特許第6722569号(P6722569)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6722569
(24)【登録日】2020年6月24日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】モノハロゲノアミンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 21/09 20060101AFI20200706BHJP
【FI】
   C01B21/09
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-225469(P2016-225469)
(22)【出願日】2016年11月18日
(65)【公開番号】特開2018-80099(P2018-80099A)
(43)【公開日】2018年5月24日
【審査請求日】2019年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】藤野 敬介
(72)【発明者】
【氏名】八木 樹里奈
(72)【発明者】
【氏名】大西 洋
(72)【発明者】
【氏名】網田 淳一
【審査官】 中田 光祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−63998(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第101494986(CN,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0123423(US,A1)
【文献】 米国特許第06447722(US,B1)
【文献】 特開2012−045492(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/065434(WO,A1)
【文献】 特開2015−186773(JP,A)
【文献】 特開2016−083640(JP,A)
【文献】 特表2014−534954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 21/09
A01N 1/00−65/48
C02F 1/50;1/70−1/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)水に溶解させた時に次亜ハロゲン酸及び/又は次亜ハロゲン酸イオンを放出する固体化合物〔以下、(A)成分という〕と、(B)N−H結合及び/又はN−H結合を有する固体の化合物〔以下、(B)成分という〕とを、(A)成分と(B)成分とが接触する部分が生じないように同一の容器内に配置して、該容器内で水に溶解させて、反応させる、モノハロゲノアミンの製造方法。
【請求項2】
(A)成分の少なくとも一部と、(B)成分の少なくとも一部とを、同時に溶解させる、請求項1記載のモノハロゲノアミンの製造方法。
【請求項3】
(A)成分及び(B)成分の少なくとも一方を、水を通過させる材料を含んだ支持体に担持させて溶解させる、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
水を通過させる材料が、複数の開口を有する、請求項3記載のモノハロゲノアミンの製造方法。
【請求項5】
(A)成分と(B)成分とを、仕切り板を隔てて別々に配置して溶解させる、請求項1〜4の何れか1項記載のモノハロゲノアミンの製造方法。
【請求項6】
(A)成分と(B)成分を、(A)成分より生成する次亜ハロゲン酸量(理論生成モル数)及び次亜ハロゲン酸イオン量(理論生成モル数)の和が、(B)成分中の少なくとも1つの水素原子が結合した窒素原子量(理論モル数)に対して、0.001以上10以下のモル比となるように用いる、請求項1〜5の何れか1項記載のモノハロゲノアミンの製造方法。
【請求項7】
(A)成分と(B)成分とを溶解させた水のpHが8以上である、請求項1〜6の何れか1項記載のモノハロゲノアミンの製造方法。
【請求項8】
(A)成分が、水に溶解させた時に次亜塩素酸及び/又は次亜塩素酸イオンを放出する固体化合物である、請求項1〜7の何れか1項記載のモノハロゲノアミンの製造方法。
【請求項9】
(A)成分及び(B)成分の仕込み量から計算される水中で生成するモノハロゲノアミンの理論濃度が、100μg/L以上100g/L以下である、請求項1〜8の何れか1項記載のモノハロゲノアミンの製造方法。
【請求項10】
(B)成分が、N−H結合を有する固体の化合物である、請求項1〜9の何れか1項記載のモノハロゲノアミンの製造方法。
【請求項11】
さらに、(C)アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、ケイ酸アルカリ金属塩、炭酸アルカリ金属塩、アルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物から選ばれる一種以上のアルカリ剤を、同一の容器内で溶解させる、請求項1〜10の何れか1項記載のモノハロゲノアミンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノハロゲノアミンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塩素を含む化合物は、塩素系殺菌剤として、食材、医療器具、厨房用具、日用器具、室内清掃除菌、人体や動植物の殺菌、浴槽やプールの殺菌、除菌等、広い分野の殺菌処理に利用されている。
塩素系殺菌剤として最も汎用されているのは次亜塩素酸である。一方で、有機物による分解反応で次亜塩素酸の濃度が低下し、また、pHがアルカリであることにより殺菌効果が低下する課題がある。
【0003】
一方、次亜塩素酸に代わる殺菌剤として、結合塩素の一種であるモノクロラミンが知られている。
モノクロラミンは、次亜塩素酸と比較して有機物と反応しにくく効果の持続性に優れる、金属材料を腐食させにくい、残留性が高い、バイオフィルムにも作用する、といった有利な点がある。一方、高濃度における保存安定性が悪いため、一般に、使用時にその都度発生させる、いわゆる用時調製により用いられる。
モノクロラミンは、塩素又は次亜塩素酸とアンモニアとを反応させることにより得られる。
【0004】
特許文献1には、塩化アンモニウム溶液と次亜塩素酸ナトリウム溶液との反応によってモノクロラミンを合成する方法において、次亜塩素酸ナトリウム溶液を無機塩基を用いて予めアルカリ性にし、且つ、反応媒体中の塩化アンモニウムの濃度と反応媒体中の次亜塩素酸ナトリウムの濃度との比を1〜1.5にする方法が記載されている。
【0005】
特許文献2の実施例には、薬中ポンプを用いて、アンモニア水またはアンモニウム塩水及び次亜塩素酸ナトリウム液をそれぞれ源泉槽に直接注入し、モノクロラミンを合成する循環浄水化用水槽の原生動物不活性化方法が開示されている。
【0006】
特許文献3には、固体次亜ハロゲン化物、固体窒素源、及び、少なくとも1つの副次的な機能を有するpH調整剤を含有し、水と混合されたときに殺菌性混合物を形成する、2剤型固体組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−155651号公報
【特許文献2】特開2008−264678号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/0123423号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1、2では、モノハロゲノアミン製造用に液体原料を用いているため、取扱い性が良いとは言えない。また、特許文献3のように固体原料を用いてモノクロラミンなどのモノハロゲノアミンを製造する場合、モノハロゲノアミンの生成率が、原料の仕込み量から予測される量に対して十分でない場合があることが判明した。
本発明は、固体原料を用いてモノハロゲノアミンを製造する際に、モノハロゲノアミンの生成率を向上できるモノハロゲノアミンの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、(A)水に溶解させた時に次亜ハロゲン酸及び/又は次亜ハロゲン酸イオンを放出する固体化合物〔以下、(A)成分という〕と、(B)N−H結合及び/又はN−H結合を有する固体の化合物〔以下、(B)成分という〕とを、(A)成分と(B)成分とが接触する部分が生じないように同一の容器内に配置して、該容器内で水に溶解させて、反応させる、モノハロゲノアミンの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、固体原料を用いてモノハロゲノアミンを製造する際に、モノハロゲノアミンの生成率を向上できるモノハロゲノアミンの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施に用いる容器及び比較例で用いた容器を示す概略図
図2】本発明の実施に用いる容器の一例の部分概略図
図3】本発明の実施に用いる容器の他の例の部分概略図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、(A)水に溶解させた時に次亜ハロゲン酸及び/又は次亜ハロゲン酸イオンを放出する固体化合物〔以下、(A)成分という〕と、(B)N−H結合及び/又はN−H結合を有する固体の化合物〔以下、(B)成分という〕とを、(A)成分と(B)成分とが接触する部分が生じないように同一の容器内に配置して、該容器内で水に溶解させて、反応させる、モノハロゲノアミンの製造方法である。
本発明者等は、上記製造方法により、モノハロゲノアミンの生成率が向上することを見出した。これは、固体の(A)成分と固体の(B)成分とが、接触した状態で溶解した場合、反応して得られるモノハロゲノアミンが、原料である(A)成分又は(B)成分との副反応を誘発し易く、ジハロゲノアミン等の副生成物が生じたためではないかと考えられる。
以下、各成分について詳細に記載する。
【0013】
<(A)成分>
(A)成分は水に溶解させた時に次亜ハロゲン酸及び/又は次亜ハロゲン酸イオンを放出する固体化合物である。
(A)成分としては、(A1)ハロゲン化イソシアヌル酸及びその塩、(A2)ハロゲン化ヒダントイン及び(A3)次亜ハロゲン酸塩から選ばれる固体化合物が挙げられる。
【0014】
(A1)ハロゲン化イソシアヌル酸及びその塩としては、具体例として、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、ジクロロイソシアヌル酸カリウム等のジクロロイソシアヌル酸塩、トリクロロイソシアヌル酸、ブロモイソシアヌル酸ナトリウム、ブロモイソシアヌル酸カリウム等のブロモイソシアヌル酸塩、ジブロモイソシアヌル酸、トリブロモイソシアヌル酸、トリヨードイソシアヌル酸が挙げられる。
(A2)ハロゲン化ヒダントインとしては、具体例として、クロロジメチルヒダントイン、ジクロロジメチルヒダントイン、ブロモジメチルヒダントイン、ジブロモジメチルヒダントイン、ヨードジメチルヒダントイン、ジヨードジメチルヒダントイン、ブロモクロロジメチルヒダントイン、クロロヨードジメチルヒダントイン、ブロモヨードジメチルヒダントインが挙げられる。
(A3)次亜ハロゲン酸塩としては、具体例として、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸マグネシウム、塩化次亜塩素酸カルシウム、塩化次亜塩素酸マグネシウム等の次亜塩素酸塩、次亜臭素酸ナトリウム等の次亜臭素酸塩、次亜ヨウ素酸ナトリウム等の次亜ヨウ素酸塩が挙げられる。
【0015】
(A)成分は、水に溶解させた時に次亜塩素酸及び/又は次亜塩素酸イオンを放出する固体化合物が好ましい。(A)成分は、塩素化イソシアヌル酸及びその塩、塩素化ヒダントインまたは次亜塩素酸塩が好ましい。
(A)成分は、好ましくは、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、ジクロロイソシアヌル酸カリウム、トリクロロイソシアヌル酸、クロロジメチルヒダントイン、ジクロロジメチルヒダントイン、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸マグネシウム、塩化次亜塩素酸カルシウム、及び塩化次亜塩素酸マグネシウムから選ばれる化合物である。
(A)成分は、より好ましくは、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、トリクロロイソシアヌル酸、及び次亜塩素酸カルシウムから選ばれる化合物である。
(A)成分は、更に好ましくは次亜塩素酸カルシウムである。
【0016】
(A)成分は粒子であることが好ましい。(A)成分の粒子の平均粒径は、好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.1mm以上、更に好ましくは0.5mm以上であり、反応性の観点から、好ましくは5cm以下、より好ましくは1cm以下、更に好ましくは7mm以下、より更に好ましくは5mm以下である。(A)成分の平均粒径は、光学顕微鏡で観察した、無作為に抽出した100個の粒子に基づく数平均径である。長径と短径がある場合は、長径を測定する。
【0017】
<(B)成分>
(B)成分は、N−H結合及び/又はN−H結合を有する固体の化合物である。
(B)成分としては、アンモニウム塩、第一級アミン、第二級アミン、スルファミン酸から選ばれる固体化合物が挙げられる。
(B)成分は、N−H結合を有する固体の化合物が好ましい。
【0018】
(B)成分としては、アンモニウムイオン(NH)を含むアンモニウム塩(以下、無機アンモニウム塩という)と有機アンモニウムイオンを含むアンモニウム塩(以下、有機アンモニウム塩という)が挙げられる。有機アンモニウムイオンは、アンモニウムイオンの水素原子が、炭素を含む基で置換されたイオンである。(B)成分は、無機アンモニウム塩が好ましい。(B)成分は、アンモニウムイオンを含む固体アンモニウム塩が好ましい。
【0019】
無機アンモニウム塩としては、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸三アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、硝酸アンモニウム、臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、シュウ酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、乳酸アンモニウム、クエン酸アンモニウムが挙げられる。
【0020】
有機アンモニウム塩としては、第一級アンモニウム塩、第二級アンモニウム塩が挙げられる。ここで、第一級アンモニウム塩はアンモニウムイオンの水素原子の一つが炭素を含む基で置換されたもの、第二級アンモニウム塩はアンモニウムイオンの水素原子の二つが炭素を含む基で置換されたものを言う。
【0021】
(B)成分は、好ましくは、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸三アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、硝酸アンモニウム、臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウム、炭酸アンモニウム及び炭酸水素アンモニウムから選ばれる化合物である。
(B)成分は、より好ましくは、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸三アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、硝酸アンモニウム、炭酸アンモニウム及び炭酸水素アンモニウムから選ばれる化合物である。
(B)成分は、更に好ましくは、塩化アンモニウムである。
【0022】
(B)成分として、N−H結合を有する化合物を用いる場合、(B)成分の対イオンは、好ましくは、塩化物イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、リン酸水素イオン、リン酸二水素イオン、硝酸イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、シュウ酸イオン、酢酸イオン、乳酸イオン、及びクエン酸イオンから選ばれる。
(B)成分の対イオンは、より好ましくは、塩化物イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、リン酸水素イオン、リン酸二水素イオン、硝酸イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、炭酸イオン、及び炭酸水素イオンから選ばれる。
(B)成分の対イオンは、更に好ましくは、塩化物イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、リン酸水素イオン、リン酸二水素イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、及び炭酸水素イオンから選ばれる。
(B)成分の対イオンは、より更に好ましくは、塩化物イオンである。(B)成分は、より更に好ましくは、アンモニウムイオンと塩化物イオンとからなるアンモニウム塩、すなわち塩化アンモニウムである。
【0023】
(B)成分のうち、N−H結合を有する化合物としては、第一級アミン、第二級アミン、スルファミン酸が挙げられる。ここで、第一級アミンはアンモニア(NH)の水素原子の一つが炭素を含む基で置換されたもの、第二級アミンはアンモニアの水素原子の二つが炭素を含む基で置換されたものを言う。N−H結合を有する化合物は、好ましくは、第一級アミン及びスルファミン酸から選ばれる化合物である。N−H結合を有する化合物は、より好ましくは、スルファミン酸である。
【0024】
(B)成分は粒子であることが好ましい。(B)成分の粒子の平均粒径は、好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.1mm以上、更に好ましくは0.5mm以上であり、反応性の観点から、好ましくは3cm以下、より好ましくは8mm以下、更に好ましくは3mm以下である。(B)成分の粒子の平均粒径は、光学顕微鏡で観察した、無作為に抽出した100個の粒子に基づく数平均径である。長径と短径がある場合は、長径を測定する。
【0025】
なお、(A)成分として塩素化イソシアヌル酸又はその塩、塩素化ヒダントイン、若しくは次亜塩素酸塩を用い、(B)成分として、臭化アンモニウムのような対イオンが臭化物イオンであるアンモニウム塩を用いると、モノハロゲノアミンとしてモノブロマミンを製造することができる。同様に、ヨウ化アンモニウムのような対イオンがヨウ化物イオンであるアンモニウム塩を用いると、モノハロゲノアミンとしてモノヨーダミンを製造することができる。
【0026】
<(C)成分>
本発明では、(A)成分及び(B)成分を水に溶解させる際に、(C)アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、ケイ酸アルカリ金属塩、炭酸アルカリ金属塩、アルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物から選ばれるアルカリ剤〔以下、(C)成分という〕を水に溶解させることが好ましい。水に溶解させる(C)成分は、固体であることがより好ましい。
【0027】
(C)成分のアルカリ金属水酸化物は、水酸化カリウムや水酸化ナトリウムが挙げられ、水酸化カリウムが好ましい。
(C)成分のアルカリ土類金属水酸化物は、水酸化カルシウムや水酸化マグネシウムが挙げられ、水酸化カルシウムが好ましい。また、アルカリ土類金属水酸化物としては、塩化水酸化マグネシウム、塩化水酸化カルシウムのようなアルカリ土類金属塩化物水酸化物が挙げられる。
(C)成分のケイ酸アルカリ金属塩としては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウムが挙げられ、ケイ酸ナトリウムが好ましい。ケイ酸ナトリウムは、メタケイ酸ナトリウムが好ましい。
(C)成分の炭酸アルカリ金属塩は、炭酸カリウムや炭酸ナトリウムが挙げられ、炭酸カリウムが好ましい。
アルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物は、水と反応してアルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物となるため、本発明では(C)成分として使用することができる。アルカリ金属酸化物としては、酸化ナトリウム、酸化カリウムが挙げられる。アルカリ土類金属酸化物としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウムが挙げられる。
(C)成分は、アルカリ土類金属水酸化物が好ましく、水酸化カルシウムがより好ましい。
【0028】
(C)成分は、粒子であることが好ましい。(C)成分の粒子の平均粒径は、(C)成分の入手性及び(C)成分の生産性の観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、更に好ましくは5μm以上であり、モノハロゲノアミンの生産性の観点から、好ましくは1cm以下、より好ましくは1mm以下、更に好ましくは0.1mm以下である。(C)成分の平均粒径は、光学顕微鏡で観察した、無作為に抽出した100個の粒子に基づく数平均径である。長径と短径がある場合は、長径を測定する。
【0029】
<モノハロゲノアミンの製造方法>
本発明のモノハロゲノアミンの製造方法は、(A)成分と、(B)成分と、任意に(C)成分と、水とを混合するモノハロゲノアミンの製造方法である。
本発明では、(A)成分と(B)成分とを、固体状態の(A)成分と固体状態の(B)成分とが接触する部分が生じないように同一の容器内に配置して、該容器内で水に溶解させる。
【0030】
前記(C)成分は、(A)成分及び/又は(B)成分と共に、又は別に配置して、同一の容器内で溶解させて反応させることが好ましい。より好ましくは、取扱い性の観点から、(A)成分及び/又は(B)成分と共に(C)成分を、同一の容器内に配置して、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を溶解させ、反応させることが好ましく、(B)成分と共に(C)成分を、同一の容器内に配置して、溶解させ、反応させることがより好ましい。
【0031】
固体の(A)成分、固体の(B)成分、及び固体の(C)成分は、それぞれ、粉末、顆粒、錠剤、タブレットなどの形状のものが使用できる。
なお、(A)成分、(B)成分及び(C)成分について、それぞれが固体であるということは、室温、例えば20℃において固体であることをいう。また、(A)成分、(B)成分又は(C)成分が、他の固体と混合されたり担持されたりして、全体として実質的に固体であると認識できる状態も、固体に含めることができる。
【0032】
固体の(A)成分と固体の(B)成分を、(A)成分と(B)成分とが接触する部分が生じないように同一の容器内に配置する方法は、例えば、
(i)(A)成分又は(B)成分の一方を支持体に担持させて他方を担持させずに容器内に配置する方法、
(ii)(A)成分と(B)成分の両方をそれぞれ別々の支持体に担持させて容器内に配置する方法、
(iii)(A)成分と(B)成分とを仕切り板を隔てて別々に、又は(A)成分と(B)成分との距離を十分に設けて、容器内に配置する方法、
などが挙げられる。(iii)の態様では、同一の支持体を用いてもよい。
(A)成分と(B)成分とが接触する部分が生じなければ、これらの方法を組み合わせてもよい。
【0033】
本発明では、(A)成分及び(B)成分の少なくとも一方を、水を通過させる材料を含んだ支持体に担持させて溶解させることが好ましい。水を通過させる材料は、メッシュ構造や切り欠き構造のような複数の開口を有することが好ましい。水を通過させ、溶解前の状態で固体の(A)成分又は固体の(B)成分を通過させない材料を含んだ支持体が好ましい。
【0034】
支持体としては、メッシュ構造の収納容器、メッシュ構造の平板等が挙げられる。担持する方法としては、支持体への吸着や支持体上に配置等が挙げられる。
メッシュ構造の目開き(四角穴)又は孔径(丸穴)は、(A)成分と(B)成分の粒子が通過しない大きさが好ましく、(A)成分と(B)成分の粒子の平均粒径より小さいことが好ましい。
メッシュ構造の目開き(四角穴)又は孔径(丸穴)の最大径は、固体を溶解させる観点から、好ましくは0.01mm以上、更に好ましくは0.1mm以上、更に好ましくは0.5mm以上、そして、成分が固体のまま通過するのを抑制する観点から、好ましくは20mm以下、更に好ましくは5mm以下、更に好ましくは2mm以下とすることができる。
【0035】
より具体的には、(A)成分と(B)成分を、下記(I)〜(III)の方法で溶解させることが好ましい。
(I):(A)成分及び(B)成分の一方を水を通過させる材料を含んだ支持体に担持させ、他方を容器内に配置して溶解させる方法
(II):(A)成分と(B)成分とを、水を通過させる材料を含んだ別々の支持体に担持させて溶解させる方法
(III):(A)成分と(B)成分とを、仕切り板を隔てて別々に配置して溶解させる方法
仕切り板は、水を通過させる材料であっても、水を通過させない材料であってもよく、また、同一の支持体を用いてもよい。
(A)成分と(B)成分とが接触する部分が生じなければ、これらの方法を組み合わせてもよい。
【0036】
固体の(A)成分と固体の(B)成分とを接触しないように配置する場合の固体の(A)成分と固体の(B)成分との距離は、溶解量によって異なるが、モノクロラミン生成率の向上及びモノクロラミン製造原料の配置の容易性の観点から、好ましくは0.01cm以上、より好ましくは0.05cm以上、より好ましくは0.1cm以上、より好ましくは0.5cm以上、より好ましくは1cm以上であり、同一容器内で溶解させることを考慮すると、好ましくは1000cm以下、より好ましくは500cm以下、より好ましくは100cm以下、より好ましくは50cm以下である。なお、この距離は、最も近い位置に存在する(A)成分と(B)成分の間の距離(最短距離)である。
【0037】
より具体的には、図1(i)〜(v)に示すような容器を用いて(A)成分と(B)成分を溶解させることができる。
図1(i)は、底面及び側面に微細な開口が多数形成された筒状の収容容器1と、これを設置する溶解用容器2の概略図である。溶解用容器2には、水が収容される。(A)成分及び(B)成分の一方を収容容器1に入れ、(A)成分及び(B)成分の他方を溶解用容器2に入れる。この態様では、収容容器1に(A)成分が収容され、溶解用容器2の水中に(B)成分と(C)成分が収容される。収納容器1は、溶解用容器2の水中に配置される。これにより、(A)成分と(B)成分は、互いに接触する部分が生じない状態で溶解用容器2内に配置されて、該容器2内で水に溶解する。この態様では、溶解用容器2全体を揺動させることで(A)成分と(B)成分を溶解させることができる。
【0038】
図1(ii)は、底面及び側面に微細な開口が多数形成された筒状の収容容器1,1’を2つ用いるものである。(A)成分及び(B)成分の一方を筒状の収容容器1に入れ、(A)成分及び(B)成分の他方を筒状の収容容器1’に入れる。収納容器1、1’は、溶解用容器2の水中に配置される。この態様では、収容容器1に(A)成分が、収容容器1’に(B)成分と(C)成分が収容されている。これにより、(A)成分と(B)成分は、互いに接触する部分が生じない状態で溶解用容器2内に配置されて、該容器2内で水に溶解する。この態様では、溶解用容器2全体を揺動させることで(A)成分と(B)成分を溶解させることができる。図1(ii)の容器を用いる場合、水の入った又は水の入っていない溶解用容器2に、収納容器1、1’を先に設置し、その後、収納容器1、1’の一方に(A)成分を、他方に(B)成分を入れてもよい。
【0039】
図1(iii)は、仕切り板4を有した平板状のメッシュ3を用いる。平板状のメッシュ3上に、(A)成分と(B)成分とを仕切り板4を隔てて配置する。この態様では、(C)成分は、(B)成分の側に配置されている。メッシュ3は、溶解用容器2の水中に配置される。この態様では、溶解用容器2全体を揺動させることで(A)成分と(B)成分を溶解させることができる。この態様では、揺動により(A)成分と(B)成分が接触しないように、(A)成分と(B)成分の間に水を通過させない仕切り板4が設けられている。図1(iii)の容器を用いる場合、水の入った又は水の入っていない溶解用容器2に、メッシュ3を先に設置し、その後、メッシュ3上に、(A)成分と(B)成分とを仕切り板4を隔てて配置してもよい。
【0040】
図1(iv)は、側面に微細な開口が多数形成された収容容器5、5’を2つ用いるものであるが、2つの容器は、撹拌棒6に、間隔を開けて上下に連結されている。この態様では、収容容器5に(A)成分が、収容容器5’に(B)成分と(C)成分が収容されている。収容容器5’は底部にも微細な開口が多数形成されている。撹拌棒6で撹拌操作を行うことで(A)成分と(B)成分の溶解と反応を促進することができる。2つの収容容器5、5’は、それぞれ蓋7、7’を有する。蓋7には微細な開口が多数形成されている。一方、蓋7’には開口は形成されていない。図2に、撹拌棒6に連結された収容容器5、5’の一例について概略図を示した。
【0041】
図1(v)は、(A)成分の収容部8’と、(B)成分の収容部8''と、これら2つの収容部を画定する仕切り手段9とを有し、底面及び側面に微細な開口が多数形成された収容容器8を用いるものである。そして、該容器8は、撹拌棒6に連結されている。図1(iv)と同様、撹拌棒6で撹拌操作を行うことで(A)成分と(B)成分の溶解と反応を促進することができる。収容容器8は、微細な開口が多数形成された蓋10を有している。図3に、撹拌棒6に連結された収容容器8の一例について概略図を示した。
【0042】
図1の容器では、収容容器又は平板状メッシュが、水を通過させる材料を含んだ支持体である。これらの材質は、プラスチック、金属が挙げられる。
図(i)、(ii)、(iv)、(v)のメッシュの収容容器に形成されている目開き(四角穴)又は孔径(丸穴)の最大径は、0.01mm以上、0.1mm以上、0.5mm以上、そして、20mm以下、5mm以下、2mm以下とすることができる。
また、図(iii)の平板状メッシュは、目開きが、0.01mm以上、更に0.1mm以上、0.5mm以上、そして、20mm以下、5mm以下、2mm以下とすることができる。
【0043】
なお、(C)成分を用いる場合、(C)成分と(A)成分及び/又は(B)成分とが接触する部分が生じてもよい。図1の容器では、(A)成分及び(B)成分の一方の部分に(C)成分を配置できる。モノクロラミン生成率の向上及びモノクロラミン製造原料の配置の容易性の観点から、(C)成分と(B)成分とを共に配置することが好ましく、(C)成分の一部と(B)成分の一部とが接触して配置してもよい。
【0044】
(A)成分と、(B)成分と、水とを混合することで、水に溶解させた時に、(A)成分の次亜ハロゲン酸及び/又は次亜ハロゲン酸イオンを放出する化合物と、(B)成分のN−H結合及び/又はN−H結合を有する化合物とが、水中で反応する。
【0045】
本発明では、モノハロゲノアミン溶液の取り扱いの観点から、(A)成分と(B)成分の合計量が、水の質量に対して、0.00001質量%以上、より好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましく0.1質量%以上、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。これは、[(A)成分量+(B)成分量]×100/水の量で求めることができる。
【0046】
本発明では、モノハロゲノアミンの製造の効率の観点から、(A)成分と(B)成分の質量比(A)/(B)が、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.5以上、そして、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1.5以下である。
【0047】
また、本発明では、モノハロゲノアミンの製造の効率の観点から、(A)成分と(B)成分を、(A)成分より生成する次亜ハロゲン酸量(理論生成モル数)及び次亜ハロゲン酸イオン量(理論生成モル数)の和が、(B)成分中の少なくとも1つの水素原子が結合した窒素原子量(理論モル数)に対して、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは3以下、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.3以下、より好ましくは1以下、より好ましくは0.9以下、より好ましくは0.8以下、そして、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上のモル比となるように用いる。
このモル比は、[(A)成分より生成する次亜ハロゲン酸量(理論生成モル数)及び次亜ハロゲン酸イオン量(理論生成モル数)の和]/[(B)成分中の少なくとも1つの水素原子が結合した窒素原子量(理論モル数)]の比である。
【0048】
(C)成分を用いる場合、水に溶解させる(A)成分、(B)成分及び(C)成分について、(A)成分より生成する次亜ハロゲン酸量及び次亜ハロゲン酸イオン量(理論生成モル数)と(C)成分に由来する水酸化物イオン量(理論生成モル数)との和が、(B)成分中の少なくとも1つの水素原子が結合した窒素原子量(理論モル数)に対して、モル比で、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上、より好ましくは0.8以上、より好ましくは1以上、より好ましくは1.2以上、そして、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、より好ましくは20以下、より好ましくは10以下である。
このモル比は、[(A)成分より生成する次亜ハロゲン酸量(理論生成モル数)及び次亜ハロゲン酸イオン量(理論生成モル数)と(C)成分に由来する水酸化物イオン量(理論生成モル数)との和]/[(B)成分中の少なくとも1つの水素原子が結合した窒素原子量(理論モル数)]の比である。
【0049】
(A)成分より生成する次亜ハロゲン酸量(理論生成モル数)は、(A)成分の質量を(A)成分の分子量で割った値に、分子内の結合ハロゲン数を掛けた物質量として定義される。
また、(A)成分より生成する次亜ハロゲン酸イオン量(理論生成モル数)は、(A)成分の質量を(A)成分の分子量で割った値に、分子内の次亜ハロゲン酸イオン数を掛けた物質量として定義される。
また、(B)成分中の少なくとも1つの水素原子が結合した窒素原子量(理論モル数)は、(B)成分の質量を(B)成分の分子量で割った値に、分子内の少なくとも1つの水素原子が結合した窒素原子数を掛けた物質量として定義される。
また、(C)成分に由来する水酸化物イオン量(理論生成モル数)は、アルカリ金属水酸化物とアルカリ土類金属水酸化物については、金属水酸化物の質量を金属水酸化物の分子量で割った値に、分子内の水酸化物イオン数を掛けた物質量として定義される。また、アルカリ金属酸化物を用いる場合は、アルカリ金属酸化物から生成するアルカリ金属水酸化物について同様に算出される物質量として定義される。また、アルカリ土類金属酸化物を用いる場合は、アルカリ土類金属酸化物から生成するアルカリ土類金属水酸化物について同様に算出される物質量として定義される。
また、(C)成分に由来する水酸化物イオン量(理論生成モル数)は、ケイ酸アルカリ金属塩と炭酸アルカリ金属塩については、該化合物が、水中で完全に解離したと仮定した場合に生じる水酸化物イオン量として定義される。例えば、メタケイ酸ナトリウムは、以下のように、1モルから2モルの水酸化物イオンが生成する化合物である。
Na2SiO3 → 2Na(+) +SiO3(2-)
SiO3(2-) + 2H2O ⇔ H2SiO3 + 2OH(-)
【0050】
また、前記の次亜ハロゲン酸量と少なくとも1つの水素原子が結合した窒素原子量と各成分のイオン量は、それぞれ、水との混合に用いる(A)成分の全量、(B)成分の全量、及び(C)成分の全量に基づいて算出される。そして、それらの値に基づいて、前記モル比が算出される。例えば、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の仕込み量から、前記モル比を計算することができる。
【0051】
水中での(A)成分及び(B)成分のそれぞれの濃度は、モノハロゲノアミンの用途及び使用方法を考慮して決定することが好ましい。
(A)成分及び(B)成分の仕込み量から計算される水中で生成するモノハロゲノアミンの理論濃度は、得られたモノハロゲノアミンを殺菌剤として使用する観点から、好ましくは100μg/L以上、より好ましくは1mg/L以上、更に好ましくは10mg/L以上、より更に好ましくは100mg/L以上、より更に好ましくは200mg/L以上、より更に好ましくは500mg/L以上、そして、取扱い性の観点から、好ましくは100g/L以下、より好ましくは50g/L以下、更に好ましくは20g/L以下、より更に好ましくは10g/L以下、より更に好ましくは5g/L以下である。この理論濃度となる量で(A)成分と(B)成分とを用いることが好ましい。
理論モノハロゲノアミン生成濃度は、(A)成分より生成する次亜ハロゲン酸量(理論生成モル数)及び次亜ハロゲン酸イオン量(理論生成モル数)の和又は(B)成分中の少なくとも1つの水素原子が結合した窒素原子量(理論モル数)の少ない方の値に、モノハロゲノアミン分子の分子量を掛けて、水量で割った濃度として定義される。
また、水中で、実際に生成するモノハロゲノアミンの濃度は、得られたモノハロゲノアミンを殺菌剤として使用する観点から、好ましくは100μg/L以上、より好ましくは1mg/L以上、更に好ましくは10mg/L以上、より更に好ましくは100mg/L以上、より更に好ましくは200mg/L以上、より更に好ましくは500mg/L以上、取扱い性の観点から、好ましくは100g/L以下、より好ましくは50g/L以下、更に好ましくは20g/L以下、より更に好ましくは10g/L以下、より更に好ましくは5g/L以下である。
【0052】
本発明のモノハロゲノアミンの製造方法では、モノハロゲノアミンの生成時間の短縮の観点から、(A)成分の少なくとも一部と、(B)成分の少なくとも一部とを、同時に溶解させることが好ましい。すなわち、(A)成分の少なくとも一部と、(B)成分の少なくとも一部を、同時に同一の溶解用容器内に固体状態で存在する状態を経由するように水に溶解させることが好ましい。この場合、同時に溶解させる(A)成分と(B)成分が、最初に水に投入された(A)成分の少なくとも一部と(B)成分の少なくとも一部であることが好ましい。
【0053】
本発明では、モノハロゲノアミンの製造の効率の観点から、(A)成分と(B)成分とを溶解させた水のpHが、好ましくは8以上、より好ましくは9以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは11以上、より更に好ましくは12以上、そして、好ましくは14以下、より好ましくは13以下である。このようなpHとなるように(C)成分を用いることが好ましい。このpHは、(C)成分を用いる場合、(A)成分の全量と(B)成分の全量と(C)成分の全量とを溶解させた水のpHであることが好ましい。また、このpHは、溶解の際の水の温度でのpHである。
【0054】
(A)成分、(B)成分及び任意の(C)成分を溶解させる水の温度は、扱いやすさの観点から、0℃以上が好ましく、5℃以上がより好ましく、10℃以上がより好ましく、そして、安全性の観点から、80℃以下が好ましく、60℃以下がより好ましく、50℃以下がより好ましく、40℃以下がより好ましい。また、反応中もこの温度を維持することが好ましい。(A)成分、(B)成分及び任意の(C)成分を溶解させる水の温度は、モノハロゲノアミンの生成率の観点から、50℃以下が好ましく、40℃以下がより好ましく、30℃以下がより好ましい。
【0055】
本発明のモノハロゲノアミンの製造方法は、モノクロラミンの製造方法として好適である。
本発明のモノハロゲノアミンの製造方法は、殺菌剤の製造方法として実施しても良い。
【0056】
本発明のモノハロゲノアミンの製造方法は、水に溶解させた時に次亜ハロゲン酸及び/又は次亜ハロゲン酸イオンを放出する固体化合物(A)を含有する第1の組成物と、N−H結合及び/又はN−H結合を有する固体化合物(B)を含有する第2の組成物と、を含んで構成される、モノハロゲノアミン製造用キットを用いることが好ましい。
任意の(C)成分は、(B)成分と共に第2の組成物に含有することが、モノハロゲノアミンの生成率の観点から好ましい。
第1の組成物における(A)成分の含有量は、前記した(B)成分とのモル比や重量比などを考慮して決定できる。第1の組成物中の(A)成分の含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、より好ましくは99質量%以上、好ましくは100質量%以下である。
第2の組成物における(B)成分の含有量は、前記した(A)成分とのモル比や重量比などを考慮して決定できる。第2の組成物中の(B)成分の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下であり、第2の組成物中の(C)成分の含有量が、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。
【実施例】
【0057】
実施例、比較例で用いた試薬は以下のものである。
・次亜塩素酸カルシウム:東ソー(株) トヨクロン−PTGIII、有効塩素70.5%、平均粒径3mm
・塩化アンモニウム:ソーダニッカ(株) 塩化アンモニウム タブレット品、平均粒径5mm
・水酸化カルシウム:和光純薬工業(株) 試薬特級 水酸化カルシウム、平均粒径0.02mm
次亜塩素酸カルシウムの有効塩素測定は、HACH社 ポケット残留塩素計で行った。
また、実施例、比較例において、モノクロラミン濃度は、JIS K 0400−33−10:1999に記載のモノクロロアミン体結合塩素の定量を行った。
【0058】
実施例1
図1(i)の容器で(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を溶解させた。
収容容器1を装着していない状態の溶解用容器2に、イオン交換水5000gを入れた。そこに、塩化アンモニウム17.5gと水酸化カルシウム10.0gを入れて、すぐに収容容器1を差し込み、該収容容器1に次亜塩素酸カルシウム22.5gを入れた。溶解用容器2を、10分間揺すって(10往復/分の速度で左右30〜40°の傾き、以下、実施例2、3、比較例1でも同じ)混合し、モノクロラミンを製造した。モノクロラミン濃度は2.30g/Lであり、原料の仕込み量から計算される理論生成濃度(以下、仕込み濃度という)2.30g/Lに対して、モノクロラミン生成率は100%であった。
なお、本例では、収容容器1のサイズは、直径3.8cmの円形、深さ10cmであった。収容容器1の目開きは、1mm×1mmの四角穴であった。
また、溶解用容器2のサイズは、縦14cm、横21cm、深さ21〜22cmであった。また、(A)成分と(B)成分間の最短距離は、12cmであった。
【0059】
実施例2
図1(ii)の容器で(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を溶解させた。
収容容器1、1’が設置された溶解用容器2に、イオン交換水5000gを入れた。収容容器1に次亜塩素酸カルシウム22.5gを入れ、収容容器1’に塩化アンモニウム17.5gと水酸化カルシウム10.0gを入れた。溶解用容器2を10分間揺すって混合し、モノクロラミンを製造した。モノクロラミン濃度は2.30g/Lであり、仕込み濃度2.30g/Lに対して、モノクロラミン生成率は100%であった。
なお、本例では、収容容器1、1’のサイズは、直径4.3cmの円形、深さ16cmであった。収容容器1、1’の孔径は、直径2mmの丸形であった。
また、溶解用容器2のサイズは、縦12cm、横26cm、深さ23cmであった。また、(A)成分と(B)成分間の最短距離は、3cmであった。
【0060】
実施例3
図1(iii)の容器で(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を溶解させた。
平板状のメッシュ3と仕切り板4とを備えた溶解用容器2に、イオン交換水5000gを入れた。溶解用容器2の片方の口から塩化アンモニウム17.5gと水酸化カルシウム10.0gをメッシュ3の上に入れ、もう片方の口から次亜塩素酸カルシウム22.5gをメッシュ3の上に入れた。溶解用容器2を10分間揺すって混合し、モノクロラミンを製造した。モノクロラミン濃度は1.84g/Lであり、仕込み濃度2.30g/Lに対して、モノクロラミン生成率は80%であった。
なお、本例では、メッシュ3の目開きは、1mmであった。
また、溶解用容器2のサイズは、直径21cmの円形、深さ21cmであった。また、(A)成分と(B)成分間の最短距離は、0.3cmであった。
【0061】
実施例4
図1(iv)の容器で(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を溶解させた。
撹拌棒6に連結された収容容器5に次亜塩素酸カルシウム22.5gを入れ、収容容器5’に塩化アンモニウム17.5gと水酸化カルシウム10.0gを入れ、蓋7、7’を閉めた。イオン交換水5000gを溶解用容器2に入れ、収容容器5、5’及び撹拌棒6を水中に入れて10分間撹拌(50周/分の速度、以下、実施例5でも同じ)し、モノクロラミンを製造した。モノクロラミン濃度は2.13g/Lであり、仕込み濃度2.30g/Lに対して、モノクロラミン生成率は93%であった。
なお、本例では、収容容器5、5’はそれぞれ図2に示す形状であり、収容容器5のサイズは、直径(撹拌棒部分を含む)5cmの円形、深さ3.5cmであり、収容容器5’のサイズは、縦5cm、横5cm、深さ3cmあった。収容容器5、5’の孔径は、直径1.5mmの円形であった。
また、溶解用容器2のサイズは、直径25cmの円形、深さ26cmであった。また、(A)成分と(B)成分間の最短距離は、5cmであった。
【0062】
実施例5
図1(v)の容器で(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を溶解させた。
撹拌棒6に連結された収容容器8の収容部8’に次亜塩素酸カルシウム22.5gを入れ、収容部8''に塩化アンモニウム17.5gと水酸化カルシウム10.0gを入れ、蓋10を閉めた。イオン交換水5000gを溶解用容器2に入れ、収容容器8及び撹拌棒6を水中に入れて10分間撹拌し、モノクロラミンを製造した。モノクロラミン濃度は2.16g/Lであり、仕込み濃度2.30g/Lに対して、モノクロラミン生成率は94%であった。
なお、本例では、収容容器8は図3に示す形状であり、サイズは、縦6cm(最大長)、横4.5cm、深さ7cmであった。また、収容容器8を平面から見た仕切り手段9から収容部8’’の横方向の端までの距離は4cmであった。収容容器8の孔径は、直径1.5mmの円形であった。
また、溶解用容器2のサイズは、直径25cmの円形、深さ26cmであった。また、(A)成分と(B)成分間の最短距離は、0.2cmであった。
【0063】
比較例1
図1(vi)の容器で(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を溶解させた。
溶解用容器2に、イオン交換水5000gを入れた。水中に、塩化アンモニウム17.5gと水酸化カルシウム10.0gと次亜塩素酸カルシウム22.5gを入れた。溶解用容器2を10分間揺すって混合し、モノクロラミンを製造した。モノクロラミン濃度0.93g/Lであり、仕込み濃度2.30g/Lに対して、モノクロラミン生成率は40%であった。
なお、本例では、溶解用容器2のサイズは、縦14cm、横21cm、深さ21cmであった。
【0064】
表1に実施例1〜5及び比較例1の結果をまとめた。
【0065】
【表1】
【0066】
(A)/(B)(モル比):[(A)成分より生成する次亜ハロゲン酸量(理論生成モル数)及び次亜ハロゲン酸イオン量(理論生成モル数)の和]/[(B)成分中の少なくとも1つの水素原子が結合した窒素原子量(理論モル数)]の比
pH:(A)成分の全量と(B)成分の全量が溶解した時点でのpH
【符号の説明】
【0067】
1、1’、5、5’、8:(A)成分又は(B)成分の収容容器
2:溶解用容器
3:平板状メッシュ
4:仕切り板
6:撹拌棒
7、7’、10: 収容容器の蓋
8’、8’’:収容部
9:仕切り手段
図1
図2
図3