(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、実
施の形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付
し、その繰り返しの説明は省略する。
【0013】
まず、
図1〜
図3を参照して本実施の形態のプリンタの概略構成を説明する。
図1は、
本実施の形態のプリンタの外観を示す斜視図、
図2は、このプリンタの主要部分の構成を
示す概略図、
図3は、このプリンタの開閉カバーを開いた状態を示す側面図である。
【0014】
本実施の形態のプリンタは、携帯型のラベルプリンタ1であり、
図1に示すような本体
ケース(筐体)2と、開閉カバー3と、この開閉カバー3の一部に組み込まれた剥離ユニ
ット(剥離機構)4と、フロントカバー5とを備えている。このラベルプリンタ1は、後
述するラベル連続体Pの台紙25からラベル26を剥がすことなく発行する通常発行モー
ドと、台紙25からラベル26を1枚ずつ剥がして発行する剥離発行モードとを簡単な操
作で切り換えることのできる構成を備えており、
図1〜
図3は、通常発行モードになって
いる時の状態を示している。
【0015】
図2に示すように、ラベルプリンタ1の開閉カバー3は、その後端部(同図の右端部)
がヒンジ機構によって本体ケース2に軸支され、本体ケース2に対して離間および接近す
る方向に回動されるようになっている。また、この開閉カバー3は、その後端部に取り付
けられたトーションバネ6の弾性によって、本体ケース2から離間する方向に付勢されて
いる。
【0016】
開閉カバー3の先端部には、剥離ユニット4が組み込まれている。
図2には、剥離ユニ
ット4を構成する部材のうち、剥離バー31、ニップローラ32およびロック部材33が
模式的に示されている。この剥離バー31、ニップローラ32およびロック部材33を含
む剥離ユニット4の具体的な構成については、後に詳述する。
【0017】
本体ケース2の内側の後半部分は、ラベル連続体(印字媒体)Pが収容される用紙収容
部となっており、この用紙収容部には、円盤形状を有する一対の用紙ガイド7が設置され
ている(
図2には、その一方のみが示されている)。これらの用紙ガイド7は、用紙収容
部に装填されたラベル連続体Pの軸方向両端面に接触し、ラベル連続体Pを回転可能に支
持すると共に、ラベル連続体Pの搬送をガイドする。また、これらの用紙ガイド7は、ラ
ベル連続体Pの幅に応じて位置を変えられるように、ラックアンドピニオン機構などを介
してラベル連続体Pの幅方向にスライド可能な状態で設置されている。
【0018】
図4は、本実施の形態のラベルプリンタ1で使用されるラベル連続体Pの斜視図である
。ラベル連続体Pは、長尺の台紙25とその表面(ラベル貼付面)に所定の間隔で仮着さ
れた多数枚のラベル26とを有しており、ロール状に巻回された状態で
図2に示すラベル
プリンタ1の用紙収容部に着脱可能に収容される。また、台紙25の裏面には、ラベル2
6の位置を検出するための位置検出マーク27が所定の間隔で形成されている。なお、図
示は省略するが、台紙25のラベル貼付面には、ラベル26を容易に剥離することが可能
なように、シリコーンなどの剥離剤がコーティングされている。また、ラベル26の表面
(印字面)には、所定の温度領域に達すると発色する感熱発色層がコーティングされてい
る。
【0019】
ラベルプリンタ1の本体ケース2において、用紙収容部に隣接した領域は、印字部とな
っている。印字部は、用紙収容部から繰り出されたラベル連続体Pに印字を施す機能部で
あり、
図2に示すヘッドブラケット(開閉カバー支持機構)11、サーマルヘッド(印字
ヘッド)12、コイルバネ13、プラテンローラ30などによって構成されている。印字
部を構成するこれらの部材うち、ヘッドブラケット11、サーマルヘッド12およびコイ
ルバネ13は、本体ケース2に取り付けられている。一方、プラテンローラ30は、開閉
カバー3の先端部に取り付けられている。
【0020】
本体ケース2に取り付けられたヘッドブラケット11は、開閉カバー3を閉止状態(図
1および
図2に示す状態)に維持する部材であり、開閉カバー3が閉止状態になっている
時には、開閉カバー3に取り付けられたプラテンローラ30と対向する位置に配置される
。ヘッドブラケット11は、コイルバネ13の弾性によって、常にプラテンローラ30に
近接する方向(
図2の右方向)に付勢されている。
【0021】
サーマルヘッド12は、ラベル連続体Pに文字、記号、図形、バーコードなどの情報を
印字する手段であり、サーマルヘッド12に印字信号を伝送する回路基板14に実装され
た状態でヘッドブラケット11に取り付けられている。サーマルヘッド12は、開閉カバ
ー3が閉止状態になっている時に、その印字面がプラテンローラ30に対向して配置され
る。そして、ラベルプリンタ1が印字を行う際は、通常発行モード、剥離発行モードのい
ずれの場合も、用紙収容部から繰り出されたラベル連続体Pがサーマルヘッド12の印字
面とプラテンローラ30との間に挟まれた状態で搬送される。なお、図示は省略するが、
サーマルヘッド12の印字面には、通電によって発熱する複数の発熱抵抗体(発熱素子)
が設けられている。
【0022】
図1および
図3に示すように、フロントカバー5は、本体ケース2の上部を覆うように
して本体ケース2に固定されている。また、フロントカバー5は、開閉カバー3および剥
離ユニット4を本体ケース2に収容するための開口部5aを備えており、この開口部5a
の手前側(ラベルプリンタ1の正面側)には、操作パネル15およびカバーオープンボタ
ン20が取り付けられている。
【0023】
図1に示すように、操作パネル15は、ラベルプリンタ1の操作コマンドや各種メッセ
ージを表示する表示部16、ラベルプリンタ1の動作を操作する操作ボタン17、18、
ラベルプリンタ1の電源をオン/オフする電源ボタン19などを備えている。
【0024】
図2に示すように、カバーオープンボタン20は、その下端部がヘッドブラケット11
に近接して配置されている。そして、作業者がカバーオープンボタン20を指で下方に押
すと、その下端部がヘッドブラケット11に当接してヘッドブラケット11に下向きの力
を加え、後述する機構によって開閉カバー3の閉止状態が解除される。なお、カバーオー
プンボタン20は、図示しないバネの弾性によって常に上方に付勢されている。
【0025】
カバーオープンボタン20の下方には、印字部のプラテンローラ30を駆動するための
ステッピングモータ21が取り付けられている。このステッピングモータ21は、開閉カ
バー3が開放状態から閉止状態になった時、すなわち開閉カバー3および剥離ユニット4
が本体ケース2に収容された時に、図示しないギア、タイミングベルト等を介してプラテ
ンローラ30の回転軸に係合される。
【0026】
図2に示す開閉カバー3の先端部とフロントカバー5との隙間は、通常発行時に印字部
で印字が施されたラベル連続体Pが排出される発行口8である。この発行口8の一部には
、発行口8から排出されるラベル連続体Pの台紙25(
図4参照)を作業者が手動で切断
するためのカッター9が取り付けられている。一方、剥離発行時には、剥離ユニット4に
よって台紙25から剥離されたラベル26(
図4参照)が発行口8から排出され、不要と
なった台紙25は、
図2に示す開閉カバー3の排出ガイド3aを通って剥離ユニット4の
後方から排出される。
【0027】
図2に示す開閉カバー3の先端部において、プラテンローラ30の下方には、発光素子
10aが取り付けられている。また、本体ケース2の内側において、この発光素子10a
と対向する箇所には、受光素子10bが取り付けられている。発光素子10aと受光素子
10bは、これらが一対となって透過型センサを構成している。
【0028】
透過型センサは、発光素子10aと受光素子10bとの隙間(用紙収容部から印字部に
搬送されるラベル連続体Pの搬送経路)に発光素子10aの光を照射し、この搬送経路を
通るラベル連続体Pを透過した光を受光素子10bで検出することによって、ラベル連続
体Pのラベル位置などを検出するセンサである。なお、図示は省略するが、開閉カバー3
の先端部において、プラテンローラ30の下方には、発光素子10aと並んで反射型セン
サが取り付けられている。反射型センサは、例えば上記の搬送経路をラベル連続体Pが通
過しているかどうかを検出するために用いられる。
【0029】
操作パネル15の下方には、これらのセンサによって検出された情報に基づいて印字タ
イミングなどを制御する制御部が設けられているが、その図示は省略する。印字を行う時
は、この制御部からサーマルヘッド12に送信された印字信号に従ってサーマルヘッド1
2の発熱抵抗体が選択的に発熱し、
図4に示すラベル連続体Pのラベル26に所望の情報
が印字される。
【0030】
図2に示す本体ケース2の下部には、バッテリケース22が設けられている。このバッ
テリケース22の内部には、ラベルプリンタ1の駆動電源であるリチウムイオン二次電池
からなるバッテリ23が着脱可能に収容されるようになっている。
図1および
図3に示す
ように、本体ケース2の一方の側面には、バッテリケース22のバッテリ挿入口を覆うバ
ッテリカバー22aが取り付けられている。
【0031】
本実施の形態のラベルプリンタ1は、フロントカバー5の開口部5aを上に向けた横置
き状態(
図1〜
図3に示す状態)で使用できるだけでなく、例えば本体ケース2の底面に
ベルトフックを取り付け、このベルトフックを立ち作業中の作業者がベルトに掛けること
によって、縦置き状態で使用することもできる。
【0032】
次に、開閉カバー3の先端部に設けられた剥離ユニット4の構成について、
図5〜
図1
0を参照しながら説明する。
【0033】
図5および
図6は開閉カバー3の全体斜視図、
図7および
図8は開閉カバー3の先端部
の側面図、
図9は開閉カバー3の先端部に設けられた剥離ユニット4の斜視図、
図10は
、剥離ユニット4の一部(ニップローラ32、ロック部材33など)を開閉カバー3から
取り外した状態で示したもので、(a)は斜視図、(b)は正面図である。なお、剥離ユ
ニット4の構成を見易くするために、
図6および
図7では、サイドカバー39の図示を省
略し、
図8では、サイドカバー39とロック部材33の図示を省略し、
図9では、開閉カ
バー3とサイドカバー39の図示を省略している。また、
図5〜
図9に示す剥離ユニット
4の各構成部材の配置は、ラベルプリンタ1が通常発行モードになっている時の配置であ
る。
【0034】
図5および
図6に示すように、開閉カバー3の先端部には、ラベル連続体Pの搬送手段
であるプラテンローラ30が正逆方向に回動可能な状態で取り付けられている。すなわち
、開閉カバー3の先端部には、プラテンローラ30の下部と両側面とを覆うアンダーカバ
ー34が取り付けられており、プラテンローラ30は、プラテンローラ軸35の両端部近
傍がアンダーカバー34の側壁と開閉カバー3の側壁とに挟持された状態で開閉カバー3
の先端部に取り付けられている。アンダーカバー34は、ネジ36を介して開閉カバー3
に固定されており、その内部には、
図2に示す透過型センサの発光素子10aと反射型セ
ンサとが取り付けられている。
【0035】
プラテンローラ軸35の一端部には、ギア40が軸支されている。このギア40は、開
閉カバー3が閉止状態になった時に、図示しないギア、タイミングベルト等を介して本体
ケース2のステッピングモータ21(
図2参照)に機械的に接続され、これによってステ
ッピングモータ21の回転がプラテンローラ軸35に伝達される。
【0036】
プラテンローラ30の近傍には、プラテンローラ30よりも径の細い剥離バー31がプ
ラテンローラ30の延在方向に沿って取り付けられている。剥離バー31は、ラベルプリ
ンタ1が剥離発行モードで印字を行う際、
図4に示すラベル連続体Pの台紙25から印字
済みのラベル26を機械的に剥離する部材である。剥離バー31は、その両端部がアンダ
ーカバー34の側壁に挿通された状態で開閉カバー3の先端部に取り付けられている。
【0037】
図5および
図9などに示すように、プラテンローラ30の斜め上方には、プラテンロー
ラ30の延在方向に沿ってニップローラ32が取り付けられている。ニップローラ32は
、ラベルプリンタ1が剥離発行モードで印字を行う際、剥離バー31と協動してラベル連
続体Pの台紙25から印字済みのラベル26を剥離する部材である。ニップローラ32は
、ラベルプリンタ1が通常発行モードになっている時には、図示のようにプラテンローラ
30から離間した位置(プラテンローラ30の斜め上方)に退避している。
【0038】
図10に示すように、ニップローラ32は、正逆方向に回動可能な状態でニップローラ
軸37に軸支されている。また、ニップローラ軸37の両端部にはロック部材33が取り
付けられている。さらに、ニップローラ32の上部にはニップローラカバー38が取り付
けられている。すなわち、ニップローラ32、ニップローラ軸37、ロック部材33およ
びニップローラカバー38は、それらが一体となって開閉カバー3の先端部に取り付けら
れている。ロック部材33およびニップローラカバー38は、ニップローラ32と同じく
ニップローラ軸37に軸支されているが、正逆方向に回動することなくニップローラ軸3
7に固定されている。
【0039】
ニップローラ32の上部に配置されたニップローラカバー38は、ラベルプリンタ1を
通常発行モードから剥離発行モードに切り換える時に、ニップローラ32をプラテンロー
ラ30の近傍に移動させる部材であるが、ニップローラ32を保護する機能も兼ね備えて
いる。また、ニップローラ軸37の両端部に取り付けられたロック部材33は、ラベルプ
リンタ1を通常発行モードから剥離発行モードに切り換える時に、ニップローラ32をプ
ラテンローラ30の近傍に位置決めする部材である。
【0040】
ロック部材33の略中央部には、中途部の径が上下両端部の径よりも大きい長穴33b
が設けられている。また、ロック部材33の下端部には、先端部が横方向に突出した係合
爪(第1係合爪)33aが設けられている。後述するように、この係合爪33aが本体ケ
ース2のヘッドブラケット11(
図2参照)に係合されることによって、開閉カバー3の
閉止状態(
図1および
図2に示す状態)が維持される。他方、この係合爪33aとヘッド
ブラケット11の係合が解除されることによって、開閉カバー3が開放状態(
図3に示す
状態)になる。
【0041】
図7および
図8(
図7からロック部材33を取り除いた図)に示すように、開閉カバー
3の側壁には、ニップローラ軸37が挿通される開口3bが設けられている。
図7および
図8には示されていないが、開閉カバー3のもう一方の側壁にも、同様の開口3bが設け
られている。開閉カバー3の側壁に設けられたこれらの開口3bは、開閉カバー3の先端
部に取り付けられたニップローラ軸37が開閉カバー3の上下方向に移動できるように、
ニップローラ軸37の径よりも幅が広く、かつ上下方向に延びた細長い形状を有している
。
【0042】
ニップローラ軸37と、このニップローラ軸37に軸支されたニップローラ32、ニッ
プローラカバー38およびロック部材33のうち、ニップローラ軸37は、その両端部が
開口3bを通じて開閉カバー3の側壁の外側に配置され、この両端部にロック部材33が
取り付けられている。一方、ニップローラ軸37の中央部、ニップローラ32およびニッ
プローラカバー38は、開閉カバー3の側壁の内側に配置されている。
【0043】
また、開閉カバー3の両側壁には、開口3bを通じて両側壁の外側に配置されニップロ
ーラ軸37の先端部を支持するトーションバネ(剥離機構付勢部材)42が取り付けられ
ている。
図8に示すように、トーションバネ42は、その一端部がニップローラ軸37の
下面に当接し、その弾性によってニップローラ軸37を同図の矢印Aで示す方向に付勢し
ている。
【0044】
また、開閉カバー3の両側壁には、ニップローラ軸37の両端部に取り付けられたロッ
ク部材33を支持する板バネ(回動部材)43が取り付けられている。
図7に示すように
、板バネ43は、その一端部(下端部)がロック部材33の側面に当接し、その弾性によ
ってロック部材33を同図の矢印Bで示す方向に付勢している。
【0045】
このように、ニップローラ軸37と、このニップローラ軸37に軸支されたニップロー
ラ32、ニップローラカバー38およびロック部材33は、トーションバネ42および板
バネ43の弾性によって上方に付勢された状態で開閉カバー3の先端部に取り付けられて
いる。すなわち、ニップローラ軸37と、このニップローラ軸37に軸支されたニップロ
ーラ32、ニップローラカバー38およびロック部材33は、開閉カバー3に対して相対
的に上下動可能な状態で開閉カバー3の先端部に取り付けられている。
【0046】
また、開閉カバー3の両側壁には、円柱状のストッパー部材3cが取り付けられている
。ストッパー部材3cは、その一端部が開閉カバー3の側壁に挿通されることによって開
閉カバー3に固定されている。また、ストッパー部材3cの他端部(先端部)は、ロック
部材33に設けられた長穴33bに挿通されている。ストッパー部材3cは、ロック部材
33が上下方向に移動する範囲を規制する部材である。
【0047】
図7に示すように、ストッパー部材3cは、ラベルプリンタ1が通常発行モードになっ
ている時に、その先端部がロック部材33の長穴33bの下端部に位置するように、開閉
カバー3の側壁に取り付けられている。
【0048】
従って、作業者がニップローラカバー38の上面を指で下方に押すと、ニップローラカ
バー38、ニップローラ軸37、ニップローラ32およびロック部材33は、トーション
バネ42と板バネ43の弾性に抗しながら連動して下方に移動する。そして、ロック部材
33の長穴33bの上端部がストッパー部材3cと当接した時に下方への移動が停止され
る。他方、この状態で作業者がニップローラカバー38の上面から指を離すと、ニップロ
ーラカバー38、ニップローラ軸37、ニップローラ32およびロック部材33は、トー
ションバネ42および板バネ43の弾性によって連動して上方に移動し、ロック部材33
の長穴33bの下端部がストッパー部材3cと当接した時に上方への移動が停止されて図
7に示す状態に戻る。
【0049】
なお、実際のラベルプリンタ1は、
図5に示すように、作業者が不用意にトーションバ
ネ42や板バネ43に触れることがないように、トーションバネ42および板バネ43を
サイドカバー39で覆っているが、
図5を除く他の図面では、剥離ユニット4の各構成部
材の配置を見易くするために、サイドカバー39の図示を省略している。
【0050】
次に、本実施の形態のラベルプリンタ1の通常発行モードおよび剥離発行モードにおけ
る剥離ユニット4の動作について説明する。
【0051】
まず、通常発行モードで印字を行う時は、
図11に示すように、開閉カバー3を閉止状
態から開放状態にした後、本体ケース2の用紙収容部に装填されたラベル連続体Pの先端
部を作業者が手動で引き出してフロントカバー5の発行口8から露出させる。開閉カバー
3を閉止状態から開放状態にする方法については、以下で説明する。
【0052】
次に、この状態で作業者が開閉カバー3の先端部を本体ケース2側に押し付けることに
よって、開閉カバー3を開放状態から元の閉止状態に戻す。この時の開閉カバー3の先端
部と本体ケース2のヘッドブラケット11の動作を
図12〜
図15を参照しながら説明す
る。
【0053】
図12(a)および
図12(b)は、互いに反対の方向から見たヘッドブラケット11
の斜視図である。
図12に示すように、ヘッドブラケット11は、開閉カバー3の先端部
方向に折り曲げられた一対の側壁を有しており、各側壁の高さ方向の中央付近には開閉カ
バー3の先端部方向に突出する係合爪(第2係合爪)51が設けられている。これら一対
の係合爪51の先端部は、下方に向かうに従って開閉カバー3の先端部に近づく傾斜面を
備えている。ここでは、ヘッドブラケット11の開閉カバー3と対向する面をヘッドブラ
ケット11の正面と呼び、この正面と反対側の面、すなわちコイルばね13と接している
面をヘッドブラケット11の背面と呼ぶことにする。
【0054】
ヘッドブラケット11の各側壁の上端部には、係合爪51と同じく下方に向かうに従っ
て開閉カバー3の先端部に近づく傾斜面を備えた回動爪52が設けられている。この回動
爪52は、開閉カバー3の先端部に近づく方向(横方向)の長さが係合爪51よりも短い
。
【0055】
また、各側壁において、係合爪51とその上部の回動爪52との間には、開閉カバー3
に取り付けられたプラテンローラ軸35の端部の径よりも僅かに大きい径を有する略半円
形の嵌合溝53が設けられている。
【0056】
さらに、ヘッドブラケット11の各側壁の下端部近傍には、本体ケース2に取り付けら
れた回動軸(図示せず)が挿通される孔部54が設けられている。ヘッドブラケット11
は、これらの孔部54に挿通されたこの回動軸を中心にして回動可能な状態で本体ケース
2に取り付けられている。
【0057】
ヘッドブラケット11の中央上端部には、背面側に折り曲げられた回動レバー55が設
けられている。
図1〜
図3に示すフロントカバー5に取り付けられたカバーオープンボタ
ン20は、その下端部が回動レバー55の上面近傍に配置されており、作業者がこのカバ
ーオープンボタン20を指で下方に押すと、カバーオープンボタン20の下端部がこの回
動レバー55の上面に当接し、回動レバー55に下向きの力が加わるようになっている。
【0058】
図11に示す開閉カバー3の先端部がフロントカバー5の開口部5aを通じて本体ケー
ス2内に収容されると、まず、
図13(a)、(b)に示すように、開閉カバー3の側壁
に取り付けられたプラテンローラ軸35の両端部がヘッドブラケット11の側壁の上端部
に設けられた一対の回動爪52の傾斜面と接触する。
図13には、プラテンローラ軸35
の一方の端部のみが示されているが、もう一方の端部もヘッドブラケット11の回動爪5
2の傾斜面と接触する。
【0059】
そして、開閉カバー3がさらに本体ケース2側に押し付けられると、プラテンローラ軸
35と接触している回動爪52の傾斜面には、ヘッドブラケット11の背面方向に向かう
力が加わる。そのため、
図14に示すように、ヘッドブラケット11は、コイルバネ13
の弾性に抗しつつ、孔部54を中心にして同図の矢印で示す方向(反時計回り方向)に回
動する。これにより、プラテンローラ軸35と接触していた回動爪52がヘッドブラケッ
ト11の背面方向に移動するため、プラテンローラ軸35は、回動爪52よりも下方に移
動する。
【0060】
すると、背面方向に向かう力が作用しなくなったヘッドブラケット11は、
図15に示
すように、コイルバネ13の弾性によって、同図の矢印で示す方向(時計回り方向)に回
動し、元の位置に復帰するため、プラテンローラ軸35は、回動爪52の下部の嵌合溝5
3に嵌り込む。
【0061】
これにより、開閉カバー3が閉止状態となるので、
図16に示すように、用紙収容部か
ら繰り出されたラベル連続体Pが印字部のサーマルヘッド12とプラテンローラ30との
間に挟まれた状態になり、ラベルプリンタ1が通常発行モードにセットされる。すなわち
、開閉カバー3は、その後端部に取り付けられたトーションバネ6(
図2参照)の弾性に
よって本体ケース2から離間する方向に付勢されているが、プラテンローラ軸35がヘッ
ドブラケット11の嵌合溝53の中に嵌り込んでいるので、本体ケース2の開口部5aか
ら飛び出すことはない。
【0062】
その後、作業者が
図1に示すフロントカバー5に設けられた操作パネル15の電源ボタ
ン19をオンにし、所定の操作コマンドを入力することによって、通常発行モードでの印
字が開始される。
【0063】
次に、上述した通常発行モードから剥離発行モードに切り換えて印字を行う方法につい
て説明する。
【0064】
この場合は、まず、作業者がフロントカバー5のカバーオープンボタン20を押し下げ
ることによって、開閉カバー3の閉止状態を解除する。開閉カバー3の閉止状態が解除さ
れる機構は、先に参照した
図14および
図15を使って説明することができる。
【0065】
すなわち、ラベルプリンタ1が通常発行モードにセットされている状態(
図15および
図16に示す状態)でフロントカバー5のカバーオープンボタン20を押し下げると、前
述したように、カバーオープンボタン20の下端部が
図15に示すヘッドブラケット11
の回動レバー55の上面に当接され、回動レバー55には、ヘッドブラケット11の下方
に向かう力が加わる。このため、ヘッドブラケット11は、
図14に示すように、コイル
バネ13の弾性に抗しつつ、孔部54を中心にして同図の矢印で示す方向(反時計回り方
向)に回動する。
【0066】
これにより、ヘッドブラケット11の側壁上端部に設けられた回動爪52がヘッドブラ
ケット11の背面方向に移動し、ヘッドブラケット11の嵌合溝53の中に嵌り込んでい
たプラテンローラ軸35が嵌合溝53から外れるので、開閉カバー3は、その後端部に取
り付けられたトーションバネ6(
図2参照)の弾性によって本体ケース2から離間する。
【0067】
次に、
図17に示すように、作業者がラベル連続体Pの先端部を手動で引き出し、開閉
カバー3の先端部に取り付けられたプラテンローラ30とニップローラ32との間に挿通
する。
【0068】
次に、この状態で作業者が開閉カバー3の先端部を本体ケース2側に押し付けることに
よって、開閉カバー3を開放状態から元の閉止状態に戻す。この時の開閉カバー3の先端
部と本体ケース2のヘッドブラケット11の動作は、先に
図12〜
図15を参照して説明
した通常発行時の動作と同一であるので、ここでは説明を省略する。
【0069】
このように、開閉カバー3を開放状態から閉止状態に切り換える時の開閉カバー3とヘ
ッドブラケット11の動作は、通常発行モード、剥離発行モードのいずれの場合も同一で
あるが、通常発行モードの設定時には、
図11に示すように、あらかじめラベル連続体P
の先端部をフロントカバー5の発行口8から露出させておくのに対し、剥離発行モードの
設定時には、
図17に示すように、あらかじめラベル連続体Pの先端部をプラテンローラ
30とニップローラ32との間に挿通しておく点が異なる。
【0070】
このようにして、開閉カバー3を閉止状態にした後、ラベルプリンタ1を剥離発行モー
ドに切り換える迄の開閉カバー3とヘッドブラケット11の動作を
図18〜
図21を参照
しながら説明する。
【0071】
ラベル連続体Pの先端部をプラテンローラ30とニップローラ32との間に挿通した状
態(
図17に示す状態)で開閉カバー3を閉止状態に戻した時、開閉カバー3とヘッドブ
ラケット11の係合状態は、
図15に示す係合状態と同一になる。すなわち、開閉カバー
3は、その先端部に取り付けられたプラテンローラ30のプラテンローラ軸35がヘッド
ブラケット11の嵌合溝53の中に嵌り込むので、ヘッドブラケット11にロックされた
状態になる。
【0072】
次に、作業者が開閉カバー3の先端部に取り付けられたニップローラカバー38を指で
押し下げると、ニップローラ軸37、ニップローラ32およびロック部材33がトーショ
ンバネ42および板バネ43の付勢力に抗しながら、ニップローラカバー38と一体にな
って下方に移動し、
図18に示すように、ロック部材33の下端部の係合爪33aがヘッ
ドブラケット11の側壁に設けられた係合爪51と接触する。この時、開閉カバー3は、
ヘッドブラケット11にロックされた状態になっているので、ニップローラカバー38と
連動して下方に移動することはなく、通常発行時の位置(
図15に示す位置)に留まって
いる。
【0073】
この時、開閉カバー3の側壁に取り付けられた板バネ43の一端部は、ニップローラ軸
37よりも下方でロック部材33の側面に当接し、ニップローラ軸37を
図18の右方向
に付勢している。また、ヘッドブラケット11の係合爪51の先端部上面(ロック部材3
3の係合爪33aと接触している面)は、傾斜面(
図18の左側から右側に下降する傾斜
面)となっている。
【0074】
そのため、この状態でニップローラカバー38をさらに押し下げると、
図19に示すように、ロック部材3
3がニップローラ軸37を中心にして同図の矢印で示す方向(反時計回り方向)に回動し、ロック部材33の係合爪33aがヘッドブラケット11の係合爪51から離間する方向に移動する。前述したように、ロック部材33の略中央部には、中途部の径が上下両端部の径よりも大きい長穴33bが設けられているので、ロック部材3
3は、このような回動が可能となる。
【0075】
これにより、
図20に示すように、ロック部材33(およびニップローラ軸37、ニッ
プローラカバー38、ニップローラ32)は、係合爪33aがヘッドブラケット11の係
合爪51よりも下方に位置するまで下降するが、この時、ロック部材33の長穴33bの
上端部が開閉カバー3のストッパー部材3cと当接するので、ロック部材33(およびニ
ップローラ軸37、ニップローラカバー38、ニップローラ32)は、この位置よりも下
方への移動が規制される。
【0076】
また、この時、開閉カバー3の側壁に取り付けられた板バネ43の一端部がニップローラ軸37よりも上方(ロック部材33の上端部)でロック部材33に当接するので、ロック部材3
3は、ニップローラ軸37を中心にして同図の矢印で示す方向(時計回り方向)に回動し、ロック部材33の係合爪33aがヘッドブラケット11の回動爪52の下側に入り込む。
【0077】
ロック部材33(およびニップローラ軸37、ニップローラカバー38、ニップローラ
32)は、トーションバネ42および板バネ43の弾性によって上方に付勢されているが
、係合爪33aがヘッドブラケット11の係合爪51の下側に入り込むことにより、上方
への移動が規制される。また、ロック部材33(およびニップローラ軸37、ニップロー
ラカバー38、ニップローラ32)は、長穴33bの上端部が開閉カバー3のストッパー
部材3cと当接することにより、下方への移動も規制される。すなわち、ロック部材33
(およびニップローラ軸37、ニップローラカバー38、ニップローラ32)は、ロック
部材33の係合爪33aがヘッドブラケット11の係合爪51の下側に入り込んだ位置で
開閉カバー3に固定される。
【0078】
これにより、
図21に示すように、通常発行時にプラテンローラ30の上方に配置され
ていたニップローラ32がプラテンローラ30の近傍に移動し、かつ、
図22に示すよう
に、用紙収容部から繰り出されたラベル連続体Pが印字部のサーマルヘッド12とプラテ
ンローラ30との間に挟まれた状態になるので、ラベルプリンタ1が剥離発行モードにセ
ットされる。その後、作業者が
図22に示すフロントカバー5に設けられた操作パネル1
5の電源ボタン19をオンにし、所定の操作コマンドを入力することによって、剥離発行
モードでの印字が開始される。
【0079】
図22に示すように、剥離発行モードで印字を行うと、印字部においてラベル26に所
望の情報が印字されたラベル連続体Pは、剥離バー31およびニップローラ32によって
急角度で曲げられて開閉カバー3の後端部方向に引っ張られる。これにより、ラベル連続
体Pの台紙25に仮着されたラベル26が台紙25から機械的に剥離され、発行口8から
一枚ずつ排出される。一方、ラベル26が剥離されて不要となった台紙25は、開閉カバ
ー3の排出ガイド3aを通って剥離ユニット4の後方から排出される。
【0080】
次に、上述した剥離発行モードから通常発行モードに切り換えて印字を行う時は、まず
、作業者がフロントカバー5のカバーオープンボタン20を押し下げることにより、
図2
0に示す状態になっているヘッドブラケット11の回動レバー55を押し下げる。すると
、ヘッドブラケット11は、孔部54を中心にして回動し、その係合爪51がロック部材
33の係合爪33aから離間する方向(
図20の左方向)に移動する。
【0081】
これにより、ヘッドブラケット11の係合爪51とロック部材33の係合爪33aとの
係合が解除されるので、ロック部材33(およびニップローラ軸37、ニップローラカバ
ー38、ニップローラ32)は、トーションバネ42および板バネ43の弾性によって上
方に移動し、通常発行時の位置(
図15に示す位置)に戻る。
【0082】
また、ヘッドブラケット11が上記した方向に回動すると、ヘッドブラケット11の回
動爪52もプラテンローラ軸35から離間する方向(
図20の左方向)に移動するので、
ヘッドブラケット11の嵌合溝53の中に嵌り込んでいたプラテンローラ軸35が嵌合溝
53から外れる。その結果、開閉カバー3は、その後端部に取り付けられたトーションバ
ネ6(
図2参照)の弾性によって本体ケース2から離間する。すなわち、開閉カバー3は
開放状態となる。
【0083】
その後は、作業者がラベル連続体Pの先端部を手動で通常発行時の位置に移動し、先に
説明した手順に従ってラベルプリンタ1を通常発行モードにセットすればよい。
【0084】
以上、詳述したように、本実施の形態のラベルプリンタ1によれば、印字の開始に先立
って作業者がラベル連続体Pの先端部の位置を変更する、という簡単な作業を行うだけで
、通常発行モードと剥離発行モードとを切り換えることが可能となる。
【0085】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明
細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって、開示された技術に限定される
ものではない。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記実施の形態における説明に基づ
いて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈され
るべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲の要旨を逸
脱しない限りにおけるすべての変更が含まれる。
【0086】
例えば、前記実施の形態においては、印字媒体として複数枚のラベルを台紙に仮着した
ラベル連続体を用いた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば
、一面に粘着面を有する連続状のラベル(台紙無しラベル)、粘着面を有しない連続状の
シート(連続シート)あるいは紙類に限らずサーマルヘッドにより印字可能なフィルムな
どを印字媒体として使用することもできる。台紙無しラベル、連続シートまたはフィルム
は位置検出マークを設けることができる。また、粘着剤が露出する台紙無しラベルなどを
搬送する場合には、搬送路を非粘着剤で被覆すると共に、シリコーンを含有したローラを
設けることができる。