(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、この発明の実施の形態を添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る基板処理装置1の内部のレイアウトを説明するための図解的な平面図である。基板処理装置1は、シリコンウエハ等の基板Wを一枚ずつ処理液で処理する枚葉式の装置である。処理液としては、薬液、リンス液および有機溶剤等が挙げられる。この実施形態では、基板Wは、円形状の基板である。基板Wの表面には、微細なパターン(
図9参照)が形成されている。
【0019】
基板処理装置1は、処理液で基板Wを処理する複数の処理ユニット2と、処理ユニット2で処理される複数枚の基板Wを収容するキャリヤCをそれぞれ保持する複数のロードポートLPと、ロードポートLPと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する搬送ロボットIRおよびCRと、基板処理装置1を制御する制御ユニット3とを含む。搬送ロボットIRは、キャリヤCと搬送ロボットCRとの間で基板Wを搬送する。搬送ロボットCRは、搬送ロボットIRと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する。複数の処理ユニット2は、例えば、同様の構成を有している。
【0020】
図2は、処理ユニット2の構成例を説明するための図解的な横断面図である。
図3は、
図2のIII−III線に沿った縦断面図に相当し、処理ユニット2の構成例を説明するための模式図である。
処理ユニット2は、一枚の基板Wを水平な姿勢で保持しながら、基板Wの中心を通る鉛直な回転軸線C1まわりに基板Wを回転させるスピンチャック5を含む。スピンチャック5は、基板Wを水平に保持する基板保持手段の一例である。処理ユニット2は、基板Wの上面(上方側の主面)に対向する対向面6aを有する対向部材としての遮断板6と、処理液で基板Wを処理するために基板Wを収容するチャンバ7とをさらに含む。チャンバ7には、基板Wを搬入/搬出するための搬入/搬出口7Aが形成されており、搬入/搬出口7Aを開閉するシャッタユニット7Bが備えられている。
【0021】
スピンチャック5は、チャックピン20と、スピンベース21と、回転軸22と、回転軸22を回転軸線C1まわりに回転させる電動モータ23とを含む。
回転軸22は、回転軸線C1に沿って鉛直方向(上下方向Zともいう)に延びており、この実施形態では、中空軸である。回転軸22の上端は、スピンベース21の下面の中央に結合されている。スピンベース21は、水平方向に沿う円盤形状を有している。スピンベース21の上面の周縁部には、基板Wを把持するための複数のチャックピン20が周方向に間隔を空けて配置されている。電動モータ23によって回転軸22が回転されることにより、基板Wが回転軸線C1まわりに回転される。以下では、基板Wの回転径方向内方を単に「径方向内方」といい、基板Wの回転径方向外方を単に「径方向外方」という。
【0022】
遮断板6は、基板Wとほぼ同じ径またはそれ以上の径を有する円板状に形成され、スピンチャック5の上方でほぼ水平に配置されている。遮断板6において対向面6aとは反対側の面には、中空軸30が固定されている。遮断板6において平面視で回転軸線C1と重なる位置を含む部分には、遮断板6を上下に貫通し、中空軸30の内部空間と連通する連通孔6bが形成されている。
【0023】
処理ユニット2は、水平に延び、中空軸30を介して遮断板6を支持する遮断板支持部材31と、遮断板支持部材31を介して遮断板6に連結され、遮断板6の昇降を駆動する遮断板昇降機構32と、遮断板6を回転軸線C1まわりに回転させる遮断板回転機構33とをさらに含む。
遮断板昇降機構32は、下位置(後述する
図8Gに示す位置)から上位置(後述する
図8Aに示す位置)までの任意の位置(高さ)に遮断板6を位置させることができる。下位置とは、遮断板6の可動範囲において、遮断板6の対向面6aが基板Wに最も近接する位置である。下位置では、基板Wの上面と対向面6aとの間の距離は、例えば、0.5mmである。上位置とは、遮断板6の可動範囲において遮断板6の対向面6aが基板Wから最も離間する位置である。上位置では、基板Wの上面と対向面6aとの間の距離は、例えば80mmである。
【0024】
遮断板回転機構33は、遮断板支持部材31の先端に内蔵された電動モータを含む。電動モータには、遮断板支持部材31内に配された複数の配線34が接続されている。複数の配線34は、当該電動モータに送電するためのパワーラインと、遮断板6の回転情報を出力するためのエンコーダラインとを含む。遮断板6の回転情報を検知することによって、遮断板6の回転を正確に制御できる。
【0025】
処理ユニット2は、スピンチャック5を取り囲む排気桶40と、スピンチャック5と排気桶40との間に配置された複数のカップ41,42(第1カップ41および第2カップ42)と、スピンチャック5に保持された基板Wから基板W外に排除される処理液を受ける複数のガード43〜45(第1ガード43、第2ガード44および第3ガード45)とをさらに含む。
【0026】
処理ユニット2は、複数のガード43〜45の昇降をそれぞれ駆動する複数のガード昇降機構46〜48(第1ガード昇降機構46、第2ガード昇降機構47および第3ガード昇降機構48)をさらに含む。各ガード昇降機構46〜48は、本実施形態では、平面視で、基板Wの回転軸線C1を中心として点対称となるように一対設けられている。それにより、複数のガード43〜45をそれぞれ安定して昇降させることができる。
【0027】
排気桶40は、円筒状の筒部40Aと、筒部40Aの径方向外方に筒部40Aから突出した複数(本実施形態では2つ)の突出部40Bと、複数の突出部40Bの上端に取り付けられた複数の蓋部40Cとを含む。複数のガード昇降機構46〜48は、筒部40Aの周方向において突出部40Bと同じ位置で、突出部40Bよりも径方向内方に配置されている。詳しくは、筒部40Aの周方向において各突出部40Bと同じ位置には、第1ガード昇降機構46、第2ガード昇降機構47および第3ガード昇降機構48により構成される組が1組ずつ配置されている。
【0028】
各カップ41,42は、上向きに開いた環状の溝を有しており、排気桶40の筒部40Aよりも径方向内方でスピンチャック5を取り囲んでいる。第2カップ42は、第1カップ41よりも径方向外方に配置されている。第2カップ42は、例えば、第3ガード45と一体であり、第3ガード45と共に昇降する。各カップ41,42の溝には、回収配管(図示せず)または排出配管(図示せず)が接続されている。各カップ41,42の底部に導かれた処理液は、回収配管または排出配管を通じて、回収または廃棄される。
【0029】
ガード43〜45は、平面視でスピンチャック5および遮断板6を取り囲むように配置されている。
第1ガード43は、排気桶40の筒部40Aよりも径方向内方でスピンチャック5を取り囲む第1筒状部43Aと、第1筒状部43Aから径方向内方に延びる第1延設部43Bとを含む。
【0030】
第1ガード43は、第1ガード昇降機構46によって、第1ガード43の上端が基板Wよりも下方に位置する下位置と、第1ガード43の上端が基板Wよりも上方に位置する上位置との間で昇降される。第1ガード43は、第1ガード昇降機構46によって昇降されることで、下位置と上位置との間の遮断板対向位置および基板対向位置に位置することができる。第1ガード43が基板対向位置に位置することで、第1延設部43Bが基板Wに水平方向から対向する。
【0031】
遮断板6の外縁部6cの周辺の模式的な拡大図である
図4を参照して、第1ガード43が遮断板対向位置に位置する状態とは、第1延設部43Bの内縁部43aが遮断板6の外縁部6cの上端に水平方向から対向する位置(
図4に二点鎖線で示す位置)と、第1延設部43Bの内縁部43aが遮断板6の外縁部6cの下端に水平方向から対向する位置(
図4に実線で示す位置)との間に第1ガード43が位置する状態のことをいう。第1ガード43が遮断板対向位置に位置する状態で、第1延設部43Bの内縁部43aと遮断板6の外縁部6cとの間の水平方向における距離は、例えば2mm〜5mmである。
【0032】
第1ガード43が遮断板対向位置に位置する状態で、第1ガード43は、スピンチャック5に保持された基板Wと遮断板6とともに外部との雰囲気の行き来が制限された空間Aを形成可能である。空間Aの外部とは、遮断板6よりも上方の空間や第1ガード43よりも径方向外方の空間のことである。空間Aは、空間A内の雰囲気と空間Aの外部の雰囲気との流体の流れが制限されるように形成されていればよく、空間A内の雰囲気が外部の雰囲気から必ずしも完全に遮断されるように形成される必要はない。
【0033】
図2および
図3を参照して、第2ガード44は、第1ガード43の第1筒状部43Aよりも径方向内方でスピンチャック5を取り囲む第2筒状部44Aと、第2筒状部44Aから径方向内方に延びる第2延設部44Bとを含む。第2延設部44Bは、径方向内方へ向かうに従って上方へ向かうように水平方向に対して傾斜している。第2延設部44Bは、第1延設部43Bに下方から対向している。
【0034】
第2ガード44は、第2ガード昇降機構47によって、第2ガード44の上端が基板Wよりも下方に位置する下位置と、第2ガード44の上端が基板Wよりも上方に位置する上位置との間で昇降される。第2ガード44は、第2ガード昇降機構47によって昇降されることで、下位置と上位置との間の基板対向位置に位置することができる。第2ガード44が基板対向位置に位置することで、第2延設部44B(の上方端)が基板Wに水平方向から対向する。空間Aは、第2ガード44が基板対向位置に位置する状態で、第2ガード44によって下方から区画されている。
【0035】
第3ガード45は、第2ガード44の第2筒状部44Aよりも径方向内方でスピンチャック5を取り囲む第3筒状部45Aと、第3筒状部45Aから径方向内方に延びる第3延設部45Bとを含む。第3延設部45Bは、第2延設部44Bに下方から対向している。
第3ガード45は、第3ガード昇降機構48(
図2参照)によって、第3ガード45の上端が基板Wよりも下方に位置する下位置と、第3ガード45の上端が基板Wよりも上方に位置する上位置との間で昇降される。第3ガード45は、第3ガード昇降機構48によって昇降されることで、下位置と上位置との間の基板対向位置に位置することができる。第3ガード45が基板対向位置に位置することで、第3延設部45B(の上方端)が基板Wに水平方向から対向する。
【0036】
処理ユニット2は、基板Wの下面に加熱流体を供給する下面ノズル8と、基板Wの上面にフッ酸等の薬液を供給する薬液ノズル9とを含む。
下面ノズル8は、回転軸22に挿通されている。下面ノズル8は、基板Wの下面中央に臨む吐出口を上端に有している。下面ノズル8には、温水等の加熱流体が、加熱流体供給管50を介して加熱流体供給源から供給されている。加熱流体供給管50には、その流路を開閉するための加熱流体バルブ51が介装されている。温水は、室温よりも高温の水であり、例えば80℃〜85℃の水である。加熱流体は、温水に限らず、高温の窒素ガス等の気体であってもよく、基板Wを加熱することができる流体であればよい。
【0037】
薬液ノズル9には、薬液が、薬液供給管53を介して薬液供給源から供給される。薬液供給管53には、その流路を開閉する薬液バルブ54が介装されている。
薬液とは、フッ酸に限られず、硫酸、酢酸、硝酸、塩酸、フッ酸、アンモニア水、過酸化水素水、有機酸(例えば、クエン酸、蓚酸等)、有機アルカリ(例えば、TMAH:テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等)、界面活性剤、腐食防止剤のうちの少なくとも1つを含む液であってもよい。これらを混合した薬液の例としては、SPM(sulfuric acid/hydrogen peroxide mixture:硫酸過酸化水素水混合液)、SC1(ammonia-hydrogen peroxide mixture:アンモニア過酸化水素水混合液)等が挙げられる。
【0038】
薬液ノズル9は、薬液ノズル移動機構52(
図2参照)によって、鉛直方向および水平方向に移動される。薬液ノズル9は、水平方向への移動によって、基板Wの上面の回転中心位置に対向する中央位置と、基板Wの上面に対向しない退避位置との間で移動させることができる。基板Wの上面の回転中心位置とは、基板Wの上面における回転軸線C1との交差位置である。基板Wの上面に対向しない退避位置とは、平面視においてスピンベース21の外方の位置である。
【0039】
薬液ノズル9は、段階的に折れ曲がった形状を有していてもよい。具体的には、薬液ノズル9は、下方に延び、薬液を吐出するノズル先端部9Aと、ノズル先端部9Aの上端から水平に延びる第1水平部9Bと、第1水平部9Bよりも上方で水平に延びる第2水平部9Cと、水平方向に対して傾斜する方向に延び、第1水平部9Bと第2水平部9Cとを連結する連結部9Dとを含む。
【0040】
処理ユニット2は、基板Wの上面の中央領域にリンス液としての脱イオン水(DIW:Deionized Water)を供給するDIWノズル10と、有機溶剤としてのIPAを基板Wの上面の中央領域に供給する中央IPAノズル11と、基板Wの上面の中央領域に窒素ガス(N
2)等の不活性ガスを供給する不活性ガスノズル12とをさらに含む。基板Wの上面の中央領域とは、基板Wの上面における回転軸線C1との交差位置を含む基板Wの上面の中央辺りの領域のことである。
【0041】
ノズル10〜12は、この実施形態では、中空軸30の内部空間と遮断板6の連通孔6bとに挿通されたノズル収容部材35に共通に収容されており、DIW、IPAおよび不活性ガスをそれぞれ吐出可能である。各ノズル10〜12の先端は、遮断板6の対向面6aと略同一の高さに配置されている。各ノズル10〜12は、空間Aが形成された状態であっても、基板Wの上面の中央領域にDIW、IPAおよび不活性ガスをそれぞれ供給できる。
【0042】
DIWノズル10には、DIW供給源から、DIW供給管55を介して、DIWが供給される。DIW供給管55には、その流路を開閉するためのDIWバルブ56が介装されている。
DIWノズル10は、DIW以外のリンス液を供給するリンス液ノズルであってもよい。リンス液とは、DIWのほかにも、炭酸水、電解イオン水、オゾン水、希釈濃度(例えば、10〜100ppm程度)の塩酸水、還元水(水素水)等を例示できる。
【0043】
中央IPAノズル11には、IPA供給源から、中央IPA供給管57を介して、IPAが供給される。中央IPA供給管57には、その流路を開閉するための中央IPAバルブ58が介装されている。
中央IPAノズル11は、本実施形態では、IPAを供給する構成であるが、水よりも表面張力が小さい低表面張力液体を基板Wの上面の中央領域に供給する中央低表面張力液体ノズルとして機能すればよい。
【0044】
低表面張力液体としては、基板Wの上面および基板Wに形成されたパターン(
図9参照)と化学反応しない(反応性が乏しい)、IPA以外の有機溶剤を用いることができる。より具体的には、IPA、HFE(ハイドロフルオロエーテル)、メタノール、エタノール、アセトンおよびTrans-1,2ジクロロエチレンのうちの少なくとも1つを含む液を低表面張力液体として用いることができる。また、低表面張力液体は、単体成分のみからなる必要はなく、他の成分と混合した液体であってもよい。例えば、IPA液と純水との混合液であってもよいし、IPA液とHFE液との混合液であってもよい。
【0045】
不活性ガスノズル12には、窒素ガス等の不活性ガスが、第1不活性ガス供給管59を介して不活性ガス供給源から供給される。第1不活性ガス供給管59には、その流路を開閉する第1不活性ガスバルブ60が介装されている。不活性ガスとは、窒素ガスに限らず、基板Wの上面およびパターンに対して不活性なガスのことであり、例えばアルゴン等の希ガス類であってもよい。
【0046】
ノズル収容部材35の外周面と、中空軸30の内周面および遮断板6において連通孔6bを区画する面との間の空間によって、基板Wの中央領域に不活性ガスを供給する不活性ガス流通路18が形成されている。不活性ガス流通路18
には、窒素ガス等の不活性ガスが、第2不活性ガス供給管66を介して不活性ガス供給源から供給される。第2不活性ガス供給管66には、その流路を開閉する第2不活性ガスバルブ67が介装されている。不活性ガス流通路18に供給された不活性ガスは、連通孔6bの下端から基板Wの上面に向けて吐出される。
【0047】
処理ユニット2は、基板Wの上面に処理液を供給する移動ノズル17をさらに含んでいてもよい(
図2参照)。移動ノズル17は、移動ノズル移動機構65によって、鉛直方向および水平方向に移動される。移動ノズル17から基板Wに供給される処理液は、例えば、薬液、リンス液または低表面張力液体等である。
処理ユニット2は、空間Aが形成された状態で空間A内に配置されるように第1ガード43の内壁から延び、基板Wの上面にIPAを供給するIPAノズル13と、第1ガード43に連結され、基板Wの上面と遮断板6の対向面6aとの間でIPAノズル13を移動させるIPAノズル移動機構14とをさらに含む。
【0048】
IPAノズル13は、空間Aが形成された状態で第1ガード43の内壁から空間Aの内方に延びている。IPAノズル13は、基板Wの上面に処理液を供給する処理液供給ノズルの一例である。
IPAノズル13には、IPAが、IPA供給管61を介してIPA供給源から供給される。IPA供給管61には、その流路を開閉するためのIPAバルブ62が介装されている。
【0049】
IPAノズル13は、水平方向に延びており、平面視で湾曲している。詳しくは、IPAノズル13は、第1ガード43の第1筒状部43Aにならう円弧形状を有している。IPAノズル13の先端には、基板Wの上面に向けて鉛直方向に(下方に)IPAを吐出する吐出口13aが設けられている。
IPAノズル13は、水平方向への移動によって、基板Wの上面の回転中心位置に対向する中央位置と、基板Wの上面に対向しない退避位置との間で移動することができる。退避位置は、平面視において、スピンベース21の外方の位置であり、より具体的には、第1ガード43の第1筒状部43Aに径方向内方から隣接する位置であってもよい。
【0050】
IPAノズル移動機構14は、基板Wの上面と対向面6aとの間で処理液供給ノズルとしてのIPAノズル13を移動させるノズル移動手段の一例である。IPAノズル移動機構14は、IPAノズル13を支持するノズル支持部材15と、第1ガード43に連結され、ノズル支持部材15を駆動する駆動機構16と、駆動機構16の少なくとも一部を覆うカバー73とを含む。駆動機構16は、回転軸(図示せず)と当該回転軸を回転する駆動モータ(図示せず)とを含む。ノズル支持部材15は、当該駆動モータによって駆動されて所定の中心軸線まわりに回動する回動軸の形態を有している。
【0051】
ノズル支持部材15の上端は、カバー73よりも上方に位置している。IPAノズル13およびノズル支持部材15は、一体に形成されていてもよい。ノズル支持部材15およびIPAノズル13は、中空軸の形態を有している。ノズル支持部材15の内部空間とIPAノズル13の内部空間とは、連通している。ノズル支持部材15には、上方からIPA供給管61が挿通されている。
【0052】
第1ガード43の第1延設部43Bは、水平方向に対して傾斜する傾斜部43Cと、水平方向に平坦な平坦部43Dとを一体的に含む。平坦部43Dと傾斜部43Cとは、基板Wの回転方向に並んで配置されている。平坦部43Dは、径方向外方に向かうに従って傾斜部43Cよりも上方に位置するように傾斜部43Cよりも上方に突出している。平坦部43Dは、平面視で、ノズル支持部材15と、スピンベース21の外方に位置する状態のIPAノズル13とに重なるように配置されている。平坦部43Dは、平面視で、少なくとも退避位置にあるIPAノズル13およびノズル支持部材15と重なるように配置されていればよい。
【0053】
第2ガード44の第2延設部44Bは、平坦部43Dに下方から対向する。第2延設部44Bは、水平方向に対して傾斜して延び、平坦部43Dに下方から対向する対向部の一例である。
第1ガード43と第2ガード44との間には、IPAノズル13を収容可能な収容空間Bが形成されている。収容空間Bは、第1ガード43の第1筒状部43Aにならって基板Wの回転方向に延びており、平面視で円弧形状を有している。収容空間Bは、第1筒状部43Aと平坦部43Dと第2延設部44Bとによって区画される空間である。詳しくは、収容空間Bは、第1筒状部43Aによって径方向外方から区画されており、平坦部43Dによって上方から区画されており、第2延設部44Bによって下方から区画されている。退避位置に位置するIPAノズル13は、収容空間Bに収容された状態で、平坦部43Dに下方から近接している。
【0054】
平坦部43Dが水平方向に平坦であり、第2延設部44Bが径方向内方へ向かうに従って上方へ向かうように水平方向に対して傾斜している。そのため、第2延設部44Bの径方向内方端を第1ガード43の第1延設部43Bの径方向内方端に最も近接させた状態においても、第1ガード43と第2ガード44との間に収容空間Bが形成される。
第1ガード43の平坦部43Dには、上下方向Zに平坦部43Dを貫通する貫通孔43bが形成されている。貫通孔43bには、ノズル支持部材15が挿通されている。ノズル支持部材15と貫通孔43bの内壁との間には、ゴム等のシール部材(図示せず)が配置されている。これにより、ノズル支持部材15と貫通孔43bの内壁との間がシールされている。駆動機構16は、空間A外に配置されている。
【0055】
処理ユニット2は、第1ガード昇降機構46に取り付けられ、IPAノズル移動機構14を第1ガード43に固定する第1ブラケット70と、第1ブラケット70によって支持され駆動機構16を載置固定する台座71と、第1ガード43に連結され、第1ブラケット70よりも基板Wの径方向内方で台座71を支持する第2ブラケット72とをさらに含む。IPAノズル移動機構14において第1ブラケット70によって固定されている部分14aは、平面視で、第1ガード昇降機構46と重なっている。
【0056】
図5は、基板処理装置1の主要部の電気的構成を説明するためのブロック図である。制御ユニット3は、マイクロコンピュータを備えており、所定の制御プログラムに従って、基板処理装置1に備えられた制御対象を制御する。より具体的には、制御ユニット3は、プロセッサ(CPU)3Aと、制御プログラムが格納されたメモリ3Bとを含み、プロセッサ3Aが制御プログラムを実行することによって、基板処理のための様々な制御を実行するように構成されている。特に、制御ユニット3は、搬送ロボットIR,CR、IPAノズル移動機構14、電動モータ23、遮断板昇降機構32、遮断板回転機構33、ガード昇降機構46〜48、薬液ノズル移動機構52およびバルブ類51,54,56,58,60,62,67等の動作を制御する。
【0057】
図6は、基板処理装置1による基板処理の一例を説明するための流れ図であり、主として、制御ユニット3が動作プログラムを実行することによって実現される処理が示されている。
図7は、基板処理の詳細を説明するためのタイムチャートである。
図8A〜
図8Gは、基板処理の詳細を説明するための処理ユニット2の要部の図解的な断面図である。
基板処理装置1による基板処理では、例えば、
図6に示すように、基板搬入(S1)、薬液処理(S2)、DIWリンス処理(S3)、有機溶剤処理(S4)、乾燥処理(S5)および基板搬出(S6)がこの順番で実行される。
【0058】
まず、基板処理装置1による基板処理では、未処理の基板Wは、搬送ロボットIR,CRによってキャリヤCから処理ユニット2に搬入され、スピンチャック5に渡される(S1)。この後、基板Wは、搬送ロボットCRによって搬出されるまで、スピンチャック5に水平に保持される(基板保持工程)。基板Wがスピンチャック5に水平に保持された状態で、基板Wの上面が遮断板6の対向面6aと対向する。搬送ロボットCRによって基板Wが搬出されるまで、遮断板6の対向面6aが基板の上面に対向配置された状態が維持される(対向配置工程)。
【0059】
次に、
図7および
図8Aを参照して、薬液処理(S2)について説明する。搬送ロボットCRが処理ユニット2外に退避した後、基板Wの上面を薬液で洗浄する薬液処理(S2)が実行される。
具体的には、まず、制御ユニット3は、IPAノズル移動機構14を制御して、IPAノズル13を退避位置に位置させる。IPAノズル13を退避位置に配置した状態で、制御ユニット3は、第1ガード昇降機構46および第2ガード昇降機構47を制御して、第1ガード43および第2ガード44を上下方向Zに互いに近づけた状態で、第1ガード43を上位置に配置し、第2ガード44を基板対向位置よりも上方に配置する。これにより、退避位置に位置するIPAノズル13は、第1ガード43の第1延設部43Bの平坦部43Dと、第1ガード43の第1筒状部43Aと、第2ガード44の第2延設部44Bとによって区画される収容空間B内に収容される。
【0060】
そして、制御ユニット3は、第3ガード昇降機構48を制御して、第3ガード45を基板対向位置よりも上方に配置する。また、制御ユニット3は、遮断板昇降機構32を制御して遮断板6を上位置に配置する。
そして、制御ユニット3は、電動モータ23を駆動してスピンベース21を例えば800rpmで回転させる。制御ユニット3は、遮断板回転機構33を制御して、遮断板6を回転させる。このとき、遮断板6をスピンベース21と同期回転させてもよい。同期回転とは、同じ方向に同じ回転速度で回転することをいう。
【0061】
そして、制御ユニット3は、薬液ノズル移動機構52を制御して、薬液ノズル9を基板Wの上方の薬液処理位置に配置する。薬液処理位置は、薬液ノズル9から吐出される薬液が基板Wの上面の回転中心に着液する位置であってもよい。そして、制御ユニット3は、薬液バルブ54を開く。それにより、回転状態の基板Wの上面に向けて、薬液ノズル9から薬液が供給される。供給された薬液は遠心力によって基板Wの上面全体に行き渡る。このとき、薬液ノズル9から供給される薬液の量(薬液供給量)は、例えば、2リットル/minである。
【0062】
遠心力によって基板外に飛び散った薬液(基板W側方の太線矢印参照)は、第3ガード45の第3延設部45Bの下方を通って、第3ガード45の第3筒状部45Aによって受けられる。第3筒状部45Aによって受けられた薬液は、第1カップ41(
図3参照)へと流れる。
このとき、IPAノズル13は、第1ガード43の平坦部43Dおよび第1筒状部43Aと第2ガード44の第2延設部44Bとによって区画された収容空間Bに収容されている。そのため、基板Wの上面から飛散した薬液によるIPAノズル13の汚染を抑制または防止できる。
【0063】
また、本実施形態では、遠心力によって基板外に飛び散った薬液が第3ガード45の第3筒状部45Aによって受けられる構成について説明したが、遠心力によって基板W外に飛び散った薬液が第2ガード44の第2筒状部44Aによって受けられる構成であってもよい。この場合、遠心力によって基板W外に飛び散った薬液が第2ガード44の第2延設部44Bと第3ガード45の第3延設部45Bとの間を通って第2ガード44の第2筒状部44Aによって受けられるように、制御ユニット3が、ガード昇降機構46〜48を制御して、第2ガード44を基板対向位置よりも上方に配置し、第3ガード45を基板対向位置よりも下方に配置する。第2筒状部44Aによって受けられた薬液は、第2カップ42(
図3参照)へと流れる。
【0064】
次に、
図7、
図8Bおよび
図8Cを参照して、DIWリンス処理(S3)について説明する。
一定時間の薬液処理(S2)の後、基板W上の薬液をDIWに置換することにより、基板Wの上面から薬液を排除するためのDIWリンス処理(S3)が実行される。
具体的には、まず、
図7および
図8Bを参照して、制御ユニット3は、薬液バルブ54を閉じ、薬液ノズル移動機構52を制御して、薬液ノズル9を基板Wの上方からスピンベース21の側方へと退避させる。
【0065】
そして、制御ユニット3は、DIWバルブ56を開く。それにより、回転状態の基板Wの上面に向けてDIWノズル10からDIWが供給される。供給されたDIWは遠心力によって基板Wの上面全体に行き渡る。このDIWによって基板W上の薬液が洗い流される。このとき、DIWノズル10から供給されるDIWの量(DIW供給量)は、例えば、2リットル/minである。
【0066】
そして、制御ユニット3は、ガード昇降機構46〜48を制御して、第2ガード44が基板対向位置よりも上方に配置された状態で第1ガード43および第2ガード44によって収容空間Bが形成され、かつ、第3ガード45が基板対向位置よりも上方に配置
された状態を維持する。この状態で、退避位置に位置するIPAノズル13が、収容空間B内に収容されている。また、制御ユニット3は、遮断板昇降機構32を制御して、遮断板6が上位置に位置する状態を維持する。
【0067】
そして、制御ユニット3は、電動モータ23を駆動してスピンベース21を例えば800rpmで回転させる。制御ユニット3は、遮断板回転機構33を制御して、遮断板6を回転させる。このとき、遮断板6をスピンベース21と同期回転させてもよい。
遠心力によって基板W外に飛び散ったDIW(基板W側方の太線矢印参照)は、第3ガード45の第3延設部45Bの下方を通って、第3ガード45に第3筒状部45Aによって受けられる。第3筒状部45Aによって受けられたDIWは、第1カップ41(
図3参照)へと流れる。このとき、IPAノズル13は、第1ガード43の平坦部43Dおよび第1筒状部43Aと第2ガード44の第2延設部44Bによって区画された収容空間Bに収容されている。そのため、基板Wの上面から飛散した薬液およびDIWによるIPAノズル13の汚染を抑制または防止できる。
【0068】
そして、
図7および
図8Cを参照して、回転状態の基板Wの上面に向けてDIWノズル10からDIWが供給されている状態で、制御ユニット3は、遮断板昇降機構32を制御して、遮断板6を上位置から第1近接位置に移動させる。第1近接位置とは、遮断板6の対向面6aが基板Wの上面に近接した位置であり、基板Wの上面と対向面6aとの間の距離が例えば7mmとなる位置である。
【0069】
そして、制御ユニット3は、第1ガード昇降機構46を制御して、第1ガード43を下降させて第1ガード43を遮断板対向位置に配置する。これにより、基板W、遮断板6および第1ガード43によって空間Aが形成される(空間形成工程)。また、制御ユニット3が、第2ガード昇降機構47を制御して、第2ガード44を下降させて第2ガード44を基板対向位置に配置する。これにより、空間Aが第2ガード44の第2延設部44Bによって下方から区画される。
【0070】
そして、制御ユニット3は、第2不活性ガスバルブ67を制御して、不活性ガス流通路18から供給される不活性ガスの流量を例えば300リットル/minにする。これにより、不活性ガス流通路18によって空間Aに不活性ガスが供給され(不活性ガス供給工程)、空間A内の雰囲気が不活性ガスで置換される(不活性ガス置換工程)。不活性ガス流通路18は、空間A内の雰囲気を不活性ガスで置換するために空間Aに不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段として機能する。
【0071】
そして、制御ユニット3は、加熱流体バルブ51を開いて、下面ノズル8から加熱流体を供給させることで基板Wを加熱する(基板加熱工程)。
制御ユニット3は、電動モータ23を制御して、スピンベース21を例えば1200rpmで回転させて所定時間維持し、その後、スピンベース21の回転を例えば2000rpmまで加速させる(高速回転工程)。
【0072】
制御ユニット3は、遮断板回転機構33を制御して、スピンベース21とは異なる速度で遮断板6を回転させる。具体的には、遮断板6は、例えば、800rpmで回転される。
遠心力によって基板W外に飛び散った薬液およびDIW(基板W側方の太線矢印参照)は、第1ガード43の第1延設部43Bと第2ガード44の第2延設部44Bとの間を通って、第1ガード43の第1筒状部43Aによって受けられる。
【0073】
前述したように、収容空間Bを上方から区画する平坦部43Dは、径方向外方に向かうに従って傾斜部43Cよりも上方に位置するように傾斜部43Cよりも上方に突出している。また、前述したように、退避位置に位置するIPAノズル13が平坦部43Dに下方から隣接している。そのため、基板Wの上面から飛散した薬液およびDIWが第1延設部43Bと第2延設部44Bとの間を通る場合であっても、退避位置に位置するIPAノズル13が傾斜部43Cに下方から隣接する構成と比較して、IPAノズル13の汚染を抑制できる。
【0074】
また、本実施形態では、遠心力によって基板外に飛び散ったDIWが第1ガード43の第1筒状部43Aによって受けられる構成について説明したが、遠心力によって基板外に飛び散った薬液が第2ガード44の第2筒状部44Aによって受けられる構成であってもよい。この場合、第2ガード44の第2延設部44Bと第3ガード45の第3延設部45Bとの間を通って第2ガード44の第2筒状部44Aによって受けられるように、制御ユニット3が、ガード昇降機構46〜48を制御して、第2ガード44を基板対向位置よりも上方に配置し、第3ガード45を基板対向位置よりも下方に配置する。
【0075】
次に、
図7および
図8D〜
図8Fを参照して、有機溶剤処理(S4)について説明する。一定時間のDIWリンス処理(S3)の後、基板W上のDIWを、水よりも表面張力の低い低表面張力液体である有機溶剤(例えばIPA)に置換する有機溶剤処理(S4)が実行される。有機溶剤処理が実行される間、基板Wを加熱してもよい。具体的には、制御ユニット3が、加熱流体バルブ51を開いた状態を維持し、下面ノズル8から加熱流体を供給させることで基板Wを加熱し続ける。
【0076】
図7および
図8Dを参照して、有機溶剤処理では、まず、高速で基板Wを回転させた状態で基板Wの上面のDIWをIPAで置換する高速IPA置換ステップS4aが実行される。
高速IPA置換ステップS4aが開始されると、制御ユニット3は、DIWバルブ56を閉じる。それにより、DIWノズル10からのDIWの供給が停止される。制御ユニット3は、中央IPAバルブ58を開く。これにより、回転状態の基板Wの上面に向けて中央IPAノズル11からIPAが供給され、基板Wの上面にIPAの液膜110が形成される(液膜形成工程)。
【0077】
制御ユニット3は、遮断板昇降機構32を制御して、遮断板6が第1近接位置に配置された状態を維持する。また、制御ユニット3は、第1ガード昇降機構46を制御して第1ガード43が遮断板対向位置に配置された状態を維持し、第2ガード昇降機構47を制御して第2ガード44が基板対向位置に配置された状態を維持する。これにより、基板W、遮断板6および第1ガード43によって空間Aが形成され、空間Aが第2ガード44の第2延設部44Bによって下方から区画された状態が維持される。本実施形態とは異なり、DIWリンス処理(S3)の終了時に第2ガード44が基板対向位置よりも上方に位置しているときは、高速IPA置換ステップS4aが開始されるまでに、制御ユニット3が第2ガード昇降機構47を制御して、第2ガード44を基板対向位置に移動させる。
【0078】
制御ユニット3は、第2不活性ガスバルブ67を制御して、不活性ガス流通路18から供給される不活性ガスの流量を、例えば、50リットル/minにする。
制御ユニット3は、電動モータ23を駆動してスピンベース21を、例えば、2000rpmで高速回転させる(高速回転工程)。すなわち、DIWリンス処理(S3)に引き続き高速回転工程を実行する。供給されたIPAは遠心力によって基板Wの上面全体に速やかに行き渡り、基板W上のDIWがIPAによって置換される。
【0079】
制御ユニット3は、遮断板回転機構33を制御して、遮断板6を、例えば、1000rpmで回転させる。
遠心力によって基板外に飛び散ったDIWおよびIPA(基板W側方の太線矢印参照)は、第1ガード43の第1延設部43Bと第2ガード44の第2延設部44Bとの間を通って、第1ガード43の第1筒状部43Aによって受けられる。
【0080】
前述したように、収容空間Bを上方から区画する平坦部43Dは、径方向外方に向かうに従って傾斜部43Cよりも上方に位置するように傾斜部43Cよりも上方に突出している。また、前述したように、退避位置に位置するIPAノズル13が平坦部43Dに下方から隣接している。そのため、基板Wの上面から飛散したDIWおよびIPAが第1延設部43Bと第2延設部44Bとの間を通る場合であっても、退避位置に位置するIPAノズル13が傾斜部43Cの下方から隣接する構成と比較して、IPAノズル13の汚染を抑制できる。
【0081】
図8Eを参照して、有機溶剤処理(S4)では、次に、遮断板6を移動(上昇)させることで基板Wの上面と遮断板6の対向面6aとの間の間隔を調整する間隔調整ステップS4bが実行される。
制御ユニット3は、電動モータ23を制御して、例えば、2000rpmでスピンベース21を高速回転させる状態を維持する(高速回転工程)。また、制御ユニット3は、遮断板回転機構33を制御して、例えば、1000rpmで遮断板6を回転させる状態を維持する。
【0082】
制御ユニット3は、遮断板昇降機構32を制御して、空間Aを維持しながら遮断板6を例えば第1近接位置から第2近接位置に移動(上昇)させることによって、基板Wの上面と遮断板6の対向面6aとの間の間隔を調整する(間隔調整ステップS4b)。第2近接位置とは、遮断板6の対向面6aが基板Wの上面に近接した位置であり、第1近接位置よりも上方の位置である。遮断板6が第2近接位置に位置するときの対向面6aは、遮断板6が第1近接位置に位置するときの対向面6aよりも上方に位置し、基板Wの上面との距離が15mm程度である。
【0083】
間隔調整ステップS4bの際、制御ユニット3は、第1ガード昇降機構46を制御して、遮断板6とともに第1ガード43を同じ速度で同時に
基板Wに対して移動(上昇)させ
て遮断板対向位置に配置する。これにより、間隔調整ステップS4bの前後で、空間Aが形成された状態が維持される。そして、制御ユニット3は、第2ガード昇降機構47を制御して、第2ガード44が基板対向位置に配置された状態を維持する。
【0084】
間隔調整ステップS4bでは、空間Aと外部との雰囲気の行き来が制限された状態が維持できればよく、必ずしも第1ガード43が遮断板対向位置に位置する状態が維持され続けていなくてもよい。空間Aと外部との雰囲気の行き来が制限された状態が維持できれば、間隔調整ステップS4bの途中で第1ガード43が遮断板対向位置から上下方向Zに僅かにずれた位置に配置された状態を経由してもよい。また、空間Aと外部との雰囲気の行き来が制限された状態が維持できれば、遮断板6とともに第1ガード43を同じ速度で昇降させる必要もないし、遮断板6と第1ガード43とを同時に昇降される必要もない。
【0085】
遮断板6が第2近接位置に位置することにより、IPAノズル13が基板Wと遮断板6との間で移動できるようになる。つまり、間隔調整ステップS4bは、IPAノズル13が基板Wの上面と遮断板6の対向面6aとの間で移動できるように基板Wの上面と遮断板6の対向面6aとの間の間隔が調整される工程を含む。
基板W上にIPAの液膜110が保持されている期間に、制御ユニット3は、IPAノズル移動機構14を制御して、処理位置へ向けてIPAノズル13を移動させるノズル移動ステップS4cが実行される。処理位置とは、基板Wの中央領域から基板Wの周縁側へ僅かに(例えば40mm程度)ずれた位置である。
【0086】
制御ユニット3は、ノズル移動ステップS4cの開始と同時に基板Wの回転速度を300rpmまで低減させる。これにより、基板Wから飛散するIPAの液量が減少する。一方で、制御ユニット3は、遮断板6の回転速度を、例えば、1000rpmに維持する。
本実施形態では、IPAノズル13は、遮断板6が少なくとも第2近接位置よりも上方に位置するときに、遮断板6の対向面6aと基板Wの上面との間で移動可能であるが、本実施形態とは異なり、IPAノズル13は、遮断板6が第2近接位置よりも下方の第1近接位置に位置するときに、遮断板6の対向面6aと基板Wの上面との間で移動可能であってもよい。この場合、遮断板6が第1近接位置に移動して空間Aが形成されると同時に、基板Wの上面と遮断板6の対向面6aとの間をIPAノズル13の間で移動できるように基板Wの上面と遮断板6の対向面6aとの間の間隔が調整される。すなわち、空間形成工程と間隔調整ステップS4b(間隔調整工程)とが同時に実行される。
【0087】
有機溶剤処理(S4)は、DIWリンス処理(S3)で開始された不活性ガス流通路18からの不活性ガスの供給は、維持されている。そのため、DIWリンス処理(S3)で既に不活性ガス供給工程が開始されているので、不活性ガス供給工程は、間隔調整ステップS4b(間隔調整工程)が終了する前に開始されている。
図8Fを参照して、ノズル移動ステップS4cが終了してIPAノズル13が処理位置まで移動すると、次に、基板Wの上面のIPAの液膜110を排除する液膜排除ステップS4dが実行される。
まず、制御ユニット3は、中央IPAバルブ58を閉じて、中央IPAノズル11による基板Wの上面へのIPAの供給を停止させる。そして、制御ユニット3は、第2不活性ガスバルブ67を制御して、不活性ガス流通路18から基板Wの上面の中央領域に向けて垂直に例えば100リットル/minで不活性ガス(例えばN
2ガス)を吹き付け、液膜110の中央領域に小さな開口111(例えば直径30mm程度)を開けて基板Wの上面の中央領域を露出させる。
【0088】
液膜排除ステップでは、必ずしも不活性ガスの吹き付けによって開口111を形成する必要はない。例えば、基板Wの下面の中央領域への下面ノズル8による加熱流体の供給によって基板Wを加熱して中央領域のIPAを蒸発させ、不活性ガスの吹き付けはしないで、液膜110の中央領域に開口111を形成させてもよい。また、基板Wの上面への不活性ガスの吹き付けと、加熱流体による基板Wの下面の中央領域の加熱との両方によって液膜110に開口111を形成してもよい。
【0089】
基板Wの回転による遠心力によって開口111が拡大し、基板Wの上面からIPA液膜が徐々に排除される。不活性ガス流通路18による不活性ガスの吹き付けは、基板Wの上面から液膜110が排除されるまでの間、すなわち液膜排除ステップが完了するまで継続してもよい。不活性ガスの吹き付け力によりIPAの液膜110に力が付加されて開口111の拡大が促進される。その際、不活性ガスの流量を段階的に増大させてもよい。例えば、本実施形態では、不活性ガスの流量は、100リットル/minで所定時間維持され、その後、200リットル/minに流量を増大させて所定時間維持され、その後、300リットル/minに流量を増大させて所定時間維持される。
【0090】
このとき、制御ユニット3は、第1不活性ガスバルブ60を制御して、不活性ガスノズル12からも基板Wの上面の中央領域に不活性ガスを供給してもよい。これにより、開口111の拡大が一層促進される。
開口111を拡大させる際、制御ユニット3は、IPAバルブ62を制御して、IPAノズル13から基板Wの上面へのIPAの供給を開始する。IPAノズル13から供給されるIPAの温度は、室温より高いことが好ましく、例えば50℃である。その際、制御ユニット3は、IPAノズル13から供給されるIPAの着液点を開口111の外側に設定する。開口111の外側とは、開口111の周縁に対して回転軸線C1とは反対側をいう。
【0091】
開口111の拡大に伴って、制御ユニット3は、IPAノズル移動機構14を制御して、IPAノズル13を基板Wの周縁へ向けて移動させる。これにより、液膜110には、十分なIPAが供給される。そのため、蒸発または遠心力によって開口111の周縁よりも外側のIPAが局所的になくなることを抑制できる。有機溶剤処理(S4)(液膜排除ステップS4d)は、例えば、IPAノズル13が外周位置に到達した時点で終了する。外周位置とは、IPAノズル13による液膜110へのIPA供給位置が基板Wの周縁(基板Wの中央領域から基板Wの周縁側へ例えば140mmずれた位置)に到達する位置である。あるいは、有機溶剤処理(S4)は、開口111の周縁が基板Wの周縁に到達した時点で終了してもよい。
【0092】
次に、
図8Gを参照して、乾燥処理(S5)について説明する。有機溶剤処理(S4)を終えた後、基板Wの上面の液成分を遠心力によって振り切るための乾燥処理(S5:スピンドライ)が実行される。
具体的には、制御ユニット3は、加熱流体バルブ51、IPAバルブ62および第1不活性ガスバルブ60を閉じ、IPAノズル移動機構14を制御してIPAノズル13を退避位置へ退避させる。
【0093】
そして、制御ユニット3は、遮断板昇降機構32を制御して遮断板6を下位置へ移動させる。そして、制御ユニット3は、第2ガード昇降機構47および第3ガード昇降機構48を制御して、第2ガード44および第3ガード45を基板対向位置よりも下方に配置する。そして、制御ユニット3は、第1ガード昇降機構46を制御して、第1ガード43を下降させ、下位置よりも僅かに上方で、かつ、基板対向位置よりも僅かに上方の位置に第1ガード43を配置する。
【0094】
そして、制御ユニット3は、電動モータ23を制御して、スピンベース21の回転を段階的に加速させる。具体的には、スピンベースの回転は、例えば500rpmで所定時間維持され、その後750rpmに加速させて所定時間維持され、その後1500rpmに加速させて所定時間維持される。これにより、基板W上の液成分を遠心力によって振り切る。
【0095】
そして、制御ユニット3は、遮断板回転機構33を制御して、遮断板6を例えば1000rpmで回転させる。制御ユニット3は、遮断板回転機構33を制御して、基板Wの回転速度が1500rpmになるタイミングで遮断板6の回転を1500rpmまで加速させて、スピンベース21と遮断板6とを同期回転させる。
また、乾燥処理(S5)では、不活性ガス流通路18からの不活性ガスの供給を維持する。不活性ガスの流量は、例えば、液膜排除ステップが終了するときと同じ(300リットル/min)である。基板Wの回転が1500rpmまで加速されると、制御ユニット3は、第2不活性ガスバルブ67を制御して、不活性ガス流通路18から供給される不活性ガスの流量を200リットル/minに低減させる。
【0096】
その後、制御ユニット3は、電動モータ23を制御してスピンチャック5の回転を停止させる。そして、制御ユニット3は、遮断板昇降機構32を制御して遮断板6を上位置に退避させる。そして、制御ユニット3は、ガード昇降機構46〜48を制御して、ガード43〜45を下位置へ移動させる。
その後、搬送ロボットCRが、処理ユニット2に進入して、スピンチャック5から処理済みの基板Wをすくい取って、処理ユニット2外へと搬出する(S6)。その基板Wは、搬送ロボットCRから搬送ロボットIRへと渡され、搬送ロボットIRによって、キャリヤCに収納される。
【0097】
この実施形態によれば、基板Wと、遮断板6と、第1ガード43とによって形成された空間Aでは、外部との雰囲気の行き来が制限される。この空間Aに不活性ガス流通路18から不活性ガスを供給して雰囲気を不活性ガスで置換することによって、基板Wの上面と遮断板6の対向面6aとの間の雰囲気の酸素濃度および湿度を速やかに低減することができる。この空間Aを維持しながら遮断板昇降機構32が遮断板6を基板Wに対して昇降させることによって、基板Wの上面と遮断板6の対向面6aとの間の雰囲気の酸素濃度および湿度を低減した状態で基板Wの上面と遮断板6の対向面6aとの間の間隔を適切に調整することができる。したがって、基板Wの上面と遮断板6の対向面6aとの間の雰囲気の酸素濃度および湿度を低減し、かつ、基板Wの上面と遮断板6の対向面6aとの間を適切な間隔に保った状態で、IPAノズル13から基板Wの上面にIPAを供給し、基板Wを処理することができる。
【0098】
また、基板Wの上面と遮断板6の対向面6aとの間の間隔を調整する際に遮断板6の外縁部6cと第1ガード43の第1延設部43Bの内縁部43aとが対向した状態が維持されるので、空間Aと外部との雰囲気の行き来を一層制限できる。
また、遮断板6とともに第1ガード43を基板Wに対して昇降させることによって、空間Aの維持が容易となる。そのため、基板Wの上面と遮断板6との間の間隔の調整の自由度が向上する。
【0099】
遮断板6と第1ガード43とが同じ速度で基板Wに対して昇降されるので、基板Wと遮断板6と第1ガード43とによって形成された空間Aと外部との雰囲気の行き来をより一層制限できる。また、遮断板6と第1ガード43とが同時に基板Wに対して相対的に昇降されるので、空間Aと外部との雰囲気の行き来をより一層制限できる。
また、第1ガード43から空間Aの内方に延びるIPAノズル13が基板Wと遮断板6の対向面6aとの間で移動できるように基板Wの上面と遮断板6の対向面6aとの間の間隔が調整される。そのため、IPAノズル13は、空間A内の雰囲気を不活性ガスで置換した状態、すなわち雰囲気中の酸素濃度および湿度が低減された状態で、基板Wの上面に処理液を供給することができる。
【0100】
また、不活性ガス供給工程が、間隔調整工程(間隔調整ステップS4b)が終了する前に開始される。そのため、基板Wと遮断板6の対向面6aとの間の雰囲気の酸素濃度および湿度が低減され、かつ、基板Wの上面と遮断板6の対向面6aとの間の間隔が適切に調整された状態で基板Wの上面へのIPAの供給を開始するまでの時間が短縮される。
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、さらに他の形態で実施することができる。
【0101】
例えば、本実施形態では、第1ガード43が昇降する構成であったが、間隔調整ステップS4bの前後で第1ガード43の第1延設部43Bの内縁部43aが遮断板6の外縁部6cに水平方向から対向可能な程度に遮断板6が上下方向Zに厚みを有していれば、本実施形態とは異なり、第1ガード43が昇降しない構成であってもよい。
また、間隔調整ステップS4bでは、遮断板6および第1ガード43は、基板Wに対して相対的に昇降すればよいので、本実施形態とは異なり、基板Wが昇降することによって基板Wの上面と遮断板6の対向面6aとの間の間隔が調整される構成であってもよいし、遮断板6、第1ガード43および基板Wのいずれもが昇降することによって基板Wの上面と遮断板6の対向面6aとの間の間隔が調整される構成であってもよい。
【0102】
また、本実施形態では、IPAノズル13は、ノズル支持部材15の回転軸線まわりに移動する構成であったが、本実施形態とは異なり、IPAノズル13が延びる方向に直線的に移動する構成であってもよい。
また、本実施形態では、薬液ノズル9は、水平方向に移動する移動ノズルであるが、本実施形態とは異なり、基板Wの上面の回転中心に向けて薬液を吐出するように配置された固定ノズルであってもよい。詳しくは、薬液ノズル9は、DIWノズル10、不活性ガスノズル12および中央IPAノズル11とともに中空軸30に挿通されたノズル収容部材35に挿通される形態を有していてもよい。
【0103】
また、処理ユニット2は、有機溶剤処理において基板Wを加熱するヒータを含んでいてもよい。ヒータは、スピンベース21に内蔵されていてもよいし、遮断板6に内蔵されていてもよいし、スピンベース21と遮断板6との両方に内蔵されていてもよい。有機溶剤処理で基板Wを加熱する場合は、下面ノズル8、スピンベース21に内蔵されたヒータおよび遮断板6に内蔵されたヒータのうちの少なくとも1つが用いられる。
【0104】
また、処理液供給ノズルの構成は、例えばIPA等の有機溶剤を基板Wの上面に供給するIPAノズル13に限られず、処理液を基板Wの上面に供給する構成であればよい。すなわち、処理液供給ノズルは、水よりも表面張力の低い低表面張力液体を基板Wの上面に供給する低表面張力液体ノズルであってもよいし、薬液を基板Wの上面に供給する薬液ノズルであってもよいし、DIW等のリンス液を基板Wの上面に供給するリンス液ノズルであってもよい。
【0105】
また、本実施形態とは異なり、処理ユニット2は、ノズル収容部材35に収容され、基板Wの上面を疎水化する疎水化剤を供給する疎水化剤供給ノズルを含んでいてもよい。
疎水化剤は、たとえば、シリコン自体およびシリコンを含む化合物を疎水化させるシリコン系疎水化剤、または金属自体および金属を含む化合物を疎水化させるメタル系疎水化剤である。メタル系疎水化剤は、たとえば、疎水基を有するアミン、および有機シリコン化合物の少なくとも一つを含む。シリコン系疎水化剤は、たとえば、シランカップリング剤である。シランカップリング剤は、たとえば、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)、TMS(テトラメチルシラン)、フッ素化アルキルクロロシラン、アルキルジシラザン、および非クロロ系疎水化剤の少なくとも一つを含む。非クロロ系疎水化剤は、たとえば、ジメチルシリルジメチルアミン、ジメチルシリルジエチルアミン、ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、N,N−ジメチルアミノトリメチルシラン、N−(トリメチルシリル)ジメチルアミンおよびオルガノシラン化合物の少なくとも一つを含む。
【0106】
疎水化剤供給ノズルから基板Wの上面に疎水化剤を供給する際、基板Wの上面からの疎水化剤の跳ね返りに起因して遮断板6が汚染されることを防止するために、遮断板6を上昇させることによって基板Wの上面と遮断板6の対向面6aとの間の間隔を調整する間隔調整工程を実行してもよい。そして、間隔調整工程後に、疎水化剤供給ノズルから基板Wの上面に疎水化剤が供給されることによって基板が処理される(処理液供給工程)。
【0107】
また、本実施形態の基板処理では、第1ガード43の第1筒状部43Aに接続された排気管(図示せず)からの気体の排気量を調整してもよい。具体的には、
図8C〜
図8Fに示すように空間Aが形成されている状態では、排気管からの排気量を弱めることによって、空間A内が減圧されることを防止でき、空間Aの外部の雰囲気を空間A内に巻き込むことを防止できる。これにより、空間A内の湿度および酸素濃度が低減された状態を維持し易い。逆に、
図8A、
図8Bおよび
図8Gに示すように空間Aが形成されていない状態では、排気管からの排気を強めることによって、基板Wの上面の周辺の気体を極力排除することができるので、基板Wの上面の汚染を防止できる。
【0108】
その他、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことができる。