着されるものであることを特徴とする粘着式捕虫用具。
【請求項2】
前記軸体の端部が回転かつ上下動自在に挿入されるスリットをそれぞれに形成してある一対の側板部と、当該側板部を相互に連結する持ち手部とを備える、門形のハンドルを有し、
前記粘着シートの表面には殺虫成分が付けられており、
前記端帯部のそれぞれには、同一の周期で、前記軸体の軸心方向と平行な方向に切り込みが形成されることを特徴とする請求項1記載の粘着式捕虫用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着式捕虫用具に関し、特に、カメムシ類のような悪臭を放つ小型の虫を捕獲して廃棄するのに好適な粘着式捕虫用具に関する。
【背景技術】
【0002】
家屋内に侵入したカメムシ類を、ティッシュペーパーで包んだり、ガムテープに粘着したりすることによって捕獲したうえで、そのままゴミ箱へ廃棄することがある。カメムシ用の捕虫器としては、例えば、特許文献1に開示される技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018−166500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カメムシ類は危険を感じると悪臭成分を放散する性質をもつため、単にティッシュペーパーで包んだりガムテープに粘着させたりするだけでは悪臭の拡散を防止し難く、また、掴んだときの感覚が手に伝わるため大変不快である。特許文献1に開示されるような捕虫器では、捕獲時の操作が難しく、取り逃がしてしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、屋内に侵入したカメムシ類のような悪臭を放つ小型の虫を、可及的に悪臭を室内に拡散させることなく速やかに捕獲して廃棄することができるとともに、捕獲時の不快さを低減することが可能な粘着式捕虫用具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る粘着式捕虫用具は、
軸体と、
前記軸体に巻き付けられた粘着シートと、
を有し、
前記粘着シートが、
前記軸体に巻き付けられた状態において、前記軸体の軸心方向に直交する方向に伸びる3つの帯状の領域に区画されており、
前記区画された領域のうち中間に配置される中帯部には、表面側にのみ粘着成分が付けられており、
前記区画された領域のうち前記中帯部を挟み込むように両端側に配置される端帯部のそれぞれには、裏面側にのみ粘着成分が付けられており、
前記中帯部の幅寸法が、前記端帯部のそれぞれの幅寸法の合計よりも小さくなるように設定されており、
前記中帯部の表面と折り曲げた一方の前記端帯部の表面とが互いに接着され、折り曲げた一方の前記端帯部の裏面と他方の前記端帯部の表面とが互いに接着されることにより、前記中帯部および折り曲げた前記端帯部は互いに接着されるものであることを特徴とする。なお、本明細書において、粘着シートの表面とは、床面又は外周側の粘着シートに接する側の面のことであり、粘着シートの裏面とは、内周側の粘着シートに接する側の面のことをいう。
【0007】
本発明に係る粘着式捕虫用具は、好ましくは、前記軸体の端部が回転かつ上下動自在に挿入されるスリットをそれぞれに形成してある一対の側板部と、当該側板部を相互に連結する持ち手部とを備える、門形のハンドルを有し、
前記粘着シートの表面には殺虫成分が付けられており、
前記端帯部のそれぞれには、同一の周期で、前記軸体の軸心方向と平行な方向に切り込みが形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、屋内に侵入したカメムシ類のような悪臭を放つ小型の虫を、可及的に悪臭を室内に拡散させることなく速やかに捕獲して廃棄することができるとともに、捕獲時の不快さを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施の形態である粘着式捕虫用具を示す斜視図である。
図2図1に示す粘着式捕虫用具の使用手順の一例を示す図である。
図3図1に示す粘着式捕虫用具の他の使用手順を示す図である。
図4】第2の実施の形態であるハンドルを有する粘着式捕虫用具を示す図であり、(A)は正面図であり、(B)は側面図である。
図5図4に示す粘着式捕虫用具の作動状態説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、適宜図面を参照しつつ本発明の実施の形態を具体的に説明するが、本発明は図面に示す実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない限りにおいて適宜変更可能である。
【0011】
図1は、本発明の第1の実施の形態である粘着式捕虫用具1を示す斜視図であり、図中、中帯部31と端帯部32、33の境界を一点鎖線で示している。粘着式捕虫用具1は、軸体2と、軸体2に巻き付けられた粘着シート3と、を有する。この粘着シート3は、軸体2の軸心方向に直交する方向に伸びる3つの帯状の領域31、32、33に区画(三分)されており、区画された領域のうち中間に配置される中帯部31には、表面311側にのみ粘着成分が付けられており、区画された領域のうち中帯部31を挟み込むように両端側に配置される端帯部32、33のそれぞれには、裏面322、332側にのみ粘着成分が付けられている。さらに、中帯部31の幅寸法L1が、端帯部32、33のそれぞれの幅寸法L2、L3の合計(L2+L3)よりも小さくなるように設定される。以下、各構成につき順次説明する。
【0012】
軸体2は、粘着シート3が巻き付けられる樹脂製の部材である。図示する場合には、軸体2は、中空の円筒部21により構成されるが、円柱状に形成しても良く、また、後述の図4(B)に示すとおり、円筒部21と軸部22とにより構成されるようにしても良い。
【0013】
粘着シート3は、折り曲げ容易な長帯状の部材である。この点、床面に落ちた髪の毛やホコリ等を清掃する際に使用される粘着ペーパーが巻き付けられたローラー式の清掃用具は、一般に、粘着ペーパーの表面が一様に粘着性であるが、本発明を構成する粘着シート3は、以下の特徴を有する。
【0014】
すなわち、中帯部31は、中帯部31の表面311側にのみ粘着成分が付けられており、中帯部31の裏面312側には粘着成分が付けられていない。一方、端帯部32、33のそれぞれは、端帯部32、33の裏面322、332側にのみ粘着成分が付けられており、端帯部32、33の表面321、331側には粘着成分が付けられていない。さらに、中帯部31の幅寸法L1が、端帯部32、33のそれぞれの幅寸法L2、L3の合計よりも小さくなる(L1<(L2+L3))ように設定されている。これにより、後述のとおり、中帯部31に粘着させた捕獲対象物(カメムシ類等)を折り曲げて密閉することができる。なお、図示する場合にあっては、幅寸法L1、L2、L3のそれぞれが略同一となるように3等分されている。
【0015】
上述の構成を有する粘着シート3の製造方法としては、例えば、(1)長尺の帯状シートの中帯部の表面側に接着剤を塗布し、端帯部の裏面側に接着剤を塗布することにより形成する方法や、(2)両面が粘着性である長尺の帯状シートに対して、その端帯部の表面側に接着剤が付けられていない長尺の帯状シートを貼付し、その中帯部の裏面側に接着剤が付けられていない帯状のシートを貼付することにより形成する方法等が考えられる。
【0016】
捕獲対象物が接することになる粘着シート3の表面には、好ましくは、殺虫成分が、塗布又は噴霧等の適宜の方法により付加される。粘着シート3は、更に好ましくは、防臭性、消臭性、又は吸臭性の高い素材で製造される。
【0017】
次に、粘着式捕虫用具1の使用例を説明する。図2は、図1に示す粘着式捕虫用具1の使用手順を示す図であり、特に、同図(A)は切り離された粘着シート片3aにカメムシ類Mが粘着した状態を裏面側から示しており、同図(B)は粘着させたカメムシ類Mを包んで収容するための粘着シート片3aの折り曲げ手順の第1ステップを表面側から示しており、同図(C)は同手順の第2ステップを裏面側から示している。
【0018】
先ず、室内に侵入したカメムシ類に対して、粘着成分が付けられた中帯部31の表面を押し当てて、図2(A)に示すように、粘着させて捕獲する。なお、ロール状の粘着シート3をカメムシ類Mに押し当てて粘着させた後に任意の長さでロール状の本体部から切り離しても良いし、ロール状の本体部から任意の長さで切り離した後の粘着シート片3aをカメムシ類Mに押し当てて粘着させても良い。
【0019】
次いで、図2(B)の矢印に示すとおり、中帯部31と端帯部32、33との境界線を折り曲げ線として、中帯部31に対して、順次、端帯部32、33を折り曲げて、カメムシ類Mを挟み込む。中帯部31の表面側および端帯部32、33の裏面322、332側には接着成分が付けられているため、中帯部31および折り曲げた端帯部32、33は互いに接着され、折り曲げた後の一面が接着面となる。そこで、図2(C)の矢印に示すとおり、カメムシ類Mを包み込むように、当該接着面に向けて折り曲げることにより、粘着シート片3aの内部にカメムシ類Mを密閉することができるが、かかる使用方法によれば、最終的に接着成分が付けられていない面が両面側に現れるので、摘まんでもベタづかずにゴミ箱に廃棄することができる。カメムシ類Mに触ることなく包み込んで廃棄することができ、捕獲時の不快さを低減することが可能である。
【0020】
捕獲されたカメムシ類Mは、粘着シート片3aに包み込んで密閉することができるため、可及的に悪臭を室内に拡散させることなく廃棄することができる。粘着シート3の表面に殺虫成分を付けておけば、粘着させたカメムシ類Mを早期に弱体化させて悪臭の放出を抑制することができる。粘着シート3はロール状であり、多数のカメムシ類Mを発見した場合でも、連続的に捕獲することができる。
【0021】
図2は粘着シート3の略中央にカメムシ類Mが粘着した場合の折り曲げ手順を示しているが、図3に示すとおり粘着シート3の端部にカメムシ類Mが粘着した場合でも、同図に示す手順によりカメムシ類Mを包み込んで廃棄することができる。
【0022】
図2及び図3に示すとおり、粘着シート3片に粘着したカメムシ類Mを包み込む際には、事前に、ロール状の粘着シート3から適当な長さで切り離しておくことになる。この点、端帯部32、33のそれぞれには、同一の周期で、軸体2の軸心方向と平行な方向に切り込み323、333が形成されており粘着シート片3aに切り離しやすいため、捕獲したカメムシ類Mを速やかに包んで廃棄することができる。特に、図1等に示すように、端帯部32、33を横断して中帯部31との境界に達する長さの切り込み323、333を形成すれば、折り曲げ箇所(折り曲げ線の位置)が分かりやすく、また、中帯部31との境界に沿って折り曲げやすくなる。なお、切り込みを形成しなくても本発明の目的を達成できるが、切り込みを形成する場合には、破線状や波型状に形成しても良く、端帯部32、33の一部にのみ形成しても良く、更には、中帯部31を含め横断的に形成するようにしても良い。
【0023】
粘着式捕虫用具は、好ましくは、ハンドル5を有する。図4は、第2の実施の形態であるハンドル5を有する粘着式捕虫用具4を示す図であり、(A)は正面図であり、(B)は側面図である。図5は、図4に示す粘着式捕虫用具4の作動状態説明図である。粘着式捕虫用具4は、軸体2の端部が回転かつ上下動自在に挿入されるスリット511、521がそれぞれに形成される一対の側板部51、52と、側板部51、52を相互に連結する持ち手部53とを備える、門形のハンドル5を有する。以下、本実施の形態を詳細に説明するが、粘着式捕虫用具4が有する粘着シートは、図1に示す粘着シート3と同一の構成を有するため、同一の番号を付して説明を省略する。
【0024】
粘着シート3が巻き付けられる軸体2は、円筒部21と、円筒部21に嵌入され円筒部21の両端から突出する軸部22とにより構成される。なお、軸部22に対して円筒部21を挿脱可能に嵌入しておくことにより、使い終えた粘着シートを円筒部ごと軸部22から取り外し、新しい粘着シートが巻き付けられた円筒部に軸部22を嵌入し直すことで、新しいものに容易に交換することができる。
【0025】
側板部51には、スリット511が形成される。これと対になる側板部52には、スリット521が形成される。側板部51および側板部52は同一形状であり、スリット511、521が軸体2の軸心方向に直交する同一の方向に延びるように形成されている。側板部51と側板部52との間には、粘着シート3が配置される。スリット511には軸部22の一端が回転自在かつスリット511に沿って移動自在に挿入されており、スリット521には軸部22の他端が回転自在かつスリット521に沿って移動自在に挿入されている。
【0026】
かかる粘着式捕虫用具4によれば、ハンドル5を把持して粘着シート3を床面やカメムシ類Mに押し当てたとき、図5に示すように、軸体2がスリット511、521に沿って上側(持ち手部53側)に移動する。ハンドル5を把持して持ち上げると、自重により軸体2はスリット511、521の下端まで移動する。このように軸体2がスリット511、521に沿って自在に上下動するので、ハンドル5を把持し、粘着シート3を転動させてカメムシ類Mに接触させたとき、粘着シート3が上側に移動することによりカメムシ類Mを押し潰さないようにして粘着シート3に粘着させて捕獲することができる。次いで、粘着シート片に切り離して、図2又は図3に示す手順によりカメムシ類Mを包み込んで廃棄することができる。
【0027】
本発明は、上記実施の形態ないし実施例に限定されず、その発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形実施が可能である。例えば、ハンドルを有する粘着式捕虫用具の軸体を円柱状の部材のみにより構成し、当該軸体の各端部をスリットに挿入するようにしても良い。上記実施例においてはカメムシ類を捕獲対象物として説明したが、これに限られず、小型の虫を捕獲して廃棄するための用具として広く利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、カメムシ類等の小型の虫を捕獲して廃棄するための用具として利用できる。
【符号の説明】
【0029】
1 粘着式捕虫用具
2 軸体
21 円筒部
22 軸部
3 粘着シート
3a 粘着シート片
31 中帯部
32 端帯部
323 切り込み
33 端帯部
333 切り込み
4 粘着式捕虫用具(ハンドル付き)
5 ハンドル
51 側板部
511 スリット
52 側板部
521 スリット
53 持ち手部
M カメムシ類
【要約】
【課題】カメムシ類等の小型の虫を、可及的に悪臭を拡散させずに捕獲して廃棄することができ、捕獲時の不快さを低減する粘着式捕虫用具を提供する。
【解決手段】粘着式捕虫用具1は、軸体2と粘着シート3とを有する。中帯部31には表面311側にのみ粘着成分が付けられており、端帯部32、33には裏面322、332側にのみ粘着成分が付けられている。中帯部31の幅寸法L1が、端帯部32、33のそれぞれの幅寸法L2、L3の合計よりも小さくなるように設定される。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5