(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来から、エレベータにおいて昇降路内を昇降するかごの走行特性を測定するエレベータのかごの走行特性測定に基づく乗り心地の評価装置が提供されている。このエレベータの乗り心地の評価装置は、かご内に取り付けられた計測器により、かごの昇降速度、加速度等の走行特性を計測し、その計測結果に基づいて利用者の乗り心地を評価する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
前記エレベータのかごの乗り心地の評価装置では、かごの走行特性を測定する際、予め測定器がかご内に設置され、測定後にかご内から測定器が撤去される。このため、エレベータのかごの乗り心地の評価装置では、事前の準備作業や撤去作業が煩雑である。
また、前記エレベータのかごの走行特性測定システムは、計測器による計測結果を数学的に解析し、乗り心地を評価する。そのため、エレベータのかごの走行特性測定システムでは、乗り心地の評価が実測におけるかごの走行特性のみでの評価となり、その後の改善策を導出するのに手間がかかるといった問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、煩雑な準備作業や撤去作業をすることなくかごの走行特性を測定することのできる携帯端末を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の携帯端末は、加速度センサと、エレベータの制御マイコンに接続可能な処理部と、前記処理部での処理結果を出力する出力部と、を備え、前記処理部は、前記加速度センサで測定した測定結果に基づく走行特性情報と、前記制御マイコンから得られた前記加速度センサでの測定時におけるかごの走行に関する情報とを、対応付けて前記出力部から出力させる。
【0007】
かかる構成によれば、携帯端末をエレベータのかごに配置してかごを昇降させることで、加速度センサによる測定結果からかごの走行特性を得ることができる。
【0008】
しかも、携帯端末をエレベータのかごに配置した上で制御マイコンと接続することにより、加速度センサで得られる走行特性情報に、制御マイコンから得られた加速度センサでの測定時におけるかごの走行に関する情報(例えば、制御の指令値)が対応付けられて出力されるため、かごの走行特性情報と、かごの走行に関する情報とのギャップ(即ち、制御の指令値に対するかごの実際の走行特性のズレ)を得ることができる。
【0009】
前記携帯端末は、前記出力部から出力される出力内容を記憶する記憶部を備えることが好ましい。
【0010】
かかる構成によれば、記憶部によって出力部からの出力内容が記憶されるため、出力後の任意のタイミングで出力内容を確認することができる。
【0011】
また、前記携帯端末において、前記処理部は、前記測定結果に基づく走行特性情報と前記走行に関する情報とを比較し、その結果を出力部にさらに出力させてもよい。
【0012】
かかる構成によれば、走行特性情報と走行に関する情報との比較結果が出力されるため、かごの走行特性の評価をより容易に行うことができる。
【0013】
前記携帯端末は、ジャイロスコープを備え、前記処理部は、前記ジャイロスコープで得られた測定結果を、前記加速度センサでの測定結果が得られたときの時間と対応付けて前記出力部に出力させてもよい。
【0014】
かかる構成によれば、加速度センサでの測定時におけるジャイロスコープでの測定結果も出力部から出力されるため、走行時のかごのロール(傾き)も確認できる。
【発明の効果】
【0015】
以上より、本発明によれば、煩雑な準備作業や撤去作業をすることなくかごの走行特性を測定することのできる携帯端末を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について、
図1を参照しつつ説明する。
【0018】
本実施形態の携帯端末は、PDA(Personal Digital Assistant)やノートパソコン、スマートフォン等の持ち運び可能な端末であり、エレベータの保守作業等を行う技術員等により所持される。この携帯端末は、エレベータのかごの走行特性の測定に用いられる。また、かごの走行特性の測定に用いられていないときには、例えば、エレベータの遠隔監視システムと無線通信及びインターネット(又は電話回線)等を介して接続されてエレベータの保守作業等に用いられる。本実施形態の携帯端末1は、加速度センサ及びジャイロスコープを有し且つ遠隔監視システムを使用したエレベータの遠隔監視やエレベータの修理等の保守作業に用いられる携帯端末に、所定のプログラムをインストールすることで走行特性を測定可能としたものである。
【0019】
ここで、遠隔監視システムとは、エレベータの動作状況を遠隔で監視するシステムである。この遠隔監視システムでは、例えば、エレベータに運転停止等のトラブルが発生したときに、このトラブルに関する情報を管理者が所持する管理者端末から出力(表示等)させる。これにより、管理者は、管理者端末が設置されたセンター等の対象エレベータから離れた位置に居ながら、エレベータの動作状況や、発生したトラブルに関する情報等を認識することができる。この遠隔監視システムは、インターネットに繋がっている。
【0020】
この携帯端末は、
図1に示すように、CPU(Central Processing Unit)と加速度センサ2と、情報等を外部に出力する出力部5と、を備える。この携帯端末1では、CPUが所定のプログラムを実行することで、機能的に処理部4が形成される。また、携帯端末1は、ジャイロスコープ3と、出力部5から出力される出力内容を記憶する記憶部6等も備える。
【0021】
加速度センサ2は、携帯端末1の加速度を検出可能なセンサであり、測定した加速度に応じた信号を処理部4に出力する。
【0022】
ジャイロスコープ3は、携帯端末1の傾き(姿勢変化、本実施形態の例では、携帯端末1が配置されたかごの昇降時のロール)を検出可能なものであり、検出した傾きに応じた信号を処理部4に出力する。
【0023】
出力部5は、処理部4における処理結果を出力する。本実施形態の出力部5は、画面(例えば、測定出力描画画面)である。尚、出力部5は、プリンター等の紙面による出力でもよく、音等による出力でもよい。
【0024】
処理部4は、エレベータの制御マイコンに接続可能である。この処理部4は、加速度センサ2で測定した測定結果に基づくかごの走行特性情報と、制御マイコンから得られたかごの走行に関する情報(加速度センサでの測定時における情報:本実施形態の例では加速度指令)とを、対応付けて出力部5に表示させる(出力させる)。例えば具体的には、処理部4は、
図2に示すように、走行特性情報としての加速度センサによる測定結果を時間と対応させた状態で出力部に出力させると共に、この出力と並ぶように、走行に関する情報としての制御マイコンが出力した加速度指令(指令値)を時間と対応させた状態で出力部5に表示させる。より具体的に、処理部4は、走行特性情報(かごの動きに関する実測値)と、走行に関する情報(かごの動きに関する駆動系への指令値)とを、時間軸が一致するように並べた状態で出力部5に表示させる。本実施形態の携帯端末1では、処理部4は、走行特性情報と走行に関する情報とを同期させた状態で同じ測定出力描画画面(出力部5)に並べて表示させる。
【0025】
また、処理部4は、走行特性情報と走行に関する情報とを比較し、その結果を出力部5にさらに表示させることもできる。例えば具体的には、処理部4は、
図3に示すように、走行特性情報としての加速度センサによる測定結果を時間と対応させた状態で出力部5に表示させると共に、この表示(出力)と重なるように、走行に関する情報としての制御マイコンが出力した加速度指令(指令値)を時間と対応させた状態で出力部5に表示させる。より具体的に、本実施形態の処理部4は、走行特性情報と、走行に関する情報とを、時間軸が一致するように重ねた状態で出力部5に表示させることもできる。本実施形態の携帯端末1では、処理部4は、走行特性情報と走行に関する情報とを同期させた状態で同じ測定出力描画画面(出力部5)に重ねて表示させる。
【0026】
また、処理部4は、ジャイロスコープ3で得られた測定結果(姿勢情報)を、加速度センサ2での測定結果が得られたときの時間と対応付けて出力部5に表示(出力)させる(
図4参照)。
【0027】
本実施形態の携帯端末1では、走行特性情報、走行に関する情報、及び姿勢情報を、時間軸が一致するように(同期させた状態で)同じ画面(出力部5)上に並べて表示させることと、走行特性情報と走行に関する情報と姿勢情報とを任意の組み合わせで(任意の二つの情報を)同じ画面上に並べて又は重ねて表示させることと、各情報を単独で表示させることとの何れかを選択する(切り替える)ことができる。
【0028】
また、処理部4は、走行特性情報と走行に関する情報とのズレを指摘することもできる。処理部4は、例えば
図5に示すように、走行特性情報と走行に関する情報とを重ねて表示させた状態で、実測値と指令値とのズレが予め設定された値より大きくなった部分を指摘する。この指摘は、画面上で行われてもよく、他の方法(プリントアウト、音声等)によって行われてもよい。
【0029】
記憶部6は、出力部5に表示された表示内容を記憶する。そして、本実施携帯の携帯端末1では、この記憶部6に記憶された表示内容が必要に応じて引き出され、引き出された表示内容を出力部5に表示させることができる。
【0030】
以上の携帯端末1は、加速度センサ2、ジャイロスコープ3によって測定した情報、及び制御マイコンから取得した情報、及び出力部5から出力した情報を、無線通信、インターネット等を通じて遠隔監視システムや管理者端末に送信できる。
【0031】
以下、この携帯端末1を用いたエレベータの走行特性の測定の流れについて説明する。
【0032】
携帯端末1がエレベータ10のかご内に配置されると共に、制御マイコン11と接続される(
図1参照)。ここで、エレベータ10において、制御マイコン11はかごと離れた場所(例えば、昇降路内のかごを昇降させるモータの近く)に設置されているが、かご内から通信可能である。例えば、本実施形態のエレベータ10では、かご内の操作パネルを開けることで、接続端子が現れ、この接続端子と携帯端末1とを接続することで、制御マイコン11と携帯端末1とが通信可能となる(接続される)。
【0033】
この携帯端末1がかご内に配置され且つ制御マイコンと通信可能な状態(接続された状態)でかごが昇降すると、携帯端末1の加速度センサ2が、かごの加速度を測定(検出)し、処理部4に測定結果を出力する。また、ジャイロスコープ3が、かごの昇降時のロール(即ち、携帯端末1の傾き)を測定(検出)して処理部4に測定結果を出力する。
【0034】
処理部4は、加速度センサ2から測定結果(走行特性情報)を受信すると、加速度センサ2がかごの加速度を測定したタイミングで加速度指令の履歴(走行に関する情報)を、制御マイコン11から取得する。
【0035】
処理部4は、走行特性情報(かごの動きの実測値)と走行に関する情報(制御の指令値)とを取得すると、両情報の時間軸を一致させた状態(同期させた状態)でプロットしたものを出力部5に表示させる。このとき、本実施形態の携帯端末1では、時間軸に沿ってプロットされた走行特性情報と、前記時間軸と同じ時間軸に沿ってプロットされた走行に関する情報とが重ねられた状態で出力部5に表示される(
図3参照)。尚、本実施形態の携帯端末1は、走行特性情報と走行に関する情報とを並べた状態で出力部5に表示させることもでき(
図2参照)、一つの情報のみを出力部5に表示させることもできる。即ち、本実施形態の携帯端末1では、測定結果の表示方法(表示態様)を切り替えることができる。
【0036】
本実施形態の携帯端末1では、走行特性情報と走行に関する情報とを重ねて表示させたときに、走行特性情報と走行に関する情報とのズレが所定値より大きくなった箇所は、画面上に表示される(
図5参照)。
【0037】
また、処理部4は、ジャイロスコープ3から受信した測定結果(姿勢情報)を走行特性情報の時間軸と一致させた状態でプロットしたものを、走行特性情報及び走行に関する情報を重ねたものと並べて出力部5に表示させる(
図4参照)。尚、
図4においてX軸は、エレベータ10のかごの出入り方向、Y軸は、かごドアの開閉方向、Z軸は、垂直方向である。
【0038】
エレベータの保守等を行う技術員等は、携帯端末1の出力部5に表示されたこれらの情報を視認することで、かごの走行特性、かごのロール、及び乗り心地を確認することができる。ここで、乗り心地とは、走行特性情報(実測値)と走行に関する情報(指令値)とのズレの大きさ、及びロールの大きさによって規定される指標であり、走行特性情報と走行に関する情報とのズレやロールの大きさが小さい程、乗り心地がよいと判断され、前記ズレやロールの大きさが大きい程、乗り心地が悪いと判断される。
【0039】
以上の携帯端末1によれば、携帯端末1をエレベータのかごに配置してかごを昇降させることで、加速度センサ2による測定結果からかごの走行特性を得ることができる。
【0040】
しかも、携帯端末1をエレベータのかごに配置して制御マイコンと接続する(通信可能とする)ことによって、加速度センサ2で得られる走行特性情報に、制御マイコンから得られた加速度センサ2での測定時におけるかごの走行に関する情報(例えば、制御の指令値)が対応付けられて出力されるため、走行特性情報とかごの走行に関する情報とのギャップ(即ち、制御の指令値に対するかごの実際の走行特性のズレ)を得ることができる。これにより、当該エレベータの乗り心地についての適切な改善策を見出し易くなる。
【0041】
本実施形態の携帯端末1は、出力部5から出力される出力内容を記憶する記憶部6を備える。このため、出力部5から出力された後の任意のタイミングで出力内容を確認することができる。
【0042】
また、本実施形態の携帯端末1では、処理部4が、走行特性情報と走行に関する情報とを比較し、その結果を出力部5に出力させる。即ち、処理部4は、走行特性情報(本実施形態の例では、加速度センサ2の測定結果をプロットしたグラフ)と、走行に関する情報(本実施形態の例では、制御マイコンから出力された加速度指令(電圧)をプロットしたグラフ)とを、時間軸が一致するように重ねた状態で出力部5に表示させる(
図3参照)。これにより、かごの走行特性の評価をより容易且つ正確に行うことができる。
【0043】
また、本実施形態の携帯端末1は、ジャイロスコープ3で得られた測定結果を、加速度センサ2での測定結果が得られたときの時間と対応付けて出力部5に表示できる(
図4参照)。このため、走行時のかごのロール(傾き)も確認できる。
【0044】
尚、本発明の蓄電素子は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0045】
上記実施形態の携帯端末1は、走行特性情報として加速度を測定するが、この構成に限定されない。携帯端末1は、走行特性情報として、例えば、速度、位置を測定してもよい。この場合、携帯端末1は、加速度センサ2によって測定された加速度を積分処理等によって(即ち、演算によって)速度、位置に変換する構成、即ち、走行特性情報(速度、位置等)を間接的に測定する構成でもよい。
【0046】
また、携帯端末が走行特性情報として速度を測定する場合、エレベータの制御マイコンから取得する走行に関する情報は、例えば、速度指令、速度帰還であり、走行特性情報として位置を測定する場合、エレベータの制御マイコンから取得する走行に関する情報は、例えば、位置指令、位置帰還である。
【0047】
上記実施形態の携帯端末1は、遠隔監視システムを用いたエレベータの保守等に用いられるものであるが、加速度センサ等を備えて走行特性情報を測定可能な携帯端末であれば、他の用途に用いられる携帯端末(即ち、汎用性のある携帯端末)に専用アプリケーション(即ち、CPUが実行することで、携帯端末において機能的に処理部4が形成されるアプリケーション)をインストールしたものでもよい。