特許第6722774号(P6722774)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6722774
(24)【登録日】2020年6月24日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】薬剤送達装置のための補助装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/315 20060101AFI20200706BHJP
【FI】
   A61M5/315
【請求項の数】15
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-565716(P2018-565716)
(86)(22)【出願日】2017年5月22日
(65)【公表番号】特表2019-517889(P2019-517889A)
(43)【公表日】2019年6月27日
(86)【国際出願番号】EP2017062260
(87)【国際公開番号】WO2017215887
(87)【国際公開日】20171221
【審査請求日】2019年2月12日
(31)【優先権主張番号】16174876.9
(32)【優先日】2016年6月16日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】318014474
【氏名又は名称】エス・ハー・エル・メディカル・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SHL MEDICAL AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サール,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ホルムクビスト,アンデシュ
【審査官】 竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−520583(JP,A)
【文献】 特表2014−516599(JP,A)
【文献】 特表2012−519026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/00 − 5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤送達装置(2;2’)に設置されるように構成される補助装置(1;1’;1”)であって、前記補助装置は、
ケーシング(3)と、
前記ケーシング(3)によって受容され、かつ薬剤送達装置(2;2’)のトリガ(6)を作動するように構成されるボタン(5;5’)と、を備え、前記ボタン(5;5’)は、前記ケーシング(3)に対して初期の格納位置から拡張位置へ移動可能であるように構成され、前記補助装置(1;1’;1”)はさらに、
前記ボタン(5;5’)を前記ボタンの前記格納位置にロックして前記ボタン(5;5’)の前記格納位置から前記拡張位置への移動を防止するように構成されるボタンロック部材(7)を備え、
前記ボタンロック部材(7)は、前記補助装置(1;1’;1”)が薬剤送達装置(2;2’)に設置されるときにボタン(5;5’)を解放することにより、前記ボタン(5;5’)の前記格納位置から前記拡張位置への移動を可能にするように構成される、補助装置(1;1’;1”)。
【請求項2】
前記ボタンロック部材(7)は、前記ボタン(5;5’)と係合して前記ボタン(5;5’)の前記格納位置から前記拡張位置への移動を防止するように構成される、径方向可撓性アーム(7b)を備える、請求項1に記載の補助装置(1;1’;1”)。
【請求項3】
前記ボタン(5;5’)は、第1の表面を有する径方向フランジ(5b)を有し、前記径方向可撓性アーム(7b)は、前記第1の表面に当接して前記ボタン(5;5’)が前記格納位置から前記拡張位置へ移動することを防止するように構成される遠位端部を有する、請求項2に記載の補助装置(1;1’;1”)。
【請求項4】
前記径方向可撓性アーム(7b)は、前記径方向可撓性アーム(7b)が径方向に付勢されていない状態で、前記径方向フランジ(5b)の前記第1の表面に当接するように構成される、請求項3に記載の補助装置(1;1’;1”)。
【請求項5】
前記径方向可撓性アーム(7b)は、前記補助装置(1;1’;1”)が前記薬剤送達装置(2;2’)に設置されるときに、前記径方向フランジの前記第1の表面から離れるように径方向外側に曲げられるように構成される、請求項4に記載の補助装置(1;1’;1”)。
【請求項6】
前記ボタンロック部材(7)は、前記補助装置(1;1’;1”)が薬剤送達装置(2;2’)に設置されることで前記ボタン(5;5’)の前記格納位置から前記拡張位置への移動が可能であることによって前記ボタン(5;5’)が前記拡張位置にある状態で、前記補助装置(1;1’;1”)が前記薬剤送達装置(2;2’)から取り外されたときには、前記ボタン(5;5’)の前記拡張位置から前記格納位置への移動を防止するように構成される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の補助装置(1;1’;1”)。
【請求項7】
前記径方向フランジ(5b)は、前記ボタン(5;5’)が前記拡張位置にあり、前記補助装置(1;1’;1”)が前記薬剤送達装置(2;2’)から取り外されたときに、前記径方向可撓性アーム(7b)と係合して前記ボタン(5;5’)の前記拡張位置から前記格納位置への移動を防止するように構成される、前記第1の表面と反対の第2の表面を有する、請求項3に従属する請求項6に記載の補助装置(1;1’;1”)。
【請求項8】
電子モジュール(11)であって、前記電子モジュール(11)を活性化するように構成される第1のスイッチ(12)を有する電子モジュール(11)を備え、前記第1のスイッチ(12)は、前記ボタン(5;5’)の前記格納位置から前記拡張位置への移動によって前記電子モジュール(11)を活性化するように作動するように構成される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の補助装置(1;1’;1”)。
【請求項9】
前記電子モジュール(11)は、前記ボタン(5;5’)の下側に設置されるように構成され、前記第1のスイッチ(12)は、前記電子モジュール(11)に設置されるように構成される、請求項8に記載の補助装置(1;1’;1”)。
【請求項10】
前記ケーシング(3)は、先細遠位内側空間を規定し、前記第1のスイッチ(12)は、前記ボタン(5;5’)が前記格納位置から前記拡張位置に移動されるときに前記ケーシング(3)の前記先細遠位内側空間の一部を形成する内壁(3b)に接触することによって、前記電子モジュール(11)を活性化するように構成される、請求項8または請求項9に記載の補助装置(1;1’;1”)。
【請求項11】
前記ボタンロック部材(7)は、前記ケーシング(3)に固定的に設置されるように構成される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の補助装置(1;1’;1”)。
【請求項12】
前記ボタン(5;5’)および前記ボタンロック部材(7)は、前記ボタン(5;5’)の前記ボタンロック部材(7)に対する線形移動を可能にし、かつ前記ボタン(5)と前記ボタンロック部材(7)との間の相対回転を防止するように構成される、協働する案内構造(5a,7a)を有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の補助装置(1;1’;1”)。
【請求項13】
前記ボタン(5)の下方から近位方向に、軸方向に延在する細長い突出部(9’a)を備え、細長い突出部(9’a)は、薬剤送達装置(2’)のトリガ(6)を作動するように構成される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の補助装置(1;1’;1”)。
【請求項14】
前記ボタン(5;5’)を前記拡張位置に向けて付勢するように構成される弾性部材(13)と、薬剤送達装置(2)のトリガ(6)との機械的接触を検知するように構成される第2スイッチ(15)とを備える、請求項1〜13のいずれか1項に記載の補助装置(1;1’;1”)。
【請求項15】
筐体(4)と、
前記筐体(4)の遠位端部に延在されるように構成されるトリガ(6)と、
請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の補助装置(1;1’;1”)であって、前記筐体(4)の遠位端部に設置されて前記補助装置(1;1’;1”)の前記ボタン(5;5’)によって前記トリガ(6)の作動を可能にするように構成される、補助装置(1;1’;1”)と、を備え、
前記ボタンロック部材(7)は、前記筐体(4)または前記トリガ(6)によって径方向に撓んで前記補助装置(1;1’;1”)の前記ボタン(5;5’)を解放するように構成される、薬剤送達装置(1;1’;1”)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は、概して、医療機器に関する。特に、薬剤送達装置のための補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
自動注射器などの現代の薬剤送達装置は、使用者が自分で薬剤を投与可能なように薬剤投与を容易にするように設計される。患者が薬剤送達を扱うこの自由は、遵守または順守のコンセプトをもたらして、病気の治療においてますます重要な領域になる。遵守は、医師によって処方されたとおりの患者の薬剤投与スキームの管理ならびに処方された薬剤および薬剤投与スキームが患者の病気の治療において達成されたかどうかの評価を含む。
【0003】
使用者が処方されるとおりの薬剤を投与しないことは比較的一般的であることがわかっている。患者が処方されたスキームに従うことに失敗する原因は、失念、薬物投与に伴う痛み、または薬剤の副作用から経験される不快感を含む。
【0004】
薬物投与スキームに従うことに対する失敗は、患者が病気から回復することをあまり経験できないことにつながる場合があり、さらに、追加の治療を必要とする二次的な疾患につながり得る。これは、同様に、健康管理システム上の余計な圧力をもたらすこともある。
【0005】
上記を考慮して、患者および健康管理の両方のために、処方されたとおりの薬剤投与の発生を増加させるための管理を容易にする。
【0006】
WO2007/107564A1は、機械的な薬剤送達装置のための電子モジュールを開示しており、薬剤送達装置の動作を管理することを目標としている。この文献は、薬剤送達装置上へ取り付けられる電子モジュールを開示している。電子モジュールは、電子モジュールが取り付けられる薬剤送達装置の内側部分の相対移動に反応して生成される聴覚的なおよび/または振動の信号を測定することが可能である。このような内側部分は、移動の間にたとえばクリック音などの聴覚的な音を生成する機械的部分であり得る。電子モジュールは、たとえば容電性のタッチパッドが活性化されるときに、モジュールに動力を供給する組込み式バッテリによって動力を供給される。この活性化は、たとえば指の先端がタッチパッド上に配置されたときに行われる。
【0007】
WO2007/107564A1では、使用者が電子モジュール上に配置されたタッチパッドに触れた場合に、バッテリ、したがって電子モジュールが活性化される。このタッチパッドは、薬剤送達装置の薬剤動作とは関連しない。それ故に、使用者が薬物投与の前に電子モジュールを活性化するのを忘れるというリスクがある。これは、これに続く薬物投与が記録されないことにつながるだろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
概要
本開示の大まかな目的は、従来技術の課題を解決するまたは少なくとも軽減する薬剤送達装置のための補助装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本開示の第1の局面によれば、薬剤送達装置に設置されるように構成される補助装置が提供される。補助装置は、ケーシングと、ケーシングによって受容され、かつ薬剤送達装置のトリガを作動するように構成されるボタンと、を備える。ボタンは、ケーシングに対して初期の格納位置から拡張位置へ移動可能であるように構成される。補助装置はさらに、ボタンをボタンの格納位置にロックしてボタンの格納位置から拡張位置への移動を防止するように構成されるボタンロック部材を備える。ボタンロック部材は、補助装置が薬剤送達装置に設置されるときにボタンを解放することにより、ボタンの格納位置から拡張位置への移動を可能にするように構成される。
【0010】
これにより、使用者は、補助装置が薬剤送達装置に設置されるまでボタンを作動することから防がれる。特に、ボタンは、薬剤送達装置の外形によってロック解除される。
【0011】
1つの実施形態によれば、ボタンロック部材は、ボタンと係合してボタンの格納位置から拡張位置への移動を防止するように構成される、径方向可撓性アームを備える。
【0012】
1つの実施形態によれば、ボタンは、第1の表面を有する径方向フランジを有する。径方向可撓性アームは、第1の表面に当接してボタンが格納位置から拡張位置へ移動することを防止するように構成される、遠位端部を有する。
【0013】
1つの実施形態によれば、径方向可撓性アームは、径方向可撓性アームの径方向に付勢されていない状態で、径方向フランジの第1の表面に当接するように構成される。
【0014】
1つの実施形態によれば、径方向可撓性アームは、補助装置が薬剤送達装置に設置されるときに、径方向フランジの第1の表面から離れるように径方向外側に曲げられるように構成される。
【0015】
1つの実施形態によれば、ボタンロック部材は、ボタンの拡張位置から格納位置への移動を防止するように構成される。
【0016】
1つの実施形態によれば、径方向フランジは、ボタンが拡張位置にあり、補助装置が薬剤送達装置から取り外されたときに、径方向可撓性アームと係合してボタンの拡張位置から格納位置への移動を防止するように構成される、第1の表面と反対の第2の表面を有する。
【0017】
1つの実施形態は、電子モジュールと、電子モジュールを活性化するように構成される第1のスイッチとを備える。第1のスイッチは、ボタンの格納位置から拡張位置への移動によって電子モジュールを活性化するように作動されるように構成される。
【0018】
1つの実施形態によれば、電子モジュールは、ボタンの下側に設置されるように構成される。第1のスイッチは、電子モジュールに設置されるように構成される。
【0019】
1つの実施形態によれば、ケーシングは、先細遠位内側空間を規定する。第1のスイッチは、ボタンが格納位置から拡張位置へ移動されるときにケーシングの先細遠位内側空間の一部を形成する内壁に接触することによって、電子モジュールを活性化するように構成される。
【0020】
これにより、ボタンの遠位方向の移動によって、補助装置が薬剤送達装置に嵌められてはじめて電子モジュールが活性化されることが保証され得る。
【0021】
1つの実施形態によれば、ボタンロック部材は、ケーシングに固定的に設置されるように構成される。
【0022】
1つの実施形態によれば、ボタンおよびボタンロック部材は、ボタンのボタンロック部材に対する線形移動を可能にし、かつボタンとボタンロック部材との間の相対回転を防止するように構成される協働する案内構造を有する。
【0023】
1つの実施形態は、ボタンの下方から近位方向に、軸方向に延在する細長い突出部を備える。細長い突出部は、薬剤送達装置のトリガを作動するように構成される。
【0024】
1つの実施形態は、ボタンを拡張位置に向けて付勢するように構成される弾性部材と、薬剤送達装置のトリガとの機械的接触を検知するように構成される第2のスイッチとを備える。
【0025】
本開示の第2の局面によれば、薬剤送達装置であって、筐体と、筐体の遠位端部に延在されるように構成されるトリガと、第1の局面にしたがう補助装置であって、筐体の遠位端部に設置されて補助装置のボタンによってトリガの作動を可能にするように構成される補助装置と、を備える。ボタンロック機構は、筐体またはトリガによって径方向に撓んで補助装置のボタンを解放するように構成される。
【0026】
一般に、請求項において用いられるすべての用語は、本明細書で明示的に規定されない限り、技術分野におけるそれらの通常の意味に従って解釈されるべきである。a/an/the 要素、装置、部品、手段などに対するすべての参照は、明示的に規定されない限り、要素、装置、部品、手段などの少なくとも1つの例を参照するものとして素直に解釈される。
【0027】
本発明概念の特定の実施形態が、以下、例として、添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】薬剤送達装置のための補助装置の例の斜視図である。
図2】そこに設置される図1の補助装置を有する、薬剤送達装置の例の斜視図である。
図3図1の補助装置の分解図である。
図4a図1の補助装置の長手方向セクションを示す図である。
図4b図4aに示される長手方向と90度の角度をなす、図1の補助装置の長手方向セクションである。
図5a】様々な動作の段階における補助装置を含む、図2の薬剤送達装置の長手方向セクションを示す図である。
図5b】様々な動作の段階における補助装置を含む、図2の薬剤送達装置の長手方向セクションを示す図である。
図5c】様々な動作の段階における補助装置を含む、図2の薬剤送達装置の長手方向セクションを示す図である。
図5d】様々な動作の段階における補助装置を含む、図2の薬剤送達装置の長手方向セクションを示す図である。
図5e】様々な動作の段階における補助装置を含む、図2の薬剤送達装置の長手方向セクションを示す図である。
図6a】補助装置の別の例の分解図である。
図6b図6aに示される補助装置とともに使用される薬剤送達装置の例の斜視図である。
図6c】薬剤送達装置に設置される図6aに示される補助装置の長手方向セクションを示す図である。
図7】薬剤送達装置のための補助装置のさらに別の例を示す図である。
図8a】様々な動作の段階における薬剤送達装置に設置される、図7の補助装置の長手方向セクションを示す図である。
図8b】様々な動作の段階における薬剤送達装置に設置される、図7の補助装置の長手方向セクションを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
詳細な説明
ここで、例示の実施形態が示される添付の図面を参照して、本発明概念が以下により十分に説明される。しかしながら、本発明概念は、多くの異なる形態で具体化されてもよく、本明細書に記載される実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、この開示が綿密かつ完全であり、かつ本発明概念の範囲を当業者に十分に伝達するように、例として提供されるものである。本説明にわたって、類似の符号は類似の要素を意味する。
【0030】
補助装置とともに用いられるとき、本明細書で用いられる用語「近位端部」は、薬剤送達装置とともに組み立てられたときに薬剤送達装置の遠位端部を受容するように構成される、補助装置の端部を意味する。薬剤送達装置の近位端部は、薬剤排出の間に注射位置に向けられることとなる端部である。「遠位端部」は、近位端部に対して反対側の端部である。同様の考えが、補助装置の構成要素を参照するときにも当てはまる。「近位方向(proximal direction)」および、同等に「近位方向に(proximally)」では、キャップアセンブリの中心軸に沿った、遠位端部から近位端部に向かう方向が意味される。「遠位方向(distal direction)」または「遠位端部に(distally)」では、「近位方向」と反対の方向が意味される。
【0031】
本開示は、たとえば使い捨ての自動注射器または多用途自動注射器といった使い捨てまたは多用途の薬剤送達装置などの、薬剤送達装置のための補助装置に関する。補助装置は、ケーシングと、移動可能なボタンと、ボタンロック部材とを有する。
【0032】
補助装置は、薬剤送達装置に設置されるように構成される。補助装置は、その遠位端部において、薬剤送達装置と同軸に設置されるように構成されてもよい。補助装置のボタンは、それに設置されるときに薬剤送達装置の活性化を可能にするように構成される。この目的のために、ボタンは、ボタンの線形移動が薬剤送達装置の活性化を生じさせるように、薬剤送達装置のトリガと協働するように構成される。ボタンは、初めは、すなわち薬剤送達装置に設置される前は、ボタンロック部材によって、格納位置から拡張位置までの移動を防止されるように構成される。ボタンは、補助装置が薬剤送達装置に設置されるときに解放されるように構成される。特に、ボタンロック部材は、補助装置が薬剤送達装置に設置されるときに薬剤送達装置の外形と協働することにより、ボタンをそのロック状態から解放するように構成される。
【0033】
図1を参照して、補助装置の例が示される。補助装置1は、補助装置1の長手方向軸Aに平行に延在する貫通開口部を備える、中空のケーシング3を有する。補助装置1は、ケーシング3の貫通開口部に受容されるボタン5をさらに有する。ボタン5は、図1に示される、ケーシング3に対する格納位置と、ケーシング3に対する拡張位置との間で、位置を変えることが可能である。ボタン5は、初めは、すなわち薬剤送達装置に設置される前は、格納位置にロックされるように構成される。補助装置1が薬剤送達装置に設置されるときに、ボタン5が格納位置から拡張位置へ移動可能であるように、補助装置1は、薬剤送達装置の遠位端部と協働するように設計される。
【0034】
図2を見ると、本体4を有する薬剤送達装置2の例が示される。補助装置1は、本体4の遠位端部に設置される。
【0035】
図3は、補助装置1の分解図を示す。この図では、ケーシング3が補助装置1の長手方向に延在する貫通開口部3aを有することをよりよく理解できる。ケーシング3は、ボタン5を移動可能に受容するように構成される。
【0036】
補助装置1は、ボタンロック部材7をさらに備える。ボタンロック部材7は、ケーシング3によって、特に貫通開口部3aによって受容されるように構成される。ボタンロック部材7は、ケーシング3の内面に沿って延在するように構成されてもよい。それ故に、ボタンロック部材7は、薬剤送達装置2の遠位端部を受容するように構成される、実質的に円筒形の形状を有してもよい。ボタンロック部材7は、ケーシング3に固定された態様で配置されるように構成される。さらに、ボタンロック部材7は、ボタン5に対して固定的に配置される。
【0037】
ボタンロック部材7は、長手方向に延在する案内構造7aを有し、ボタン5は、長手方向に延在する対応する案内構造5aを有する。案内構造7aおよび5aは、協働するように構成されて、ボタンロック部材7に対するボタン5の線形移動を可能にし、ボタンロック部材7に対するボタン5の回転を防止する。さらに、案内構造7aおよび5aは、近位方向におけるボタン5の移動の量を制限するように構成される。ここに、案内構造7aおよび5aは、ケーシング3に対するボタン5の最大格納可能性を規定する。
【0038】
本実施例によれば、ボタン5の案内構造5aおよびボタンロック部材7は、周方向に分散される。
【0039】
案内構造5aは、3つの脚部によって例示される。しかしながら、ボタン5の案内構造5aは、3以外の数でより少なくまたはより多くてもよい。たとえば、2つの案内構造、たとえば脚部、または3より多い案内構造、たとえば脚部であってもよい。ボタンロック部材7の案内構造7aは、たとえば、それぞれの案内構造5aもしくは脚を受容して、ボタン5の案内構造5aがボタンロック部材7の案内構造7aに入ることを可能にするように構成される、多数の長手方向の切欠きまたは凹部の形態であってもよい。
【0040】
上記の構成の代替として、ボタンの案内構造が代わりに切欠きまたは凹部であり、ボタンロック部材の案内構造が脚部であってもよい。
【0041】
ボタン5は、径方向フランジ5bをさらに有する。径方向フランジ5bは、径方向フランジ5bの遠位径方向表面を形成する第1の表面と、第1の表面と反対側の第2の表面とを有する。第2の表面は、径方向フランジ5bの近位径方向表面を形成する。ボタンロック部材7は、補助装置1の長手方向軸に平行に延在する径方向可撓性アーム7bを有する。径方向可撓性アーム7bは、初期の径方向に付勢されていない状態で、ケーシング3の内壁から径方向に離間されるように構成される。ここに、径方向可撓性アーム7bは、ボタンロック部材7がケーシング3に配置されるときに径方向可撓性アーム7bをケーシング3の内壁から離間する、図4aに示される径方向内側に延在する部分7dを含んでもよい。
【0042】
径方向可撓性アーム7bは、ボタン5が格納位置にあるときまたは実質的に格納位置にあるとき、ボタン5と係合するように構成される。特に、径方向可撓性アーム7bは、径方向可撓性アーム7bが径方向外側に押されることによって径方向フランジ5bとの係合から離されない限り、ボタン5が格納位置から拡張位置に向かって押そうとする力を受けるときに、径方向フランジ5bを阻止し、かつ径方向フランジ5bの第1の表面に当接するように構成される、阻止表面を有する。径方向可撓性アーム7bは、ボタン5の第1の表面に当接することによってボタン5が格納位置から拡張位置へ移動することを防止する、ラッチ7cを有してもよい。補助装置1が薬剤送達装置2の本体の遠位端部に設置されるとき、径方向可撓性アーム7bは、本体の形状によって外側に曲げられ、これによって格納位置にロックされているボタン5を解放する。これによって、補助装置1が薬剤送達装置2上へ配置される間に、ボタン5が薬剤送達装置のトリガによって拡張位置まで押されることができる。
【0043】
補助装置1は、いずれもケーシング3によって受容されるように構成される押し蓋9および電子モジュール11と、電子モジュール11に設置されるように構成される第1のスイッチ12とをさらに有する。電子モジュール11は、ボタン5に対して固定的に配置されるように構成される。さらに、電子モジュール11は、ボタン5に対して近位方向に配置されるように構成される。したがって、電子モジュール11は、ボタン5の下方に配置されるように構成される。ボタン5は、1つの変形例によれば、電子モジュール11を受容するように構成される空間を有してもよい。
【0044】
電子モジュール11は、たとえば1つ以上のバッテリなどのエネルギ貯蔵装置11aと、回路基板11bとを含む。処理回路11cが、回路基板11bおよび第1のスイッチ12上に設置される。第1のスイッチ12は、電子モジュール11を活性化して、たとえばエネルギ貯蔵装置11aが処理回路11cに動力を供給することを可能にするように構成されてもよい。第1のスイッチ12は、たとえば処理回路11cを始動させることによって、注射のタイムスタンプ生成を開始するように構成されてもよい。
【0045】
たとえば、電子モジュール11は、任意には、たとえば順守/遵守目的のために処理回路11cから得られたタイムスタンプデータなどのデータを伝達するように構成されるアンテナ、および/または、補助装置が設置される薬剤送達装置の適切な使用に関するフィードバックもしくは情報を使用者に提供する、振動器などの触覚表示器もしくは視覚表示器をさらに備えてもよい。
【0046】
電子モジュール11は、1つの変形例によれば、マイク、および使用対象となる薬剤送達装置の薬剤投与手順の特徴的な振動を検知するように構成される振動センサのうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0047】
押し蓋9は、電子モジュール11を保護し、薬剤送達装置の遠位端部と協働するように構成される。押し蓋9は、電子モジュール11に対して近位方向に配置される。
【0048】
ここで図4aを見ると、補助部材1の長手方向セクションが示される。長手方向セクションは、図3の線A−Aに沿ったものである。図4aによれば、ボタン5は、ケーシング3に対して格納位置にある。径方向可撓性アーム7bは、径方向フランジ5bを越えて遠位方向に延在する。径方向表面を規定するラッチ7cは、ボタン5が格納位置にあるときに、ボタン5の遠位方向の線形移動を制限するように構成される。
【0049】
図4bでは、図3の線B−Bに沿った、すなわち図4aに示される長手方向セクションに対して90度の角度における長手方向セクションに、補助装置1が、示される。ボタン5は、ケーシング3に対して格納位置にある。ケーシング3は、傾斜しており、かつケーシング3の内側空間を規定する内壁3bを有する、遠位部分を有する。内側空間は、遠位方向において先細である。
【0050】
ボタン5の格納位置では、第1のスイッチ12は、内壁3bから離れて径方向に離間されるように構成される。ボタン5が薬剤送達装置に設置されることによってそのロック状態から解放されたとき、第1のスイッチ12は、ボタン5と同時に遠位方向に動かされ、最終的に内面3bに接触する。これによって、第1のスイッチ12が作動されることから、電子モジュール11が活性化される。
【0051】
ここで、図5a〜図5dを参照して、補助装置1の薬剤送達装置2への設置手順が説明される。
【0052】
薬剤送達装置2は、薬剤送達装置2の本体の一部を形成する遠位端部分4aを有する。薬剤送達装置2は、遠位端部分4aに対する拡張位置から格納位置までの移動によって薬剤投与を活性化する、トリガまたは活性化ボタン6をさらに含み、この薬剤送達装置の機能性は、技術においてよく知られているため、本明細書ではさらに詳細には開示されない。
【0053】
図5aでは、補助装置1は薬剤送達装置2に取り付けられている最中である。トリガ6および遠位端部分4aの一部はケーシング3に受容されているが、トリガ6はまだ押し蓋9に達していない。例示の実施形態によれば、遠位端部分4aは、径方向可撓性アーム7bに当接して、矢印Bによって示されるように、補助装置1がさらに薬剤送達装置2を受容するにつれてそれを徐々に径方向外側に撓ませる。しかしながら、図5aに示される段階では、径方向可撓性アーム7bは、依然としてボタンの径方向フランジ5bを越えて遠位方向に延在し、ラッチが径方向フランジ5bを越えて径方向内側に延在した状態であるため、ボタン5の格納位置から拡張位置への移動を防止する。
【0054】
図5bは、図5aと異なる、すなわち図3の線B−Bに沿った長手方向セクションであって、図5aと同じ設置手順段階における長手方向セクションを示す図である。第1のスイッチ12がケーシング3の内壁3bから離間されるように配置されることがわかる。
【0055】
図5cは、設置段階が完了されたときを示す。補助装置1は、薬剤送達装置2の遠位端部のより多くの部分を受容している。ここで、遠位端部分4aは、ケーシング3によって十分に受容されており、径方向可撓性アーム7bは、矢印Bによって示されるように、遠位端部分4aによって径方向外側に撓む。それ故に、ラッチ7cが径方向フランジ5bから離されている、または径方向フランジ5bから径方向外側に移動されていることによって、ボタン5はケーシング3に対して格納位置から拡張位置まで遠位方向に移動することができる。この移動は、トリガ6を遠位方向に付勢する力が補助装置1を薬剤送達装置2に設置するのに必要とされるよりも大きいために生じており、したがって、トリガ6は、全設置手順の間その初期位置に維持される。
【0056】
図5dはまた、図5cに示される完了された設置段階であるが、図5bに示されるのと同じ長手方向セクションに沿った完了された設置段階を示す。ボタン5が格納位置から拡張位置に移動されるにつれて、第1のスイッチ12は、内壁3bと接触するまで内壁3b側に径方向に移動する。これによって、パワースイッチとして作用する第1のスイッチ12が作動されて、処理回路11cなどの回路基板11b上に設置される電子部品を活性化する。それ故に、第1のスイッチ12は、ある意味では、補助装置1が薬剤送達装置2に設置されることを検知するように構成される。
【0057】
補助装置1が薬剤送達装置2に設置されたとき、これらの2つの部品は、補助装置1の追加の機能性を有する薬剤送達装置を形成することがわかるだろう。したがって、薬剤送達装置2は使用できる状態になり、トリガ6は近位方向、すなわち拡張位置からその格納位置に向かってボタン5を押すことによって作動されることができる。
【0058】
図5eは、薬剤投与を始動させた後の、すなわちボタン5が格納位置に戻るように押されるためトリガ6を近位方向に移動させたときの、図5dに示されるのと同じ長手方向セクションを示す。第1のスイッチ12は、この場合、内壁3bに接触するまで、内壁3b側に再び移動する。この第1のスイッチ12と内壁3bとの間の第2の接触は、第1のスイッチ12を再び作動して、たとえば処理回路11cに注射のタイムスタンプを生成させて、たとえば回路基板11b上の電子部品を動作停止する。この場合、注射のタイムスタンプは、第1のスイッチ12が内壁3bに接触するときに生成される。アンテナは、このタイムスタンプを、補助装置1から伝達されたデータを処理するのに好適なアプリケーションを備え得る、たとえばスマートフォンまたはタブレットコンピュータといったモバイル機器などの遠隔装置に伝達するように構成される。
【0059】
いくつかの理由のためにボタン5が作動されない、すなわち格納位置までケーシング3の中へ押されず、ボタン5が拡張位置にあるときに補助装置1が薬剤送達装置2から取り外された場合、径方向可撓性アーム7bは、ボタン5を拡張位置にロックする。特に、径方向可撓性アーム7bの遠位端部は、補助装置1の取外しの際、径方向内側に撓んで径方向フランジ5bの第2の表面の下方、すなわち径方向フランジ5bに対して近位方向に移動して、ボタン5が拡張位置から格納位置へ移動されるのを防止する。それ故に、第1のスイッチ12は、この場合、二度作動されることを防がれる。
【0060】
図6aは、補助装置の別の変形例を示す。補助装置1’は、先に述べられた補助装置1と非常に似ている。補助装置1’と補助装置1との間の差異は、補助装置1’が異なるタイプの押し蓋9’を有するということである。押し蓋9’は、押し蓋9’の下側から近位方向に、すなわち近位側に、軸方向に延在する細長い突出部またはロッド9’aを有する。細長い突出部9’aは、補助装置1の中心軸と同軸上に延在する。細長い突出部9’aは、図6に示される、薬剤送達装置2’のトリガを作動させるように構成される。
【0061】
図6bは、補助装置1’とともに使用されるために適合される薬剤送達装置2’の実施例を示す。薬剤送達装置2’は、薬剤送達装置2と類似するが、実質的にトリガ6を囲む、異なる遠位端部分または後方端部4’aを有する。遠位端部分4’aは、薬剤送達装置2’の長手方向軸と同軸上に延在する貫通開口部4’bを有し、トリガ6に対する開口を提供する。細長い突出部9’aは、貫通開口部4’bによって受容されることによってボタン5が拡張位置から格納位置へ押されたときにトリガ6を作動させるように構成される。
【0062】
図6cは、薬剤送達装置2’に設置されている補助装置1’を示す。補助装置1’は、遠位端部分4’aに完全に受容されておらず、径方向可撓性アーム7bは、径方向フランジ5bから離されていない。補助装置1’をさらに遠位端部4’a上へ適用することによって、径方向可撓性アーム7bは先に説明されたように径方向外側に撓み、ボタン5はケーシング3に対して格納位置から拡張位置に移動されることができる。
【0063】
図6cでは、細長い突出部9’aは、貫通開口部4’bの中へ入れられていないが、それがそうされ、かつ補助装置1’がさらに薬剤送達装置2’上へ押されたとき、ボタン5は、格納位置から拡張位置まで押され、薬剤送達装置2’が使用できる状態になる。
【0064】
細長い突出部9’aと、薬剤送達装置2’の遠位端部分4’aの対応する設計とによって、薬剤送達装置2’が操作されない限り、薬剤送達装置2’の活性化は補助装置1’でのみ可能であることが保証されることができる。これは、電子モジュール11によって作成された、たとえばタイムスタンプなどの注射データがすべての注射について生成されることを保証する。
【0065】
図7は、補助装置のさらに別の実施例を示す。補助装置1”は、補助装置1に類似する。しかしながら、補助装置1”は、ボタン5’を拡張位置に向けて遠位方向に付勢するように構成される、ばねなどの弾性部材13をさらに含む。これによって、ボタン5’は、薬剤送達装置2に設置されたとき、ボタン5’が拡張位置から格納位置まで押された後、拡張位置まで戻る。ここに、ボタン5’には、複数の径方向突出部5’bが設けられてもよい。ボタンロック部材7は、近位フランジ7eを有してもよい。弾性部材13は、径方向突出部5’bと近位フランジ7eとの間に配置されるように構成されてもよく、これによって弾性部材13がボタン5’を遠位方向に付勢する。
【0066】
補助装置1”は、押し蓋9”の下側、すなわちその近位側に配置される第2のスイッチ15を備える、押し蓋9”をさらに有する。第2のスイッチ15は、薬剤送達装置1のトリガ6の遠位端面との接触を検知するように構成される。第2のスイッチ15がなければ、補助装置1”は、使用後に格納位置にあるトリガまたは活性化ボタンを有する使用済の薬剤送達装置に設置される場合があり、薬剤送達装置の形状は、第1のスイッチを作動させ、実施に応じて薬剤排出のタイプスタンプの生成を始動させることがある。しかしながら、第2スイッチ15によれば、補助装置1”が薬剤送達装置に設置されるときにトリガ6が格納位置にあり、かつ第2のスイッチに接触する場合に、薬剤送達装置が以前に使用されていないかどうか、または、トリガ6と第2のスイッチ15との間の接触が形成されない場合に、補助装置1”が使用済の薬剤送達装置に設置されるかどうかを検知可能である。それ故に、第2のスイッチ15は、第1のスイッチ12の作動が補助装置1”が未使用の薬剤送達装置2に設置される結果となるかまたはそうでないかを決定することを容易にする。
【0067】
図8aは、ボタン5’が拡張位置にセットされ、薬剤送達装置2が使用できる状態にあるときの、薬剤送達装置2に設置される補助装置1”を示す。図8bは、ボタン5’がカバー3の中へ、格納位置まで押されることによってトリガ6を作動された後の補助装置1”を示す。
【0068】
本明細書に提供される例のいずれかに対する代替物として、薬剤送達装置の遠位端部分の外形の代わりに薬剤送達装置のトリガの外形がボタンをロック解除するように、ボタンロック部材が構成されてもよい。
【0069】
本発明概念は、主として、いくつかの例を参照して上記に説明された。しかしながら、当業者にとって容易に理解されるように、添付の請求項によって規定される発明概念の範囲内で、上記に開示されたもの以外の実施形態が等しく可能である。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5a
図5b
図5c
図5d
図5e
図6a
図6b
図6c
図7
図8a
図8b