(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
0.1〜3.0GHzの周波数範囲にわたって少なくとも6.0の実数誘電率を有する、または、0.1〜10.0GHzの周波数範囲にわたって6.0〜18.0の実数誘電率を有する、請求項1に記載のヘキサフェライト組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、高周波数範囲で動作する電気デバイスにおける磁気材料として有用なヘキサフェライト組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ヘキサフェライト組成物は、バリウムおよび/またはストロンチウム、モリブデン、コバルト、ならびに鉄を含み、Z型ヘキサフェライト相を有する。ヘキサフェライトは、化学量論的または非化学量論的でもよい。本明細書に記載されるとおりのバリウム、ストロンチウム、およびモリブデンの置換によって、高周波数範囲にわたる調整可能な透磁率および誘電率ならびに低い誘電および磁気損失の磁気誘電体ヘキサフェライト組成物を提供することが可能である。ヘキサフェライト組成物はまた、マイクロ波アンテナ基板などのデバイスの大量生産のために、および巨大磁気抵抗(GMR)デバイスなどのスピントロニクス用途において、費用効果的にもなり得る。本発明はまた、ヘキサフェライト組成物の製造方法、およびヘキサフェライト組成物を含む物品、デバイス、または部品に関する。
【0006】
本方法およびシステムの他の態様は、以下を含む:
1. 鉄、コバルト、バリウムおよびストロンチウムの一方または両方、ならびにモリブデンを含むヘキサフェライト組成物であって、式
(Ba
zSr
(3−z))Co
(2+x)Mo
xFe
(y−2x)O
41
(式中、
x=0.01〜0.20であり;
y=20〜24であり、
z=0〜3である)
を有する、Z型ヘキサフェライト相を備える、ヘキサフェライト組成物。
【0007】
2. x=0.08〜0.15である、項目1に記載のヘキサフェライト組成物。
3. x=0.10〜0.12である、項目1または2に記載のヘキサフェライト組成物。
【0008】
4. 0.1〜3.0GHzの周波数範囲にわたって少なくとも3.0の実数透磁率を有する、項目1〜3のいずれかに記載のヘキサフェライト組成物。
5. 0.1〜3.0GHzの周波数範囲にわたって少なくとも7.0の実数透磁率を有する、項目1〜4のいずれかに記載のヘキサフェライト組成物。
【0009】
6. 0.1〜3.0GHzの周波数範囲にわたって7.0〜12.0範囲の実数透磁率を有する、項目1〜5のいずれかに記載のヘキサフェライト組成物。
7. z=1.2〜3.0であり、かつヘキサフェライト組成物が、約0.1GHz〜少なくとも1.0GHzの周波数範囲にわたって8.0〜12.0の範囲の実数透磁率を有する、項目1〜6のいずれかに記載のヘキサフェライト組成物。
【0010】
8. z=0〜0.5であり、かつヘキサフェライト組成物が、約0.1GHz〜約3.0GHzの周波数範囲にわたって2.0〜4.0の範囲の実数透磁率を有する、項目1〜7のいずれかに記載のヘキサフェライト組成物。
【0011】
9. 0.1〜3.0GHzの周波数範囲にわたって少なくとも6.0の実数誘電率を有する、項目1〜8のいずれかに記載のヘキサフェライト組成物。
10. 0.1〜3.0GHzの周波数範囲にわたって少なくとも8.0の実数誘電率を有する、項目1〜9のいずれかに記載のヘキサフェライト組成物。
【0012】
11. 0.1〜10.0GHzの周波数範囲にわたって6.0〜18.0の実数誘電率を有する、項目1〜10のいずれかに記載のヘキサフェライト組成物。
12. ヘキサフェライト組成物の実数誘電率が、10%以内でヘキサフェライト組成物の実数透磁率に等しい、項目1〜11のいずれかに記載のヘキサフェライト組成物。
【0013】
13. 3%以内で自由空間のインピーダンスに一致する特性インピーダンスを有する、項目1〜12のいずれかに記載のヘキサフェライト組成物。
14. 0.1〜0.8GHzの周波数で0.02未満の誘電損失正接tanδ
εを有する、項目1〜13のいずれかに記載のヘキサフェライト組成物。
【0014】
15. 0.1〜1.0GHzの周波数で0.16未満の誘電損失正接tanδ
εを有する、項目1〜14のいずれかに記載のヘキサフェライト組成物。
16. 0.4GHzでおおよそ0.1の磁気損失正接tanδ
μを有する、項目1〜15のいずれかに記載のヘキサフェライト組成物。
【0015】
17. 0.1〜0.8GHzの周波数で0.3未満の磁気損失正接tanδ
μを有す
る、項目1〜16のいずれかに記載のヘキサフェライト組成物。
18. 0.1〜3.5GHzの周波数で0.95未満の磁気損失正接tanδ
μを有する、項目1〜17のいずれかに記載のヘキサフェライト組成物。
【0016】
19. 0.1〜1.0GHzの周波数範囲にわたって0.1〜1.0の範囲の磁気損失正接、tanδ
μ、を有する、項目1〜18のいずれかに記載のヘキサフェライト組成物。
【0017】
20. 0.8GHzの周波数で0.001未満の誘電損失係数tanδ
ε/ε’を有する、項目1〜19のいずれかに記載のヘキサフェライト組成物。
21. 0.8GHzの周波数で0.03未満の磁気損失係数tanδ
μ/μ’を有する、項目1〜20のいずれかに記載のヘキサフェライト組成物。
【0018】
22. 項目1〜21のいずれかに記載のヘキサフェライト組成物を含む、物品。
23. アンテナ、フィルタ、インダクタ、サーキュレータ、または位相シフタである、項目22に記載の物品。
【0019】
24. マイクロ波アンテナである、項目22または23に記載の物品。
25. 0.1GHz以上の周波数で動作可能なアンテナである、項目24に記載の物品。
【0020】
26. 0.3GHz以上の周波数で動作可能なアンテナである、項目24または25に記載の物品。
27. 0.1〜1.5GHzで動作可能なアンテナである、項目24に記載の物品。
【0021】
28. 0.3〜1.0GHzで動作可能なアンテナである、項目24または27に記載の物品。
29. 式
(Ba
zSr
(3−z))Co
(2+x)Mo
xFe
(y−2x)O
41
(式中、
x=0.01〜0.20であり;
y=20〜24であり;
z=0〜3である)
を有するZ型ヘキサフェライト相を備える第2のヘキサフェライト組成物をさらに備え、
ここで、ヘキサフェライト組成物および第2のヘキサフェライト組成物中のBaの量およびSrの量が異なる、項目22〜28のいずれかに記載の物品。
【0022】
30. 第2のヘキサフェライト組成物のカットオフ周波数が、ヘキサフェライト組成物のカットオフ周波数よりも高い、項目29に記載の物品。
31. ヘキサフェライト組成物が、約0.1GHz〜少なくとも1.0GHzの周波数範囲にわたって8.0〜12.0の範囲の実数透磁率を有し、かつ第2のヘキサフェライト組成物が、約0.1GHz〜約3.0GHzの周波数範囲にわたって2.0〜4.0の範囲の実数透磁率を有する、項目29または30に記載の物品。
【0023】
32. 巨大磁気抵抗デバイスまたは巨大トンネル磁気抵抗デバイスである、項目22に記載の物品。
33.
(a)Fe、Ba、Co、およびMoを含むヘキサフェライト相前駆体化合物を準備する工程と、
(b)ヘキサフェライト相前駆体化合物を空気中で焼成して、Z型ヘキサフェライト相
を含む材料を形成する工程と
を備える、ヘキサフェライト組成物を製造する方法。
【0024】
34. ヘキサフェライト相前駆体化合物が、Fe、Ba、Co、およびMoの酸化物を含む、項目33に記載の方法。
35. ヘキサフェライト相前駆体化合物が、MoO
2、BaCO
3、Co
3O
4、およびFe
2O
3を含む、項目33または34に記載の方法。
【0025】
36. ヘキサフェライト相前駆体化合物が、0〜0.96重量%のMoO
2、22.10〜22.18重量%のBaCO
3、6.02〜6.59重量%のCo
3O
4、および70.35〜71.8重量%のFe
2O
3を含む、項目33〜35のいずれかに記載の方法。
【0026】
37. 工程(b)において、前駆体化合物が、1000〜1300℃で焼成される、項目33〜36のいずれかに記載の方法。
38.
(c)工程(b)で形成された材料を破砕して、粉末混合物を形成する工程と、
(d)粉末混合物を焼結する工程と
をさらに含む、項目33〜37のいずれかに記載の方法。
【0027】
39. 粉末混合物が、1200〜1280℃で焼結される、項目38に記載の方法。
40. 粉末混合物が、4〜20時間焼結される、項目38または39に記載の方法。
41. 粉末混合物が、酸素雰囲気で焼結される、項目38〜40のいずれかに記載の方法。
【0028】
42. 工程(d)の前に粉末混合物を成形体に成形する工程をさらに備える、項目38〜41のいずれかに記載の方法。
43. 粉末混合物に結合剤を添加する工程をさらに備える、項目38〜42のいずれかに記載の方法。
【0029】
44. 結合剤が、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリエチレングリコール、およびポリ(アルキレンカーボネート)からなる群から選択される、項目43に記載の方法。
【0030】
45. 結合剤が、粉末混合物の8重量%〜12重量%を含むポリビニルアルコールである、項目43または44に記載の方法。
46.
(e)工程(d)で形成された材料を破砕して、粉末混合物を形成する工程と、
(f)工程(e)で形成された粉末混合物をアニールする工程と
をさらに備える、項目38〜45のいずれかに記載の方法。
【0031】
47. 粉末混合物が、800〜1000℃でアニールされる、項目46に記載の方法。
48. 粉末混合物が、9〜20時間アニールされる、項目46または47に記載の方法。
【0032】
本発明は、添付の図面とともに考慮される以下の詳細な説明からより十分に理解される。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、高透磁率および/または低誘電率を保持しながら、磁気および誘電損失がモリブデン(Mo)の使用によって制御され得るCo
2Z型ヘキサフェライト組成物に関する。この組成物は、Co
2Z型ヘキサフェライトにおいて鉄(Fe)に代わるMoの置換を伴う。モリブデンは、化学量論的と非化学量論的の両方のストロンチウム、バリウム、またはストロンチウム−バリウムZ型ヘキサフェライトにおいて、首尾よく磁気損失を低下させ、透磁率を増強させ得る。一部の実施形態において、MoO
2は、Ba
3Co
2Fe
24O
41ヘキサフェライト(本明細書でBaCo
2Zヘキサフェライトと称される)で、および他の実施形態において、Sr
3Co
2Fe
24O
41ヘキサフェライト(本明細書でSrCo
2Zヘキサフェライトと称される)で磁気損失を減少させるために使用され得る。一部の実施形態において、MoO
2は、BaとSrの両方および/または非化学量論量のFeを含むCo
2Zヘキサフェライトにおいて磁気損失を低下させるために使用され得る。
【0035】
より一般的には、六方晶フェライト、すなわち、ヘキサフェライトは、六方晶結晶構造を有し、かつ磁気特性を示す鉄−酸化物セラミック化合物の1つの型である。ヘキサフェライトのいくつかの型またはファミリーが、Z型フェライトBa
3Me
2Fe
24O
41(ここで、Meは、Co、Ni、またはZnなどの2+小カチオンでもよい)を含めて、公知である。Srは、Baに代わって置換され得る。他のヘキサフェライト型には、M型ヘキサフェライト((Ba,Sr)Fe
12O
19)、W型ヘキサフェライト((Ba,Sr)Me
2Fe
16O
27)、Y型ヘキサフェライト((Ba,Sr)
2Me
2Fe
12O
22)、X型ヘキサフェライト((Ba,Sr)
2Me
2Fe
28O
46)、およびU型ヘキサフェライト((Ba,Sr)
4Me
2Fe
36O
60)が含まれる。
【0036】
コバルト置換バリウムZ型(Co
2Z)ヘキサフェライトは、高い強磁性共鳴周波数および透磁率を示し得るが、低い磁気および誘電損失正接(tanδ
μ、tanδ
ε)ならびに損失係数(tanδ
μ/μ、tanδ
ε/ε)のみならず、等しいまたは実質的に等しい値の相対透磁率μおよび相対誘電率εを有する高周波数デバイスを設計することは難題であった。(本明細書で使用される場合、透磁率および誘電率値は、それぞれ、相対透磁率および相対誘電率である)。M型相、Y型相、およびZ型相のヘキサフェライトの概略的な結晶構造図は、
図16A〜
図16Cで例証される。ヘキサフェライト化合物は、R、S、およびT層、またはこれらの層のわずかな変更から作られている。Y型およびZ型ヘキサフェライトのいくつかの一部の特性は、表1に示される。
【0037】
【表1】
表1:Y型およびZ型ヘキサフェライトのいくつかの一部の特性
本ヘキサフェライト組成物は、高周波数用途、特に極超短波(UHF)およびマイクロ波の用途ならびにデバイス、例えば、極超短波およびマイクロ波の範囲で動作可能なアンテナ、フィルタ、インダクタ、およびサーキュレータでの動作に適する。極超短波(UHF)範囲は、0.3GHz〜3GHzである。
【0038】
マイクロ波周波数範囲は、0.3GHz〜300GHzである。ヘキサフェライト組成物は、スピントロニクス用途、例えば、巨大磁気抵抗(GMR)デバイスにおける使用にも適する。
【0039】
本ヘキサフェライト組成物は、Fe、Co、Mo、およびBaとSrの一方または両方を含み、Z型ヘキサフェライト相を有する。ヘキサフェライト組成物は、式:
(Ba
zSr
(3−z))Co
(2+x)Mo
xFe
(y−2x)O
41
(式中、
x=0.01〜0.20であり;
y=20〜24であり;
z=0〜3である)
を有する。
【0040】
一部の実施形態において、x=0.08〜0.15である。他の実施形態において、x=0.10〜0.12である。
一部の実施形態において、本組成物は、高周波数で高い実数透磁率μ’を示す:
f=0.1〜1GHzでの透磁率: μ’>8;
f=0.1〜0.8GHzでの透磁率: μ’>10。
【0041】
追加的に、一部の実施形態において、本組成物は、f=0.1〜1GHzでε’およびμ’(おおよそ8〜9)の高く、等しいまたは実質的に等しい値を有する。本組成物は、低い磁気および誘電損失および損失係数を示す:
f=0.1〜0.8GHzでの損失: tanδ
μ<0.3およびtanδ
ε<0.01.
f=0.8GHzでの損失係数: tanδ
μ/μ’<0.03およびtanδ
ε/ε’<0.001。
【0042】
一部の実施形態において、ヘキサフェライト組成物は、1・2<z<3である、MoドープBaCo
2Zヘキサフェライトである。一部の実施形態において、ヘキサフェライト
組成物は、z=3である、MoドープBaCo
2Zヘキサフェライトである。一部の実施形態において、MoドープBaCo
2Zヘキサフェライトは、約0.1GHz〜約1.0GHzの周波数で8.0〜12.0の範囲の実数透磁率を有し得る。一部の実施形態において、この材料は、0.08<x<0.15のMo含有量で、f=0.3GHzで0.08〜0.15の範囲の磁気損失正接およびf=0.8GHzで0.3〜0.75の範囲の磁気損失正接を有し得る。一部の実施形態において、この材料は、0.01<x<0.20のMo含有量でf=0.1〜10.0GHzの範囲にわたって8〜13の範囲の実数透磁率を有し得る。一部の実施形態において、誘電損失正接は、0.01<x<0.12のMo含有量についてf=0.1〜10.0GHzで0.02未満でもよい。
【0043】
MoドープBaCo
2Zヘキサフェライトは、マイクロ波アンテナなどの用途に使用され得る。この材料は、異なる周波数範囲、例えば、より高い周波数範囲にわたって動作可能な第2のヘキサフェライトとともに使用されて、動作のより大きな周波数範囲を有する単一デバイスを提供し得る。一部の実施形態において、第2のヘキサフェライトは、MoドープSrCo
2Zヘキサフェライトでもよい。
【0044】
一部の実施形態において、ヘキサフェライト組成物は、0.0<z<0.5である、MoドープSrCo
2Zヘキサフェライトである。一部の実施形態において、ヘキサフェライト組成物は、z=0.0である、MoドープSrCo
2Zヘキサフェライトである。一部の実施形態において、MoドープSrCo
2Zヘキサフェライトは、約0.1GHz〜約3.0GHzの周波数範囲にわたって2.0〜4.0の範囲の実数透磁率を有し得る。一部の実施形態において、MoドープSrCo
2Zヘキサフェライトは、f=0.1〜1.0GHzで2.7〜4.1の範囲の実数透磁率を有し得る。一部の実施形態において、実数透磁率は、f=1.0GHzおよびMo含有量0.08<x<0.12で3.6超である。一部の実施形態において、この材料は、f=0.1GHz〜1.0GHzで0.08〜0.3の範囲の磁気損失正接を有し得る。一部の実施形態において、磁気損失正接は、f=1.0GHzおよびMo含有量0.08<x<0.12で0.25未満である。一部の実施形態において、この材料は、0.01<x<0.20のMo含有量でf=0.1〜10.0GHzの範囲にわたって12〜18の範囲の実数誘電率を有し得る。一部の実施形態において、誘電損失正接は、0.08<x<0.12のMo含有量についてf=1.0GHzで0.03未満でもよい。
【0045】
MoドープSrCo
2Zヘキサフェライトは、マイクロ波アンテナなどの用途に使用され得る。この材料は、異なる周波数範囲、例えば、より低い周波数範囲にわたって動作可能な第2のヘキサフェライトとともに使用されて、動作のより大きい周波数範囲を有する単一デバイスを提供し得る。一部の実施形態において、ヘキサフェライトは、MoドープBaCo
2Zでもよい。
【0046】
一部の実施形態において、ヘキサフェライト組成物は、z=1.5である、SrおよびBaを有するMoドープCo
2Zヘキサフェライトである。一部の実施形態において、SrおよびBaを有するMoドープヘキサフェライト組成物は、f=0.8〜1.0GHzで7.5〜9.0の範囲の実数透磁率を有し得る。一部の実施形態において、SrおよびBaを有するMoドープヘキサフェライト組成物は、f=0.8〜1.0GHzで0.7〜0.2の範囲の磁気損失正接を有し得る。一部の実施形態において、SrおよびBaを有するMoドープヘキサフェライト組成物は、f=0.8〜1.0GHzで6.6〜8.7の範囲の実数誘電率を有し得る。一部の実施形態において、SrおよびBaを有するMoドープヘキサフェライト組成物は、f=0.8〜1.0GHzで0.0019〜0.0028の範囲の誘電損失正接を有し得る。
【0047】
一部の実施形態において、Moドープヘキサフェライト組成物は、約0.1GHz〜約
3GHzまたはそれ超の周波数で約2.0〜約12.0の範囲の実数透磁率μ’を有する。一部の実施形態では0.1GHz〜少なくとも3.0GHzの範囲の周波数で、および一部の実施形態ではより高い周波数で、実数誘電率が、少なくとも3.0、少なくとも5.0、少なくとも7.0、少なくとも8.0、少なくとも9.0、少なくとも10.0、少なくとも11.0、少なくとも12.0である。
【0048】
一部の実施形態において、ヘキサフェライト組成物は、約0.1GHz〜約10GHzの周波数で約6.0〜約18.0の範囲の実数誘電率ε’を有する。一部の実施形態では0.1GHz〜少なくとも3.0GHzの範囲の周波数で、および一部の実施形態ではより高い周波数で、実数誘電率が、少なくとも6.0、少なくとも7.0、少なくとも8.0、少なくとも9.0、少なくとも10.0、少なくとも11.0、少なくとも12.0、少なくとも13.0、少なくとも14.0、少なくとも15.0、少なくとも16.0、または少なくとも17.0である。
【0049】
一部の実施形態において、実数誘電率ε’は、10%以内でヘキサフェライト組成物の実数透磁率μ’に等しい。他の実施形態において、実数誘電率および実数透磁率は、15%以内、5%以内、2%以内、または1%以内で等しくなることができる。ヘキサフェライト組成物は、3%以内で自由空間のインピーダンスに一致する特性インピーダンスを有し得る。他の実施形態において、特性インピーダンスは、5%以内、2%以内、または1%以内で自由空間のインピーダンスに一致し得る。
【0050】
一部の実施形態において、磁気損失正接tanδ
μは、約3.0GHz未満の周波数で0.1未満〜約1.0の範囲である。一部の実施形態において、約0.4GHz未満の周波数で、磁気損失正接は、0.3未満、または0.1未満である。一部の実施形態において、約0.8GHz未満の周波数で、磁気損失正接は、0.75未満、0.5未満、または0.3未満である。一部の実施形態において、約0.1GHz未満の周波数で、磁気損失正接は、0.95未満、0.6未満、または0.3未満である。一部の実施形態において、約3.0GHz未満の周波数で、磁気損失正接は、2.4未満、または0.9未満である。
【0051】
一部の実施形態において、ヘキサフェライト組成物は、0.4GHzでおおよそ0.1の磁気損失正接tanδ
μを有する。一部の実施形態において、ヘキサフェライト組成物は、0.1〜0.8GHzの周波数で0.3未満の磁気損失正接tanδ
μを有する。一部の実施形態において、ヘキサフェライト組成物は、0.1〜3.5GHzの周波数で0.95未満の磁気損失正接tanδ
μを有する。一部の実施形態において、ヘキサフェライト組成物は、0.1〜1.0GHzの周波数範囲にわたって0.1〜1.0の範囲の磁気損失正接tanδ
μを有する。
【0052】
誘電損失正接tanδ
εは、一部の実施形態では約1.0GHz未満の周波数で、および他の実施形態では約10.0GHz未満の周波数で0.01未満〜0.16の範囲である。約0.4GHz未満の周波数において、誘電損失正接は、一部の実施形態では0.12未満、他の実施形態では0.09未満、またはさらに他の実施形態では0.02未満である。約1.0GHz未満の周波数において、誘電損失正接は、一部の実施形態では0.10未満、他の実施形態では0.08未満、またはさらに他の実施形態では0.02未満である。約3.0GHz未満の周波数において、誘電損失正接は、一部の実施形態では0.07未満である。
【0053】
一部の実施形態において、ヘキサフェライト組成物は、0.1〜0.8GHzの周波数で0.02未満の誘電損失正接tanδ
εを有する。一部の実施形態において、ヘキサフェライト組成物は、0.1〜1.0GHzの周波数で0.16未満の誘電損失正接tan
δ
εを有する。
【0054】
ヘキサフェライト組成物は、高い周波数範囲内で低い誘電損失係数および磁気損失係数を有する。一部の実施形態において、ヘキサフェライト組成物は、0.8GHzの周波数で0.001未満の誘電損失係数tanδ
ε/εおよび0.03未満の磁気損失係数tanδ
μ/μ’を有する。
【0055】
ヘキサフェライト組成物は、いずれの適当な仕方でも製造され得る。一実施形態において、ヘキサフェライト組成物は、ヘキサフェライト相前駆体化合物を準備することによって製造され得る。適当な前駆体化合物は、例えば、Mo、Baおよび/またはSr、Co、ならびにFeの酸化物または炭酸塩でもよい。前駆体化合物は、小さい粒子サイズに粉砕され、混合され、次いで、空気中で焼成されて、Z型ヘキサフェライト相を含む材料を形成する。材料を小さいサイズに粉砕し、長時間混合することは、より小さい粒子サイズをもたらし、これは、ヘキサフェライト相を形成するために必要な温度およびエネルギーの低下に役立ち得る。粒子サイズは、粉砕、混合、および焼結の連続過程によって減少されて、各段階後のふるい分けにより粒子サイズの減少を確実にし得る。粒子サイズを適当な範囲に減少させるのに必要な時間は、粉末対ボール質量比、ボールおよびシリンダ材料、ならびに使用される溶媒(もしあれば)の関数である。適当な粒子サイズは、0.1μm〜100μmの範囲であり、有効直径で数十ミクロンが典型的である。焼成後に得られる材料は、粉砕されて、粉末混合物を形成し、これは、プレスおよび焼結されて、高密度固形体を形成し得る。得られた材料は、流れる酸素ガス中で粉砕およびアニールされて、磁気特性を改善する相酸素化学量論を増強し得る。
【0056】
一部の実施形態において、MoO
2、BaCO
3、SrCO
3、Co
3O
4、およびFe
2O
3の混合物が与えられる。その量は、所望の名目化学量論で決定された割合で混合され得る。一部の実施形態において、その量は、0〜0.96重量%のMoO
2、22.10〜22.18重量%のBaCO
3、6.02〜6.59重量%のCo
3O
4、および70.35〜71.8重量%のFe
2O
3でもよい。
【0057】
この材料は、溶媒と混合され、ボールミル、または他の適当な混合装置、例えば、限定することなく、ローラミックス、シェーカーミル、または遊星ミル中で、様々なボールおよびシリンダ材料を使用して粉砕され得る。一実施形態において、材料は、4ステーション遊星ボールミルを使用して瑪瑙ジャー中400rpmで3時間混合される。材料は、酸化物および炭酸塩と、混合ボールと、溶媒の名目比:1:(1〜2):(1〜2)重量%で混合される。溶媒は、例えば、および限定することなく、蒸留水もしくは脱イオン水を含めて、水、トルエン、または例えば、および限定することなく、エチルアルコールもしくは試薬等級アルコール(これは、一部の実施形態において、エチルアルコール90%、メチルアルコール5%、およびイソプロピルアルコール5%である)を含めて、アルコールでもよい。一部の実施形態において、使用される溶媒の必要がない。
【0058】
得られた混合物は、対流式オーブン中で200〜300℃で3〜10時間乾燥させ、次いで、適当な形態にプレスしてその密度を増加させ得る。一実施形態において、材料は、ダイ組で100〜300kg(0.1〜0.3トン)/cm
2で2.54センチメートル(1インチ)ディスクに一軸方向にプレスされ得る。使用されるプレスに依存して、より高い圧力が使用され得る。圧力は、焼結後の適当な高密度化を達成するように選択され得る。典型的には、焼結後に90%を超える高密度化が適当である。
【0059】
材料は、空気中で焼成されて、Z型ヘキサフェライト相を形成し得る。一部の実施形態において、材料は、1000〜1300℃で焼成され得る。一部の実施形態において、以下の焼成温度プロファイルが使用され得る。
【0060】
1)周囲温度(例えば、約20℃)で出発し、1200℃±100℃に240分±60分間かけて昇温させる;
2)1200℃±100℃で300分±60分間保持する;
3)炉を、周囲まで、例えば、240分±60分間かけて冷却させる。
【0061】
得られた焼成フェライトは、破砕し、#40篩を通過させて、粒子をサイズによって分けることができる。比較的小さい粒子および溶媒(例えば、上述のとおりの、アルコールまたは水)を、例えば、ボールミルで粉砕し、乾燥させ得る。得られた粉末混合物は、成形体にプレスし、結合剤を添加して、成形体形状の維持を補助し得る。一部の実施形態において、粉末混合物の8〜12重量%の範囲のポリビニルアルコールが結合剤として使用され得る。他の適当な結合剤には、メチルセルロース、ポリエチレングリコール、またはポリ(アルキレンカーボネート)が含まれる。結合剤は、その後の焼結中に焼尽する。
【0062】
成形体は、炉、例えば、管状炉で適当な温度で適当な時間焼結され得る。一部の実施形態において、成形体は、1200〜1280℃で焼結され得る。一部の実施形態において、成形体は、4〜20時間焼結され得る。成形体は、管状炉中の酸素雰囲気中で焼結されて、誘電損失を減少させるのに役立つ。例えば、O
2ガスは、プロセスを通して0.5〜2.0L/分の速度で流入し得る。一部の実施形態において、以下の焼結温度プロファイルが使用され得る:
1)周囲温度(例えば、約20℃)で出発し、800℃±100℃まで180分±60分間かけて昇温させる;
2)1200℃±100℃まで180分±60分間かけて昇温させる;
3)1200℃±100℃で240分±60分間保持する;
4)炉を、周囲温度まで、例えば、480分±60分間かけて冷却させる。
【0063】
焼結ヘキサフェライトは、破砕され、#100篩を通して篩分けされ、溶媒と一緒に粉砕され(上述のとおり)、乾燥され得る。得られた粉末は、O
2ガスの流れの中でアニールされ得る。一部の実施形態において、得られた粉末は、800〜1000℃でアニールされ得る。一部の実施形態において、以下のアニーリング温度プロファイルが使用され得、O
2ガスは、アニーリングプロセス全体の間に0.2〜2.0L/分で流れる:
1)周囲温度(例えば、約20℃)で出発し、400℃±100℃まで80分±10分間かけて昇温させる;
2)900℃±100℃まで200分±10分間かけて昇温させる;
3)900℃±100℃で240分±100分間保持する;
4)炉を、例えば、360分±100分間にわたって周囲に冷却させる。
【0064】
他の実施形態において、粉末混合物は、本明細書で記載される焼結工程前にテープ成形(tape casting)または付加製造などの機構によって形成され得る。
本明細書に記載されるCO
2Zヘキサフェライトの透磁率、誘電率、および共鳴周波数は、Mo、Sr、およびBaイオンによる置換によって調整され得る。したがって、これらのMoドープCo
2Zヘキサフェライトは、0.3〜10GHzで動作するマイクロ波磁気誘電基板材料の望ましい候補である。組成物は、高い動作周波数(0.1〜1GHzおよびそれ超)にわたって高い透磁率(μ’>8)を示し得る。透磁率および誘電率の等しいまたは実質的に等しい値は、μ’およびε’の両方ともが、f=0.8GHzで7超、または一部の実施形態では8超で実現され、インピーダンスの一致をもたらすことができる。本組成物は、例えば、f=0.8GHzでtanδ
μ/μ’=0.03およびtanδ
ε/ε’=0.001の低い磁気および誘電損失係数を有し得る。材料コストは、例えば、Irドープヘキサフェライトと比較して低い。
【0065】
ヘキサフェライト組成物は、高周波数範囲で動作可能な様々なデバイス、例えば、極超短波またはマイクロ波アンテナ、フィルタ、インダクタ、サーキュレータ、または位相シフタのために使用され得る。デバイスは、一部の実施形態では0.1GHz超の周波数で、一部の実施形態では0.3GHz超の周波数で、および一部の実施形態では0.5GHz超の周波数で動作可能となり得る。一部の実施形態において、デバイスは、最大で1.0GHz、最大で1.5GHz、最大で3.0GHz、または最大で10.0GHzの周波数で動作可能となり得る。例えば、一部の実施形態において、デバイスは、0.1〜1.5GHzの周波数範囲にわたって動作可能となり得る。一部の実施形態において、デバイスは、0.3〜1.0GHzの周波数範囲にわたって動作可能となり得る。一部の実施形態において、デバイスは、0.3〜0.5GHzの周波数範囲にわたって動作可能となり得る。一部の実施形態において、デバイスは、0.5〜1.0GHzの周波数範囲で動作可能となり得る。
【0066】
一部のデバイスにおいて、異なるカットオフ周波数を有する、2種またはそれを超えるヘキサフェライト組成物が用いられて、より大きな周波数範囲にわたって動作を与え得る。例えば、アンテナデバイスは、比較的低い周波数範囲、例えば、0.1〜0.5GHzにわたって動作可能なMoドープBaCo
2Zヘキサフェライト、および比較的高い周波数範囲、例えば、0.5超〜1.5GHzにわたって動作可能なMoドープSrCo2Zヘキサフェライトを用いることができる。
【0067】
このようなデバイスは、商業的および軍事的用途、気象レーダ、科学通信、移動体および無線通信、車両、航空機通信、宇宙通信、衛星通信、および監視で使用され得る。
ヘキサフェライト組成物は、スピントロニクス用途、例えば、ディスクドライブ読取りヘッドならびに他のデータ記憶およびメモリデバイスで、ならびに磁気センサなどで使用される巨大磁気抵抗(GMR)デバイスおよび巨大トンネル磁気抵抗(TMR)デバイスで使用され得る。他のスピントロニクス用途には、半導体デバイス、例えば、スピントランジスタおよびスピン発光ダイオードが含まれる。
【実施例1】
【0068】
Ba
3CO
2+xMo
xFe
24−2xO
41(ここで、x=0、0.01、0.02、0.05、0.08、0.10、0.12、0.15および0.20である)の組成を有する多結晶Co
2Zヘキサフェライトを、2工程セラミックプロセスにより調製した。BaCO
3、MoO
2、Co
3O
4、およびFe
2O
3の出発材料を空気中1000℃で6時間焼成し、次いで、破砕し、ボールミル粉砕を行った。90体積%のフェライト微粉末および10体積%のポリビニルアルコール(PVA)結合剤を含む混合物を、7mmの外径、3mmの内径、および約2mmの幅を有するトロイドにプレスした。この試料サイズは、マイクロ波測定のために適切である。酸素雰囲気は誘電損失を減少させるのを役立ち得るので、ヘキサフェライト試料は最終プロセス工程として酸素中1200〜1280℃で4〜20時間焼結した。(酸素化学量論を確立するために典型的に使用されるアニーリング工程は、長い、20時間の熱処理工程のために使用しなかった。)対応する識別コードZM0〜ZM8で列挙される、8つの試料は、Co
2Zヘキサフェライト中の以下に列挙されるとおりのMoの包含量に対応する。
【0069】
【表2】
表2:Ba
3CO
2+xMo
xFe
24−2xO
41ヘキサフェライトの試料コード
結晶学的構造は、CuKα線を使用してθ−2θジオメトリで室温でのX線回折(XRD、Philips X’pert PRO)測定によって決定した。複素誘電率および透磁率スペクトルは、f=0.05〜1.0GHzでトロイド試料のために、7mm HP85050C精密エアラインを備えたAgilent E864A 45MHz〜50Ghz PNAシリーズベクタネットワークアナライザ(VNA)およびAgilent
インピーダンスアナライザ(IA)を使用することによって、0.3〜10GHzの周波数範囲にわたって測定した。形態観察は、走査電子顕微鏡法(SEM)によって走査した。
【0070】
結果
1.Co2Zヘキサフェライトについての透磁率スペクトルのMo依存性
Co
2Zヘキサフェライトの様々なMo(Mo
4+イオン)含有量(x)による実数透磁率の変化を
図1Aに表す。この図は、モリブデン含有量が増加するにつれて(x>0.10)、低周波数での透磁率が低下することを示す。カットオフ周波数(共鳴周波数)は、
図1Bに示すとおりに、xが0.10を超えて増加するにつれて、1.0GHzを超えて増加する。
【0071】
磁気損失正接は、
図2Aおよび
図2Bに示すとおりに、x=0.12について、f<0.4GHzで0.1未満であり、f=1.0GHzで0.5に等しい。特に、tanδ
μは、x=0.12についてf=0.8GHzで0.3未満である。結果は、8.5〜10の高い透磁率を示す。
【0072】
図3Aおよび
図3Bは、比較的低い周波数(0.3GHz)および比較的高い周波数(0.8GHz)でモリブデン含有量の関数として透磁率および磁気損失正接を提示する。モリブデン含有量がx=0.08〜0.15の範囲である場合、実数透磁率は、磁気損失で最小値に対応する、比較的低い周波数f=0.3GHzで一時的低下(dip)を示すことは注目に値する。対照的に、f=0.8GHzでの実数透磁率は、x=0.08〜0.15についてピークに上昇する。透磁率におけるこの増加はまた、比較的低い周波数f=0.3GHzで実測されたものと同様である磁気損失のかなりの低下をもたらす。したがって、磁気損失は、比較的低いまたは比較的高い周波数のいずれでも、xが0.08〜0.15の範囲である場合に極めて低い値を示す。
【0073】
2.Co
2Zヘキサフェライトについて周波数による誘電率スペクトルのMo依存性
実数誘電率は、
図4Aに示すとおりに、0.1〜10.0GHzの周波数範囲にわたってモリブデン含有量によってε’=約7.5〜>12の範囲に調整することができる。最低磁気損失を有する、試料ZM6は、
図4Bに示すとおりに、約8の小さい誘電率を示す。
【0074】
試料ZM5(x=0.10)および試料ZM6(x=0.12)について、誘電損失正接は、
図5Aに示すとおりに、f=0.1〜10.0GHzの広い周波数範囲にわたって低い、<0.02のままである。特に、誘電損失正接は、
図5Bに示すとおりに、試料ZM5および試料ZM6について1.0GHz未満の周波数について0.01未満であった。
【0075】
x>0.05について、誘電損失正接は、
図6に示すとおりに、f=0.8GHzでモリブデン含有量によって低下する。x=0.10〜0.12において、最低誘電損失、f=0.8でtanδ
ε<0.01が測定された。
【0076】
3.f=0.1〜1GHzで高い透磁率ならびに低い磁気および誘電損失を有する試料
試料ZM5および試料ZM6の透磁率、誘電率ならびに磁気および誘電損失正接の周波数依存性を
図7Aおよび
図7Bに表す。f<0.5GHzで、磁気損失正接は0.15未満である一方で、透磁率は10〜11程度に高い。最低磁気損失正接は、試料ZM6についてf=0.8GHzで0.27未満である。インピーダンスの一致は、等しいかまたは実質的に等しい透磁率および誘電率(ε’=9(または8)、μ’=10)に関して得ることができる。
【0077】
4.インピーダンスアナライザによる磁気スペクトルの測定
試料ZM5および試料ZM6の磁気スペクトルを、
図8に示すとおりに、0.1〜1GHzの周波数範囲にわたってインピーダンスアナライザにより測定した。結果は、VNAにより測定されたものとよく一致しており、0.8GHzにおいて、8〜11の透磁率および0.3未満の磁気損失正接を示す。
【0078】
表3は、VNAおよびIAにより測定された主要パラメータを列挙し、0.8GHzで1%未満の測定誤差を示す。
【0079】
【表3】
表3:異なる周波数での試料ZM5および試料ZM6のμ’およびtanδ
μ
5.SEM形態観察
図9は、MoドープCo
2ZヘキサフェライトのSEM形態観察を示し、8〜5:1の大きなアスペクト比の形状の小板であるようにみえる結晶粒の等方性結晶粒配向および一様な結晶粒分布を示す。平均結晶粒サイズは、長軸に沿ってほぼ60〜80μmであると推定される。
【0080】
6.既存の磁気誘電材料との透磁率、誘電率、損失正接および結晶粒サイズの比較
表4は、既存のIrドープCo
2Zヘキサフェライトと、0.8GHzでMoドープおよびIrドープCo
2Zヘキサフェライトについてのε’、μ’、tanδ
εおよびtanδ
μの比較を提示する。MoドープCo
2Zヘキサフェライトは、試料ZM5および試料ZM6である。
【0081】
MoドープCo
2Zヘキサフェライトは、IrドープCo
2Zヘキサフェライトと比較して25〜37%高い透磁率を示す。また、MoドープCo2Zヘキサフェライトは、はるかにより低い誘電損失正接(<0.01)を明らかにするが、IrドープCo
2Zヘキサフェライトは、0.8GHzで0.07の誘電損失正接を有する。MoドープCo
2Zヘキサフェライトは、0.36の磁気損失正接を示し、これは、0.8GHzで0.25〜0.30の、IrドープCo
2Zヘキサフェライトのものと近い。
【0082】
【表4】
表4:0.8GHzでのMoドープおよびIrドープCo
2Zヘキサフェライトについてのε’、μ’、tanδ
εおよびtanδ
μの比較
要約すると、公称組成物Ba
3Co
2+xMo
xFe
24−2xO
41(ここで、x=0〜0.20である)の多結晶ヘキサフェライト組成物を、セラミックプロセスにより調製した。結果は、MoドープCo
2Z多結晶ヘキサフェライトが、0.1〜5.0GHzの広い周波数範囲にわたって既存のIrドープCo
2Zヘキサフェライトのものより優れている透磁率、誘電率ならびに磁気および誘電損失を有することを示す。測定されたマイクロ波誘電および磁気特性は、損失tanδ
εおよび損失tanδ
μが、x=0.10〜0.15を有するモリブデンの添加によって0.8GHzで、それぞれ、75%および60%だけ低下したが、透磁率は、0.8GHzで、10.1に増加し、IrドープCo
2Zヘキサフェライトと比較して、25%だけ増強したことを示した。さらに、MoドープCo
2Zヘキサフェライトはまた、0.1〜1.0GHzの周波数範囲にわたって実数誘電率および透磁率の実質的に等しい値(8〜9)を実証して、特性インピーダンスを自由空間インピーダンスのものと同じ特性インピーダンスにする。注目すべきことに、MoドープCo
2Zヘキサフェライトは、前に報告されたものの中でも最低損失係数(tanδ
ε/ε’<0.00075およびtanδ
μ/μ’<0.029)を生じさせるだけでなく、低い材料コストも有する。MoドープCo
2Zヘキサフェライトの材料コストは、IrドープCo
2Zヘキサフェライトのものの3分の1であることができる。これらの特性は、これらのヘキサフェライトを極超短波(UHF)でのマイクロ波デバイス、例えば、小型アンテナにおける用途に適したものにする。
【実施例2】
【0083】
式(Ba
zSr
(3−z))Co
(2+x)Mo
xFe
(y−2x)O
41の非化学量論組成を有する多結晶ヘキサフェライトを生成させた。表5は、調製および試験したいくつかの試料について非化学量論式を列挙する。
【0084】
【表5】
表5:式設計(非化学量論式)
製造プロセスは、以下の原材料およびそれらの純度:BaCO
3(99.95%)、SrCO
3(99.95%)、Co
3O
4(99.7%)、MoO
2(99%)およびFe
2O
3(99.95%)によって始めた。それぞれの比は、目標公称組成と一致するよう
に選択した。例えば、ヘキサフェライト相前駆体化合物は、0〜0.96重量%のMoO
2、22.10〜22.18重量%のBaCO
3、6.02〜6.59重量%のCo
3O
4、および70.35〜71.8重量%のFe
2O
3を含み得る。
【0085】
材料は、溶媒として試薬アルコールと混合し、4ステーション遊星ボールミルを使用して瑪瑙ジャーおよびボールミキサ中400rpmで3〜10時間粉砕した。この混合物を対流式オーブン中200〜300℃で3〜10時間乾燥させ、ダイ組で100〜300kg(0.1〜0.3T)/cm
2で2.54センチメートル(1インチ)ディスクにプレスした。このディスクを、以下の温度プロファイルに従って空気中で焼成して、Z型ヘキサフェライト相を形成した:1)1200℃まで240分かけて昇温させる;2)1200℃で300分間保持する;3)20℃に240分かけて冷却する。
【0086】
次いで、この材料を破砕し、#40篩を通して篩分けした。篩を通過する比較役小さい粒子を、4ステーション遊星ボールミルを使用して瑪瑙ジャーおよびボールミキサ中400rpmで4〜20時間試薬アルコール溶媒と一緒に粉砕した。この混合物を対流式オーブン中200〜300℃で3〜10時間乾燥させ、0.5〜2.0T/cm
2で2.54センチメートル(1インチ)ディスクにプレスした。このディスクを以下の温度プロファイルに従って焼結させた:1)0.7L/分の流量でO
2ガスとともに800℃まで180分かけて昇温させる;2)1200℃まで180分かけて昇温させる;3)1200℃で240分間保持する;4)O
2ガスを流しながら20℃に480分かけて冷却する。
【0087】
次いで、焼結された材料を破砕し、#100篩を通して篩分けした。篩を通過する破砕材料を、4ステーション遊星ボールミルを使用して瑪瑙ジャーおよびボールミキサ中400rpmで4〜20時間試薬アルコール溶媒と一緒に粉砕した。得られた粉末を対流式オーブン中200〜300℃で3〜10時間乾燥させた。粉末を、全時間O
2ガスを流しながら、以下の温度プロファイルに従ってアニールした:1)400℃まで80分かけて昇温させる;2)900℃に200分かけて昇温させる;3)900℃で240分間保持する;4)20℃に360分かけて冷却する。
【0088】
図10は、このZSFシリーズのヘキサフェライト試料について周波数に対して磁気透磁率を例示する。透磁率μ’は、1.0GHz未満の周波数でそれぞれ、SrBa−Co
2Zヘキサフェライト(試料ZSF3および試料ZSF4)についてほぼ8であり、Ba−Co
2Zヘキサフェライト(試料ZSF1および試料ZSF2)についてほぼ7であった。Srを包含させることにより、透磁率を有意に増強した。磁気損失正接は、0.1〜1.0GHzの周波数範囲にわたって0.03〜0.1の値で低いままであった。Mo−SrBaヘキサフェライト(ZSF3およびZSF4)は、透磁率同様に高いカットオフ周波数(f
r)を有した。
【0089】
図11Aは、試料ZSF1について周波数に対して磁気透磁率および損失を例示する。
図11Bは、試料ZSF1のSEM画像である。透磁率はほぼ7であったが、一方で磁気損失正接は、1.0GHzの周波数まで0.01〜0.10の値で低いままであった。
【0090】
図12Aは、試料ZSF2について周波数に対して磁気透磁率および損失を例示する。
図12Bは、試料ZSF2のSEM画像である。透磁率はほぼ7.5であったが、一方で磁気損失正接は、1.0GHzの周波数まで0.01〜0.09の値で低いままであった。
【0091】
図13Aは、試料ZSF3について周波数に対して磁気透磁率および損失を例示する。
図13Bは、試料ZSF3のSEM画像である。透磁率はほぼ8であったが、一方で磁気損失正接は、1.0GHzの周波数まで0.03〜0.09の値で低いままであった。
【0092】
図14Aは、試料ZSF4について周波数に対して磁気透磁率および損失を例示する。透磁率はほぼ8であったが、一方で磁気損失正接は、1.0GHzの周波数まで0.03〜0.09の値で低いままであった。
【0093】
図15は、試料ZSF1〜試料ZSF4について0.1〜10.0GHzでの誘電スペクトルを例示する。誘電定数範囲は、6.5〜9.0であったが、一方で誘電損失正接は、ZSFシリーズ試料のすべてについて0.1〜10.0GHzの周波数範囲にわたって0.001〜0.01であった。
【0094】
表6は、2つの異なる周波数0.8GHzおよび1.0GHzで4つの試料について実数誘電率、実数透磁率、損失正接tanδ
ε、および損失正接tanδ
μの要約を提示する。
【0095】
【表6】
表6:ZSFシリーズ試料の要約
最良の試料は、ZSF4であった。それは、1.0GHzで高い透磁率、ε’=8.67、および低い損失正接、tanδ
μ=0.091、ならびに高いカットオフ周波数、f
r=2.40GHzを示した。
【実施例3】
【0096】
Sr
3CO
2+xMo
xFe
24−2xO
41(ここで、x=0、0.02、0.05、0.08、0.10、0.12、0.15および0.20である)の組成を有する多結晶Co
2Zヘキサフェライトを、SrCO
3、MoO
2、Co
3O
4、およびFe
2O
3を出発材料として用いて、実施例1で記載した2工程セラミックプロセスにより調製した。結果
1.磁気透磁率スペクトルおよび磁気損失
透磁率スペクトルを0.1〜10.0GHzの周波数にわたって測定した。透磁率は、
図16に見られるとおりに、x=0.10のMo含有量を除いて、Mo含有量によって低周波数(0.1GHz)で3.8から3.3への低下を示す。Mo含有量は、
図17に見られるとおりに、5.0GHzを超えるより高い周波数への損失正接ピークのシフトをもたらす。Mo含有量x=0.10は、
図17に見られるとおりに、0.4〜1.5GHzの周波数範囲で最小の損失正接をもたらす。すなわち、x=0.20についての損失正接
は、0.4GHzで約0.1および1.5GHzで0.4であり、これは、MoドープSrCo
2Zフェライトの中で最低の損失である。
【0097】
図18は、1.0GHzで測定されたMoドープSrCo
2Zヘキサフェライトについての透磁率および磁気損失正接の結果を例示する。x=0.10のMo含有量を有する試料は、15%の透磁率の増加および15%の磁気損失の低下を提示することがわかる。これらの結果は、BaCo
2Zヘキサフェライトで測定された結果と同様である。SrCo
2Zヘキサフェライト中最適化Mo濃度は、BaCo
2Zヘキサフェライトのものと同等であることに注目すべきである。
【0098】
2.誘電率スペクトルおよび誘電損失
誘電率は、
図19に見られるとおりに、基本的にSrCo
2Zヘキサフェライト中のMo含有量に比例し、x=0.02についてわずかに低下する。誘電損失正接は、
図20に見られるとおりに、Mo含有量の増加(x=0からx=0.20)とともに、0.03から0.08に増加する。
【0099】
図21は、1.0GHzで測定された誘電率および誘電損失を表し、x=0.10で誘電損失の一時的低下を示す。
3.磁気および誘電損失
MoドープSrCo
2Zヘキサフェライトの最低の磁気および誘電損失は、x=0.10のMo含有量で示された。このMo含有量で、f=1.0GHzにおいて:
μ’=3.7
tanδ
μ=0.24
ε’=14.2;および
tanδ
ε=0.03
である。
【0100】
要約すると、MoO
2は、SrCo
2Zヘキサフェライトの磁気損失を減少させるために適当に使用することができる。
本明細書で使用される場合、「から本質的になる(consiting essentially of)」は、特許請求の範囲の基本的および新規な特性に著しく影響を与えない材料または工程の包含を可能にする。特に組成物の成分の記載またはデバイスの素子の記載において、用語「含む(comprising)」の本明細書でのいずれの記述も、「から本質的になる」または「からなる(consiting of)」と交換され得る。
【0101】
本明細書に記載される実施形態の様々な特徴は、様々な仕方で組み合わせられ得る。例えば、一実施形態とともに記載される特徴は、その実施形態とともに明示的に記載されていない場合であっても、別の実施形態に含まれてもよい。
【0102】
本発明は、ある特定の好ましい実施形態とともに記載されてきた。本発明は、示されたまたは記載された、構成、操作、まさにその材料または実施形態のまさにその詳細に限定されないこと、ならびに本明細書で開示された実施形態に対する様々な変更、等価物の置換、組成物への変化、および他の変形は、当業者に明らかであることが理解されるべきである。
【0103】
本出願は、「UHF、LバンドおよびSバンド用途のための低コスト、低損失および高透磁率のMO−CO2Zフェライト(Low Cost,Low Loss and High Permeability MO−CO2Z Ferrites For UHF,L−Band and S−Band Applications)」という名称の
、2015年1月30日に出願された米国仮出願第62/110,025号の35§119(e)の下での優先権を主張し、この開示は、本明細書に援用される。