(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述した中心コア及び外周コアを有するマルチコア光ファイバでは、中心コアは、光ファイバの中心軸に沿って形成され、外周コアは中心コアに対して螺旋状に巻回されて形成されるため、外周コアの構造上の長さは中心コアの構造上の長さよりも長くなる。このため、このようなマルチコア光ファイバを光ファイバセンサとして用いると、マルチコア光ファイバの特定の位置を測定する場合であっても、中心コアと外周コアとでマルチコア光ファイバの端部からこの特定の位置までの光路長に差が生じる場合がある。例えば、上述の非特許文献1に開示されたマルチコア光ファイバの構成で、ファイバ長を2mとし、コア間距離を35μmとし、外周コアの螺旋回数を50ターン/mとすると、中心コアと外周コアとの構造上の長さの差は、光ファイバの一端から他端までにおいて120μm程度になる。
【0009】
ここで、OFDRにおいて光ファイバの長さ方向における分解能は、例えば40μm程度であるため、中心コアの周囲に外周コアが螺旋状に巻回されたマルチコア光ファイバを光ファイバセンサとして用いる場合、中心コアと外周コアとの上記構造上の長さの差によって、測定される長手方向の位置精度が悪化してしまうという懸念がある。特に、光ファイバセンサであるマルチコア光ファイバを長くする場合、中心コアと外周コアとの構造上の長さの差に起因する検出位置の誤差が大きくなるため、光ファイバセンサの全長に亘って測定精度が悪化するという懸念がある。また、FBGは、一般的に光ファイバの側方から光を照射することで形成される。このため、マルチコア光ファイバの長手方向に沿った中心コアに形成されるFBG間の距離と、マルチコア光ファイバの長手方向に対して斜めである螺旋状の外周コアに形成されるFBG間の距離とは、互いに異なる傾向にある。
【0010】
そこで、本発明は、高い測定精度を実現することが可能な光ファイバセンサとし得るマルチコア光ファイバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のマルチコア光ファイバは、クラッドの中心に形成された中心コアと、当該中心コアの周囲を螺旋状に巻回する少なくとも1つの外周コアとを備え、前記中心コアと前記外周コアとの距離dの平均をd
aveとし、単位長さ当たりの前記外周コアの螺旋回数をf
wとする場合に、前記中心コアの実効屈折率n
e1と前記外周コアの実効屈折率n
e2の平均n
e2aveとは、下記式(1)を満たすことを特徴とする。
【0012】
上記のように、中心コアの実効屈折率と外周コアの実効屈折率の平均とが上記式(1)を満たすことで、中心コアの実効屈折率と外周コアの実効屈折率の平均とが同じ場合と比べて、中心コアの光路長と外周コアの光路長との差の平均を小さくすることができる。また、中心コアの実効屈折率と外周コアの実効屈折率の平均とが上記式(1)を満たす場合、引っ張り特性が良好なマルチコア光ファイバになり得る。このため、本発明のマルチコア光ファイバを光ファイバセンサとして用いる場合、高い測定精度を実現することができる。なお、一般的に螺旋状の外周コアを有するマルチコア光ファイバを製造する場合、マルチコア光ファイバとなる母材を回転させながら線引きをするため、何れの外周コアも螺旋回数が同じであるため、螺旋回数f
wについては平均とする必要が無い。
【0013】
また、前記外周コアの実効屈折率n
e2の平均n
e2aveは、前記中心コアの光路長と前記外周コアの光路長の平均との比率に合うように、前記中心コアの実効屈折率n
e1よりも低くされることが好ましい。また、前記中心コアの実効屈折率n
e1と前記外周コアの実効屈折率n
e2の平均n
e2aveの比率は、下記式を満たすことが好ましい。
また、前記中心コア及び前記外周コアには、同じ濃度のゲルマニウムが第1添加剤として添加され、前記外周コアには、屈折率を低下させる作用を有する第2添加剤が添加されることが好ましい。さらに、前記中心コア及び前記外周コアには、それぞれの長手方向の少なくとも一部の領域にFBGが形成されていることが好ましい。
【0014】
また、前記中心コアに添加されるドーパントの種類と前記外周コアに添加されるドーパントの種類とが互いに同じであり、前記中心コアに添加されるドーパントの濃度と前記外周コアに添加されるドーパントの濃度の平均とが互いに実質的に同一であることが好ましい。
【0015】
このような条件が満たされることで、中心コアの実効屈折率の温度依存性と外周コアの実効屈折率の平均の温度依存性とが、互いに実質的に同一となる。従って、このような条件が満たされることで、マルチコア光ファイバを光ファイバセンサとして用いる場合に、環境温度が変化する場合であっても、高い測定精度を実現することができる。
【0016】
更に、前記中心コア及び前記外周コアに添加されるドーパントは1種類であることが好ましい。
【0017】
このような条件が満たされることで、中心コアの実効屈折率の温度依存性と外周コアの実効屈折率の平均の温度依存性とをより容易に互いに実質的に同一とすることができる。
【0018】
また、前記中心コアの前記クラッドに対する比屈折率差Δ
1と前記外周コアの前記クラッドに対する比屈折率差Δ
2の平均Δ
2aveとの差δΔ
aveが、−0.005%以上0.005%以下であることが好ましい。つまり、上記の中心コアに添加されるドーパントの濃度と外周コアに添加されるドーパントの濃度の平均とが互いに実質的に同一であるという条件には、上記の差δΔ
aveが−0.005%以上0.005%以下となるようにドーパントが添加されることが含まれる。
【0019】
このような条件が満たされることで、マルチコア光ファイバを光ファイバセンサとして用いる場合に、環境温度が変化する場合であっても、測定精度が変化することをより抑えることができる。
【0020】
また、前記中心コア及び前記外周コアには、それぞれFBGが形成され、前記差δΔ
aveは、前記中心コアの分散値λ
1と前記外周コアの分散値λ
2の平均値λ
2aveとの差をΔλ
aveとし、前記中心コアの前記FBGによる反射波長λ
B1と前記外周コアの前記FBGによる反射波長λ
B2の平均値λ
B2aveとの差をΔλ
Baveとする場合に、以下の式(2)を満たしてもよい。
【0021】
中心コアのクラッドに対する比屈折率差Δ
1と外周コアのクラッドに対する比屈折率差Δ
2の平均Δ
2aveとの差δΔ
aveは、マルチコア光ファイバの各コアのコア径や屈折率等から測定するよりも、中心コアの分散値λ
1と外周コアの分散値λ
2の平均値λ
2aveとの差Δλ
ave、及び、中心コアのFBGによる反射波長λ
B1と外周コアのFBGによる反射波長λ
B2の平均値λ
B2aveとの差Δλ
Baveから測定する方が容易である。従って、上記式(2)を計測することで、容易に上記の差δΔ
aveが、−0.005%以上0.005%以下であるか否かを確認することができる。従って、マルチコア光ファイバを光ファイバセンサとして用いる場合に、環境温度が変化する場合であっても、測定精度が変化することを抑えることができているか否か容易に確認できる。
【0022】
また、前記中心コアのコア径D
1が4.66μm以上4.89μm以下であり、前記中心コアと前記外周コアとの距離dの平均d
aveが33μm以上37μm以下であり、前記外周コアの螺旋回数f
wが45回/m以上55回/m以下である場合に、下記式
δD
2={(D
2ave−D
1)/D
1}×100
で表されるδD
2が、−2.19%以上0.52%以下であってもよい。ただし、上記式において、D
2aveは前記外周コアのコア径D
2の平均を表す。
【0023】
中心コアのコア径D
1が4.66μm以上4.89μm以下であり、中心コアと外周コアとの距離dの平均d
aveが33μm以上37μm以下であり、前記外周コアの螺旋回数f
wが45回/m以上55回/m以下である条件下では、上記δD
2が、−2.19%以上0.52%以下とされることで、中心コアのコア径D
1と外周コアのコア径D
2の平均D
2aveとが異なる場合でも、環境温度の変化に左右されずに高い測定精度を実現し得る。
【0024】
なお、中心コアのコア径D
1が4.695μm以上4.825μm以下であることがより好ましい。中心コアのコア径D
1が4.695μm以上4.825μm以下であることにより、中心コアのコア径D
1と外周コアのコア径D
2の平均D
2aveとが異なる場合でも、環境温度の変化に左右されずに高い測定精度を実現することがより容易になり得る。
【0025】
また、上記課題を解決するため、本発明は、クラッドの中心に形成された中心コアと、当該中心コアの周囲を螺旋状に巻回する少なくとも1つの外周コアとを備えるマルチコア光ファイバの製造方法であって、準備工程と、測定工程と、第1算出工程と、第2算出工程と、選択工程と、線引工程と、を備える。準備工程では、前記中心コア及び前記外周コアとなるコアロッド、及び、径方向の中心に形成される中心孔と当該中心孔の周囲に形成される少なくとも1つの外周孔とを有し前記クラッドの少なくとも一部となる屈折率が一様な円柱状のキャピラリを準備する。測定工程では、前記コアロッドの長手方向における屈折率分布を測定する。第1算出工程では、前記コアロッドの前記屈折率分布と前記キャピラリの屈折率とを用いて、前記キャピラリと同じ屈折率を有するガラス体に前記コアロッドが囲まれた母材から光ファイバが製造される場合における当該光ファイバの分散値の分布、及び、当該光ファイバのコアに所定間隔でFBGを形成する場合における反射波長の分布を算出する。第2算出工程では、前記コアロッドの一部の区間が前記中心コアとされ、前記コアロッドの他の一部の区間が前記外周コアとされて前記マルチコア光ファイバとされる場合において、前記第1算出工程で算出した前記分散値の分布を用いて前記中心コアの分散値λ
1と前記外周コアの分散値λ
2の平均値λ
2aveとの差Δλ
aveを算出し、前記第1算出工程で算出した前記反射波長の分布を用いて前記中心コアの反射波長λ
B1と前記外周コアの反射波長λ
B2の平均値λ
B2aveとの差Δλ
Baveを算出する。選択工程では、前記差Δλ
aveと前記差Δλ
Baveとを用いて、前記中心コアとなる前記コアロッドの区間の前記キャピラリに対する比屈折率差Δ
1と、前記外周コアとなる前記コアロッドの区間の前記キャピラリに対する比屈折率差Δ
2とが実質的に同一となるように、前記中心コアとなる前記コアロッドの区間と、前記外周コアとなる前記コアロッドの区間とを選択する。線引工程では、前記中心コアとして選択された前記コアロッドの区間を前記キャピラリの前記中心孔内に配置し、前記外周コアとして選択された前記コアロッドの他の区間を前記キャピラリの外周孔内に配置する配置工程と、前記中心コアと前記外周コアとの距離dの平均をd
aveとし、単位長さ当たりの前記外周コアの螺旋回数をf
wとする場合に、前記中心コアの実効屈折率n
e1及び前記外周コアの実効屈折率n
e2の平均n
e2aveが下記式(3)を満たすように、前記コアロッドのそれぞれの区間が配置された前記キャピラリを線引きする。
【0026】
中心コアの屈折率の温度依存性と外周コアの屈折率の平均の温度依存性とが実質的に同じであり、上記式(1)を満たすマルチコア光ファイバを製造するためには、中心コアとなるコアロッドと外周コアとなるコアロッドの比屈折率差が実質的に同じであることが好ましい。そこで、1つのコアロッドから、中心コアとなるコアロッドの区間と外周コアとなるコアロッドの区間と選択すれば、中心コアと外周コアとで比屈折率差を実質的に同じにし得る。しかし、1つのコアロッドであっても屈折率の分布が生じるため、当該コアロッドの屈折率分布を測定して、当該屈折率分布から上記の差Δλ
aveと差Δλ
Baveとを求めて、この結果から、中心コアとなるコアロッドの区間の比屈折率差Δ
1と、外周コアとなるコアロッドの区間の比屈折率差Δ
2とが実質的に同一となるように、中心コアとなるコアロッドの区間と、外周コアとなるコアロッドの区間とを選択する。こうして、中心コアの比屈折率差と外周コアの比屈折率差とが実質的に同じであるマルチコア光ファイバを製造することができる。
【0027】
この場合、前記コアロッドに添加されるドーパントは1種類であることが好ましい。
【0028】
コアロッドに1種類のドーパントが添加されることで、コアロッドに複数種類のドーパントが添加される場合と比べて、コアロッドの長手方向における比屈折率差の分布を一定に近づけることができる。
【0029】
また、前記選択工程において、前記中心コアとなる前記コアロッドの前記キャピラリに対する比屈折率差Δ
1と、前記外周コアとなる前記コアロッドの区間の前記キャピラリに対する比屈折率差Δ
2の平均Δ
2aveとの差δΔ
aveが、−0.005%以上0.005%以下となるように前記中心コアとなる前記コアロッドの区間と、前記外周コアとなる前記コアロッドの区間とを選択することが好ましい。
【0030】
このように中心コアとなるコアロッドの区間と、外周コアとなるコアロッドの区間とを選択することで、環境温度が変化する場合であっても測定精度が変化することをより抑えることのできる光ファイバセンサとなり得るマルチコア光ファイバを製造することができる。
【0031】
また、前記差δΔ
aveは、以下の式(4)を用いて求めても良い。
【発明の効果】
【0032】
以上のように、本発明によれば、高い測定精度を実現することが可能な光ファイバセンサとし得るマルチコア光ファイバが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係るマルチコア光ファイバを実施するための形態が図面とともに例示される。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、以下の実施形態から変更、改良することができる。なお、以下で参照する図面では、理解を容易にするために、各部材の寸法の縮尺を変えて示すことがある。
【0035】
<マルチコア光ファイバの構成>
まず、マルチコア光ファイバの構成について説明する。
図1は、本実施形態におけるマルチコア光ファイバを示す斜視透視図である。また、
図2は、
図1に示すマルチコア光ファイバの長手方向に垂直な断面図である。
図1、
図2に示す通り、本実施形態のマルチコア光ファイバ1は、中心コア11、外周コア12a〜12c、及びクラッド13を備える。なお、以下の説明において、外周コア12は、外周コア12a〜12cのいずれかを指す。また、クラッド13の外周面は、図示せぬ被覆層で覆われても良い。
【0036】
中心コア11は、クラッド13の中心に配置されている。このため、中心コア11はマルチコア光ファイバ1の軸に沿って配置されている。従って、マルチコア光ファイバ1が直線状に配置される場合、中心コア11は、直線状の光路を形成する。本実施形態では、中心コア11は、ゲルマニウム(Ge)を含み、他のドーパントを含まない石英ガラスによって形成される。また、中心コア11には、その全長に亘って不図示のFBGが形成されている。尚、中心コア11の直径であるコア径は、例えば5〜7[μm]とされる。
【0037】
それぞれの外周コア12a〜12cは、中心コア11の周囲を螺旋状に巻回するように形成されたコアである。それぞれの外周コア12a〜12cは、
図2に示すように、中心コア11から所定の距離d離間し、長手方向に直交する断面において、クラッド13の中心を基準として、互いに所定の角度θの間隔で配置されている。この距離dは、コア間距離とも呼ばれ、中心コア11と外周コア12との中心間距離である。また、この所定の角度θは、本実施形態のように外周コアの数が3つであれば、例えば、120°とされる。つまり、外周コア12a〜12cは、互いに角度θの間隔を維持しながら、中心コア11の周囲を螺旋状に巻回して、マルチコア光ファイバ1の長手方向に延在している。このため、これら外周コア12a〜12cは、中心コア11の周囲を螺旋状に巻回する3つの光路を形成する。なお、これら外周コア12a〜12cは、マルチコア光ファイバ1の単位長さあたりに、互いに同じ螺旋回数で中心コア11の周囲を巻回している。
【0038】
外周コア12a〜12cは、中心コア11と同様に、ゲルマニウムを含み、他のドーパントを含まない石英ガラスによって形成される。つまり、本実施形態のマルチコア光ファイバ1では、中心コア11及び外周コア12に添加されるドーパントはゲルマニウムの1種類とされる。また、本実施形態では、中心コア11と外周コア12a〜12cとで、実質的に同一の濃度のゲルマニウムが添加されている。このゲルマニウムの濃度の詳細については、後述する。また、外周コア12a〜12cには、その全長に亘って不図示のFBGが形成されている。
【0039】
中心コア11と外周コア12との距離dは、コア間のクロストーク、中心コア11と外周コア12との光路長差、マルチコア光ファイバ1が屈曲したときの中心コア11と外周コア12との歪量の差等を考慮して設定される。例えば、中心コア11と外周コア12との距離が、例えば35μm程度であり、単位長さ当たりの外周コア12の螺旋回数が、例えば50ターン/m程度とされる。この場合、マルチコア光ファイバは、マルチコア光ファイバが取り付けられた構造物等の形状を測定する光ファイバセンサとして用いられる場合に好適である。なお、この場合の螺旋回数とは、外周コア12が、螺旋状に中心コア11の周囲を旋回する回数のことである。
【0040】
クラッド13は、中心コア11及び外周コア12a〜12cの周囲を覆い、断面における外形が円形や楕円形とされる。つまり、中心コア11及び外周コア12a〜12cは、共通のクラッド13に覆われている。このクラッド13は、例えば、何らドーパントが添加されない石英ガラスによって形成される。
【0041】
<コアの実効屈折率>
次に、中心コア11及び外周コア12の実効屈折率について説明する。
図3は、本実施形態における中心コア11及び外周コア12の光路長の差を説明するための図である。尚、以下の説明において、マルチコア光ファイバ1の中心コア11と外周コア12とのコア間距離をdとし、マルチコア光ファイバ1の単位長さ当たりの外周コア12の螺旋回数をf
wとする。
【0042】
図3において、符号P1が付された直線は中心コア11を表しており、符号P2が付された直線は外周コア12を表している。但し、
図3においては、外周コア12の螺旋の1周期に相当する中心コア11及び1つの外周コア12のみが図示されている。マルチコア光ファイバ1における外周コア12の螺旋1周期に相当する区間において、中心コア11の構造的な長さをL
1とし、外周コア12の構造的な長さをL
2とすると、これらの関係は下記式(5)で示される。
【0043】
中心コア11及び外周コア12の実効屈折率が同じ場合には、当該実効屈折率に基づいた比例係数で、中心コア11の光路長は上記長さL
1に比例し、外周コア12の光路長は上記長さL
2に比例する。従って、中心コア11及び外周コア12の実効屈折率が同じ場合には、外周コア12の光路長は、中心コア11の光路長よりも長くなる。ここで、マルチコア光ファイバ1における外周コア12の螺旋1周期に相当する区間における中心コア11の長さL
1と外周コア12の長さL
2との差をAとすると、A=L
2−L
1となる。上記のように、マルチコア光ファイバ1の単位長さ当たりの外周コア12a〜12cの螺旋回数がf
wである。このため、中心コア11と外周コア12との構造的な長さの差Aは下記式(6)で表される。
【0044】
外周コア12は上記の差Aだけ中心コア11よりも長い。そこで、上記式(6)で示される外周コア12に沿った長さの差Aに相当する中心コア11の長さB、別言すると、長さの差Aだけ外周コア12に沿って進む場合に相当する中心コア11に沿った長さBは、下記式(7)で示される。
【0045】
ここで、中心コア11の実効屈折率をn
e1とし、外周コア12の実効屈折率をn
e2とする。これら実効屈折率をn
e1,n
e2が下記式(8)を満たす場合には、中心コア11と外周コア12との光路長の差は、中心コア11及び外周コア12の実効屈折率が同じ場合における光路長の差よりも小さくなる。つまり、中心コア11の実効屈折率n
e1及び外周コア12の実効屈折率n
e2が、下記式(8)が満たす場合には、中心コア11の実効屈折率と外周コア12の実効屈折率とが同じ場合に比べて、中心コア11の光路長と外周コア12の光路長との差を小さくすることができる。また、実効屈折率n
e1及び実効屈折率n
e2が上記式(8)を満たす場合、引っ張り特性が良好なマルチコア光ファイバになり得る。その結果として、マルチコア光ファイバ1が光ファイバセンサとして用いられる場合に高い測定精度を実現することができる。
【0046】
従って、全ての外周コア12a〜12cが、上記式(8)を満たすことが好ましい。なお、外周コア12a〜12cの各パラメータの平均が、上記式を満たせば、マルチコア光ファイバ1が光ファイバセンサとして用いられる場合に、上記のように高い測定精度を実現することができる。具体的には、中心コア11と外周コア12a〜12cとの距離dの平均をd
aveとする場合に、中心コア11の実効屈折率n
e1と外周コア12a〜12cの実効屈折率n
e2の平均n
e2aveとが、上記式(8)を満たせば良い。つまり、マルチコア光ファイバ1が、上記式(6)から式(8)において、距離dを平均d
aveとし、実効屈折率n
e2を平均n
e2aveとした式を満たせば良い。従って、下記式(9)を満たせば良い。なお、上記のように、マルチコア光ファイバ1の単位長さ当たりにおける外周コア12の螺旋回数は、互いに同じであるため、平均とする必要がなく、f
wとすればよい。この式(9)は、上記式(1)と同様である。
【0047】
次に、中心コア11及び外周コア12に形成されるFBGについて説明する。FBGは、一般的に光ファイバの側方から光を照射することで形成される。このため、中心コア11に形成されるFBGと外周コア12に形成されるFBGとは、マルチコア光ファイバ1の長手方向に沿った方向において同一の周期で形成される。しかし、上述の通り、外周コア12は中心コア11の周囲を螺旋状に巻回するように形成されている。このため、上記のように中心コア11及び外周コア12の実効屈折率が同じ場合には、外周コア12の光路長は、中心コア11の光路長よりも長くなる。
【0048】
従って、外周コア12に形成されるFBGの外周コア12に沿った周期は、中心コア11に形成されるFBGの中心コア11に沿った周期よりも長くなる。そこで、中心コア11に形成されたFBGのブラッグ波長をλ
B1とし、外周コア12に形成されたFBGのブラッグ波長をλ
B2とすると、これらの関係は以下の式(10)で示される。
【0049】
FBGのブラッグ波長である反射波長λ
Bは、マルチコア光ファイバ1に形成される屈折率の変化の周期構造の1周期の長さをΛとし、実効屈折率をn
eとすると、下記式(11)で示される。
【0050】
従って、中心コア11の実効屈折率n
e1と外周コア12の実効屈折率n
e2との比率が、下記式(12)を満たす場合には、中心コア11の光路長と外周コア12の光路長とを一致させることができる。つまり、外周コア12の実効屈折率n
e2は、中心コア11の光路長と外周コア12との光路長とが一致するように、中心コア11の実効屈折率n
e1よりも低く設定されることが好ましい。これにより、中心コア11と外周コア12とのブラッグ波長差をゼロにすることができる。従って、それぞれの外周コア12a〜12cが下記式(12)を満たすことが好ましい。
【0051】
なお、上記式(12)を満たさない場合であっても、上記式(8)を満たす場合には、ブラッグ波長差をより抑制することができる。その結果として、マルチコア光ファイバ1が光ファイバセンサとして用いられる場合に高い測定精度を実現することが可能である。
【0052】
また、各パラメータの外周コア12a〜12cの平均が、上記式(12)を満たせば、マルチコア光ファイバ1が光ファイバセンサとして用いられる場合に高い測定精度を実現することができる。つまり、下記式(13)を満たせば良い。なお、式(13)は、請求項3の式と同様である。
【0053】
なお、上記式(13)を満たさない場合であっても、上記式(9)を満たす場合には、中心コア11と外周コア12とのブラッグ波長差を抑制することができる。
【0054】
また、中心コア11のクラッド13に対する比屈折率差Δ
1と外周コア12のクラッド13に対する比屈折率差Δ
2とが同じ場合であっても、中心コア11及び外周コア12の直径(コア径)の比率を調整することで、上記式(8)、式(9)、式(12)の条件を満たすことができる。
【0055】
<温度の影響>
次に温度の影響について説明する。上記のように中心コア11及び外周コア12a〜12cには、屈折率を上昇させるドーパントとしてゲルマニウムが添加されている。この添加されるゲルマニウムの濃度が変化すると、コアの屈折率が変化する。ところで、ゲルマニウムが添加される石英は、温度が変化すると屈折率が変化する。更に、添加されるゲルマニウムの濃度が変化すると、温度が変化する場合における屈折率の変化量が変化する。すなわち、添加されるゲルマニウムの濃度が変化すると、屈折率の温度依存性が変化する。
【0056】
実効屈折率n
eはコアのクラッドに対する比屈折率差Δに依存する。従って、上記の式(8)、(12)等で示されるように、中心コア11の実効屈折率n
e1と外周コア12の実効屈折率n
e2とを所定の比率にする場合、中心コア11に添加されるゲルマニウムの濃度と外周コア12に添加されるゲルマニウムの濃度とを所定の比率にして、中心コア11のクラッド13に対する比屈折率差Δ
1と外周コア12のクラッド13に対する比屈折率差Δ
2とを所定の比率にすることが考えられる。しかし、このように中心コア11に添加されるゲルマニウムの濃度と外周コア12に添加されるゲルマニウムの濃度とを互い異ならせる場合、上記のように、中心コア11の屈折率の温度依存性と外周コア12の屈折率の温度依存性とが互いに異なってしまう。このため、ある特定の温度で上記式(8)、(12)のいずれかが満たされる場合であっても、環境温度が変化すると、当該式が満たされなくなる懸念があり、マルチコア光ファイバ1が光ファイバセンサとして用いられる場合における測定精度の低下の懸念が生じる。
【0057】
そこで、中心コア11に添加されるゲルマニウムと外周コア12に添加されるゲルマニウムとを実質的に同じ濃度にすれば良い。具体的には、環境温度が変化する場合であってもマルチコア光ファイバ1が上記式(8)を満たす程度に、中心コア11に添加されるゲルマニウムと外周コア12に添加されるゲルマニウムとを実質的に同じ濃度にする。このように中心コア11及び外周コア12にゲルマニウムが添加されることで、中心コア11のクラッド13に対する比屈折率差Δ
1と外周コア12のクラッド13に対する比屈折率差Δ
2とが実質的に同じになり、中心コア11の屈折率の温度依存性と外周コア12の屈折率の温度依存性とを実質的に同じにすることができる。このような中心コア11のクラッド13に対する比屈折率差Δ
1と外周コア12のクラッド13に対する比屈折率差Δ
2とが実質的に同じである範囲は、例えば、比屈折率差Δ
1と比屈折率差Δ
2との差δΔが−0.005%以上0.005%以下の範囲とされる。このような範囲であれば、後述のようにマルチコア光ファイバ1が光ファイバセンサとして用いられても測定誤差を小さくすることができる。なお、中心コア11に添加されるゲルマニウムと外周コア12に添加されるゲルマニウムとが実質的に同じ濃度である場合、中心コア11のコア径R
1と外周コア12のコア径R
2との比率を調整することで、マルチコア光ファイバ1は式(8)を満たすことができる。
【0058】
本実施形態のように、中心コア11及び外周コア12にゲルマニウムのみが添加される場合、中心コア11のクラッド13に対する比屈折率差Δ
1と外周コア12のクラッド13に対する比屈折率差Δ
2とが実質的に同一とされれば、すなわち、比屈折率差Δ
2から比屈折率差Δ
1を引いた比屈折率差の差δΔが実質的にゼロとされれば、中心コア11の屈折率の温度依存性と外周コア12の屈折率の温度依存性とを実質的に同一にすることができる。しかし、このような比屈折率差Δ
1と比屈折率差Δ
2とが実質的に同一か否かを判断できる精度で、光ファイバのコアの比屈折率差を正確に測定することは困難である。そこで、中心コア11の分散値λ
1と外周コア12の分散値λ
2との差Δλ、及び、中心コア11に形成されたFBGによる反射波長λ
B1と外周コア12に形成されたFBGによる反射波長λ
B2との差Δλ
Bを用いて、上記の比屈折率差の差δΔを求める。
【0059】
また、上記のように外周コア12のパラメータは、それぞれの外周コア12a〜12cの平均で考えることができる。そこで、中心コア11の分散値λ
1と外周コア12a〜12cの分散値λ
2の平均値λ
2aveとの差をΔλ
aveとし、中心コア11のFBGによる反射波長λ
B1と外周コア12a〜12cのFBGによる反射波長λ
B2の平均値λ
B2aveとの差をΔλ
Baveとし、外周コア12a〜12cのクラッド13に対する比屈折率差Δ
2の平均をΔ
2aveとし、比屈折率差Δ
1と比屈折率差Δ
2の平均Δ
2aveとの差をδΔ
aveをとすると、
図4が成り立つ。
【0060】
図4は、中心コア11の分散値λ
1と外周コア12の分散値λ
2の平均値λ
2aveとの差Δλ
ave(λ
2ave−λ
1)と、中心コア11に形成されたFBGによる反射波長λ
B1と外周コア12に形成されたFBGによる反射波長λ
B2の平均値λ
B2aveとの差Δλ
Bave(λ
B2ave−λ
B1)と、の関係を示す図である。
図4では、この関係を中心コア11のクラッド13に対する比屈折率差Δ
1と外周コア12のクラッド13に対する比屈折率差Δ
2の平均Δ
2aveとの差δΔ
ave毎に、当該差δΔ
aveが−0.010%から0.015%まで0.001%間隔で示している。
図4において、最も下側の線は、差δΔ
aveが−0.010%での差Δλ
aveと差Δλ
Baveとの関係を示しており、この線から上側に線が1つずれると差δΔ
aveが0.001%大きくなり、最も上側の線は、比屈折率差の差δΔ
aveが0.015%での差Δλ
aveと差Δλ
Baveとの関係を示している。
【0061】
具体的には、上記の比屈折率差の差δΔ
aveは、外周コア12の分散値λ
2の平均値λ
2aveから中心コア11の分散値λ
1を引いた分散値の差Δλ
ave、及び、外周コア12に形成されたFBGによる反射波長λ
B2の平均値λ
B2aveから中心コア11に形成されたFBGによる反射波長λ
B1を引いた反射波長の差Δλ
Baveを用いて下記式(14)で示すことができる。式(14)は、
図4において、差Δλ
aveと差Δλ
Baveとの関係を示す各実線における分散差とブラッグ波長差の関係式を用いて重回帰分析を実施することで算出した。
図4では、比屈折率差の差δΔ
ave毎に下記式(14)を満たす分散値の差Δλ
aveと反射波長の差Δλ
Baveとの関係が示されている。この式(14)は、上記式(2)と同様である。なお、この式は、コア間距離が35μmで外周コア12の螺旋回数が50回/mの場合について求めた。
【0062】
上記のように中心コア11の比屈折率差Δ
1と外周コア12の比屈折率差Δ
2の平均Δ
2aveとが実質的に同じである範囲は、例えば、比屈折率差Δ
1と比屈折率差Δ
2の平均Δ
2aveとの差δΔ
aveが−0.005%以上0.005%以下の範囲とされる。従って、本実施形態のように中心コア11及び外周コア12にゲルマニウムのみが添加され、下記式(15)が満たされれば、中心コア11のクラッド13に対する比屈折率差Δ
1と外周コア12のクラッド13に対する比屈折率差Δ
2の平均Δ
2aveとが実質的に同一となる。
【0063】
また、
図4では、外周コア12のパラメータをそれぞれの外周コア12a〜12cの平均で考えた。中心コア11の分散値λ
1と外周コア12の分散値λ
2との差Δλと、中心コア11のFBGによる反射波長λ
B1と外周コア12のFBGによる反射波長λ
B2との差Δλ
Bと、それぞれの外周コア12のクラッド13に対する比屈折率差Δ
2と、比屈折率差Δ
1と比屈折率差Δ
2との差δΔとの間には、下記式(16)が成立する。
【0064】
従って、上記式(15)は、下記式(17)となり、中心コア11とそれぞれの外周コア12a〜12cとが、下記式(17)を満たすことが好ましい。
【0065】
以上説明したように本発明のマルチコア光ファイバ1は、上記のように、中心コア11と外周コア12とが上記式(9)を満たすことで、中心コア11の実効屈折率n
e1と外周コア12の実効屈折率n
e2とが同じ場合と比べて、中心コア11の光路長と外周コア12の光路長との差を小さくすることができる。また、実効屈折率n
e1及び実効屈折率n
e2が上記式(9)を満たすことで、引っ張り特性が良好な範囲を示すマルチコア光ファイバになり得る。このため、本実施形態のマルチコア光ファイバ1を光ファイバセンサとして用いる場合、高い測定精度を実現することできる。また、本実施形態のマルチコア光ファイバ1は、中心コア11の屈折率の温度依存性と外周コア12の屈折率の温度依存性とが実質的に同じであるため、中心コア11の実効屈折率n
e1と外周コア12の実効屈折率n
e2の平均n
e2aveとの関係は、温度が変化する場合であっても実質的に変化しない。このため、環境温度が変化する場合であっても、中心コア11と外周コア12とが上記式(9)の関係を満たすことができる。従って、本発明のマルチコア光ファイバ1を光ファイバセンサとして用いることで、環境温度が変化する場合であっても、高い測定精度を実現することができる。
【0066】
また、本実施形態では中心コア11及び外周コア12にドーパントとしてゲルマニウム1種類が添加されるものとした。そして、上記のように、中心コア11に添加されるゲルマニウムの濃度と外周コア12に添加されるゲルマニウムの濃度の平均とが実質的に同じとされることで、中心コア11の実効屈折率n
e1の温度依存性と外周コア12の実効屈折率n
e2の平均n
e2aveの温度依存性とが、容易に互いに実質的に同一とすることができる。
【0067】
なお、本実施形態では、中心コア11及び外周コア12に1種類のドーパントとしてゲルマニウムが添加されるものとした。しかし、中心コア11及び外周コア12には、ゲルマニウム以外のドーパントが添加されても良く、ゲルマニウムが添加されずに他のドーパントが添加されても良い。ただし、この場合、中心コア11に添加されるドーパントの種類と外周コア12に添加されるドーパントの種類とが互いに同じであり、中心コア11に添加されるドーパントの濃度と外周コア12に添加されるドーパントの濃度の平均とが互いに実質的に同一とされることが好ましい。このような条件が満たされることで、中心コア11の実効屈折率n
e1の温度依存性と外周コア12の実効屈折率n
e2の平均n
e2aveの温度依存性とが、互いに実質的に同一となる。さらにこの場合、中心コア11に添加されるドーパントの濃度とそれぞれの外周コア12に添加されるドーパントの濃度とが互いに実質的に同一とされることがより好ましい。ただし、温度依存性に影響を与えないドーパントが添加されても良い。
【0068】
<マルチコア光ファイバの製造方法>
次に、上述したマルチコア光ファイバの製造方法について説明する。
【0069】
図5は、本実施形態による光ファイバセンサの製造方法を示すフローチャートである。本実施形態のマルチコア光ファイバの製造方法は、準備工程PS1と、測定工程PS2と、第1算出工程PS3と、第2算出工程PS4と、選択工程PS5と、配置工程PS6と、線引工程PS7とを備える。
【0070】
(準備工程PS1)
本工程は、中心コア11及び外周コア12となるコアロッド10R、及び、径方向の中心に形成される中心孔11Hと当該中心孔11Hの周囲に形成される少なくとも1つの外周孔12Hとを有しクラッド13の少なくとも一部となる屈折率が一様な円柱状のキャピラリ13Rを準備する工程である。
図6は、本工程で準備されるコアロッド10R、及び、キャピラリ13Rを示す図である。コアロッド10Rは、中心コア11及び外周コア12となるガラス体である。従って、
図6に示すように、コアロッド10Rにはゲルマニウムが添加されており、コアロッド10Rの長さは、中心コア11となる母材の長さ及び外周コア12となる母材の長さの合算よりも長くされる。キャピラリ13Rは、クラッド13の少なくとも一部となる屈折率が一様な円柱状のガラス体である。キャピラリ13Rは、径方向の中心に形成される中心孔11Hと中心孔11Hの周囲に形成される少なくとも1つの外周孔12Hとを有する。本実施形態では、マルチコア光ファイバ1が3つの外周コア12a〜12cを有するため、外周孔12Hも3つ形成されている。
【0071】
(測定工程PS2)
コアロッド10Rに添加されるゲルマニウムの濃度は、製造誤差等により、長手方向において僅かに変化している傾向がある。そこで、本工程は、コアロッド10Rの長手方向における屈折率分布を測定する工程である。この測定には、例えば、プリフォームアナライザを用いることができる。コアロッド10Rの長手方向における屈折率分布は、例えば、5〜20mm間隔で測定することが好ましい。
【0072】
(第1算出工程PS3)
本工程は、コアロッド10Rの屈折率分布とキャピラリ13Rの屈折率とを用いて、キャピラリ13Rと同じ屈折率を有するガラス体にコアロッド10Rが囲まれた母材から光ファイバが製造される場合における当該光ファイバの分散値の分布、及び、当該光ファイバのコアに所定間隔でFBGを形成する場合における反射波長の分布を算出する工程である。
【0073】
本工程では、まず、測定工程PS2で測定されたコアロッド10Rの屈折率分布を用いて、コアロッド10Rがコアとなり、当該コアがキャピラリと同じ屈折率のクラッドで囲まれる光ファイバを想定する。この光ファイバのコアの屈折率分布は、コアロッド10Rの屈折率分布が長手方向に延伸された分布とされる。また、この光ファイバのコアの直径は、例えば、マルチコア光ファイバ1における中心コア11の直径とされる。そして、コアの直径と、コアのクラッドに対する比屈折率差と、波長λとから伝搬定数βを算出することができる。光ファイバの分散値λ
0は、下記式(18)で示すように伝搬定数βを波長で微分することで算出されるため、コアロッドの屈折率分布から各波長における伝搬定数を算出して数値微分することで波長分散を算出する。ただし、下記式(18)において、cは光速である。
【0074】
なお、比屈折率差Δとコア径は、コアの屈折率分布による変数である。従って、分散値λ
0は、光ファイバの区間により変化する。こうして、コアロッド10Rが用いられて光ファイバとされる場合の分散値の分布が求められる。
【0075】
また、当該光ファイバに所定間隔でFBGが形成される場合の反射波長の分布を求める。光ファイバに形成されるFBGの周期構造の1周期の長さをΛ、及び、実効屈折率をn
eにより、ブラッグ波長である反射波長λ
Bは、上記のように式(11)で示される。
【0076】
実効屈折率n
eは比屈折率差Δ及びコア径の変化で変化し、上記のように比屈折率差Δおよびコア径はコアの屈折率分布による変数である。従って、反射波長λ
Bは、光ファイバの区間により変化する。こうして、コアロッド10Rが用いられて光ファイバとされる場合の反射波長の分布が求められる。
【0077】
(第2算出工程PS4)
本工程は、コアロッド10Rの一部の区間が中心コア11とされ、コアロッド10Rの他の一部の区間が外周コア12a〜12cとされてマルチコア光ファイバ1とされる場合において、第1算出工程PS3で算出した分散値λ
0の分布を用いて中心コア11の分散値λ
1と外周コア12a〜12cの分散値λ
2の平均値λ
2aveとの差Δλ
aveを算出し、第1算出工程PS3で算出した反射波長λ
Bの分布を用いて中心コア11の反射波長λ
B1と外周コア12a〜12cの反射波長λ
B2の平均値λ
B2aveとの差Δλ
Baveを算出する工程である。
【0078】
上記のようにコアロッド10Rの屈折率は、長手方向で変化する傾向があるため、コアロッド10Rの一部の区間が中心コア11とされ、コアロッド10Rの他の一部の区間が外周コア12a〜12cとされてマルチコア光ファイバ1とされる場合における外周コア12a〜12cの分散値λ
2はそれぞれの外周コア12で互いに異なる傾向にあり、中心コア11の分散値λ
1と外周コア12a〜12cの分散値λ
2とは互いに異なる傾向にある。また、中心コア11の分散値λ
1及び外周コア12a〜12cのそれぞれの分散値λ
2は、長手方向で変化する傾向にある。そこで、本工程では、中心コア11とされるコアロッド10Rの区間及び外周コア12a〜12cとされるコアロッド10Rのそれぞれの区間がキャピラリ13Rの各孔内に配置された状態において、長手方向の同一の位置での中心コア11の分散値λ
1と外周コア12a〜12cの分散値λ
2の平均値λ
2aveとの差Δλ
aveを求める。中心コア11の分散値λ
1と外周コア12a〜12cの分散値λ
2の平均値λ
2aveとの差Δλ
aveは、λ
2ave−λ
1で示される。この差Δλ
aveは、中心コア11となるコアロッド10Rの区間と、外周コア12a〜12cとなるコアロッド10Rの区間との選択の仕方により変化する。
【0079】
また、上記のようにコアロッド10Rの屈折率は、長手方向で変化する傾向があるため、コアロッド10Rの一部の区間が中心コア11とされ、コアロッド10Rの他の一部の区間が外周コア12a〜12cとされてマルチコア光ファイバ1とされる場合における外周コア12a〜12cの上記FBGによる反射波長λ
B2はそれぞれの外周コア12で互いに異なる傾向にあり、中心コア11の上記FBGによる反射波長λ
B1と外周コア12a〜12cの上記FBGによる反射波長λ
B2とは互いに異なる傾向にある。また、中心コア11の反射波長λ
B1及び外周コア12a〜12cのそれぞれの反射波長λ
B2は、長手方向で変化する傾向にある。そこで、本工程では、中心コア11とされるコアロッド10Rの区間及び外周コア12a〜12cとされるコアロッド10Rのそれぞれの区間がキャピラリ13Rの各孔内に配置された状態において、長手方向の同一の位置での中心コア11の反射波長λ
B1と外周コア12a〜12cの反射波長λ
B2の平均値λ
B2aveとの差Δλ
Baveを求める。この中心コア11の反射波長λ
B1と外周コア12a〜12cの反射波長λ
B2の平均値λ
B2aveとの差Δλ
Baveは、λ
B2ave−λ
B1で示される。この差Δλ
Baveは、中心コア11となるコアロッド10Rの区間と、外周コア12a〜12cとなるコアロッド10Rの区間との選択の仕方により変化する。
【0080】
こうして、中心コア11の分散値λ
1と外周コア12a〜12cの分散値λ
2の平均値λ
2aveとの差Δλ
ave、及び、中心コア11の反射波長λ
B1と外周コア12a〜12cの反射波長λ
B2の平均値λ
B2aveとの差Δλ
Baveが求められる。
【0081】
(選択工程PS5)
本工程は、差Δλ
aveと差Δλ
Baveとを用いて、中心コア11となるコアロッド10Rの区間のキャピラリ13Rに対する比屈折率差Δ
1と、外周コア12a〜12cとなるコアロッド10Rの区間のキャピラリ13Rに対する比屈折率差Δ
2の平均Δ
2aveとが実質的に同一となるように、中心コア11となるコアロッド10Rの区間と、外周コア12a〜12cとなるコアロッド10Rの区間とを選択する工程である。
【0082】
上記のように、コアロッド10Rの屈折率は、長手方向で変化する傾向があるため、比屈折率差Δ
1と比屈折率差Δ
2の平均Δ
2aveとが実質的に同一となる区間を選択する。本工程では、差Δλ
ave及び差Δλ
Baveを用いて、比屈折率差Δ
1と比屈折率差Δ
2の平均Δ
2aveとが実質的に同一となる区間を選択する。中心コア11のクラッド13に対する比屈折率差Δ
1と、外周コア12a〜12cのクラッド13に対する比屈折率差Δ
2の平均Δ
2aveとの差δΔ
aveは、式(14)で示される。そこで、当該差δΔ
aveが−0.005以上0.005以下となるように、中心コア11となるコアロッド10Rの区間と、外周コア12a〜12cとなるコアロッド10Rの区間とを選択する。つまり、上記式(15)を満たすように、中心コア11となるコアロッド10Rの区間と、外周コア12a〜12cとなるコアロッド10Rの区間とを選択する。なお、上記式(17)を満たすように、中心コア11となるコアロッド10Rの区間と、外周コア12a〜12cとなるコアロッド10Rのそれぞれの区間とを選択することがより好ましい。
【0083】
こうして、中心コア11となるコアロッド10Rの区間のキャピラリ13Rに対する比屈折率差Δ
1と、外周コア12a〜12cとなるコアロッド10Rの区間のキャピラリ13Rに対する比屈折率差Δ
2の平均Δ
2aveとが実質的に同一となるように、中心コア11となるコアロッド10Rの区間と、外周コア12a〜12cとなるコアロッド10Rの区間とが選択される。
【0084】
(配置工程PS6)
本工程は、中心コア11として選択されたコアロッド10Rの区間をキャピラリ13Rの中心孔11H内に配置し、外周コア12a〜12cとして選択されたコアロッドのそれぞれの区間をキャピラリ13Rのそれぞれの外周孔12H内に配置する工程である。こうして、
図7に示すように、中心コア11として選択されたコアロッド10Rの区間がキャピラリ13Rの中心孔11H内に配置され、外周コア12a〜12cとして選択されたコアロッド10Rのそれぞれの区間が、キャピラリ13Rのそれぞれの外周孔12H内に配置された母材1Rとなる。なお、配置工程後に、必要に応じて、キャピラリ13Rとそれぞれのコアロッド10Rとの間の隙間を潰すコラプス工程が施されても良い。
【0085】
(線引工程PS7)
本工程は、コアロッド10Rのそれぞれの区間が配置されたキャピラリ13Rを線引きする工程である。
図8は、本工程の様子を示す図である。まず、本工程を行う準備段階として、配置工程PS6により中心コア11として選択されたコアロッド10Rの区間がキャピラリ13Rの中心孔11H内に配置され、外周コア12a〜12cとして選択されたコアロッド10Rのそれぞれの区間が、キャピラリ13Rのそれぞれの外周孔12H内に配置された母材1Rを紡糸炉110に設置する。
【0086】
次に、紡糸炉110の加熱部111を発熱させて、母材1Rを加熱する。このとき母材1Rの下端は、例えば2000℃に加熱され溶融状態となる。そして、母材1Rからガラスが溶融して線引きされる。このとき、母材1Rを軸中心に回転させる。上記のように、例えば、単位長さ当たりの外周コア12の螺旋回数が50ターン/m程度とされる場合、ガラスが1m線引きされる毎に、母材1Rを50回転させる。また、中心コア11と外周コア12a〜12cとの距離dの平均をd
aveとし、単位長さ当たりの外周コア12の螺旋回数をf
wとする場合に、中心コア11の実効屈折率n
e1及び外周コア12a〜12cの実効屈折率n
e2の平均n
e2aveが上記式(9)を満たすように、線引をする。
【0087】
そして、線引きされた溶融状態のガラスは、紡糸炉110から出ると、すぐに固化して、中心孔11H内に配置されたコアロッド10Rが中心コア11となり、それぞれの外周孔12H内に配置されたコアロッド10Rが外周コア12a〜12cとなり、
図1に示すマルチコア光ファイバとなる。その後、このマルチコア光ファイバは、冷却装置120を通過して、適切な温度まで冷却される。冷却装置120から出たマルチコア光ファイバは、必要に応じて保護層となる紫外線硬化性樹脂が入ったコーティング装置131を通過し、この紫外線硬化性樹脂で被覆される。更に紫外線照射装置132を通過し、紫外線が照射されることで、紫外線硬化性樹脂が硬化して保護層が形成される。そして、マルチコア光ファイバ1は、ターンプーリー141により方向が変換され、リール142により巻取られる。
【0088】
また、後の工程として、マルチコア光ファイバ1の側方から所定の光を照射して、中心コア11及び各外周コア12a〜12cにFBGを形成する。
【0089】
以上説明したように、中心コア11の屈折率の温度依存性と外周コア12a〜12cの屈折率の平均の温度依存性とが実質的に同じであり、上記式(9)を満たすマルチコア光ファイバ1を製造するためには、中心コア11となるコアロッドと外周コア12a〜12cとなるコアロッドの比屈折率差が実質的に同じであることが好ましい。そこで、1つのコアロッド10Rから、中心コア11となるコアロッド10Rの区間と外周コア12a〜12cとなるコアロッド10Rの区間と選択すれば、中心コア11と外周コア12a〜12cとで比屈折率差を実質的に同じにし得る。しかし、1つのコアロッドであっても屈折率の分布が生じるため、本実施形態のマルチコア光ファイバの製造方法では、コアロッド10Rの屈折率分布を測定して、当該屈折率分布から上記の差Δλ
aveと差Δλ
Baveとを求めて、この結果から、中心コア11となるコアロッド10Rの区間の比屈折率差Δ
1と、外周コア12a〜12cとなるコアロッド10Rの区間の比屈折率差Δ
2とが実質的に同一となるように、中心コア11となるコアロッド10Rの区間と、外周コア12a〜12cとなるコアロッド10Rの区間とを選択する。こうして、中心コア11の比屈折率差Δ
1と外周コア12の比屈折率差Δ
2とが実質的に同じであるマルチコア光ファイバ1を製造することができる。
【0090】
以上、本発明について実施形態を例示して説明したが、本発明は上記実施形態に制限されることなく、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。
【0091】
例えば、上記実施形態では、中心コア11と3つの外周コア12a〜12cを有するマルチコア光ファイバ1を例に説明したが、外周コア12は1つ以上であればよく、3つに限定されない。例えば、外周コア12の数を6つとすると、マルチコア光ファイバの断面で見た場合に、中心コア11と合わせて最密充填配列にすることができるため望ましい。
【0092】
また、中心コアのコア径と外周コアのコア径とが同じであってもよく、同じでなくてもよい。また、中心コアのクラッドに対する比屈折率差と外周コアのクラッドに対する比屈折率差とが同じであってもよく、同じでなくてもよい。外周コアが複数存在する場合には、中心コアのコア径と複数の外周コアのコア径の平均値とが同じであってもよく、同じでなくてもよい。また、外周コアが複数存在する場合には、中心コアのクラッドに対する比屈折率差と各外周コアのクラッドに対する比屈折率差の平均値とが同じであってもよく、同じでなくてもよい。
【0093】
また、上述した実施形態では、理解を容易にするために、マルチコア光ファイバ1の中心コア11及び外周コア12a〜12cに、マルチコア光ファイバ1の長手方向の全長に亘ってFBGが形成されている例について説明した。しかしながら、FBGは必ずしもマルチコア光ファイバ1の長手方向の全長に亘って形成されている必要は無く、長手方向の一部の領域にのみ形成されていても良く、FBGが形成されていなくても良い。
【0094】
また、中心コア11及び外周コア12a〜12cに形成されるFBGは、一定周期のものであっても良く、周期が連続的に変化するもの(チャープグレーティング)であっても良い。
【0095】
ところで、上記実施形態では、中心コア11の屈折率の温度依存性と外周コア12の屈折率の平均の温度依存性とが実質的に同じである例について説明した。ところで、環境温度の変化を然程問題としない環境下においても、高い測定精度が求められる場合がある。この場合、次のマルチコア光ファイバであっても、高い測定精度を実現することが可能な光ファイバセンサとし得るマルチコア光ファイバとなり得る。つまり、クラッド13の中心に形成された中心コア11と、当該中心コア11の周囲を螺旋状に巻回する少なくとも1つの外周コア12とを備え、中心コア11と外周コア12との距離dの平均をd
aveとし、単位長さ当たりの外周コア12の螺旋回数をf
wとする場合に、中心コア11の実効屈折率n
e1と外周コア12の実効屈折率n
e2の平均n
e2aveとは、上記式(9)を満たすことを特徴とするものである。このようなマルチコア光ファイバによれば、中心コア11の実効屈折率n
e1と外周コア12の実効屈折率n
e2の平均n
e2aveとが上記式(9)を満たすことで、中心コア11と外周コア12との温度依存性が実質的に同じでは無い場合であっても、中心コア11の実効屈折率n
e1と外周コア12の実効屈折率n
e2の平均n
e2aveとが同じ場合と比べて、中心コア11の光路長と外周コア12の光路長との差の平均を小さくすることができる。このため、このマルチコア光ファイバを光ファイバセンサとして用いる場合、高い測定精度を実現することできる。
【0096】
また、このように環境温度の変化を然程問題とせず、上記のように式(9)を満たすマルチコア光ファイバでは、外周コア12の実効屈折率n
e2の平均n
e2aveは、中心コア11の光路長と外周コア12の光路長の平均との比率に合うように、中心コア11の実効屈折率n
e1よりも低くされることが好ましい。
【0097】
また、このように環境温度の変化を然程問題とせず、上記のように式(9)を満たすマルチコア光ファイバでは、中心コア11の実効屈折率n
e1と外周コアの実効屈折率n
e2の平均n
e2aveの比率は、式(13)を満たすことが好ましい。なお、この式(13)は、請求項3の式と同様である。
【0098】
また、このように環境温度の変化を然程問題とせず、上記のように式(9)を満たすマルチコア光ファイバでは、中心コア11及び外周コア12には、同じ濃度のゲルマニウムが第1添加剤として添加され、外周コア12には、屈折率を低下させる作用を有する第2添加剤が添加されていることとしても良い。実効屈折率は、コアのクラッドに対する比屈折率差とコア径とが影響する。従って、環境温度の変化を然程問題としない場合には、外周コア12に中心コア11とは異なる添加剤が添加されて外周コア12の屈折率が低下されることで、上記式(9)が満たされても良い。
【0099】
また、このように環境温度の変化を然程問題とせず、上記のように式(9)を満たすマルチコア光ファイバにおいても、長手方向の少なくとも一部の領域にFBGが形成されていることが好ましい。
【0100】
次に、実施例、比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0101】
(実施例1)
図1に示す長さ5mのマルチコア光ファイバ1を作製した。このマルチコア光ファイバ1では、クラッド13の外径が約125μmであり、コア径が約5μmであり、コア間距離が35μmであり、中心コア11を基準として外周コア12a〜12cが互いに120°の間隔で配置されていた。また、中心コア11と外周コア12にはゲルマニウムのみを添加した。このマルチコア光ファイバ1の中心コア11の分散値λ
1と外周コア12の分散値λ
2の平均値λ
2aveとの差Δλ
aveは、−0.5ps/nm/kmであり、中心コア11に形成されたFBGによる反射波長λ
B1と外周コア12に形成されたFBGによる反射波長λ
B2の平均値λ
B2aveとの差Δλ
Baveは、0pmであった。上記式(14)から、中心コア11のクラッド13に対する比屈折率差Δ
1と外周コア12のクラッド13に対する比屈折率差Δ
2の平均Δ
2aveとの差δΔ
aveは−0.002%と求められた。
図4には、このマルチコア光ファイバがプロットされている。次に、このマルチコア光ファイバを形状の測定をする光ファイバセンサとして、平面上に渦巻き状に配置した。次に室温23度の環境下で校正を行い、次に室温35度の環境下で形状のセンシングを行った。その結果、マルチコア光ファイバが配置された平面に垂直な方向に0.1mmの測定誤差が認められた。このような小さな誤差であれば、光ファイバセンサとして十分に高い精度と言える。
【0102】
(実施例2)
差Δλが−0.1ps/nm/kmであり、差Δλ
Baveが70pmであること以外は、実施例1と同様のマルチコア光ファイバを準備した。このマルチコア光ファイバの差δΔ
aveは0.000%と求められた。
図4には、このマルチコア光ファイバがプロットされている。次に、このマルチコア光ファイバを実施例1と同様にして、マルチコア光ファイバセンサとして配置して校正を行い、センシングを行った。その結果、マルチコア光ファイバが配置された平面に垂直な方向に0.3mmの測定誤差が認められた。このような小さな誤差であれば、光ファイバセンサとして十分に高い精度と言える。
【0103】
(比較例)
差Δλが0.2ps/nm/kmであり、差Δλ
Baveが70pmであること以外は、実施例1と同様のマルチコア光ファイバを準備した。このマルチコア光ファイバの差δΔ
aveは0.006%と求められた。
図4には、このマルチコア光ファイバがプロットされている。次に、このマルチコア光ファイバを実施例1と同様にして、マルチコア光ファイバセンサとして配置して校正を行い、センシングを行った。その結果、マルチコア光ファイバが配置された平面に垂直な方向に5mmの大きな測定誤差が認められた。このマルチコア光ファイバは、校正が行われた室温23度の環境下では、上記式(9)を満たすが、測定が行われた室温35度の環境下では、上記式(9)を満たさないと考えられる。
【0104】
実施例1で説明したように、差δΔ
aveが−0.002%で測定誤差が0.1mmと小さく、実施例2で説明したように、差δΔ
aveが0.000%で測定誤差が0.3mmと小さい。マルチコア光ファイバ1の対称性を考慮すると、差δΔ
aveが0.002%や0.000%であっても測定誤差は小さいと考えられる。この結果に対し、比較例に説明したように、差δΔ
aveが0.006%で測定誤差が5mmと大きい。この結果より、差δΔ
aveが−0.005%以上0.005%以下であれば、マルチコア光ファイバを光ファイバセンサとして用いる場合に、環境温度が変化しても、式(9)を満たし、測定誤差が小さくなると考えられる。
【0105】
(実施例3)
中心コア11のコア径と外周コア12のコア径の平均D
2aveとを相違させたこと以外は、実施例1と同様のマルチコア光ファイバを準備した。また、外周コア12の螺旋回数f
wは50回/mである。具体的には、中心コア11のコア径D
1は4.80μmであり、外周コア12のコア径D
2の平均D
2aveは4.77μmであった。このマルチコア光ファイバの差δΔ
aveは−0.002%と求められた。
図4には、このマルチコア光ファイバがプロットされている。次に、このマルチコア光ファイバを実施例1と同様にして、マルチコア光ファイバセンサとして配置して校正を行い、センシングを行った。その結果、マルチコア光ファイバが配置された平面に垂直な方向に0.1mmの測定誤差が認められた。このような小さな誤差であれば、光ファイバセンサとして十分に高い精度と言える。すなわち、中心コアのコア径と外周コアのコア径とが相違しても、環境温度が変化する場合であっても高い測定精度を実現し得ることがわかった。
【0106】
(実施例4)
中心コアのコア径と外周コアのコア径とが相違する場合について、さらに研究を行った。下記表1〜表8は、コアのクラッドに対する比屈折率差Δとコアのコア径Dとから求めた実効屈折率を示したものである。具体的には、下記表1〜表8は、中心コアのコア径を4.80μmとしたときに、外周コアの取り得るコア径および比屈折率差Δの範囲並びに上記の範囲で取り得る外周コアにおける実効屈折率の値を示したデータである。なお、例えば上記実施形態のように外周コアが複数配置される場合は、表1〜表8における実効屈折率の値は、複数の外周コアの実効屈折率の平均値と見做し得る。例えば、上記実施形態のように中心コア11の周囲に3つの外周コア12が配置される場合は、表1〜表8における実効屈折率の値は、3つの外周コア12の実効屈折率の平均値と見做し得る。なお、表1〜表8は、紙面に収めるために1つの表が8つに分割されたものである。
【0107】
本実施例では、中心コア11の比屈折率差Δ
1を表6において下線付き太字で示す1.100%に設定し、中心コア11のコア径D
1を表6において下線付き太字で示す4.8000μmに設定した。したがって、中心コア11の実効屈折率n
e1は1.4515433となる。また、コア間距離を実施例1と同様に35μmに設定し、外周コア12の螺旋回数f
wを実施例3と同様に50回/mに設定して、上記式(8)を満たす外周コア12の実効屈折率n
e2の平均n
e2aveを求めた。実効屈折率n
e2が上記式(8)を満たす場合、引っ張り特性がより良好なり得る。すなわち、マルチコア光ファイバが引っ張られる場合であっても、光ファイバセンサとして良好な特性を示し得る。このように求められた平均n
e2aveは、表1〜表8において下線付き太字で示される値であることが分かった。つまり、式(8)を満たす平均n
e2aveに対応する外周コアのコア径D
2の平均D
2aveは、比屈折率差Δが1.090%以上1.110%以下の範囲では、4.6700μm(表2参照)以上4.8525μm(表7参照)以下であることが分かった。
【0108】
次に、上記式(14)から、中心コア11のクラッド13に対する比屈折率差Δ
1と外周コア12のクラッド13に対する比屈折率差Δ
2の平均Δ
2aveとの差δΔ
aveを求めた。このうち、差δΔ
aveが−0.005%以上0.005%以下となる外周コア12の実効屈折率n
e2の平均n
e2aveは、表1〜表8をつなぎ合わせた場合において、4.6925μmより大きく4.6950μm以下のコア径の値を示す太線と、4.8250μm以上、かつ4.8275μmよりも小さいコア径の値を示す太線と、1.094%よりも大きく1.095%よりも小さい比屈折率差の値を示す太線と、1.105%よりも大きく1.106%よりも小さい比屈折率差の値を示す太線と、によって囲まれる領域内の値であることが分かった。つまり、差δΔ
aveが−0.005%以上0.005%以下となる平均n
e2aveの値に対応する外周コア12のコア径D
2の平均D
2aveが4.6950μm(表1,2参照)以上4.8250μm(表5,6参照)以下であり、上記平均n
e2aveの値に対応する外周コア12の比屈折率差Δ
2の平均Δ
2aveが1.095%(表1,3,5,7参照)以上1.105%(表2,4,6,8参照)以下であることが分かった。平均D
2aveが4.6950μm以上4.8250μm以下であり、平均Δ
2aveが1.095%以上1.105%以下である場合、引っ張り特性がより良好なり得る。すなわち、マルチコア光ファイバが引っ張られた後であっても、光ファイバセンサとして良好な特性を示し得る。すなわち、中心コアのコア径と外周コアのコア径とが異なる場合であっても、中心コアと外周コアとの温度依存性が実質的に同一になり、マルチコア光ファイバの引っ張り特性が良好になり得る。
【0109】
したがって、中心コア11の比屈折率差Δ
1が1.100%であり、中心コア11のコア径D
1が4.8000μmであり、すなわち、中心コア11の実効屈折率n
e1が1.4515433であり、コア間距離が35μmであり、外周コア12の螺旋回数f
wが50回/mである場合に、式(8)を満たし、かつ、差δΔ
aveが−0.005%以上0.005%以下となる外周コア12のコア径D
2の平均D
2aveは、上記4つの太線で囲まれる領域内における下線付き太字で表される数値群において、4.6950μm以上4.8250μm以下であることが分かった。
【0110】
ここで、中心コア11のコア径D
1に対する外周コア12のコア径D
2の平均D
2aveと中心コア11のコア径D
1との差の比δD
2、すなわち、
δD
2={(D
2ave−D
1)/D
1}×100
を定義する。そうすると、中心コア11の比屈折率差Δ
1が1.100%であり、中心コア11のコア径D
1が4.8000μmであり、すなわち、中心コア11の実効屈折率n
e1が1.4515433であり、コア間距離が35μmであり、外周コア12の螺旋回数f
wが50回/mである場合に、式(8)を満たし、かつ、差δΔ
aveが−0.005%以上0.005%以下となるδD
2は、上記のように、コア径D
2の平均D
2aveが4.6950μm以上4.8250μm以下であるため、−2.19%以上0.52%以下となることが分かった。
【0111】
なお、上記実施例4の結果は、中心コア11のコア径D
1が4.8000μmであり、コア間距離が35μmであり、外周コア12の螺旋回数f
wが50回/mである条件下において、式(8)を満たし、かつ、差δΔ
aveが−0.005%以上0.005%以下となるδD
2が−2.19%以上0.52%以下であることを示している。しかし、中心コア11のコア径D
1が4.6600μm以上4.890μm以下であり、コア間距離が33μm以上37μm以下であり、外周コア12の螺旋回数f
wが45回/m以上55回/m以下である場合でも、式(8)を満たし、かつ、差δΔ
aveが−0.005%以上0.005%以下となるδD
2は概ね−2.19%以上0.52%以下となる。
【0112】
ただし、中心コアのコア径D
1が4.695μm以上4.825μm以下であることがより好ましい。中心コアのコア径D
1が4.695μm以上4.825μm以下であることにより、中心コアのコア径D
1と外周コアのコア径D
2の平均D
2aveとが異なる場合でも、環境温度の変化に左右されずに高い測定精度を実現することがより容易になり得る。