特許第6722374号(P6722374)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エイ プラス バイオテクノロジー カンパニー リミテッドの特許一覧

特許6722374イン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械
<>
  • 特許6722374-イン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械 図000002
  • 特許6722374-イン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械 図000003
  • 特許6722374-イン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械 図000004
  • 特許6722374-イン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械 図000005
  • 特許6722374-イン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械 図000006
  • 特許6722374-イン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6722374
(24)【登録日】2020年6月24日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】イン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/15 20060101AFI20200706BHJP
   A61B 17/56 20060101ALN20200706BHJP
【FI】
   A61B17/15
   !A61B17/56
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-128854(P2018-128854)
(22)【出願日】2018年7月6日
(65)【公開番号】特開2019-93106(P2019-93106A)
(43)【公開日】2019年6月20日
【審査請求日】2018年7月6日
(31)【優先権主張番号】106140619
(32)【優先日】2017年11月22日
(33)【優先権主張国】TW
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518144252
【氏名又は名称】エイ プラス バイオテクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】A Plus Biotechnology Company Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】呉開興
(72)【発明者】
【氏名】羅翔▲ウェイ▼
(72)【発明者】
【氏名】林坤志
(72)【発明者】
【氏名】游秉聖
【審査官】 山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−360595(JP,A)
【文献】 特表2014−515650(JP,A)
【文献】 特開2016−325543(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0100132(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/15
A61B 17/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械であって、
上案内辺を備え、切開経路を形成するための第1本体部材であって
第1ロッド部材を介して当該第1本体部材に接続される第1位置合わせ貫通孔を更に含む第1本体部材と
下案内辺を備えるとともに当該上案内辺の下方に設けられ、当該上案内辺と当該下案内辺の間にソーによる切開を案内する案内溝が形成され、当該案内溝内に当該上案内辺と当該下案内辺を接続する接続部が備えられ、第2ロッド部材を介して当該第2本体部材に接続される第2位置合わせ貫通孔を更に含む第2本体部材と
係合部及び少なくとも1つのアライメント孔を備え、当該係合部が当該接続部に係合されるとともに、当該アライメント孔が切開方向の確認に用いられるイン・ビトロアライメント装置と;を含むイン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械であって
当該第1位置合わせ貫通孔の第1孔軸線と当該第2位置合わせ貫通孔の第2孔軸線との間には矯正夾角が形成され
当該第1位置合わせ貫通孔の当該第1孔軸線と当該第2位置合わせ貫通孔の当該第2孔軸線が重畳して位置合わせロッド部材が挿通可能となるイン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械。
【請求項2】
当該第1本体部材は、当該上案内辺の基端に設けられて切開経路を形成するサイド案内辺を更に含み、当該第2本体部材は、当該下案内辺の基端に設けられてソーによる当該サイド案内辺での切開時の切り過ぎを防止する延伸ガードプレートを更に含む請求項1に記載のイン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械。
【請求項3】
当該イン・ビトロアライメント装置は、更に、当該係合部に設けられる角度固定孔であって、角度固定骨針が貫設されることで骨格に対する当該イン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械の角度を固定する角度固定孔を含む請求項1に記載のイン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械。
【請求項4】
当該アライメント孔には、切開の方向を確認するよう少なくとも1つのアライメント骨針が貫設され、当該第1本体部材と当該第2本体部材の表面には、少なくとも1つの固定骨針を貫設することで当該イン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械を骨格の表面に固定可能とする複数の固定溝孔が備わっている請求項1に記載のイン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は骨切り術器械に関し、特に、イン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械に関する。
【背景技術】
【0002】
関節は人体の活動時において骨が最も摩擦を受ける箇所である。そのため、骨の摩擦による人体損傷が防止されるよう、緩衝用の軟骨が人体には自ずと発達している。
【0003】
しかし、科学技術の進歩に伴ってヒトの平均寿命が延長の一途をたどっているのに対し、関節軟骨は身体の老化とともに徐々に摩耗することから、変形性関節炎(Degenerative Joint Disease)が発症してしまう。変形性関節炎(Degenerative Joint Disease)に罹患した患者をX線(X−ray)で観察すると、関節表面に凹凸の発生や関節腔の狭小化、及び骨棘の発生を確認することができる。これらの病理現象によって、患者には疼痛や腫れ、関節の変形、こわばり等の症状が発生し、活動時には関節部分において異常な摩擦音が聞かれることも多い。これは身体の老化に伴う必然的な傾向であって、ほぼすべての人が年齢を重ねるごとにこうした疾病を抱えやすくなる。
【0004】
膝関節を例に挙げると、これまで周知とされてきた変形性関節炎 (Degenerative Joint Disease)の治療方法には、元の膝関節に代えて人工関節を埋め込む方法がある。しかし、人工関節を埋め込むには、大腿骨、脛骨及び膝蓋骨等の関節面を大量に切除して金属や高分子インプラントを固定せねばならない。ところが、インプラントは摩耗することから、この種の全人工膝関節置換手術の場合には、有効使用期限が最長でも20年となる。一方で、術後の感染や骨溶解、骨吸収といった問題が併発することが多く、再手術を余儀なくされる場合もある。また、変形性膝関節症(Knee Osteoarthritis)の患者によっては、初期には内側の関節面の軟骨のみが摩耗するため、全人工関節に置換してすべての膝関節面を切除する必要はない。そのため、内側のみの初期変形性膝関節症(Knee Osteoarthritis)患者については、高位脛骨骨切り術(High Tibial Osteotomy)を実施することが一般的となっている。
【0005】
高位脛骨骨切り術(High Tibial Osteotomy)とは、患者の脛骨のうち膝関節寄りの内側近端に開口を切り欠いてから、開口を拡張して人工骨を装入し、骨プレートと骨スクリューで固定するものである。これにより、患者の膝関節における内反したバイオメカニクス的軸線を矯正する。この手術は、脛骨の内側近端のみで骨の切開及び角度調整を行うため骨質を大量に切除する必要がなく、内側の関節面軟骨の摩耗に起因する膝関節疼痛患者にとってはたいへん良好な手術治療法の一つとされている。
【0006】
しかし、高位脛骨骨切り術では脛骨の近端に開口を切り欠かねばならず、切り込みの位置、角度、深さ及び拡張高さといった手順すべてについて、手術前に慎重な評価が必要となる。現在、本手術の実施にあたっては、臨床医がX線機器の助けを借りつつ自身の判断を加えることで、前記骨切り・拡張について幾何パラメータを決定するしかない場合が多い。しかし、変形性関節炎(Degenerative Joint Disease)患者によって膝関節の内反したバイオメカニクス的軸線は状況が異なっており、上記の手術パラメータも患者ごとに違う。そのため、手術器械の設計においても個人差を考え合わせる必要がある。
【0007】
関連の従来技術としては例えば特許文献1があるが、この骨切り術器械の場合、例えば、手術実施時に予め非侵襲的角度評価を採用不可能である、骨切り術器械の配置角度が正しいか否かを予め知り得ない、骨切り術器械の配置角度を直接固定できない、切開時に切り過ぎる恐れがあるというように、多くの機能において更なる改良の余地が存在する。そこで、本発明の発明者は機能を更に拡張するとともに、従来の発明に存在していた多くの技術を改良することで、イン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械を研究開発した。また、明細書においてその拡張機能と改良技術について詳述する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】台湾実用新案第TWM536526U号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の従来技術における課題に鑑みて、本発明は、ソーを案内することで脛骨の高位脛骨骨切り術を実施するイン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械を提供することを主たる目的とする。ただし、これに限らず、本発明のイン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械は、例えば、大腿骨、腓骨、上腕骨、尺骨、橈骨、鎖骨、肩甲骨といった人体のその他の部位の骨格にも適用可能である。本発明の好ましい実施例では脛骨を用いて説明するが、その外形は、臨床医による切り込みの位置、角度、深さ及び拡張高さといった手順の的確な決定を補助可能に設計されている。また、手術の実施に先立つ非侵襲的角度評価の採用、イン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械の配置角度/位置が正しいか否かの予測、イン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械の配置角度/位置の直接的な固定、切開時における切り過ぎの回避等が可能となる。よって、本発明により手術が施されて骨切り・拡張される脛骨は、的確な切開角度と精度及び実行効率を有し、且つ、各器械はいずれも患者に合わせてカスタマイズされるとの利点を有する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ソーを案内することで脛骨の高位脛骨骨切り術を実施するイン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械を提供するがこれに限らず、人体におけるその他の部位の骨格にも実施可能である。当該イン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械は、上案内辺を備え、切開経路を形成するための第1本体部材と、下案内辺を備えるとともに当該上案内辺の下方に設けられ、当該上案内辺と当該下案内辺の間にソーによる切開を案内する案内溝が形成され、当該案内溝内に当該上案内辺と当該下案内辺を接続する接続部が備えられる第2本体部材と、係合部及び少なくとも1つのアライメント孔を備え、当該係合部が当該接続部に係合されるとともに、当該アライメント孔が切開方向の確認に用いられるイン・ビトロアライメント装置と、を含む。
【0011】
本発明の具体的実施例によれば、当該第1本体部材は上案内辺とサイド案内辺を備え、当該サイド案内辺は、当該上案内辺の基端に設けられて切開経路を形成するために用いられる。
【0012】
本発明の具体的実施例によれば、当該第2本体部材は下案内辺と延伸ガードプレートを備える。当該下案内辺は当該上案内辺の下方に設けられている。また、当該延伸ガードプレートは当該下案内辺の基端に設けられており、ソーが当該サイド案内辺での切開時に切り過ぎることのないよう防止する。当該上案内辺と当該下案内辺の間には、ソーによる切開を案内する案内溝が形成されている。また、当該案内溝内には、当該上案内辺と当該下案内辺を接続する接続部が備えられている。
【0013】
本発明の具体的実施例によれば、当該イン・ビトロアライメント装置は、係合部、少なくとも1つのアライメント孔及び角度固定孔を備える。当該係合部は当該接続部に係合し、当該アライメント孔は切開方向の確認に用いられる。また、当該角度固定孔は当該係合部に設けられており、これに少なくとも1つの角度固定骨針が貫設されることで、骨格に対する当該イン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械の角度/位置が固定される。
【0014】
本発明の具体的実施例によれば、当該第1本体部材は、上案内辺、サイド案内辺及び第1位置合わせ貫通孔を備える。当該サイド案内辺は、当該上案内辺の基端に設けられて切開経路を形成するために用いられる。当該第1位置合わせ貫通孔は、第1ロッド部材を介して当該第1本体部材に接続される。
【0015】
本発明の具体的実施例によれば、当該第2本体部材は、下案内辺、延伸ガードプレート及び第2位置合わせ貫通孔を備える。当該下案内辺は当該上案内辺の下方に設けられている。また、当該延伸ガードプレートは当該下案内辺の基端に設けられており、ソーが当該サイド案内辺での切開時に切り過ぎることのないよう防止する。当該第2位置合わせ貫通孔は、第2ロッド部材を介して当該第2本体部材に接続される。当該上案内辺と当該下案内辺の間には、ソーによる切開を案内する案内溝が形成される。当該案内溝内には、当該上案内辺と当該下案内辺を接続する接続部が備わっている。
【0016】
本発明の具体的実施例によれば、当該第1位置合わせ貫通孔の第1孔軸線と当該第2位置合わせ貫通孔の第2孔軸線の間には矯正夾角を形成可能であり、骨切りによる切口の拡張角度が術前に計画された矯正角度と一致すると、当該第1位置合わせ貫通孔の当該第1孔軸線と当該第2位置合わせ貫通孔の当該第2孔軸線が重畳して位置合わせロッド部材を挿通可能となる。
【0017】
本発明の具体的実施例によれば、当該アライメント孔には、切開の方向を確認するよう少なくとも1つのアライメント骨針が貫設される。
【0018】
本発明の具体的実施例によれば、当該第1本体部材と当該第2本体部材の表面には、少なくとも1つの固定骨針を貫設することで当該イン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械を骨格の表面に固定可能とする複数の固定溝孔が備わっている。
【発明の効果】
【0019】
従来技術と比較して、本発明のイン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械は、術前に収集した患者の脛骨画像データに基づいて手術による最適な切開位置と角度を評価してから、3Dプリント(three−dimensional printing,3Dプリント)により構築される。器械そのものが、例えば大腿骨、腓骨、上腕骨、尺骨、橈骨、鎖骨、肩甲骨といった患者の各部位の骨格にしっかりと密着可能となっているため、執刀医は器械が指定する案内溝にしたがって第1切開位置での執刀を実施すればよい。案内溝は執刀医による正確な執刀を可能とするだけでなく、切開の角度及び深さの算出基準も提供可能である。また、サイド案内辺は執刀医による第2切開位置での執刀基準を提供可能である。また、イン・ビトロアライメント装置によれば、執刀医による手術の実施に先立つ非侵襲的角度評価の採用、イン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械の配置角度/位置が正しいか否かの予測、及び骨格に対するイン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械の直接的な固定が可能となる。また、延伸ガードプレートによって、切開時における切り過ぎの発生を回避可能となる。即ち、本発明では従来の骨切り術器械を更に改良した。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明のイン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械を骨格に配置した場合を示す図である。
図2図2は、本発明のイン・ビトロアライメント装置を示す図である。
図3図3は、本発明におけるイン・ビトロアライメント装置が未装着の場合のイン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械を示す図である。
図4図4は、本発明におけるイン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械を示す背面図である。
図5図5は、本発明におけるイン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械を示す側面図である。
図6図6は、本発明における骨格が第1本体部材と第2本体部材により矯正角度まで拡張された場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の詳細な記載を参照することで、上記の観点及び本発明の利点をより速やかに理解可能となる。また、以下の記載及び図面から本発明の精神をより容易に理解可能である。
【0022】
本発明について、好ましい実施例及び観点を挙げて詳細に述べる。以下の記載は、本発明における特定の実施の詳細を提供することで、読者にこれら実施例の実施形態を完璧に理解してもらうことを意図している。ただし、当業者であれば、本発明はこれら詳細条件を備えない場合であっても実行可能であると解釈すべきである。なお、各種実施例が不要な記載により混乱することのないよう、本文ではすでに熟知されている構造又は機能或いは詳細の一部については詳述しない。また、以下の記載で使用する用語については、本発明の特定の実施例に関する詳細な記載とともに使用されていたとしても、最も広義且つ合理的に解釈されるべきである。
【0023】
図1図2図3及び図4を参照する。図1は、本発明のイン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械を骨格に配置した場合を示す図である。図2は、本発明のイン・ビトロアライメント装置300を示す図である。図3は、本発明におけるイン・ビトロアライメント装置300が未装着の場合のイン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械を示す図である。図4は、本発明におけるイン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械を示す背面図である。本発明は、各種骨切り術、矯正又は整復手術に応用されるイン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械を提供する。本発明のイン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械は、例えば脛骨、大腿骨、腓骨、上腕骨、尺骨、橈骨、鎖骨、肩甲骨等の人体における各部位の骨格に適用可能であるが、これらに限らない。本実施例において、イン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械はソーを案内することによる脛骨の高位脛骨骨切り術に応用される。当該器械は、上案内辺110を備える部材であって切開経路を形成するための第1本体部材100と、下案内辺210を備えるとともに当該上案内辺110の下方に設けられ、当該上案内辺110と当該下案内辺210の間にソーによる切開を案内する案内溝400が形成され、当該案内溝400内に当該上案内辺110と当該下案内辺210を接続する接続部500が備えられる第2本体部材200と、係合部310及び少なくとも1つのアライメント孔330を備える装置であって、当該係合部310が当該接続部500に係合されるとともに、当該アライメント孔330が切開方向の確認に用いられるイン・ビトロアライメント装置300と、を含む。手術の実施時には、執刀医がボーンソーでそのまま接続部500を切断すればよい。
【0024】
イン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械が患者の脛骨表面に配置されてから、係合部310を介して当該イン・ビトロアライメント装置300をイン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械の接続部500に架設する。当該係合部310と当該アライメント孔330は、当該イン・ビトロアライメント装置300の両端にそれぞれ位置している。当該イン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械が骨の表面に配置される際、当該アライメント孔330が人体の外部に位置するよう、当該イン・ビトロアライメント装置300は長方形の外観をもって横向きに当該イン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械に配置される。当該イン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械の配置角度については、当該アライメント孔330を通じて非侵襲的に評価可能なことから、イン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械の配置角度が正しいか否かを予め知ることができる。続いて、執刀医はイン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械の上案内辺110と下案内辺210により案内される切開位置にしたがってソーを挿し込み、切断を開始する。執刀医は上案内辺110及び下案内辺210を切開深さの算出基準として参考にするか、或いは、ソー上にマークを描いておくことで、脛骨に対するソーの切り込み深さが所定の深さまで達したか否かを肉眼で目視可能となる。
【0025】
本発明の一の実施例において、当該第1本体部材100は上案内辺110とサイド案内辺120を備える。当該サイド案内辺120は当該上案内辺110の基端に設けられ、切開経路を形成するために用いられる。上案内辺110と下案内辺210は、それぞれ第1本体部材100及び第2本体部材200から外側に延伸している。且つ、上案内辺110と下案内辺210の間には、ソーを案内して第1切開位置における切開を実施させるための案内溝400が形成されている。また、サイド案内辺120は、ソーを案内して第2切開位置における切開を実施させるために用いられる。当該上案内辺110、下案内辺210及びサイド案内辺120は切開経路を形成するために用いられ、これらによって高位脛骨骨切り術が実施される。
【0026】
執刀医は、上案内辺110及び下案内辺210を切開深さの算出基準として参考にする。ソーは所定の深さまで達した後、上案内辺110及び下案内辺210に沿って人体の内側へと切り込む。そして、脛骨の一部を切断すると、続いてサイド案内辺120に沿って案内される第2切開位置に切り込み、斜めの切口を切り出す。
【0027】
本発明の一の実施例において、当該第2本体部材200は下案内辺210及び延伸ガードプレート220を備える。当該下案内辺210は当該上案内辺110の下方に設けられている。また、当該延伸ガードプレート220は当該下案内辺210の基端に設けられており、ソーが当該サイド案内辺120での切開時に切り過ぎることのないよう防止する。当該上案内辺110と当該下案内辺210の間には、ソーによる切開を案内する案内溝400が形成されている。また、当該案内溝400内には、当該上案内辺110と当該下案内辺210を接続する接続部500が備えられている。従来技術の骨切り術器械では、臨床操作においてサイド案内辺120位置での切り過ぎが散見されていた。あまりに切り過ぎると余分な切口によって骨が脆くなり、手術の最終段階で骨プレートを固定する際に骨が断裂して患者の回復期間が長期化する恐れがある。そこで、切り過ぎの発生を回避すべく、本発明では更にこの設計を改良し、第2本体部材200のうちサイド案内辺120に対向する箇所に延伸ガードプレート220を追加した。ソーは所定の位置まで切り込むと延伸ガードプレート220により遮られることから、切り過ぎの発生が回避され、切開経路全体にわたり損傷がなくなる。また、骨切り術の実施過程では、予め定めた計画にしたがってより的確な実行が可能となり、上述したような不具合の発生が回避されることから、患者の回復期が短期化する。
【0028】
本発明の他の実施例において、当該イン・ビトロアライメント装置300は、係合部310、少なくとも1つのアライメント孔330及び角度固定孔320を備える。当該係合部310は当該接続部500に係合し、当該アライメント孔330は切開方向の確認に用いられる。また、当該角度固定孔320は当該係合部310に設けられており、これに少なくとも1つの角度固定骨針322が貫設されることで、骨格に対する当該イン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械の角度/位置が固定される。当該アライメント孔330により当該イン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械の配置角度/位置に誤りがないことが確認されると、当該イン・ビトロアライメント装置300の角度固定孔320に角度固定骨針322を貫設することで、骨格に対する当該イン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械の角度/位置を直接固定可能となる。従来技術の骨切り術器械と比較して、本発明によればより的確な切断角度と位置が実現される。的確な切断は骨切り術において非常に重要なポイントとなる。なぜなら、骨格の拡張角度はこれを基準とし、最終的に患者の膝関節におけるバイオメカニクス的軸線を適切に矯正可能か否かに影響するからである。
【0029】
図5及び図6を参照する。図5は、本発明におけるイン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械を示す側面図であり、図6は、本発明における骨格が第1本体部材100と第2本体部材200により矯正角度Mまで拡張された場合を示す図である。本発明の別の具体的実施例において、第1本体部材100は第1位置合わせ貫通孔130を更に含む。第1位置合わせ貫通孔130は、第1ロッド部材150を介して第1本体部材100に接続される。また、第2本体部材200は第2位置合わせ貫通孔230を更に含む。第2位置合わせ貫通孔230は、第2ロッド部材250を介して第2本体部材200に接続される。本発明において、第1位置合わせ貫通孔130と第2位置合わせ貫通孔230は、高位脛骨骨切り術において脛骨の開口の拡張角度を確認するために設計されている。そのため、第1位置合わせ貫通孔130の第1孔軸線140と第2位置合わせ貫通孔230の第2孔軸線240の間には矯正夾角Lが存在している。これに対し、高位脛骨骨切り術において、骨切りによる切口は術前に計画された矯正角度Mを有する。脛骨が、第1本体部材100と第2本体部材200によって矯正角度Mに拡張されると、第1位置合わせ貫通孔130の第1孔軸線140と第2位置合わせ貫通孔230の第2孔軸線240が重畳可能となり、位置合わせロッド部材600を第1位置合わせ貫通孔130と第2位置合わせ貫通孔230に貫設することで、矯正角度Mが確保される。前記矯正角度Mの大きさについては、予め医師の診断に基づいて、脛骨につき高位脛骨骨切り術で拡張すべき矯正角度Mを決定しておき、所望の矯正角度Mから第1位置合わせ貫通孔130と第2位置合わせ貫通孔230の軸線による夾角を決定して製造する。位置合わせロッド部材600についても、脛骨が第1本体部材100と第2本体部材200によって術前に計画された矯正角度Mまで拡張された場合にのみ、第1位置合わせ貫通孔130と第2位置合わせ貫通孔230の間に貫設可能とする。
【0030】
ソーは、所定の深さまで達すると上案内辺110及び下案内辺210に沿って切り込み、脛骨の一部を切断する。続いて、サイド案内辺120に沿って案内される第2切開位置に切り込み、斜めの切口を切り出す。切口の切開が完了すると、イン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械を脛骨に固定したままで、脛骨の第1切開位置を術前に計画した矯正角度Mまで拡張する。そして、位置合わせロッド部材600を第1位置合わせ貫通孔130及び第2位置合わせ貫通孔230に挿入し、脛骨における手術切口の矯正角度Mを確認すれば、続く切口固定操作を実施して手術を完了させられる。本発明によれば、手術中に靭帯を傷付けないだけでなく、走行に伴う骨格の旋回運動に対し抵抗可能に切開できる。また、手術前の矯正計画に基づいて本発明を設計することで、手術過程が簡略化される。
【0031】
本発明の一の実施例において、当該イン・ビトロアライメント装置300は、係合部310と少なくとも1つのアライメント孔330を備える。当該係合部310は当該接続部500に係合される。また、当該アライメント孔330には、切開方向を確認するために少なくとも1つのアライメント骨針332が貫設される。本実施例において、当該アライメント孔330は円筒状をなしているがこれに限らず、必要に応じてその他の形状に変更してもよい。当該アライメント孔330は、イン・ビトロアライメント装置300の一端から順に当該イン・ビトロアライメント装置300上に並列しており、円筒状に設計されていることから、アライメント骨針332を挿通可能である。アライメント骨針332を指針とすることで、本発明のイン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械が正しい角度/位置に配置されているか否かを判断可能となる。且つ、アライメント骨針332は、体外で角度の指針となるため体内に侵入させる必要がなく、患者の負担を低減させられる。
【0032】
本発明の他の実施例において、当該第1本体部材100と当該第2本体部材200の表面には、少なくとも1つの固定骨針710が貫設されることで当該イン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械を骨格の表面に固定可能とする複数の固定溝孔700が備わっている。当該イン・ビトロアライメント装置300における角度固定孔320に角度固定骨針322が貫設されて、骨格に対する当該イン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械の角度/位置が固定されると、骨格表面に対する当該イン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械の固定強度を強化するために、当該固定溝孔700に少なくとも1つの固定骨針710を貫設してもよい。これにより、当該イン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械がより安定的に骨格の表面に固定されるため、ソーによる切開時に当該イン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械が移動するとの事態が回避され、切開位置がより的確となる。
【0033】
従来技術と比較して、本発明のイン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械は、術前に収集した患者の骨格データを元にコンピュータソフトウェアを用いて脛骨のモデルを構築してから、脛骨モデルに基づいて手術による最適な切開位置及び角度を評価した後に、3Dプリント(three−dimensional printing,3Dプリント)により構築される。本発明では、患者ごとの骨格角度の違いに応じてイン・ビトロアライメント装置付き骨切り術器械の全体構造をオーダーメイドすることで、一体成型又は組立式の実体器械を構築する。器械そのものが患者の骨格にしっかりと密着可能となっているため、執刀医は器械が指定する案内溝400にしたがって第1切開位置での執刀を実施すればよい。案内溝400は執刀医による正確な執刀を可能とするだけでなく、切開の角度及び深さの算出基準も提供可能である。また、サイド案内辺120は執刀医による第2切開位置での執刀基準を提供可能である。なかでも、イン・ビトロアライメント装置300と延伸ガードプレート220は従来技術の骨切り術器械を更に改良するものであり、手術の実施に先立つ非侵襲的角度評価の採用、骨切り術器械の配置角度/位置が正しいか否かの予測、骨切り術器械の配置の直接的な固定、切開時における切り過ぎの回避等を可能とする。本発明は、手術自体の改善のみならず、執刀医による手術の実施を標準化するものである。
【0034】
なお、本文中に部材“A”を部材“B”に連接(又は結合)すると記載している場合、部材AはBに対し直接的に連接(又は結合)される場合もあれば、部材Cを介してBに対し間接的に連接(又は結合)される場合もある。また、明細書に、部材、特徴、構造、手順又は特性Aが、部材、特徴、構造、手順又は特性Bを誘引すると明記されている場合、Aは少なくともBの要因の一部であるか、或いは、その他の部材、特徴、構造、手順又は特性と協調してBを誘引する。また、明細書で言及される「〜する場合がある」との記載は、その部材、特徴、手順又は特性が明細書の記載に限定されないことを示す。また、明細書で言及される数量は「一の」又は「1つ」等の記載により限定されない。
【0035】
本発明はここで記載した特定の詳細な特徴に限定されない。本発明の精神及び範囲の下であれば、先の記載や図面に関する様々な発明の変更が許容される。よって、本発明は上記の記載によりその範囲が限定されるわけではなく、後述の特許請求の範囲をもって本発明で可能な修正及び変更を包括する。
【符号の説明】
【0036】
100 第1本体部材
110 上案内辺
120 サイド案内辺
130 第1位置合わせ貫通孔
140 第1孔軸線
150 第1ロッド部材
200 第2本体部材
210 下案内辺
220 延伸ガードプレート
230 第2位置合わせ貫通孔
240 第2孔軸線
250 第2ロッド部材
300 イン・ビトロアライメント装置
310 係合部
320 角度固定孔
322 角度固定骨針
330 アライメント孔
332 アライメント骨針
400 案内溝
500 接続部
600 位置合わせロッド部材
700 固定溝孔
710 固定骨針
L 矯正夾角
M 矯正角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6