特許第6722661号(P6722661)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6722661
(24)【登録日】2020年6月24日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】ダクテッド燃料噴射
(51)【国際特許分類】
   F02M 61/18 20060101AFI20200706BHJP
   F02M 61/16 20060101ALI20200706BHJP
【FI】
   F02M61/18 340E
   F02M61/16 M
   F02M61/18 320Z
   F02M61/18 360B
【請求項の数】13
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-517779(P2017-517779)
(86)(22)【出願日】2015年10月1日
(65)【公表番号】特表2017-530298(P2017-530298A)
(43)【公表日】2017年10月12日
(86)【国際出願番号】US2015053592
(87)【国際公開番号】WO2016054436
(87)【国際公開日】20160407
【審査請求日】2018年8月6日
(31)【優先権主張番号】62/058,613
(32)【優先日】2014年10月1日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/789,782
(32)【優先日】2015年7月1日
(33)【優先権主張国】US
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】503196798
【氏名又は名称】ナショナル テクノロジー アンド エンジニアリング ソリューションズ オブ サンディア, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミューラー、チャールズ ジェイ.
【審査官】 櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭55−004358(JP,U)
【文献】 特開2005−344631(JP,A)
【文献】 特開平03−264725(JP,A)
【文献】 実開昭59−102940(JP,U)
【文献】 特開昭59−077074(JP,A)
【文献】 特開2012−207595(JP,A)
【文献】 実開昭54−063824(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 61/18
F02M 61/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料噴射システムにおいて、
第1の開口部を備える燃料噴射装置であって、燃料が、前記第1の開口部を通して燃焼室に噴射される、燃料噴射装置と、
中空管から形成されるダクトであって、前記燃料噴射装置の前記第1の開口部を出る前記燃料が、前記中空管を通して、前記燃焼室の中へ噴射されるように整列される、ダクトと
を備え、
前記ダクトが、該ダクトの壁に沿って複数の開口を有し、前記ダクトが、第1端部および第2端部を更に備え、前記ダクトが、前記第1端部と第1の開口部との間に間隙がないように燃料噴射装置に結合され、
前記燃料が前記ダクトを通ることにより、前記燃焼室から前記複数の開口を通って前記ダクトのボア内に充填ガスが吸い込まれて、該ボア内で乱流を発生させ、前記燃料と前記充填ガスとの混合を促進するようになっている、燃料噴射システム。
【請求項2】
前記第1の開口部が第1の直径を有し、前記中空管が内径を有し、前記中空管の前記内径が、前記第1の開口部の前記第1の直径の約5〜約50倍である、請求項1に記載の燃料噴射システム。
【請求項3】
前記ダクトが、前記第1の開口部の前記第1の直径の約30〜約300倍の長さを有する、請求項1に記載の燃料噴射システム。
【請求項4】
前記ダクトが、金属材料またはセラミック材料のうちの少なくとも1つを含む耐高温性材料から形成される、請求項1に記載の燃料噴射システム。
【請求項5】
前記管が円筒状である、請求項1に記載の燃料噴射システム。
【請求項6】
前記第1の端部が、第1の直径を有する第1の開口部を有し、
前記第2の端部が、第2の直径を有する第2の開口部を有し、前記第1の直径が、前記第2の直径よりも小さいか、または前記第1の直径が、前記第2の直径よりも大きい、第2の端部と
を備える、請求項1に記載の燃料噴射システム。
【請求項7】
前記燃料噴射装置が、
第2の開口部と、
前記第2の開口部を通して前記燃料噴射装置によって噴射された燃料の流れが前記第2のダクトを通過し、前記燃焼室の中へ入るのを促進するように前記第2の開口部に対して整列された第2のダクトと
を備える、請求項1に記載の燃料噴射システム。
【請求項8】
前記燃焼室が、エンジンブロックに形成されたシリンダボアからさらに形成され、火炎デッキ面が、前記シリンダボアの一方の端部に、および回転可能なクランクシャフトに接続されかつ前記シリンダボア内を往復運動するように構成されたピストンのピストンクラウン表面に配置され、前記ピストンクラウン表面が、前記火炎デッキ面に面する、請求項1に記載の燃料噴射システム。
【請求項9】
燃焼室内で燃料と充填ガスとを混合する方法において、
燃料噴射装置の開口部を通して燃料を噴射することであって、前記開口部が、前記燃焼室内に位置付けられる、噴射するステップと、
ダクト内で前記噴射された燃料と前記充填ガスとを混合することであって、前記ダクトが中空管を備え、また、前記噴射された燃料が前記燃焼室に進入する前に前記中空管を通して進行するように整列され、前記ダクトが、第1端部および第2端部を備え、前記ダクトの前記第1端部が、前記第1端部と前記開口部との間に間隙がないように前記燃料噴射装置に結合され、前記中空管を通した前記燃料の通過が、前記中空管内の前記燃料の乱流を引き起こし、前記ダクトの壁に沿って設けられた複数の開口を通って、前記燃焼室内に存在する充填ガスの前記中空管の中への吸い込みを引き起こし、それによって、前記噴射された燃料と前記充填ガスとを混合する、混合するステップと
を含む、方法。
【請求項10】
前記ダクトが、金属材料またはセラミック材料のうちの少なくとも1つを含む耐高温性材料から形成される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記燃焼室が、エンジンブロックに形成されたシリンダボアからさらに形成され、前記火炎デッキ面が、前記シリンダボアの一方の端部に、および回転可能なクランクシャフトに接続されかつ前記シリンダボア内を往復運動するように構成されたピストンのピストンクラウン表面に配置され、前記ピストンクラウン表面が、前記火炎デッキ面に面する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
燃料噴射システムにおいて、
第1の開口部および第2の開口部を備える燃料噴射装置であって、第1の燃料ジェットが、前記第1の開口部を通して燃焼室内へ噴射され、第2の燃料ジェットが、前記第2の開口部を通して前記燃焼室内へ噴射される、燃料噴射装置と、
第1の中空管から形成される第1のダクトであって、該第1のダクトが第1端部および第2端部を備え、前記第1の開口部を出る前記第1の燃料ジェットが、前記第1の中空管を通して、前記燃焼室内へ噴射されるように整列され、前記第1のダクトの前記第1端部が、前記第1のダクトの前記第1端部と前記第1の開口部との間に間隙がないように前記燃料噴射装置に当接している、第1のダクトと、
第2の中空管から形成される第2のダクトであって、該第2のダクトが第1端部および第2端部を備え、前記第2の開口部を出る前記第2の燃料ジェットが、前記第2の中空管を通して、前記燃焼室内へ噴射されるように整列され、前記第2のダクトの前記第1端部が、前記第2のダクトの前記第1端部と前記第2の開口部との間に間隙がないように前記燃料噴射装置に当接している、第2のダクトと
を備え、
前記第1の中空管および前記第2の中空管を前記第1の燃料ジェットおよび前記第2の燃料ジェットがそれぞれ通ることにより、前記第1の中空管および前記第2の中空管内で、前記第1の燃料ジェットおよび前記第2の燃料ジェットの乱流を形成し、前記燃焼室から前記第1の中空管および前記第2の中空管内に充填ガスが吸い込まれて、前記第1の燃料ジェットおよび前記第2の燃料ジェットと前記充填ガスとを混合するようになっており、
前記第1の管が第1の壁を備え、前記第1の壁が、そこを通る第1の開口を備え、
前記第2の管が第2の壁を備え、前記第2の壁が、そこを通る第2の開口を備え、前記充填ガスが、前記第1の開口および前記第2の開口から、それぞれ前記第1の中空管および前記第2の中空管内に吸い込まれるようになっている、燃料噴射システム。
【請求項13】
前記第1および第2のダクトが、前記燃料噴射装置と統合される、請求項12に記載の燃料噴射システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
大部分の現代のエンジンは、直噴エンジンであり、よって、エンジンの各燃焼シリンダは、燃料を燃焼室の中へ直接噴射するように構成された専用の燃料噴射装置を含む。直噴エンジンは、エンジン効率の増加および排気物の低減に関して、過去のエンジン(例えば、キャブレター)に勝るエンジン技術における改善を表すが、直噴エンジンは、比較的高いレベルの特定の望ましくない排気物を生成する場合がある。
【背景技術】
【0002】
エンジン排気物は、煤煙を含む場合があり、これは、燃料過濃で酸素希薄の燃料混合物の燃料に由来する。煤煙は、中負荷〜高負荷で運転され得るエンジンの燃焼室において一般に作り出される拡散火炎の燃料過濃領域によって作り出される、小さい炭素粒子を含む。煤煙は、環境危険物であり、米国の環境保護庁(EPA)によって規制されている排気物であり、また、2番目に最も重要な気候強制種である(二酸化炭素が最も重要である)。現在、煤煙は、排気システムの中の大型で高価な粒子フィルタによって、ディーゼルエンジンの排気から除去される。また、NOxの選択的触媒還元、NOxトラップ、酸化触媒などの、他の燃焼後処理も利用しなければならない場合がある。これらの後処理システムは、煤煙/微粒子および他の望ましくない排気物の継続的かつ効率的な低減を可能にするように維持しなければならず、それ故に、初期の装置コストおよび以降のメンテナンスの双方に関して、燃焼システムのコストをさらに増大させる。
【0003】
より希薄な混合物は、煤煙、NOx、および炭化水素(HC)および一酸化炭素(CO)などの潜在的に他の規制された排気物をあまり生成しない傾向があるので、燃焼技術の焦点は、そのような混合物において燃料を燃焼させることである。1つのこのような燃焼ストラテジは、より希薄なリフテッド火炎燃焼(LLFC)である。LLFCは、約2以下の当量比で燃焼が起こるので煤煙を生成しない、燃焼ストラテジである。当量比は、実際の燃料と酸化剤との比率を、燃料と酸化剤との化学量論比で割ったものである。LLFCは、燃焼室における燃料と充填ガス(すなわち、追加的な気相化合物を有する、または有しない空気)との局所混合を高めることによって達成することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
以下は、本明細書でさらに詳細に説明される対象事項の概要である。この概要は、特許請求の範囲に関して限定することを意図するものではない。
【0005】
本明細書では、従来の燃焼室の構成/配設において生成される混合と比較して、燃焼室内部の局所混合率を高めるために設計された様々な技術が説明される。高められた混合速度は、燃料および充填ガスを含む1つ以上の局所的に予備混合された混合物を形成するために使用され、燃料と充填ガスとのより低いピーク比率を特徴とし、局所的に予備混合された混合物の点火およびその後の燃焼中に燃焼室における煤煙の発生を最小またはゼロにすることを可能にすることを目的とする。燃料と充填ガスとを混合して、燃料と充填ガスとのより低いピーク比率を有する、局所的に予備混合された混合物を生成することを可能にするために、燃料ジェットは、それがダクトのボアを通過する(例えば、管、中空楕円柱を下る)ように方向付けることができ、燃料の通過は、ボア内に乱流が作り出されるように充填ガスをボアの中へ吸い込ませて、燃料と吸い込まれた充填ガスとの高められた混合を引き起こす。燃焼室内部の充填ガスは、追加的な気相化合物を有する、または有しない空気で構成することができる。
【0006】
局所的に予備混合された混合物(複数可)の燃焼は、燃焼室内で起こすことができ、燃料は、任意の適切な引火性または可燃性の液体または蒸気とすることができる。例えば、燃焼室は、シリンダボアの壁(例えば、エンジンブロックに形成される)、シリンダヘッドの火炎デッキ面、およびシリンダボア内を往復運動するピストンのピストンクラウンを備える様々な表面の機能として形成することができる。燃料噴射装置は、シリンダヘッドに取り付けることができ、燃料は、燃料噴射装置の先端部の少なくとも1つの開口部を介して燃焼室の中へ噴射される。燃料噴射装置の先端部の開口部について、燃料噴射装置によって噴射される燃料がダクトのボアを通過することを可能にするために、ダクトは、該開口部と整列させることができる。ボアを通って流れる燃料の高速ジェットによって局所的に作り出される低圧の結果として、充填ガスがダクトのボアの中へ吸い込まれる。ダクト壁と燃料ジェットの中心線との間の大きい速度勾配によって作り出される激しい乱流のため、この充填ガスが燃料と急速に混合し、その結果、燃料と充填ガスとのより低いピーク比率を有する、ダクトを出て燃焼室においてその後の点火および燃焼を受ける局所的に予備混合された混合物を形成する。
【0007】
一実施形態において、ダクトは、ボアに沿った燃料の通過中に充填ガスをダクトのボアの中へ吸い込むことをさらに可能にするために、該ダクトの長さに沿って、いくつかの穴またはスロットを有することができる。
【0008】
別の実施形態において、ダクトは、管から形成することができ、管の壁は、互いに対して平行であり(例えば、中空シリンダ)、したがって、ダクトの第1の端部(例えば、吸気口)でのボアの直径は、ダクトの第2の端部(例えば、排気口)でのボアの直径と同じである。別の実施形態において、管の壁は、非平行とすることができ、よって、ダクトの第1の端部でのボア径は、ダクトの第2の端部でのボア径と異なる。
【0009】
ダクト(複数可)は、燃焼室における利用に適している任意の材料、例えば、金属含有材料(例えば、鋼、インコネル、ハステロイ、・・・)、セラミック含有材料、その他から形成することができる。
【0010】
さらなる実施形態において、ダクト(複数可)は、燃料噴射装置を燃焼室の中へ挿入する前に、燃料噴射装置に取り付けることができ、燃料噴射装置およびダクト(複数可)を備えるアセンブリ燃焼室の一部分を形成するように位置付けられる。別の実施形態において、燃料噴射装置は、燃焼室に位置付けることができ、その後に、ダクト(複数可)を燃料噴射装置に取り付けることができる。
【0011】
エンジンの動作中に、ダクトのボア内部の温度は、燃焼室内部の周囲温度未満になり得、よって、燃料を燃焼室の中へ直接噴射する場合と比較して、混合物の点火遅れが増加し、自己点火前の燃料と充填ガスとの混合がさらに向上する。
【0012】
上記の概要は、本明細書で論じられるシステムおよび/または方法のいくつかの態様の基本的な理解を提供するために、簡略化された概要を提示する。本概要は、本明細書で論じられるシステムおよび/または方法の広範囲にわたる概観ではない。本概要は、当該システムおよび/もしくは方法の鍵となる/重要な要素を識別すること、または範囲を描写することを意図しない。その唯一の目的は、後で提示されるより詳細な説明の前置きとして、いくつかの概念を簡略形態で提示することである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】例示的な燃焼室装置の断面図である。
図2】例示的な燃焼室装置を形成する火炎デッキ、弁、燃料噴射装置、およびダクトを示す概略図である。
図3】燃料噴射装置およびダクトの配設を備える例示的な燃焼室装置の拡大図である。
図4】円柱状の構成を有するダクトの概略図である。
図5A】非平行側部を有するダクトの概略図である。
図5B】砂時計プロファイルを有するダクトの概略図である。
図5C】漏斗形状のプロファイルを有するダクトの概略図である。
図6A】その長さに沿って複数の穴を含むダクトを示す図である。
図6B】その長さに沿って複数の穴を含むダクトを示す図である。
図6C】その長さに沿って複数の穴を含むダクトを示す図である。
図7A】燃焼室の中に位置付けられた燃料噴射装置およびダクトアセンブリを示す概略図である。
図7B】燃焼室の中に位置付けられた燃料噴射装置およびダクトアセンブリを示す概略図である。
図8A】3つのダクトおよび螺入取り付け部分を備える例示的な配設を示す図である。
図8B】3つのダクトおよび螺入取り付け部分を備える例示的な配設を示す図である。
図8C】燃料噴射装置アセンブリに取り付けられたダクトアセンブリの概略図である。
図9A】燃料噴射装置の先端部における開口部の形成をガイドするためにダクトを利用することを示す図である。
図9B】燃料噴射装置の先端部における開口部の形成をガイドするためにダクトを利用することを示す図である。
図10】燃焼室における点火について燃料と充填ガスとのより低いピーク比率を有する、局所的に予備混合された混合物を作り出すための例示的な方法論を示すフロー図である。
図11】1つの燃料噴射装置および少なくとも1つのダクトを備えるアセンブリを燃焼室の中に位置付けるための例示的な方法論を示すフロー図である。
図12】少なくとも1つのダクトを燃焼室の燃料噴射装置に位置付けるための例示的な方法論を示すフロー図である。
図13】ダクトを利用して先端部の開口部の形成をガイドするための例示的な方法論を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
燃焼前に燃料と充填ガスとのより低いピーク比率を有し、1つ以上のダクトを利用して局所的に予備混合された燃料と充填ガスとの混合物を作り出すことに関する様々な技術が本明細書で提示され、主たる目的は、煤煙(または他の望ましくない微粒子/排気物)の発生を最小にすること、および/または排除することである。全体を通して、同じ参照番号が、本技術の同じ要素を参照するために使用される。以下の説明では、説明の目的で、1つ以上の態様の完全な理解を提供するために、数多くの具体的な詳細が記載される。しかしながら、このような態様(複数可)は、これらの具体的な詳細を伴わずに実践され得ることが明らかであり得る。他の事例では、1つ以上の態様の説明を容易にするために、よく知られている構造およびデバイスがブロック図の形態で示される。
【0015】
さらに、「または(or)」というよう語は、排他的な「または」ではなく、包含的な「または」を意味することを意図する。すなわち、別途指定されない限り、または文脈から明らかである場合を除き、「Xは、AまたはBを用いる(X employs A or B)」という語句は、自然な包括的置換のいずれかを意味することを意図する。すなわち、「Xは、AまたはBを用いる」という語句は、Xは、Aを用いる、Xは、Bを用いる、またはXは、AおよびBの両方を用いる、という事例のいずれかによって満たされる。加えて、本明細書および添付の特許請求の範囲で使用するときに、「a」および「an」という冠詞は、全般的に、別途指定されない限り、または文脈から単数形に向けられていることが明らかである場合を除き、「1つ以上(one or more)」を意味するものとして解釈されるべきである。加えて、本明細書で使用するときに、「例示的な(exemplary)」という用語は、何かの実例または例としての役割を果たすことを意味することを意図しており、選好を示すことを意図しない。
【0016】
図1図2、および図3は、ダクテッド燃料噴射システムのための例示的な構成(複数可)を例示する。図1は、燃焼室アセンブリ100を通した断面図であり、断面は、図2のX−Xに沿っている。図2は、図1の方向Yにおける燃焼室アセンブリ100の平面図である、構成200を示す。図3は、図1および図2に示される燃料噴射アセンブリの拡大図である、構成300を提示する。
【0017】
図1図3は、組み合わせて燃焼室105を形成する、複数の共通の構成要素を集合的に示す。一実施形態において、燃焼室105は、エンジンのクランクケースまたはエンジンブロック115(完全に図示せず)内に形成される(例えば、機械加工される)シリンダボア110内に画定される、略円筒形状を有する。燃焼室105は、シリンダヘッド125の火炎デッキ面120によって一方の端部(第1の端部)に、およびボア110内を往復運動することができるピストン135のピストンクラウン130によってもう一方の端部(第2の端部)にさらに画定される。燃料噴射装置140は、シリンダヘッド125の中に取り付けられる。噴射装置140は、燃料を燃焼室105の中へ直接噴射することができるように火炎デッキ面120を通って燃焼室105の中へ突出する、先端部145を有する。噴射装置先端部145は、燃料がそこを通して燃焼室105の中へ噴射される、いくつかの開口部146(オリフィス)を含むことができる。各開口部146は、特定の形状、例えば円形開口部とすることができ、さらに、各開口部146は、特定の開口部直径D3を有することができる。
【0018】
さらに、燃焼室105は、(下でさらに説明されるように)噴射装置140の開口部146を介して燃焼室105に噴射される燃料を方向付けるために利用することができる、該燃焼室の中に位置付けられた1つ以上のダクト150を有する。燃焼エンジンの従来の動作によれば、吸気弁(複数可)160は、充填ガスの燃焼室105の中への吸気を可能にするために利用され、排気弁(複数可)165は、燃焼室105の中で起こる燃焼プロセスの機能として該燃焼室の中で形成される任意の燃焼生成物(例えば、ガス、煤煙、その他)を排気することを可能にするために利用される。燃焼室105内部の充填ガスは、追加的な気相化合物を有する、または有しない空気で構成することができる。
【0019】
図2は、燃焼室105の中へ組み込むことができる複数の吸気弁160および複数の排気弁165を示す。また、図2に示されるように、1つ以上のダクト150を先端部145の周辺に配設することができ、図4の構成400によれば、ダクト150は、管または中空楕円柱とすることができ、外径D1を有する外壁152、およびダクト150の長さを通過する内部ボア153を備え、内部ボア153は、直径D2を有する。図4に示されるように、ダクト150は、円筒状に形成することができ、よって、外壁152の内面154および外壁152の外面155は、平行であり、したがって、ダクト150の第1の端部での第1の開口部157は、ダクト150の第2の端部での第2の開口部158と同じ直径を有し、例えば、第1の開口部157(例えば、吸気口)の直径D2は、第2の開口部158(例えば、排気口)の直径と同じである。ダクト150の第1の端部は、開口部146の最も近くに(近位に、隣接して、当接して)位置付けることができ、一方で、ダクト150の第2の端部は、ダクト150の第1の端部の位置と比較して、開口部146の遠位に位置付けられる。一実施形態において、本明細書でさらに説明されるように、外壁152の厚さは、ダクト150の長さに沿って変化させることができ、よって、外壁152の外面155は、円筒状であるが、内面154は、テーパー状とすることができ、および/または円錐形状を有することができる。さらなる実施形態において、ダクト150の長さLは、任意の所望の長さとすることができる。例えば、ダクト150は、開口部146の公称直径D3の約30〜約300倍、例えば、約30×D3〜約300×D3の間の長さLを有することができる。
【0020】
図3を参照すると、上で述ベたように、先端部145は、燃料180がそこ(例えば、燃料噴射装置)を通って通過することを可能にするために、複数の開口部146を含むことができる。噴射装置140を通って流れる燃料180の初期容量から、複数の燃料ジェット185は、初期燃料180がそれぞれの開口部146を通過するときの、先端部145に位置付けられる開口部146の数およびサイズに従って形成することができる。噴射される燃料185の噴射方向は、図3に示される中心線(複数可)

によって示すことができる。したがって、ダクト150は、燃料ジェット185の中心線と(例えば、同軸状に)共整列させることができ、よって、燃料ジェット185は、開口部146を出て、ダクト150のボア153を通過する。図3および図4によれば、ダクト150の第1の(近位)端部157は、それぞれの開口部146に近接して位置決めすることができ、第1の端部157は、間隙Gがダクト150の第1の端部と開口部146との間に存在するように位置決めすることができる。ダクト150の第2の(遠位)端部158は、ダクト150が先端部145から燃焼室105の中へ延在するように燃焼室105の中に位置付けることができる。
【0021】
上で述ベたように、燃料と充填ガスとの燃料過濃混合物が燃焼を受ける状態において、望ましくない煤煙が発生する場合がある。したがって、約2以下の当量比を有する燃料/充填ガス混合物を有することが望ましい。燃料ジェット(複数可)185がそれぞれのダクト150のボア153を通って進行するときに、燃焼チャンバの中の充填ガスもまたダクト150の中へ吸い込まれる程度の圧力差がダクト150の内部に発生する。充填ガスは、ダクトボア153(流体速度がゼロである)と燃料ジェット185(流体速度が大きい)の中心線との間の高い速度勾配によって作り出される激しい乱流のため、燃料185と急速に混合する。乱流条件は、燃料ジェット185と吸い込まれた充填ガスとの間の混合速度を高めることができ、ボア153における燃料185と充填ガスとの混合の程度は、燃料ジェット185がダクトの通過を伴わずに単に充填ガスを満たした燃焼室105の中へ噴射されていた従来の構成において起こる混合の程度よりも大きくなり得る。従来の構成の場合、燃料ジェット185は、構成100に従って、燃料ジェット185にダクト150を通過させることによって可能になる量よりも少ない充填ガスとの乱流混合の量を受ける。
【0022】
図3によれば、燃料ジェット185の領域186において、燃料ジェット185は、高容量の燃料過濃混合物を含み、一方で、燃料ジェット185の領域187において、燃料ジェット185は、吸い込まれた充填ガスとの混合を受けており、領域186での燃料過濃混合物と比較して、領域187において、局所的により予備混合された混合物をもたらす。したがって、図1図4で提示される構成100によれば、ダクト150において燃料185と充填ガスとの間に高い程度の混合が起こり、それが、燃料と充填ガスとのより低いピーク比率を有する、局所的に予備混合された燃料/混合物につながり、その結果、(例えば、ピストン135の運動によって引き起こされる圧縮加熱による)混合物の点火および燃焼時に、発生する煤煙の量が従来の配設によって達成される量よりも少なくなる。領域187での「十分希薄な」混合物は、0〜2の間の当量比(複数可)を有することができ、一方で、領域186での「過濃な」混合物は、2よりも大きい当量比(複数可)を有する混合物である。
【0023】
一実施形態において、ダクト150のボア153の直径D2は、ダクト150の第1の端部157が近接するそれぞれの開口部146の直径D3よりも大きくすることができる。例えば、D2は、D3よりも約5倍大きくすることができる、D2は、D3よりも約50倍大きくすることができる、D2は、D3よりも任意の大きさだけ大きい直径を有することができる、例えば、D3よりも約5倍大きい〜D3よりも50倍大きい値の範囲で選択される大きさである、その他、である。
【0024】
図3に示されるように、ダクト(複数可)150は、ダクト150と火炎デッキ面120との間をθ°の整列状態で、火炎デッキ面120に対して整列させることができる。θは、0°(例えば、ダクト150が、火炎デッキ面120によって形成される平面P−Pに対して平行に整列される)〜任意の所望の値の範囲の任意の所望の値とすることができ、ダクト150の整列状態は、燃料ジェット185の進行の中心線

に対して整列させることができる。一実施形態において、燃料ジェット185が、火炎デッキ面120、平面P−Pに対して実質的に平行に整列された方向に、燃料噴射装置140のそれぞれの開口部146を出る場合、ダクト150もまた平面P−Pに対して実質的に平行に整列させることができる。ダクト(複数可)150の整列状態に関する考慮事項は、ピストン135の往復運動、吸気弁160、および排気弁165との干渉を防止することであり、例えば、ダクト(複数可)150は、ピストン130、吸気弁160、または排気弁165と接触しないように整列させなければならない。
【0025】
図4は、ダクト150が円筒形態を有し、壁152の外面155が内面154に対して平行である(例えば、ボア153が全体を通して一定の直径D2を有する)状態を示しているが、ダクト150は、任意の所望のセクションで形成することができる。例えば、構成500において、図5Aに示されるように、ダクト510は、外壁515を有して形成することができ、該外壁は、ダクト500の第1の端部での第1の開口部520(例えば、吸気口)が、ダクト510の第2の端部での第2の開口部530(例えば、排気口)の直径D5と異なる直径D4を有する程度のテーパー状である。構成500は、直円錐の中空円錐台であるとみなすことができる。別の構成550において、図5Bに示されるように、ダクト560は、「砂時計」プロファイルを有する外壁565を有して形成することができ、中央部分は、ダクト560の第1の端部および第2の端部のそれぞれの直径D7(第1の開口部)および直径D8(第2の開口部)よりも狭い直径D6を有することができる。第1の開口部の直径D7は、第2の開口部の直径D8と同じ直径を有するか、またはD7>D8、もしくはD7<D8とすることができることを認識されたい。加えて、説明を簡潔にするために、図5A〜Cに示されるダクト壁のプロファイルは、直線で構成することができるが、これらの壁のプロファイルは、同様に区分的に湾曲した線から生成することができることを認識されたい。さらなる構成570において、図5Cに示されるように、ダクト580は、「漏斗形状の」プロファイルを有する外壁585を有して形成することができ、直径D9を有する中央部分は、ダクト580の第1の端部の第1の開口部での直径D10と同じであり、一方で、直径D9は、ダクト580の第2の端部での第2の開口部の直径D11よりも小さい。代替的に、ダクト580は、直径D11を有する開口部を開口部146に位置付けることができるように、開口部146に対して向きを変えることができ、よって、燃料185の通過は、直径D10を有する開口部から出てくる前に狭窄される。本明細書では説明されないが、他のダクトプロファイルを、本明細書で提示される1つ以上の実施形態に従って利用することができることを認識されたい。
【0026】
さらに、図6A〜Cに示されるように、ダクトの管状壁は、燃料のダクト通過中に充填ガスのダクトの中への進入を可能にするために該管状壁に形成される、少なくとも1つの穴(穿孔、開口、開口部、オリフィス、スロット)を有することができる。図6Aの構成600によれば、ダクト610が示され、ダクト610には、ダクト610の側部に形成され、壁620を通って内部ボア630の中へ延在する、複数の穴H〜Hが製作されており、ここで、nは、正の整数である。図6Aは、ダクト610の壁620の中へ形成される5つの穴H〜Hを提示しているが、任意の数の穴およびそれぞれの配置を利用して、充填ガスの吸い込みおよびその後のダクト610を通過する充填ガスと燃料との混合を可能にすることができることを認識されたい。穴H〜Hは、任意の適切な製作技術、例えば従来の穴あけ、レーザー穴あけ、放電加工(EDM)、その他によって形成することができる。
【0027】
図6Bの構成601は、噴射装置先端部145の開口部146からダクト610のボア630を通して噴射されている燃料ジェット685を示す、ダクト610の断面図である。燃料ジェット685は、最初に、燃料過濃領域687を備える。しかしながら、充填ガスがボア630の中へ吸い込まれると、(上で説明されるように)燃料685と充填ガスとの混合が起こり、よって、領域688は、燃料と充填ガスとのより低いピーク比率を有する、局所的に予備混合された混合物を含み、その後の燃焼中に、「十分希薄な」混合物は、煤煙の発生が最小である、または全くない燃焼を受ける。示されるように、構成601に関して、ダクト610の第1の端部611と先端部145との間にはいかなる分離(例えば、いかなる間隙G)もなく、ダクト610の第1の端部611は、開口部146に当接する。構成601に関して、充填ガスのボア630の中への進入は、ダクト610の第1の端部611と先端部145との間に間隙がないことによって排除されるが、ダクト610の中への穴H〜Hの組み込みは、充填ガスが穴H〜Hを通ってボア630の中へ吸い込まれることを可能にして、局所的に予備混合されたジェット685の形成を可能にする。ダクト610は、先端部145に対して垂直に(例えば、

に対して平行に)整列されているように示されているが、ダクト610は、燃料ジェット685のダクト630を通した流れを可能にするために、先端部145(および開口部146)に対して任意の角度で位置決めすることができる。
【0028】
図6Cは代替の構成602を提示し、ダクト610の第1の端部611は、先端部145からダクト610の第1の端部611を分離する間隙Gを伴って、先端部145および開口部146に近接して位置付けられる。間隙Gは、穴H〜Hを介してボア630の中へ吸い込まれている充填ガスを補充するために、さらなる充填ガスをダクト610の中へ吸い込むことを可能にする。
【0029】
本明細書の様々な実施形態によれば、複数のダクトを噴射装置先端部145に近接して位置決めすることができ、それによって、複数のダクトを噴射装置先端部145に取り付けることができ、噴射装置先端部145およびダクト(複数可)アセンブリをシリンダヘッド125/火炎デッキ面120に位置付けて燃焼室を形成することができる。例えば、図7Aおよび7Bに示される構成700よれば、ダクト(複数可)150をスリーブ710(シュラウド)または類似する構造に取り付けることができ、これを噴射装置140とともに支持ブロック720の中へ組み込むことができる。シリンダヘッド125は、開口部730を含むことができ、支持ブロック720、噴射装置140、スリーブ710、およびダクト(複数可)150は、図7Bに従って、噴射装置140およびダクト(複数可)150の位置が燃焼室105の形成を可能にするために、火炎デッキ面120(例えば、平面P−P)に対して位置決めされ、それぞれのダクト150は、燃料ジェット(例えば、燃料ジェット185)がボア153を通って通過することを可能にするために、噴射装置140のそれぞれの開口部146に対して位置付けることができる。
【0030】
別の実施形態において、噴射装置先端部は、火炎デッキにあらかじめ位置付けることができ、その後に、ダクト(複数可)を噴射装置先端部に取り付けることができる。図8Aおよび8Bの構成800に示されるように、ロケーターリング810は、それに取り付けられた複数のダクト150を有する。ロケーターリング810は、ロケーターリング810を取り付けるための手段を含むことができ、例えば、ロケーターリング810の内面815を螺入することができ、ダクト150がそれぞれコネクタ817によって取り付けられる。図8Cに示されるように、構成850、ロケーターリング810、およびダクト150は、噴射装置140と組み合わせて組み立てることができる。その中に組み込まれた噴射装置140を有するスリーブ820または類似する構造は、ロケーターリング810の取り付け機構を賞賛する取り付け手段をさらに備えることができる。例えば、スリーブ820は、ロケーターリング810を螺入することができる螺入端部825を含むことができ、それぞれのダクト150は、燃料ジェット(例えば、燃料ジェット185)がボア153を通って通過することを可能にするために、噴射装置140のそれぞれの開口部146に対して位置付けることができる。
【0031】
噴射装置先端部145の周囲に配設されるダクト150の数は、任意の所望の数N(先端部145の開口部146の数と一致する)とすることができ、ここで、Nは、正の整数であることを認識されたい。したがって、図2は、6つのダクトを備える構成200を例示しているが、図8Aおよび8Bは、噴射装置先端部145の3つの開口部146に対して位置決めされる3つのダクト150を備える構成800を示す。
【0032】
一態様では、ダクトのボアにおける燃料と充填ガスとの混合を最大にするために、燃料噴射装置の開口部からの燃料の排出方向をボアの中心線と正確に共整列させることが有益であり得る。このような正確な共整列状態を達成するために、ボアを利用して開口部の形成を支援することができる。このような手法は、図9Aおよび9Bに示される。図9Aに示されるように、ダクト150は、ダクト150の第1の端部157が噴射装置先端部145に当接する(例えば、いかなる間隙Gもない)ように(例えば、図7A、7B、図8A、8B、8Cを参照して説明されるように)位置決めされる。ダクト150は、火炎デッキ面120の平面P−P、および燃料ジェット(例えば、燃料185、685)が進行する所望の進行中心線

を基準にして所望の角度θ°で整列される。
【0033】
所望に応じて位置決めされたダクト150によって、開口部146を先端部145に形成することができる。一実施形態において、開口部146は、放電加工(EDM)によって形成することができるが、任意の適切な製作技術を利用して開口部146を形成することができることを認識されたい。示されるように、ダクト150は、EDMの動作を所望の角度で行うことを可能にするために利用することができ、例えば、ダクト150は、燃料ジェットが進行中心線

の方向に流れることを可能にするための配列状態を有する開口部146の形成を可能にする角度で、ツールピース(例えば、EDMの電極)をガイドするために利用することができる。図9Aおよび9Bは、噴射装置先端部145に当接し、さらに、ダクト150の長さに沿っていかなる開口部も有しないダクト150を示しているが、他の配設(例えば、図1図8Cに示される様々な構成のうちのいずれか)を利用することができることを認識されたい。例えば、ダクト150の第1の端部157は、例えば間隙Gを介して、噴射装置先端部145に近接して位置決めすることができる。さらなる例において、ダクト150は、その長さに沿って1つ以上の穴(例えば、穴H〜H)を含むことができる。別の例において、ダクト(複数可)150は、構成700または850のいずれかに従って、噴射装置先端部145に近接して取り付けることができる。
【0034】
ダクト(複数可)150は、燃焼室における利用に適している任意の材料、例えば、鋼、インコネル、ハステロイ、その他などの金属含有材料、セラミック含有材料、その他から形成することができる。
【0035】
本明細書で提示される様々な実施形態は、任意のタイプの燃料および酸化剤(例えば、酸素)に適用することができ、そのような燃料としては、ディーゼル、ジェット燃料、ガソリン、粗製もしくは精製石油、石油留出物、炭化水素(例えば、直鎖状、分岐状、もしくは環状アルカン、芳香族化合物)、酸素化物(例えば、アルコール、エステル、エーテル、ケトン)、圧縮天然ガス、液化石油ガス、バイオ燃料、バイオディーゼル、バイオエタノール、合成燃料、水素、アンモニア、その他、またはこれらの混合物を挙げることができることを認識されたい。
【0036】
さらに、本明細書で提示される様々な実施形態は、圧縮点火エンジン(例えば、ディーゼルエンジン)を参照して説明されているが、該実施形態は、直噴エンジン、他の圧縮点火エンジン、スパーク点火エンジン、ガスタービンエンジン、産業ボイラー、任意の燃焼駆動システム、その他などの任意の燃焼技術に適用することができる。
【0037】
さらに、煤煙の発生を低減させるだけでなく、本明細書で提示される様々な実施形態はまた、他の望ましくない燃焼生成物の排気物を減じることもできる。例えば、一酸化窒素(NO)ならびに/または窒素および酸素を含む他の化合物の生成は、十分に燃料希薄混合物(例えば、ジェット185の領域187)を利用することによって減じることができる。また、燃焼中にダクトのボア(例えば、ダクト150のボア153)の出口で正しい混合物が作り出されるのであれば、未燃焼炭化水素(HC)および一酸化炭素(CO)の排出を減じることができる。
【0038】
図10図13は、燃料と充填ガスとのより低いピーク比率を有する、局所的に予備混合された混合物を形成して、燃焼中に形成される煤煙および他の望ましくない排気物の発生を最小にするための例示的な方法論を示す。本方法論は、あるシーケンスにおいて行われる一連の行為であるように示され、説明されるが、本方法論は、該シーケンスの順序に限定されないことを理解され、認識されたい。例えば、いくつかの行為は、本明細書で説明される順序と異なる順序で起こり得る。加えて、ある行為は、別の行為と同時に起こり得る。さらに、いくつかの場合では、本明細書で説明される方法論を実施するためにすべての行為が必要とされない場合がある。
【0039】
図10は、燃焼前に燃料の混合を増加させるための方法論1000を示す。1010で、ダクトが燃料噴射装置の先端部のオリフィスに近接して位置付けられ、および/または整列される。ダクトは、外壁によって形成される内部ボアを伴う中空管とすることができる。上で説明したように、ダクトの内部ボアを通して燃料を方向付けることによって、ダクトを出る燃料と充填ガスとのより低いピーク比率を有する、局所的に予備混合された混合物の発生を引き起こすように起こる乱流混合を伴って、充填ガスがダクトの中へ吸い込まれる。さらに上で述べたように、いくつかの穴を外壁に形成して、燃焼室からのさらなる充填ガスの吸い込みを促進して、燃料と充填ガスとのより低いピーク比率を有する、局所的に予備混合された混合物の形成を促進することができる。
【0040】
1020で、燃料噴射装置によって燃料を噴射することができ、燃料は、オリフィスを通過して、ダクトのボアの中へ入る。燃料のダクトの通過は、燃料とボアの中へ吸い込まれた充填ガスとの混合を引き起こして、混合レベルが、燃料と充填ガスとのより低いピーク比率を有する、所望の局所的に予備混合された混合物を形成することを可能にする。
【0041】
1030で、ダクトを出る燃料と充填ガスとのより低いピーク比率を有する、局所的に予備混合された混合物は、燃焼エンジンの動作の機能としての点火を受けることができる。局所的に予備混合された混合物の点火は、結果として、従来の燃焼エンジンまたはデバイスにおいて利用される「過濃」混合物の燃焼から形成される望ましくない排気物のより多い量と比較して、煤煙がほとんどまたは全く形成されない。
【0042】
図11は、燃焼室の中へ組み込むための燃料噴射装置に少なくとも1つのダクトを位置付けるための方法論1100を示す。1110で、少なくとも1つのダクトを燃料噴射装置の先端部の開口部に近接して位置付けることができる。一実施形態において、燃料噴射装置は、スリーブに配置して、燃料噴射装置の先端部がスリーブの第1の端部から突出するようにアセンブリを形成することができる。少なくとも1つのダクトは、燃料ジェットが燃料噴射装置のそれぞれの開口部を通過するときに燃料ジェットがダクトのボアを通過するように少なくとも1つのダクトが整列されるように、スリーブの第1の端部に取り付けることができる。少なくとも1つのダクトは、任意の適切な技法、例えば溶接、機械的取り付け、その他によって、第1のスリーブの端部に取り付けることができる。
【0043】
1120で、燃料噴射装置、スリーブ、および少なくとも1つのダクトを備えるアセンブリをシリンダヘッドの開口部に配置して、燃料噴射装置の先端部および少なくとも1つのダクトを、所望に応じて、シリンダヘッドの火炎デッキ面の平面P−Pに対して位置決めすることができ、これは、燃焼室の一部分をさらに形成する。
【0044】
図12は、少なくとも1つのダクトを燃焼室の中へ組み込まれた燃料噴射装置に位置付けるための方法論1200を示す。1210で、燃料噴射装置をシリンダヘッドの開口部に配置して、燃料噴射装置を、所望に応じて、シリンダヘッドの火炎デッキ面の平面P−Pに対して位置決めすることを可能にするができる。シリンダヘッドは、ピストンクラウンおよびシリンダボアの壁と組み合わせて、燃焼室を形成する。
1220で、少なくとも1つのダクトを燃料噴射装置の先端部に、または該先端部に近接して取り付けることができ、よって、各整列されたダクトに対して燃料噴射装置の先端部の各開口部から噴射される燃料の進行方向に対して少なくとも1つのダクトを位置付ける、および/または整列させることができる。
【0045】
図13は、ダクトを利用して燃料噴射装置の先端部の開口部の形成をガイドするための方法論1300を示す。1310で、ダクトが燃料噴射装置の先端部に位置付けられ、該ダクトは、先端部に当接するように位置決めするか、またはダクトの第1の(近位)端部との間に間隙Gを伴って位置決めすることができる。ダクトは、燃料が燃料噴射装置から燃焼室の中へ噴射される方向に従って整列させることができ、例えば、ダクトは、燃焼室の火炎デッキ面の平面P−Pに対してθ°の角度で整列される。
【0046】
1320で、開口部を燃料噴射装置の先端部に形成することができる。上で説明したように、ダクトを利用して、開口部の形成をガイドすることができる。例えば、開口部がEDMによって形成される場合は、ダクトのボアを利用して、開口部が形成される燃料噴射装置の先端部のある地点までEDMの電極をガイドすることができる。その後に、標準的なEDMの手順(複数可)に従って開口部の形成が起こり得る。それに応じて、開口部は、所望の位置に形成され、例えば、ダクトのボアのプロファイルを形成する円の中心に対して中心線上に配置される。また、開口部の壁は、例えば中心線

に対して平行に整列させて、燃料ジェットが、ボア内で中心線上に位置付けられるダクトのボアに沿って噴射されて、燃料と燃焼室から吸い込まれる充填ガスとの混合を最大にすることを可能にすることができる。
【0047】
煤煙白熱光の測定に関して実験を行ったが、該実験は、ダクトを用いて燃料を燃焼室の中へ噴射したときにLLFCが達成されたかどうかを示す。実験では、LLFCが達成され、例えば、煤煙を形成しなかった化学反応が燃焼イベントの全体を通して維持された。OH*化学発光を利用して、火炎のリフトオフ長さ(例えば、燃料噴射装置の開口部(オリフィス)と自己発火ゾーンとの間の軸方向距離)を測定した。OH*は、高温の化学反応がエンジン内部で起こっているときに作り出され、その最上流の場所は、噴射装置から燃料が燃焼し始める場所までの軸方向距離、例えばリフトオフ長さを示す。
【0048】
実験中の条件は、表1に提示される。
【表1】
【0049】
高い煤煙白熱光信号飽和を示す、ベースラインを自由に伝播するジェット(「自由ジェット」)が観察され、ダクトを適所に伴わない状態では、かなりの量の煤煙が生成されたことを示した。次に、ダクテッドジェットの燃焼を調査した。約3mm、約5mm、および約7mmのダクト内径、ならびに約7mm、約14mm、および約21mmのダクト長さを含む、複数のダクト直径およびダクト長を試験した。
【0050】
その後に、自由ジェットについて上で参照したものと同じ撮像条件および類似する動作条件を使用して、このようなダクテッドジェットの実験を行ったが、内径3mm×長さ14mmのテーパーのない鋼製ダクトを、噴射装置から約2mm下流(例えば、間隙G=約2mm)に位置決めした。煤煙白熱光信号は、ほとんど飽和を示さなかったが、これは、生成された煤煙が、もしあったとしても、最小であったことを示す。ダクト後の火炎は、燃焼室を軸方向に横切って移動するときに、ベースラインの実験における自由ジェット火炎と同じ幅まで広がらなかった。中心線

の周りに集中する燃焼火炎が、(上で説明したように)ダクトによって引き起こされた混合の組み合わせによって、さらには、ダクトへの熱伝達機能としてもたらされた。ダクトは、燃焼室の周囲条件よりも低い温度(例えば、950K)で動作していたが、それに応じて、ダクトは、噴射された燃料が自由ジェットの火炎において経験するよりも低い温度環境の中(例えば、ダクトのボア内)を進行することを可能にした。
【0051】
燃料がダクトを流れている間に発生する乱流の程度は、ダクトのボア内の条件についてレイノルズ数(Re)を決定することによって計算した。式1による:
【数1】

式中、ρは、周囲密度であり、Vは、速度であり、Lは、ダクト直径であり、μは、動粘度である。速度Vは、式2によって算出した:
【数2】

式中、pinjは、燃料噴射圧力であり、pambは、周囲圧力であり、

は、燃料の密度である。式1および式2に動作条件を適用することで、少なくとも1×10のレイノルズ数が発生したが、これは、乱流条件がダクト内に存在することを示す。
【0052】
上で述ベたように、ダクト150を通る燃料ジェット185の乱流は、燃料ジェット185と、例えば噴射された燃料ジェット185の高い速度によって確立されるダクト入口の近傍における低い局所的な圧力の結果としてダクト150の外側から(例えば、間隙Gおよび/または穴H〜Hを通して)吸い込まれた充填ガスとの混合を引き起こした。ダクト150内に確立された乱流の混合速度は、ダクト内の速度勾配の関数であると考えることができ、これは、所与の軸方向位置での中心線流体速度を、所与の軸方向位置でのダクト直径で割ったものにおよそ比例するであろう。
【0053】
上で説明してきたことは、1つ以上の実施形態の例を含む。当然、上述した態様を説明する目的で、上記の構造または方法論のあらゆる考えられる修正および代替を説明することはできないが、当業者は、様々な態様の数多くのさらなる修正および置換が可能であることを認識することができる。したがって、説明した実施形態は、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲内に入る、すべてのこのような代替物、修正物、および変形物を包含することを意図している。さらに、詳細な説明または特許請求の範囲のいずれかにおいて、「含む(include)」という用語が使用される限りでは、このような用語は、「備える(comprising)」という用語が、特許請求の範囲において転換語として用いられるときの「備える「comprising」に類似する様式で解釈されるように、包括的であることを意図している。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13