【課題を解決するための手段】
【0016】
第一の目的は、特許請求項1、21、22、28、及び31に記載されている眼鏡用累進レンズにより達成され、第二の目的は、請求項18に記載されている眼鏡用累進レンズの設計方法により達成され、第三の目的は、請求項19、23、24、25、29、及び32に記載されている眼鏡用累進レンズの設計方法を実行するコンピュータにより達成される。従属項には本発明の別の発展形が含まれている。
【0017】
本発明について論じる前に、明細書中で使用される幾つかの表現の説明を以下に示す。
【0018】
「トロイダル面」とは、相互に垂直な異なる曲率の主子午線を有し、両方の主子午線の断面が名目上円形である表面である。
【0019】
「眼鏡用レンズ」という用語は、眼科分野で利用される個別の屈折力を有するあらゆる形態の光学体を含むべきであり、これには眼鏡フレームに嵌め込まれた眼鏡用レンズ、特定の眼鏡フレームに適応された眼鏡用レンズ、又はグレージング前の眼鏡レンズが含まれるが、これらに限定されない。
【0020】
「フィッティングポイント」という用語は、レンズ又はセミフィニッシュトレンズブランクの前面上の、レンズを眼の正面で位置決めするための基準点として製造者が定める点を示す。
【0021】
「視線」という用語は、中心窩を眼の射出瞳の中心をつなぐ線と、入射瞳の中心から前方の物体空間へのその連続とを指す。
【0022】
「第一眼位」という用語は、正面を向いて前方にある眼の高さの物体を見ている時の頭部に関する眼の位置を意味する。
【0023】
「装用時前傾角」という用語は、垂直面内の、眼鏡用レンズの前面に対するそのボクシング中心、すなわち水平及び垂直中心線の交点における法線と、第一眼位にある眼の、一般的に水平とみなされる視線との間の角度を指す(DIN EN ISO 13666:2013−10の第6.18項参照)。
【0024】
「そり角又はフロント角」という用語は、眼鏡フロントの平面と右側レンズ形状の、又は左側レンズ形状の平面との間の角度を指す(DIN EN ISO 13666:2013−10の第17.3項参照)。右側又は左側フロント角は、右側又は左側レンズ平面のこめかみ側が、眼鏡フロントの平面より頭に近い場合、プラスとみなされる。右側及び左側フロント角は異なっているかもしれないが、実際には、フロント角は右側及び左側フロント角の平均として測定され、明示されることが多い。
【0025】
「装用位置」という用語は、装用中の眼鏡の眼及び顔面に関する位置と向きを指し、少なくとも眼の回旋点とレンズの後面頂点との間の距離、そり角、及び装用時前傾角の値を含む。本発明において、装用位置は、眼の回旋点とレンズの後面頂点との間の距離の特定の値、そり角の特定の値、及び装用時前傾角の特定の値の組合せにより与えられ、眼の回旋点とレンズの後面頂点との間の距離の特定の値は20mm〜30mmの範囲からとられた値であってもよく、そり角の特定の値は−5度〜+15度の範囲からとられた値であってもよく、装用時前傾角の特定の値は−20度〜+30度の範囲からとられた値であってもよい。
【0026】
本発明の第一の態様によれば、本発明の眼鏡用累進レンズは、ある装用者のための特定の装用位置に個別に適応されてもよく、上側使用領域と、下側使用領域と、上側使用領域と下側使用領域との間の累進帯と、左側及び右側周辺領域と、を含む。左側周辺領域及び右側周辺領域は、下側使用領域と累進帯によって分離される。特定の装用位置は、個々の装用位置、すなわち、ある個人の装用者について得られる装用位置か、特定の装用者集合の平均装用位置であるデフォルトの装用位置の何れであってもよい。デフォルトの装用位置は市場の違いで異なっていてもよく、例えば、装用時前傾角とそり角のデフォルト値は、アジア人とコーカサス人の顔の物理的特徴の違いにより、アジアにおいてはヨーロッパのそれらと異なっているかもしれない。
【0027】
上側使用領域は、特定の装用位置において、遠見に適応された、以下において遠用屈折力と呼ばれる第一の屈折力、特に第一の平均屈折力を提供する遠用基準点を含み、下側使用領域は、特定の装用位置において、近見に適応された第二の屈折力、特に第二の平均屈折力を提供する近用基準点を含む。第二の屈折力、特に第二の平均屈折力は、以下において近用屈折力と呼ばれ、第一の屈折力、特に第一の平均屈折力(すなわち、遠用屈折力)に関する加入屈折力を表し、すなわち、第二の屈折力、特に第二の平均屈折力と第一の屈折力、特に第一の平均屈折力との差は加入屈折力である。上側使用領域と下側使用領域との間の累進帯において、屈折力は特定の装用位置において、遠用屈折力から近用屈折力へと徐々に変化し、すなわち、加入屈折力は0から近用屈折力を提供する加入屈折力へと変化する。
【0028】
本発明によれば、低平均屈折力領域は上側使用領域、左側周辺領域、及び右側周辺領域内にある。左側周辺領域内の低平均屈折力領域と右側周辺領域内の低平均屈折力領域との間の距離、好ましくは水平距離は、好ましくは25mmを超えず、本発明の幾つかの実施形態において、好ましくは20mmを超えない。左側周辺領域内の低平均屈折力領域と右側周辺領域内の低平均屈折力領域との間の距離は、左側周辺領域の0.125等高線と右側周辺領域内の0.125等高線との間の最小距離、すなわち、左側周辺領域内の0.125D等高線と右側周辺領域内の0.125D等高線との間に引くことのできる最短の直線の長さである。左側周辺領域内の低平均屈折力領域と右側周辺領域内の低平均屈折力領域との間の水平距離は、左側周辺領域内の0.125等高線と右側周辺領域内の0.125等高線との間の最小水平距離、すなわち左側周辺領域内の0.125D等高線と右側周辺領域内の0.125D等高線との間に引くことのできる最短の水平直線の長さである。水平方向は、眼鏡用累進レンズの表面上又はバルク内にある刻印に基づいて特定できる。前記低屈折力領域において、平均屈折力は第一の屈折力、特に第一の平均屈折力プラス0.125Dを超えない。それに加えて、低平均屈折力領域は、眼科眼鏡用レンズの少なくとも40%、好ましくは少なくとも45%を占める。眼科眼鏡用レンズが、グレージング前に直径少なくとも40mmの丸い眼科眼鏡用レンズである場合、低平均屈折力領域は、眼鏡用レンズの面積の少なくとも40%を占め、これはその眼鏡用レンズの幾何学中心の周囲の直径40mm内にある。本明細書に関して、「眼鏡用レンズの面積」という表現は、眼鏡用レンズの前面及び後面の一方の面積を指す。
【0029】
好ましくは、左側周辺領域及び右側周辺領域内の低平均屈折力領域は、眼鏡用レンズの面積の少なくとも10%、有利な態様では少なくとも15%、更により有利な態様では少なくとも25%を占める。
【0030】
好ましくは、装用者が左側周辺領域内及び右側周辺領域内で経験する平均屈折力は常に第二の屈折力、特に第二の平均屈折力より低い。
【0031】
本発明の眼鏡用レンズの第二の屈折力、特に第二の平均屈折力により第一の屈折力、特に第一の平均屈折力に関して提供される加入屈折力は、1.0D〜3.0Dの範囲、特に1.5D〜2.5Dの範囲内にあってもよい。
【0032】
本発明のある実施形態による眼科眼鏡用累進レンズは、前面(すなわち、眼から最も遠い面)と後面(すなわち、眼に最も近い面)を含む。前面及び/又は後面は、上側使用領域、下側使用領域、及び累進帯のための適当な屈折力及び乱視度数の等高線を提供するように成形されてよい。
【0033】
レンズの前面及び後面は、何れの適当な形状を有していてもよい。ある実施形態において、前面は自由曲面であり、後面は球面又はトーリック面である。他の実施形態において、前面は球面又はトーリック面であり、後面は自由曲面である。
【0034】
また別の実施形態において、前面及び後面の両方が自由曲面である。自由曲面は、例えば非トーリック面、累進面、又はその組合せを含んでいてもよいことがわかるであろう。
【0035】
本発明は、発明の背景の項で述べた問題を、加入領域内の安定屈折力の大きさを変化させ、この領域の周辺横方向屈折力勾配を操作することによって克服する。眼鏡用累進レンズへのこれらの変更は、下側使用領域内のプラスの屈折の存在が、プラスの屈折力によりカバーされる空間面積がより小さくなるために装用者にとってわかりにくくなることから、調節動作の増進を刺激し、時間を追ったその弛緩を阻止するとの仮説が立てられる。さらに、近見領域の両側での屈折力のマイナスの勾配は、調節に対するこれらの周辺領域のキューが十分に強力であれば、調節動作の増進に役立つはずである(Charman WN & Radhakrishnan H, Peripheral refraction and the development of refractive error: a review, Ophthalmic Physiol Opt 2010, 30, 321−338)。
【0036】
上述の仮説に基づき、本発明の眼科眼鏡用累進レンズは、新規で有効な近視管理を提供するために開発された。この累進レンズの理想的な効果は、レンズが、近見作業中に子供の調節反応を、眼が単焦点レンズ(遠見用の処方)を用いたときに示す通常の反応に関して変化させずに、中心窩の正面又はその上で結像するか、少なくとも中心窩上での調節ラグを最小化する、というものである。これに対して、標準的な累進屈折力レンズ(PAL:progressive addition lens)では、装用者には通常、レンズの下側部分においてプラスの屈折力を持つ大きい面積が見え、それによって調節反応が調整(低下)されるかもしれない。
【0037】
本発明の眼鏡用累進レンズを用いると、同等の近視管理累進屈折力レンズ(PAL)の近見領域を通常より狭くすることができ、横方向に、レンズの遠用屈折力と同程度の比較的低い平均屈折力で取り囲むことができる。したがって、近見領域をできるだけ狭くしながら、近見領域の両側の周辺領域の屈折力低下部を可能な限り広くすることができる。これは、左右で近見領域へと比較的急峻な勾配があることを意味する。これに対して、現在市販されている従来のPALは、レンズの下側部分において加入平均屈折力がスムーズに分布する(スムーズな勾配)比較的広い近見領域が確保されるように努められており、近見領域の両側の周辺領域の屈折力低下部の大きさと深さが最小化されている。
【0038】
本発明の眼鏡用累進レンズにおいて、左側及び右側周辺領域内の低平均屈折力領域は、有利な点として、近用基準点を通って延びる水平線より下の位置まで延び、下側使用領域の左側及び右側を十分に取り囲む。前述のように、水平方向は、眼鏡用累進レンズの表面上にある刻印に基づいて特定できる。特に、左側及び右側周辺領域の中の、眼鏡レンズの近用基準点を通って延びる水平線の上下5mmに位置付けられている水平線まで延びる低平均屈折力領域が有利である。この区画により、下側使用領域のほとんどが、前記低屈折力領域により横方向に取り囲まれる。
【0039】
本発明において、上側使用領域内の低平均屈折領域は、遠用基準点を通って延びる水平線より上にある眼鏡用レンズの面積(眼鏡用レンズの幾何学中心の周囲の前記直径40mmの円の中)の全部をカバーしてもよい。
【0040】
本発明の幾つかの実施形態において、例えば第二の屈折力、特に第二の平均屈折力が第一の屈折力、特に第一の平均屈折力への1.5D(ディオプトリ)まで、又はそれ以下の加入屈折力を表す実施形態において、上側使用領域内の低平均屈折力領域、左側周辺領域内の低平均屈折力領域、及び右側周辺領域内の低平均屈折力領域は、連続する低屈折力領域を形成してよい。この区画により、特に大きい低屈折力領域が提供される。特に、このような大きい低平均屈折力領域は、眼鏡用レンズの、眼鏡用レンズの幾何学中心の周囲の直径40mmの円の中の前記面積の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%を占めてもよい。
【0041】
眼鏡用レンズのある実施形態において、第二の屈折力、特に第二の平均屈折力は1.5Dから2.0Dまでの範囲内の加入屈折力を表す。この実施形態において、左側及び右側周辺領域内の低平均屈折力領域は、上側使用領域内の低平均屈折力領域から分離される。平均加入屈折力が遠用屈折力プラス0.125D以下であるが、遠用屈折力プラス0.5D未満である区域が、上側使用領域内の低平均屈折力領域を左側及び右側周辺領域内の低平均屈折力領域の各々と接続する。この実施形態において、低平均屈折力領域は、眼鏡用レンズの、眼鏡用レンズの幾何学中心の周囲の直径40mmの円の中の前記面積の少なくとも45%を占めてもよい。
【0042】
眼鏡用累進レンズの他の実施形態において、第二の屈折力、特に第二の平均屈折力は2.0Dから2.5Dまでの範囲内の加入屈折力を表し、左側及び右側周辺領域内の低平均屈折力領域は、上側使用領域内の低平均屈折力領域から分離される。平均加入屈折力が遠用屈折力プラス0.125D以下であるが、遠用屈折力プラス0.5D未満である区域が、上側使用領域内の低平均屈折力領域を左側及び右側周辺領域内の低平均屈折力領域の少なくとも一方と接続する。この実施形態において、低平均屈折力領域は、眼鏡用レンズの前記面積の、特に、その眼鏡用レンズが直径少なくとも40mmの丸い眼鏡用レンズである場合に眼鏡用レンズの幾何学中心の周囲の直径40mmの円の中の少なくとも45%を占めてもよい。
【0043】
好ましくは、眼鏡用累進レンズの、特に、その眼鏡用レンズが直径少なくとも40mmの丸い眼鏡用レンズである場合に眼鏡用レンズの幾何学中心の周囲の直径40mmの円の中の表面乱視屈折力は、周辺領域の収差をできるだけ低く保つために、5.5Dを超えない。加入屈折力が1.5Dを超えて2.0Dまでの範囲内である場合、特に表面乱視屈折力、特に、その眼鏡用レンズが直径少なくとも40mmの丸い眼鏡用レンズである場合に眼鏡用レンズの幾何学中心の周囲の直径40mmの円の中の表面乱視屈折力は、好ましくは4.5Dを超えず、加入屈折力が1.5D以下である場合、直径40mm内の表面乱視屈折力は、好ましくは3.5Dを超えない。
【0044】
特定の装用位置を持つ特定の装用者に適応される本発明による眼鏡用累進レンズの製造方法は、
−装用者の特定の装用位置を取得又は提供するステップと、
−装用者の遠見用の屈折力を取得又は提供するステップと、
−装用者の近見用の屈折力を取得又は提供するステップと、
−レンズブランクを提供するステップと、
−装用者の特定の装用位置、遠見用の屈折力、及び近見用の屈折力に基づいて、レンズブランクの前面及び/又は後面に、特定の装用位置において第一の屈折力、特に第一の平均屈折力を提供する遠用基準点を持つ上側使用領域と、特定の装用位置において第二の屈折力、特に第二の平均屈折力を提供する近用基準点を有する下側使用領域と、上側使用領域と下側使用領域との間の累進帯と、累進帯と下側使用領域により分離される左側周辺領域及び右側周辺領域と、を画定する少なくとも1つの自由曲面を形成するステップであって、自由曲面は、低平均屈折力領域が上側使用領域及び、左側周辺領域と右側周辺領域のうちの少なくとも一方の中にあるように形成され、前記低平均屈折力領域内では、特定の装用位置において、装用者が経験する平均屈折力が第一の屈折力、特に第一の平均屈折力プラス0.125Dを超えず、前記少なくとも1つの自由曲面は、低平均屈折力領域が眼鏡用累進レンズの面積の少なくとも40%を占めるように形成される。好ましくは左側周辺領域及び右側周辺領域内で装用者が経験する平均屈折力は、常に第二の屈折力、特に第二の平均屈折力より低い。本発明の方法により製造される眼鏡用レンズは、直径少なくとも40mmのグレージング前の丸い眼鏡用レンズであってもよい。この場合、低平均屈折力領域は、直径40mm内にある面積の少なくとも40%を占める。特に、上側使用領域内の低平均屈折力領域は、眼鏡用レンズの、眼鏡用レンズの幾何学中心の周囲の前記直径40mm内の、遠用基準点を通って延びる水平線より上の面積の全体をカバーしてもよい。レンズブランクの前面及び/又は後面上に少なくとも1つの自由曲面を形成するステップは、レンズブランクの自由曲面の形状が最適化される最適化工程を含んでいてもよい。最適化工程は、最適化された自由曲面により実現されるべき表面特性及び/又は光学特性を定める標的レンズ設計に基づく。最適化工程において、自由曲面は、自由曲面で実現される表面特性及び/又は光学特性と、標的レンズ設計により定められる表面特性及び/又は光学特性との間の相違を最小化することによって最適化される。標的レンズ設計は、最適化工程により得られた自由曲面が、低平均屈折力領域が眼鏡用累進レンズの面積の少なくとも40%を占めることになるような形状を有するように選択される。
【0045】
特定の装用位置を持つ特定の装用者に適応される眼鏡用累進レンズを設計するコンピュータ実装方法は、
−装用者の特定の装用位置を取得又は提供するステップと、
−装用者の遠見用の屈折力を取得又は提供するステップと、
−装用者の近見用の屈折力を取得又は提供するステップと、
−装用者の特定の装用位置、遠見用の屈折力、及び近見用の屈折力に基づいて、眼鏡用累進レンズにより実現されるべき光学特性を定める標的レンズ設計を提供するステップと、
−自由曲面で実現される光学特性と標的レンズ設計により定められる光学特性との相違を最小化するように、レンズブランク上に形成されるべき自由曲面を最適化するステップと、
を含む。
【0046】
標的レンズ設計は、最適化によって、レンズブランクの前面及び/又は後面のための少なくとも1つの最適化された自由曲面を提供するように選択され、少なくとも1つの最適化された自由曲面は、特定の装用位置において、第一の屈折力、特に第一の平均屈折力を提供する遠用基準点を有する上側使用領域と、特定の装用位置において、第二の屈折力、特に第二の平均屈折力を提供する近用基準点を有する下側使用領域と、上側使用領域と下側使用領域との間の累進帯と、累進帯及び下側使用領域によって分離される左側周辺領域及び右側周辺領域と、を画定する。それに加えて、最適化された自由曲面は、低平均屈折力領域が上側使用領域及び、左側周辺領域と右側周辺領域の少なくとも一方の中にあるように形成され、前記低平均屈折力領域では、特定の装用位置において、装用者が経験する平均屈折力は第一の屈折力、特に第一の平均屈折力プラス0.125Dを超えない。さらに、標的レンズ設計は、前記少なくとも1つの自由曲面の最適化の後に、低平均屈折力領域が眼鏡用累進レンズの面積の少なくとも40%を占めるように選択される。
【0047】
特に、標的レンズ設計は、最適化により提供される少なくとも1つの自由曲面において、左側周辺領域内の低平均屈折力領域と右側周辺領域内の低平均屈折力領域との間の距離が25mmを超えず、幾つかの実施形態において、20mmを超えないように選択されてもよい。
【0048】
さらに、標的レンズ設計は、最適化により提供される少なくとも1つの自由曲面において、上側使用領域内の低平均屈折力領域、左側周辺領域内の低平均屈折力、及び右側周辺領域内の低平均屈折力領域が連続する低屈折力領域を形成するように選択されてもよい。
【0049】
特に、標的レンズ設計は、最適化により提供される少なくとも1つの自由曲面において、第二の屈折力、特に第二の平均屈折力により提供される第一の屈折力、特に第一の平均屈折力に関する加入屈折力は、1.0D〜3.0Dの範囲内にあるように選択されてもよい。
【0050】
標的レンズ設計は、最適化により提供される少なくとも1つの自由曲面において、左側及び右側周辺領域内の低平均屈折力領域が近用基準点を通って延びる水平線より下のある位置まで延びるように選択されてもよい。特に、標的レンズ設計は、最適化により提供される少なくとも1つの自由曲面において、左側及び右側周辺領域内の低平均屈折力領域が少なくとも、近用基準点を通って延びる水平線の上下5mmにある水平線まで延びるように選択されてもよい。
【0051】
眼鏡用累進レンズを設計するための上述の方法の第一の変形型において、標的レンズ設計は、最適化により提供される少なくとも1つの自由曲面において、上側使用領域内の低平均屈折力領域、左側周辺領域内の低平均屈折力領域、及び右側周辺領域内の低平均屈折力領域が連続する低屈折力領域を形成するように選択される。この場合、第二の屈折力、特に第二の平均屈折力は、第一の屈折力、特に第一の平均屈折力に対する1.5D以下の加入屈折力を表してもよい。さらに、標的レンズ設計は、最適化により提供される少なくとも1つの自由曲面において、連続する低平均屈折力領域が、眼鏡用レンズの幾何学中心の周囲の直径40mm以内にある、眼鏡レンズの前記面積の少なくとも50%を占めるように選択されている。
【0052】
眼鏡用累進レンズを設計するための本発明の方法の第二の変形型において、標的レンズ設計は、最適化により提供される少なくとも1つの自由曲面において、第二の屈折力、特に第二の平均屈折力が、第一の屈折力、特に第一の平均屈折力に対する1.5Dを超えて2.0Dまでの加入屈折力を表し、左側及び右側周辺領域内の低平均屈折力領域は、上側使用領域内の低平均屈折力領域から分離され、平均屈折力が第一の屈折力、特に第一の平均屈折力プラス0.125Dより大きく、第一の屈折力、特に第一の平均屈折力プラス0.5Dを超えない区域は、上側使用領域内の低平均屈折力領域を左側及び右側周辺領域内の低平均屈折力領域の各々と接続するように選択される。
【0053】
眼鏡用累進レンズを設計するための本発明の方法の第二の変形型において、標的レンズ設計は、最適化により提供される少なくとも1つの自由曲面において、第二の屈折力、特に第二の平均屈折力が、第一の屈折力、特に第一の平均屈折力に対する2.0Dを超えて2.5Dまでの加入屈折力を表し、左側及び右側周辺領域内の低平均屈折力領域は、上側使用領域内の低平均屈折力領域から分離され、平均屈折力が第一の屈折力、特に第一の平均屈折力プラス0.125Dより大きく、第一の屈折力、特に第一の平均屈折力プラス0.5Dを超えない区域は、上側使用領域内の低平均屈折力領域を左側及び右側周辺領域内の低平均屈折力領域の少なくとも一方と接続するように選択される。
【0054】
標的レンズ設計は、最適化により提供される少なくとも1つの自由曲面において、レンズの直径40mm以内の表面乱視屈折力が5.5Dを超えないように選択されてもよい。
【0055】
コンピュータ実装方法は、レンズブランクを提供するステップと、レンズブランクから、最適化された自由曲面を持つ眼鏡用累進レンズを形成するステップとをさらに含んでいてもよい。
【0056】
本発明の方法により、本発明の眼鏡用累進レンズの、本発明の眼鏡用累進レンズについて上述した利点を伴う設計及び製造が可能となる。したがって、本発明の方法の利点については、本発明の眼鏡用累進レンズについて述べた利点に参照されたい。
【0057】
それに加えて、本発明は、特定の装用位置を持つ装用者に適応された眼鏡用累進レンズを設計するための別のコンピュータ実装方法を提供し、前記眼鏡レンズは前面及び後面を有する。この方法は、
−装用者の特定の装用位置を取得又は提供するステップと、
−装用者の遠見のための第一の屈折力、特に第一の平均屈折力を取得又は提供するステップと、
−装用者の近見のための第二の屈折力、特に第二の平均屈折力を取得又は提供するステップと、
−標的レンズ設計であって、
−遠見のための第一の屈折力、特に第一の平均屈折力と、近見のための第二の屈折力、特に第二の平均屈折力とを含む、眼鏡用累進レンズの屈折力分布と、
−遠見に適応された、第一の屈折力、特に第一の平均屈折力を提供する遠用基準点を持つ上側使用領域と、
−近見に適応された、第二の屈折力、特に第二の平均屈折力を提供し、第二の屈折力、特に第二の平均屈折力が第一の屈折力、特に第一の平均屈折力に関する加入屈折力を提供する、近用基準点を持つ下側使用領域と、
−上側使用領域と下側使用領域との間の、屈折力が第一の屈折力、特に第一の平均屈折力から第二の屈折力、特に第二の平均屈折力へと徐々に変化する累進帯と、
−累進帯及び下側使用領域により分離される左側周辺領域及び右側周辺領域と、
を画定し、
−低平均屈折力領域が上側使用領域、左側周辺領域、及び右側周辺領域内にあり、前記低平均屈折力領域では、装用者が特定の装用位置において装用者が経験する平均屈折力が第一の屈折力、特に第一の平均屈折力プラス0.125Dを超えず、
−低平均屈折力領域は眼鏡用レンズの面積の少なくとも40%を占めるような、
標的レンズ設計を提供するステップと、
−標的レンズ設計に基づいて、特定の装用位置において前面又は後面の少なくとも一方の形状を最適化するステップと、
を含む。
【0058】
本発明の他の態様によれば、眼鏡用累進レンズが提供され、これは、
−特定の装用位置において、遠見に適応された第一の屈折力、特に第一の平均屈折力を提供する遠用基準点を持つ上側使用領域と、
−特定の装用位置において、近見に適応された第二の屈折力、特に第二の平均屈折力を提供し、第二の屈折力、特に第二の平均屈折力は第一の屈折力、特に第一の平均屈折力に関する加入屈折力を表す近用基準点を持つ下側使用領域と、
−上側使用領域と下側使用領域との間の、特定の装用位置において屈折力が第一の屈折力、特に第一の平均屈折力から第二の屈折力、特に第二の平均屈折力へと徐々に変化する累進帯と、
−累進帯及び下側使用領域により分離される左側周辺領域及び右側周辺領域と、
−上側使用領域、左側周辺領域、及び右側周辺領域の中の低平均屈折力領域であって、前記低平均屈折力領域では特定の装用位置において装用者が経験する平均屈折力が第一の屈折力、特に第一の平均屈折力プラス0.125Dを超えない低平均屈折力領域と、
を含む。
【0059】
本発明のこの態様によれば、低平均屈折力領域は眼鏡用レンズの面積の少なくとも40%を占め、左側周辺領域内の低平均屈折力領域と右側周辺領域内の低平均屈折力領域との間の距離、特に水平距離は、25mmを超えない。本発明のこの態様による眼鏡用累進レンズは、直径が少なくとも40mmの丸い眼鏡用累進レンズであってもよい。この場合、低平均屈折力領域は、眼鏡用累進レンズの、眼鏡用累進レンズの幾何学中心の周囲の直径40mm以内にある面積の少なくとも40%を占める。
【0060】
それに加えて、本発明のこの態様によれば、特定の装用位置によって特定の装用者に適応される眼鏡用累進レンズを設計するためのコンピュータ実装方法が提供される。この方法は、
−装用者の特定の装用位置を取得又は提供するステップと、
−装用者の遠見のための屈折力を取得又は提供するステップと、
−装用者の近見のための屈折力を取得又は提供するステップと、
−装用者の特定の装用位置、遠見のための屈折力、及び近見のための屈折力に基づいて、眼鏡用累進レンズにより実現されるべき表面特性又は光学特性を定める標的レンズ設計を提供するステップと、
−レンズブランク上に形成されるべき自由曲線を、自由曲面の表面特性又は自由曲面で実現される光学特性と、それぞれ標的レンズ設計により定められる表面特性又は光学特性との相違を最小化するように最適化するステップと、
を含む。
【0061】
標的レンズ設計は、最適化により、レンズブランクの前面及び/又は後面のための少なくとも1つの最適化された自由曲線が提供されるように選択され、少なくとも1つの最適化された自由曲面は、特定の装用位置において第一の屈折力、特に第一の平均屈折力を提供する遠用基準点を持つ上側使用領域と、特定の装用位置において、第二の屈折力、特に第二の平均屈折力を提供する近用基準点を持つ下側使用領域と、上側使用領域と下側使用領域との間の累進帯と、累進帯及び下側使用領域により分離される左側周辺領域及び右側周辺領域と、を画定する。それに加えて、標的レンズ設計は、最適化された自由曲面が、低平均屈折力が上側使用領域及び、左側周辺領域と右側周辺領域の少なくとも一方の中にあり、前記低平均屈折力領域内で、装用者が経験する平均屈折力が第一の屈折力、特に第一の平均屈折力プラス0.125Dを超えないように形成されるように選択される。さらに、標的レンズ設計は、前記少なくとも1つの自由曲面の最適化の後に、低平均屈折力領域が眼鏡用累進レンズの面積の少なくとも40%を占め、左側周辺領域内の低平均屈折力領域と右側周辺領域内の低平均屈折力領域との間の距離、特に水平距離が25mmを超えないように選択される。
【0062】
本発明のこの態様によれば、眼鏡用累進レンズは、直径が少なくとも40mmの丸い眼鏡用累進レンズであってもよい。この場合、標的レンズ設計は、低平均屈折力領域が眼鏡用累進レンズの、眼鏡用累進レンズの幾何学中心の周囲の直径40mm以内にある面積の少なくとも40%を占めるように選択される。
【0063】
本発明のこの態様による本発明の眼鏡用累進レンズにおいて、近視管理のための累進屈折力レンズ(PAL)要素の近見領域は通常より狭く、横方向に、レンズの遠用屈折力と同程度の比較的低い平均屈折力で取り囲まれる。したがって、近見領域はできるだけ狭く、それと同時に近見領域の両側の周辺屈折力低下部は可能な限り広くなる。これは、近見領域の左右で比較的急峻な勾配があることを意味する。それと反対に、現在市販されている従来のPALでは、レンズの下側部分における加入平均屈折力のスムーズに分布する(スムーズな勾配)かなり広い近見領域が確保されるように努められ、近見領域の両側の周辺屈折力低下部の大きさと深さが縮小されている。
【0064】
本発明のまた別の態様によれば、眼鏡用累進レンズが提供され、これは、
−特定の装用位置において、遠見に適応された第一の屈折力、特に第一の平均屈折力を提供する遠用基準点を持つ上側使用領域と、
−特定の装用位置において、近見に適応された第二の屈折力、特に第二の平均屈折力を提供し、第二の屈折力、特に第二の平均屈折力は第一の屈折力、特に第一の平均屈折力に関する加入屈折力を表す近用基準点を持つ下側使用領域と、
−上側使用領域と下側使用領域との間の、特定の装用位置において屈折力が第一の屈折力、特に第一の平均屈折力から第二の屈折力、特に第二の平均屈折力へと徐々に変化する累進帯と、
−累進帯及び下側使用領域により分離される左側周辺領域及び右側周辺領域と、
−上側使用領域、左側周辺領域、及び右側周辺領域の中の低平均屈折力領域であって、前記低平均屈折力領域では特定の装用位置において装用者が経験する平均屈折力が第一の屈折力、特に第一の平均屈折力プラス0.125Dを超えない低平均屈折力領域と、
を含む。
【0065】
本発明のこの態様によれば、眼鏡用累進レンズは直径が少なくとも40mmの丸い眼鏡用累進レンズであり、低平均屈折力領域は眼鏡用累進レンズの、眼鏡用累進レンズの幾何学中心の周囲の直径40mm以内にある面積の少なくとも40%を占める。
【0066】
それに加えて、本発明のこの態様によれば、特定の装用位置によって特定の装用者に適応される丸い眼鏡用累進レンズを設計するためのコンピュータ実装方法が提供される。この方法は、
−装用者の特定の装用位置を取得又は提供するステップと、
−装用者の遠見のための屈折力を取得又は提供するステップと、
−装用者の近見用の屈折力を取得又は提供するステップと、
−装用者の特定の装用位置、遠見のための屈折力、及び近見のための屈折力に基づいて、眼鏡用累進レンズにより実現されるべき表面特性又は光学特性を定める標的レンズ設計を提供するステップと、
−レンズブランク上に形成されるべき自由曲面を、自由曲面の表面特性又は自由曲面で実現される光学特性と、それぞれ標的レンズ設計により定められる表面特性又は光学特性との相違を最小化するように最適化するステップと、
を含む。
【0067】
標的レンズ設計は、最適化によってレンズブランクの前面及び/又は後面のための少なくとも1つの最適化された自由曲面が提供されるように選択され、少なくとも1つの最適化された自由曲面は、特定の装用位置において屈折力、特に第一の平均屈折力を提供する遠用基準点を持つ上側使用領域と、特定の装用位置において第二の屈折力、特に第二の平均屈折力を提供する近用基準点を持つ下側使用領域と、上側使用領域と下側使用領域との間の累進帯と、累進帯及び下側使用領域により分離される左側周辺領域及び右側周辺領域と、を画定する。それに加えて、標的レンズ設計は、最適化された自由曲面が、上側使用領域及び、左側周辺領域と右側周辺領域のうちの少なくとも一方の中に低平均屈折力領域があり、前記低平均屈折力領域では、特定の装用位置において装用者が経験する平均屈折力が第一の屈折力、特に第一の平均屈折力プラス0.125Dを超えないように形成されるように選択される。
【0068】
さらに、標的レンズ設計は、前記少なくとも1つの自由曲面の最適化の後に、低平均屈折力領域が眼鏡用累進レンズの、丸い眼鏡用累進レンズの幾何学中心の周囲の直径40mm以内にある面積の少なくとも40%を占めるように選択される。
【0069】
本発明のさらに別の態様によれば、眼鏡用累進レンズが提供され、これは、
−特定の装用位置において、遠見に適応された第一の屈折力、特に第一の平均屈折力を提供する遠用基準点を持つ上側使用領域と、
−特定の装用位置において、近見に適応された第二の屈折力、特に第二の平均屈折力を提供し、第二の屈折力、特に第二の平均屈折力は第一の屈折力、特に第一の平均屈折力に関する加入屈折力を表す近用基準点を持つ下側使用領域と、
−上側使用領域と下側使用領域との間の、特定の装用位置において屈折力が第一の屈折力、特に第一の平均屈折力から第二の屈折力、特に第二の平均屈折力へと徐々に変化する累進帯と、
−累進帯及び下側使用領域により分離される左側周辺領域及び右側周辺領域と、
−上側使用領域、左側周辺領域、及び右側周辺領域の中の低平均屈折力領域であって、前記低平均屈折力領域では特定の装用位置において装用者が経験する平均屈折力が第一の屈折力、特に第一の平均屈折力プラス0.125Dを超えない低平均屈折力領域と、
を含む。
【0070】
本発明のこの態様によれば、低平均屈折力領域は、眼鏡用累進レンズの面積の少なくとも40%を占め、左側周辺領域及び右側周辺領域内の低平均屈折力領域は、眼鏡用累進レンズの面積の少なくとも10%%、有利な態様では少なくとも15%、さらに有利な態様では少なくとも25%を占める。本発明のこの態様による眼鏡用累進レンズは、直径が少なくとも40mmの丸い眼鏡用累進レンズであってもよい。この場合、低平均屈折力領域は、眼鏡用累進レンズの、眼鏡用累進レンズの幾何学中心の周囲の直径40mm以内にある面積の少なくとも40%を占める。
【0071】
それに加えて、本発明のこの態様によれば、特定の装用位置により特定の装用者に適応された丸い眼鏡用累進レンズを設計するためのコンピュータ実装方法が提供される。この方法は、
−装用者の特定の装用位置を取得し、又は提供し、又は導き出すステップと、
−装用者の遠見のための屈折力を取得又は提供するステップと、
−装用者の近見のための屈折力を取得又は提供するステップと、
−装用者の特定の装用位置、遠見のための屈折力、及び近見のための屈折力に基づいて、眼鏡用累進レンズにより実現されるべき表面特性又は光学特性を定める標的レンズ設計を提供するステップと、
−レンズブランク上に形成されるべき自由曲面を、自由曲面の表面特性又は自由曲面により実現される光学特性と、それぞれ標的レンズ設計により定められる表面特性又は光学特性との相違を最小化するように最適化するステップと、
を含む。
【0072】
標的レンズ設計は、最適化によってレンズブランクの前面及び/又は後面のための少なくとも1つの最適化された自由曲面が提供されるように選択され、少なくとも1つの最適化された自由曲面は、特定の装用位置において第一の屈折力、特に第一の平均屈折力を提供する遠用基準点を持つ上側使用領域と、特定の装用位置において第二の屈折力、特に第二の平均屈折力を提供する近用基準点を持つ下側使用領域と、上側使用領域と下側使用領域との間の累進帯と、累進帯及び下側使用領域により分離される左側周辺領域及び右側周辺領域と、を画定する。それに加えて、最適化された自由曲面は、上側使用領域及び、左側周辺領域と右側周辺領域のうちの少なくとも一方の中に低平均屈折力領域があり、前記低平均屈折力領域では、特定の装用位置において装用者が経験する平均屈折力が第一の屈折力、特に第一の平均屈折力プラス0.125Dを超えないように形成される。さらに、標的レンズ設計は、前記少なくとも1つの自由曲面の最適化の後に、低平均屈折力領域が眼鏡用累進レンズの面積の少なくとも40%を占め、左側周辺領域及び右側周辺領域内の低平均屈折力領域が眼鏡用累進レンズの面積の少なくとも10%、有利な態様では少なくとも15%、さらに有利な態様では少なくとも25%を占めるように選択される。
【0073】
本発明のこの態様によれば、直径が少なくとも40mmの丸い眼鏡用累進レンズであってもよい。この場合、標的レンズ設計は、低平均屈折力領域が、眼鏡用累進レンズの、眼鏡用累進レンズの幾何学中心の周囲の直径40mm以内にある面積の少なくとも40%を占めるように選択される。
【0074】
本発明のさらに別の態様によれば、眼鏡用累進レンズが提供され、これは、
−特定の装用位置において、遠見に適応された第一の屈折力、特に第一の平均屈折力を提供する遠用基準点を持つ上側使用領域と、
−特定の装用位置において、近見に適応された第二の屈折力、特に第二の平均屈折力を提供し、第二の屈折力、特に第二の平均屈折力は第一の屈折力、特に第一の平均屈折力に関する加入屈折力を表す近用基準点を持つ下側使用領域と、
−上側使用領域と下側使用領域との間の、特定の装用位置において屈折力が第一の屈折力、特に第一の平均屈折力から第二の屈折力、特に第二の平均屈折力へと徐々に変化する累進帯と、
−累進帯及び下側使用領域により分離される左側周辺領域及び右側周辺領域と、
−上側使用領域、左側周辺領域、及び右側周辺領域の中の低平均屈折力領域であって、前記低平均屈折力領域では特定の装用位置において装用者が経験する平均屈折力が第一の屈折力、特に第一の平均屈折力プラス0.125Dを超えない低平均屈折力領域と、
を含む。
【0075】
本発明のこの態様によれば、低平均屈折力領域は、眼鏡用累進レンズの面積の少なくとも40%を占め、低平均屈折力の領域は、左側周辺領域及び/又は右側周辺領域の、特定の装用位置において、装用者の調節反応が近見作業中に、遠用処方による単焦点レンズで眼が示す通常の反応に関して変化せず、中心窩の正面又はその上に結像されるか、少なくとも中心窩での調節ラグが最小化されるような面積を占める。
【0076】
本発明のこの態様による眼鏡用累進レンズは、直径が少なくとも40mmの丸い眼鏡用累進レンズであってもよい。この場合、低平均屈折力領域は、眼鏡用累進レンズの、眼鏡用累進レンズの幾何学中心の周囲の直径40mm以内にある面積の少なくとも40%を占める。
【0077】
それに加えて、本発明のこの態様によれば、特定の装用位置によって特定の装用者に適応された丸い眼鏡用累進レンズを設計するためのコンピュータ実装方法が提供される。この方法は、
−装用者の特定の装用位置を取得し、又は提供し、又は導き出すステップと、
−装用者の遠見のための屈折力を取得又は提供するステップと、
−装用者の近見のための屈折力を取得又は提供するステップと、
−装用者の特定の装用位置、遠見のための屈折力、及び近見のための屈折力に基づいて、眼鏡用累進レンズにより実現されるべき表面特性又は光学特性を定める標的レンズ設計を提供するステップと、
−レンズブランク上に形成されるべき自由曲面を、自由曲面の表面特性又は自由曲面により実現される光学特性と、それぞれ標的レンズ設計により定められる表面特性又は光学特性との相違を最小化するように最適化するステップと、
を含む。
【0078】
標的レンズ設計は、最適化によってレンズブランクの前面及び/又は後面のための少なくとも1つの最適化された自由曲面が提供されるように選択され、少なくとも1つの最適化された自由曲面は、特定の装用位置において第一の屈折力、特に第一の平均屈折力を提供する遠用基準点を持つ上側使用領域と、特定の装用位置において第二の屈折力、特に第二の平均屈折力を提供する近用基準点を持つ下側使用領域と、上側使用領域と下側使用領域との間の累進帯と、累進帯及び下側使用領域により分離される左側周辺領域及び右側周辺領域と、を画定し、最適化された自由曲面は、上側使用領域及び、左側周辺領域と右側周辺領域のうちの少なくとも一方の中に低平均屈折力領域があり、前記低平均屈折力領域では、特定の装用位置において、装用者が経験する平均屈折力が第一の屈折力、特に第一の平均屈折力プラス0.125Dを超えないように形成される。さらに、標的レンズ設計は、前記少なくとも1つの自由曲面の最適化の後に、低平均屈折力領域が眼鏡用累進レンズの面積の少なくとも40%を占め、低平均屈折力の領域は、左側周辺領域及び/又は右側周辺領域の、特定の装用位置において、装用者の調節反応が近見作業中に、遠用処方による単焦点レンズで眼が示す通常の反応に関して変化せず、中心窩の正面又はその上の像が形成されるか、少なくとも中心窩での調節ラグが最小化されるような面積を占めるように選択される。
【0079】
本発明のこの態様によれば、直径が少なくとも40mmの丸い眼鏡用累進レンズであってもよい。この場合、標的レンズ設計は、低平均屈折力領域が、眼鏡用累進レンズの、眼鏡用累進レンズの幾何学中心の周囲の直径40mm以内にある面積の少なくとも40%を占めるように選択される。
【0080】
本発明はさらに、コンピュータプログラムを提供し、これは、コンピュータプログラムがコンピュータにおいてロードされ、又は実行されたときに、眼鏡用累進レンズを設計するための本発明のコンピュータ実装方法のすべての方法ステップを実行するプログラムコードを伴う。
【0081】
眼鏡用累進レンズの、及び眼鏡用累進レンズを設計するためのコンピュータ実装方法の幾つかのさらなる発展形は、本発明の幾つかの態様に関してのみ説明したが、当業者であれば、本発明の前記幾つかの態様に関して説明したものと同じさらなる発展形が、本発明の他の態様による眼鏡用累進レンズ、及び眼鏡用累進レンズを設計するためのコンピュータ実装方法にも当てはまることがわかる。
【0082】
本発明のその他の特徴、特性、及び利点は、添付の図面と併せた本発明の実施形態に関する以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。