(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
半水石膏100重量部、シリコーンオイル0.04から4重量部、及び炭酸塩岩鉱物触媒0.2から1.5重量部を含む水系石膏スラリーを形成し、これを硬化させることを含み、
前記炭酸塩岩鉱物触媒は軽焼ドロマイトである防水ボードの製造方法。
シリコーンオイルまたはその水系エマルジョンまたは水分散液と、炭酸塩岩鉱物触媒及び半水石膏を含む水系石膏スラリーを形成する段階、及び、前記石膏スラリーを成形して硬化させる段階を含む、請求項6に記載の防水ボードの製造方法。
親油性単量体がスチレンであり、親水性単量体がヒドロキシ基(-OH)を一つ以上含む重合性単量体、ハロゲン化スチレン、マレイン酸またはその無水物、アクリル単量体またはその誘導体、及びメタクリル単量体またはその誘導体から選択される、請求項11に記載の防水ボード。
乳化剤が、スチレンとアリルアルコールの共重合体、スチレンとエチレングリコールの共重合体、スチレンとクロロスチレンの共重合体、スチレンとアクリロニトリルの共重合体、スチレンとマレイン酸またはその無水物との共重合体、クメンで仕上げ処理されたスチレンとマレイン酸またはその無水物との共重合体、スチレンとマレイン酸またはその無水物との共重合体の加水分解形態、スチレンとマレイン酸またはその無水物との共重合体のスルホン化形態、スチレンとマレイン酸またはその無水物との共重合体のエステル化形態、スチレンとアクリル酸との共重合体、スチレンとメタクリル酸との共重合体、及びこれらの塩形態からなる群より選択される一つ以上である、請求項8に記載の防水ボード。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下で、本発明を詳しく説明する。
本発明が提供する防水ボードは、半水石膏、シリコーンオイル、及び軽焼ドロマイトを触媒として含む水系石膏スラリーの硬化物を含む。前記石膏スラリーの硬化物は、ボードのコアとして用いられてよい。
【0017】
前記半水石膏は、天然の二水石膏あるいは脱硫二水石膏を焼成し、結晶水を一部取り除いて得られる。
【0018】
本発明に係る防水ボードにおいて、前記石膏スラリー内の半水石膏の含量は、スラリーの100重量%を基準に、例えば、40から80重量%であってよく、より具体的には50から70重量%であってよい。さらに、本発明の石膏スラリー内の水の含量は、スラリーの100重量%を基準に、例えば、20から60重量%であってよく、より具体的には30から50重量%であってよい。
【0019】
前記シリコーンオイルは防水機能の付与のために用いられるものであって、線形または環状の、少なくとも部分的に水素改質されたポリシロキサンを含むことができる。このようなポリシロキサンは、塩基性環境で重合されて高度に架橋されたシロキサン重合体を形成することができ、その重合体は高い防水性を表す。より具体的に、前記ポリシロキサンは、下記式で表される構造を含むことができる。
【0021】
前記構造式で、R
1は、独立して水素または非水素置換基(例えば、非置換またはハロゲンで置換されたアルキル、シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリール)であり、ただし、複数のR
1のうち少なくとも一つが、より具体的には10%以上(例えば、10から100%)が水素であり;R
2は、前述した非水素置換基であり;nは1から200の整数である。
【0022】
前記で、例えば、アルキルの炭素数は1から4であってよく、シクロアルキルの炭素数は5から10であってよく、アリールの炭素数は6から12であってよく、ヘテロアリールの全環原子数は5から12であってよく、さらに、N、O及びSから選択されるヘテロ原子を一つ以上有することができる。前記ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素であってよい。
【0023】
さらに具体的に、前記ポリシロキサンは、下記式で表される構造を含むことができる。
【0025】
前記構造式で、x及びyは、これらがそれぞれ指す構造単位のモル分率であってx+y=1であり、xは0.1から1であり、yは0から0.9である。
【0026】
本発明の好ましい一具体例によれば、前記シリコーンオイルとしてメチルヒドロゲンポリシロキサン(methylhydrogenpolysiloxane、MHP)を含むシリコーンオイルを用いる。
【0027】
本発明に係る防水ボードにおいて、前記石膏スラリー内のシリコーンオイルの含量は、半水石膏の100重量部を基準に、例えば、0.04から4重量部であってよく、より具体的には0.1から1.5重量部であってよい。石膏スラリー内のシリコーンオイルの含量が前記範囲より少なすぎると、目標とする防水性が発現しないという問題点があり、逆に多すぎると、シリコーンオイルの特有の消泡性によって石膏の使用量が多くなり、スラリーの粘性が増大してミキサーの内部で固まるという問題点があり得る。
【0028】
本発明において、前記シリコーンオイルはそのものをボードの製造工程に投入することができ、他には、界面活性剤及び/または高せん断回転反応器や高圧均質化器を用いて水にエマルジョン化させたエマルジョンまたは水分散液でボードの製造工程に投入することもできる。
【0029】
石膏ボードに防水剤として適用されるシリコーンオイルは、通常、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のオキシドまたはヒドロキシド形態の塩基性触媒(水溶液下で塩基性を表す触媒)下で加水分解反応が起こり、線形ポリシロキサンが分枝形ポリシロキサンに変わることによって防水性能を与えることになる。
【0030】
しかし、塩基性触媒の使用時にpHが上昇して半水石膏の水和過程を遅らせることがあり、シリコーンオイルは、低い表面張力と、加水分解反応の際に副産物として発生する水素ガスとによって石膏ボードのスラリー中に生成された気泡を破壊し、石膏ボードの軽量化に困難さがあるか、石膏ボードのコアに割れ(クラック)を引き起こし得る。
【0031】
したがって、本発明では、防水ボードの製造において、従来のセメント、CaO、死焼/か焼ドロマイト、Ca(OH)
2、NaOHなどを用いることなく、特定的に炭酸塩岩鉱物成分の触媒を用いることによってこのような問題を解決した。
【0032】
本発明の触媒として用いる炭酸塩岩鉱物は、アラゴナイト(Aragonite)、方解石(Calcite)、ドロマイト(Dolomite)などであって、これらに限定されるものではなく、好ましくは、軽焼ドロマイトを用いることができる。
【0033】
軽焼ドロマイトは、このような従来の触媒、例えば、死焼(1700から1800℃でか焼)または中焼(1000から1500℃でか焼)ドロマイトに比べて高い触媒活性を有しながらも急激な触媒活性を抑制し、シリコーンオイルからの水素の発生による石膏ボードのクラックの発生を防止し、半水石膏の水和反応時間を遅らせない。さらに、石膏ボードの生産のために投入される添加剤等との副反応を引き起こさないため、石膏の生産工程に適用することが容易であるという利点がある。特に、石膏の成形時に水の使用量を低減するために用いるPNS(poly-naphthalene sulfonate)系列の流動化剤は、シロキサンと同時に用いる時に石膏の密度を高くし、気泡の大きさを小さくする問題を引き起こすが、軽焼ドロマイトを用いてシロキサンの含量を低減すると、シロキサンによって消泡が発生する問題を最小化することができる。
【0034】
前記軽焼ドロマイトは、白雲石(ドロマイト)を、例えば、700から1000℃の温度でか焼したものであって、その組成は大凡次の通りである。
【0036】
本発明の防水ボードにおいて、前記石膏スラリー中の炭酸塩岩鉱物触媒の含量は、半水石膏100重量部を基準に、例えば、0.2から1.5重量部であってよく、より具体的には0.3から1.0重量部であってよい。石膏スラリー中の触媒の含量が前記範囲より少なすぎると、シリコーンオイルが重合できないため十分な防水性を示すことができないという問題点があり、逆にスラリー全体のpHが上昇して硬度が低くなるという問題点があり得る。
【0037】
特に限定しないが、本発明に用いられる炭酸塩岩鉱物触媒は、平均粒度が50から4000μm、好ましくは500から2500μmであってよい。鉱物触媒の平均粒度が小さすぎる場合、工程上で移送が難しいか正確な定量が困難になるという問題点があり、平均粒度が4000μmより大きくなると、原料である半水石膏の粒度に比べて大きすぎるため、石膏製品内に均一に広がることができず、製品が不均質になるという問題点がある。
【0038】
また、本発明の目的を達成することができる範囲内で、前記石膏スラリーは、炭酸塩岩鉱物触媒以外の塩基性触媒をさらに含むこともできる。さらに使用可能な塩基性触媒には、石灰石、消石灰、セメント、MgO、CaO、CaMgOなどを挙げることができ、これらを単独でまたは組み合わせてさらに用いることができる。
【0039】
前記石膏スラリーは、界面活性剤をさらに含むこともできる。前記界面活性剤には、例えば、陰イオン性界面活性剤(例えば、サルフェート基を含む陰イオン性界面活性剤)、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤(例えば、ベタイン(betaine))、アルキルポリグルコシド、アルキルアルコール(例えば、C8からC20アルキルアルコール)などが単独でまたは組み合わせられて用いられてよいが、これらに制限されない。PNS(poly-naphthalene sulfonate)系列の流動化剤も界面活性剤として用いられてよい。
【0040】
前記石膏スラリーに界面活性剤が含まれる場合、その含量は、シリコーンオイル100重量部を基準に、例えば、2から60重量部であってよく、より具体的には5から40重量部であってよい。界面活性剤の含量が少なすぎると、その使用効果が十分でないという問題点があり、逆に多すぎると、石膏スラリーの粘性が増大して流動性が低下し、ミキサーでミキシングがよくできないという問題点があり得る。
【0041】
本発明の具体的な他の側面によれば、半水石膏、シリコーンオイル、及び炭酸塩岩鉱物を触媒として含む水系石膏スラリーを形成し、これを硬化させることを含む防水ボードの製造方法が提供される。
【0042】
これに限定されるものではないが、本発明の一具体例によれば、本発明に係る防水ボードは、シリコーンオイルまたはその水系エマルジョンまたは水分散液と、炭酸塩岩鉱物触媒及び半水石膏を含む水系石膏スラリーを形成する段階、及び、前記石膏スラリーを成形して硬化させる段階を含む方法によって製造されてよい。
【0043】
一般に気孔を有する軽量の石膏ボードの製造のためには、陰イオン性界面活性剤を含んだ水溶液に高圧のエアを投入してプリフォーム(pre-foam)を製造し、これを半水石膏及び計量された工程水と混合して成形加工する過程を経る。軽量石膏ボードの場合、大きい気孔と小さい気孔の適した組み合わせが必要であるところ、これは、石膏ボードの製造の際に大きい気孔が主に石膏ボードの中央部に、そして小さい気孔が主に石膏ボードの上下両面に位置することにより、石膏ボードの裏面紙接着性、硬度、そして乾燥条件などで有利であるためである。よって、適宜大きい気泡を維持するのが重要である。
【0044】
シリコーンオイルの場合は、パラフィンワックスに比べて少ない量でも優れた防水性能を示すが、一方で、消泡剤として働いて石膏スラリー内の気泡等を破裂して石膏の密度を高める。このようなシリコーンによる気泡の減少を補うために軽量化剤を過剰量で投入する場合、気泡の大きさが小さくなってスラリーの粘度が上昇するため、石膏ボードの成形に困難さを経験することになる。さらに、既存の塩基性触媒の使用時に反応速度が速すぎるため、反応副産物である水素分子の急激な発生によって石膏製品に割れ目(クラッキング)が発生し得る。
【0045】
本発明では、防水剤としてシリコーンオイルを用いることにより、パラフィンワックスに比べて少量の防水剤の使用でも優れた防水性能を得るとともに、炭酸塩岩鉱物を触媒として用いることにより、適した反応速度を示すことができるようにして石膏ボードのクラッキングを防止する。
【0046】
一具体例で、本発明に係る防水ボードは、防水用シリコーンエマルジョンを用いて製造することができる。
【0047】
本発明に係る防水用シリコーンエマルジョンは、シリコーンオイル及び乳化剤を含む。
【0048】
前記シリコーンオイルは防水機能を与えるために用いられるものであって、線形または環状の、少なくとも部分的に水素改質されたポリシロキサンを含むことができる。このようなポリシロキサンは、塩基性環境で重合されて高度に架橋されたシロキサン重合体を形成することができ、その重合体は高い防水性を表す。より具体的に、前記ポリシロキサンは、下記式で表される構造を含むことができる。
【0050】
前記構造式で、R
1は、独立して水素または非水素置換基(例えば、非置換またはハロゲンで置換されたアルキル、シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリール)であり、ただし、複数のR
1のうち少なくとも一つが、より具体的には10%以上(例えば、10から100%)が水素であり;R
2は、前述の非水素置換基であり;nは1から200の整数である。
【0051】
前記で、例えば、アルキルの炭素数は1から4であってよく、シクロアルキルの炭素数は5から10であってよく、アリールの炭素数は6から12であってよく、ヘテロアリールの全環原子数は5から12であってよく、さらに、N、O及びSから選択されるヘテロ原子を一つ以上有することができる。前記ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素であってよい。
【0052】
さらに具体的に、前記ポリシロキサンは、下記式で表される構造を含むことができる。
【0054】
前記構造式で、x及びyは、これらがそれぞれ指す構造単位のモル分率であってx+y=1であり、xは0.1から1であり、yは0から0.9である。
【0055】
本発明の好ましい一具体例によれば、前記シリコーンオイルとしてメチルヒドロゲンポリシロキサン(methylhydrogenpolysiloxane、MHP)を含むシリコーンオイルを用い、シリコーンエマルジョンの100重量部を基準に0.1から60重量部であってよい。
【0056】
前記乳化剤は、シリコーンオイルの水溶液分散性を高めてその消泡性を抑制するために用いられるものであって、親油性単量体と親水性単量体の共重合体が用いられてよい。例えば、前記親油性単量体は、ベンゼン環を1〜3個有する芳香族またはアリールベンゼン(aryl benzene)またはアリールナフタレン(aryl naphthalene)であってよく、代表的には、ベンゼン、トルエンまたはナフタレンが用いられてよく、より好ましくはスチレン(Styrene)が用いられる。前記親水性単量体は、ヒドロキシ基(-OH)を一つ以上含む重合性単量体(例えば、アルコール、グリコールなど)、ハロゲン化スチレン(halo-styrene)、マレイン酸(maleic acid)またはその無水物、アクリル単量体またはその誘導体、及びメタクリル単量体またはその誘導体から選択されるものであってよい。さらに、前記親油性単量体と親水性単量体の共重合体の塩形態(例えば、Na塩、K塩、アンモニウム塩など)、加水分解形態、スルホン化形態、及び部分または全体がエステル化された形態も乳化剤として用いられてよい。
【0057】
より具体的に、前記親油性単量体と親水性単量体の共重合体は、スチレンとアリルアルコールの共重合体、スチレンとエチレングリコールの共重合体、スチレンとクロロスチレンの共重合体、スチレンとアクリロニトリルの共重合体、スチレンとマレイン酸またはその無水物との共重合体(SMA共重合体)、クメン(cumene)で仕上げ処理されたスチレンとマレイン酸またはその無水物との共重合体、スチレンとマレイン酸またはその無水物との共重合体の加水分解形態、スチレンとマレイン酸またはその無水物との共重合体のスルホン化形態、スチレンとマレイン酸またはその無水物との共重合体のエステル化形態、スチレンとアクリル酸との共重合体、スチレンとメタクリル酸との共重合体、及びこれらの塩形態からなる群より選択される一つ以上であってよい。スチレンとマレイン酸またはその無水物との共重合体として商業的に入手可能な製品には、Clay Vally社のSMA1000、SMA2000、SMA3000、SMA4000、SMA17352などを挙げることができる。
【0058】
前記親油性単量体と親水性単量体の共重合体において、親油性単量体:親水性単量体のモル比は、例えば、1:1から8:1であってよく、より具体的には1:1から4:1であってよい。さらに、前記親油性単量体と親水性単量体の共重合体を水溶液状態にするためには、NaOH、KOH、アンモニア水などの塩基性溶液を用いて、この共重合体を塩形態にして溶かすことができる。このとき、水溶液のpHが高すぎると、シリコーンオイル内の水素原子の反応性に影響を与えることがあり得るため、前記共重合体水溶液のpHは9から12の間に維持することが好ましい。
【0059】
前記親油性単量体と親水性単量体の共重合体は、シリコーンオイル高分子と物理的に結合してミセルを形成することにより、親油性のシリコーンオイルが水に均一に分散できるようにし、その結果、シリコーンオイルが重合時に防水製品(例えば、石膏)の表面によく分散され、少ないシリコーンの使用量でも高い防水性能を表すようにする。さらに、シリコーンオイルの消泡性を抑制して製品の内部に適宜大きい大きさの気泡が形成されるようにすることにより、軽量化された防水製品の生産を可能とする。
【0060】
本発明のシリコーンエマルジョン中の乳化剤の含量は、シリコーンオイルの100重量部を基準に、例えば、0.002から10重量部であってよく、より具体的には0.3から5重量部であってよい。シリコーンエマルジョン中の乳化剤の含量が前記範囲より少なすぎると、臨界ミセル濃度(CMC)に達することができないため、エマルジョンが製造できないという問題点があり、逆に多すぎると、シリコーンオイルの消泡性が改善されず、シリコーンオイルの変質が早まるという問題点があり得る。
【0061】
本発明のシリコーンエマルジョンは、それが適用された製品の密度及び気泡を改善するための目的で、気泡剤をさらに含むことができる。前記気泡剤には発泡用界面活性剤が用いられてよく、より具体的には、陰イオン性界面活性剤(例えば、サルフェート基を含む陰イオン性界面活性剤)、両性界面活性剤(例えば、ベタイン(betaine))、アルキルポリグルコシド、アルキルアルコール(例えば、C8からC20アルキルアルコール)などが単独でまたは組み合わせられて用いられてよいが、これらに制限されない。
【0062】
本発明のシリコーンエマルジョンに気泡剤が含まれる場合、その含量は、シリコーンオイルの100重量部を基準に、例えば、2から60重量部であってよく、より具体的には5から40重量部であってよい。シリコーンエマルジョン内の気泡剤の含量が前記範囲より少なすぎると、シリコーンオイルの消泡性により気泡が消えて密度が上昇するという問題点があり、逆に多すぎると、シリコーンエマルジョンが適用された製品のスラリー粘性が増加してスラリーの流動性が低下するので、ミキサーでミキシングがよくできないという問題点があり得る。
【0063】
本発明に係るシリコーンエマルジョンは、少ないシリコーンオイルの使用量でも優れた防水性能を提供することができ、これを適用した製品の軽量化にも寄与することができるので、多様な防水製品に適用可能であり、例えば、防水ボードなどに適用可能であるが、これに限定されるものではない。
【0064】
したがって、本発明の具体的な一側面によって提供される防水ボードは、半水石膏、シリコーンオイル、乳化剤及び触媒を含む水系石膏スラリーの硬化物を含む。前記石膏スラリーの硬化物は、ボードのコアとして用いられてよい。
【0065】
前記半水石膏は、天然の二水石膏あるいは脱硫二水石膏を焼成し、結晶水を一部取り除いて得られる。
【0066】
本発明に係る防水ボードにおいて、前記石膏スラリー中の半水石膏の含量は、スラリーの100重量%を基準に、例えば、40から80重量%であってよく、より具体的には50から70重量%であってよい。さらに、本発明の石膏スラリー中の水の含量は、スラリー100重量%を基準に、例えば、20から60重量%であってよく、より具体的には30から50重量%であってよい。
【0067】
本発明の防水ボードに含まれる前記シリコーンエマルジョンについては前記で説明した通りであり、前記シリコーンエマルジョンはシリコーンオイルと乳化剤を含む。さらに、前記石膏スラリーが気泡剤をさらに含むことができることに対しても前記で説明した通りである。
【0068】
本発明に係る防水ボードにおいて、前記石膏スラリー中のシリコーンエマルジョンの含量は、半水石膏100重量部を基準に0.0002から4重量部であってよく、より具体的に0.001から1.5重量部であってよい。石膏スラリー内のシリコーンエマルジョンの含量が前記範囲より少なすぎると、目標とする防水性が表れないという問題点があり、逆に多すぎると、シリコーンエマルジョンであるにもかかわらず、シリコーンオイル特有の消泡性によって石膏の使用量が多くなり、スラリーの粘性が増大してミキサーの内部で固まるという問題点があり得る。
【0069】
前記触媒は、シリコーンオイルに存在する活性水素と反応し、製品の表面にシロキサン重合体を形成する役割を担うものであって、塩基性触媒を用いることができる。例えば、前記触媒として、石灰石、消石灰、セメント、MgO、CaO、CaMgO、白雲石(ドロマイト)などを単独でまたは組み合わせて用いることができ、より具体的には、軽焼MgO、軽焼CaMgO、軽焼白雲石などを単独でまたは組み合わせて用いることができるが、これらに制限されない。
【0070】
本発明に係る防水ボードにおいて、前記石膏スラリー中の触媒の含量は、半水石膏の100重量部を基準に、例えば、0.2から1.5重量部であってよく、より具体的には0.3から1.0重量部であってよい。石膏スラリー中の触媒の含量が前記範囲より少なすぎると、シリコーンオイルが重合できないため十分な防水性を示すことができないという問題点があり、逆に多すぎると、スラリー全体のpHが上昇して強度が弱くなるという問題点があり得る。
【0071】
本発明の具体的な他の側面によれば、半水石膏、シリコーンオイル、乳化剤及び触媒を含む水系石膏スラリーを形成し、これを硬化させることを含む防水ボードの製造方法が提供される。
【0072】
これに限定されるものではないが、本発明の一具体例によれば、本発明に係る防水ボードは、シリコーンオイル及び乳化剤を含む水系エマルジョンと触媒及び半水石膏の混合物を混合して水系石膏スラリーを形成する段階、及び、前記石膏スラリーを成形して硬化させる段階を含む方法によって製造されてよい。
【0073】
一般に気孔を有する軽量の石膏ボードの製造のためには、陰イオン性界面活性剤を含んだ水溶液に高圧のエアを投入してプリフォーム(pre-foam)を製造し、これを半水石膏及び計量された工程水と混合して成形加工する過程を経る。軽量石膏ボードの場合、大きい気孔と小さい気孔の適した組み合わせが必要であるところ、これは、石膏ボードの製造の際に大きい気孔が主に石膏ボードの中央部に、そして小さい気孔が主に石膏ボードの上下両面に位置することにより、石膏ボードの裏面紙接着性、硬度、そして乾燥条件などで有利であるためである。よって、適宜大きい気泡を維持するのが重要である。
【0074】
シリコーンオイルの場合は、パラフィンワックスに比べて少ない量でも優れた防水性能を表すが、一方、消泡剤として働いて石膏スラリー内の気泡等を破裂させて石膏の密度を高める。このようなシリコーンによる気泡の減少を補うために発泡剤を過剰量で投入する場合、気泡の大きさが小さくなってスラリーの粘度が上昇するため、石膏ボードの成形に困難さを経験することになる。さらに、塩基性触媒の使用時に反応速度が速すぎるため、反応副産物である水素分子の急激な発生によって石膏製品に割れ目(クラッキング)が発生し得る。
【0075】
本発明では、防水剤としてシリコーンオイルを用いることにより、少量の使用でも優れた防水性能を得るとともに、乳化剤を組み合わせて用いることにより、シリコーンオイルの消泡性を抑制する傍ら、塩基性触媒の使用時にも適した反応速度を示すことができるようにして石膏ボードのクラッキングを防止する。
【0076】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより詳しく説明する。ただし、下記実施例は本発明を例示するためのものであるだけで、本発明の範囲がこれによって制限されるものではない。
【実施例】
【0077】
I.石膏ボードの製造
実施例1
半水石膏150g、メチルヒドロゲンポリシロキサン(MHP)0.6g、下記表1に記載の触媒0.6g(比較例1-2は触媒を用いない)及び蒸留水97.5gを混合して石膏スラリーを製造した。このとき、半水石膏100重量部を基準に流動化剤としてPNS 0.5重量部及び遅延剤(Retarder L)0.01重量部が石膏スラリーにさらに含有された。製造されたスラリーを硬化させ、石膏試片を製造した。比較例1-1では触媒を用いることなく、防水剤としてMHPに代えてパラフィンワックスを、半水石膏の使用量100重量部当りに3.5重量部で用いて石膏試片を製造した。
【0078】
製造された試片に対し、KS F 3504規格によって乾燥した後、全吸収率(元来の試片の重さ100%を基準にした試験後の試片の重さの増加率)を測定して石膏のクラック発生の有無を確認し、表1に示した。
【0079】
【表2】
【0080】
前記表1の結果から、触媒として軽焼ドロマイトを用いた場合が、触媒を用いないか他の触媒を用いた場合に比べて優れた全吸収率(即ち、優れた触媒活性及びそれに伴う防水性能)を提供するとともに、クラックを発生させないということを確認することができる。
【0081】
実施例2
実施例1と同様の方法で行ない、ただし、半水石膏の使用量100重量部当りのMHP及び軽焼ドロマイト触媒の使用量をそれぞれ0.5重量部にして、実施例2-1の石膏試片を製造した。
【0082】
一方、MHPを直接用いる代わりに、蒸留水300g及びMHP 200gの混合物を450 barで高圧均質化器に通過させて製造されたMHPの含量が40重量%のエマルジョンを用い、実施例2-2の石膏試片を製造した。このとき、半水石膏の使用量100重量部当りのMHP及び軽焼ドロマイト触媒の使用量は、実施例2-1と同様にそれぞれ0.5重量部であった。
【0083】
比較例2では触媒は用いることなく、防水剤としてMHPに代えてパラフィンワックスを、半水石膏の使用量100重量部当りに3.5重量部で用いて石膏試片を製造した。
【0084】
製造された試片に対し、実施例1と同様の方法で乾燥した後、全吸収率を測定して石膏のクラック発生の有無を確認し、表2に示した。
【0085】
【表3】
【0086】
前記表2の結果から、MHPを直接投入した場合及びエマルジョン化して投入した場合のいずれも、パラフィンワックスに比べて優れた全吸収率を提供するとともに、クラックを発生させないということを確認することができる。
【0087】
実施例3
実施例2-2と同様の方式で製造されたMHPの含量が40重量%のエマルジョンを用いて石膏試片を製造し、ただし、エマルジョンの製造時に下記表3に示した界面活性剤をMHPの使用量100重量部当りに3重量部で用いた。製造された試片に対し、実施例1と同様の方法で乾燥した後、全吸収率を測定して表3に示した。
【0088】
【表4】
【0089】
II.防水用シリコーンエマルジョン及び石膏ボードの製造
石膏試片を製造するため、先ずシリコーンエマルジョンを製造した。シリコーンエマルジョンは、450barの条件で水、メチルヒドロゲンポリシロキサン(MHP)、乳化剤を高圧均質化器を通過させて製造した。乳化剤を用いた時、シリコーンエマルジョンの特性を把握するため、表4に示す通りに組成を変化させながらエマルジョンを製造した。エマルジョン2〜7に用いられたSMAはスチレンとマレイン酸の共重合体であり、スチレンがマレイン酸1モルに対して1〜4のモル比で共重合された共重合体を用いた。エマルジョン8〜9で用いられたスチレンアクリル酸及びメタクリル酸重合体は、それぞれスチレンと親水基が1:1モル比で共重合された重合体を用いた。
【0090】
【表5】
【0091】
実施例4
前記製造されたエマルジョンで石膏試片を製造し、密度を観察する。石膏試片の製造方法は、半水石膏100重量部に減水剤(Poly-naphthalene sulfonate)0.5重量部、表4に示した含量の前記製造されたエマルジョン、触媒として軽焼白雲石0.6重量部、及び水49重量部を投入し、ここにプリフォーム(pre-foam)[発泡剤(Stepane社のGPA-01)0.05重量部と水21重量部を混合した後、高速撹拌機で2500rpmで1分間予め発泡させたもの]を注いで混合し、石膏スラリーを製造した後にこれを硬化させ、石膏試片を製造した。このとき、比較例4-1では、乳化剤を含まないMHPエマルジョンを用いて、前記方法で石膏試片を製造した。製造された石膏試片の密度を測定し、表5に示した。
【0092】
【表6】
【0093】
実施例5
エマルジョン2で乳化剤の量を調節したエマルジョン3とエマルジョン4に対して実施例4と同様の実験を進め、結果を表6に示した。
【0094】
【表7】
【0095】
実施例6
実施例4-1及び4-3の石膏試片について全吸収率を測定した。全吸収率は、KS F 3504規格によって石膏試片を製造した後、20℃の水に石膏試片を2時間浸漬した後、元来の重さ100%を基準にした重さの増加率(%)を測定して得た。比較例6-1として、乳化剤及びMHPを用いることなく製造された石膏試片を用い、比較例6-2として、乳化剤を用いることなく、防水剤としてMHPに代えてパラフィンワックス(Paraffin Wax)を、半水石膏の使用量100重量部当りに2.5重量部で用いて製造された石膏試片を用いた。測定の結果を表7に示した。
【0096】
【表8】
【0097】
実施例7
エマルジョン2で乳化剤の親水基と疎水基の割合を調節したエマルジョン5〜7に対して実施例4と同様に実験を進め、結果を表8に示した。
【0098】
【表9】
【0099】
実施例8
エマルジョン2で親水基を変更したエマルジョン8〜9に対して実施例4と同様に実験を進め、結果を表9に示した。
【0100】
【表10】
【0101】
実施例9
乳化剤を混合して用いたエマルジョン10に対して実施例4と同様の実験を進め、結果を表10に示した。
【0102】
【表11】
【0103】
実施例10
シリコーンオイルの水素の含量を異にして、実施例4のエマルジョン2と同様にMHPエマルジョンを製造し、製造された各エマルジョンを用いて実施例4と同様に石膏試片を製造し、製造された石膏試片の全吸収率を測定した。比較例10-1には、防水剤としてパラフィンワックスを、半水石膏の使用量100重量部当りに3.5重量部で用いて製造された石膏試片を用いた。測定の結果を表11に示した。
- 実施例10-1:MHP内の水素:メチル含量 = 100%:0%
- 実施例10-2:MHP内の水素:メチル含量 = 50%:50%
- 実施例10-3:MHP内の水素:メチル含量 = 10%:90%
【0104】
【表12】
【0105】
実施例11
実施例4-1と同様に石膏試片を製造し、ただし、表12に示した気泡剤をさらに用いた。製造された石膏試片の密度を測定し、表12に示した。
【0106】
【表13】
【0107】
実施例12
下記のように乳化剤のみ異にしてエマルジョン2と同様にMHPエマルジョンを製造し、製造された各エマルジョンを用いて実施例4と同様に石膏試片を製造し、製造された石膏試片の密度を測定して表13に示した。
- 実施例12-1:クメンで仕上げ処理されたSMA共重合体を使用
- 実施例12-2:部分エステル化されたSMA共重合体を使用
- 実施例12-3:スルホン化されたSMA共重合体を使用
【0108】
【表14】