(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6722647
(24)【登録日】2020年6月24日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】竪樋用控金具
(51)【国際特許分類】
E04D 13/08 20060101AFI20200706BHJP
【FI】
E04D13/08 311D
E04D13/08 311C
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-246554(P2017-246554)
(22)【出願日】2017年12月22日
(65)【公開番号】特開2019-112810(P2019-112810A)
(43)【公開日】2019年7月11日
【審査請求日】2018年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108638
【氏名又は名称】タカヤマ金属工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000133180
【氏名又は名称】株式会社タニタハウジングウェア
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(74)【代理人】
【識別番号】100138416
【弁理士】
【氏名又は名称】北田 明
(72)【発明者】
【氏名】服部 豊
(72)【発明者】
【氏名】玉岡 富彦
(72)【発明者】
【氏名】室野 伴也
【審査官】
園田 かれん
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−006899(JP,A)
【文献】
実開昭53−005658(JP,U)
【文献】
実公昭26−013015(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 1/00−3/40
E04D 13/00−15/07
F16B 23/00−43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
竪樋の外周面に当接することにより前記竪樋を支持する本体部と、
前記本体部を建築物等の取付対象物に固定するため、前記本体部を外方に向かい貫通して前記取付対象物にねじ込まれるねじ部材と、
前記本体部に取り付けられ、前記ねじ部材が有する頭部の外周部を該ねじ部材の軸部と反対側から前記本体部へ押さえつける内周部を有する押さえ部と、を備え、
前記押さえ部は、前記本体部へ取り付けられた状態で、前記本体部が有するねじ貫通孔の周囲を覆い、かつ、前記ねじ部材の前記頭部の外周部に対して、工具により前記ねじ部材が回転できる程度の接触力で前記内周部を接触させる、竪樋用控金具。
【請求項2】
前記押さえ部は、前記本体部に対して嵌合により固定される、請求項1に記載の竪樋用控金具。
【請求項3】
前記ねじ部材の前記頭部は、径内側に、前記ねじ部材を回転させる工具が接続される工具接続部を備え、径外側に、前記押さえ部が接触する平板状の鍔部を備える、請求項1または2に記載の竪樋用控金具。
【請求項4】
前記本体部は、前記取付対象物に固定された際に前記取付対象物の側に位置する基部と、前記基部に対して移動可能に設けられた覆い部とを備える、請求項1〜3のいずれかに記載の竪樋用控金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨樋の一部を構成する竪樋を建築物等に固定する際に用いる竪樋用控金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物の屋根等に落下した雨水を排出するために用いる雨樋のうち、屋根等から雨水を受ける軒樋等の排水部材に接続されて、雨水を下方に導くために用いられる竪樋がある。この竪樋を建築物等に固定する際に用いる竪樋用控金具に関し、例えば、本願の出願人のうち一社が以前出願した特許文献1に記載のものがある。
【0003】
特許文献1に記載の竪樋用控金具は、建築物等に埋め込まれる支持部材を備えている。この支持部材として釘が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−3506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように支持部材として釘が用いられていると、設置現場において作業者は金槌で釘を打ち込む作業が必要になる。ところが、作業者の熟練度が低い場合には、釘の打ち込みを失敗して別の部分を打撃してしまい、竪樋用控金具を変形させてしまうことがあった。そうすると、変形の修正作業が必要となったり、修正不能な場合には変形した竪樋用控金具を廃棄しなければならなくなったりするため問題であった。
【0006】
そこで本発明は、作業者の熟練度が低かったとしても建築物等に固定する作業が容易な竪樋用控金具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、竪樋の外周面に当接することにより前記竪樋を支持する本体部と、前記本体部を建築物等の取付対象物に固定するため、前記本体部を外方に向かい貫通して前記取付対象物にねじ込まれるねじ部材と、前記本体部に取り付けられ、前記ねじ部材が有する頭部
の外周部を
該ねじ部材の軸部と反対側から前記本体部へ押さえつける
内周部を有する押さえ部と、を備え、前記押さえ部は、前記本体部へ取り付けられた状態で、前記本体部が有するねじ貫通孔の周囲を覆い、かつ、前記ねじ部材の前記頭部
の外周部に対して、工具により前記ねじ部材が回転できる程度の接触力で
前記内周部を接触
させる、竪樋用控金具である。
【0008】
この構成によると、工具により建築物等に固定できるねじ部材を採用しており、このねじ部材が押さえ部によって本体部に押さえつけられた状態とされている。このため、作業者の熟練度が低かったとしても確実な施工が可能である。
【0009】
また、前記押さえ部は、前記本体部に対して嵌合により固定されるものとできる。
【0010】
この構成によると、嵌合によって押さえ部を本体部に確実に固定できる。
【0011】
また、前記ねじ部材の前記頭部は、径内側に、前記ねじ部材を回転させる工具が接続される工具接続部を備え、径外側に、前記押さえ部が接触する平板状の鍔部を備えるものとできる。
【0012】
この構成によると、鍔部が存在することで、押さえ部によりねじ部材を押さえつけることが確実にできる。
【0013】
また、前記本体部は、前記取付対象物に固定された際に前記取付対象物の側に位置する基部と、前記基部に対して移動可能に設けられた覆い部とを備えるものとできる。
【0014】
この構成によると、覆い部を基部から移動させ、ねじ部材の頭部を露出させることで、工具を用いたねじ部材のねじ込み作業が容易にできる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、確実な施工が可能なように構成されているから、作業者の熟練度が低かったとしても、竪樋用控金具を建築物等に固定する作業が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る竪樋用控金具を正面側から見た場合の斜視図である。
【
図2】同竪樋用控金具を背面側から見た場合の斜視図である。
【
図3】同竪樋用控金具の一部を示す横断面図である。
【
図4】同竪樋用控金具の一部を示す縦断面図である。
【
図5】本発明の他の実施形態に係る竪樋用控金具を正面側から見た場合の斜視図であって、本体部を一部のみ示したものである。
【
図6】同竪樋用控金具の一部を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明につき、一実施形態を取り上げて説明を行う。実施形態の竪樋用控金具1は、
図1または
図2に示すものである。この竪樋用控金具1は、本体部2とねじ部材3と押さえ部4とを備える。
【0018】
本体部2は、竪樋Pの外周面に当接することにより竪樋Pを支持する部分である。本実施形態では、
図3に示すように、竪樋(破線で図示)Pの外周面を取り巻くように本体部2が配置され、本体部2における覆い部22の内面が、竪樋Pの外周面に一部を除いて当接する。
【0019】
本体部2は、建築物等の取付対象物に固定された際に取付対象物の側に位置する基部21と、前記基部21に対して移動可能に設けられた覆い部22とを備える。基部21と覆い部22は、周方向の一端側がヒンジ部23によって回動可能に接続されている。また、他端側はフック部24によって着脱可能に接続されている。フック部24を開放した状態で基部21に対して覆い部22を回動させることにより、覆い部22を基部21から移動させ、基部21の内面側を露出した状態とすることができる。この状態で、ねじ部材3の頭部32が露出されることになるから、工具の先端部をねじ部材3の頭部32に接続させることが容易である。よって、工具を用いたねじ部材3のねじ込み作業が容易にできる。
【0020】
基部21には外方に突出した突出部211が形成されている。この突出部211を貫通してねじ貫通孔212が形成されている。また、突出部211には押さえ部4が取り付けられている。
図2に示すように、突出部211にはねじ部材3の頭部32が配置される凹部214が形成されている。このように基部21に凹部214を設けることで、取付対象物にねじ込まれたねじ部材3の頭部32が、確実に基部21を押さえつけることができるため、本体部2の取付対象物への設置状態を安定させることができる。
【0021】
ねじ部材3は、本体部2を外方に向かい貫通して建築物等の取付対象物にねじ込まれる部分である。これにより、本体部2を取付対象物に固定することができる。ねじ部材3は、丸棒状の軸部31と、軸部31よりも大径の頭部32とを備える。軸部31の外周面にはねじ山311が形成されており、工具によってねじ部材3を、ねじが締まる方向に回転させることで、取付対象物にねじ込んでいくことができる。従来の打撃作業が必要であった釘に比べ、工具を接続したままねじ込んでいけばいいので、比較的熟練度が低い作業者であっても失敗しにくい。
【0022】
頭部32の径寸法は、本体部2に形成されているねじ貫通孔212よりも大きく、ねじ部材3から本体部2が外れないようになっている。
図4に示すように、本実施形態の頭部32は、径内側に、ねじ部材3を回転させる工具が接続される工具接続部321を備える。本実施形態の工具接続部321は、プラスドライバーが接続できる十字形の溝として形成されている。そして、径外側に、押さえ部4が接触する平板状の鍔部322を備える。本実施形態では工具接続部321と鍔部322との間に段差が形成されているが、この段差はなくてもよい。頭部32が鍔部322を備えることで、押さえ部4によりねじ部材3を押さえつけることが確実にできる。ただし、なべねじの頭部の一部である場合のように、鍔部322が湾曲した形状であると、押さえ部4によるねじ部材3の接触が点接触や線接触になってしまうことから、押さえつけが不安定になる。一方、本実施形態のように鍔部322が平板状であると、押さえ部4によるねじ部材3の接触を面接触とできる。よって、押さえ部4によりねじ部材3を安定して押さえつけることができるので好ましい。なお、ねじ部材3は、頭部32に鍔部322のような工具接続部321と明瞭に区別できる部分が必ずしも設けられていなくてもよい。
【0023】
押さえ部4は、本体部2における突出部211に取り付けられ、ねじ部材3が有する頭部32を本体部2へ押さえつける部分である。この押さえ部4は板状であり、本体部2に対して嵌合により固定される。具体的には、
図2に示すように、押さえ部4の両端部が折り返され、本体部2に対してかしめられることで取り付けられている。この押さえ部4は、本体部2へ取り付けられた状態で、本体部2が有するねじ貫通孔212の周囲を覆う。押さえ部4のうち、ねじ貫通孔212の周囲を覆う部分である内周部41は外周部分よりも一段低くなっている。この内周部41は、ねじ部材3の頭部32における外周部(具体的には鍔部)322に対して、作業者の素手ではねじ部材3を回転させられないものの、工具によりねじ部材3が回転できる程度の接触力で接触する。これにより、この押さえ部4によってねじ部材3が本体部2に押さえつけられた状態とされる。よって、ねじ部材3が本体部2と一体化される。
【0024】
ここで、例えば本体部2と完全に分離したねじ部材3をねじ込んでいく場合、作業者は本体部2とねじ部材3とをそれぞれ支持しながらねじ込み作業を行う必要がある。一方、本実施形態のようにねじ部材3が本体部2と一体化されていると、ねじ込みの際、作業者は本体部2だけを支持すればよい。よって、作業者の熟練度が低かったとしても確実な施工が可能である。
【0025】
ねじ部材3のねじ込みに使用する工具は、インパクトドライバー等の空気圧または電力により駆動される自動工具であってもよいし、一般的なドライバー等の手動工具であってもよい。前述のように、覆い部22を基部21から移動させると、ねじ部材3の頭部32が露出されることになるから、工具の先端部をねじ部材3の頭部32に接続させることが容易となる。また、押さえ部4によってねじ部材3が本体部2に押さえつけられた状態となっているから、自動工具を用いた場合であっても、工具の駆動力を受けてねじ部材3がふらつく(暴れる)ことを抑制でき、確実なねじ込みが可能である。
【0026】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0027】
例えば、他の実施形態について簡単に説明する。この実施形態は、
図5、
図6に示すように(図示の符号は前記実施形態と基本的に同一としている)、押さえ部4における内周部41aが図示上方に凸になっている点が前記実施形態と相違する。また、この実施形態では、頭部32が凹部214から浮いた状態になっている。このように、種々の形状に変更して実施が可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 竪樋用控金具
2 本体部
21 基部
212 ねじ貫通孔
22 覆い部
3 ねじ部材
31 軸部
32 頭部
321 工具接続部
322 頭部の外周部、鍔部
4 押さえ部
P 竪樋