特許第6722807号(P6722807)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6722807水処理剤及びその製造方法、並びに水処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6722807
(24)【登録日】2020年6月24日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】水処理剤及びその製造方法、並びに水処理方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/01 20060101AFI20200706BHJP
   C02F 1/58 20060101ALI20200706BHJP
   C02F 1/62 20060101ALI20200706BHJP
   C02F 1/64 20060101ALI20200706BHJP
   C02F 1/56 20060101ALI20200706BHJP
   C02F 11/147 20190101ALI20200706BHJP
   C02F 1/52 20060101ALI20200706BHJP
   C02F 11/148 20190101ALI20200706BHJP
【FI】
   B01D21/01 110
   C02F1/58 MZAB
   C02F1/62 B
   C02F1/62 E
   C02F1/62 C
   C02F1/62 Z
   C02F1/64 Z
   B01D21/01 111
   C02F1/56 J
   C02F1/56 K
   B01D21/01 101A
   C02F11/147
   C02F1/52 J
   C02F1/52 K
   C02F11/148
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-118108(P2019-118108)
(22)【出願日】2019年6月26日
【審査請求日】2019年6月26日
(31)【優先権主張番号】特願2019-102053(P2019-102053)
(32)【優先日】2019年5月31日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】廣芝 泰祐
(72)【発明者】
【氏名】小幡 慶
(72)【発明者】
【氏名】藤田 貴則
(72)【発明者】
【氏名】伊東 雅彦
【審査官】 山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−071296(JP,A)
【文献】 特開2018−103185(JP,A)
【文献】 特開2018−138287(JP,A)
【文献】 特開2018−047454(JP,A)
【文献】 特表平11−500482(JP,A)
【文献】 特開2018−020292(JP,A)
【文献】 特開平10−085799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/01
C02F 1/52− 1/56
11/00−11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢酸セルロースと高分子凝集剤を含み、
前記酢酸セルロースが粉末乃至粒子状であり、
前記酢酸セルロースの重量平均分子量が、150,000以上であり、
前記酢酸セルロースと前記高分子凝集剤の質量組成比が9:1〜1:9であり、
水浄化作用及び汚泥脱水作用を有することを特徴とする水浄化及び汚泥脱水用水処理剤。
【請求項2】
前記酢酸セルロースと前記高分子凝集剤の混合物又は造粒物である請求項1に記載の水浄化及び汚泥脱水用水処理剤。
【請求項3】
前記酢酸セルロースの粒径が1,500μm以下である請求項1から2のいずれかに記載の水浄化及び汚泥脱水用水処理剤。
【請求項4】
前記高分子凝集剤は、アクリル酸ナトリウムとアクリルアミドとの共重合体、又はポリアクリル酸ナトリウムである請求項1から3のいずれかに記載の水浄化及び汚泥脱水用水処理剤。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の水浄化及び汚泥脱水用水処理剤を水に溶かし、酢酸セルロース及び高分子凝集剤の分散液を得、無機系不要物を含有する排水に前記分散液を供することにより、排水中の無機系不要物を除去することを特徴とする水浄化及び汚泥脱水化方法。
【請求項6】
前記排水が、ニッケル、フッ素、鉄、銅、亜鉛、クロム、ヒ素、カドミウム、錫、及び鉛の少なくともいずれかを有する無機系不要物を含有する排水である請求項5に記載の水浄化及び汚泥脱水化方法。
【請求項7】
前記無機系不要物におけるニッケルイオン、フッ素イオン、鉄イオン、銅イオン、亜鉛イオン、クロムイオン、ヒ素イオン、カドミウムイオン、錫イオン、及び鉛イオンの少なくともいずれかの無機イオンに対し不溶化処理を施した後、前記分散液を前記排水に供する請求項6に記載の水浄化及び汚泥脱水化方法。
【請求項8】
前記不溶化処理が無機凝集剤を添加して行われる請求項7に記載の水浄化及び汚泥脱水化方法。
【請求項9】
請求項1から4のいずれかに記載の水浄化及び汚泥脱水用水処理剤を添加する水処理方法であって、
酢酸セルロースと高分子凝集剤は別々に添加され、処理水中での前記酢酸セルロースと前記高分子凝集剤との質量組成比が9:1〜1:9であることを特徴とする水浄化及び汚泥脱水化方法。
【請求項10】
請求項1から4のいずれかに記載の水浄化及び汚泥脱水用水処理剤を製造する水浄化及び汚泥脱水用水処理剤の製造方法であって、
酢酸セルロースと高分子凝集剤とを質量組成比が9:1〜1:9となるように混合することを特徴とする水浄化及び汚泥脱水用水処理剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理剤及び水処理剤の製造方法、並びに水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工場等で種々の製品を製造する過程において、無機イオンとして金属イオンやフッ素イオン等の環境負荷物質を含む廃液が大量に発生しており、水浄化剤を用いた水浄化処理が行われている。そして、水浄化処理により発生する汚泥は多くの水分を含んでいるため、脱水処理した後、廃棄物として処分されている。
【0003】
脱水汚泥の含水率が低いほど廃棄物処分量が少なくなり、処分費用が削減されるため、汚泥を高度に脱水処理することが望まれている。
そこで、例えば、アルキレンオキシドにより無機汚泥ケーキ含水率を低減できるフィルタープレス用無機汚泥脱水剤が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、含水率が30〜80重量%の繊維状物のビスコースレーヨンからなる汚泥脱水助剤が提案されている。また、有機性汚泥に、脱水助剤と高分子凝集剤とを添加し混合した後、機械脱水する汚泥の脱水方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6123158号公報
【特許文献2】特許第4817431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、高分子凝集剤を使用していないため、汚泥粒子が小さく汚泥の沈降性に問題がある。
また、特許文献2では、高分子凝集剤を使用しているが、高分子凝集剤は、脱水助剤を添加し、混合した後に添加することが好ましく、脱水助剤と高分子凝集剤を別々に投入する必要があるため、設備の増設、大型化が必須である。
【0006】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、水浄化性能に優れると共に、汚泥の含水率を低減できる水処理剤及び水処理剤の製造方法、並びに前記水処理剤を用いた水処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> セルロース類と高分子凝集剤を含む水処理剤であって、
前記セルロース類と前記高分子凝集剤の質量組成比が9:1〜1:9であることを特徴とする水処理剤である。
<2> 水浄化作用及び汚泥脱水作用の少なくともいずれかを有する前記<1>に記載の水処理剤である。
<3> 前記セルロース類と前記高分子凝集剤の混合物又は造粒物である前記<1>から<2>のいずれかに記載の水処理剤である。
<4> 前記セルロース類の粒径が1,500μm以下である前記<1>から<3>のいずれかに記載の水処理剤である。
<5> 前記セルロース類は、重量平均分子量が100,000以上である前記<1>から<4>のいずれかに記載の水処理剤である。
<6> 前記高分子凝集剤は、アクリルアミドを含むポリマーである前記<1>から<5>のいずれかに記載の水処理剤である。
<7> 前記<1>から<6>のいずれかに記載の水処理剤を水に溶かし、セルロース類及び高分子凝集剤の分散液を得、無機系不要物を含有する排水に前記分散液を供することにより、排水中の無機系不要物を除去することを特徴とする水処理方法である。
<8> 前記排水が、ニッケル、フッ素、鉄、銅、亜鉛、クロム、ヒ素、カドミウム、錫、及び鉛の少なくともいずれかを有する無機系不要物を含有する排水である前記<7>に記載の水処理方法である。
<9> 前記無機系不要物におけるニッケルイオン、フッ素イオン、鉄イオン、銅イオン、亜鉛イオン、クロムイオン、ヒ素イオン、カドミウムイオン、錫イオン、及び鉛イオンの少なくともいずれかの無機イオンに対し不溶化処理を施した後、前記分散液を前記排水に供する前記<8>に記載の水処理方法である。
<10> 前記不溶化処理が無機凝集剤を添加して行われる前記<9>に記載の水処理方法である。
<11> セルロース類と高分子凝集剤を添加する水処理方法であって、
前記セルロース類と前記高分子凝集剤は別々に添加され、処理水中での前記セルロース類と前記高分子凝集剤との質量組成比が9:1〜1:9であることを特徴とする水処理方法である。
<12> セルロース類と高分子凝集剤を含む水処理剤の製造方法であって、
前記セルロース類と前記高分子凝集剤とを質量組成比が9:1〜1:9となるように混合することを特徴とする水処理剤の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、水浄化性能に優れると共に、汚泥の含水率を低減できる水処理剤及び水処理剤の製造方法、並びに前記水処理剤を用いた水処理方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(水処理剤)
本発明の水処理剤は、セルロース類と高分子凝集剤を含む水処理剤であって、前記セルロース類と前記高分子凝集剤の質量組成比が9:1〜1:9である。
前記水処理剤は、水浄化作用及び汚泥脱水作用の少なくともいずれかを有することが好ましい。
【0010】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、セルロース類と高分子凝集剤を含み、前記セルロース類と前記高分子凝集剤の質量組成比が9:1〜1:9であることにより、水浄化性能に優れると共に、汚泥の含水率を大幅に低減できることを見出した。
【0011】
その理由は明らかではないが、以下のように考えられる。
本発明では、工業排水、例えば、ニッケル、フッ素、鉄、銅、亜鉛、クロム、ヒ素、カドミウム、錫、鉛等の無機系不要物を含有する工業排水を対象とし、その工業排水から無機系不要物を除去する(「水の浄化」ともいう)のに、無機系不要物におけるニッケルイオン、フッ素イオン、鉄イオン等の無機イオンを無機凝集剤により不溶化し、懸濁固形物(本発明では、「ミクロフロック」ともいう)を形成させ、該ミクロフロックを凝集沈降させ、固液分離することにより行っている。かかる水の浄化の際に、セルロース類と高分子凝集剤とを用いると、セルロース類中に含まれる繊維物質により汚泥中の水抜け性が向上し、イオン性の高分子凝集剤により汚泥中の電荷をキャンセルでき、また、異種イオンを含む高分子凝集剤を使用することで汚泥密度が向上し、汚泥含水率を大幅に低減することができ、汚泥量の大幅な削減が実現できる。
【0012】
以下、水処理剤の具体的な構成について説明する。
【0013】
<セルロース類>
前記セルロース類としては、天然の高分子であるセルロース又はその塩、該セルロースの誘導体又はその塩などが挙げられる。
前記セルロースは無水グルコースを繰返し単位とする高分子で、繰返し単位当たり3個の水酸基を持っている。
前記セルロースの誘導体としては、例えば、セルロースの水酸基が酸とエステル化したセルロースエステルなどが挙げられる。
エステル化度と重量平均分子量によってセルロースエステルの性質を調節することができる。
前記セルロースエステルとしては、例えば、酢酸セルロース、アセチルセルロース、ニトロセルロースなどが挙げられる。
【0014】
セルロース類の重量平均分子量は、100,000以上が好ましく、150,000以上がより好ましい。重量平均分子量が高いほど、汚泥含水率を低減する効果を高くすることができる。
前記セルロース類の重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィによる測定値を標準ポリメタクリル酸メチルの分子量に換算して得られるものである。
【0015】
セルロース類は、粉末乃至粒子状であることが好ましい。
セルロース類の粒径は、1,500μm以下が好ましく、1,190μm以下がより好ましく、710μm以下が更に好ましく、355μm以下が特に好ましい。セルロース類の粒径が1,500μm以下であると、汚泥含水率を低減することができる。
ここで、セルロース類の粒径は、例えば、所定の目開きのJIS Z8801−1(2006)及びISO3310−1:2000に定める金属製網ふるいを用いて分級されたセルロース類の粒径を意味する。
【0016】
本発明の水処理剤には、上記セルロース類以外にも、天然の植物素材として、例えば、長朔黄麻、モロヘイヤ、亜麻、苧麻、大麻、洋麻などを添加することができる。
【0017】
<高分子凝集剤>
前記高分子凝集剤としては、排水中の前記無機系不要物を除去する効果を示すものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリルアミドを含むポリマー(単に、「ポリアクリルアミド」、「PAM」と称することがある。)、ポリアミン、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウム塩などが挙げられる。これらの中でも、アクリルアミドを含むポリマー、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ナトリウムが好ましい。
前記高分子凝集剤は、イオン構造を有していてもよい。イオンがカチオンの場合は、例えば、アンモニウム塩、スルホニム塩などが挙げられる。イオンがアニオンの場合には、例えば、カルボン酸塩などが挙げられる。
前記ポリアクリルアミドとしては、市販品を用いることができ、前記市販品としては、例えば、Flopan AN 905、Flopan AN 926、Flopan AN 956(いずれも、株式会社エス・エヌ・エフ製);アコフロック A−100、アコフロックA−150(いずれも、MTアクアポリマー株式会社製)などが挙げられる。
ポリアクリル酸ナトリウムとしては、市販品を用いることができ、前記市販品としては、例えば、アコフロック A−190(MTアクアポリマー株式会社製)、PA−331(栗田工業株式会社製)などが挙げられる。
【0018】
前記セルロース類と前記高分子凝集剤の質量組成比は、9:1〜1:9であり、7:3〜3:7が好ましく、5:5がより好ましい。この質量組成比の範囲であれば、十分なミクロフロックの吸着効果を有する優れた水浄化性能が発揮される。なお、上記質量組成比は、乾燥質量をもとに算出することができる。
【0019】
前記水処理剤は、前記セルロース類と前記高分子凝集剤の混合物又は造粒物であることが好ましい。なお、セルロース類と高分子凝集剤とを別々に分けて添加してもよく、どちらを先に添加してもよく、両者を同時に添加しても構わない。
【0020】
前記混合物は、前記セルロース類の粉末と前記高分子凝集剤とを混合機により均一に混合したものである。
前記造粒物は、前記セルロース類の粉末と前記高分子凝集剤とを混合し水分を加えて混練し、混練物を得る混練工程と、該混練物を延伸法によりシート状に成形し、シート状の成形物を得る延伸・シート化工程と、該シート状の成形物を乾燥させ、乾燥したシートを得る乾燥工程と、該乾燥したシートを粉砕する粉砕工程とを含む製造方法により製造することができる。
更に、前記粉砕工程後に、ふるいにより造粒物を分級する分級工程を含んでもよい。
【0021】
(水処理方法)
本発明の水処理方法は、第1の形態では、上述した本発明の水処理剤を水に溶かし、セルロース類と高分子凝集剤との分散液を得、前記分散液を排水に供することにより排水中の無機系不要物を除去する。
【0022】
前記無機系不要物としては、例えば、ニッケル、フッ素、鉄、銅、亜鉛、クロム、ヒ素、カドミウム、錫、鉛などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
本発明の水処理方法は、第2の形態では、セルロース類と高分子凝集剤を添加する水処理方法であって、
前記セルロース類と前記高分子凝集剤は別々に添加され、処理水中での前記セルロース類と前記高分子凝集剤との質量組成比が9:1〜1:9である。
前記セルロース類と前記高分子凝集剤との質量組成比は、7:3〜3:7が好ましく、5:5がより好ましい。
前記セルロース類と前記高分子凝集剤の添加順については、特に制限はなく、どちらを先に添加してもよく、両者を同時に添加しても構わない。
【0024】
本発明の水処理方法について具体的に説明する。
排水中の無機系不要物におけるニッケルイオン、フッ素イオン、鉄イオンなどの無機イオンに対して無機凝集剤を添加する不溶化処理を施し、ミクロフロックを形成させる。この排水に、0.1質量%〜0.2質量%の水溶液とした前記分散液を供する。そして、ミクロフロックを凝集沈降させ、沈降分離された沈殿物を取り除くと、排水は浄化される。
前記不溶化処理では、例えば、排水に塩基を加え排水を塩基性にしてから無機凝集剤を添加し前記無機イオンを不溶化させることが好ましい。
無機凝集剤としては、例えば、塩化第二鉄、ポリ硫酸第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、消石灰などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、排水に塩基を加え、無機凝集剤を添加した後、本発明の水処理剤を添加する前に、高分子凝集剤を単独で添加してもよい。本発明の水処理剤を添加する前に、高分子凝集剤を単独で添加しておくと、排水中のミクロフロックのフロックサイズを大きくすることができる。
【実施例】
【0025】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0026】
(実施例1)
<排水>
処理する排水として、フッ素原水排水(フッ素濃度:1,000ppm)を用いた。
【0027】
<一次凝集>
次に、上記排水に、35質量%CaClを4,375ppm、10質量%ポリ塩化アルミニウム(PAC)を350ppm添加し、5質量%NaOHを250ppm添加しながら撹拌した(pH7.5に調整)。この操作により、排水は、ミクロフロックを含む上澄み液と沈殿物に分離した。
【0028】
<水処理剤1の作製>
次に、セルロース類として酢酸セルロース1(粒径355μm以下、重量平均分子量(Mw)184,000、関東化学株式会社製)と、高分子凝集剤A(商品名:AN926VHM、アクリル酸ナトリウムとアクリルアミドとの共重合体、株式会社エス・エヌ・エフ製)との質量組成比が5:5となるように混合し、混合物を得た。得られた混合物を水処理剤1として使用した。
なお、酢酸セルロース1の粒径が355μm以下であるとは、目開き355μmのJIS Z8801−1(2006)及びISO3310−1:2000に定める金属製網ふるいを通過した酢酸セルロースの粒径を意味する。
【0029】
<水浄化処理>
次に、得られた水処理剤1を水に溶かし、0.2質量%水溶液の分散液を作製した。この分散液を、上記ミクロフロックを含む上澄み液と沈殿物からなる排水に対して、撹拌しながら、3mL/分間の速度で滴下した。この際、上記排水中の固形分に対して20ppmになるように水処理剤1を添加した。ここで、「固形分」の測定方法は、排水中のスラリー濃度を水分計にて計測し、逆算することにより、求めることができる。
滴下後、1分間撹拌を維持した後、以下のようにして、「フッ素(F)濃度」、「圧搾後汚泥量」、及び「汚泥含水率」を測定した。結果を表1に示した。
【0030】
<フッ素(F)濃度の測定>
撹拌停止後2分間後の上澄みをサンプリングし、吸光光度法によるデジタルウオーターアナライザーであるデジタルパックテスト(株式会社 共立理化学研究所製)により、フッ素濃度を測定した。
【0031】
<圧搾後汚泥量の測定>
撹拌停止後、生成した汚泥を漏斗に移して吸引濾過し、脱水汚泥を得た。得られた脱水汚泥を濾布に入れ、端部をクリップで固定した。クリップで固定した濾布の上に板を載せ、濾布の一の面を3.5kgの重りを用い10秒間で3回圧搾した(圧搾面積:40mm×50mm)。濾布の他の面も同じ条件で圧搾した。次に、濾布の一の面を10.3kgの重りを用い10秒間で2回圧搾した。濾布の他の面も同じ条件で圧搾した。その後、圧搾後の汚泥量を測定した。
【0032】
<汚泥含水率>
上記圧搾後汚泥量の測定により圧搾終了後の汚泥の質量Aを求めた。続いて、105℃のオーブンで絶乾状態(水分量0.05%以下)にした汚泥の質量Bを測定した。ここで、水分量の確認には加熱乾燥式水分計(MX−50、株式会社エー・アンド・デイ製)を用いた。これらより、汚泥に含まれる水分の質量(A−B)を汚泥の質量(A)で除し百分率とすることで、汚泥含水率を求めた。
なお、上記圧搾後汚泥量及び汚泥含水率は精度よく測定することができた。
【0033】
(実施例2)
実施例1において、水処理剤1を、下記の水処理剤2に代えた以外は、実施例1と同様にして、水浄化処理を行い、「フッ素(F)濃度」、「圧搾後汚泥量」、及び「汚泥含水率」を測定した。結果を表1に示した。
【0034】
<水処理剤2の作製>
水処理剤2は、セルロース類として酢酸セルロース2(粒径355μm超710μm以下、重量平均分子量(Mw)184,000、関東化学株式会社製)と、高分子凝集剤A(商品名:AN926VHM、アクリル酸ナトリウムとアクリルアミドとの共重合体、株式会社エス・エヌ・エフ製)との質量組成比が5:5となるように混合した混合物である。
なお、酢酸セルロース2の粒径が355μm超710μmであるとは、目開き355μmと710μmのJIS Z8801−1(2006)及びISO3310−1:2000に定める金属製網ふるいを用いて分級した酢酸セルロースの粒径を意味する。
【0035】
(実施例3)
実施例1において、水処理剤1を、下記の水処理剤3に代えた以外は、実施例1と同様にして、水浄化処理を行い、「フッ素(F)濃度」、「圧搾後汚泥量」、及び「汚泥含水率」を測定した。結果を表1に示した。
【0036】
<水処理剤3の作製>
水処理剤3は、セルロース類として酢酸セルロース3(粒径710μm超1180μm以下、重量平均分子量(Mw)184,000、関東化学株式会社製)と、高分子凝集剤A(商品名:AN926VHM、アクリル酸ナトリウムとアクリルアミドとの共重合体、株式会社エス・エヌ・エフ製)との質量組成比が5:5となるように混合した混合物である。
なお、酢酸セルロース3の粒径が710μm超1180μm以下であるとは、目開き710μmと1180μmのJISZ8801−1(2006)及びISO3310−1:2000に定める金属製網ふるいを用いて分級した酢酸セルロースの粒径を意味する。
【0037】
(実施例4)
実施例1において、水処理剤1を、下記の水処理剤4に代えた以外は、実施例1と同様にして、水浄化処理を行い、「フッ素(F)濃度」、「圧搾後汚泥量」、及び「汚泥含水率」を測定した。結果を表1に示した。
【0038】
<水処理剤4の作製>
水処理剤4は、セルロース類として酢酸セルロース4(粒径355μm以下、重量平均分子量(Mw)151,000、6%粘度(25℃、アセトン)が50×10−3Pa・s、商品名:L−20、株式会社ダイセル製)と、高分子凝集剤A(商品名:AN926VHM、アクリル酸ナトリウムとアクリルアミドとの共重合体、株式会社エス・エヌ・エフ製)との質量組成比が5:5となるように混合した混合物である。
なお、酢酸セルロース4の粒径が355μm以下であるとは、目開き355μmのJIS Z8801−1(2006)及びISO3310−1:2000に定める金属製網ふるいを用いて分級した酢酸セルロースの粒径を意味する。
【0039】
(実施例5)
実施例1において、水処理剤1を、下記の水処理剤5に代えた以外は、実施例1と同様にして、水浄化処理を行い、「フッ素(F)濃度」、「圧搾後汚泥量」、及び「汚泥含水率」を測定した。結果を表1に示した。
【0040】
<水処理剤5の作製>
水処理剤5は、セルロース類として酢酸セルロース5(粒径355μm以下、重量平均分子量(Mw)237,000、6%粘度(25℃、アセトン)が140×10−3Pa・s、商品名:L−70、株式会社ダイセル製)と、高分子凝集剤A(商品名:AN926VHM、アクリル酸ナトリウムとアクリルアミドとの共重合体、株式会社エス・エヌ・エフ製)との質量組成比が5:5となるように混合した混合物である。
なお、酢酸セルロース5の粒径が355μm以下であるとは、目開き355μmのJIS Z8801−1(2006)及びISO3310−1:2000に定める金属製網ふるいを用いて分級した酢酸セルロースの粒径を意味する。
【0041】
(実施例6)
実施例1において、水処理剤1を、下記の水処理剤6に代えた以外は、実施例1と同様にして、水浄化処理を行い、「フッ素(F)濃度」、「圧搾後汚泥量」、及び「汚泥含水率」を測定した。結果を表2に示した。
【0042】
<水処理剤6の作製>
水処理剤6は、セルロース類として酢酸セルロース6(粒径355μm以下、6%粘度(25℃、アセトン)が275×10−3Pa・s、商品名:LT−105、株式会社ダイセル製)と、高分子凝集剤A(商品名:AN926VHM、アクリル酸ナトリウムとアクリルアミドとの共重合体、株式会社エス・エヌ・エフ製)との質量組成比が5:5となるように混合した混合物である。
なお、酢酸セルロース6の粒径が355μm以下であるとは、目開き355μmのJIS Z8801−1(2006)及びISO3310−1:2000に定める金属製網ふるいを用いて分級した酢酸セルロースの粒径を意味する。
【0043】
(実施例7)
実施例1において、水処理剤1を、下記の水処理剤7に代えた以外は、実施例1と同様にして、水浄化処理を行い、「フッ素(F)濃度」、「圧搾後汚泥量」、及び「汚泥含水率」を測定した。結果を表2に示した。
【0044】
<水処理剤7の作製>
水処理剤7は、セルロース類として酢酸セルロース7(粒径355μm以下、商品名:三酢酸セルロース、株式会社ダイセル製)と、高分子凝集剤A(商品名:AN926VHM、アクリル酸ナトリウムとアクリルアミドとの共重合体、株式会社エス・エヌ・エフ製)との質量組成比が5:5となるように混合した混合物である。
なお、酢酸セルロース7の粒径が355μm以下であるとは、目開き355μmのJIS Z8801−1(2006)及びISO3310−1:2000に定める金属製網ふるいを用いて分級した酢酸セルロースの粒径を意味する。
【0045】
(実施例8)
実施例1において、水処理剤1を、下記の水処理剤8に代えた以外は、実施例1と同様にして、水浄化処理を行い、「フッ素(F)濃度」、「圧搾後汚泥量」、及び「汚泥含水率」を測定した。結果を表2に示した。
【0046】
<水処理剤8の作製>
水処理剤8は、セルロース類として酢酸セルロース1(粒径355μm以下、重量平均分子量(Mw)184,000、関東化学株式会社製)と、高分子凝集剤A(商品名:AN926VHM、アクリル酸ナトリウムとアクリルアミドとの共重合体、株式会社エス・エヌ・エフ製)との質量組成比が3.3:6.7となるように混合し、混合物を得た。
なお、酢酸セルロース1の粒径が355μm以下であるとは、目開き355μmのJIS Z8801−1(2006)及びISO3310−1:2000に定める金属製網ふるいを用いて分級した酢酸セルロースの粒径を意味する。
【0047】
(実施例9)
実施例1において、水処理剤1を、下記の水処理剤9に代えた以外は、実施例1と同様にして、水浄化処理を行い、「フッ素(F)濃度」、「圧搾後汚泥量」、及び「汚泥含水率」を測定した。結果を表2に示した。
【0048】
<水処理剤9の作製>
水処理剤9は、セルロース類として酢酸セルロース1(粒径355μm以下、重量平均分子量(Mw)184,000、関東化学株式会社製)と、高分子凝集剤A(商品名:AN926VHM、アクリル酸ナトリウムとアクリルアミドとの共重合体、株式会社エス・エヌ・エフ製)との質量組成比が6.7:3.3となるように混合し、混合物を得た。
なお、酢酸セルロース1の粒径が355μm以下であるとは、目開き355μmのJIS Z8801−1(2006)及びISO3310−1:2000に定める金属製網ふるいを用いて分級した酢酸セルロースの粒径を意味する。
【0049】
(実施例10)
実施例1において、水処理剤1を、下記の水処理剤10に代えた以外は、実施例1と同様にして、水浄化処理を行い、「フッ素(F)濃度」、「圧搾後汚泥量」、及び「汚泥含水率」を測定した。結果を表2に示した。
【0050】
<水処理剤10の作製>
水処理剤10は、セルロース類として酢酸セルロース1(粒径355μm以下、重量平均分子量(Mw)184,000、関東化学株式会社製)と、高分子凝集剤B(商品名:PA−331、アクリル酸ナトリウム、栗田工業株式会社製)との質量組成比が5:5となるように混合し、混合物を得た。
なお、酢酸セルロース1の粒径が355μm以下であるとは、目開き355μmのJIS Z8801−1(2006)及びISO3310−1:2000に定める金属製網ふるいを用いて分級した酢酸セルロースの粒径を意味する。
【0051】
(実施例11)
実施例1において、水処理剤1を、下記の水処理剤11に代えた以外は、実施例1と同様にして、水浄化処理を行い、「フッ素(F)濃度」、「圧搾後汚泥量」、及び「汚泥含水率」を測定した。結果を表3に示した。
【0052】
<水処理剤11の作製>
水処理剤11は、セルロース類として酢酸セルロース1(粒径355μm以下、重量平均分子量(Mw)184,000、関東化学株式会社製)と、高分子凝集剤A(商品名:AN926VHM、アクリル酸ナトリウムとアクリルアミドとの共重合体、株式会社エス・エヌ・エフ製)との質量組成比が4:6となるように混合し、混合物を得た。
なお、酢酸セルロース1の粒径が355μm以下であるとは、目開き355μmのJIS Z8801−1(2006)及びISO3310−1:2000に定める金属製網ふるいを用いて分級した酢酸セルロースの粒径を意味する。
【0053】
(実施例12)
実施例1において、水処理剤1を、下記の水処理剤12に代えた以外は、実施例1と同様にして、水浄化処理を行い、「フッ素(F)濃度」、「圧搾後汚泥量」、及び「汚泥含水率」を測定した。結果を表3に示した。
【0054】
<水処理剤12の作製>
水処理剤12は、セルロース類として酢酸セルロース1(粒径355μm以下、重量平均分子量(Mw)184,000、関東化学株式会社製)と、高分子凝集剤A(商品名:AN926VHM、アクリル酸ナトリウムとアクリルアミドとの共重合体、株式会社エス・エヌ・エフ製)との質量組成比が6:4となるように混合し、混合物を得た。
なお、酢酸セルロース1の粒径が355μm以下であるとは、目開き355μmのJIS Z8801−1(2006)及びISO3310−1:2000に定める金属製網ふるいを用いて分級した酢酸セルロースの粒径を意味する。
【0055】
(比較例1)
実施例1において、水処理剤1を、下記の水処理剤13に代えた以外は、実施例1と同様にして、水浄化処理を行い、「フッ素(F)濃度」、「圧搾後汚泥量」、及び「汚泥含水率」を測定した。結果を表4に示した。
【0056】
<水処理剤13の作製>
水処理剤13は、高分子凝集剤B(商品名:PA−331、アクリル酸ナトリウム、栗田工業株式会社製)からなる。
【0057】
(比較例2)
実施例1において、水処理剤1を、下記の水処理剤14に代えた以外は、実施例1と同様にして、水浄化処理を行い、「フッ素(F)濃度」、「圧搾後汚泥量」、及び「汚泥含水率」を測定した。結果を表4に示した。
【0058】
<水処理剤14の作製>
水処理剤14は、高分子凝集剤A(商品名:AN926VHM、アクリル酸ナトリウムとアクリルアミドとの共重合体、株式会社エス・エヌ・エフ製)からなる。
【0059】
(比較例3)
実施例1において、水処理剤1を、下記の水処理剤15に代えた以外は、実施例1と同様にして、水浄化処理を行い、「フッ素(F)濃度」、「圧搾後汚泥量」、及び「汚泥含水率」を測定した。結果を表4に示した。
【0060】
<水処理剤15の作製>
水処理剤15は、セルロース類として酢酸セルロース1(粒径355μm以下、重量平均分子量(Mw)184,000、関東化学株式会社製)からなる。
なお、酢酸セルロース1の粒径が355μm以下であるとは、目開き355μmのJIS Z8801−1(2006)及びISO3310−1:2000に定める金属製網ふるいを用いて分級した酢酸セルロースの粒径を意味する。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
【表4】
【0065】
以上により、実施例1から12の結果から、本発明の水処理剤は、水浄化性能に優れると共に、汚泥含水率を低減できることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の水処理剤及び水処理方法は、水浄化性能に優れると共に、汚泥の含水率を低減できるので、例えば、排水処理、水浄化処理や汚泥の濃縮などに好適に用いることができる。
【要約】
【課題】水浄化性能に優れると共に、汚泥の含水率を低減できる水処理剤及び水処理剤の製造方法、並びに前記水処理剤を用いた水処理方法の提供。
【解決手段】セルロース類と高分子凝集剤を含む水処理剤であって、前記セルロース類と前記高分子凝集剤の質量組成比が9:1〜1:9である。水浄化作用及び汚泥脱水作用の少なくともいずれかを有する態様、前記セルロース類と前記高分子凝集剤の混合物又は造粒物である態様などが好ましい。
【選択図】なし