(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6722781
(24)【登録日】2020年6月24日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】単結晶インゴット成長用引き上げ制御装置およびこれに適用された引き上げ制御方法
(51)【国際特許分類】
C30B 29/06 20060101AFI20200706BHJP
C30B 15/20 20060101ALI20200706BHJP
【FI】
C30B29/06 502J
C30B15/20
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-5295(P2019-5295)
(22)【出願日】2019年1月16日
(65)【公開番号】特開2019-123661(P2019-123661A)
(43)【公開日】2019年7月25日
【審査請求日】2019年1月16日
(31)【優先権主張番号】10-2018-0006539
(32)【優先日】2018年1月18日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】511028928
【氏名又は名称】エスケー シルトロン カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】パク、ヒョヌ
【審査官】
谷本 怜美
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−279171(JP,A)
【文献】
特開2011−037667(JP,A)
【文献】
特開2005−145724(JP,A)
【文献】
特開2005−015298(JP,A)
【文献】
特開平10−095698(JP,A)
【文献】
特開平11−335198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 1/00−35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン融液に浸漬したシードと連結されたシードケーブルを回転および引き上げさせる引き上げ駆動部と、
既に設定された目標シード入力回転数(T_fin)が入力されることによってインゴットの長さごとの回転形態に合うようにリアルタイムに可変する目標シード出力回転数(T_fout)を出力し、前記目標シード出力回転数(T_fout)により前記引き上げ駆動部の回転数(f)を制御する引き上げ制御部と、
を含み、
前記引き上げ制御部は、
既に設定された目標シード入力回転数(T_fin)が入力されることによってインゴットの長さごとの回転形態が一定であるか否かを判断する判断部と、
前記判断部の判断の結果により関数形状に目標シード出力回転数(T_fout)を算出する演算部と、
前記演算部の算出結果により目標シード出力回転数(T_fout)を前記引き上げ駆動部に出力する出力部と、
を含む単結晶インゴット成長用引き上げ制御装置。
【請求項2】
前記演算部は、
前記判断部の判断の結果、インゴットの長さごとの回転形態が一定であると、sin関数に目標シード出力回転数(T_fout)を算出する、
請求項1に記載の単結晶インゴット成長用引き上げ制御装置。
【請求項3】
前記演算部は、
前記sin関数の平均値が前記目標シード入力回転数(T_fin)と一致するように前記目標シード出力回転数(T_fout)を算出する、
請求項2に記載の単結晶インゴット成長用引き上げ制御装置。
【請求項4】
前記演算部は、
前記判断部の判断の結果、インゴットの長さごとの回転形態が変化すると、linear関数に目標シード出力回転数(T_fout)を算出する、
請求項1に記載の単結晶インゴット成長用引き上げ制御装置。
【請求項5】
前記演算部は、
前記linear関数が前記目標シード入力回転数(T_fin)の最大値(max)から最低値(min)に一定に減少する勾配を有するように前記目標シード出力回転数(T_fout)を算出する、
請求項4に記載の単結晶インゴット成長用引き上げ制御装置。
【請求項6】
シリコン融液に浸漬したシードと連結されたシードケーブルを回転および引き上げさせる引き上げ駆動段階と、
既に設定された目標シード入力回転数(T_fin)が入力されることによってインゴットの長さごとの回転形態に合うようにリアルタイムに可変する目標シード出力回転数(T_fout)を出力し、前記目標シード出力回転数(T_fout)により前記シードケーブルの回転数(f)を制御する引き上げ制御段階と、
を含み、
前記引き上げ制御段階は、
既に設定された目標シード入力回転数(T_fin)が入力されることによってインゴットの長さごとの回転形態が一定であるか否かを判断する判断過程と、
前記判断過程の判断の結果により関数形状に目標シード出力回転数(T_fout)を算出する演算過程と、
前記演算過程の算出結果により目標シード出力回転数(T_fout)を出力して前記シードケーブルの回転数(f)を制御する出力過程と、
を含む単結晶インゴット成長用引き上げ制御方法。
【請求項7】
前記演算過程は、
前記判断過程の判断の結果、インゴットの長さごとの回転形態が一定であると、sin関数に目標シード出力回転数(T_fout)を算出する、
請求項6に記載の単結晶インゴット成長用引き上げ制御方法。
【請求項8】
前記演算過程は、
前記sin関数の平均値が前記目標シード入力回転数(T_fin)と一致するように前記目標シード出力回転数(T_fout)を算出する、
請求項7に記載の単結晶インゴット成長用引き上げ制御方法。
【請求項9】
前記演算過程は、
前記判断過程の判断の結果、インゴットの長さごとの回転形態が変化すると、linear関数に目標シード出力回転数(T_fout)を算出する、
請求項6に記載の単結晶インゴット成長用引き上げ制御方法。
【請求項10】
前記演算過程は、
前記linear関数が前記目標シード入力回転数(T_fin)の最大値(max)から最低値(min)に一定に減少する勾配を有するように前記目標シード出力回転数(T_fout)を算出する、
請求項9に記載の単結晶インゴット成長用引き上げ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シード回転数(seedrotation)をリアルタイムに可変して単結晶インゴットの偏心を制御できる単結晶インゴット成長用引き上げ制御装置およびこれに適用された引き上げ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体などの電子部品を生産するための素材として使用される単結晶インゴットは、チョクラルスキー(Czochralski、以下「CZ」という)法によって製造される。
【0003】
CZ法を用いて単結晶インゴットを製造する方法は、石英るつぼに多結晶シリコン(poly silicon)等の固体原料を充填してヒーターで加熱して溶融させてシリコン融液(melt)を形成し、安定化(stabilization)工程を経てシリコン融液内の気泡を除去する。その後、シード(seed)をシリコン融液にディッピング(dipping)させ、ネッキング(necking)を形成しつつ融液の上方にシードを徐々に引き上げることによって、ネッキング(necking)工程と、ショルダーリング(shouldering)工程と、ボディー成長(body growth)工程およびテーリング(tailing)工程を順に進める。
【0004】
しかし、るつぼ内部でシリコン融液から単結晶インゴットを成長させる間、シリコン融液の揺れる原因が、共振によることであることが分かった。
【0005】
また、融液の共振現象は、単結晶融液が減少することによって大きくなり、シードの回転数に対する整数倍に近いときに液面波動が著しく発生する傾向がある。単結晶インゴット成長が進行することにより融液量がさらに減少することによって融液の波動が徐々に沈む。
【0006】
特許文献1には、るつぼの回転数と結晶の回転数によって定められる融液を駆動する振動数が融液の共振振動数の95%〜105%の範囲に入らないように、るつぼ回転数およびシード回転数のうち一つを制御する単結晶の製造方法が開示されている。
【0007】
したがって、結晶成長中にるつぼ内の液面が揺れることを防止して結晶の転位化および多結晶化を防止することができる。
【0008】
通常、単結晶インゴット成長工程が1回進行する間、シード回転数(Seed rotation)は、一定に設定されたり、一定の勾配で下降する。シード回転数は、単結晶インゴット内で半径方向の酸素濃度(radial Oi)だけでなく軸方向の酸素濃度(axial Oi)を左右し、結晶領域の無欠陥領域の範囲が変わるようにもなる。
【0009】
もちろん、単結晶インゴットの軸方向の酸素濃度(axial Oi)は、るつぼの回転数でも制御できるが、単結晶インゴットの半径方向の酸素濃度(radial Oi)および結晶領域の無欠陥領域範囲は、シード回転数のみで制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】韓国公開特許第2003−0035940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特定工程の開発条件においては、シード回転数(f)が特定回転数(fo)に設定されることによってシリコン融液の共振現象がさらに頻繁に発生するようになる。このようなシリコン融液の共振現象により液面の揺れが発生し、シードケーブルがるつぼの偏心した位置で回転することによって結晶が偏心した状態で成長する偏心(orbit)現象が発生し、偏心現象によって単結晶インゴットは片側に偏ってジグザグ形状に形成される。
【0012】
したがって、単結晶インゴットの表面をグラインディングする工程を経るとき、単結晶インゴットの偏心が発生した部分を多くグラインディングしなければならないため、単結晶インゴットの直径を均一に加工しにくい。偏心が大きい場合、単結晶インゴットを軸方向に切った後、グラインディング工程を進めなければならないため、作業時間が多くかかるという問題点がある。
【0013】
また、単結晶インゴットの半径方向の酸素濃度および結晶領域の無欠陥領域で品質を保障しにくいという問題点がある。
【0014】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するために案出されたものであって、シード回転数(seed rotation)をリアルタイムに可変させて単結晶インゴットの偏心を制御できる単結晶インゴット成長用引き上げ制御装置およびこれに適用された引き上げ制御方法を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、シリコン融液に浸漬したシードと連結されたシードケーブルを回転および引き上げさせる引き上げ駆動部と、既に設定された目標シード入力回転数(T_f
in)が入力されることによってインゴットの長さごとの回転形態に合うようにリアルタイムに可変する目標シード出力回転数(T_f
out)を出力し、前記目標シード出力回転数(T_f
out)により前記引き上げ駆動部の回転数(f)を制御する引き上げ制御部と、を含む単結晶インゴット成長用引き上げ制御装置を提供する。
【0016】
前記引き上げ制御部は、既に設定された目標シード入力回転数(T_f
in)が入力されることによってインゴットの長さごとの回転形態が一定であるか否かを判断する判断部と、前記判断部の判断の結果により関数形状に目標シード出力回転数(T_f
out)を算出する演算部と、前記演算部の算出結果により目標シード出力回転数(T_f
out)を前記引き上げ駆動部に出力する出力部とを含むことができる。
【0017】
前記演算部は、前記判断部の判断の結果、インゴットの長さごとの回転形態が一定であると、sin関数に目標シード出力回転数(T_f
out)を算出し、前記演算部は、前記sin関数の平均値が前記目標シード入力回転数(T_f
in)と一致するように前記目標シード出力回転数(T_f
out)を算出することができる。
【0018】
一方、前記演算部は、前記判断部の判断の結果、インゴットの長さごとの回転形態が変化すると、linear関数に目標シード出力回転数(T_f
out)を算出し、前記演算部は、前記linear関数が前記目標シード入力回転数(T_f
in)の最大値(max)から最低値(min)に一定に減少する勾配を有するように前記目標シード出力回転数(T_f
out)を算出することができる。
【0019】
一方、本発明は、シリコン融液に浸漬したシードと連結されたシードケーブルを回転および引き上げさせる引き上げ駆動段階と、既に設定された目標シード入力回転数(T_f
in)が入力されることによってインゴットの長さごとの回転形態に合うようにリアルタイムに可変する目標シード出力回転数(T_f
out)を出力し、前記目標シード出力回転数(T_f
out)により前記シードケーブルの回転数(f)を制御する引き上げ制御段階と、を含む単結晶インゴット成長用引き上げ制御方法を提供する。
【0020】
前記引き上げ制御段階は、既に設定された目標シード入力回転数(T_f
in)が入力されることによってインゴットの長さごとの回転形態が一定であるか否かを判断する判断過程と、前記判断過程の判断の結果により関数形状に目標シード出力回転数(T_f
out)を算出する演算過程と、前記演算過程の算出結果により目標シード出力回転数(T_f
out)を出力して前記シードケーブルの回転数(f)を制御する出力過程とを含むことができる。
【0021】
前記演算過程は、前記判断過程の判断の結果、インゴットの長さごとの回転形態が一定であると、sin関数に目標シード出力回転数(T_f
out)を算出し、前記演算過程は、前記sin関数の平均値が前記目標シード入力回転数(T_f
in)と一致するように前記目標シード出力回転数(T_f
out)を算出することができる。
【0022】
一方、前記演算過程は、前記判断過程の判断の結果、インゴットの長さごとの回転形態が変化すると、linear関数に目標シード出力回転数(T_f
out)を算出することができ、前記演算過程は、前記linear関数が前記目標シード入力回転数(T_f
in)の最大値(max)から最低値(min)に一定に減少する勾配を有するように前記目標シード出力回転数(T_f
out)を算出することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明による単結晶インゴット成長用引き上げ制御装置およびこれを適用した引き上げ制御方法は、目標シード入力回転数(T_f
in)が入力されることによってインゴットの長さごとの回転形態に合うようにリアルタイムに可変する目標シード出力回転数(T_f
out)を提供してシードケーブルの回転数(f)を制御する。それにより、シード回転数(f)が融液の共振現象を起こす特定回転数(fo)に設定されることを最小化でき、融液の揺れを防止すると同時にインゴットの偏心現象を抑制することができる。
【0024】
したがって、単結晶インゴットを軸方向に真直ぐ成長させることができ簡単なグラインディング工程だけでも単結晶インゴットの直径を均一に形成させることができ、作業時間を短縮させることができる。
【0025】
さらに、目標シード入力回転数(T_f
in)の水準に合わせてシード回転数(f)をsin関数またはlinear関数に現れる目標シード出力回転数(T_f
out)に可変させるため、単結晶インゴットの半径方向の酸素濃度(radial Oi)および軸方向の酸素濃度(axial Oi)と結晶領域の無欠陥領域で品質を保障できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明による単結晶インゴット成長用引き上げ制御装置を示すブロック構成図である。
【
図2】
図1に適用された引き上げ制御部に入/出力されるシード回転数を示すグラフである。
【
図3】
図1に適用された引き上げ制御部に入/出力されるシード回転数を示すグラフである。
【
図4】本発明による単結晶インゴット成長用引き上げ制御方法を示すフローチャートである。
【
図5】従来技術と本発明によりそれぞれ製作された単結晶インゴットの偏心状態および直径状態を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本実施例について添付される図面を参照して詳細に検討して見ることとする。ただし、本実施例が開始する事項から本実施例が有する発明の思想の範囲が定められ得、本実施例が有する発明の思想は提案される実施例に対して構成要素の追加、削除、変更などの実施変形を含むことができる。
【0028】
図1は、本発明による単結晶インゴット成長用引き上げ制御装置を示すブロック構成図であり、
図2および
図3は、
図1に適用された引き上げ制御部に入/出力されるシード回転数を示すグラフである。
【0029】
本発明による単結晶インゴット成長用引き上げ制御装置は、
図1に示すように種子結晶が吊り下げられるシードチャック(seed chuck)と連結されたシードケーブル111を回転および引き上げさせる引き上げ駆動部110と、引き上げ駆動部110の回転数(f)をリアルタイムに可変するように制御する引き上げ制御部120とで構成される。引き上げ制御部120は、既に設定された目標シード入力回転数(T_f
in)が入力されることによってインゴットの長さごとの回転形態に合う目標シード出力回転数(T_f
out)を出力して引き上げ駆動部110の回転数(f)を制御する。
【0030】
通常、単結晶インゴット成長装置100は、シードケーブル111に吊り下げられた種子結晶をるつぼ(図示せず)に収容されたシリコン融液に浸漬し、シードケーブル111を回転および引き上げさせて単結晶インゴットを成長させるように構成される。
【0031】
引き上げ駆動部110は、シードケーブル111が巻かれたドラム(図示せず)を駆動させる装置であって、シードケーブル111の回転数(f)および引き上げ速度(pulling speed:P/S)を制御することができる。
【0032】
もちろん、引き上げ駆動部110は公知の技術であり、多様に構成され得るので、詳しい説明は省略する。
【0033】
引き上げ制御部120は、既に設定された目標シード入力回転数(T_f
in)によりインゴットの長さごとの回転形態を判断する判断部121と、判断部121の判断の結果により別の関数に目標シード出力回転数(T_f
out)をリアルタイムに可変させるように算出する演算部122と、演算部122の算出結果により目標シード出力回転数(T_f
out)を引き上げ駆動部110に出力する出力部123とで構成される。
【0034】
判断部121は、既に設定された目標シード入力回転数(T_f
in)の入力を受けるが、単結晶インゴット成長工程の特性上、目標シード入力回転数(T_f
in)を一定の値で入力を受けたり、一定の値を維持してから一定の勾配で減少する形態で入力を受けるようになる。
【0035】
実施例によると、判断部121は、
図2に示すように目標シード入力回転数(T_f
in)が一定の値を維持すると、インゴットの長さごとの回転形態が一定であるものと判断するが、
図3に示すように目標シード入力回転数(T_f
in)が一定の値を維持してから一定の勾配で減少すると、インゴットの長さごとの回転形態が変化したものと判断する。
【0036】
演算部122は、判断部121の判断の結果、インゴットの長さごとの回転形態によりsin関数またはlinear関数形状に目標シード出力回転数(T_f
out)をリアルタイムに可変させるように算出する。
【0037】
実施例によると、演算部122は、判断部121の判断の結果、インゴットの長さごとの回転形態が一定であると、
図2に示すように平均値が目標シード入力回転数(T_f
in)と一致するsin関数に目標シード出力回転数(T_f
out)を算出する。判断部121の判断の結果、インゴットの長さごとの回転形態が変化すると、
図3に示すように目標シード入力回転数(T_f
in)の最大値(max)から最低値(min)に一定の勾配で減少するlinear関数に目標シード出力回転数(T_f
out)を算出する。
【0038】
このように、リアルタイムに可変する目標シード出力回転数(T_f
out)は、出力部123によって引き上げ駆動部110に提供され、シードケーブル111の回転数(f)をリアルタイムに可変させることによって、シード回転数(f)が融液の共振現象を起こす特定回転数(fo)に設定されることを抑制することができる。
【0039】
図4は、本発明による単結晶インゴット成長用引き上げ制御方法を示すフローチャートである。
【0040】
まず、シードケーブルが設定回転数で回転することによって単結晶インゴットを成長させる(S1参照)。
【0041】
実施例によると、シードケーブルに吊り下げられた種子結晶がるつぼに収容されたシリコン融液に浸漬され、シードケーブルが徐々に回転すると同時に引き上げられることによってシリコン融液から単結晶インゴットが成長するようになる。
【0042】
もちろん、シードケーブルの回転数(f)によりシード回転数(f)が決定され、シード回転数が遅いほど単結晶インゴットの直径を大きく形成させることができる。
【0043】
次に、目標シード入力回転数(T_f
in)が入力されると、インゴットの長さごとの回転形態を判断する(S2、S3参照)。
【0044】
実施例によると、ボディー成長工程が進行すると、シード回転数(f)は一定の値に維持されなければならないため、目標シード入力回転数(T_f
in)も一定の値で入力される。
【0045】
一方、ネッキング工程からショルダーリング工程に進行すると、シード回転数(f)は一定の値に維持されてから一定の勾配で減少しなければならないため、目標シード入力回転数(T_f
in)も一定の値に維持されてから一定の勾配で減少する形態で入力される。
【0046】
したがって、目標シード入力回転数(T_f
in)が一定の値で入力されると、インゴットの長さごとの回転形態が一定であるものと判断されるが、目標シード入力回転数(T_f
in)も一定の値に維持されてから一定の勾配で減少する形態で入力されると、インゴットの長さごとの回転形態が変化したものと判断される。
【0047】
次に、インゴットの長さごとの回転形態が一定であると、sin関数に目標シード出力回転数(T_f
out)が算出される一方、インゴットの長さごとの回転形態が変わると、linear関数に目標シード出力回転数(T_f
out)が算出される(S4、S5参照)。
【0048】
実施例によると、sin関数に現れる目標シード出力回転数(T_f
out=f(x))は、目標シード入力回転数(T_f
in)を基準として所定の振幅(A)と周期(wt)および変動値(B)とが設定されるが、下記の[数1]により決定される。
【0049】
[数1]
f(x)=Asin(wt)+B
【0050】
例えば、目標シード入力回転数(T_f
in)が10rpmで入力されると、振幅(A)が10rpm±0.5rpmであり、周期(wt)が100〜500mmと設定されたsin関数形状に目標シード出力回転数(T_f
out)が算出され得る。
【0051】
もちろん、周期が短いほど単結晶インゴットの偏心制御効果が高く現れるが、引き上げ速度に影響を与えることがあり転位現象が誘発されるので適正な範囲内で範囲が設定されることが望ましい。
【0052】
実施例によると、linear関数に現れる目標シード出力回転数(T_f
out)は、目標シード入力回転数(T_f
in)の最大値(max)と最小値(min)を求めた後、単結晶インゴットの長さごとの減少量を計算して適用する。
【0053】
上述のように算出された目標シード出力回転数(T_f
out)によりシードケーブルの回転数(f)を制御する(S6参照)。
【0054】
したがって、目標シード出力回転数(T_f
out)は、インゴットの長さごとにリアルタイムに可変するので、シード回転数(f)がシリコン融液の共振現象を起こす特定回転数(fo)に設定されることを防止でき、融液の揺れおよびインゴットの偏心現象を抑制することができる。
【0055】
また、目標シード出力回転数(T_f
out)の平均値が目標シード入力回転数(T_f
in)と一致し、所定の誤差範囲内に制御されるので、シード回転数(f)により左右される単結晶インゴットの半径方向の酸素濃度(radial Oi)および軸方向の酸素濃度(axial Oi)と結晶領域の無欠陥領域で品質を保障することができる。
【0056】
図5は、従来技術と本発明によりそれぞれ製作された単結晶インゴットの偏心状態および直径状態を示すグラフである。
【0057】
従来技術においては、シード回転数を既に設定された目標シード入力回転数で制御して単結晶インゴットを製造した。一方、本発明においては、シード回転数を目標シード入力回転数によりsin関数またはlinear関数に算出された目標シード出力回転数で制御して単結晶インゴットを製造した。
【0058】
単結晶インゴットの偏心状態を検討して見ると、従来技術の単結晶インゴットは左側に偏った偏心状態で現れる一方、本発明の単結晶インゴットはほぼ中心と一致するように現れる。
【0059】
単結晶インゴットの左右側直径地点で目標直径に対して偏差を検討して見ると、従来技術の単結晶インゴットは、偏心した状態で直径偏差が比較的に大きく現れるが、本発明の単結晶インゴットは、中心で直径偏差が著しく減って改善されたことを確認できる。
【符号の説明】
【0060】
100:単結晶インゴット成長装置
110:引き上げ駆動部
111:シードケーブル
120:引き上げ制御部
121:判断部
122:演算部
123:出力部