特許第6722758号(P6722758)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6722758
(24)【登録日】2020年6月24日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】一体型ブラケットを備えた車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/06 20060101AFI20200706BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20200706BHJP
【FI】
   B60N2/06
   B60N2/90
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-519161(P2018-519161)
(86)(22)【出願日】2017年4月28日
(86)【国際出願番号】JP2017017083
(87)【国際公開番号】WO2017203940
(87)【国際公開日】20171130
【審査請求日】2019年3月18日
(31)【優先権主張番号】特願2016-102848(P2016-102848)
(32)【優先日】2016年5月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 陽
(72)【発明者】
【氏名】大森 孝行
【審査官】 森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】 実開平2−143218(JP,U)
【文献】 実開平5−13840(JP,U)
【文献】 実開平6−35027(JP,U)
【文献】 特開2008−201299(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3112336(JP,U)
【文献】 特開2004−210169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 − 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションと、
前記シートクッションの側に折りたたむことが可能なシートバックと、
前記シートクッションを搭載して前後方向に移動可能なスライドレールと、
前記スライドレールをガイドする固定レールと、
前記スライドレールを前記固定レールに沿って前後方向に駆動する駆動モータと
を備えた車両用シートであって、
前記スライドレールに、磁気センサとリミットスイッチとを搭載した一体型のセンサーブラケットを固定し、
前記固定レールに前記磁気センサで検出する磁性体と、前記リミットスイッチを作動させる検知板とを取り付けた
ことを特徴とする一体型ブラケットを備えた車両用シート。
【請求項2】
請求項1記載の一体型ブラケットを備えた車両用シートであって、前記センサーブラケットは、前後方向に移動する前記スライドレールの前方の側に前記磁気センサを搭載し、前記磁気センサよりも後方の側に前記リミットスイッチを搭載していることを特徴とする一体型ブラケットを備えた車両用シート。
【請求項3】
請求項2記載の一体型ブラケットを備えた車両用シートであって、前記センサーブラケットは、前記磁気センサを搭載する部分と前記リミットスイッチを搭載する部分との間にスリットが形成されていることを特徴とする一体型ブラケットを備えた車両用シート。
【請求項4】
請求項2記載の一体型ブラケットを備えた車両用シートであって、前記センサーブラケットは、前記磁気センサを搭載する部分から前記リミットスイッチを搭載する部分にかけて、前記センサーブラケットの端部が直角に折り曲げられていることを特徴とする一体型ブラケットを備えた車両用シート。
【請求項5】
請求項2記載の一体型ブラケットを備えた車両用シートであって、前記センサーブラケットは、前記磁気センサを搭載する部分が前記リミットスイッチを搭載する部分よりも折り曲げに対して大きな剛性を持つ形状に形成されていることを特徴とする一体型ブラケットを備えた車両用シート。
【請求項6】
シートクッションと、
前記シートクッションの側に折りたたむことが可能なシートバックと、
前記シートクッションを搭載して前後方向に移動可能なスライドレールと、
前記スライドレールをガイドする固定レールと、
前記シートバックを前記シートクッションの側に折りたたんだ状態で前記シートクッションを搭載した前記スライドレールを前記固定レールに沿って前後方向に駆動する駆動モータと
を備えた車両用シートであって、
前記シートバックを前記シートクッションから立ち上げた状態で前記スライドレールの前記固定レールに対する位置を検知する磁気センサと、
前記シートバックを前記シートクッションの側に折りたたんだ状態で前記シートクッションを搭載した前記スライドレールを前記駆動モータで前記固定レールに沿って前方に駆動したときに前記スライドレールの前進端を検知するリミットスイッチと、
前記磁気センサを前記スライドレールの前方の側に搭載し前記リミットスイッチを前記磁気センサよりも前記スライドレールの後方の側に搭載して前記スライドレールに固定する一体型のセンサーブラケットと
を更に備えたことを特徴とする一体型ブラケットを備えた車両用シート。
【請求項7】
請求項6記載の一体型ブラケットを備えた車両用シートであって、前記センサーブラケットは、前記リミットスイッチを搭載した側に加えられた折り曲げ力が前記磁気センサを搭載した側に伝達されにくい構造を有していることを特徴とする一体型ブラケットを備えた車両用シート。
【請求項8】
請求項7記載の一体型ブラケットを備えた車両用シートであって、前記センサーブラケットは、前記リミットスイッチを搭載した側と前記磁気センサを搭載した側との間にスリットが形成されていることを特徴とする一体型ブラケットを備えた車両用シート。
【請求項9】
請求項6又は7に記載の一体型ブラケットを備えた車両用シートであって、前記シートバックを前記シートクッションから立ち上げた状態で前記磁気センサで検出した前記スライドレールの前記固定レールに対する位置情報に基づいて、前記車両用シートを装着した車両に搭載したシートベルトの張力を調整することを特徴とする一体型ブラケットを備えた車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシートが前後にスライドする機能を備えた車両用シートに係り、シートの位置を検出するセンサやスイッチを共通のブラケットに搭載した一体型ブラケットを備えた車両用シート関する。
【背景技術】
【0002】
シートが前後にスライドする機能を備えた車両用シートとして、特開2004−210169号公報(特許文献1)には、磁気アクチュエータと磁気検出素子とを組み合わせたセンサーユニットをシートのスライド方向の位置を検出するポジションセンサとして備えた車両用シートが記載されている。特許文献1には、ポジションセンサで検出したシートの位置情報に応じて、シートの位置が前方にあるときにはエアバッグの展開開始時期を早くし、一方、後方にあるときにはエアバッグの展開開始時期を遅らせることが記載されている。
【0003】
また、特開2006−347514号公報(特許文献2)には、スライド機構を備えたシートにおいて、シートが前進端位置に来たことをリミットスイッチで検出してシートを停止させてロックする構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−210169号公報
【特許文献2】特開2006−347514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両用シートには、2列シートの助手席又は3列シートの中央列のドア側の席のシートバックを倒して前方にスライドさせて、後部座席の搭乗者が車に乗り降りするタイプ(ウォークイン機能)のものがある。また、車両用シートは、一般に、搭乗者が体型に応じて、又は好みに応じてシートを前後方向にスライドできる構成を備えている。
【0006】
このような、シートバックを倒した状態でモータで駆動してシートクッションを前方にスライドさせて後部座席の搭乗者が車に乗り降りするための機構(ウォークイン機構)と、着座した搭乗者が体型に応じて、又は好みに応じて搭乗者がシートを前後方向にスライドできる構成とを車両用シートに兼ね備えさせるときに、シートバックを倒してモータで駆動してシートクッションを前方にスライドさせた時の前進端を検出してモータの駆動を停止させるセンサと、搭乗者が着座した状態でシートを前後方向にスライドさせたときのシートの位置に応じてシートベルトの引き込む力を調整するためにシートの位置を検出するセンサとを備える必要がある。
【0007】
特許文献1には、スライド機能を備えた車両用シートにポジションセンサを装備することにより、搭乗者がシートに着座した状態におけるシートの位置情報に応じてエアバッグの展開開始時期を制御することが記載されている。しかし、特許文献1には、搭乗者がシートに着座した状態におけるシートの位置情報に応じてシートベルトの引込み力(着座した搭乗者のシートベルトによる拘束力又はシートベルトの張力)を調整することについては記載されていない。
【0008】
また、特許文献1には、スライド機能を備えた車両用シートにおいて、スライドの前進端を検出してスライドを停止させることについては記載されていない。
【0009】
一方、特許文献2には、シートが前端位置に来たことをリミットスイッチで検出してシートを停止させることについては記載されているが、搭乗者がシートに着座した状態におけるシートの位置情報を得ることについては記載されていない。
【0010】
本発明は、従来技術の課題を解決して、シートバックを倒してモータで駆動してシートクッションを前方にスライドさせた時の前進端を検出するセンサと、搭乗者が着座した状態でシートを前後方向にスライドさせたときのシートの位置を検出するセンサと共通のブラケットに搭載した一体型ブラケットを備えた車両用シートを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した課題を解決するために、本発明では、一体型ブラケットを備えた車両用シートを、シートクッションと、シートクッションの側に折りたたむことが可能なシートバックと、シートクッションを搭載して前後方向に移動可能なスライドレールと、スライドレールをガイドする固定レールと、スライドレールを固定レールに沿って前後方向に駆動する駆動モータとを備えて構成し、スライドレールに磁気センサとリミットスイッチとを搭載した一体型のセンサーブラケットを固定し、固定レールに磁気センサで検出する磁性体と、リミットスイッチを作動させる検知板とを取り付けて構成した。
【0012】
また、上記目的を達成するために、本発明では、一体型ブラケットを備えた車両用シートを、シートクッションと、シートクッションの側に折りたたむことが可能なシートバックと、シートクッションを搭載して前後方向に移動可能なスライドレールと、スライドレールをガイドする固定レールと、シートバックをシートクッションの側に折りたたんだ状態でシートクッションを搭載したスライドレールを固定レールに沿って前後方向に駆動する駆動モータとを備えて構成し、シートバックをシートクッションから立ち上げた状態でスライドレールの固定レールに対する位置を検知する磁気センサと、シートバックをシートクッションの側に折りたたんだ状態でシートクッションを搭載したスライドレールを駆動モータで固定レールに沿って前方に駆動したときにスライドレールの前進端を検知するリミットスイッチと、磁気センサをスライドレールの前方の側に搭載しリミットスイッチを磁気センサよりも前記スライドレールの後方の側に搭載してスライドレールに固定する一体型のセンサーブラケットとを更に備えて構成した。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、車両用シートに、シートバックを倒して前方にスライドさせた時の前進端を検出するセンサと、搭乗者が着座した状態でシートを前後方向にスライドさせたときのシートの位置を検出するセンサとを一体型ブラケットに搭載したことにより、シートバックを倒して前方にスライドさせた時の前進端を確実に検出できるようになった。また、搭乗者が着座した状態で検出したシートの位置に応じて、シートベルトの引込み力(着座した搭乗者のシートベルトによる拘束力又はシートベルトの張力)を調整するようにして快適性を向上させることができるようにした。
【0014】
また、本発明によれば、両方のセンサを一体型のブラケットに取り付けたときに、搭乗者の足がブラケットに接触しても、搭乗者が着座した状態でシートを前後方向にスライドさせたときのシートの位置を検出する感度が敏感なセンサの検出感度に及ぼす影響を小さくすることができるので、シートベルトの引込み力(着座した搭乗者のシートベルトによる拘束力又はシートベルトの張力)を調整することを確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例1に係る一体型ブラケットを備えた車両用シートで、搭乗者が着座した状態の側面図である。
図2】本発明の実施例1に係る一体型ブラケットを備えた車両用シートのスライド用レールの斜視図である。
図3】本発明の実施例1に係る一体型ブラケットを備えた車両用シートのスライドレールの図2におけるA−A矢視図である。
図4】本発明の実施例1に係る一体型ブラケットを備えた車両用シートのスライドレールの側面図で、アッパーレールが後退端にあって、シートを後方にスライドさせて、磁気センサが検知ブラケットを検出していない状態を示している。
図5】本発明の実施例1に係る一体型ブラケットを備えた車両用シートのスライドレールの側面図で、アッパーレールが後退端にあって、シートを前方にスライドさせて、磁気センサが検知ブラケットを検出している状態を示している。
図6】本発明の実施例1に係る一体型ブラケットを備えた車両用シートのスライドレールの側面図で、アッパーレールが前進端にあって、リミットスイッチが作動している状態を示している。
図7】本発明の実施例1に係る一体型ブラケットを備えた車両用シートのスライドレールの側面図で、アッパーレールが後退端にあって、後部座席に着座した搭乗者の足先がセンサーブラケットに接触している状態を示している。
図8】本発明の実施例1に係る一体型ブラケットを備えた車両用シートのセンサーブラケットの平面図である。
図9】本発明の実施例2に係る一体型ブラケットを備えた車両用シートのセンサーブラケットの平面図である。
図10】本発明の実施例2に係る車両用シートのセンサーブラケットの図9におけるB−B断面の矢視図である。
図11】本発明の実施例3に係る一体型ブラケットを備えた車両用シートのセンサーブラケットの平面図である。
図12】本発明の実施例3に係る一体型ブラケットを備えた車両用シートのセンサーブラケットの図11におけるC−C断面の矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、2列シートの助手席又は3列シートの中央列のドア側の席のシートバックを倒してシートクッションと一緒に前方にスライドさせて、後部座席の搭乗者が車に乗り降りするタイプ(ウォークイン機能)で、シートに着座した搭乗者が体型に応じて、又は好みに応じてシートを前後方向にスライドできる構成を備えた一体型ブラケットを備えた車両用シートであって、シートバックを倒してモータで駆動してシートクッションと一緒に前方にスライドさせた時の前進端を検出するセンサと、搭乗者が着座した状態で搭乗者がシートを前後方向にスライドさせたときのシートの位置を検出するセンサとを一体型ブラケットに装着した一体型ブラケットを備えた車両用シートである。
【0017】
本発明は、シートバックを倒してモータで駆動してシートクッションと一緒に前方にスライドさせた時の前進端を確実に検出できるとともに、シートベルトの引込み力(着座した搭乗者のシートベルトによる拘束力又はシートベルトの張力)をシートの位置に応じて調整して、シート位置をずらしても快適性を損なわないようにしたものである。
【0018】
また、本発明は、シートバックを倒してシートクッションと一緒に前方にスライドさせた時の前進端を検出するセンサと、搭乗者が着座した状態でシートを前後方向にスライドさせたときのシートの位置を検出するセンサとを共通の一体型のブラケットに取り付けたシンプルな構成にし、かつ、搭乗者の足がブラケットに接触しても、搭乗者が着座した状態でシートを前後方向にスライドさせたときのシートの位置を検出する感度が敏感なセンサの検出感度に及ぼす影響を小さくすることができるようにして、シートベルトの引込み力(着座した搭乗者のシートベルトによる拘束力又はシートベルトの張力)の調整を安定して確実に行うことができるようにしたものである。
【0019】
また、本発明は、シートクッションと、シートクッションの側に折りたたむことが可能なシートバックと、シートクッションを搭載して前後方向に移動可能なスライドレールと、スライドレールをガイドする固定レールと、スライドレールを固定レールに沿って前後方向に駆動する駆動モータとを備えた一体型ブラケットを備えた車両用シートにおいて、スライドレールに磁気センサとリミットスイッチとを搭載したセンサーブラケットを固定し、固定レールに磁気センサで検出する磁性体と、リミットスイッチを作動させる検知板とを取り付けて構成し、シートバックを起こした状態で、スライドレールの側に取り付けた磁気センサで固定レールの側に取り付けた磁性体で形成されたセンサーブラケットを検知したか否かにより、シートベルトの引込み力を調整するようにしたものである。
【0020】
また、本発明は、シートクッションと、シートクッションの側に折りたたむことが可能なシートバックと、シートクッションを搭載して前後方向に移動可能なスライドレールと、スライドレールをガイドする固定レールと、シートバックをシートクッションの側に折りたたんだ状態でシートクッションを搭載したスライドレールを固定レールに沿って前後方向に駆動する駆動モータとを備えた一体型ブラケットを備えた車両用シートにおいて、シートバックをシートクッションから立ち上げた状態でスライドレールの固定レールに対する位置を検知する磁気センサと、シートバックをシートクッションの側に折りたたんだ状態でシートクッションを搭載したスライドレールを駆動モータで固定レールに沿って前方に駆動したときにスライドレールの前進端を検知するリミットスイッチと、磁気センサをスライドレールの前方の側に搭載しリミットスイッチを磁気センサよりも前記スライドレールの後方の側に搭載してスライドレールに固定する一体型のセンサーブラケットとを更に備えて構成したものである。
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。本実施の形態を説明するための全図において同一機能を有するものは同一の符号を付すようにし、その繰り返しの説明は原則として省略する。ただし、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。本発明の思想ないし趣旨から逸脱しない範囲で、その具体的構成を変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。
【実施例1】
【0022】
図1は、本実施例に係る車両用シート100の側面図である。車両用シート100は、搭乗者Mが着座するシートクッション101、着座した搭乗者Mが背をもたれるシートバック102、搭乗者の頭部を支えるヘッドレスト103を備えている。104は、着座した搭乗者Mをシートに拘束するシートベルトを示している。
【0023】
110はスライドレール(アッパーレール)、120は固定レール(ローアーレール)である。シートクッション101はスライドレール(アッパーレール)110に装着されている。固定レール(ローアーレール)120は、車両の床面200に固定されている。
【0024】
130は後述するセンサ類を保持する一体型のセンサーブラケットで、スライドレール(アッパーレール)110に固定されている。142は検知ブラケットで、磁性材料で形成され固定レール(ローアーレール)120に取り付けられており、後述する磁気センサで検出する。153は検知板で、後述するリミットスイッチのスイッチボタンを押し当てて、リミットスイッチを作動させるためのものである。160はスライドレール駆動モータで、固定レール(ローアーレール)120の側に固定されており、図示していない制御部により制御されて、シートバック102をシートクッション101の側に倒した状態でスライドレール(アッパーレール)110を駆動して、スライドレール(アッパーレール)110を固定レール(ローアーレール)120に対して前方又は後方に移動させる。
【0025】
図2は、固定レール(ローアーレール)120にスライドレール(アッパーレール)110を装着した状態の斜視図である。
【0026】
スライドレール(アッパーレール)110には、磁気センサ141とリミットスイッチ151とを装着した一体型のセンサーブラケット130(以下、単にセンサーブラケット130と記す)が固定されている。一方、固定レール(ローアーレール)120には、磁気センサ141で検出する磁性体で形成された検知ブラケット142と、リミットスイッチ151のスイッチボタン152を押し当ててリミットスイッチ151を作動させる検知板153が固定されている。
【0027】
図3は、図2の固定レール(ローアーレール)120にスライドレール(アッパーレール)110を装着した状態をA−A方向から見た図である。スライドレール(アッパーレール)110には、磁気センサ141とリミットスイッチ151とを装着したセンサーブラケット130が固定されており、固定レール(ローアーレール)120には、検知ブラケット142と、検知板153が固定されている。
【0028】
スライドレール(アッパーレール)110が移動して磁気センサ141が検知ブラケット142の上部に位置すると、磁気センサ141は磁性体である検知ブラケット142を検知する。このとき、磁気センサ141と検知ブラケット142との間隔は、磁気センサ141の検出感度にもよるが、通常1〜3mm程度に設定する。
【0029】
設定間隔が1mmよりも狭いと磁気センサ141が検知ブラケット142に衝突して破壊する危険性があり、設定間隔が3mmより大きくなると、検出感度が低下して磁気センサ141による検知ブラケット142の検出ができなくなってしまう可能性がある。したがって、磁気センサ141と検知ブラケット142との間隔は、初期に設定した状態から変動しないように磁気センサ141と検知ブラケット142とをそれぞれ固定する必要がある。
【0030】
図4は、固定レール(ローアーレール)120にスライドレール(アッパーレール)110を装着し、スライドレール(アッパーレール)110が後退端に位置した状態、すなわちシートクッション101を後方にスライドさせた状態の正面図を示す。この状態では、磁気センサ141が検知ブラケット142の位置からずれており、磁気センサ141は検知ブラケット142を検知する。
【0031】
この状態における磁気センサ141の出力信号レベルをうけて、図示していない制御部は、シートベルト104の引込み力(着座した搭乗者のシートベルトによる拘束力又はシートベルトの張力)が予め記憶しておいた第1の状態になるように、図示していないシートベルト駆動機構部を制御する。
【0032】
一方、図5には、搭乗者がシートクッション101の前後方向の位置をかえて、スライドレール(アッパーレール)110が後退端に位置した状態、すなわちシートクッション101を後方にスライドさせた状態から少し前方にスライドさせた状態の正面図を示す。この状態では、磁気センサ141が検知ブラケット142の上面に位置しており、磁気センサ141が磁性体で形成された検知ブラケット142を検知していない。
【0033】
また、図示していない制御部は、シートベルト104の引込み力(着座した搭乗者のシートベルトによる拘束力又はシートベルトの張力)が予め記憶しておいた第2の状態(第1の状態よりも小さい拘束力又は張力)になるように、図示していないシートベルト駆動機構部を制御する。これにより、シートクッション101を前方にスライドさせても、着座した搭乗者のシートベルトによる拘束力をスライド前(クッションシートが後方にあって、磁気センサ141が検知ブラケット142を検知していないとき)とほぼ同じに設定することができ、着座した搭乗者の快適性を損なわないようにすることができる。
【0034】
図6は、シートバック102をシートクッション101の側に倒して、図示していないセンサでシートバック102が倒れたのが確認された後に、シートクッション101と一緒に、スライドレール駆動モータ160で駆動してスライドレール(アッパーレール)110を前方にスライドさせて、リミットスイッチ151でスライドレール(アッパーレール)110のスライドの前進端を検出した状態を示している。スライドの前進端において、リミットスイッチ151のスイッチボタン152が検知板153に押し当てられて、リミットスイッチ151が作動する。図示していない制御部は、このリミットスイッチ151からの信号を受けて、スライドレール駆動モータ160を停止させる。
【0035】
図7は、図4に示した状態において、後部座席に着座した搭乗者の足先Tがシートの下部に入り込んで、センサーブラケット130に当たっている状態を示している。このように、後部座席の搭乗者の足先Tがセンサーブラケット130に当たると、センサーブラケット130は折り曲げる力を受ける。
【0036】
図8に、センサーブラケット130の平面図を示す。センサーブラケット130には、磁気センサ141を取り付けるための穴131と、リミットスイッチ151を取り付けるための穴132が形成されている。また、センサーブラケット130は、ハッチング1301を施した領域の複数の箇所でスライドレール(アッパーレール)110にねじ又はボルトで又は溶接により固定されている。
【0037】
磁気センサ141を取り付けるための穴131とリミットスイッチ151を取り付けるための穴132の図8における上下方向の位置が異なるため、磁気センサ141を取り付けるための穴131が形成されている側の端部133は、リミットスイッチ151を取り付けるための穴132が形成されている側の端部134よりも引込んでいる。
【0038】
図7に示した状態は、図8においてリミットスイッチ151を取り付けるための穴132が形成されている側が紙面の上方に押し上げる力を受けている状態になる。
【0039】
ここで、センサーブラケット130には、磁気センサ141を取り付けるための穴131が形成されている側と、リミットスイッチ151を取り付けるための穴132が形成されている側との間に切り欠きであるスリット部135が形成されている。このような形状を有してスライドレール(アッパーレール)110に固定されたセンサーブラケット130において、リミットスイッチ151を取り付けるための穴132が形成されている側が図8で紙面の裏側から表側に押し上げる力を受けた場合に、この押し上げる力はスリット部135に集中する。
【0040】
その結果、磁気センサ141を取り付けるための穴131が形成されている側は変形しにくくなる。これにより、磁気センサ141の高さは変化することがなく、磁気センサ141と検知ブラケット142との間隔を一定に保つことができる。
【0041】
このように、センサーブラケット130のことにより、リミットスイッチ151を取り付ける側に外力が加わっても、磁気センサ141を取り付ける側は外力の影響をほとんど受けなくすることができ、高さの変化に敏感な磁気センサ141の高さを一定に維持することが可能になる。
【0042】
これにより、着座した搭乗者がシートをスライドさせたときに、磁気センサ141で検知ブラケット142を確実に検出することができ、着座した搭乗者のシートベルトによる拘束力の調整を確実に行うことができる。
【0043】
以上、本実施例に拠れば、リミットスイッチの側に外力が加わっても磁気センサの側に影響を及ぼすことがないようにして磁気センサとリミットスイッチとを共通のブラケットに搭載することを可能にした。これにより、磁気センサとリミットスイッチとをよりシンプルな構成で、スライドレール(アッパーレール)110に取り付けることが可能になった。
【0044】
[変形例1]
実施例1においては、センサーブラケット130の磁気センサ141を取り付ける側とリミットスイッチ151を取り付ける側との間にスリット部135を形成した例を説明したが、本変形例1においては、図8で説明したセンサーブラケット130に替えて、図9に示すようなセンサーブラケット130−1を用いた例を説明する。センサーブラケット130−1以外の構成は、実施例1で説明したものと同じであるので、説明を省略する。
【0045】
本変形例1におけるセンサーブラケット130−1は、センサーブラケット130の場合と同様に、磁気センサ141を取り付けるための穴131と、リミットスイッチ151を取り付けるための穴132が形成されている。
【0046】
本変形例1におけるセンサーブラケット130−1は、センサーブラケット130の場合のスリット部135が形成されていない。その代わりに、磁気センサ141を取り付けるための穴131が形成されている側からリミットスイッチ151を取り付けるための穴132が形成されている側にかけて、センサーブラケット130−1の端部付近の折り曲げ部136がほぼ直角に折り曲げられている。また、磁気センサ141を取り付けるための穴131と端面の折り曲げ部136との間にはリブ137が形成されている。これにより、センサーブラケット130−1の図9における紙面の裏側から表側の曲げに対する剛性を高くすることができる。特に、磁気センサ141を取り付けるための穴131が形成されている側にはリブ137も形成されているので、紙面の裏側から表側の曲げに対する剛性をより高くなっている。
【0047】
図9におけるB−B断面を、図10に示す。実施例1の場合と同様に、リミットスイッチ151を取り付ける側に後部座席の搭乗者の足先Tが引っかかることにより外力が加わっても、磁気センサ141を取り付ける側は曲げに対して高い剛性を有しているのでほとんど変形せず、高さの変化に敏感な磁気センサ141の高さを一定に維持することが可能になる。
【0048】
これにより、着座した搭乗者がシートをスライドさせたときに、磁気センサ141で検知ブラケット142を確実に検出することができ、着座した搭乗者のシートベルトによる拘束力の調整を確実に行うことができる。
【0049】
[変形例2]
変形例1におけるセンサーブラケット130−1は、磁気センサ141を取り付けるための穴131が形成されている側からリミットスイッチ151を取り付けるための穴132が形成されている側にかけて、折り曲げ部136がほぼ直角に折り曲げられて形成した。
【0050】
これに対して図11に示した本変形例2におけるセンサーブラケット130−2においては、折り曲げ部136をほぼ直角に折り曲げる変わりに、磁気センサ141を取り付けるための穴131の両側とリミットスイッチ151を取り付ける側の穴132の一方の側にリブ138と139を形成した。
【0051】
図11におけるC−C断面を、図12に示す。磁気センサ141を取り付けるための穴131の両側にリブ138と139とが形成されており、図11の紙面の裏側から表側の曲げに対する剛性が高くなっている。また、リミットスイッチ151を取り付ける穴132が形成された側に対して磁気センサ141を取り付けるための穴131が形成された側のほうがリブ139が形成されている分曲げ剛性がより強くなっているので、実施例1の場合と同様に、リミットスイッチ151を取り付ける側に後部座席の搭乗者の足先Tが引っかかることにより外力が加わっても、磁気センサ141を取り付ける側はほとんど変形せず、高さの変化に敏感な磁気センサ141の高さを一定に維持することが可能になる。
【0052】
これにより、着座した搭乗者がシートをスライドさせたときに、磁気センサ141で検知ブラケット142を確実に検出することができ、着座した搭乗者のシートベルトによる拘束力の調整を確実に行うことができる。
【0053】
上記に説明した実施例は本発明の一実施の形態を説明するものであって、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、上記実施例で説明した構成の一部をそれと等価な機能を有する手段で置き換えたものも、または、実質的でない機能の一部を省略したものも本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0054】
100・・・車両用シート 101シートクッション 102・・・シートバック
103・・・ヘッドレスト 104・・・シートベルト 110・・・スライドレール(アッパーレール) 120・・・固定レール(ローアーレール) 130・・・センサーブラケット 135・・・スリット部 136・・・折り曲げ部
137,138,139・・・リブ 141・・・磁気センサ 142・・・検知ブラケット 151・・・リミットスイッチ 153・・・検知板 160・・・スライドレール駆動モータ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12