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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6722343
(24)【登録日】2020年6月23日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】3D印刷方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/393 20170101AFI20200706BHJP
   B29C 64/112 20170101ALI20200706BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20200706BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20200706BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20200706BHJP
【FI】
   B29C64/393
   B29C64/112
   B33Y50/02
   B33Y10/00
   B33Y30/00
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-504036(P2019-504036)
(86)(22)【出願日】2017年5月11日
(65)【公表番号】特表2019-521891(P2019-521891A)
(43)【公表日】2019年8月8日
(86)【国際出願番号】CN2017083911
(87)【国際公開番号】WO2018086324
(87)【国際公開日】20180517
【審査請求日】2019年1月25日
(31)【優先権主張番号】201611000284.X
(32)【優先日】2016年11月14日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516135380
【氏名又は名称】珠海賽納打印科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】陳 偉
(72)【発明者】
【氏名】馬 達栄
(72)【発明者】
【氏名】蒋 韋
(72)【発明者】
【氏名】陳 暁坤
【審査官】 今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−037007(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0151167(US,A1)
【文献】 中国実用新案第204526170(CN,U)
【文献】 特開平06−114949(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第104489843(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 − 64/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1印刷経路によって印刷対象物の第N個のスライス層を印刷するステップS101と、
第2印刷経路によって前記印刷対象物の第N+1個のスライス層を印刷するステップS102と、
前記ステップS101乃至前記ステップS102を印刷完了まで繰り返して実行するステップS103と
を含み、前記Nは1以上の正整数であり、前記第2印刷経路は前記第1印刷経路と逆方向の経路であり、
前記第2印刷経路によって前記印刷対象物の第N+1個のスライス層を印刷する前に、
前記第1印刷経路の終点位置を特定するステップと、
前記第1印刷経路の終点位置を前記第2印刷経路の起点位置とするステップと
を含む
ことを特徴とする3D印刷方法。
【請求項2】
前記第1印刷経路によって印刷対象物の第N個のスライス層を印刷するステップは、
前記印刷対象物に対して層形成処理を行って、複数の前記スライス層を得るステップと、
前記第1印刷経路によって複数の前記スライス層のうちの前記第N個のスライス層を印刷するステップと
を含むことを特徴とする請求項1に記載の3D印刷方法。
【請求項3】
前記印刷対象物に対して層形成処理を行って、複数の前記スライス層を得た後、
複数の前記スライス層に基づいて層印刷データを生成するステップをさらに含み、
前記層印刷データは第1順序及び第2順序を有し、前記層印刷データが前記第1順序で形成した経路は前記第1印刷経路であり、前記層印刷データが前記第2順序で形成した経路は第2印刷経路である
ことを特徴とする請求項2に記載の3D印刷方法。
【請求項4】
前記第1順序及び第2順序は互いに逆になる
ことを特徴とする請求項3に記載の3D印刷方法。
【請求項5】
前記層印刷データは、記憶時に互いに逆になる順序で記憶される第1順序及び第2順序を有する
ことを特徴とする請求項3に記載の3D印刷方法。
【請求項6】
前記層印刷データは、伝送時に互いに逆になる順序で伝送される第1順序及び第2順序を有する
ことを特徴とする請求項3に記載の3D印刷方法。
【請求項7】
前記第1印刷経路の終点位置を特定するステップは、
前記第N個のスライス層の副走査方向における長さDを取得するステップと、
印刷ヘッドの副走査方向における1回の移動距離dを取得するステップと、
前記長さD及び前記1回の移動距離dに基づいて前記印刷ヘッドの前記第N個のスライス層での前記副走査方向における移動回数nを得るステップと、
前記移動回数nに基づいて前記第1印刷経路の終点位置を特定するステップと
を含み、前記1回の移動距離dは、前記印刷ヘッドが前記第N個のスライス層で主走査方向における1回の印刷ジョブを完成させた都度前記副走査方向において移動する距離である
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1つに記載の3D印刷方法。
【請求項8】
前記移動回数nに基づいて前記第1印刷経路の終点位置を特定するステップにおいて、
前記移動回数nが奇数である場合に、前記第1印刷経路の終点位置が前記第1印刷経路の起点と同側に位置すると特定し、
前記移動回数nが偶数である場合に、前記第1印刷経路の終点位置が前記第1印刷経路の起点と反対側に位置すると特定する
ことを特徴とする請求項に記載の3D印刷方法。
【請求項9】
前記第1印刷経路の終点位置と第2印刷経路の起点位置とは重なり、
第2印刷経路の終点位置と第1印刷経路の起点位置とは重なり、又は重ならない。
ことを特徴とする請求項又はに記載の3D印刷方法。
【請求項10】
印刷材料を吐出するための印刷ヘッドと
前記印刷ヘッドによる印刷を制御するための駆動コントローラーと
を備え
前記駆動コントローラーは、
第1印刷経路によって印刷対象物の第N個のスライス層を印刷する第1の処理、
第2印刷経路によって前記印刷対象物の第N+1個のスライス層を印刷する第2の処理、及び
前記第1の処理乃至前記第2の処理を印刷完了まで繰り返して実行する第3の処理
を前記印刷ヘッドに行わせるように構成されており、
前記Nは1以上の正整数であり、前記第2印刷経路は前記第1印刷経路と逆方向の経路であり、
前記駆動コントローラーは、前記第2印刷経路によって前記印刷対象物の第N+1個のスライス層を印刷する前に、
前記第1印刷経路の終点位置を特定する処理、及び
前記第1印刷経路の終点位置を前記第2印刷経路の起点位置とする処理
を前記印刷ヘッドに行わせるように構成されてい
ことを特徴とする3D印刷システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3D印刷分野に関し、特に3D印刷方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
3D印刷は、高速成形技術の一種として、複雑な形状をなすモデルの作成が実現できるため、その研究及び応用がますます幅広くなってくる。
【0003】
従来、3D印刷の基本原理は、3D(Three−Dimensiona)モデルをスライスして1層ずつ加工して積み上げることで3Dオブジェクトを作ることである。印刷ヘッドによって完成された1つのスライス層に対する印刷ジョブは、1つの層印刷結果と呼ばれる。印刷ヘッドは、印刷ジョブの開始前に1つの起点位置が設定される。各スライス層が起点位置から印刷され、全てのスライス層の印刷が完了するまで繰り返される。図1aは従来技術の印刷ヘッドの印刷経路の1種の模式図である。図1bは従来技術の印刷ヘッドの印刷経路の他の1種の模式図である。図1a及び図1bを参照すると、印刷ヘッドは、1つの層印刷結果を完成させた後、終点位置から起点位置に戻る必要がある。図2aは図1aの印刷ヘッドが1つの層印刷結果を完成させた後に終点位置から起点位置に戻ることを示す模式図である。図2bは図1bの印刷ヘッドが1つの層印刷結果を完成させた後に終点位置から起点位置に戻ることを示す模式図である。図2a及び図2bを参照すると、起点位置へ戻る際に印刷ヘッドは、比較的に短い経路を選択して復帰し、戻る際に印刷ジョブを実行しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、3D印刷では、1層ずつ加工するため、一定の厚さを有する3Dオブジェクトについて、複数層重ね合わせた場合、印刷ヘッドが戻る際の移動時間の合計が比較的に長くて、印刷効率に影響する虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、比較的に高い印刷効率を実現することができる3D印刷方法及びシステムを提供する。
【0006】
本発明の一様態に係る3D印刷方法は、第1印刷経路によって印刷対象物の第N個のスライス層を印刷するステップS101と、第2印刷経路によって前記印刷対象物の第N+1個のスライス層を印刷するステップS102と、前記ステップS101乃至前記ステップS102を印刷完了まで繰り返して実行するステップS103とを含み、前記Nは1以上の正整数であり、前記第2印刷経路は前記第1印刷経路と逆方向の経路である。
【0007】
本発明の一様態に係る3D印刷システムは、印刷材料を吐出するための印刷ヘッドと、印刷データに基づいて前記印刷ヘッドによる印刷を制御するための駆動コントローラーと、前記印刷データを生成するためのプロセッサとを備え、前記印刷データは、第1印刷経路によって印刷対象物の第N個のスライス層を印刷するステップS101と、第2印刷経路によって前記印刷対象物の第N+1個のスライス層を印刷するステップS102と、前記ステップS101乃至前記ステップS102を印刷完了まで繰り返して実行するステップS103とを含むように構成されており、前記Nは1以上の正整数であり、前記第2印刷経路は前記第1印刷経路と逆方向の経路である。
【0008】
本発明に係る3D印刷方法及びシステムのうち、3D印刷方法は、具体的に、第1印刷経路によって印刷対象物の第N個のスライス層を印刷するステップS101と、第2印刷経路によって前記印刷対象物の第N+1個のスライス層を印刷するステップS102と、前記ステップS101乃至前記ステップS102を印刷完了まで繰り返して実行するステップS103とを含み、前記Nは1以上の正整数であり、前記第2印刷経路は前記第1印刷経路と逆方向の経路である。これにより、印刷過程において、隣接した2つの層間で切替える際に、印刷ヘッドは、印刷しない戻り動作をせずに、連続して次の層を直接に印刷するため、印刷効率が比較的に高い。
【図面の簡単な説明】
【0009】
以下、本発明の実施例又は従来技術を一層明確に説明するために、実施例又は従来技術の説明に必要な図面について簡単に説明する。明らかに、以下の図面の説明は、本発明の一部の実施形態であり、当業者は、創造的行為が要らずに、これらの図面を基に他の図面を得ることが可能である。
図1a】従来技術の印刷ヘッドの印刷経路の1種の模式図である。
図1b】従来技術の印刷ヘッドの印刷経路の他の1種の模式図である。
図2a図1aの印刷ヘッドが1つの層印刷結果を完成させた後に終点位置から起点位置に戻ることを示す模式図である。
図2b図1bの印刷ヘッドが1つの層印刷結果を完成させた後に終点位置から起点位置に戻ることを示す模式図である。
図3】本発明の実施例1に係る3D印刷方法のフローチャートである。
図4】本発明の実施例1に係る第1印刷経路によって印刷対象物の第N個のスライス層を印刷するフローチャートである。
図5】本発明の実施例1に係る第1印刷経路によって印刷対象物の第N個のスライス層を印刷する他のフローチャートである。
図6】本発明の実施例1に係る他の3D印刷方法のフローチャートである。
図7】本発明の実施例1に係る第1印刷経路の終点位置を特定する際のフローチャートである。
図8】本発明の実施例1において印刷ヘッドが第N個のスライス層で副走査方向に沿って数回移動する場合の第1印刷経路の経路方向の模式図である。
図9】印刷ヘッドが第N個のスライス層で副走査方向に沿って数回移動する場合の第2印刷経路の経路方向の模式図である。
図10】本発明の実施例2に係る印刷ヘッドが第N個のスライス層で副走査方向に沿って数回移動する場合の第1印刷経路の経路方向の模式図である
図11】本発明の実施例2に係る印刷ヘッドが第N個のスライス層で副走査方向に沿って数回移動する場合の第2印刷経路の経路方向の模式図である。
図12】本発明の実施例3に係る3D印刷システムの構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施例の目的、技術方案及び利点を一層明確にさせるために、以下では本発明の実施例を示す図面に基づいて本発明の実施例における技術方案を明確に詳細に説明する。勿論、説明する実施例は本発明の一部の実施例に過ぎず、全部の実施例ではない。当業者が本発明の実施例に基づいて創造的な行為が要らずに得た他の実施例は、全て本発明の技術的範囲に属する。
【0011】
図3は本発明の実施例1に係る3D印刷方法のフローチャートである。図3に示すように、本実施例に係る3D印刷方法は、具体的に以下のステップを含む。
【0012】
S101:第1印刷経路によって印刷対象物の第N個のスライス層を印刷する。Nは1以上の正整数である。
【0013】
S102:第2印刷経路によって印刷対象物の第N+1個のスライス層を印刷する。ここで、第2印刷経路は第1印刷経路と逆方向の経路である。
【0014】
S103:ステップS101乃至ステップS102を印刷完了まで繰り返して実行する。
【0015】
ここで、該3D印刷方法は3D印刷システムに適用される。印刷前に印刷対象物に対して層形成を行い、スライス層に基づいて1層ずつ印刷する必要がある。印刷対象物の1つのスライス層について、印刷ヘッドは、一定の経路に沿って層全体を印刷することで、1つの層印刷結果を完成させる。例えば、印刷対象物の第N個のスライス層の印刷を例として、印刷ヘッドは、印刷前に該スライス層の最初の起点位置に位置し、第1印刷経路に沿って移動する。移動過程において、印刷ヘッドは、該当する位置で選択的に印刷材料を吐出して、第N個のスライス層を印刷して成形させる。
本発明において、第1印刷経路又は第2印刷経路は、印刷ヘッドがスライス層の印刷ジョブの実行時に移動することにより形成された経路であり、印刷ヘッドが印刷を実行するときのジョブ経路を指すものではない。通常、印刷ヘッドの起点位置から印刷位置まで一定の距離があり、印刷ヘッドが当該距離において静止状態から加速状態に遷移し、さらに等速状態に遷移し、等速状態で材料を吐出する。印刷ヘッドの終点位置についても同様である。従って、本発明では、第1印刷経路又は第2印刷経路とは、起点位置から終点位置まで形成された移動経路をいう
【0016】
第N個のスライス層の印刷が完了した後、印刷ヘッドは最初の起点位置に戻る必要がなく、直接に第1印刷経路の終点から、第2印刷経路に沿って、第N層に隣接した第N+1層のスライス層を印刷する。ここで、隣接したスライス層の寸法が同一である場合に、第2印刷経路と第1印刷経路とは、各段の方向が正反対であり、即ち、第2印刷経路は第1印刷経路の反対方向に沿って進む逆方向経路である。隣接したスライス層間の寸法が異なる場合に、第2印刷経路の終点第1印刷経路の起点と重ならなくてもよい。これにより、印刷ヘッドは、往復運動によって、隣接した2つのスライス層の印刷を完成させる。
【0017】
隣接した2つのスライス層の印刷が完了した後、類似するステップによって、印刷対象物の他のスライス層に対して、印刷対象物全体の印刷が完了するまで印刷動作を行うことができる。ここで、隣接した2つのスライス層のうち、一層は第1印刷経路によって印刷されるが、他層は第2印刷経路によって印刷される。このように、印刷対象物の3D印刷をする際に、印刷ヘッドは、1層の印刷が完了した都度、次の1層の印刷を直接に行うことができる。回送動作がないため、従来技術において第1個のスライス層を印刷した後に印刷ヘッドが起点位置に戻って次のスライス層を印刷するステップを省略することができる。これにより、印刷ヘッドの戻りに必要な時間が効果的に節約され、3D印刷の速度及び印刷効率が高まる。
【0018】
図4は本発明の実施例1に係る第1印刷経路によって印刷対象物の第N個のスライス層を印刷するフローチャートである。図4に示すように、第1印刷経路によって印刷対象物の第N個のスライス層を印刷するステップは、具体的に以下のステップを含むことができる。
【0019】
S201:印刷対象物に対して層形成処理を行って、複数のスライス層を得る。
【0020】
印刷対象物が三次元の寸法データを含むため、印刷の便宜上、3Dオブジェクトをデータ形式に変換させる必要がある。例えば、まず、スキャンによって、印刷対象物の3Dオブジェクト情報を取得し、次いで、3Dオブジェクト情報を、例えばSTL形式、PLY形式、WRL形式などのスライスソフトにより認識されるデータ形式に変換する。3Dオブジェクト情報が層を単位とするため、該3Dオブジェクトをスキャンし、データ処理した後、スライスソフトによってスライス層を形成し、層形成処理によって層画像を形成する必要がある。その後、各層画像を解析して各層の印刷情報を取得し、最後に、各層の印刷情報を、層形成印刷を行うための層印刷データに変換する。
【0021】
S202:第1印刷経路によって複数のスライス層のうちの第N個のスライス層を印刷する。
【0022】
印刷対象物の三次元寸法を各層の印刷データに変換した後、各層の印刷データに基づいて印刷することができる。具体的には、第1印刷経路によって複数のスライス層のうちの第N個のスライス層を印刷して、該第N個のスライス層の印刷動作を完成させる。
【0023】
図5は本発明の実施例1に係る第1印刷経路によって印刷対象物の第N個のスライス層を印刷する他のフローチャートである。図5に示すように、好ましい実施の形態として、異なる経路の印刷を完成させるために、印刷対象物に対して層形成処理を行って複数のスライス層を得た後に、以下のステップを実行することができる。
【0024】
S203:複数のスライス層に基づいて層印刷データを生成する。層印刷データは第1順序及び第2順序を有し、層印刷データが第1順序で形成した経路は第1印刷経路であり、層印刷データが第2順序で形成した経路は第2印刷経路である。
【0025】
ここで、各層の印刷時に、各スライス層の層印刷データは一定的であり、即ち、印刷対象物の該層の物理形状に完全に合致している。異なる印刷経路を印刷ヘッドに形成させるために、層印刷データは第1順序及び第2順序を有する。第1順序及び第2順序は互いに逆になり、夫々異なる印刷経路に対応する。層印刷データが第1順序に従って経路を形成した場合には、印刷ヘッドは第1印刷経路に沿って移動し、印刷を実行することができる。一方で、層印刷データが第2順序に従って経路を形成した場合には、印刷ヘッドは第2印刷経路に沿って移動し、印刷を実行することができる。前述したように、第N個のスライス層の層印刷データが第1順序で印刷される場合に、隣接した第N+1個のスライス層の層印刷データが第2順序で印刷される。即ち、隣接したスライス層の層印刷データは、順序が異なり、かつ互いに逆になる。
前述した第1順序及び第2順序が互いに逆になるとは、層印刷データの記憶方式又は伝送方式が互いに逆になることをいう。具体的には、通常、各層がM×K個の行列配置されたデータ点(即ち画素点)を含み、データ点が有するデータは、1層の層印刷データである。記憶時に、第N個のスライス層の層印刷データは、データ点の順序でデータが記憶されるが、第N+1個のスライス層の層印刷データは、データ点の順序と逆の順序でデータが記憶される。又は、伝送時に、第N個のスライス層の層印刷データは、データ点の順序でデータが伝送されるが、第N+1個のスライス層の層印刷データは、データ点の順序と逆の順序でデータが伝送される。
【0026】
なお、図6は本発明の実施例1に係る3D印刷方法のフローチャートである。図6に示すように、3D印刷システムの印刷ヘッドが第N個のスライス層及び第N+1個のスライス層を印刷する際に、印刷ヘッドの位置決めを行うために、第2印刷経路によって印刷対象物の第N+1個のスライス層を印刷する前に、該方法はさらに以下のステップを含む。
【0027】
S104:第1印刷経路の終点位置を特定する。
【0028】
S105:第1印刷経路の終点位置を第2印刷経路の起点位置とする。
【0029】
上記ステップS104及びステップS105では、第1印刷経路及び第2印刷経路が互いに方向が反対した逆方向経路であるため、第1印刷経路の終点位置を取得し、それを直接に第2印刷経路の起点とすることで、その後の印刷を行うことができる。これにより、印刷ヘッドによる移動印刷を連続させることができ、印刷ヘッドの余計な移動を減少させることができる。
【0030】
具体的に、図7は本発明の実施例1に係る第1印刷経路の終点位置を特定する際のフローチャートである。図7に示すように、第1印刷経路の終点位置を特定する際に、具体的には以下のステップを含むことができる。
【0031】
S301:第N個のスライス層の副走査方向における長さDを取得する。
【0032】
S302:印刷ヘッドの副走査方向における1回の移動距離dを取得する。1回の移動距離dとは、印刷ヘッドが第N個のスライス層で主走査方向における1つの印刷ジョブを完成させた都度副走査方向において移動する距離をいう。
【0033】
S303:長さD及び1回の移動距離dに基づいて、印刷ヘッドの第N個のスライス層での副走査方向における移動回数nを得る。
【0034】
S304:移動回数nに基づいて第1印刷経路の終点位置を特定する。
【0035】
各スライス層の平面において、印刷ヘッドはX軸及びY軸という2方向において移動する。ここで、X軸方向を主走査方向、Y軸を副走査方向とすると、印刷ヘッドが常に主走査方向において印刷し、主走査方向における1つの印刷ジョブを完成させ、スライス層のエッジまで移動した都度、副走査方向において一定の距離を移動し、次の段階の主走査方向の路線に変わる。印刷ヘッドの副走査方向における毎回の移動距離は全て等しい。このように、第1印刷経路の終点位置を特定する際に、第N個のスライス層の副走査方向即ちY軸における長さDを取得してから、印刷ヘッドの副走査方向における1回の移動距離dを取得すればよい。印刷ヘッドが副走査方向において常に一方向に移動する。往復しないため、長さD及び1回の移動距離dに基づいて印刷ヘッドの第N個のスライス層での副走査方向における移動回数nを得ることができる。具体的には、公式n=D/d)−1によって計算することができる。
【0036】
印刷ヘッドの第N個のスライス層での副走査方向における移動回数nを得れば、nに基づいて第1印刷経路の終点位置を特定することができる。一般的に、nの偶奇性の相違で、第1印刷経路の終点になる可能な位置は2つある。具体的には、移動回数nに基づいて第1印刷経路の終点位置を特定することは、以下のことを含むことができる。
【0037】
移動回数nが偶数である場合には、第1印刷経路の終点位置が第1印刷経路の起点と同側にあると特定する。移動回数nが奇数である場合には、第1印刷経路の終点位置が第1印刷経路の起点と異なる側にあると特定する。
【0038】
第1印刷経路は、第N個のスライス層のX軸方向に沿って往復移動するとともに、第N個のスライス層のエッジまで移動した後にY軸へ移動するように形成されている。従って、移動回数nが数であれば、第1印刷経路では、X軸方向に沿って偶数回移動し、その終点がX軸方向において第1印刷経路の起点と同側位置る。移動回数が数であれば、第1印刷経路では、X軸方向に沿って奇数回移動し、第1印刷経路の終点が起点と異なる側の位置にる。
【0039】
対応的に、第2印刷経路は、起点が第1印刷経路の終点と重なり、第1印刷経路の反対方向に沿って逆方向移動する。第1印刷経路の終点が移動回数の偶奇性によって変化するため、第2印刷経路の起点位置も対応的に変化する
【0040】
図8は本発明の実施例1において印刷ヘッドが第N個のスライス層で副走査方向に沿って数回移動する場合の第1印刷経路の経路方向の模式図である。図8に示すように、印刷ヘッドが第N個のスライス層で副走査方向に沿って移動する回数が数回である場合を例として、対応的に、第N個のスライス層で、第1印刷経路の終点は起点と同側に位置する。図9は印刷ヘッドが第N個のスライス層で副走査方向に沿って数回移動する場合の第2印刷経路の経路方向の模式図である。図8及び図9に示すように、第1印刷経路は図8に示す経路方向を有し、印刷ヘッドは、第1印刷経路に沿って第N個のスライス層を印刷した後、図9に示す第2印刷経路に沿って印刷ジョブを実行することができる。上記第1印刷経路及び第2印刷経路の動作を繰り返した結果、複数の層印刷結果を得て、積み重ねて3Dの印刷対象物を形成することができる。
【0041】
本実施例では、3D印刷方法は具体的に以下のステップS101〜S103を含む。ステップS101では、第1印刷経路によって印刷対象物の第N個のスライス層を印刷する。Nは1以上の正整数である。ステップS102では、第2印刷経路によって印刷対象物の第N+1個のスライス層を印刷する。ここで、第2印刷経路は第1印刷経路と逆方向の経路である。ステップS103では、ステップS101乃至ステップS102を印刷完了まで繰り返して実行する。これにより、印刷過程において、隣接した2つの層間で切替える際に、印刷ヘッドは、印刷しない戻り動作をせずに、連続して次の層を直接に印刷するため、印刷効率が比較的に高い。
【0042】
実施例2
図10は本発明の実施例2に係る印刷ヘッドが第N個のスライス層で副走査方向に沿って数回移動する場合の第1印刷経路の経路方向の模式図である。図11は本発明の実施例2に係る印刷ヘッドが第N個のスライス層で副走査方向に沿って数回移動する場合の第2印刷経路の経路方向の模式図である。図10及び図11に示すように、印刷ヘッドの第N個のスライス層での副走査方向における長さはDであり、印刷ヘッドの副走査方向における1回の移動距離はdであり、印刷ヘッドの第N個のスライス層での副走査方向における移動回数nは、n=D/d)−1である。印刷ヘッドの第N個のスライス層での副走査方向における移動回数が偶数回である場合を例として、対応的に、第N個のスライス層での第1印刷経路の終点は起点と異なる側に位置する。図10に示すように、第1印刷経路は図10に示す経路方向を有し、印刷ヘッドは、第1印刷経路に沿って第N個のスライス層を印刷した後、図11に示す第2印刷経路に沿って印刷ジョブを実行することができる。上記第1印刷経路及び第2印刷経路の動作を繰り返した結果、複数の層印刷結果を得て、積み重ねて3Dの印刷対象物を形成することができる。
【0043】
本実施例では、印刷ヘッドの第N個のスライス層での副走査方向における移動回数は偶数回であるため、第1印刷経路の終点及び起点は異なる側に位置し、これにより、移動回数が奇数回である場合と異なる第2印刷経路は形成される。
【0044】
実施例3
図12は本発明の実施例3に係る3D印刷システムの構造模式図である。本実施例に係る3D印刷システムは、上記実施例1及び2に係る3D印刷方法を実行することができる。図12に示すように、本実施例に係る3D印刷システムは具体的に、印刷材料を吐出するための印刷ヘッド5と、印刷データに基づいて印刷ヘッドによる印刷を制御するための駆動コントローラー3と、印刷データを生成するためのプロセッサ2とを備える。
【0045】
印刷データは、以下のステップを含むように構成されている。
【0046】
ステップS101:第1印刷経路によって印刷対象物の第N個のスライス層を印刷する。Nは1以上の正整数である。
【0047】
ステップS102:第2印刷経路によって印刷対象物の第N+1個のスライス層を印刷する。ここで、第2印刷経路は第1印刷経路と逆方向の経路である。
【0048】
ステップS103:上記ステップS101乃至ステップS102を印刷完了まで繰り返して実行する。
【0049】
ここで、プロセッサ2は処理端末等であってもよい。プロセッサ2は、駆動コントローラー3に電気的に接続されており、駆動コントローラー3へ印刷データを出力するようにしてある。駆動コントローラー3は、印刷ヘッド5が印刷材料を吐出して層印刷結果を完成させるとともに複数の層印刷結果を積み上げて3D印刷対象物1を形成するように制御する。印刷材料容器4は印刷ヘッド5へ印刷材料を供給するためのものである。ここで、印刷ヘッド5の隣接した2つのスライス層での印刷経路夫々は、互いに逆方向となる第1印刷経路及び第2印刷経路である。上記3D印刷システムにおけるプロセッサは、ソフトウェア、ハードウェア、又はソフトウェア及びハードウェアの組み合わせによって前述した実施例に係る3D印刷方法を実行することができる。ここでは重複した説明を省略する。
【0050】
選択的に、3D印刷システムはさらに印刷材料に対して光硬化を行うための2つの光照射ランプ9を備える。2つの光照射ランプ9夫々は印刷ヘッド5の両側に設けられている。2つの光照射ランプ9は、同時又は交互に点灯して、印刷材料に対して光を照射して材料を硬化させることができる。ここで、印刷ヘッド5及び光照射ランプ9夫々はレール6に摺動可能に設けられている。
【0051】
選択的に、光照射ランプ9はLEDランプであってもよい。
【0052】
なお、3D印刷システムは印刷台7及びリフト8をさらに備えてもよい。印刷台7は、頂部に印刷対象物を載置可能な印刷平面が設けられている。リフト8は印刷台7の底部に位置し、印刷過程中の印刷台7の高さを変更させるためのものである。これにより、3D印刷過程において、1層の印刷が完了すると、リフト8は一定の高さを下げて、印刷ヘッド5に新たな1層を印刷させる。
【0053】
本実施例では、3D印刷システムは、印刷材料を吐出するための印刷ヘッドと、印刷データに基づいて印刷ヘッドによる印刷を制御するための駆動コントローラーと、印刷データを生成するためのプロセッサとを備え、印刷データは、第1印刷経路によって印刷対象物の第N個のスライス層を印刷するステップS101と、第2印刷経路によって印刷対象物の第N+1個のスライス層を印刷するステップS102と、上記ステップS101乃至ステップS102を印刷完了まで繰り返して実行するステップS103とを含むように構成されており、Nは1以上の正整数であり、第2印刷経路は第1印刷経路と逆方向の経路である。これにより、印刷過程において、隣接した2つの層間で切替える際に、印刷ヘッドは、印刷しない戻り動作をせずに、連続して次の層を直接に印刷するため、印刷効率が比較的に高い。
【0054】
当業者であれは、以下のことが理解できる。上記各方法に係る実施例の全部又は一部のステップはプログラム指令に係るハードウェアにより実現される。前述したプログラムはコンピュータにより読み取られる記憶媒体に記憶されてもよい。該プログラムは、上記の各方法に係る実施例のステップを実行する。前述した記憶媒体は、ROM、RAM、磁気ディスク、又は光ディスクなど、プログラムのコードを記憶することが可能な媒体を含む。
【0055】
なお、前述した実施例は、本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明を制限するものではない。前述した実施例に基づいて本発明を詳しく説明したが、当業者であれば、前述した各実施例に記載の発明を変更し、又はその一部の技術的特徴を均等に置き換えることができ、これらの変更又は置き換えは、技術の本質を各実施例に係る発明の思想及び範囲から逸脱させることがないと理解できる。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12