(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来、前記吐出物の厚みの調節は作業者の勘に頼っており、前記吐出物を所望の厚みに調節するのには困難性が伴うという問題点がある。具体的には、前記吐出物の一部分の厚みを所望の値に変更するために、その厚みに対応する位置の前記スロットの高さを調節すると、前記スロットの別の位置における厚みも変化してしまうという問題点がある。すなわち、前記吐出物の一部分の厚みを所望の厚みに調節したとしても、変更の必要のない別の部分の厚みまで変化してしまうという問題点がある。
また、前記ダイを用いた押出方法では、前記吐出物の厚みを均一にすることだけでなく、前記吐出物の厚みを部分的に変化させることもあり、このような場合にも同様に、厚みの調節の問題点が生じている。
【0006】
上記問題点に鑑み、本発明は、比較的容易に且つ精度良く吐出物の厚みを調節可能な押出方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが鋭意検討したところ、スロットの高さを調節した前後における、スロットの高さの変化量と吐出物の厚みの変化量とが比例関係にあることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
本発明に係る押出方法は、
流体物を吐出するためのスロットが形成されたダイを使用する押出方法であって、
前記スロットから吐出される吐出物の厚みを調節するために、前記スロットの高さを調節する調節工程を備え、
前記調節工程は、前記吐出物の流れ方向に直交する方向における任意の位置1〜Nのうちの位置nにおける厚みd
1nが下記式(1)及び(2)で算出され、下記式(3)で算出される計算厚みd
1={d
11・・・d
1N}と厚みの目標値d
ref={d
ref1・・・d
refN}との差e={e
1・・・e
N}が小さくなるように、前記スロットの高さを決定する工程を含む。
【数1】
d
1n:調節後の前記吐出物の計算厚みd
1={d
11・・・d
1N}の位置nにおける値
d
1ave:d
1={d
11・・・d
1N}の平均値
K:比例定数
h
1n:仮想の調節後の前記スロットの高さh
1={h
11・・・h
1N}の位置nにおける値
h
1ave:h
1={h
11・・・h
1N}の平均値
h
0n:調節前の前記スロットの高さh
0={h
01・・・h
0N}の位置nにおける値
h
0ave:h
0={h
01・・・h
0N}の平均値
d
0n:調節前の前記吐出物の厚みd
0={d
01・・・d
0N}の位置nにおける値
d
0ave:d
0={d
01・・・d
0N}の平均値
v:前記流体物の粘性指数
【数2】
e
n:前記差e={e
1・・・e
N}の位置nにおける値
d
refn:前記吐出物の厚みの目標値d
ref={d
ref1・・・d
refN}の位置nにおける値
【0009】
斯かる構成によれば、調節前のスロットの高さh
0、調節前の吐出物の厚みd
0及び式(2)で算出される比例定数Kの値を調べれば、式(1)で算出される計算厚みd
1と、厚みの目標値d
refとの差eに基づいてスロットの高さが決定されるため、比較的容易に且つ精度良く吐出物の厚みを調節することができる。
【0010】
本発明に係る押出方法は、好ましくは、
下記式(4)で示される差e={e
1・・・e
N}の二乗の合計が最小となるh
1={h
11・・・h
1N}を求め、該h
1に基づいて前記スロットの高さを決定する。
【数3】
【0011】
斯かる構成によれば、式(4)で示される差eの二乗の合計が最小となるh
1に基づいてスロットの高さが決定されるため、より精度良く吐出物の厚みを調節することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上の通り、本発明によれば、比較的容易に且つ精度良く吐出物の厚みを調節可能な押出方法が提供され得る。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る押出方法について説明する。
【0015】
本実施形態に係る押出方法は、
図1〜
図3に示されるようなダイコータ1と呼ばれる塗工装置を用いて、フィルムFなどの被塗工物の表面に流動物としての塗工液を塗工し、フィルムFの表面に形成されることとなる吐出物としての塗工膜を形成する方法である。
【0016】
ダイコータ1は、塗工液を吐出するためのスロット11が形成されたダイ10を備えている。ダイ10は、ローラ部材などに支持されたフィルムFであってスロット11の開口110に近接するように走行するフィルムFなどの被塗工物に、スロット11から吐出させた塗工液を塗工して、フィルムFの表面に塗工膜を形成するように構成されている。ダイ10は、スロット11の開口110が形成された吐出部13がフィルムFなどの被塗工物に向かって突出するように形成されている。本実施形態では、ダイ10は、第1のダイブロック20(図における下側のダイブロック)と第2のダイブロック30(図における上側のダイブロック)とを有しており、それぞれのダイブロックの間にスロット11が形成されている。以下では、フィルムF又は塗工膜の流れる方向をMD、MDに直交する方向をTDと呼ぶことがある。また、スロット11の開口110の高さをスロット11の高さhとする。
【0017】
本実施形態のダイ10は、さらに、スロット11の高さhを調節するための調節機構50を第2のダイブロック30側に有している。本実施形態では、調節機構50は、スロット11の幅方向に沿って第2のダイブロック30に配されたスリット51と、スリット51の間隔を調節してスロット11の高さhを調節する複数の調節ネジ52とを有している。複数の調節ネジ52は、スリット51の延びる方向に沿って(言い換えれば、スロット11の幅方向に沿って)並んでおり、各調節ネジ52が回転して前進又は後退することによって、スリット51の間隔が拡縮し、それに伴い、スロット11の高さhが拡縮するようになっている。
【0018】
調節ネジ52としては、例えば、差動ネジ52が好適に用いられ、これによってスロット11の高さhの微調整が容易になる。差動ネジ52は、中空に形成された外ネジ521と、外ネジ521の内側に螺合するように形成された内ネジ522とを有し、外ネジ521及び内ネジ522は、それぞれのピッチの大きさが異なるように形成されている。これによって、スリット51は、外ネジ521を1回転させると、外ネジ521と内ネジ522とのピッチ差の分だけ、拡縮するようになっている。
【0019】
図2に示されるように、本実施形態では、ダイ10は、第1のダイブロック20と第2のダイブロック30との間に挟持されるように配された板状のシム部材40を有している。シム部材40は、スロット11の開口110に向かって開口するようにC字状に形成されている。ダイ10は、シム部材40の開口42の幅が調節されることによって、塗工膜の幅を調節可能となっている。
【0020】
スロット11は、高さhが通常0.01〜5mmに調節可能に構成されている。また、スロット11の幅は、通常200〜5000mmに設定されている。
調節ネジ52の数は、通常3〜90個である。また、各調節ネジ52の回転軸中心間の距離は、通常10〜400mmに設定されている。回転軸中心間の距離は、それぞれが等しい距離であることが好ましいが、異なる距離であってもよい。本実施形態では、調節機構50は、N個の調節ネジ52を有している。以下では、1〜N個の各調節ネジ52に対応するスロット11の位置及び塗工膜の位置を、位置1〜Nとする。
【0021】
第1のダイブロック20は、
図3に示されるように、塗工液を収容する収容部(不図示)から通路21を介して供給される塗工液を一時的に溜めるための凹状に形成されたキャビティ22を有している。キャビティ22は、スロット11とつながっている。
【0022】
第1のダイブロック20及び第2のダイブロック30のうち少なくとも第2のダイブロック30は、調節ネジ52などの押圧力により弾性変形し得る材料により製造されていればよく、通常、ステンレスなどの金属により製造されている。また、シム部材40は、通常、ステンレスや真ちゅうなどの金属箔又はポリエチレンテレフタレートなどのプラスチックフィルムにより製造されている。
【0023】
塗工液としては、例えばポリマー溶液が挙げられる。塗工液の粘度は、通常0.0005〜200Pa・sに設定され、好ましくは0.001〜100Pa・sに設定される。なお、粘度は、レオメータ(HAAKE社製)により測定されるものとする。また、測定条件は、せん断速度1[1/s]、温度20℃とする。
【0024】
次に、本実施形態に係る押出方法について詳述する。
【0025】
本実施形態の押出方法は、フィルムFなどの被塗工物の表面に塗工膜を形成するためのダイコータ1を使用する塗工方法である。該塗工方法は、スロット11から塗工液が吐出されることによってフィルムFの表面に形成されることとなる塗工膜の厚みdを調節するために、スロット11の高さhを調節する調節工程Pと、調節工程Pの後に、塗工液の押し出しを行う押出工程とを備える。なお、本実施形態では、ダイコータ1の収容部から供給される塗工液の流量を一定とする。
【0026】
本実施形態において、塗工液の流量とは、好ましくは質量流量を意味するものとする。また、塗工液の流量が一定とは、定常運転時において、[最大流量−最小流量]/平均流量で算出される値が、0.2以下、好ましくは0.1以下である場合を含むものとする。
【0027】
調節工程Pは、調節前の位置1〜Nにおけるスロット11の高さh
0={h
01・・・h
0N}及び調節前の位置1〜Nにおける塗工膜の厚みd
0={d
01・・・d
0N}を測定するデータ取得工程P1と、スロット11の高さhの変化量及び塗工膜の厚みdの変化量を関連付ける比例定数Kを下記式(2)で算出する定数算出工程P2と、位置1〜Nのうちの位置nにおける塗工膜の厚みd
1nが下記式(1)で算出され、下記式(3)で算出される計算厚みd
1={d
11・・・d
1N}と塗工膜の厚みの目標値d
ref={d
ref1・・・d
refN}との差e={e
1・・・e
N}が小さくなるように、スロット11の高さhを決定する高さ決定工程P3とを有する。
【数4】
【数5】
【0028】
d
1nは、調節後の塗工膜の計算厚みd
1={d
11・・・d
1N}の位置nにおける値を表す。
d
1aveは、d
1={d
11・・・d
1N}の平均値を表す。本実施形態では、塗工液の流量が一定であるため、d
1ave=d
0aveとみなしてもよい。
Kは、比例定数を表す。
h
1nは、仮想の調節後のスロット11の高さh
1={h
11・・・h
1N}の位置nにおける値を表す。
h
1aveは、h
1={h
11・・・h
1N}の平均値を表す。
h
0nは、調節前の前記スロットの高さh
0={h
01・・・h
0N}の位置nにおける値を表す。
h
0aveは、h
0={h
01・・・h
0N}の平均値を表す。
d
0nは、調節前の前記吐出物の厚みd
0={d
01・・・d
0N}の位置nにおける値を表す。
d
0aveは、d
0={d
01・・・d
0N}の平均値を表す。
vは、塗工液の粘性指数を表す。
e
nは、差e={e
1・・・e
N}の位置nにおける値を表す。
d
refnは、前記吐出物の厚みの目標値d
ref={d
ref1・・・d
refN}の位置nにおける値を表す。
【0029】
上記式(1)は、下記式(5)から導かれたものである。下記式(5)において、左辺は塗工膜の厚みdの変化量を表しており、右辺のかっこ内はスロット11の高さhの変化量を表しており、それぞれの変化量が比例定数Kによって関連付けられている。
【数6】
【0030】
上記式(5)は、塗工液がニュートン流体であると仮定したときに成立する下記式(6)に基づいている。
【数7】
【0031】
Qは、スロット11を流れるニュートン流体の流量を表す。
Wは、塗工幅を表す。
ΔPは、スロット11の上流側端111におけるニュートン流体の圧力p1と開口110におけるニュートン流体の圧力p2との差圧(p1−p2)を表す。
μは、粘度を表す。
Lは、スロットの長さ、すなわち、上流側端111から開口110までの距離を表す。
【0032】
上記のように、式(6)は、ニュートン流体の流量の変化率dQ/Qが、スロット11の高さhの変化率dh/hと比例関係にあることを示している。そして、上記式(1)は、式(6)における流量の変化率dQ/Qを塗工液の膜厚dの変化率とみなすことによって、導かれたものである。
【0033】
上記式(2)は、上記式(6)を非ニュートン流体として書き換えた下記式(7)から導出されたものである。
【数8】
【0034】
上記式(2)において、vは、塗工液の粘性指数を表す。一般に、塗工液などの液の粘度は、下記近似式(8)で表される。本実施形態では、レオメータで測定された塗工液の粘度データを基にした、前記近似式で得られた粘性指数vが、式(2)に代入されて用いられる。
【数9】
【0035】
μは、塗工液の粘度[Pa・s]を表す。
ηは、塗工液のゼロせん断粘度[Pa・s]を表す。
γは、せん断速度[1/s]を表す。
vは、塗工液の粘性指数を表す。
【0036】
[データ取得工程P1]
データ取得工程P1では、調節前におけるスロット11の高さhでの塗工膜の厚みdを測定する。すなわち、調節前の位置1〜Nにおけるスロット11の高さh
0={h
01・・・h
0N}及び調節前の位置1〜Nにおける塗工膜の厚みd
0={d
01・・・d
0N}を測定する。
【0037】
位置1〜Nにおけるスロット11の高さhの測定値は、調節ネジ52に対応する部分の高さの測定値が採用される。すなわち、TDにおいて、調節ネジ52と同じ位置のスロット11の高さhが測定値として採用される。
【0038】
位置1〜Nにおける塗工膜の厚みdの測定値は、TDにおいて、調節ネジ52と同じ位置の塗工膜の厚みdが採用される。塗工膜の厚みdは、例えば、リニアゲージ(尾崎製作所製)によって測定される。
【0039】
データ取得工程P1では、さらに、h
0={h
01・・・h
0N}の平均値h
0ave及びd
0={d
01・・・d
0N}の平均値d
0aveを計算する。
【0040】
[定数算出工程P2]
定数算出工程P2では、スロット11の高さhの変化量と塗工膜の厚みdの変化量とを関連付ける比例定数Kを、上記式(2)により算出する。この比例定数Kは、次の高さ決定工程P3において、式(1)に代入して用いられる定数である。
【0041】
[高さ決定工程P3]
高さ決定工程P3では、位置1〜Nのうち位置nにおける厚みd
1nが上記式(1)で算出され、上記式(3)で算出される計算厚みd
1={d
11・・・d
1N}と厚みの目標値d
ref={d
ref1・・・d
refN}との差e={e
1・・・e
N}が小さくなるように、位置1〜Nにおける仮想の調節後のスロットの高さh
1={h
11・・・h
1N}を算出する。
【0042】
本実施形態では、h
1={h
11・・・h
1N}は、下記式(4)で示される差e={e
1・・・e
N}の二乗の合計が最小となるように、最小二乗法で算出され、例えば、h
1={h
11・・・h
1N}は、任意の初期値を与え、エクセル(登録商標)のソルバーを用いることで算出される。そして、このh
1={h
11・・・h
1N}の値に基づいて、調節後のスロット11の高さh
2={h
21・・・h
2N}を決定する。調節後のスロット11の高さh
2={h
21・・・h
2N}としては、h
1={h
11・・・h
1N}の値をそのまま採用してもよく、h
1={h
11・・・h
1N}の値を基準として微調整した値を採用してもよい。
【数10】
【0043】
以上の通り、本実施形態の押出方法によれば、調節前のスロット11の高さh
0={h
01・・・h
0N}、調節前の塗工液の厚みd
0={d
01・・・d
0N}及び式(2)で算出される比例定数Kの値を調べれば、式(1)で算出される計算厚みd
1={d
11・・・d
1N}と、厚みの目標値d
ref={d
ref1・・・d
refN}との差e={e
1・・・e
N}に基づいてスロット11の高さh
1={h
11・・・h
1N}が決定され、このh
1={h
11・・・h
1N}の値に基づいて、調節後のスロット11の高さh
2={h
21・・・h
2N}が決定されるため、比較的容易に且つ精度良く塗工液の厚みを調節することができる。また、本実施形態の押出方法は、塗工液の厚みdを目標とする均一な厚みに調節することに加え、塗工液の厚みdを目標とする不均一な厚みに調節することにも優れている。
【0044】
なお、本発明に係る押出方法は、上記実施形態に限定されるものではない。また、本発明に係る押出方法は、上記の作用効果によって限定されるものではない。本発明に係る押出方法は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0045】
例えば、上記実施形態では、ダイコータ1を用いる塗工方法について説明したが、溶融樹脂を押し出すためのTダイなどを用いた樹脂フィルムの成形方法であってもよい。この場合、溶融樹脂の粘度は、1000〜5000Pa・sであることが好ましい。
【0046】
また、上記実施形態では、スリット51と調節ネジ52とを有する調節機構50によりスロット11の高さhを調節する態様を示したが、これに限定されない。別の調節機構50として、調節ネジ52に代えて、ヒートボルトを採用してもよい。この他、例えば、シム部材40や各ダイブロックを加工して、スロットの高さhを調節してもよい。また、試作用のダイコータ1を用いてデータ取得工程P1及び定数算出工程P2を実施し、高さ決定工程P3で所望の塗工膜の厚みdを得る為に設定されたhを有するダイコータ1を製造してもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、近似法として最小二乗法を示したが、この他、例えば、ニュートン法を採用してもよい。
【実施例】
【0048】
以下、実施例を示すことにより、本発明をさらに説明する。
【0049】
本実施例では、ダイコータを用いた塗工膜を形成する方法について検討した。
【0050】
[塗工装置]
本実施例で使用したダイコータは、ステンレス製であり、第1のダイブロックと第2のダイブロックとの間に幅1300mmのスロットが形成されており、スロットの高さ調節機構として、第2のダイブロックに備えられたスリットと、TDにわたって配された26個(すなわち、N=26で位置1〜26)の調節ネジ(回転軸中心間距離:50mmで一定)とを有している。
【0051】
[塗工条件]
表1に示す塗工条件で、被塗工物としてフィルムの表面に、塗工液として溶剤に溶解したアクリルポリマーを塗工し、吐出物としてアクリルポリマーからなる塗工膜を形成した。
【0052】
【表1】
【0053】
[実施例1]
実施例1では、塗工膜の厚みが不均一な状態から均一な状態となるようにスロットの高さを調節する方法を例示する。
【0054】
(データ取得工程P1)
調節前の位置1〜26におけるスロットの高さh
0={h
01・・・h
0_26}及び調節前の位置1〜26における塗工膜の厚みd
0={d
01・・・d
0_26}を測定した。測定結果を表2に示した。
【0055】
(定数算出工程P2)
上記式(8)によって、本実施例で使用した塗工液の粘性指数vを算出し、この粘性指数vを上記式(2)に代入し、比例定数Kを算出した。表2に示したように、K=4.89であった。
【0056】
(高さ決定工程P3)
表2に示す塗工膜の厚みの目標値d
ref={d
ref1・・・d
ref26}を設定し、上記式(1)、(3)、及び(4)を用いた最小二乗法によって、位置1〜26の計算厚みd
1={d
11・・・d
1_26}と厚みの目標値d
ref={d
ref1・・・d
ref26}との差e={e
1・・・e
26}の二乗の合計が最小となるように、位置1〜26における調節後のスロットの高さh
1={h
11・・・h
1_26}を算出した。算出結果を下記表2に示した。
【0057】
(押出工程)
スロットの高さh
2={h
21・・・h
2N}として、上記で算出したh
1={h
11・・・h
1_26}を採用し、フィルムに塗工膜を形成した。調節後の厚みを計測した結果を表2及び
図4に示した。
【0058】
表2及び
図4に示されるように、調節前の塗工膜の厚みは、幅255mm付近及び幅1125mm付近で不均一な状態であったが、調節後の塗工膜の厚みは、幅方向にわたって概ね目標の均一な状態に調節された。
【0059】
【表2】
【0060】
[比較例1]
比較例1では、熟練の作業者が本手法を使わずにスロット高さを調節した結果を例示する。比較例1では、h
0、d
0及びd
refの値を実施例1と同じ値に設定した。また、h
0及びd
0の測定値を基に、5回にわたって調節ネジによりスロットの高さを調節した。結果を表3及び
図5に示した。
【0061】
表3及び
図5に示されるように、幅方向にわたって目標値から外れる結果となった。幅方向にわたって、目標よりも小さかった厚みが目標よりも大きくなり、目標よりも大きかった厚みが目標よりも小さくなり、作業者の経験的な調整では困難であることが認められた。
【0062】
【表3】
【0063】
下記表4には、実施例1及び比較例1の調節前後の塗工膜の厚みの精度をまとめた。厚み精度は、[最大厚み−最小厚み]/平均厚み×100で算出した。表4の結果から、実施例1の押出方法は、比較例1と比較して、容易に且つ精度良く塗工膜の厚みを調節可能なものであることが認められた。
【0064】
【表4】
【0065】
[実施例2]
実施例2では、塗工膜の厚みが均一な状態から不均一な状態となるようにスロットの高さを調節する方法を例示する。なお、塗工条件は、表5に示す条件とした。結果を表6及び
図6に示した。
【0066】
【表5】
【0067】
表6及び
図6に示されるように、調節後の塗工膜の厚みは、幅方向にわたって概ね目標の不均一な状態に調節された。
【0068】
【表6】
【解決手段】流体物を吐出するためのスロットが形成されたダイを使用する押出方法であって、前記スロットから吐出される吐出物の厚みを調節するために、前記スロットの高さを調節する調節工程を備え、前記調節工程は、前記吐出物の流れ方向に直交する方向における任意の位置1〜Nのうちの位置nにおける厚みd