【実施例1】
【0022】
図1は、本実施例に係る車両用シート100の側面図である。車両用シート100は、搭乗者Mが着座するシートクッション101、着座した搭乗者Mが背をもたれるシートバック102、搭乗者の頭部を支えるヘッドレスト103を備えている。104は、着座した搭乗者Mをシートに拘束するシートベルトを示している。
【0023】
110はスライドレール(アッパーレール)、120は固定レール(ローアーレール)である。シートクッション101はスライドレール(アッパーレール)110に装着されている。固定レール(ローアーレール)120は、車両の床面200に固定されている。
【0024】
130は後述するセンサ類を保持する一体型のセンサーブラケットで、スライドレール(アッパーレール)110に固定されている。142は検知ブラケットで、磁性材料で形成され固定レール(ローアーレール)120に取り付けられており、後述する磁気センサで検出する。153は検知板で、後述するリミットスイッチのスイッチボタンを押し当てて、リミットスイッチを作動させるためのものである。160はスライドレール駆動モータで、固定レール(ローアーレール)120の側に固定されており、図示していない制御部により制御されて、シートバック102をシートクッション101の側に倒した状態でスライドレール(アッパーレール)110を駆動して、スライドレール(アッパーレール)110を固定レール(ローアーレール)120に対して前方又は後方に移動させる。
【0025】
図2は、固定レール(ローアーレール)120にスライドレール(アッパーレール)110を装着した状態の斜視図である。
【0026】
スライドレール(アッパーレール)110には、磁気センサ141とリミットスイッチ151とを装着した一体型のセンサーブラケット130(以下、単にセンサーブラケット130と記す)が固定されている。一方、固定レール(ローアーレール)120には、磁気センサ141で検出する磁性体で形成された検知ブラケット142と、リミットスイッチ151のスイッチボタン152を押し当ててリミットスイッチ151を作動させる検知板153が固定されている。
【0027】
図3は、
図2の固定レール(ローアーレール)120にスライドレール(アッパーレール)110を装着した状態をA−A方向から見た図である。スライドレール(アッパーレール)110には、磁気センサ141とリミットスイッチ151とを装着したセンサーブラケット130が固定されており、固定レール(ローアーレール)120には、検知ブラケット142と、検知板153が固定されている。
【0028】
スライドレール(アッパーレール)110が移動して磁気センサ141が検知ブラケット142の上部に位置すると、磁気センサ141は磁性体である検知ブラケット142を検知する。このとき、磁気センサ141と検知ブラケット142との間隔は、磁気センサ141の検出感度にもよるが、通常1〜3mm程度に設定する。
【0029】
設定間隔が1mmよりも狭いと磁気センサ141が検知ブラケット142に衝突して破壊する危険性があり、設定間隔が3mmより大きくなると、検出感度が低下して磁気センサ141による検知ブラケット142の検出ができなくなってしまう可能性がある。したがって、磁気センサ141と検知ブラケット142との間隔は、初期に設定した状態から変動しないように磁気センサ141と検知ブラケット142とをそれぞれ固定する必要がある。
【0030】
図4は、固定レール(ローアーレール)120にスライドレール(アッパーレール)110を装着し、スライドレール(アッパーレール)110が後退端に位置した状態、すなわちシートクッション101を後方にスライドさせた状態の正面図を示す。この状態では、磁気センサ141が検知ブラケット142の位置からずれており、磁気センサ141は検知ブラケット142を検知する。
【0031】
この状態における磁気センサ141の出力信号レベルをうけて、図示していない制御部は、シートベルト104の引込み力(着座した搭乗者のシートベルトによる拘束力又はシートベルトの張力)が予め記憶しておいた第1の状態になるように、図示していないシートベルト駆動機構部を制御する。
【0032】
一方、
図5には、搭乗者がシートクッション101の前後方向の位置をかえて、スライドレール(アッパーレール)110が後退端に位置した状態、すなわちシートクッション101を後方にスライドさせた状態から少し前方にスライドさせた状態の正面図を示す。この状態では、磁気センサ141が検知ブラケット142の上面に位置しており、磁気センサ141が磁性体で形成された検知ブラケット142を検知していない。
【0033】
また、図示していない制御部は、シートベルト104の引込み力(着座した搭乗者のシートベルトによる拘束力又はシートベルトの張力)が予め記憶しておいた第2の状態(第1の状態よりも小さい拘束力又は張力)になるように、図示していないシートベルト駆動機構部を制御する。これにより、シートクッション101を前方にスライドさせても、着座した搭乗者のシートベルトによる拘束力をスライド前(クッションシートが後方にあって、磁気センサ141が検知ブラケット142を検知していないとき)とほぼ同じに設定することができ、着座した搭乗者の快適性を損なわないようにすることができる。
【0034】
図6は、シートバック102をシートクッション101の側に倒して、図示していないセンサでシートバック102が倒れたのが確認された後に、シートクッション101と一緒に、スライドレール駆動モータ160で駆動してスライドレール(アッパーレール)110を前方にスライドさせて、リミットスイッチ151でスライドレール(アッパーレール)110のスライドの前進端を検出した状態を示している。スライドの前進端において、リミットスイッチ151のスイッチボタン152が検知板153に押し当てられて、リミットスイッチ151が作動する。図示していない制御部は、このリミットスイッチ151からの信号を受けて、スライドレール駆動モータ160を停止させる。
【0035】
図7は、
図4に示した状態において、後部座席に着座した搭乗者の足先Tがシートの下部に入り込んで、センサーブラケット130に当たっている状態を示している。このように、後部座席の搭乗者の足先Tがセンサーブラケット130に当たると、センサーブラケット130は折り曲げる力を受ける。
【0036】
図8に、センサーブラケット130の平面図を示す。センサーブラケット130には、磁気センサ141を取り付けるための穴131と、リミットスイッチ151を取り付けるための穴132が形成されている。また、センサーブラケット130は、ハッチング1301を施した領域の複数の箇所でスライドレール(アッパーレール)110にねじ又はボルトで又は溶接により固定されている。
【0037】
磁気センサ141を取り付けるための穴131とリミットスイッチ151を取り付けるための穴132の
図8における上下方向の位置が異なるため、磁気センサ141を取り付けるための穴131が形成されている側の端部133は、リミットスイッチ151を取り付けるための穴132が形成されている側の端部134よりも引込んでいる。
【0038】
図7に示した状態は、
図8においてリミットスイッチ151を取り付けるための穴132が形成されている側が紙面の上方に押し上げる力を受けている状態になる。
【0039】
ここで、センサーブラケット130には、磁気センサ141を取り付けるための穴131が形成されている側と、リミットスイッチ151を取り付けるための穴132が形成されている側との間に切り欠きであるスリット部135が形成されている。このような形状を有してスライドレール(アッパーレール)110に固定されたセンサーブラケット130において、リミットスイッチ151を取り付けるための穴132が形成されている側が
図8で紙面の裏側から表側に押し上げる力を受けた場合に、この押し上げる力はスリット部135に集中する。
【0040】
その結果、磁気センサ141を取り付けるための穴131が形成されている側は変形しにくくなる。これにより、磁気センサ141の高さは変化することがなく、磁気センサ141と検知ブラケット142との間隔を一定に保つことができる。
【0041】
このように、センサーブラケット130のことにより、リミットスイッチ151を取り付ける側に外力が加わっても、磁気センサ141を取り付ける側は外力の影響をほとんど受けなくすることができ、高さの変化に敏感な磁気センサ141の高さを一定に維持することが可能になる。
【0042】
これにより、着座した搭乗者がシートをスライドさせたときに、磁気センサ141で検知ブラケット142を確実に検出することができ、着座した搭乗者のシートベルトによる拘束力の調整を確実に行うことができる。
【0043】
以上、本実施例に拠れば、リミットスイッチの側に外力が加わっても磁気センサの側に影響を及ぼすことがないようにして磁気センサとリミットスイッチとを共通のブラケットに搭載することを可能にした。これにより、磁気センサとリミットスイッチとをよりシンプルな構成で、スライドレール(アッパーレール)110に取り付けることが可能になった。
【0044】
[変形例1]
実施例1においては、センサーブラケット130の磁気センサ141を取り付ける側とリミットスイッチ151を取り付ける側との間にスリット部135を形成した例を説明したが、本変形例1においては、
図8で説明したセンサーブラケット130に替えて、
図9に示すようなセンサーブラケット130−1を用いた例を説明する。センサーブラケット130−1以外の構成は、実施例1で説明したものと同じであるので、説明を省略する。
【0045】
本変形例1におけるセンサーブラケット130−1は、センサーブラケット130の場合と同様に、磁気センサ141を取り付けるための穴131と、リミットスイッチ151を取り付けるための穴132が形成されている。
【0046】
本変形例1におけるセンサーブラケット130−1は、センサーブラケット130の場合のスリット部135が形成されていない。その代わりに、磁気センサ141を取り付けるための穴131が形成されている側からリミットスイッチ151を取り付けるための穴132が形成されている側にかけて、センサーブラケット130−1の端部付近の折り曲げ部136がほぼ直角に折り曲げられている。また、磁気センサ141を取り付けるための穴131と端面の折り曲げ部136との間にはリブ137が形成されている。これにより、センサーブラケット130−1の
図9における紙面の裏側から表側の曲げに対する剛性を高くすることができる。特に、磁気センサ141を取り付けるための穴131が形成されている側にはリブ137も形成されているので、紙面の裏側から表側の曲げに対する剛性をより高くなっている。
【0047】
図9におけるB−B断面を、
図10に示す。実施例1の場合と同様に、リミットスイッチ151を取り付ける側に後部座席の搭乗者の足先Tが引っかかることにより外力が加わっても、磁気センサ141を取り付ける側は曲げに対して高い剛性を有しているのでほとんど変形せず、高さの変化に敏感な磁気センサ141の高さを一定に維持することが可能になる。
【0048】
これにより、着座した搭乗者がシートをスライドさせたときに、磁気センサ141で検知ブラケット142を確実に検出することができ、着座した搭乗者のシートベルトによる拘束力の調整を確実に行うことができる。
【0049】
[変形例2]
変形例1におけるセンサーブラケット130−1は、磁気センサ141を取り付けるための穴131が形成されている側からリミットスイッチ151を取り付けるための穴132が形成されている側にかけて、折り曲げ部136がほぼ直角に折り曲げられて形成した。
【0050】
これに対して
図11に示した本変形例2におけるセンサーブラケット130−2においては、折り曲げ部136をほぼ直角に折り曲げる変わりに、磁気センサ141を取り付けるための穴131の両側とリミットスイッチ151を取り付ける側の穴132の一方の側にリブ138と139を形成した。
【0051】
図11におけるC−C断面を、
図12に示す。磁気センサ141を取り付けるための穴131の両側にリブ138と139とが形成されており、
図11の紙面の裏側から表側の曲げに対する剛性が高くなっている。また、リミットスイッチ151を取り付ける穴132が形成された側に対して磁気センサ141を取り付けるための穴131が形成された側のほうがリブ139が形成されている分曲げ剛性がより強くなっているので、実施例1の場合と同様に、リミットスイッチ151を取り付ける側に後部座席の搭乗者の足先Tが引っかかることにより外力が加わっても、磁気センサ141を取り付ける側はほとんど変形せず、高さの変化に敏感な磁気センサ141の高さを一定に維持することが可能になる。
【0052】
これにより、着座した搭乗者がシートをスライドさせたときに、磁気センサ141で検知ブラケット142を確実に検出することができ、着座した搭乗者のシートベルトによる拘束力の調整を確実に行うことができる。
【0053】
上記に説明した実施例は本発明の一実施の形態を説明するものであって、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、上記実施例で説明した構成の一部をそれと等価な機能を有する手段で置き換えたものも、または、実質的でない機能の一部を省略したものも本発明に含まれる。