【実施例】
【0081】
以下、実施例、比較例を挙げてさらに詳細に内容を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0082】
<第1の本発明に対する実施例>
「実験例1」
炭酸アルカリA、カルシウムアルミネート類、水酸化カルシウムα、ミョウバンa、珪酸ソーダを表1及び表2に示す配合で混合した粉末状急結剤を調製し、一方でセメント800g、細骨材2000g、水400gのモルタルを調製し、モルタルに粉末状急結剤80gを加えて急結モルタル(急結材料)を調製したときからの流動性低下時間、凝結時間、圧縮強度を測定した。結果を表1及び表2に併記する。
【0083】
なお、使用材料及び各種試験方法は下記のとおりである。
「使用材料」
セメント:市販品、普通ポルトランドセメント、密度3.15g/cm
3
細骨材:新潟県姫川水系川砂、密度2.61g/cm
3
水:工業用水
炭酸アルカリA:市販品、炭酸ナトリウム、ブレーン1200cm
2/g
カルシウムアルミネート類:CaO/Al
2O
3モル比2.5となるように原料を粉砕混合し、電気炉で溶融し、急冷したもの、ガラス化率90%、ブレーン5500cm
2/g
水酸化カルシウムα:カーバイド滓、ブレーン2000cm
2/g
ミョウバンa:カリウムミョウバン12水和物、市販品、ブレーン600cm
2/g
珪酸ソーダ:SiO
2/Na
2Oモル比1.0、ブレーン600cm
2/g、市販品、無水塩
【0084】
「試験方法」
流動性低下時間:調製したモルタルに粉末状急結剤を加えてから、モルタルの流動性が低下した時間を測定した。
【0085】
凝結時間:調製したモルタルに粉末状急結剤を加えてから、素早くプロクター試験専用型枠へ型詰めし、粉末状急結剤を加えてからの凝結の始発時間、終結時間を測定した(ASTM C403に準じて測定)。
【0086】
圧縮強度:凝結時間と同様に急結モルタルを調製したときからの圧縮強度(N/mm
2)を測定した。材齢は1日、28日とした(JSCE D102に準じて測定)。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
表1及び表2より、カルシウムアルミネート類及び珪酸ソーダを含有し、好ましくはこれらに水酸化カルシウム、ミョウバン、炭酸アルカリを含有することで、流動性低下時間が早く、凝結時間が遅延せず、圧縮強度も良好であった。特に、ミョウバンと珪酸ソーダを含有すると、流動性低下の遅れが抑えられ、急結剤として良好に機能していた。なお、それぞれの含有量には適正値があることがわかる。
【0090】
「実験例2」
表3に示すように、珪酸ソーダのSiO
2/Na
2Oモル比が異なるものを使用した以外は全て実験例1と同様にして試験を実施した。粉末状急結剤の組成は、実験No.1−5の配合となるように調製した。
モルタルに粉末状急結剤80gを加えて急結モルタルを調製したときからの流動性低下時間、凝結時間、圧縮強度を測定した。結果を下記表3に併記する。
【0091】
【表3】
【0092】
表3よりカルシウムアルミネート類及び珪酸ソーダを含有することで流動性低下時間が早く、凝結時間が遅延せず、圧縮強度も良好であった。また、より好ましい性状を示す珪酸ソーダのSiO2/Na2Oモル比の範囲が存在することがわかる。
【0093】
「実験例3」
表4に示す種類の珪酸ソーダの水和物を使用した以外は全て実験例1と同様にして試験を実施した。粉末状急結剤の組成は、実験No.1−5の配合となるように調製した。
モルタルに粉末状急結剤80gを加えて急結モルタルを調製したときからの流動性低下時間、凝結時間、圧縮強度を測定した。結果を表4に併記する。
【0094】
【表4】
【0095】
表4より珪酸ソーダの水和物の種類がいずれであっても、粉末状急結剤として有効であることが考えられる。
【0096】
「実験例4」
表5に示す種類のミョウバンを使用した以外は全て実験例1と同様にして試験を実施した。粉末状急結剤の組成は、実験No.1−5の配合となるように調製した。
モルタルに粉末状急結剤80gを加えて急結モルタルを調製したときからの流動性低下時間、凝結時間、圧縮強度を測定した。結果を表5に併記する。
【0097】
「使用材料」
ミョウバンa:カリウムミョウバン12水和物、市販品、ブレーン600cm
2/g
ミョウバンb:硫酸ナトリウムアルミニウム12水和物、市販品、ブレーン700cm
2/g
ミョウバンc:アンモニウムミョウバン12水和物、市販品、ブレーン600cm
2/g
ミョウバンd:鉄ミョウバン12水和物、市販品、ブレーン600cm
2/g
ミョウバンe:クロムミョウバン12水和物、市販物、ブレーン600cm
2/g
ミョウバンf:カリウムミョウバン無水和物、市販品、ブレーン600cm
2/g
ミョウバンg:アンモニウムミョウバン無水和物、市販品、ブレーン700cm
2/g
ミョウバンh:鉄ミョウバン1水和物、市販品、ブレーン600cm
2/g
ミョウバンi:鉄ミョウバン無水和物、市販品、ブレーン700cm
2/g
【0098】
【表5】
【0099】
表5よりミョウバンの種類がいずれであっても、流動性低下時間が早く、凝結時間が遅延せず、圧縮強度も良好であった。また、より好ましい性状を示すミョウバンの種類が存在することがわかる。
【0100】
「実験例5」
表6に示す種類の炭酸アルカリを使用した以外は全て実験例1と同様にして試験を実施した。粉末状急結剤の組成は、実験No.1−5の配合となるように調製した。
モルタルに粉末状急結剤80gを加えて急結モルタルを調製したときからの流動性低下時間、凝結時間、圧縮強度を測定した。結果を表6に併記する。
【0101】
「使用材料」
炭酸アルカリA:市販品、炭酸ナトリウム、ブレーン1200cm
2/g
炭酸アルカリB:市販品、セスキ炭酸ナトリウム、ブレーン1400cm
2/g
炭酸アルカリC:市販品、重炭酸ナトリウム、ブレーン800cm
2/g
炭酸アルカリD:市販品、炭酸リチウム、ブレーン1000cm
2/g
炭酸アルカリE:市販品、炭酸カリウム、ブレーン1200cm
2/g
【0102】
【表6】
【0103】
表6より炭酸アルカリの種類がいずれであっても、流動性低下時間が早く、凝結時間が遅延せず、圧縮強度も良好であった。また、より好ましい性状を示す炭酸アルカリの種類が存在することがわかる。
【0104】
「実験例6」
表7に示す種類のCaO/Al
2O
3モル比のカルシウムアルミネート類を使用した以外は全て実験例1と同様に試験を実施した。粉末状急結剤の組成は、実験No.1−5の配合となるように調製した。カルシウムアルミネート類のブレーンは全て5500±200cm
2/gに調製した。
モルタルに粉末状急結剤80gを加えて急結モルタルを調製したときからの流動性低下時間、凝結時間、圧縮強度を測定した。結果を表7に併記する。
【0105】
【表7】
【0106】
表7の結果から、カルシウムアルミネート類におけるモル比(CaO/Al
2O
3)が2.0〜3.0であると、流動性低下時間及び凝結時間が短く、圧縮強度も良好であった。
【0107】
「実験例7」
セメント360kg、水216kg、細骨材1049kg、粗骨材(新潟県姫川水系6号砕石、密度2.67g/cm
3)716kgのコンクリート(吹付けコンクリート)を調製した。MAYCO社(Suprema)のコンクリートポンプで5m
3/hの設定でコンクリートをポンプ圧送し、途中で別系統からの圧縮空気と混合合流させて空気搬送した。さらに、吐出前3m地点で下記表8に示す粉状急結剤を搬送装置Werner Mader社(WM−14 FU)でセメント100部に対して10部となるように、当該粉末状急結剤を空気搬送されたコンクリートと混合合流させて急結材料とし、ノズル先より鉄板に吹付けた。吹付けてからの初期強度、長期強度、リバウンド率、ひび割れ修復率を表8に示す。なお、急結剤搬送装置への急結剤の供給はSpiroflow社(FLEXIBLE SCREW CONVEYOR)の装置を用い、それぞれの装置は電気信号にて連動して制御されている。
【0108】
「比較例」
実験例7と同様のコンクリートに、一般急結剤であるデンカナトミックTYPE−5(急結剤No.T−5)をセメント100部に対して、10部(実験No.7−15)となるように空気搬送されたコンクリートと混合合流させて吹付けコンクリートとし、ノズル先より鉄板に吹付けた。また同様に、急結剤No.T−5をセメント100部に対して、7部(実験No.7−16)となるように空気搬送されたコンクリートと混合合流させて急結材料とし、ノズル先より鉄板に吹付けた。吹付けてからの初期強度、長期強度、リバウンド率、ひび割れ修復率を表8に示す。
【0109】
「試験方法」
初期強度:JSCE−G561に準じて型枠に吹付けて、材齢10分、3時間、1日時点での引き抜き強度より、圧縮強度に換算し、初期強度を測定した。
【0110】
長期強度:JSCE−F561、JIS A1107に準じて型枠に吹付けて、材齢7日、28日時点でコアを採取して、圧縮強度を測定した。
【0111】
リバウンド:JSCE−F563に準じて、掘削断面15m
2の模擬トンネルに3分間吹付けときのはね返りを測定し、使用した吹付けコンクリートからのリバウンド率を下記式から求めた。
【0112】
式) リバウンド率=落下した吹付けコンクリート量(kg)/吹付けに使用した吹付けコンクリート量(kg)×100(%)とした。
なお、リバウンド率は、20%以下であることが好ましい。
【0113】
ひび割れ修復率:10cm×10cm×40cmの型枠2個のそれぞれに吹付けコンクリートを吹付けて試験体を作製した。作製の直後より、2つの試験体の40cm面を並列にして隙間が0.1mmとなるように固定し、20℃で水中養生を6ヶ月間実施し、マイクロスコープで観察し、0.1mm幅の隙間に対する修復率を求めた。
なお、ひび割れ修復率は、50%以上であることが好ましい。
【0114】
【表8】
【0115】
表8より、実施例は、初期強度、長期強度、ひび割れ修復率が全て良好であった。比較例として、実験No.7−15や実験No.7−16のような通常の急結剤があるが、これらによるひび割れ修復率の改善傾向は少なかった。また、リバウンド率も一般的には20%以上であるが、比較例ではそれ以上のリバウンド率となるものが確認された。一方、実施例ではより好ましいリバウンド率を示す急結剤が存在することがわかる。
なお、実験No.7−3はひび割れ修復率が良好であるが、凝結時間が非常に遅く(表1参照)、本発明に係る粉末状急結剤としては実用的ではない。
【0116】
「実験例8」
実験例1と同様に、炭酸アルカリA、カルシウムアルミネート類、水酸化カルシウムα、ミョウバンa、珪酸ソーダを表9及び表10に示す配合で混合した粉末状急結剤を調製し、一方でセメント800g、細骨材2000g、水400gのモルタルを調製し、モルタルに粉末状急結剤80gを加えて急結モルタル(急結材料)を調製したときからの流動性低下時間、凝結時間、圧縮強度を測定した。結果を表9及び表10に併記する。
【0117】
なお、使用材料及び各種試験方法は下記のとおりである。
「使用材料」
セメント:普通ポルトランドセメントに高炉スラグ粉末を6:4の質量混合比率で混合したもの、密度3.04g/cm
3【0118】
また、セメント中に含まれる高炉スラグ粉末の質量混合比を表11に示すように変化させたセメントに対して、実験No.8−5に示した急結剤を加えて、上記と同様に流動性低下時間、凝結時間、圧縮強度を測定した。結果を表11に併記する。
【0119】
【表9】
【0120】
【表10】
【0121】
【表11】
【0122】
表9及び表10より、炭酸アルカリA、カルシウムアルミネート類、水酸化カルシウムα、ミョウバンaを含有する粉末急結剤は、高炉スラグ粉末を混合したセメントであっても、流動性低下時間が早く、凝結時間が遅延せず、圧縮強度も良好であった。
【0123】
また、表11より、セメント中に高炉スラグ粉末の質量混合比率を変化させても、当該急結剤は流動性低下時間、凝結時間、圧縮強度共に良好であった。
【0124】
<第2の本発明に対する実施例>
「実験例1」
炭酸アルカリA、カルシウムアルミネート類、水酸化カルシウム、ミョウバンa、ケイ酸ソーダ、アルカリ金属硫酸塩イを表1及び表2に示す配合で混合した粉末状急結剤を調製し、一方でセメント800g、細骨材2000g、水400gのモルタルを調製し、モルタルに粉末状急結剤80gを加えて急結モルタル(急結材料)を調製したときからの流動性低下時間、凝結時間、圧縮強度を測定した。結果を表12及び表13に併記する。
【0125】
なお、使用材料及び各種試験方法は下記のとおりである。
「使用材料」
セメント:市販品、普通ポルトランドセメント、密度3.15g/cm
3
細骨材:新潟県姫川水系川砂、密度2.61g/cm
3
水:工業用水
炭酸アルカリA:市販品、炭酸ナトリウム、ブレーン1200cm
2/g
カルシウムアルミネート類:CaO/Al
2O
3モル比2.5となるように原料を粉砕混合し、電気炉で溶融し、急冷したもの、ガラス化率90%、ブレーン5500cm
2/g
水酸化カルシウム:JIS R 9001に規定された消石灰2号に相当する市販品
ミョウバンa:カリウムミョウバン12水和物、市販品、ブレーン600cm
2/g
ケイ酸ソーダ:SiO
2/Na
2Oモル比1.0、ブレーン600cm
2/g、市販品、無水塩
アルカリ金属硫酸塩イ:硫酸ナトリウム、ブレーン500cm
2/g、市販品、無水塩
【0126】
「試験方法」
流動性低下時間:調製したモルタルに粉末状急結剤を加えて、モルタルミキサーの高速モードで10秒間練り混ぜ後、モルタルの流動性が低下した時間を指触で測定した。
なお、指触により添加直後から明らかに指が貫入できなくなった状態を、流動性が低下した状態とした。
【0127】
凝結時間:調製したモルタルに粉末状急結剤を加えてから、素早くプロクター試験専用型枠へ型詰めし、粉末状急結剤を加えてからの凝結の始発時間、終結時間を測定した(ASTM C403に準じて測定)。
【0128】
圧縮強度:凝結時間と同様に急結モルタルを調製したときからの圧縮強度(N/mm
2)を測定した。材齢は3時間、1日、28日とした(JSCE D102に準じて測定)。
【0129】
【表12】
【0130】
【表13】
【0131】
表12及び表13より、カルシウムアルミネート類、ケイ酸ソーダ、及びアルカリ金属硫酸塩を含有し、好ましくはこれらに水酸化カルシウム、ミョウバン、炭酸アルカリを含有することで、流動性低下時間が早く、凝結時間が遅延せず、圧縮強度も良好であった。特に、アルカリ金属硫酸塩は、併用することでさらなる短時間強度の向上が認められた。なお、それぞれの含有量には適正値があることがわかる。
【0132】
「実験例2」
表14に示すように、ケイ酸ソーダのSiO
2/Na
2Oモル比が異なるものを使用した以外は全て実験例1と同様にして試験を実施した。粉末状急結剤の組成は、実験No.1−5の配合となるように調製した。
モルタルに粉末状急結剤80gを加えて急結モルタルを調製したときからの流動性低下時間、凝結時間、圧縮強度を測定した。結果を下記表14に併記する。
【0133】
【表14】
【0134】
表14よりカルシウムアルミネート類及びケイ酸ソーダを含有することで流動性低下時間が早く、凝結時間が遅延せず、圧縮強度も良好であった。また、より好ましい性状を示す珪酸ソーダのSiO
2/Na
2Oモル比の範囲が存在することがわかる。
【0135】
「実験例3」
表15に示す種類のケイ酸ソーダの水和物を使用した以外は全て実験例1と同様にして試験を実施した。粉末状急結剤の組成は、実験No.1−5の配合となるように調製した。
モルタルに粉末状急結剤80gを加えて急結モルタルを調製したときからの流動性低下時間、凝結時間、圧縮強度を測定した。結果を表15に併記する。
【0136】
【表15】
【0137】
表15よりケイ酸ソーダの水和物の種類がいずれであっても、粉末状急結剤として有効であることが考えられる。
【0138】
「実験例4」
(実験例4−1)
アルカリ金属硫酸塩アを使用した以外は全て実験例1と同様にして試験を実施した。粉末状急結剤の組成は、実験No.1−5の配合となるように調製した。モルタルに粉末状急結剤80gを加えて急結モルタルを調製したときからの流動性低下時間、凝結時間、圧縮強度を測定した。結果を表16−1に併記する。
【0139】
「使用材料」
アルカリ金属硫酸塩ア:硫酸リチウム、市販品、ブレーン500cm
2/g
【0140】
【表16】
【0141】
表16−1に示すように、リチウムの硫酸塩を用いても、流動性低下時間が早く、凝結時間が遅延せず、圧縮強度も良好であった。
【0142】
(実験例4−2)
アルカリ金属硫酸塩イの配合を下記表5−2のように変更した以外は全て実験例1と同様にして試験を実施した。アルカリ金属硫酸塩イの配合以外の粉末状急結剤の組成は、No.1−5の配合となるように調製した。結果を表16−2に併記する。
【0143】
【表17】
【0144】
表16−2に示すように、アルカリ金属硫酸塩の配合量が3〜25であることで、流動性低下や凝結時間が変わらず、材齢1日が安定的に得られることが確認された。
【0145】
「実験例5」
表17に示す種類のミョウバンを使用した以外は全て実験例1と同様にして試験を実施した。粉末状急結剤の組成は、実験No.1−5の配合となるように調製した。
モルタルに粉末状急結剤80gを加えて急結モルタルを調製したときからの流動性低下時間、凝結時間、圧縮強度を測定した。結果を表17に併記する。
【0146】
「使用材料」
ミョウバンa:カリウムミョウバン12水和物、市販品、ブレーン600cm
2/g
ミョウバンb:硫酸ナトリウムアルミニウム12水和物、市販品、ブレーン700cm
2/g
ミョウバンc:アンモニウムミョウバン12水和物、市販品、ブレーン600cm
2/g
ミョウバンd:鉄ミョウバン12水和物、市販品、ブレーン600cm
2/g
ミョウバンe:クロムミョウバン12水和物、市販物、ブレーン600cm
2/g
ミョウバンf:カリウムミョウバン無水和物、市販品、ブレーン600cm
2/g
ミョウバンg:アンモニウムミョウバン無水和物、市販品、ブレーン700cm
2/g
ミョウバンh:鉄ミョウバン1水和物、市販品、ブレーン600cm
2/g
ミョウバンi:鉄ミョウバン無水和物、市販品、ブレーン700cm
2/g
【0147】
【表18】
【0148】
表17よりミョウバンの種類がいずれであっても、流動性低下時間が早く、凝結時間が遅延せず、圧縮強度も良好であった。また、より好ましい性状を示すミョウバンの種類が存在することがわかる。
【0149】
「実験例6」
表18に示す種類の炭酸アルカリを使用した以外は全て実験例1と同様にして試験を実施した。粉末状急結剤の組成は、実験No.1−5の配合となるように調製した。
モルタルに粉末状急結剤80gを加えて急結モルタルを調製したときからの流動性低下時間、凝結時間、圧縮強度を測定した。結果を表7に併記する。
【0150】
「使用材料」
炭酸アルカリA:市販品、炭酸ナトリウム、ブレーン1200cm
2/g
炭酸アルカリB:市販品、セスキ炭酸ナトリウム、ブレーン1400cm
2/g
炭酸アルカリC:市販品、重炭酸ナトリウム、ブレーン800cm
2/g
炭酸アルカリD:市販品、炭酸リチウム、ブレーン1000cm
2/g
炭酸アルカリE:市販品、炭酸カリウム、ブレーン1200cm
2/g
【0151】
【表19】
【0152】
表18より炭酸アルカリの種類がいずれであっても、流動性低下時間が早く、凝結時間が遅延せず、圧縮強度も良好であった。また、より好ましい性状を示す炭酸アルカリの種類が存在することがわかる。
【0153】
「実験例7」
表19に示す種類のCaO/Al
2O
3モル比のカルシウムアルミネート類を使用した以外は全て実験例1と同様に試験を実施した。粉末状急結剤の組成は、実験No.1−5の配合となるように調製した。カルシウムアルミネート類のブレーンは全て5500±200cm
2/gに調製した。
モルタルに粉末状急結剤80gを加えて急結モルタルを調製したときからの流動性低下時間、凝結時間、圧縮強度を測定した。結果を表19に併記する。
【0154】
【表20】
【0155】
表19の結果から、カルシウムアルミネート類におけるモル比(CaO/Al
2O
3)が2.0〜3.0であると、流動性低下時間及び凝結時間が短く、圧縮強度も良好であった。
【0156】
「実験例8」
セメント360kg、水216kg、細骨材1049kg、粗骨材(新潟県姫川水系6号砕石、密度2.67g/cm
3)716kgのコンクリートを調製した。シンテック社MKW−25SMTのコンクリートポンプで10m
3/hの設定でコンクリートをポンプ圧送し、途中で別系統からの圧縮空気と混合合流させて空気搬送した。さらに、吐出前3m地点で下記表20に示す粉状急結剤を搬送装置デンカNATMクリートでセメント100部に対して10部となるように、当該粉末状急結剤を空気搬送されたコンクリートと混合合流させて吹付けコンクリートとし、ノズル先より鉄板に吹付けた。吹付けてからの初期強度、長期強度、リバウンド率、ひび割れ修復率を表20に示す。
【0157】
また、実験例8と同様のコンクリートに、一般急結剤であるデンカナトミックTYPE−5(急結剤No.T−5、主成分がカルシウムアルミネート類であり、アルカリ金属珪酸塩やアルカリ金属硫酸塩は含まない)をセメント100部に対して、10部(実験No.8−15)となるように空気搬送されたコンクリートと混合合流させて吹付けコンクリートとし、ノズル先より鉄板に吹付けた。また同様に、急結剤No.T−5をセメント100部に対して、7部(実験No.8−16)となるように空気搬送されたコンクリートと混合合流させて吹付けコンクリートとし、ノズル先より鉄板に吹付けた。吹付けてからの初期強度、長期強度、リバウンド率、ひび割れ修復率を表20に示す。
【0158】
「試験方法」
初期強度:JSCE−G561に準じて型枠に吹付けて、材齢10分、3時間、1日時点での引き抜き強度より、圧縮強度に換算し、初期強度を測定した。
【0159】
長期強度:JSCE−F561、JIS A1107に準じて型枠に吹付けて、材齢7日、28日時点でコアを採取して、圧縮強度を測定した。
【0160】
リバウンド:JSCE−F563に準じて、掘削断面15m
2の模擬トンネルに3分間吹付けときのはね返りを測定し、使用した吹付けコンクリートからのリバウンド率を下記式から求めた。
【0161】
式) リバウンド率=落下した吹付けコンクリート量(kg)/吹付けに使用した吹付けコンクリート量(kg)×100(%)とした。
なお、リバウンド率は、20%以下であることが好ましい。
【0162】
ひび割れ修復率:10cm×10cm×40cmの型枠2個のそれぞれに吹付けコンクリートを吹付けて試験体を作製した。作製の直後より、2つの試験体の40cm面を並列にして隙間が0.1mmとなるように固定し、20℃で水中養生を6ヶ月間実施し、マイクロスコープで観察し、0.1mm幅の隙間に対する修復率を求めた。
なお、ひび割れ修復率は、50%以上であることが好ましい。
【0163】
【表21】
【0164】
表20より、実施例は、初期強度、長期強度、ひび割れ修復率が全て良好であった。比較例として、実験No.8−15や実験No.8−16のような通常の急結剤があるが、これらによるひび割れ修復率の改善傾向は少なかった。また、リバウンド率も一般的には20%以上であるが、比較例ではそれ以上のリバウンド率となるものが確認された。一方、実施例ではより好ましいリバウンド率を示す急結剤が存在することがわかる。
なお、実験No.8−3はひび割れ修復率が良好であるが、凝結時間が非常に遅く(表12参照)、本発明に係る粉末状急結剤としては実用的ではない。
【0165】
<第3の本発明に対する実施例>
「実験例1」
炭酸アルカリA、カルシウムアルミネート類、水酸化カルシウム、ミョウバンa、ケイ酸ソーダ、アルカリ土類金属硫酸塩イを表1及び表2に示す配合で混合した粉末状急結剤を調製し、一方でセメント800g、細骨材2000g、水400gのモルタルを調製し、モルタルに粉末状急結剤80gを加えて急結モルタル(急結材料)を調製したときからの流動性低下時間、凝結時間、圧縮強度を測定した。結果を表21及び表22に併記する。
【0166】
なお、使用材料及び各種試験方法は下記のとおりである。
「使用材料」
セメント:市販品、普通ポルトランドセメント、密度3.15g/cm
3
細骨材:新潟県姫川水系川砂、密度2.61g/cm
3
水:工業用水
炭酸アルカリA:市販品、炭酸ナトリウム、ブレーン1200cm
2/g
カルシウムアルミネート類:CaO/Al
2O
3モル比2.5となるように原料を粉砕混合し、電気炉で溶融し、急冷したもの、ガラス化率90%、ブレーン5500cm
2/g
水酸化カルシウム:JIS R 9001に規定された消石灰2号に相当する市販品
ミョウバンa:カリウムミョウバン12水和物、市販品、ブレーン600cm
2/g
ケイ酸ソーダ:SiO
2/Na
2Oモル比1.0、ブレーン600cm
2/g、市販品、無水塩
アルカリ土類金属硫酸塩ア:天然無水セッコウ、ブレーン4500cm
2/g、粉砕品
【0167】
「試験方法」
流動性低下時間:調製したモルタルに粉末状急結剤を加えてから、モルタルミキサーの高速モードで10秒間練混ぜ後、モルタルの流動性が低下した時間を指触で測定した。
なお、指触により急結剤混合したモルタルの練りあがりに比べて、指で貫入できなくなった状態を、流動性が低下した状態とした。
【0168】
凝結時間:調製したモルタルに粉末状急結剤を加えてから、素早くプロクター試験専用型枠へ型詰めし、粉末状急結剤を加えてからの凝結の始発時間、終結時間を測定した(ASTM C403に準じて測定)。
【0169】
圧縮強度:凝結時間と同様に急結モルタルを調製したときからの圧縮強度(N/mm
2)を測定した。材齢は3時間、1日、28日とした(JSCE D102に準じて測定)。
なお、実験例1〜8では試験温度を25℃とし、実験例9では試験温度を35℃とした。
【0170】
【表22】
【0171】
【表23】
【0172】
表21及び表22より、カルシウムアルミネート類、ケイ酸ソーダ、及びアルカリ土類金属硫酸塩を含有し、好ましくはこれらに水酸化カルシウム、ミョウバン、炭酸アルカリを含有することで、流動性低下時間が早く、凝結時間が遅延せず、圧縮強度も良好であった。特に、アルカリ土類金属硫酸塩は、併用することでさらなる短時間および長期の圧縮強度の向上が認められた。なお、それぞれの含有量には適正値があることがわかる。
【0173】
「実験例2」
表23に示すように、ケイ酸ソーダのSiO
2/Na
2Oモル比が異なるものを使用した以外は全て実験例1と同様にして試験を実施した。粉末状急結剤の組成は、実験No.1−5の配合となるように調製した。
モルタルに粉末状急結剤80gを加えて急結モルタルを調製したときからの流動性低下時間、凝結時間、圧縮強度を測定した。結果を下記表23に併記する。
【0174】
【表24】
【0175】
表23よりカルシウムアルミネート類、ケイ酸ソーダ、及びアルカリ土類金属硫酸塩を含有することで流動性低下時間が早く、凝結時間が遅延せず、圧縮強度も良好であった。また、より好ましい性状を示す珪酸ソーダのSiO
2/Na
2Oモル比の範囲が存在することがわかる。
【0176】
「実験例3」
表24に示す種類のケイ酸ソーダの水和物を使用した以外は全て実験例1と同様にして試験を実施した。粉末状急結剤の組成は、実験No.1−5の配合となるように調製した。
モルタルに粉末状急結剤80gを加えて急結モルタルを調製したときからの流動性低下時間、凝結時間、圧縮強度を測定した。結果を表24に併記する。
【0177】
【表25】
【0178】
表24よりケイ酸ソーダの水和物の種類がいずれであっても、粉末状急結剤として有効であることが考えられる。
【0179】
「実験例4」
(実験例4−1)
アルカリ土類金属硫酸塩イを使用した以外は全て実験例1と同様にして試験を実施した。粉末状急結剤の組成は、実験No.1−5の配合となるように調製した。
モルタルに粉末状急結剤80gを加えて急結モルタルを調製したときからの流動性低下時間、凝結時間、圧縮強度を測定した。結果を表25−1に併記する。
【0180】
「使用材料」
アルカリ土類金属硫酸塩イ:硫酸マグネシウム、市販品、ブレーン1500cm
2/g
【0181】
【表26】
【0182】
表25−1に示すように、マグネシウムの硫酸塩を用いても、流動性低下時間が早く、凝結時間が遅延せず、圧縮強度も良好であった。
【0183】
(実験例4−2)
アルカリ土類金属硫酸塩アの配合を下記表25−2のように変更した以外は全て実験例1と同様にして試験を実施した。アルカリ土類金属硫酸塩アの配合以外の粉末状急結剤の組成は、No.1−5の配合となるように調製した。結果を表25−2に併記する。
【0184】
【表27】
【0185】
表25−2に示すように、アルカリ土類金属硫酸塩の配合量が、特に20〜60部であることで、流動性や凝結時間が損なわれること無く、材齢28日の圧縮強度が増加されることを確認した。
【0186】
「実験例5」
表26に示す種類のミョウバンを使用した以外は全て実験例1と同様にして試験を実施した。粉末状急結剤の組成は、実験No.1−5の配合となるように調製した。
モルタルに粉末状急結剤80gを加えて急結モルタルを調製したときからの流動性低下時間、凝結時間、圧縮強度を測定した。結果を表26に併記する。
【0187】
「使用材料」
ミョウバンa:カリウムミョウバン12水和物、市販品、ブレーン600cm
2/g
ミョウバンb:硫酸ナトリウムアルミニウム12水和物、市販品、ブレーン700cm
2/g
ミョウバンc:アンモニウムミョウバン12水和物、市販品、ブレーン600cm
2/g
ミョウバンd:鉄ミョウバン12水和物、市販品、ブレーン600cm
2/g
ミョウバンe:クロムミョウバン12水和物、市販物、ブレーン600cm
2/g
ミョウバンf:カリウムミョウバン無水和物、市販品、ブレーン600cm
2/g
ミョウバンg:アンモニウムミョウバン無水和物、市販品、ブレーン700cm
2/g
ミョウバンh:鉄ミョウバン1水和物、市販品、ブレーン600cm
2/g
ミョウバンi:鉄ミョウバン無水和物、市販品、ブレーン700cm
2/g
【0188】
【表28】
【0189】
表26よりミョウバンの種類がいずれであっても、流動性低下時間が早く、凝結時間が遅延せず、圧縮強度も良好であった。また、より好ましい性状を示すミョウバンの種類が存在することがわかる。
【0190】
「実験例6」
表27に示す種類の炭酸アルカリを使用した以外は全て実験例1と同様にして試験を実施した。粉末状急結剤の組成は、実験No.1−5の配合となるように調製した。
モルタルに粉末状急結剤80gを加えて急結モルタルを調製したときからの流動性低下時間、凝結時間、圧縮強度を測定した。結果を表27に併記する。
【0191】
「使用材料」
炭酸アルカリA:市販品、炭酸ナトリウム、ブレーン1200cm
2/g
炭酸アルカリB:市販品、セスキ炭酸ナトリウム、ブレーン1400cm
2/g
炭酸アルカリC:市販品、重炭酸ナトリウム、ブレーン800cm
2/g
炭酸アルカリD:市販品、炭酸リチウム、ブレーン1000cm
2/g
炭酸アルカリE:市販品、炭酸カリウム、ブレーン1200cm
2/g
【0192】
【表29】
【0193】
表27より炭酸アルカリの種類がいずれであっても、流動性低下時間が早く、凝結時間が遅延せず、圧縮強度も良好であった。また、より好ましい性状を示す炭酸アルカリの種類が存在することがわかる。
【0194】
「実験例7」
表28に示す種類のCaO/Al
2O
3モル比のカルシウムアルミネート類を使用した以外は全て実験例1と同様に試験を実施した。粉末状急結剤の組成は、実験No.1−5の配合となるように調製した。カルシウムアルミネート類のブレーンは全て5500±200cm
2/gに調製した。
モルタルに粉末状急結剤80gを加えて急結モルタルを調製したときからの流動性低下時間、凝結時間、圧縮強度を測定した。結果を表28に併記する。
【0195】
【表30】
【0196】
表28の結果から、カルシウムアルミネート類におけるモル比(CaO/Al
2O
3)が2.0〜3.0であると、流動性低下時間及び凝結時間が短く、圧縮強度も良好であった。
【0197】
「実験例8」
セメント360kg、水216kg、細骨材1049kg、粗骨材(新潟県姫川水系6号砕石、密度2.67g/cm
3)716kgのコンクリートを調製した。シンテック社MKW−25SMTのコンクリートポンプで10m
3/hの設定でコンクリートをポンプ圧送し、途中で別系統からの圧縮空気と混合合流させて空気搬送した。さらに、吐出前3m地点で下記表29に示す粉状急結剤を搬送装置デンカNATMクリートでセメント100部に対して10部となるように、当該粉末状急結剤を空気搬送されたコンクリートと混合合流させて吹付けコンクリートとし、ノズル先より鉄板に吹付けた。吹付けてからの初期強度、長期強度、リバウンド率、ひび割れ修復率を表29に示す。
【0198】
また、実験例8と同様のコンクリートに、一般急結剤であるデンカナトミックTYPE−5(急結剤No.T−5、主成分がカルシウムアルミネート類であり、アルカリ珪酸塩類は含まない)をセメント100部に対して、10部(実験No.8−15)となるように空気搬送されたコンクリートと混合合流させて吹付けコンクリートとし、ノズル先より鉄板に吹付けた。また同様に、急結剤No.T−5をセメント100部に対して、7部(実験No.8−16)となるように空気搬送されたコンクリートと混合合流させて吹付けコンクリートとし、ノズル先より鉄板に吹付けた。吹付けてからの初期強度、長期強度、リバウンド率、ひび割れ修復率を表29に示す。
【0199】
「試験方法」
初期強度:JSCE−G561に準じて型枠に吹付けて、材齢10分、3時間、1日時点での引き抜き強度より、圧縮強度に換算し、初期強度を測定した。
【0200】
長期強度:JSCE−F561、JIS A1107に準じて型枠に吹付けて、材齢7日、28日時点でコアを採取して、圧縮強度を測定した。
【0201】
リバウンド:JSCE−F563に準じて、掘削断面15m
2の模擬トンネルに3分間吹付けときのはね返りを測定し、使用した吹付けコンクリートからのリバウンド率を下記式から求めた。
【0202】
式) リバウンド率=落下した吹付けコンクリート量(kg)/吹付けに使用した吹付けコンクリート量(kg)×100(%)とした。
なお、リバウンド率は、20%以下であることが好ましい。
【0203】
ひび割れ修復率:10cm×10cm×40cmの型枠2個のそれぞれに吹付けコンクリートを吹付けて試験体を作製した。作製の直後より、2つの試験体の40cm面を並列にして隙間が0.1mmとなるように固定し、20℃で水中養生を6ヶ月間実施し、マイクロスコープで観察し、0.1mm幅の隙間に対する修復率を求めた。
なお、ひび割れ修復率は、50%以上であることが好ましい。
【0204】
【表31】
【0205】
表29より、実施例は、初期強度、長期強度、ひび割れ修復率が全て良好であった。比較例として、実験No.9−15や実験No.9−16のような通常の急結剤があるが、これらによるひび割れ修復率の改善傾向は少なかった。また、リバウンド率も一般的には20%以上であるが、比較例ではそれ以上のリバウンド率となるものが確認された。一方、実施例ではより好ましいリバウンド率を示す急結剤が存在することがわかる。
なお、実験No.9−3はひび割れ修復率が良好であるが、凝結時間が非常に遅く(表21参照)、本発明に係る粉末状急結剤としては実用的ではない。
【0206】
「実験例9」
実験No.1−30において、試験温度を25℃から35℃に変更した以外は実験例1と同様に試験を実施した(実験No.10−1)。
また、実験No.1−37において、試験温度を25℃から35℃に変更した以外は実験例1と同様に試験を実施した(実験No.10−2)。
結果を下記表30に示す。
【0207】
【表32】
【0208】
表30より、実験No.10−1は、高温においても初期強度、長期強度、ひび割れ修復率が全て良好であった。これは、硫酸カルシウムの補填によるエトリンガイト生成量の増加によると推察される。
【0209】
<第4の本発明に対する実施例>
「実験例1」
炭酸アルカリA、カルシウムアルミネート類、水酸化カルシウム、ミョウバンa、ケイ酸ソーダ、硫酸アルミニウム(1)を表1及び表2に示す配合で混合した粉末状急結剤を調製し、一方でセメント800g、細骨材2000g、水400gのモルタルを調製し、モルタルに粉末状急結剤80gを加えて急結モルタル(急結材料)を調製したときからの流動性低下時間、凝結時間、圧縮強度を測定した。結果を表31及び表32に併記する。
【0210】
なお、使用材料及び各種試験方法は下記のとおりである。
「使用材料」
セメント:市販品、普通ポルトランドセメント、密度3.15g/cm
3
細骨材:新潟県姫川水系川砂、密度2.61g/cm
3
水:工業用水
炭酸アルカリA:市販品、炭酸ナトリウム、ブレーン1200cm
2/g
カルシウムアルミネート類:CaO/Al
2O
3モル比2.5となるように原料を粉砕混合し、電気炉で溶融し、急冷したもの、ガラス化率90%、ブレーン5500cm
2/g
水酸化カルシウム:JIS R 9001に規定された消石灰2号に相当する市販品
ミョウバンa:カリウムミョウバン12水和物、市販品、ブレーン600cm
2/g
ケイ酸ソーダ:SiO
2/Na
2Oモル比1.0、ブレーン600cm
2/g、市販品、無水塩
硫酸アルミニウム(1):硫酸アルミニウム、市販品、14〜18水塩、篩い目1.2mmを98%通過したもの
【0211】
「試験方法」
流動性低下時間:調製したモルタルに粉末状急結剤を加えてから、モルタルミキサーの高速モードで10秒間練混ぜ後、モルタルの流動性が低下した時間を指触で測定した。
なお、指触により急結剤を混合したモルタルの練りあがりに比べて、指で貫入できなくなった状態を、流動性が低下した状態とした。
【0212】
凝結時間:調製したモルタルに粉末状急結剤を加えてから、素早くプロクター試験専用型枠へ型詰めし、粉末状急結剤を加えてからの凝結の始発時間、終結時間を測定した(ASTM C403に準じて測定)。
【0213】
圧縮強度:凝結時間と同様に急結モルタルを調製したときからの圧縮強度(N/mm
2)を測定した。材齢は3時間、1日、28日とした(JSCE D102に準じて測定)。
【0214】
【表33】
【0215】
【表34】
【0216】
表31及び表32より、カルシウムアルミネート類、ケイ酸ソーダ、及び硫酸アルミニウムを含有し、好ましくはこれらに水酸化カルシウム、ミョウバン、炭酸アルカリを含有することで、流動性低下時間が早く、凝結時間が遅延せず、圧縮強度も良好であった。特に、硫酸アルミニウムは、併用することで凝結における終結時間を短縮させ、短時間強度の向上が認められた。なお、それぞれの含有量には適正値があることがわかる。
【0217】
「実験例2」
表33に示すように、ケイ酸ソーダのSiO
2/Na
2Oモル比が異なるものを使用した以外は全て実験例1と同様にして試験を実施した。粉末状急結剤の組成は、実験No.1−5の配合となるように調製した。
モルタルに粉末状急結剤80gを加えて急結モルタルを調製したときからの流動性低下時間、凝結時間、圧縮強度を測定した。結果を下記表33に併記する。
【0218】
【表35】
【0219】
表33よりカルシウムアルミネート類及び珪酸ソーダを含有することで流動性低下時間が早く、凝結時間が遅延せず、圧縮強度も良好であった。また、より好ましい性状を示す珪酸ソーダのSiO
2/Na
2Oモル比の範囲が存在することがわかる。
【0220】
「実験例3」
表34に示す種類のケイ酸ソーダの水和物を使用した以外は全て実験例1と同様にして試験を実施した。粉末状急結剤の組成は、実験No.1−5の配合となるように調製した。
モルタルに粉末状急結剤80gを加えて急結モルタルを調製したときからの流動性低下時間、凝結時間、圧縮強度を測定した。結果を表34に併記する。
【0221】
【表36】
【0222】
表34よりケイ酸ソーダの水和物の種類がいずれであっても、粉末状急結剤として有効であることが考えられる。
【0223】
「実験例4」
(実験例4−1)
硫酸アルミニウム(1)の代わりに、硫酸アルミニウム(2)又は(3)を使用した以外は全て実験例1と同様にして試験を実施した。粉末状急結剤の組成は、実験No.1−5の配合となるように調製した。
モルタルに粉末状急結剤80gを加えて急結モルタルを調製したときからの流動性低下時間、凝結時間、圧縮強度を測定した。結果を表35−1に併記する。
【0224】
「使用材料」
硫酸アルミニウム(2):硫酸アルミニウム、8水塩、篩い目1.2mmを99%通過したもの
硫酸アルミニウム(3):硫酸アルミニウム、無水塩、篩い目1.2mmを99%通過したもの
【0225】
【表37】
【0226】
表35−1に示すように、各水和数の硫酸アルミニウムを用いても、流動性低下時間が早く、凝結時間が遅延せず、圧縮強度も良好であった。
【0227】
(実験例4−2)
硫酸アルミニウム(1)の配合を下記表35−2のように変更した以外は全て実験例1と同様にして試験を実施した。硫酸アルミニウム(1)の配合以外の粉末状急結剤の組成は、No.1−5の配合となるように調製した。結果を表35−2に併記する。
【0228】
【表38】
【0229】
表35−2に示すように、硫酸アルミニウム(1)の配合量が5〜25部であることで、流動性低下時間も早く、凝結や圧縮強度も変化が少ないことを確認した。
【0230】
「実験例5」
表36に示す種類のミョウバンを使用した以外は全て実験例1と同様にして試験を実施した。粉末状急結剤の組成は、実験No.1−5の配合となるように調製した。
モルタルに粉末状急結剤80gを加えて急結モルタルを調製したときからの流動性低下時間、凝結時間、圧縮強度を測定した。結果を表36に併記する。
【0231】
「使用材料」
ミョウバンa:カリウムミョウバン12水和物、市販品、ブレーン600cm
2/g
ミョウバンb:硫酸ナトリウムアルミニウム12水和物、市販品、ブレーン700cm
2/g
ミョウバンc:アンモニウムミョウバン12水和物、市販品、ブレーン600cm
2/g
ミョウバンd:鉄ミョウバン12水和物、市販品、ブレーン600cm
2/g
ミョウバンe:クロムミョウバン12水和物、市販物、ブレーン600cm
2/g
ミョウバンf:カリウムミョウバン無水和物、市販品、ブレーン600cm
2/g
ミョウバンg:アンモニウムミョウバン無水和物、市販品、ブレーン700cm
2/g
ミョウバンh:鉄ミョウバン1水和物、市販品、ブレーン600cm
2/g
ミョウバンi:鉄ミョウバン無水和物、市販品、ブレーン700cm
2/g
【0232】
【表39】
【0233】
表36よりミョウバンの種類がいずれであっても、流動性低下時間が早く、凝結時間が遅延せず、圧縮強度も良好であった。また、より好ましい性状を示すミョウバンの種類が存在することがわかる。
【0234】
「実験例6」
表37に示す種類の炭酸アルカリを使用した以外は全て実験例1と同様にして試験を実施した。粉末状急結剤の組成は、実験No.1−5の配合となるように調製した。
モルタルに粉末状急結剤80gを加えて急結モルタルを調製したときからの流動性低下時間、凝結時間、圧縮強度を測定した。結果を表37に併記する。
【0235】
「使用材料」
炭酸アルカリA:市販品、炭酸ナトリウム、ブレーン1200cm
2/g
炭酸アルカリB:市販品、セスキ炭酸ナトリウム、ブレーン1400cm
2/g
炭酸アルカリC:市販品、重炭酸ナトリウム、ブレーン800cm
2/g
炭酸アルカリD:市販品、炭酸リチウム、ブレーン1000cm
2/g
炭酸アルカリE:市販品、炭酸カリウム、ブレーン1200cm
2/g
【0236】
【表40】
【0237】
表37より炭酸アルカリの種類がいずれであっても、流動性低下時間が早く、凝結時間が遅延せず、圧縮強度も良好であった。また、より好ましい性状を示す炭酸アルカリの種類が存在することがわかる。
【0238】
「実験例7」
表38に示す種類のCaO/Al
2O
3モル比のカルシウムアルミネート類を使用した以外は全て実験例1と同様に試験を実施した。粉末状急結剤の組成は、実験No.1−5の配合となるように調製した。カルシウムアルミネート類のブレーンは全て5500±200cm
2/gに調製した。
モルタルに粉末状急結剤80gを加えて急結モルタルを調製したときからの流動性低下時間、凝結時間、圧縮強度を測定した。結果を表38に併記する。
【0239】
【表41】
【0240】
表38の結果から、カルシウムアルミネート類におけるモル比(CaO/Al
2O
3)が2.0〜3.0であると、流動性低下時間及び凝結時間が短く、圧縮強度も良好であった。
【0241】
「実験例8」
セメント360kg、水216kg、細骨材1049kg、粗骨材(新潟県姫川水系6号砕石、密度2.67g/cm
3)716kgのコンクリートを調製した。シンテック社MKW−25SMTのコンクリートポンプで10m
3/hの設定でコンクリートをポンプ圧送し、途中で別系統からの圧縮空気と混合合流させて空気搬送した。さらに、吐出前3m地点で下記表39に示す粉状急結剤を搬送装置デンカNATMクリートでセメント100部に対して10部となるように、当該粉末状急結剤を空気搬送されたコンクリートと混合合流させて吹付けコンクリートとし、ノズル先より鉄板に吹付けた。吹付けてからの初期強度、長期強度、リバウンド率、ひび割れ修復率を表39に示す。
【0242】
実験例8と同様のコンクリートに、一般急結剤であるデンカナトミックTYPE−5(急結剤No.T−5、主成分がカルシウムアルミネート類であり、アルカリ珪酸塩類は含まない)をセメント100部に対して、10部(実験No.8−15)となるように空気搬送されたコンクリートと混合合流させて吹付けコンクリートとし、ノズル先より鉄板に吹付けた。また同様に、急結剤No.T−5をセメント100部に対して、7部(実験No.8−16)となるように空気搬送されたコンクリートと混合合流させて吹付けコンクリートとし、ノズル先より鉄板に吹付けた。吹付けてからの初期強度、長期強度、リバウンド率、ひび割れ修復率を表39に示す。
【0243】
「試験方法」
初期強度:JSCE−G561に準じて型枠に吹付けて、材齢10分、3時間、1日時点での引き抜き強度より、圧縮強度に換算し、初期強度を測定した。
【0244】
長期強度:JSCE−F561、JIS A1107に準じて型枠に吹付けて、材齢7日、28日時点でコアを採取して、圧縮強度を測定した。
【0245】
リバウンド:JSCE−F563に準じて、掘削断面15m
2の模擬トンネルに3分間吹付けときのはね返りを測定し、使用した吹付けコンクリートからのリバウンド率を下記式から求めた。なお、試験温度は25℃とした。
【0246】
式) リバウンド率=落下した吹付けコンクリート量(kg)/吹付けに使用した吹付けコンクリート量(kg)×100(%)とした。
なお、リバウンド率は、20%以下であることが好ましい。
【0247】
ひび割れ修復率:10cm×10cm×40cmの型枠2個のそれぞれに吹付けコンクリートを吹付けて試験体を作製した。作製の直後より、2つの試験体の40cm面を並列にして隙間が0.1mmとなるように固定し、20℃で水中養生を6ヶ月間実施し、マイクロスコープで観察し、0.1mm幅の隙間に対する修復率を求めた。
なお、ひび割れ修復率は、50%以上であることが好ましい。
【0248】
【表42】
【0249】
表39より、実施例は、初期強度、長期強度、ひび割れ修復率が全て良好であった。比較例として、実験No.8−15や実験No.8−16のような通常の急結剤があるが、これらによるひび割れ修復率の改善傾向は少なかった。また、リバウンド率も一般的には20%以上であるが、比較例ではそれ以上のリバウンド率となるものが確認された。一方、実施例ではより好ましいリバウンド率を示す急結剤が存在することがわかる。
なお、実験No.8−3はひび割れ修復率が良好であるが、凝結時間が非常に遅く(表31参照)、本発明に係る粉末状急結剤としては実用的ではない。
【0250】
「実験例9」
実験No.1−30において、試験温度を25℃から35℃に変更した以外は実験例1と同様に試験を実施した(実験No.9−1)。
また、実験No.1−37において、試験温度を25℃から35℃に変更した以外は実験例1と同様に試験を実施した(実験No.9−2)。
結果を下記表40に示す。
【0251】
【表43】
【0252】
表40より、実験No.9−1は、高温においてもリバウンド、初期強度、長期強度、ひび割れ修復率が全て良好であった。