(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6722662
(24)【登録日】2020年6月24日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】関節用スペーサ装置又はその一部を形成するためのモールド
(51)【国際特許分類】
A61F 2/30 20060101AFI20200706BHJP
【FI】
A61F2/30
【請求項の数】25
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-517802(P2017-517802)
(86)(22)【出願日】2015年11月5日
(65)【公表番号】特表2017-533741(P2017-533741A)
(43)【公表日】2017年11月16日
(86)【国際出願番号】IT2015000267
(87)【国際公開番号】WO2016071939
(87)【国際公開日】20160512
【審査請求日】2018年9月14日
(31)【優先権主張番号】RM2014A000645
(32)【優先日】2014年11月6日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】518123187
【氏名又は名称】コッシングトン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アヴァ カペレッティ
【審査官】
安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】
特表2012−507343(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0146342(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0157189(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0256344(US,A1)
【文献】
米国特許第04355428(US,A)
【文献】
特開2008−006280(JP,A)
【文献】
特開2016−187552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節用スペーサ装置又はその一部を形成するためのモールドであって、
・少なくとも1つの第1周囲輪郭(5)が設けられ、これにより前記関節用スペーサ装置又はその一部における少なくとも1つの第1部分を成形するための少なくとも1つの第1成形面(6)が画定される、少なくとも1個の剛性容器本体(2)と、
・少なくとも1つの第2周囲輪郭(7)が設けられ、これにより前記関節用スペーサ装置又はその一部における少なくとも1つの第2部分を成形するための少なくとも1つの第2成形面(8)が画定される、少なくとも1個の剛性カバー(3)とを備え、
前記少なくとも1個の剛性容器本体(2)及び前記少なくとも1個の剛性カバー(3)は、前記周囲輪郭(5,7)にて、互いに解除可能に係合可能であり、これにより前記関節用スペーサ装置又はその一部における外部構造に対応するキャビティ(4)が画定されるモールドにおいて、
前記モールドが、前記少なくとも1個の剛性容器本体(2)上及び前記少なくとも1個の剛性カバー(3)上に脆弱化手段(18)を備え、これにより前記少なくとも1個の剛性容器本体(2)及び前記少なくとも1個の剛性カバー(3)が複数部分に分離可能であり、これにより前記少なくとも1個の剛性容器本体(2)及び前記少なくとも1個の剛性カバー(3)間にて成形された前記少なくとも1個のスペーサ装置又はその少なくとも一部が取り出し可能であり、
前記少なくとも1つの第1成形面(6)が、前記少なくとも1個のスペーサ装置における長手方向半部を成形するために設けられ、前記少なくとも1つの第2成形面(8)が、前記少なくとも1個のスペーサ装置における他方の長手方向半部を成形するために設けられ、前記第1及び第2成形面(6,8)が、それぞれ、支持ベース(12,13)内に形成され、また前記第1及び/又は第2周囲輪郭(5,7)が、それぞれ、前記ベース(12,13)に対して垂直に、前記ベースから離れるように延び、前記第1及び/又は前記第2周囲輪郭(5,7)と、対応する前記ベース(12,13)との間に、傾斜平面を有する少なくとも1つの周壁を備えることを特徴とするモールド。
【請求項2】
関節用スペーサ装置又はその一部を形成するためのモールドであって、
・少なくとも1つの第1周囲輪郭(5)が設けられ、これにより前記関節用スペーサ装置又はその一部における少なくとも1つの第1部分を成形するための少なくとも1つの第1成形面(6)を画定する少なくとも1個の剛性容器本体(2)と、
・少なくとも1つの第2周囲輪郭(7)が設けられ、これにより前記関節用スペーサ装置又はその一部における少なくとも1つの第2部分を成形するための少なくとも1つの第2成形面(8)を画定する少なくとも1個の剛性カバー(3)とを備え、
前記少なくとも1個の剛性容器本体(2)及び前記少なくとも1個の剛性カバー(3)は、前記周囲輪郭(5,7)にて互いに解除可能に係合可能であり、これにより前記関節用スペーサ装置又はその一部における外部構造に対応するキャビティ(4)が画定されるモールドにおいて、
前記モールドが、前記少なくとも1個の剛性容器本体(2)上及び前記少なくとも1個の剛性カバー(3)上に脆弱化手段(18)を備え、これにより前記少なくとも1個の剛性容器本体(2)及び前記少なくとも1個の剛性カバー(3)が複数部分に分離可能であり、前記少なくとも1個の剛性容器本体(2)及び前記少なくとも1個の剛性カバー(3)間にて成形された前記少なくとも1個のスペーサ装置又はその少なくとも一部が取り出し可能であり、
前記少なくとも1個の剛性容器本体(2)が、少なくとも1つの頂部アクセス開口(22)を画定するエッジ(21)を有し、前記第1周囲輪郭(5)が、前記少なくとも1個の剛性容器本体(2)内における肩部として形成されていることを特徴とするモールド。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のモールドであって、前記少なくとも1個の剛性容器本体(2)上及び前記少なくとも1個の剛性カバー(3)上における前記脆弱化手段(18)が、少なくとも1本の薄肉線を備え、これにより前記モールドが、前記少なくとも1本の薄肉線位置にて複数部分に分離可能であるモールド。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載のモールドであって、前記少なくとも1本の薄肉線が、前記少なくとも1個の剛性容器本体(2)上及び前記少なくとも1個の剛性カバー(3)上で横方向及び/又は長手方向に設けられているモールド。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載のモールドであって、前記少なくとも1個の剛性容器本体(2)及び前記少なくとも1個の剛性カバー(3)間に、解除可能な雄型(15)及び雌型(16)の係合手段(14)を備えるモールド。
【請求項6】
請求項5に記載のモールドであって、前記解除可能な係合手段(14)が、前記周囲輪郭(5,7)の所定位置に沿うように設けられ、これにより前記剛性容器本体(2)及び前記剛性カバー(3)が、対応する前記それぞれの周囲輪郭(5,7)にて互いに係合したときに、前記モールドにおける前記雄型係合手段(15)及び前記雌型係合手段(16)間における係合が達成されるモールド。
【請求項7】
請求項1に従属する場合の請求項3〜6の何れか一項に記載のモールドであって、前記成形面(6,8)が、ステム部分(9,9’)と、ヘッド部分(10,10’)と、前記ステム部分(9,9’)及びヘッド部分(10,10’)間における接続部分(11,11’)とを備えるモールド。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項に記載のモールドであって、前記少なくとも1個の剛性容器本体(2)及び前記少なくとも1個の剛性カバー(3)が、前記ベース(12,13)にてヒンジ連結されているモールド。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか一項に記載のモールドであって、前記少なくとも1個の剛性容器本体(2)及び前記少なくとも1個の剛性カバー(3)に、少なくとも1個の横方向補強リブ(17)が設けられ、これにより前記少なくとも1個のモールドが弾性的に変形不可能であるモールド。
【請求項10】
請求項2に従属する場合の請求項3〜6、8及び9の何れか一項に記載のモールドであって、少なくとも1個の剛性カバー(3)が、その使用時における下面(32)と、使用時における上面(33)と、前記剛性容器本体(2)における前記エッジ(21)に係合する周囲エッジ(31)とを有し、前記下面(32)が、前記少なくとも1つの肩部(5)に第2周囲輪郭(7)が当接するよう、前記少なくとも1個の剛性容器本体(2)内に挿入可能であるモールド。
【請求項11】
請求項2に従属する場合の請求項3〜6及び8〜10の何れか一項に記載のモールドであって、前記第2周囲輪郭(7)が、前記少なくとも1個の剛性カバー(3)の使用時における前記下面(32)上に設けられているモールド。
【請求項12】
請求項2に従属する場合の請求項3〜6及び8〜11の何れか一項に記載のモールドであって、前記少なくとも1個の剛性カバー(3)の使用時における前記下面(32)上に、少なくとも1つの周囲凹部(34)が形成され、これにより前記剛性容器本体(2)における前記エッジ(21)が、前記周囲凹部(34)内に係合するよう挿入可能であるモールド。
【請求項13】
請求項2に従属する場合の請求項3〜6及び8〜12の何れか一項に記載のモールドであって、前記少なくとも1個の剛性カバー(3)が、少なくとも1つの貫通孔(35)を備えるモールド。
【請求項14】
請求項2に従属する場合の請求項3〜6及び8〜13の何れか一項に記載のモールドであって、前記肩部(5)が、前記エッジ(21)に対して一定の距離にて、前記少なくとも1個の剛性容器本体(2)内に設けられているモールド。
【請求項15】
請求項2に従属する場合の請求項3〜6及び8〜14の何れか一項に記載のモールドであって、前記少なくとも1個の剛性容器本体(2)が、C字の平面形状を有すると共に、中央部(19a)及び2つの端部(19a,19c)を含む凸状の底壁(19)を備え、前記中央部(19a)が、前記端部(19b,19c)に対して低い浮き彫り構造とされているモールド。
【請求項16】
請求項2に従属する場合の請求項3〜6及び8〜15の何れか一項に記載のモールドであって、前記剛性カバー(3)が、矩形の横断面を有する少なくとも1つの中央部(32a)を備え、前記剛性カバー(3)の使用時に、前記下面(32)から突出すると共に、前記剛性容器本体(2)を指向するモールド。
【請求項17】
請求項2に従属する場合の請求項3〜6及び8〜16の何れか一項に記載のモールドであって、前記肩部(5)が、前記少なくとも1個の剛性容器本体(2)内に、前記エッジ(21)に対して一定ではない距離で設けられているモールド。
【請求項18】
請求項17に記載のモールドであって、前記第1周囲輪郭(5)が、前記C字の遊端と、該遊端とは反対側の中間部分(5c)において、前記剛性容器(2)のエッジ(21)に近接する少なくとも1つの部分(5a,5b)を備えるモールド。
【請求項19】
請求項17又は18に記載のモールドであって、前記第1周囲輪郭(5)が、端部(19a,19b)及び前記C字の遊端間における側壁(20)に隣接する1つの部分(5d)にて、底壁(19)に近接しているモールド。
【請求項20】
請求項2に従属する場合の請求項3〜6及び8〜19の何れか一項に記載のモールドであって、前記少なくとも1個の剛性容器本体(2)が、C字の平面形状を有すると共に、中央部(19a)及び2つの端部(19a,19c)を含む凹状の底壁(19)を有し、前記中央部(19a)が、前記端部(19b,19c)に対して浮き彫り構造とされているモールド。
【請求項21】
請求項2に従属する場合の請求項3〜6及び8〜20の何れか一項に記載のモールドであって、前記少なくとも1個の剛性カバー(3)が、その前記下面(32)に、少なくとも1つの中央部(32a)及び2つの端部を備え、前記中央部(32a)が、前記端部に対して凹んでいるモールド。
【請求項22】
請求項2に従属する場合の請求項3〜6及び8〜21の何れか一項に記載のモールドであって、前記剛性カバー(3)が、前記C字形状の遊端間に、少なくとも1つの把持部(36)を備えるモールド。
【請求項23】
請求項2に従属する場合の請求項3〜6及び8〜22の何れか一項に記載のモールドであって、前記少なくとも1個の剛性容器本体(2)が、少なくとも1個の周囲補強リブ(37)を備え、これにより前記少なくとも1個の剛性容器本体(2)が弾性的に変形不可能であるモールド。
【請求項24】
請求項1〜23の何れか一項に記載のモールドであって、前記少なくとも1個の剛性容器本体(2)及び前記少なくとも1個の剛性カバー(3)間に、解除可能なクランプ式係合手段を付加的に備えるモールド。
【請求項25】
請求項1〜24の何れか一項に記載のモールドによって形成された関節用スペーサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節用スペーサ装置又はその一部を形成するためのモールドと、該モールドで形成されたスペーサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
関節用スペーサ装置のための既知のモールドは、通常、弾性変形可能な材料、例えばシリコーン又は他の適切なエラストマ材料で構成され、かつ抗生物質又は他の治療剤が液状で柔軟な物質相状態にある間に添加された骨セメントを充填してスペーサ装置の完成品を得るものである。
【0003】
抗生物質又は他の治療剤を添加した骨セメントは、上述したモールド内で硬化させた後にモールドから取り出される。これにより得られた関節用スペーサ装置は、関節スペース周りにおける疾患の組織部分を治療するために、患者の関節スペースに移植される。既知のモールドには、幾つかの欠点がある。
【0004】
まず、既知のモールドは、弾性的に変形可能な材料、例えばシリコーンで構成されるため、一定形状を有する最適化されたスペーサ装置を得ることができない。従って、スペーサ装置がモールドから取り出された後、所要形状を有するスペーサ装置を得るために、表面加工及び仕上げ加工を施さなければならない。
【0005】
更に、既知のモールドは、一度の使用後に廃棄することが望ましいが、同一形状のスペーサ装置を得るためのコスト削減策として、適切な洗浄工程を経た後に再使用される場合がある。
【0006】
しかしながら、その洗浄では、製造済みのスペーサ装置の形成に使用された抗生物質や治療剤の残渣が骨セメントと共にモールドから完全に除去されない可能性がある。その結果、ある患者にとってアレルギーの原因とならない抗生物質で形成したスペーサ装置であっても、そのスペーサ装置が、当該患者にとってアレルギーの原因となる抗生物質が添加された骨セメントを以前に使用したモールドで形成されていれば、当該患者のアレルギー反応を引き起こす恐れがある。
【発明の概要】
【0007】
従って、本発明の主たる目的は、関節用スペーサ装置又はその一部を形成するためのモールドを改善することである。
【0008】
本発明の他の目的は、関節用スペーサ装置又はその一部を形成するためのモールドを、既知のモールドとは異なる構成とすることである。
【0009】
本発明の他の目的は、関節用スペーサ装置又はその一部を形成するためのモールドを、再使用できない使い捨て形とすることである。
【0010】
本発明の他の目的は、関節用スペーサ装置又はその一部を形成するためのモールドを使用する場合に、取り出されたスペーサ装置に対して煩雑な仕上げ加工を不要とすることである。
【0011】
本発明の他の目的は、関節用スペーサ装置又はその一部を形成するためのモールドを、安価で容易に構成可能とすることである。
【0012】
本発明の他の目的は、上述したモールドにより形成されたスペーサ装置又はその一部を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様によれば、関節用スペーサ装置又はその一部を形成するための、請求項1に係るモールドが提供される。本発明の好適な実施形態は、従属請求項に記載したとおりである。
【0014】
以下、関節用スペーサ装置又はその一部を形成するための本発明に係るモールドの更なる特徴及び利点につき、添付図面に示す好適な実施形態に関連して詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】股関節用スペーサ装置を形成するための、本発明の第1実施形態に係るモールドの平面図である。
【
図4】開放位置及び閉鎖位置の間の中間位置にある、
図1のモールドの斜視図である。
【
図6】膝関節用スペーサ装置の一部を形成するための、本発明の第2実施形態に係るモールドの平面図である。
【
図8】
図6のモールドにおける容器本体の斜視図である。
【
図9】
図6のモールドにおいて、容器本体及びカバーが互いに係合状態にあって成形面を画定する状態を示す斜視図である。
【
図10】
図6のモールドを容器本体及びカバーの係合状態で示す、別方向からの斜視図である。
【
図11】関節用スペーサ装置の一部を形成するための、本発明の第3実施形態に係るモールドの斜視図である。
【
図15】
図11のモールドにおける容器本体及びカバーが中間位置にあって、容器にカバーの一部が差し込まれた状態を示す斜視図である。
【
図16】
図11のモールドにおけるカバーにより容器本体を閉鎖して成形面を画定する状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
なお、添付図面において、同一部分又は同一要素には、同一参照符号が付されている。
【0017】
本発明に係るモールドは、参照符号1で表されている。
【0018】
本発明に係るモールド1は、弾性的に変形不可能なプラスチック材料、例えばポリエチレンで構成され、好適には、90〜150という高硬度のショアAによって区別される。
【0019】
モールド1は、互いに結合可能な少なくとも1個の剛性容器本体2と、少なくとも1個の剛性カバー3を備える。容器本体2及びカバー3が互いに結合されることにより、関節用スペーサ又はその一部の外部構造に対応するキャビティ4が画定される。
【0020】
より具体的には、剛性容器本体2には、少なくとも1つの第1周囲輪郭5が設けられている。これにより、関節用スペーサ装置における少なくとも1つの第1部分を成形するための少なくとも1つの第1成形面6が周囲輪郭5の内側に画定される。
【0021】
剛性カバー3にも、少なくとも1つの第2周囲輪郭7が設けられている。これにより、関節用スペーサ装置における少なくとも1つの第2部分を成形するための少なくとも1つの第2成形面8が画定される。
【0022】
剛性容器本体2及び剛性カバー3は、各周囲輪郭5,7にて、互いに解除可能に係合するため、キャビティ4が容器本体2及びカバー3間にて画定される。
【0023】
特に、本発明の第1実施形態に係る関節用スペーサ装置を形成するためのモールドを示す
図1〜
図5を参照すれば明らかなように、第1実施形態に係るモールドにおいて、剛性容器本体2における周囲輪郭5により、股関節用スペーサ装置における長手方向半部を成形するための成形面6が画定され、剛性カバー3における周囲輪郭7により、股関節用スペーサ装置における他方の長手方向半部を成形するための第2成形面8が画定される。
【0024】
各成形面6,8は、ステム部分9,9’と、ヘッド部分10, 10’と、ステム部分及びヘッド部分間における接続部分11, 11’を備える。
【0025】
本発明の第1実施形態に係るモールドにおいて、周囲輪郭5,7は、それぞれ、容器本体2及びカバー3へのアクセス開口と重なっている。適切な抗生物質が添加された骨セメントは、アクセス開口を介して、第1成形面6上及び第2成形面8上に充填され、これにより2つの成形面6,8を、対応する周囲輪郭5,7の高さまで覆うことが可能である。
【0026】
本発明に係るモールドの変形例によれば、成形面6,8は、それぞれ、支持ベース12,13内に形成され、また周囲輪郭5,7は、それぞれ、ベース12,13
に対して実質的に垂直に
、前記ベースから離れるように延びている。
【0027】
本発明に係るモールドは、各周囲輪郭5,7と支持ベース12,13との間に、少なくとも1つの傾斜平面状周壁12a,13aを備える。剛性容器本体2と、剛性カバー3における傾斜平面状周壁12a,13aは、各周囲輪郭5,7を補強する機能のみならず、スペーサ装置の形成時に成形面6,8上に過剰に充填された骨セメントの除去を容易にする機能を有する。
【0028】
本発明に係るモールドは、上述したように、骨セメントが成形面6,8上に充填され、骨セメントの部分的な硬化を生じさせる時間が経過した後、剛性容器本体2及び剛性カバー3を互いに係合させることにより、一定の大きさのキャビティ4が画定されるよう構成されている。従って、成形面6,8上に誤って過剰に充填され得る骨セメントは、周囲部分にて横方向に流出すると共に、骨セメントの除去を容易にする傾斜平面状周壁12a,13aにより、キャビティ4内の骨セメントから完全に分離する。これにより、以下に詳述するように、骨セメントが完全に硬化してモールドから取り出された後、股用関節スペーサ装置における周囲エッジ幅の値は最小(周囲輪郭5,7幅の最大値に等しい)であり、従って治療現場での移植前に求められる仕上げ加工は可及的に僅かである。
【0029】
本発明の第1実施形態に係るモールドは、剛性容器本体2及び剛性カバー3間における解除可能な係合に関して、雄型15及び雌型16で構成される解除可能な係合手段14を備える。このような解除可能な係合手段14は、各周囲輪郭5,7の所定位置に沿うように設けられているため、剛性容器本体2及び剛性カバー3が各周囲輪郭5,7にて互いに係合すれば、モールドにおける雄型係合手段15及び雌型係合手段16間における係合も達成される(特に
図4参照)。本発明の第1実施形態に係る各図面に示す変形例によれば、剛性容器本体2及び剛性カバー3は、各ベース12,13にてヒンジ連結されている。
【0030】
更に、各ベース12,13は、上述したように、適切なプラスチック材料で構成された中実体を備えることができる。この場合、各成形面6,8は、空洞を有するよう形成されている。代替的に、各ベース12,13は、その頂部にてベース面12c,13cを画定する側壁12b,13bを備えることができ、またベース面12c,13cから、剛性容器本体2及び剛性カバー3における各周囲輪郭5,7が上方に向けて延びている。図示の実施形態において、ベース12及び/又はベース13は、剛性容器本体2及び/又は剛性カバー3のより下部における側壁間に、1個以上の横方向補強リブ17を備えることができるため、本発明に係るモールド1は、材料を減少させて製造されるにもかかわらず、弾性的に変形不可能である。
【0031】
本発明の第1実施形態に係るモールド1は、剛性容器本体2及び剛性カバー3に脆弱化手段18を備えるため、容器本体及びカバーの両者を複数部分に分離することができる。これにより、モールド1内で成形されたスペーサ装置の取り出しが可能となる。
【0032】
このような脆弱化手段は、図面に概略的に示されているように、少なくとも1本の薄肉線(
図1及び
図2に単なる例示として破線で示す)を備え、その少なくとも1本の薄肉線位置にて、剛性容器本体2及び剛性カバー3が複数部分に分離される。このような薄肉線は、剛性容器本体2上及び剛性カバー3上の両方に、横方向及び/又は長手方向に設けられている。
【0033】
本発明の第2実施形態に係るモールド1(特に
図6〜
図10参照)は、特に膝関節用スペーサ装置の脛骨部分の形成に適しており、少なくとも1個の剛性容器本体2及び少なくとも1個の剛性カバー3を備える。これら剛性容器本体2及び剛性カバー3は、互いに結合されることにより、キャビティ4又は脛骨部分の外部構造に対応するキャビティ4が画定される。
【0034】
より具体的には、本発明に係るモールドにおける剛性容器本体2は、実質的にC字状の平面構造を有すると共に、底壁19を備える。この底壁19から、側壁20が上方に向けて延びている。上側アクセス開口22において、側壁20は、その頂部にエッジ21を有するよう終端している。
【0035】
剛性容器本体2には、少なくとも1つの第1周囲輪郭5が設けられており、これにより関節用スペーサ装置における少なくとも1つの第1部分を成形するための少なくとも1つの第1成形面6が周囲輪郭5の内側に画定される。
【0036】
第1周囲輪郭5は、側壁20にて、エッジ21に対する距離が実質的に一定の内側肩部によって規定されている。
【0037】
剛性カバー3は、やはり実質的にC字状の平面構造を有すると共に、少なくとも1つの第2周囲輪郭7を有する。これにより、関節用スペーサ装置における少なくとも1つの第2部分を成形するための少なくとも1つの第2成形面8が画定される。
【0038】
剛性容器本体2及び剛性カバー3は、各周囲輪郭5,7にて、互いに解除可能に係合するため、キャビティ4が容器本体2及びカバー3間にて画定される。
【0039】
図面に示すとおり、本発明の第2実施形態に係るモールド1における剛性容器本体2の底壁19は、実質的に凸状に形成されており、中央部19a、並びにC字形状の遊端に2つの端部19b,19cを有する。中央部19aは、端部19b,19cに対して低い浮き彫り構造とされている。
【0040】
図6〜
図10に示すモールドにおける剛性カバー3は、その使用時に剛性容器本体2を指向する下面32と、外方を指向する上面(外面)33を有する。剛性カバー3は更に、容器本体2のエッジ21と係合する周囲エッジ31を備える。この点に関連し、カバーの下面32には、周囲凹部34が設けられており、その内側に剛性容器本体2のエッジ21が係合するよう嵌め込まれる。従って、剛性カバー3のエッジ31により、容器本体2のエッジ21が包囲される。
【0041】
本発明の第2実施形態に係るモールドにおける第2周囲輪郭7は、剛性カバー3の下面32に設けられている。下面32の一部は、容器本体自体に嵌め込むことができる。この場合に周囲輪郭7は、周囲輪郭5と当接し、従って容器2の内側肩部とも当接する。
【0042】
本発明の第2実施形態に係るモールドにおける剛性カバー3は、剛性容器本体2内に過剰に充填され得る骨セメントのオーバーフローを可能にする少なくとも1つの貫通孔35も備える。このような貫通孔35により、キャビティ4内における気泡のオーバーフローも容易になる。
【0043】
剛性カバー3の下面32は、中央部32aを備える。この中央部32aは、下面32から離れる側に向けて延びると共に、剛性カバー3の使用時に容器本体2を指向する実質的に矩形の横断面を有する。
【0044】
本発明の第2実施形態に係るモールド1も、剛性容器本体2及び剛性カバー3の両者に脆弱化手段18(
図6に単なる例示として破線で示す)を備えるため、容器本体及びカバーの両者を複数部分に分離することができる。これにより、モールド1内で形成されたスペーサ装置の取り出しが可能となる。
【0045】
このような脆弱化手段は、図面に概略的に示されているように、少なくとも1本の薄肉線を備え、その少なくとも1本の薄肉線位置にて、剛性容器本体2及び剛性カバー3が複数部分に分離される。このような薄肉線は、剛性容器本体2上及び剛性カバー3上の両方に、横方向及び/又は長手方向に設けられている。
【0046】
図11〜
図16は、本発明の第3実施形態に係る関節用スペーサ装置を形成するためのモールドを示し、そのモールドは、特に膝関節用スペーサ装置の一部又は大腿骨部分の形成に適している。第3実施形態に係るモールドは、互いに結合可能な少なくとも1個の剛性容器本体2及び少なくとも1個の剛性カバー3を備える。容器本体2及びカバー3が互いに結合されることにより、第3実施形態に係るモールドによるスペーサ装置の一部又は大腿骨部分の外部構造に対応するキャビティ4(
図16参照)が画定される。
【0047】
より具体的には、本発明の第3実施形態に係るモールドにおける剛性容器本体2は、実質的にC字状の平面構造を有すると共に、底壁19を備える。この底壁19から、側壁20が上方に向けて延びている。上側アクセス開口22において、側壁20は、その頂部にエッジ21を有するよう終端している。
【0048】
本発明の第3実施形態に係るモールド1における容器本体2の底壁19は、実質的に凹状に形成されており、中央部19a、並びにC字形状の遊端に2つの端部19b,19cを有する。中央部19aは、端部19b,19cに対してレリーフ形成されている。
【0049】
剛性容器本体2には、少なくとも1つの第1周囲輪郭5が設けられており、これにより関節用スペーサ装置における少なくとも1つの第1部分を成形するための少なくとも1つの第1成形面6が周囲輪郭5の内側に画定される。
【0050】
第1周囲輪郭5は、剛性容器本体2の側壁20にて、エッジ21に対する距離が一定ではない(従って底壁19に対する距離も一定ではない)内側肩部によって規定されている。
【0051】
より具体的には、容器本体2の周囲輪郭5は、C字形状の遊端(当接部分5a,5b)においては、容器自体のエッジ21に対して近接距離に位置し、当接部分5a,5bの反対側の部分5cにおいては、エッジ21に対して中間距離に位置している。周囲輪郭5は、当接部分5a,5b領域以外の端部19b,19c、並びにC字形状の遊端間における側壁20に隣接する1つの部分(伸長部分5d)にて、容器本体の底壁19に向けて下降するよう延びている。周囲輪郭5は、容器2の側壁20に沿って連続しており、一体的に形成されている。
【0052】
剛性カバー3は、実質的にC字状の平面構造を有すると共に、少なくとも1つの第2周囲輪郭7を有する。これにより、関節用スペーサ装置における少なくとも1つの第2部分を成形するための少なくとも1つの第2成形面8が画定される。
【0053】
剛性容器本体2及び剛性カバー3は、各周囲輪郭5,7にて、互いに解除可能に係合するため、キャビティ4が容器本体2及びカバー3間にて画定される。
【0054】
図11〜
図16に示すモールドにおける剛性カバー3は、その使用時に剛性容器本体2を指向する下面32及び使用時に外方を指向する上面(外面)33を有する。剛性カバー3は更に、容器本体2のエッジ21と係合する周囲エッジ31を備える。この点に関連し、剛性カバー3の下面32には、周囲凹部34が設けられており、その内側に剛性容器本体2のエッジ21が係合するよう嵌め込まれる。従って、剛性カバー3のエッジ31により、容器本体2のエッジ21が包囲される。
【0055】
本発明の第3実施形態に係るモールドにおける第2周囲輪郭7は、剛性カバー3の下面32に設けられている。下面32は、容器本体自体に嵌め込むことができる。この場合に周囲輪郭7は、周囲輪郭5、即ち容器2の内側肩部と当接する。従って、第2周囲輪郭7は、第1周囲輪郭5に対応するよう形成されている。
【0056】
本発明の第3実施形態に係るモールドにおける剛性カバー3は、剛性容器本体2内に過剰に充填され得る骨セメントのオーバーフローを可能にする少なくとも1つの貫通孔(図示せず)も備える。このような貫通孔は、本発明の第2実施形態に関連して上述したように、キャビティ4内における気泡のオーバーフローを容易にするよう機能する。
【0057】
剛性カバー3の下面32は、実質的に凸状に形成され(特に
図14参照)、C字形状の遊端部分に対して凹ませた中央部32aを備える。中央部32aは、剛性カバー3の使用時に、容器本体においてレリーフ形成された中央部19a上に配置される。
【0058】
本発明の第3実施形態に係るモールド1も、剛性容器本体2及び剛性カバー3に脆弱化手段18を備えるため、容器本体及びカバーの両者を複数部分に分離することができる。これにより、モールド1内で形成されたスペーサ装置の取り出しが可能となる。
【0059】
このような脆弱化手段は、破線(例えば
図12参照)によって図面に概略的に示されているように、少なくとも1本の薄肉線を備え、その少なくとも1本の薄肉線位置にて、剛性容器本体2及び剛性カバー3が複数部分に分離される。このような薄肉線は、剛性容器本体2上及び剛性カバー3上の両方に、横方向及び/又は長手方向に設けられている。
【0060】
上述した他の実施形態において、脆弱化手段18は、モールド自体を破壊することなく、モールドから関節用スペーサ装置又はその一部を取り出すことができる位置に設けられている。
【0061】
本発明の第2及び第3実施形態において、剛性カバー3は、C字形状の遊端間に少なくとも1つの把持部36を備えることができる。この把持部36により、剛性容器本体2上への剛性カバー3の取り付けのみならず、剛性カバー3及び剛性容器本体2の分離が容易になる。
【0062】
また、剛性容器本体2及び剛性カバー3の両者は、少なくとも1個の補強周囲リブ37を備えることができるため、容器本体2及びカバー3は弾性的に変形不可能である。リブ37は、任意に備えることができるだけでなく、代替的には、容器本体2又はカバー3の材料を増大させることによりモールド1の剛性を高めてもよい。
【0063】
更に、剛性カバー3によって容器本体2が閉鎖された後、モールドは、解除可能な付加的な係合手段(図示せず)、例えばクランプ手段、クリップ、又はフックにより、容器本体2及びカバー3間にて閉鎖することができる。
【0064】
モールドは、その閉鎖後に、付加的な係合手段の使用の有無に関わらず、モールドにおける任意の表面を使用して載置することができる。即ち、内部の骨セメントの硬化時にモールドを正確な位置に維持しておく必要はない。
【0065】
上述した本発明のモールド1には、以下の特許請求の保護範囲内で、幾つかの修正及び変形を加えることができる。
【0066】
従って、例えば、本発明の第1実施形態に係るモールドにより、金属コア又はより大きな強度を付与可能な他の適切な材料を含む股関節用スペーサ装置を製造する場合、そのモールドは、1個以上のスペーサ要素(図示せず)、例えば、金属コア又は補強要素に取り付けられたスリーブ、即ち金属コア又は補強要素を支持することでき、かつ1つ以上の成形面6,8上における所定位置に配置することのできるスペーサ要素も備える。これにより、関節用スペーサ装置の形成時に、金属コアがモールド内にて適切に保持される。