(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る巻線界磁型同期機および巻線界磁型同期機制御装置について説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には、共通の符号を付して、重複説明は省略する。
【0016】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る巻線界磁型同期機制御装置の構成を示すブロック図である。本第1の実施形態に係る巻線界磁型同期機制御装置300は、巻線界磁型同期機1が、電機子巻線2aおよび界磁巻線2bを有するが、制動(ダンパー)巻線を有さない場合を対象としている。
【0017】
巻線界磁型同期機制御装置300は、角速度指令ω
r*および磁束指令Φ
*に対して、電機子電圧V
Aおよび界磁電流
ifを調節する。巻線界磁型同期機制御装置300は、速度制御部10および界磁制御部20、およびシミュレータ100を有する。
【0018】
0075-0100、
図1他
速度制御部10は、減算器11、速度演算器12、速度制御器13、dq軸電流演算器14、減算器15、16、3相−dq変換器17、dq軸電流制御器18、dq−3相変換器19を有する。速度制御部10は、角速度指令ω
r*を得るための速度制御ループの下に、対応するトルク電流
iT*を得るための電流制御ループを有するカスケード制御の構成となっている。
【0019】
なお、以下、巻線界磁型同期機制御装置300の構成を示す各図の説明において、各要素の入出力信号は、たとえば、「角速度指令」ω
r*のように表現している。入出力信号については、詳細には、信号の名称と信号のレベル値とは別のものであるので、これらを別個に表現することが正しい。しかしながら、表現上、煩雑となるため、たとえばω
r*は、「角速度指令信号」を示すとともに「角速度指令信号のレベル値」も示すものとし、両者を「角速度指令」と総称して表現する。なお、フィードバック信号と称するものも、そのレベル値を併せて示すものとする。
【0020】
速度制御部10の減算器11は、回転位置検出器7で検出され位置演算器8により算出された巻線界磁型同期機1の回転位置Θが速度演算器12により変換された角速度ωを、負のフィードバック信号とし、角速度指令ω
r*から減じた角速度偏差を出力する。速度制御器13は、角速度偏差および磁束指令Φ
*を入力として、トルク電流指令
iT*を出力する。
【0021】
d:0028-0037,0046-0127、q:0027-0072,0083-0085、
図1他
dq軸電流
演算器14は、トルク電流指令
iT*を入力として、d軸電流指令
id*およびq軸電流指令
iq*を算出する。この際、dq軸電流
演算器14は、シミュレータ100で算出された負荷角δを用いる。
【0022】
電流制御ループについては、電流変換器5で検出された電機子の各相電流Iu、Iv、およびIwを、3相−dq変換器17でq軸電機子電流i
qおよびd軸電流
idに変換される。3相−dq変換器17は、この変換の際に、位置演算器8の出力である角度位置Θを用いる。3相−dq変換器17で得られたq軸電機子電流i
qおよびd軸電流
idは、減算器15および減算器16へのフィードバック信号として入力される。
【0023】
減算器15は、d軸電流指令
id*およびフィードック信号であるd軸電流
idを入力として受け入れ、d軸電流指令
id*からd軸電流
idを減じたd軸電流偏差を出力する。減算器16は、q軸電流指令
iq*およびフィードック信号であるq軸電機子電流i
qを入力として受け入れ、q軸電流指令
iq*からq軸電機子電流i
qを減じたq軸電流偏差を出力する。
【0024】
dq軸電流制御器18は、減算器15からのd軸電流偏差、および減算器16からのq軸電流偏差を入力として受け入れ、d軸電圧指令V
d*およびq軸電圧指令V
q*を算出し、出力する。
【0025】
dq−3相変換器19は、dq軸電流制御器18により算出されたd軸電圧指令V
d*およびq軸電圧指令V
q*を、3相各相の電圧指令Vu
*、Vv
*、Vw
*に変換する。電力変換器3は、これら3相各相の電圧指令Vu
*、Vv
*、Vw
*に比例した三相電機子電圧Vu、Vv、Vwを発生し、巻線界磁型同期機1に供給する。これにより、巻線界磁型同期機1の電機子巻線2aに相電流Iu、Iv、Iwが流れる。この相電流Iu、Iv、Iwは、それぞれ電流変換器5により検出される。
【0026】
Ifd:0028-0037, 0042-0051、
図1他
界磁制御部20は、磁束指令Φ
d*と、界磁電流
ifのフィードバック信号を受けて、界磁電流指令
ifd*を算出し、界磁電流制御器21が、界磁電流指令
ifd*から界磁電圧指令V
f*を算出し、電力変換器4に出力する。電力変換器4は、界磁電圧指令V
f*に比例した界磁電圧V
fを発生し、巻線界磁型同期機1の界磁巻線2bに供給する。これにより、巻線界磁型同期機1の界磁巻線2bに界磁電流
ifが流れる。この界磁電流
ifは電流変換器6により検出される。
【0027】
図2は、第1の実施形態に係る巻線界磁型同期機制御装置のシミュレータの構成を示すブロック図である。
【0028】
シミュレータ100は、負荷角演算器101、界磁電流指令演算器102、磁束演算器110、および加算器111を有する。シミュレータ100は、全体として、d軸電機子電流i
d、q軸電機子電流i
q、界磁電流i
fdおよび磁束指令Φ
*を入力として受け入れ、負荷角δおよび界磁電流指令i
fd*を出力する。ここで、i
fdは、電機子側に換算した界磁電流である。
【0029】
加算器111は、d軸電機子電流i
dと界磁電流i
fdとを入力として受け入れ、両者を合計した結果を合成d軸電流i
d+として出力する。
【0030】
磁束演算器110は、合成d軸電流i
d+、q軸電機子電流i
q、および界磁電流i
fdを入力として受け入れ、これらを変数とする2つの関数を有する。この2つの関数は、d軸方向の電機子巻線鎖交磁束Φ
dを算出するd軸磁束関数φ
d(i
d+,i
q,i
fd)と、q軸方向の電機子巻線鎖交磁束Φ
qを算出するq軸磁束関数φ
q(i
d+,i
q,i
fd)である。なお、便宜上、ギリシャ文字(大文字はΦ)の小文字の表記は、φまたは、次の表記のいずれかとするが両者は同じ文字を表すものとする。
【0032】
図3は、d軸電機子鎖交磁束Φ
dを算出するためのd軸磁束関数φ
dの例を示す3次元グラフである。平面における横軸は、q軸電機子電流i
q、縦軸は合成d軸電流i
d+である。両者に垂直な第3の軸は、d軸電機子鎖交磁束Φ
dである。
【0033】
ここで、曲面F
d1は、界磁電流i
fdがある値i
f1の場合のd軸電機子鎖交磁束Φ
dである。すなわち、F
d1(i
d+,i
q)=φ
d(i
d+,i
q,i
f1)である。
図3では、界磁電流i
fdがi
f1の場合の曲面F
d1のみが示されているが、複数の界磁電流i
fdの値についてのそれぞれに対応する複数の曲面F
dを準備しておけば、与えられた界磁電流i
fdの値については内挿することによって、(i
d+,i
q,i
fd)についてのφ
d(i
d+,i
q,i
fd)が算出できる。また、曲面自身も、関数テーブルに置き換えることができる。すなわち、i
d+軸とi
q軸のそれぞれの方向のメッシュに分けて、i
fdの値ごとのd軸電機子鎖交磁束Φ
dテーブルおよびq軸電機子鎖交磁束Φ
qテーブルとして保存し、入力されたi
d+およびi
qについて内挿により算出し、さらにi
dについても内挿することによりd軸電機子鎖交磁束Φ
dを算出することができる。以下、d軸電機子鎖交磁束Φ
dテーブルおよびq軸電機子鎖交磁束Φ
qテーブルを、関数テーブルと総称する。
【0034】
図4は、界磁電流を増加させた場合のd軸磁束関数φ
dの例を示す3次元グラフである。界磁電流i
fを増加させると磁気飽和が進行するため、φ
d(i
d+,i
q,i
fd)の分布形状である曲面F
d2は全体的に緩やかな曲面となる。
【0035】
曲面F
d1、F
d2等は、たとえば、有限要素法による電磁界解析などにより算出することができる。以上は、d軸磁束関数φ
d(i
d+,i
q,i
fd)について示したが、q軸磁束関数φ
q(i
d+,i
q,i
fd)についても同様の方法で算出することができる。
【0036】
次に、負荷角演算器101は、磁束演算器110からのd軸電機子鎖交磁束Φ
dとq軸電機子鎖交磁束Φ
qとを入力として受け入れて、負荷角δを算出する。
図5は、d軸電機子鎖交磁束Φ
dおよびq軸電機子鎖交磁束Φ
qと、負荷角δとの関係を示す図である。ここで負荷角δとは、q軸から測った誘起電圧E(≒端子電圧V)の位相角である。また、負荷角δは、d軸から測った磁束Φの位相角でもある。
図5は、同期機が電動機の場合を示している。
図5に示すように、負荷角δは、次の式(2)により算出できる。
δ=tan
−1(Φ
q/Φ
d) …(2)
【0037】
また、界磁電流指令演算器102は、磁束指令Φ
*、フィードバック信号であるd軸電機子電流i
d、磁束演算器110からのd軸電機子鎖交磁束Φ
dを入力として受け入れて、界磁電流指令i
fd*を次の式(3)により算出する。ただし、L
adは
、d軸の電機子反作用インダクタンス、L
ldはd軸の電機子漏れインダクタンスである。
【0039】
なお、本実施形態においては、シミュレータによって負荷角や界磁電流を演算してフィードフォワード的に制御する方式として、トルク電流i
Tの指令値としてトルク電流指令i
T*を用いるような制御装置の場合を例に示した。このようにシミュレータを用いる方法は、これに限定されず、負荷角や界磁電流を演算してフィードフォワード的に制御する任意の方式に対しても用いることができる。
【0040】
また、巻線界磁型同期機制御装置300の各部を、たとえば、速度制御器13、dq軸電流演算器14等のように、個々の機器としての名称を付している。しかしながら、巻線界磁型同期機制御装置300は、計算機システムの演算部であってもよい。この場合は、個々の機器としての名称を付することは適当ではなく、たとえば、速度制御部、dq軸電流演算部のように、計算機の一部の機能を示す名称とするのが適切である。本実施形態は、このような場合には適切に読み替えるものとして、便宜的に速度制御器13、dq軸電流演算器14等のように、個々の機器としての名称を付している。
【0041】
シミュレータ100のd軸電機子鎖交磁束Φ
dテーブルおよびq軸電機子鎖交磁束Φ
qテーブルには、磁気飽和に関するすべての情報が含まれているため、定常状態や過渡状態など任意の運転モードにおいて鎖交磁束を正確に推定することができる。
【0042】
このため、負荷角演算器101の出力である負荷角δや、界磁電流指令演算器102の出力である界磁電流指令i
fd*も精度よく演算されるため、従来の制御器が不得意とする過負荷においてもトルクを高精度に制御できる。また、負荷の急変や速度変動に対しても高速な応答が得られる。
【0043】
以上のように、本実施形態によれば、簡素な構成で、インダクタンスの変化が大きな場合であっても、必要なトルクを発生できる状態に巻線界磁型同期機を維持することができる。
【0044】
[第2の実施形態]
図6は、第2の実施形態に係る巻線界磁型同期機の制御装置のシミュレータの構成を示すブロック図である。本第2の実施形態は、第1の実施形態の変形である。本第2の実施形態は、電機子巻線および界磁巻線に加えて制動巻線をさらに有する巻線界磁型同期機を対象としている。
【0045】
本実施形態におけるシミュレータ120は、負荷角δの演算部分として、負荷角演算器101、加算器121、122、123、乗算器124、不完全微分要素125、乗算器126、不完全微分要素127、磁束演算器128、減算器130、131、界磁電流指令i
fd*の演算部分として、の界磁電流演算器132を有する。
【0046】
まず、シミュレータ120について説明する。ここで、制動巻線に流れる電流をi
kとし、制動巻線電流i
kのd軸方向成分をi
kd、q軸方向成分をi
kqと表示する。
図3、
図4で示した特性は、i
kがゼロ、すなわち定常状態における合成d軸電流i
d+およびq軸電機子電流i
qに対する依存性を示していることになる。
【0047】
シミュレータ120は、第1の実施形態の場合と同様に、全体として、d軸電機子電流i
d、q軸電機子電流i
q、界磁電流
ifdおよび磁束指令Φ
*を入力として受け入れ、負荷角δおよび界磁電流指令i
fd*を出力する。
【0048】
加算器121は、d軸電機子電流i
dおよび界磁電流i
fを入力として受け入れ、両者の合計値である合成d軸電流i
d+を出力する。
【0049】
磁束演算器128は、合成d軸電流i
d+とd軸制動巻線電流i
kdとの和、q軸電機子電流i
qとq軸制動巻線電流i
kqとの和、および界磁電流i
fの関数として、d軸方向電機子巻線鎖交磁束Φ
dおよびq軸方向電機子巻線鎖交磁束Φqをそれぞれ、後述する式(4)、(5)により導出する。
【0050】
ここで、d軸制動巻線電流i
kd、q軸制動巻線電流i
kqもは、過渡状態に生ずる制動巻線電流のd軸方向およびq軸方向の成分である。
【0051】
すなわち、過渡状態においては、合成d軸電流i
d+、q軸電機子電流i
q、および界磁電流i
fに加えてd軸制動巻線電流i
kd、q軸制動巻線電流i
kqも流れるため、これらの電流が作る起磁力によっても磁束が発生する。そこで、d軸制動巻線電流i
kd、q軸制動巻線電流i
kqが作る起磁力の影響を、次の式(4)、(5)のように考慮する。
d軸方向電機子巻線鎖交磁束Φ
d=φ
d(i
d++i
kd,i
q+i
kq,i
fd)
…(4)
q軸方向電機子巻線鎖交磁束Φq=φ
q(i
d++i
kd,i
q+i
kq,i
fd)
…(5)
【0052】
乗算器124は、加算器121の出力である合成d軸電流i
d+を入力として受け入れ、これに、d軸の電機子漏れインダクタンスL
ldを乗じた値を出力する。
【0053】
減算器130は、磁束演算器128の出力のうちd軸方向電機子巻線鎖交磁束Φ
dと
、乗算器124の出力を入力として受け入れて、両者の和を出力する。
【0054】
不完全微分要素125は、減算器130の出力を入力とし、伝達関数が[s/(Rkd+sLkd)]の不完全微分要素の乗算を行う。
【0055】
加算器122は、不完全微分要素125の出力と、加算器121の出力である合成d軸電流i
d+とを入力とし、その和を磁束演算器128に出力する。
【0056】
乗算器126は、q軸電機子電流i
qを入力として受け入れ、これに、q軸の電機子漏れインダクタンスL
lqを乗じた値を出力する。
【0057】
減算器131は、磁束演算器128の出力のうちq軸方向電機子巻線鎖交磁束Φ
qと、乗算器126の出力を入力として受け入れて、両者の和を出力する。
【0058】
不完全微分要素127は、減算器131の出力を入力とし、伝達関数が[s/(Rkq+sLkq)]の不完全微分要素の乗算を行う。
【0059】
加算器123は、不完全微分要素127の出力と、q軸電機子電流i
qとを入力とし、その和を磁束演算器128に出力する。
【0060】
負荷角演算器101は、d軸方向電機子巻線鎖交磁束Φ
dおよびq軸方向電機子巻線鎖交磁束Φqを入力として受け入れて、その比から負荷角δを演算し、出力する。
【0061】
界磁電流演算器132は、d軸電機子電流i
d、磁束指令Φ
*、および磁束演算器128の出力のうちq軸方向電機子巻線鎖交磁束Φ
qを入力とし、第1の実施形態と同様に、前述の式(3)により界磁電流指令i
fd*を算出し、出力する。
【0062】
図7は、磁束演算器における制動電流の影響の考慮を説明する概念的なグラフである。すなわち、制動巻線電流の作る起磁力が磁束に及ぼす影響と電機子電流の作る起磁力が磁束に及ぼす影響とが同等であると仮定して、関数テーブル参照の際の引数を、合成d軸電流i
d+に代えてi
d++i
kdとし、q軸電機子電流i
qに代えてi
q+i
kqとすることにより、制動巻線電流を考慮した鎖交磁束を求める。
図7では、d軸方向変化を示しているが、
図7に示すように、磁束は電流増加に対して飽和的な変化を示す。
【0063】
次に、d軸制動巻線電流i
kdおよびq軸制動巻線電流i
kqを計算する方法を示す。Parkの等価回路においては、各巻線に鎖交する磁束は、以下の式(6)ないし式(9)のように定義される。ただし、L
adはd軸の電機子反作用インダクタンス、L
ldはd軸の電機子漏れインダクタンス、L
kdはd軸の制動巻線漏れインダクタンスである。
Φ
d=L
ldi
d+L
ad(i
d+i
fd+i
kd) …(6)
Φ
q=L
lqi
q+L
ad(i
q+i
kq) …(7)
Φ
kd=L
kdi
kd+L
ad(i
d+i
fd+i
kd) …(8)
Φ
kq=L
kqi
kq+L
ad(i
q+i
kq) …(9)
【0064】
これらから次の関係式が得られる。
Φ
kd=Φ
d+L
ldi
d−L
kdi
kd …(10)
Φ
kq=Φ
q+L
lqi
q−L
kqi
kq …(11)
【0065】
関数テーブルとして鎖交磁束テーブルを用いた磁束演算器においても式(10)、(11)が成立すると仮定すれば、制動巻線磁束は、4個の定数、L
ld、L
lq、L
kd、L
kqを用いることにより、次の式(12)、(13)のように求められる。
Φ
kd=φ
d(i
d++i
kd,i
q+i
kq,i
fd)−L
ldi
d+L
kdi
kd
…(12)
Φ
kq=φ
q(i
d++i
kd,i
q+i
kq,i
fd)−L
lqi
q+L
kqi
kq
…(13)
【0066】
定数L
ld、L
lq、L
kd、L
kqには設計値などを用いることができる。また、電磁解析などで対象とする同期機のインピーダンス特性を算出し、それと磁束演算器128のインピーダンス特性が整合するように各定数を決定することで、より正確な値が得られる。式(12)、(13)と制動巻線の回路方程式から、d軸制動巻線電流i
kdおよびq軸制動巻線電流i
kqは次の式(14)、(15)のように求められる。
【0069】
このようにd軸制動巻線電流i
kdおよびq軸制動巻線電流i
kqを算出することにより、磁束演算器128での演算が可能となる。
【0070】
シミュレータ120内は、以下に示すように、式(14)、(15)により、磁束演算器128に入力されるd軸制動巻線電流i
kdおよびq軸制動巻線電流i
kqを演算するための構成となっている。
【0071】
乗算器124は、具体的にはたとえば演算増幅器であり、合成d軸電流i
d+にL
ldを乗じたL
ldi
d+を出力する。減算器130は、この結果からΦ
dを減じた結果、すなわち、(L
ldi
d+−Φ
d)を出力する。不完全微分要素125は、この結果に不完全微分要素を乗じて、式(14)の右辺に対応する結果を、d軸制動巻線電流i
kdとして出力する。加算器122は、合成d軸電流i
d+とd軸制動巻線電流i
kdとを入力として受け入れてその和(i
d++i
kd)を磁束演算器128に出力する。
【0072】
同様に、乗算器126は、q軸電機子電流i
qにL
lqを乗じたL
lqi
qを出力する。減算器131は、この結果からΦ
qを減じた結果、すなわち、(L
lqi
q−Φ
q)を出力する。不完全微分要素127は、この結果に不完全微分要素を乗じて、式(15)の右辺に対応する結果を、q軸制動巻線電流i
kqとして出力する。加算器123は、q軸電機子電流i
qとq軸制動巻線電流i
kqとを入力として受け入れてその和(iq+i
kq)を磁束演算器128に出力する。
【0073】
以上のように、制動巻線を有する巻線界磁型同期機についても、良好な制御性を維持することができる。
【0074】
[第3の実施形態]
図8は、第3の実施形態に係る巻線界磁型同期機の制御装置の構成を示すブロック図である。また、
図9は、第3の実施形態に係る巻線界磁型同期機の制御装置のシミュレータの構成を示すブロック図である。
【0075】
本実施形態は、第1および第2の実施形態の変形である。すなわち、
図1に示す第1の実施形態の構成に比べて、
図8に示すように、シミュレータ140に、速度制御器13からの出力信号であるトルク電流指令i
T*が追加して入力されている。
【0076】
また、本第3の実施形態においては、第2の実施形態と界磁制御部20の構成が異なる。すなわち、
図9に示すように、速度制御の結果としてトルク電流を指令値として用いる制御器においては、シミュレータ140にはトルク電流指令i
T*が入力される。シミュレータ140は、第2の実施形態の構成に、さらに界磁電流演算器141および一次遅れ要素142を有する。以下に、シミュレータ140の構成を説明する。
【0077】
シミュレータ140は、負荷角δの演算部分として、負荷角演算器101、加算器121、122、123、乗算器124、不完全微分要素125、乗算器126、不完全微分要素127、磁束演算器128、減算器130、131を有し、界磁電流指令i
fd*の演算部分として、界磁電流演算器141、および乗算器142を有する。
【0078】
ここで、負荷角δの演算部分の構成は、第2の実施形態におけるシミュレータ120の負荷角δの演算部分と同様の構成である。
【0079】
一方、界磁電流指令i
fd*の演算部分は、第2の実施形態と異なる。すなわち、界磁電流演算器141は、磁束指令Φ
*とトルク電流指令i
T*とを入力とし、次の式(16)により、界磁電流指令用関数値i
fdを算出する。
i
fd=f(i
T*,Φ
*) …(16)
【0080】
次に、一次遅れ要素142は、界磁電流演算器141の出力である界磁電流指令用関数値i
fdを入力とし、これに、伝達関数が[1/(T
fs+1)]の一次遅れ要素の乗算を行い、界磁電流指令i
fd*を出力する。
【0081】
磁気飽和を考慮した界磁電流演算器141には、磁束指令Φ
*とトルク電流指令i
T*とを引数とする界磁電流テーブルf(i
T*,Φ
*)が組み込まれている。この関数テーブルについても、有効電流指令i
P*を使った制御器においてはf(i
P*,Φ
*)のようになる。
【0082】
一般に、巻線界磁型同期機は、駆動するインバータの電流容量をできるだけ小さくするために、力率1.0での一定運転を行うことが多い。場合によっては、力率0.9など1.0以外で運転される場合もあるが、この場合でもほとんどの場合、力率は一定に制御して運転される。
【0083】
任意の力率で定常運転を行っている場合の同期機の状態は、例えば、
図3または
図4で示したように、d軸電機子電流i
d、q軸電機子電流i
q、界磁電流i
fの3変数によって、曲面上の運転点が一意的に決定される。
【0084】
同期機の場合は、力率を運転指標として力率一定運転を行う場合が多い。いま、たとえば、ある一定の力率で運転するという条件を付加すると、曲面上でこの条件を満たす点の集合として1つの曲線が得られる。この曲線上の各点は、力率一定という条件を付加する代わりに状態変数の次元が1つ減少し、2つの状態変数で一意的に決定することができる。
【0085】
状態変数とは、状態を規定する電気的な物理量であり、たとえば、d軸電機子電流i
d、q軸電機子電流i
q、界磁電流i
fの他に、トルク電流i
T、磁束電流
iM、有効電流I
P、無効電流I
Q、q軸方向電機子巻線鎖交磁束Φ
q、d軸方向電機子巻線鎖交磁束Φ
d等である。
【0086】
ここで、ある一定の力率という条件により決定された曲線上のある点を選定すれば、その点に対応する前述の全ての状態変数が決まる。また、逆に、2つの状態変数を決めれば、その曲線上の点が決まることになる。
【0087】
図10は、第3の実施形態に係る巻線界磁型同期機制御装置のシミュレータにおいて用いられるトルク電流と界磁電流との対応関係の例を示すグラフである。この場合、ある一定の力率で同期機を運転した時のトルク電流i
Tと磁束Φに対する界磁電流i
fの対応関係を、テーブル化したものが界磁電流テーブルである。すなわち、状態変数として、トルク電流i
Tと界磁電流i
fの2つの状態変数を選んだ場合に相当する。
【0088】
曲線群CCは、同期機の力率を1に保ちながら、トルク電流を変えた場合の界磁電流の値を示している。磁束を100%から30%まで5段階に変化させた各状態において、曲線が得られている。磁束の値を小さくするにつれて必要な界磁電流も小さくなっている。これらを考慮することにより、実際に運転される力率においては界磁電流演算器141によって正確な界磁電流指令値を計算することができ、過負荷における制御性を大幅に改善することができる。
【0089】
なお、界磁電流テーブルの引数はトルク電流や磁束に限る必要はなく、独立な2変数を任意に選ぶことができる。すなわち、回転数や有効電力などを引数とした界磁電流テーブルを用いてもよい。
【0090】
制動巻線を持たない同期機においては、磁気飽和を考慮した界磁電流演算器141の出力を界磁電流指令i
fd*として用いることで高精度な制御が可能である。一方で、制動巻線を有する同期機においては、過渡状態において制動巻線電流の効果によって磁束の急変が抑えられる。
【0091】
界磁電流演算器141の出力をそのまま指令値として用いた場合、過渡時に指令値が急変し、応答を悪化させる可能性がある。そこで界磁電流演算器141の出力には一次遅れ要素142を挿入する。一次遅れ要素142の時定数T
fは、d軸の過渡時定数程度とすればよい。これにより、過渡時においても滑らかな応答が得られ、従来の制御装置では実現できないようなごく短時間で指令値に追従することができる。
【0092】
[第4の実施形態]
図11は、第4の実施形態に係る巻線界磁型同期機制御装置の構成を示すブロック図である。
図11に示すように、第1ないし第3の実施形態と異なり、3相−dq変換器18から、シミュレータ150への出力がない。
【0093】
図12は、第4の実施形態に係る巻線界磁型同期機制御装置のシミュレータの構成を示すブロック図である。シミュレータ150は、磁気飽和を考慮した負荷角演算器151、一次遅れ要素152、磁気飽和を考慮した界磁電流演算器153、および一次遅れ要素154を有する。
【0094】
負荷角演算器151は、トルク電流指令i
T*と磁束指令Φ
*とを入力とし、次の式(17)によって、負荷角用関数値を出力する。
δ=g(i
T*,Φ
*) …(17)
【0095】
一次遅れ要素152は、負荷角演算器151の出力である負荷角用関数値を入力として受け入れ、これに、伝達関数が[1/(T
δs+1)]の一次遅れ要素の乗算を行い、負荷角δを出力する。ここで、一次遅れの時定数T
δは、特性試験結果、あるいは、回路の要素の分析結果等により設定できる。
【0096】
界磁電流演算器153は、トルク電流指令i
T*と磁束指令Φ
*とを入力とし、次の式(18)によって、界磁電流用関数値を出力する。
i
fd=f(i
T*,Φ
*) …(18)
【0097】
一次遅れ要素154は、界磁電流演算器153の出力である界磁電流用関数値を入力として受け入れ、これに、伝達関数が[1/(T
fs+1)]の一次遅れ要素の乗算を行い、界磁電流指令i
fd*を出力する。ここで、一次遅れの時定数T
fは、特性試験結果、あるいは、回路の要素の分析結果等により設定できる。
【0098】
磁気飽和を考慮した負荷角演算器151には、トルク電流指令i
T*と磁束指令Φ
*とを引数とする負荷角テーブルg(i
T*,Φ
*)が組み込まれている。また、磁気飽和を考慮した界磁電流演算器153には、界磁電流テーブルf(i
T*,Φ
*)が組み込まれている。界磁電流テーブルf(i
T*,Φ
*)は、第3の実施形態の場合と同様のテーブルの内容のものである。
【0099】
また、本実施形態における負荷角テーブルg(i
T*,Φ
*)および界磁電流テーブルf(i
T*,Φ
*)も、ある力率で力率一定運転を行っている場合の関数テーブルである。
【0100】
本実施形態におけるシミュレータ150は、巻線界磁型同期機1からのフィードバック信号を用いず、トルク電流指令i
T*および磁束指令Φ
*のみを用いて、負荷角δおよび界磁電流指令i
fd*を算出する。本実施例においてもトルク電流指令i
T*を使った制御器を例として説明するが、速度制御の出力として任意の変数を用いた制御器で同様の説明が可能である。
【0101】
図13は、トルク電流と負荷角との対応関係の例を示すグラフである。曲線群CDは、同期機の力率を1に保ちながら、トルク電流を変えた場合の負荷角の値を示している。磁束を100%から30%まで5段階に変化させた各状態において、曲線が得られている。
【0102】
磁束の値を小さくするにつれて負荷角の値は大きくなることが分かる。これらを考慮することにより、実際に運転される力率においては、負荷角演算器151によって正確な負荷角を、界磁電流演算器153によって正確な界磁電流指令i
fd*を算出することができる。この結果、過負荷運転を行っている場合の制御性を大幅に改善することができる。
【0103】
なお、界磁電流テーブルと負荷角テーブルの引数はトルク電流や磁束に限る必要はなく、力率一定運転のもとに運転状態を規定できるものであれば、独立な2変数を任意に選ぶことができる。すなわち、回転数や有効電力などを引数とした界磁電流テーブルや負荷角テーブルを用いてもよい。
【0104】
[第5の実施形態]
図14は、第5の実施形態に係る巻線界磁型同期機制御装置の構成を示すブロック図である。本実施形態は、第1の実施形態の変形である。第1の実施形態においては、電力変換器の最大出力電圧は制限値以内で制御可能な場合であった。このため、電力変換器の出力電圧が最大出力電圧となり、出力電圧が飽和した状態では、電流制御の応答速度が低下したり、不安定になったりする可能性がある。
【0105】
一方、本第5の実施形態においては、電力変換器の最大出力電圧を同期電動機の定格電圧に等しくした場合でも、同期電動機を安定に制御可能とするために、第1の実施形態とは一部異なる制御方式を用いている。
【0106】
巻線界磁型同期機制御装置310は、速度制御部10および界磁制御部20、およびシミュレータ160を有する。
【0107】
速度制御部10は、減算器11、速度制御器13、減算器34、有効電流制御器31、電圧位相演算器32、3相−PQ変換器33、PQ−3相変換器35、3相−dq変換器17を有する。また、界磁電流制御部20は、界磁電流制御器21を有する。
【0108】
速度制御部10は、角速度
指令ω
r*に対応する角速度ωrを得るための速度制御ループの下に、対応する有効電流I
Pを得るための有効電流制御ループを有するカスケード制御の構成となっている。
【0109】
速度制御ループの減算器11は、回転位置検出器7で検出され位置演算器8により算出された巻線界磁型同期機1の回転位置θが速度演算器12により変換された角速度ωを、負のフィードバック信号とし、角速度指令ω
r*から減じた角速度偏差を出力する。速度制御器13は、角速度偏差および磁束指令Φ
*を入力として、有効電流指令I
P*を出力する。
【0110】
減算器34は、3相電流を有効電流i
Pおよび無効電流i
Qに変換する3相−PQ変換器33からの出力のうちの有効電流i
Pを負のフィードバック信号とし、速度制御器13の出力である有効電流指令I
P*から、減じた有効電流偏差を出力する。
【0111】
有効電流制御器31は、減算器34の出力である有効電流偏差を入力とし、電圧位相変更分指令ΔΘ
*を出力する。
【0112】
電圧位相演算器32は、有効電流制御器31からの位相変更分指令ΔΘ
*、位置演算器8からのフィードバック信号であり現在の位相に対応する回転位置Θ、および、シミュレータ160から出力される負荷角δを入力として、次の式(19)により、電圧位置指令Θ
*を算出する。
Θ
*=Θ+δ+ΔΘ
* …(19)
【0113】
PQ−3相変換器35は、電圧位相演算器32により算出された電圧位相指令Θ
*と、電圧の振幅基準値V1とに基づいて、電力変換器3への3相各相の電圧指令Vu
*、Vv
*、およびVw
*を出力する。
【0114】
シミュレータ160は、負荷角δの演算部分として、界磁電流i
f、d軸電機子電流i
d、およびq軸電機子電流i
qを入力として受けて、負荷角δを算出し、フィードフォワード信号として、電圧位相演算器32に出力する。
【0115】
この際、第1の実施形態と同様に、あらかじめ詳細解析等で算出した結果に基づいて、d軸方向の電機子巻線鎖交磁束Φ
dを求めるd軸磁束関数φ
d(i
d+,i
q,i
fd)とq軸方向の電機子巻線鎖交磁束Φ
qを算出するq軸磁束関数φ
q(i
d+,i
q,i
fd)とを、それぞれ、たとえばテーブル形式で保有しておく。この算出結果に基づいて、負荷角δを算出し、電圧位相演算器32に、出力する。
【0116】
また、シミュレータ160は、界磁電流指令i
fd*の演算部分として、界磁磁束指令Φ*を入力とし、界磁電流指令i
fd*を算出し、界磁電流制御器21にフィードフォワード信号として出力する。
【0117】
また、シミュレータ160は、たとえば、力率をパラメータとし、それぞれの力率について、2つの状態変数の関係曲線を保有しておく。本実施形態においては、速度制御部10は、有効電流I
Pを変数として使用していることから、たとえば、有効電流指令I
P*および磁束指令Φ
*のみを用いて、負荷角δおよび界磁電流指令i
fd*を算出することができる。
【0118】
このような構成をとることによって、巻線界磁型同期機制御装置310は、速度制御において、所期のトルク電流確保のために電圧の制御を行うのではなく、有効電流を確保するために電圧の位相を制御する。
【0119】
以上のように、本実施形態においても、正確な負荷角δおよび界磁電流指令i
fd*を用いることによって、安定した制御を行うことができる。
【0120】
[第6の実施形態]
図15は、第6の実施形態に係る巻線界磁型同期機制御装置の構成を示すブロック図である。本実施形態は、第5の実施形態の変形であり、電力変換器の出力電圧が最大出力電圧となり、出力電圧が飽和した状態で、同期電動機を安定に制御可能とするために、有効電流を確保するために電圧の位相を制御する。
【0121】
本第6の実施形態における巻線界磁型同期機制御装置320では、第5の実施形態における巻線界磁型同期機制御装置310と比較すると、3相−PQ変換器33に代えて3相−MT変換器41、PQ−3相変換器35に代えてMT−3相変換器43を有する。さらに、減算器44および磁束電流制御器45を有する。また、巻線界磁型同期機制御装置320は、入力として、磁束電流指令i
M*をさらに受け入れる。
【0122】
3相−MT変換器41は、3相電機子電流検出値Iu、Iv、Iwと、負荷角δ、および磁極位置の検出値すなわち回転位置Θとから、トルク電流値I
Tおよび磁束電流値I
Mを求め、出力する。
【0123】
MT−3相変換器43は、電圧位相演算器32からの出力である電圧位相指令Θ
*と、電圧の振幅基準値V1とに基づいて、電力変換器3への3相各相の電圧指令Vu
*、Vv
*、およびVw
*を出力する。
【0124】
減算器44は、巻線界磁型同期機制御装置320が入力として受け入れた磁束電流指令i
M*と、3相−MT変換器41の出力のうちの磁束電流i
Mとを受け入れ、磁束電流指令i
M*からフィードバック信号である磁束電流i
Mを減じて、磁束電流偏差をシミュレータ170に出力する。
【0125】
シミュレータ170は、負荷角δの演算部分として、3相−dq変換器17の出力であるd軸電機子電流i
dおよびq軸電機子電流i
qを入力として受けて、負荷角δをフィードフォワード信号として、3相MT変換器41に出力する。
【0126】
また、シミュレータ170は、界磁電流指令i
fd*の演算部分として、磁束電流制御器45の出力である磁束電流偏差と、フィードバック信号である界磁電流
ifdとを入力として、界磁電流指令i
fd*を算出し、界磁電流制御器21にフィードフォワード信号として出力する。
【0127】
この際、あらかじめ詳細解析等で算出した結果に基づいて、d軸方向の電機子巻線鎖交磁束Φ
dを求めるd軸磁束関数φ
d(i
d+,i
q,i
fd)とq軸方向の電機子巻線鎖交磁束Φ
qを算出するq軸磁束関数φ
q(i
d+,i
q,i
fd)とを、それぞれ、たとえばテーブル形式で保有しておく。この算出結果に基づいて、負荷角δを算出し、3相−MT変換器41に、出力する。
【0128】
また、シミュレータ170は、界磁電流指令i
fd*の演算部分として、界磁磁束指令Φ*を入力とし、界磁電流指令i
fd*を算出し、界磁電流制御器21にフィードフォワード信号として出力する。
【0129】
また、シミュレータ170は、たとえば、力率をパラメータとし、それぞれの力率について、2つの状態変数の関係曲線を保有しておく。本実施形態においては、速度制御部10は、トルク電流I
Tを変数として使用していることから、たとえば、トルク電流指令I
T*および磁束指令Φ
*のみを用いて、負荷角δおよび界磁電流指令i
fd*を算出することができる。
【0130】
以上のように、本実施形態においても、正確な負荷角δおよび界磁電流指令i
fd*を用いることによって、安定した制御を行うことができる。
【0131】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態を説明したが、実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。たとえば、第1の実施形態、第5の実施形態、および第6の実施形態で、それぞれ方式の異なる制御回路にシミュレータを適用した場合の例を示した。
【0132】
すなわち、第1ないし第4の実施形態では、電機子の電圧を制御する方式の場合を示している。また、第5および第6の実施形態では、電圧位相を制御する方式として、有効電流指令i
P*がシミュレータに入力されている場合を示している。ただし、有効電流指令i
P*に限らず、速度制御の出力として任意の変数を用いた制御器で採用することができる。
【0133】
さらに、本発明は、これらの制御方式に限定されない。すなわち、本発明によるシミュレータは、同期機の状態をシミュレータによって予測し、その結果を関数テーブルとして保存し、この関数テーブルを使ってフィードフォワード的に制御する任意の方式に適用することが可能であり、制御性を大幅に改善することができる。
【0134】
また、各実施形態の特徴を組み合わせてもよい。たとえば、第5の実施形態あるいは第6の実施形態に、第2ないし第4の実施形態のそれぞれの特徴と、を組み合わせてもよい。
【0135】
さらに、実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0136】
実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。