(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態のプリント配線基板貼付フィルム101(以下、単に貼付フィルムともいう。)は、回路パターン隠蔽層112(以下、単に隠蔽層ともいう。)と、隠蔽層112の一方の面に形成された接着剤層111とを備えている。
【0015】
本実施形態の貼付フィルム101は、
図1に示すようにプリント配線基板102に貼付できる。プリント配線基板102は、例えばベース層121とベース層121の表面に設けられた回路パターン122とを有している。回路パターン122は、例えば絶縁性の接着剤層123及び絶縁フィルム124に覆われている。
【0016】
ベース層121は、絶縁性の材料で構成される。絶縁性の材料としては、絶縁性樹脂組成物やセラミックス等を使用することができる。絶縁性樹脂組成物としては、例えばポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリエステルイミド系樹脂、ポリエーテルニトリル系樹脂、ポリエーテルスルフォン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、架橋ポリエチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリベンズイミダゾール系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリイミドアミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂及びポリフェニレンサルファイド系樹脂から選択される少なくとも1種を使用することができる。
【0017】
回路パターン122は、導電性の材料で構成される。導電性の材料としては、金属箔や導電性フィラーと樹脂組成物の混合物を印刷・硬化した導電性材料を用いることができるが、費用の観点から銅箔を用いることが好ましい。
【0018】
回路パターン122の厚さは特に限定されないが、1μm〜100μmが好ましく、1〜50μmがより好ましい。回路パターンの厚さを1μm以上とすることによりプリント配線基板102の製造コストを低減することができる。厚さを100μm以下とすることによりプリント配線基板102を薄型化できる。
【0019】
接着剤層123は、絶縁性の材料で構成される。絶縁性の材料としては絶縁性樹脂組成物が好ましく、例えばポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリエステルイミド系樹脂、ポリエーテルニトリル系樹脂、ポリエーテルスルフォン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、架橋ポリエチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリベンズイミダゾール系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリイミドアミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂及びポリフェニレンサルファイド系樹脂から選択される少なくとも1種を使用することができる。
【0020】
接着剤層123の厚さは特に限定されないが、1μm〜50μmが好ましい。
【0021】
絶縁フィルム124は、絶縁性の材料で構成される。絶縁性の材料としては絶縁性樹脂組成物が好ましく、例えばポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリエステルイミド系樹脂、ポリエーテルニトリル系樹脂、ポリエーテルスルフォン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、架橋ポリエチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリベンズイミダゾール系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリイミドアミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂及びポリフェニレンサルファイド系樹脂から選択される少なくとも1種を使用することができる。
【0022】
絶縁性フィルム124の厚さは特に限定されないが、1μm〜100μmが好ましく、10μm〜25μmがより好ましい。厚さを1μm以上とすることによりプリント配線基板の製造コストを低減することができる。厚さを100μm以下とすることによりプリント配線基板を薄型化できる。
【0023】
隠蔽層112を着色して貼付フィルム101を不透明にすれば、回路パターン122を直接視認することはできなくなる。例えば、全光線透過率が好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下のフィルムにより回路パターン122を被覆すれば、回路パターン122を直接視認することはほぼ不可能となる。しかし、回路パターン122によって、隠蔽層112の表面に凹凸が形成される。一般的な回路パターン122は、銅のラインにより形成されており、その高さは数μm〜十数μmである。ラインが存在する部分と、存在しない部分との高さの差は、接着剤層123等が埋め込まれることにより小さくなるため、隠蔽層112の表面に生じる凹凸の高さは、数μmである。しかし、このような僅かな凹凸であっても、光を反射しやすい表面においては、凹凸の存在を視認でき、回路パターン122を隠蔽することができない。
【0024】
隠蔽性を向上させるために、隠蔽層112の表面に微細な凹凸を形成し、隠蔽層112における光の反射を低減することが考えられる。しかしながら、本願発明者らは、回路パターンの隠蔽性は、一般的な表面粗さの指標である日本工業規格(JIS)B0601:2001に準拠した算術平均粗さ(Ra)及び国際標準化機構(ISO)25178に準拠した三次元算術平均高さ(Sa)等とは相関しないことを見いだした。一方、隠蔽層112の表面において、JISB0601:2001に準拠した尖り度(Rku)及びISO25178に準拠した尖り度(Sku)を所定範囲内の値とすることにより、隠蔽性を向上できることを見いだした。
【0025】
具体的に、隠蔽層112の接着剤層111と反対側の面(表面)におけるRkuは、2.5以上、好ましくは2.6以上、より好ましくは2.7以上、3.0以下、好ましくは2.9以下である。また、隠蔽層112の表面におけるSkuは、1.8以上、好ましくは1.9以上、より好ましくは2.1以上、4.0以下、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.5以下である。Rku及びSkuの少なくとも一方をこのような値とすることにより、貼付フィルム101による回路パターン122の隠蔽性を向上させることができる。
【0026】
また、隠蔽層112の表面における、切断レベルが20%の場合の相対負荷長さ率(Rmr)を好ましくは5.3%以上、より好ましくは5.4%以上、さらに好ましくは5.5%以上とし、好ましくは8.5%以下、より好ましくは8.0%以下、さらに好ましくは7.8%以下、さらにより好ましくは7.0%以下、さらに好ましくは6.0%以下とすることができる。Rkuに加えて、Rmrをこのような値とすることにより、隠蔽性をさらに向上させることができる。
【0027】
また、隠蔽層112の表面における、コア部と突出山部とを分離する負荷面積率を10%、コア部と突出谷部とを分離する負荷面積率を80%としたときのコア部の実体体積(Vmc)を好ましくは1.8mL/m
2以上、より好ましくは2.0mL/m
2以上、さらに好ましくは2.2mL/m
2以上とし、好ましくは3.0mL/m
2以下とすることができる。Skuに加えて、Vmcをこのような値とすることにより、隠蔽性をさらに向上させることができる。
【0028】
なお、Rku及びRmrは、実施例に示すように、JISB0601:2001に準拠した方法により測定することができる。Sku及びVmcは、実施例に示すように、ISO25178に準拠した方法により測定することができる。
【0029】
隠蔽層112は、金属、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又は活性エネルギー線硬化性樹脂等により形成することができる。金属としては、ニッケル、銅、銀、錫、金、パラジウム、アルミニウム、クロム、チタン、及び亜鉛等のいずれか、又は2つ以上を含む合金を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、スチレン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、イミド系樹脂、又はアクリル系樹脂等を用いることができる。熱硬化性樹脂としては、特に限定されないが、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、末端にイソシアネート基を有するウレタン系樹脂、末端にイソシアネート基を有するウレア系樹脂、末端にイソシアネート基を有するウレタンウレア系樹脂、メラミン系樹脂、又はアルキッド系樹脂等を用いることができる。また、活性エネルギー線硬化性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する重合性化合物等を用いることができる。これらの樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
これらの樹脂を、エンボス加工等によって凹凸形状を付与した剥離性基材の表面に塗布、乾燥させることにより、所定の表面性状を有する隠蔽層112を形成することができる。エンボス加工に代えて表面に凹凸を有する艶消し層を表面に設けたフィルムを剥離性基材とすることもできる。艶消し層は、微粒子を含む樹脂組成物をフィルム表面に塗布したり、フィルム表面に形成した樹脂層の表面をエンボス加工したりすることにより形成できる。
【0031】
また、凹凸を有する剥離性基材を用いる以外に、これらの樹脂により形成した樹脂層の表面にドライアイス等を吹き付ける方法や、凹凸形状を有する鋳型を押し付ける方法等により、所定の表面性状を有する隠蔽層112を形成することもできる。
【0032】
隠蔽層112の表面性状を調整するために、微粒子を添加することもできる。隠蔽層112に添加する微粒子は特に限定されないが、例えば、樹脂微粒子又は無機微粒子を使用することができる。樹脂微粒子は、アクリル樹脂微粒子、ポリアクリロニトリル微粒子、ポリウレタン微粒子、ポリアミド微粒子、及びポリイミド微粒子等とすることができる。また、無機微粒子は、炭酸カルシウム微粒子、珪酸カルシウム微粒子、クレー、カオリン、タルク、シリカ微粒子、ガラス微粒子、珪藻土、雲母粉、アルミナ微粒子、酸化マグネシウム微粒子、酸化亜鉛微粒子、硫酸バリウム微粒子、硫酸アルミニウム微粒子、硫酸カルシウム微粒子、及び炭酸マグネシウム微粒子等とすることができる。これらの、樹脂微粒子及び無機微粒子は単独で使用することも、複数を組み合わせて使用することもできる。
【0033】
隠蔽層112は、全光線透過率が好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下とすることができる。全光線透過率を20%以下とすることにより、貼付フィルム101をプリント配線基板102に貼付した際に、回路パターン122を直接視認しにくくできる。
【0034】
隠蔽層112は、光を反射しにくくする観点から、黒色系着色剤を含んでいることが好ましい。黒色系着色剤は、黒色顔料又は、複数の顔料を減色混合して黒色化した混合顔料等とすることができる。黒色顔料は、例えばカーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ(CNT)、ペリレンブラック、チタンブラック、鉄黒、及びアニリンブラック等のいずれか又はこれらの組み合わせとすることができる。混合顔料は、例えば赤色、緑色、青色、黄色、紫色、シアン及びマゼンタ等の顔料を混合して用いることができる。黒色系着色剤の添加量は、光を反射しにくくする観点から、樹脂100質量部に対して0.5質量%以上とすることが好ましく、1質量%以上とすることがより好ましい。
【0035】
隠蔽層112には、必要に応じて、硬化促進剤、粘着性付与剤、酸化防止剤、顔料、染料、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング剤、充填剤、難燃剤、粘度調節剤、及びブロッキング防止剤等の少なくとも1つが含まれていてもよい。
【0036】
隠蔽層112の厚さは、特に限定されず、必要に応じて適宜設定することができるが、隠蔽性の実現、形成の容易さ及びフレキシブル性の確保等の観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは4μm以上、そして好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下とすることができる。
【0037】
本実施形態において、接着剤層111は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及び活性エネルギー線硬化性樹脂等の少なくとも1つにより形成することができる。
【0038】
接着剤層111が熱可塑性樹脂を含む場合、熱可塑性樹脂として例えばスチレン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、イミド系樹脂、及びアクリル系樹脂等を用いることができる。これらの樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
接着剤層111が熱硬化性樹脂を含む場合、熱硬化性樹脂として例えばフェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、ポリアミド系樹脂及びアルキッド系樹脂等を用いることができる。活性エネルギー線硬化性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する重合性化合物等を用いることができる。これらの樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
熱硬化性樹脂は、例えば反応性の第1の官能基を有する第1樹脂成分と、第1の官能基と反応する第2樹脂成分とを含む。第1の官能基は、例えばエポキシ基、アミド基、又は水酸基等とすることができる。第2の官能基は、第1の官能基に応じて選択すればよく、例えば第1官能基がエポキシ基である場合、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基及びアミノ基等とすることができる。具体的には、例えば第1樹脂成分をエポキシ樹脂とした場合には、第2樹脂成分としてエポキシ基変性ポリエステル樹脂、エポキシ基変性ポリアミド樹脂、エポキシ基変性アクリル樹脂、エポキシ基変性ポリウレタンポリウレア樹脂、カルボキシル基変性ポリエステル樹脂、カルボキシル基変性ポリアミド樹脂、カルボキシル基変性アクリル樹脂、カルボキシル基変性ポリウレタンポリウレア樹脂、及びウレタン変性ポリエステル樹脂等を用いることができる。これらの中でも、カルボキシル基変性ポリエステル樹脂、カルボキシル基変性ポリアミド樹脂、カルボキシル基変性ポリウレタンポリウレア樹脂、及びウレタン変性ポリエステル樹脂が好ましい。また、第1樹脂成分が水酸基である場合には、第2樹脂成分としてエポキシ基変性ポリエステル樹脂、エポキシ基変性ポリアミド樹脂、エポキシ基変性アクリル樹脂、エポキシ基変性ポリウレタンポリウレア樹脂、カルボキシル基変性ポリエステル樹脂、カルボキシル基変性ポリアミド樹脂、カルボキシル基変性アクリル樹脂、カルボキシル基変性ポリウレタンポリウレア樹脂、及びウレタン変性ポリエステル樹脂等を用いることができる。これらの中でも、カルボキシル基変性ポリエステル樹脂、カルボキシル基変性ポリアミド樹脂、カルボキシル基変性ポリウレタンポリウレア樹脂、及びウレタン変性ポリエステル樹脂が好ましい。
【0041】
熱硬化性樹脂は、熱硬化反応を促進する硬化剤を含んでいてもよい。熱硬化性樹脂が第1の官能基と第2の官能基とを有する場合、硬化剤は、第1の官能基及び第2の官能基の種類に応じて適宜選択することができる。第1の官能基がエポキシ基であり、第2の官能基が水酸基である場合には、イミダゾール系硬化剤、フェノール系硬化剤、及びカチオン系硬化剤等を使用することができる。これらは1種を単独で使用することもでき、2種以上を併用することもできる。この他、任意成分として消泡剤、酸化防止剤、粘度調整剤、希釈剤、沈降防止剤、レベリング剤、カップリング剤、着色剤、及び難燃剤等を含んでいてもよい。
【0042】
接着剤層111の厚さは、特に限定されないが、接着性及びフレキシブル性の確保等の観点から1μm〜50μmとすることが好ましい。
【0043】
接着剤層111は、常温(例えば20℃)の環境下でタック性を有する、いわゆる粘着剤性を有する層とすることもできる。接着剤層111が常温の環境下でタック性を有することで、プリント配線基板102の任意の位置に、容易にプリント配線基板用貼付フィルム101を貼り付けることができる。
【0044】
接着剤層111に導電性フィラーを添加して、接着剤層111を導電性を有する導電性接着剤層とすることもできる。接着剤層111を導電性とし、隠蔽層112を絶縁保護層とすることにより、貼付フィルム101を電磁波シールドフィルムとして用いることができる。貼付フィルム101を電磁波シールドフィルムとして用いる場合は、導電性の接着剤層111を、プリント配線基板102に設けられたグランドパターンと接続すればよい。
【0045】
導電性フィラーは、特に限定されないが、例えば、金属フィラー、金属被覆樹脂フィラー、カーボンフィラー及びそれらの混合物を使用することができる。金属フィラーとしては、銅粉、銀粉、ニッケル粉、銀コ−ト銅粉、金コート銅粉、銀コートニッケル粉、及び金コートニッケル粉等を挙げることができる。これら金属粉は、電解法、アトマイズ法、又は還元法等により作製することができる。中でも銀粉、銀コート銅粉及び銅粉のいずれかが好ましい。
【0046】
導電性フィラーは、フィラー同士の接触の観点から、平均粒子径が好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下である。導電性フィラーの形状は特に限定されず、球状、フレーク状、樹枝状、又は繊維状等とすることができる。
【0047】
導電性フィラーの含有量は、用途に応じて適宜選択することができるが、全固形分中で好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。埋め込み性の観点からは、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。また、異方導電性を実現する場合には、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。
【0048】
貼付フィルム101を電磁波シールドフィルムとする場合には、
図2に示すように、隠蔽層112と接着剤層111との間にシールド層113を設けることもできる。シールド層113は、金属箔、蒸着膜及び導電性フィラー等により形成することができる。
【0049】
金属箔は、特に限定されないが、ニッケル、銅、銀、錫、金、パラジウム、アルミニウム、クロム、チタン、及び亜鉛等のいずれか、又は2つ以上を含む合金からなる箔とすることができる。
【0050】
金属箔の厚さは、特に限定されないが、0.5μm以上が好ましく、1.0μm以上がより好ましい。金属箔の厚さが0.5μm以上であると、シールドプリント配線基板に10MHz〜100GHzの高周波信号を伝送したときに、高周波信号の減衰量を抑制することができる。また、金属箔の厚さは12μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、7μm以下がさらに好ましい。金属層の厚さが12μm以下であると、良好な破断伸びを確保することができる。
【0051】
蒸着膜は、特に限定されないが、ニッケル、銅、銀、錫、金、パラジウム、アルミニウム、クロム、チタン、及び亜鉛等を蒸着して形成することができる。蒸着には、電解メッキ法、無電解メッキ法、スパッタリング法、電子ビーム蒸着法、真空蒸着法、化学気相堆積(CVD)法、又はメタルオーガニック堆積(MOCVD)法等を用いることができる。
【0052】
蒸着膜の厚さは、特に限定されないが、0.05μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましい。蒸着膜の厚さが0.05μm以上であると、シールドプリント配線基板において電磁波シールドフィルムが電磁波をシールドする特性に優れる。また、蒸着膜の厚さは0.5μm未満が好ましく、0.3μm未満であることがより好ましい。蒸着膜の厚さが0.5μm未満であると、電磁波シールドフィルムの耐屈曲性が優れ、プリント配線基板に設けられた段差によってシールド層が破壊されることを抑えることができる。
【0053】
導電性フィラーによりシールド層113を形成する場合、導電性フィラーを配合した溶剤を、隠蔽層112の表面に塗布して乾燥することにより、シールド層113を形成することができる。導電性フィラーは、金属フィラー、金属被覆樹脂フィラー、カーボンフィラー及びそれらの混合物を使用することができる。金属フィラーとして、銅粉、銀粉、ニッケル粉、銀コ−ト銅粉、金コート銅粉、銀コートニッケル粉、及び金コートニッケル粉等を用いることができる。これら金属粉は、電解法、アトマイズ法、還元法により作成することができる。金属粉の形状は、球状、フレーク状、繊維状、樹枝状等が挙げられる。
【0054】
本実施形態においてシールド層113の厚さは、求められる電磁シールド効果及び繰り返し屈曲・摺動耐性に応じて適宜選択すればよい。
【0055】
貼付フィルム101は、全光線透過率が好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下である。全光線透過率を20%以下とすることにより、貼付フィルム101をプリント配線基板102に貼り付けた際に、回路パターン122を直接視認しにくくできる。貼付フィルム101の全光線透過率を20%以下にするためには、隠蔽層112及び/又は接着剤層111に、着色剤や導電性フィラー等を添加すればよい。また、金属箔等からなるシールド層113が設けられている場合には、全光線透過率をほぼ0にできる。なお、全光線透過率は、JIS K 7136に準拠して測定することができる。
【実施例】
【0056】
以下に、貼付フィルムについて実施例を用いてさらに詳細に説明する。以下の実施例は例示であり、本発明を限定することを意図するものではない。
【0057】
<剥離性基材の作製>
厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルム)の表面に、ドライアイス微粒子を吹き付けて凹凸を形成させた後、メラミン系樹脂からなる剥離層を設け、剥離性基材1を得た。
【0058】
シリカ粒子、メラミン系樹脂、トルエンからなる艶消し層組成物を調整し、厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面にワイヤーバーを用いて塗布し、加熱乾燥して厚さ5μmの艶消し層を有する剥離性基材2を得た。シリカ粒子の粒径及び添加量を変えることにより、表面状態が異なる剥離基材3〜7を同様にして得た。剥離性基材1〜5の表面(隠蔽層を形成する面)の表面性状を表1にまとめて示す。
【0059】
【表1】
【0060】
<隠蔽層の作製>
固形分量が20質量%となるように、トルエンにビスフェノールA型エポキシ系樹脂(三菱化学製、jER1256)を100質量部、硬化剤として(三菱化学製、ST14)を0.1質量部、黒色系着色剤としてカーボン粒子(東海カーボン製、トーカブラック#8300/F)を15質量部配合し、隠蔽層組成物を調製した。この組成物を、剥離性基材の表面にワイヤーバーを用いて塗布し、加熱乾燥して、剥離性基材の表面に厚さ5μmの隠蔽層を作製した。
【0061】
<接着剤層の作製>
固形分量が20質量%となるように、トルエンにビスフェノールA型エポキシ系樹脂(三菱化学製、jER1256)を100質量部、硬化剤(三菱化学製、ST14)を0.1質量部添加し、撹拌混合して接着剤層組成物を調製した。得られた接着剤層組成物を、表面を離型処理したPETフィルム(以下、支持フィルム)にワイヤーバーを用いて塗布し、加熱乾燥することで、支持フィルム表面に厚さ5μmの接着剤層を形成した。
【0062】
<貼付フィルムの作製>
剥離性基材の表面に形成された隠蔽層と、支持フィルムの表面に形成された接着剤層とを貼り合わせ、100℃に加熱した1対の金属ロールを用いて、5MPaの圧力で加熱加圧して貼付フィルムを得た。得られた貼付フィルムの全光線透過率は、5%以下であった。
【0063】
<評価用基板の作製>
得られた貼付フィルムとプリント配線基板とを、プレス機を用いて温度:170℃、時間:3分、圧力:2〜3MPaの条件で接着した後、剥離性基材をはがして評価用基板を作製した。
【0064】
プリント配線基板は、ポリイミドフィルムからなるベース層121の上に、
図3に示すような回路パターン122が形成されたものを用いた。回路パターン122は、線幅が0.1mm、高さが12μmの銅箔により形成した。ベース層121の上には回路パターン122を覆うように厚さが25μmの接着剤層と、厚さが12.5μmのポリイミドフィルムからなるカバーレイ(絶縁フィルム)を設けた。
【0065】
<表面状態の評価>
コンフォーカル顕微鏡(Lasertec社製、OPTELICS HYBRID、対物レンズ20倍)を用い、JISB0601:2001に準拠して、表面の任意の5か所を測定した。この後、データ解析ソフト(LMeye7)を用いて傾き補正を行い、Rku、Rmr及びRaを測定した。また、ISO25178に準拠して、表面の任意の5か所を測定した。この後、データ解析ソフト(LMeye7)を用いて表面の傾き補正を行い、Sku、Vmr、Sa、Sv及びSzを測定した。なお、Sフィルタのカットオフ波長は0.0025mm、Lフィルタのカットオフ波長は0.8mmとした。また、各数値は5か所を測定した値の平均値とした。
【0066】
<隠蔽性の評価>
評価用基板を、平らなテーブル面上に置き、シールド配線基板の表面の照度が500ルクスの環境下で、評価用基板からの高さが30cmで、45度の角度において、隠蔽層側から回路パターンが視認できるかどうか評価した。回路パターンを視認できない場合を隠蔽性が良好(○)とし、回路パターンを視認できる場合を隠蔽性が不良(×)とした。
【0067】
(実施例1)
剥離性基材1を用いて形成した隠蔽層により貼付フィルムを作成し、評価用基板を得た。剥離性基材を除去した後の評価用基板の隠蔽層の表面におけるRkuは2.6、Skuは2.0であった。切断レベルが20%の場合のRmrは7.7%、コア部と突出山部とを分離する負荷面積率を10%、コア部と突出谷部とを分離する負荷面積率を80%としたときのVmcは2.8mL/m
2であった。また、Ra、Sa、Sv及びSzは、それぞれ、1.8μm、2.3μm、−10.2μm及び18.3μmであった。目視による検査では、回路パターンを視認することができず、隠蔽性は非常に良好であった。
【0068】
(実施例2)
剥離性基材2を用いた他は、実施例1と同様にして評価用基板を得た。剥離性基材を除去した後の評価用基板の隠蔽層の表面におけるRkuは2.9、Skuは2.1であった。Rmrは5.6%、Vmcは2.9mL/m
2であった。また、Ra、Sa、Sv及びSzは、それぞれ、1.8μm、2.5μm、−12.9μm及び23.6μmであった。目視による検査では、回路パターンを視認することができず、隠蔽性は非常に良好であった。
【0069】
(実施例3)
剥離性基材3を用いた他は、実施例1と同様にして評価用基板を得た。剥離性基材を除去した後の評価用基板の隠蔽層の表面におけるRkuは3.0、Skuは2.3であった。Rmrは5.8%、Vmcは2.5mL/m
2であった。また、Ra、Sa、Sv及びSzは、それぞれ、1.0μm、2.0μm、−9.8μm及び18.2μmであった。目視による検査では、回路パターンを視認することができず、隠蔽性は非常に良好であった。
【0070】
(比較例1)
剥離性基材4を用いた他は、実施例1と同様にして評価用基板を得た。剥離性基材を除去した後の評価用基板の隠蔽層の表面におけるRkuは2.3、Skuは1.8であった。Rmrは8.8%、Vmcは3.5mL/m
2であった。また、Ra、Sa、Sv及びSzは、それぞれ、2.0μm、2.7μm、−11.5μm及び18.8μmであった。目視による検査において、回路パターンを視認することができ、隠蔽性は不良であった。
【0071】
(比較例2)
剥離性基材5を用いた他は、実施例1と同様にして評価用基板を得た。剥離性基材を除去した後の評価用基板の隠蔽層の表面におけるRkuは2.3、Skuは1.8であった。Rmrは10.1%、Vmcは3.5mL/m
2であった。また、Ra、Sa、Sv及びSzは、それぞれ、1.7μm、2.7μm、−10.9μm及び18.4μmであった。目視による検査において、回路パターンを視認することができ、隠蔽性は不良であった。
【0072】
(比較例3)
剥離性基材6を用いた他は、実施例1と同様にして評価用基板を得た。剥離性基材を除去した後の評価用基板の隠蔽層の表面におけるRkuは2.4、Skuは1.8であった。Rmrは9.5%、Vmcは3.2mL/m
2であった。また、Ra、Sa、Sv及びSzは、それぞれ、1.9μm、2.6μm、−10.0μm及び16.9μmであった。目視による検査において、回路パターンを視認することができ、隠蔽性は不良であった。
【0073】
(比較例4)
剥離性基材7を用いた他は、実施例1と同様にして評価用基板を得た。剥離性基材を除去した後の評価用基板の隠蔽層の表面におけるRkuは3.1、Skuは4.2であった。Rmrは5.1%、Vmcは1.7mL/m
2であった。また、Ra、Sa、Sv及びSzは、それぞれ、0.7μm、1.5μm、−11.1μm及び16.2μmであった。目視による検査において、回路パターンを視認することができ、隠蔽性は不良であった。
【0074】
表2に、各実施例及び比較例の結果をまとめて示す。
【0075】
【表2】