特許第6722905号(P6722905)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 美津濃株式会社の特許一覧 ▶ 国立大学法人名古屋大学の特許一覧

<>
  • 特許6722905-トレーニング用具 図000002
  • 特許6722905-トレーニング用具 図000003
  • 特許6722905-トレーニング用具 図000004
  • 特許6722905-トレーニング用具 図000005
  • 特許6722905-トレーニング用具 図000006
  • 特許6722905-トレーニング用具 図000007
  • 特許6722905-トレーニング用具 図000008
  • 特許6722905-トレーニング用具 図000009
  • 特許6722905-トレーニング用具 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6722905
(24)【登録日】2020年6月25日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】トレーニング用具
(51)【国際特許分類】
   A63B 21/02 20060101AFI20200706BHJP
   A63B 69/00 20060101ALI20200706BHJP
【FI】
   A63B21/02
   A63B69/00 504
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-140137(P2015-140137)
(22)【出願日】2015年7月14日
(65)【公開番号】特開2017-18447(P2017-18447A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2018年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 慶子
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕二
(72)【発明者】
【氏名】田渕 規之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】上向井 千佳子
【審査官】 谷垣 圭二
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第102728041(CN,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0220160(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 21/02
A63B 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3人以上の着用者の身体にそれぞれ取付可能に設けられている3つ以上の固定部材と、
前記3つ以上の固定部材間を接続する1本の紐状体とを備え、
前記3つ以上の固定部材は、それぞれ前記紐状体と接続される接続部を含み、
前記3つ以上の固定部材間は、環状に設けられた1本の前記紐状体により接続されている、トレーニング用具。
【請求項2】
前記接続部は、筒状体として設けられており、その内部に前記紐状体を通すように設けられている、請求項1に記載のトレーニング用具。
【請求項3】
前記接続部は、着用者の背面から腰に押し当てられる板状部と、前記板状部とで前記筒状体を構成するカバー部とを有しており、
前記板状部を構成する材料は、前記カバー部を構成する材料よりも高剛性である、請求項2に記載のトレーニング用具。
【請求項4】
前記接続部において前記紐状体と接する部分の表面の前記紐状体に対する摩擦係数は、前記トレーニング用具の他の部分の前記紐状体に対する摩擦係数と同等もしくはそれ以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のトレーニング用具。
【請求項5】
前記3つ以上の固定部材の各々は、前記接続部を着用者の腰に固定するためのベルト部をさらに含み、
前記接続部において前記紐状体と接する部分の表面は、前記ベルト部の表面より前記紐状体に対する摩擦係数が高い、請求項1〜3のいずれか1項に記載のトレーニング用具。
【請求項6】
前記紐状体を構成する材料は、弾性体を含む、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のトレーニング用具。
【請求項7】
前記紐状体を構成する材料は、天然ゴム、合成ゴム、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、およびアミド系樹脂からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のトレーニング用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポーツのトレーニング時に使用されるトレーニング用具に関し、特に複数人が連携して動作することが求められる球技のトレーニング時に使用されるトレーニング用具に関する。
【背景技術】
【0002】
複数人が連携して動作することが求められる球技(たとえば、サッカー、バスケットボール、ハンドボール、ホッケー、水球など)では、個人による個々の動きの様々なトレーニングだけでなく、複数人による連携動作のトレーニングも行われている。複数人による連携動作の一例として、パス交換に伴う連携動作が挙げられる。
【0003】
このような連携動作としては、まず1人の相手方(たとえば守備側)のプレイヤーを複数人(たとえば3人以上)の当方(たとえば攻撃側)のプレイヤーで囲んだ状態(数的に有利な状態)を作り、さらに複数人のプレイヤー同士が相手方のプレイヤーだけでなく互いの動き(位置)を認識して、それぞれが正三角形の頂点を成すような相対的な位置関係を形成・維持するような動作が挙げられる(たとえば、下記非特許文献1および2を参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Yokoyama K,Yamamoto Y (2011).Three people can synchronize as coupled oscillators during sports activities.PLoS Computational Biology,7(10) e1002181.
【非特許文献2】Yamamoto Y,Yokoyama K (2011).Common and unique network dynamics in football games.PLoS ONE,6(12) e29638.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような好適な連携動作を習得するには、連携動作を行う複数のプレイヤー間で互いの動きを常に認識させながら連携動作を行わせるようなトレーニング方法が効果的である。
【0006】
しかしながら、特に初心者同士でこのような連携動作のトレーニングを行う場合には、それぞれが自己の動作に気を取られるあまり他のプレイヤーの動きを認識しながら連携動作を行うことは困難である。そのため、特に初心者同士では、上記のような連携動作のためのトレーニングを効果的に行うことが困難であった。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためのなされたものである。本発明の主たる目的は、初心者同士であっても、連携動作のトレーニングを効果的に行うことができるトレーニング用具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るトレーニング用具は、複数の着用者の身体にそれぞれ取付可能に設けられている複数の固定部材と、複数の固定部材間を接続する1本以上の紐状体とを備える。複数の固定部材は、それぞれ紐状体と接続される接続部を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、初心者同士であっても、連携動作のトレーニングを効果的に行うことができるトレーニング用具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係るトレーニング用具の複数のベルトのうちの1つのベルトおよび紐状体を説明するための正面図である。
図2図1中の線分II−IIから見た断面図である。
図3】実施の形態1に係るトレーニング用具の使用状態を説明するための図である。
図4】実施の形態1に係るトレーニング用具の変形例を説明するための正面図である。
図5図4に示すストッパーを説明するための斜視図である。
図6】実施の形態2に係るトレーニング用具の複数のベルトのうちの1つのベルトおよび紐状体を説明するための正面図である。
図7】実施の形態2に係るトレーニング用具の使用状態を説明するための図である。
図8】実施の形態1および2に係るトレーニング用具の変形例を説明するための正面図である。
図9】実施の形態1および2に係るトレーニング用具の他の変形例を説明するための正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0012】
(実施の形態1)
図1および図2を参照して、実施の形態1に係るトレーニング用具100について説明する。トレーニング用具100は、複数の固定部材1と、1本の紐状体2とを備える。図1は、複数の固定部材1のうちの1つの固定部材1および紐状体2を説明するための正面図である。図2は、図1中の線分II−IIから見た断面図である。
【0013】
トレーニング用具100は、3人以上の着用者の腰にそれぞれ取り付け可能に設けられている3つ以上の固定部材1を備えている。1つの固定部材1は、1人の着用者のたとえば腰に取り付け可能に設けられている。複数の固定部材1は、環状に設けられた1本の紐状体2により互いに接続されている。
【0014】
紐状体2を構成する材料は、弾性体を含んでいるのが好ましい。紐状体2を構成する材料は、たとえば天然ゴム、合成ゴム、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、およびアミド系樹脂の少なくともいずれかを含んでいる。すなわち、紐状体2は、ある2点間に引っ張る力を与えたときには所定の量だけ伸びるが、当該力を除くと元に戻るように設けられている。言い換えると、紐状体2は、繰り返し引っ張る力が加えられ、その後当該力が除かれたときにも、その前後で全体の長さは略一定に維持され、塑性変形しない。紐状体2の長さは、たとえば1m以上10m以下である。
【0015】
固定部材1は、紐状体2と接続される接続部3と、接続部3を装着者の腰に固定するベルト部4とを含んでいる。接続部3は、筒状体として設けられており、内部に紐状体2を通すことが可能に設けられている。接続部3の軸方向は、紐状体2の延在方向に沿うように設けられている。接続部3は、着用者の背面から腰に押し当てられる板状部5と、板状部5とで筒状体を構成するカバー部6とを有している。ベルト部4は、紐状体2の延在方向における板状部5の両端部に接続されている第1および第2ベルト部41,42と、第1および第2ベルト部41,42の端部に位置し、第1ベルト部41を第2ベルト部42に着脱可能に接続する第3ベルト部43とを有している。
【0016】
板状部5は、着用者の腰に接触される面の反対側に位置する主面5Aを有している。板状部5の主面5Aは、少なくとも一部が接続部3の内部(筒状体の内部)に面している。板状部5(主面5A)の平面形状は、長手方向と短手方向とを有する。板状部5の当該長手方向は、紐状体2の延在方向に沿うように設けられている。板状部5を構成する材料は、たとえばカバー部6を構成する材料よりも高剛性であり、たとえばポリエチレンおよびポリプロピレンなどからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0017】
カバー部6は、板状部5の長手方向における少なくとも一部と対向するように設けられている。カバー部6は、板状部5の短手方向において間隔を隔てた2箇所で板状部5に固定されている。これにより、接続部3は、板状部5とカバー部6とによって、軸方向が紐状体2の延在方向に沿って延びる筒状体として構成されている。紐状体2の延在方向に対する垂直断面におけるカバー部6の断面形状は、任意の形状であればよいが、たとえば図2に示されるようにU字状であってもよいし、またはV字状であってもよい。カバー部6を構成する材料は、たとえばナイロンおよびポリエステルなどからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0018】
板状部5の主面5A上には、滑り止め部7が形成されている。滑り止め部7は、カバー部6と対向する主面7Aを有している。主面7Aは、接続部3において内周面の一部を構成しており、接続部3に通される紐状体2に接触される面である。つまり、接続部3は、滑り止め部7の主面7Aを介して紐状体2と接続されている。主面7Aは、紐状体2に対する摩擦係数が固定部材1の他の部分(たとえば板状部5の主面5A、カバー部6の外周面または第1および第2ベルト部41,42の表面など)よりも高い。言い換えると、主面7Aは、紐状体2に対する滑り止め加工が施されている。たとえば、主面7Aにはシリコン樹脂などのコーティングやシボ加工が施されている。滑り止め部7は、板状部5の主面5A上において、カバー部6に覆われている領域およびカバー部6に覆われていない領域のうちの広い領域に渡って形成されているのが好ましい。具体的には、滑り止め部7は、板状部5の主面5A上のカバー部6に覆われている領域においては、接続部3の軸方向に一端から他端まで延びるように設けられているのが好ましい。滑り止め部7は、板状部5の主面5A上のカバー部6に覆われていない領域においては、カバー部6に覆われている領域に隣接している少なくとも一部分上に設けられているのが好ましい。
【0019】
次に、図3を参照して、実施の形態1に係るトレーニング用具100の使用状態および作用効果について説明する。図3は、3つの固定部材1を1つずつ装着した3人のプレイヤーP1,P2,P3により、トレーニング用具100が使用された状態を示している。
【0020】
図3に示されるトレーニング用具100は、3つの固定部材1(図1参照)と紐状体2とを備えている。固定部材1は、プレイヤーP1,P2,P3のそれぞれの腰に装着される。上述のように、3つのベルトは、それぞれ紐状体2と接続される接続部3を含んでいる。これにより、プレイヤーP1,P2,P3は、3つの固定部材1に接続されている1本の環状の紐状体2を介して接続された状態となる。
【0021】
まず、初期位置として、プレイヤーP1,P2,P3のそれぞれは、正三角形の頂点を成すように整列する。具体的には、プレイヤーP1,P2,P3は、互いに紐状体2により形成されている三角形の内側を向いている。プレイヤーP1,P2間の距離L12(プレイヤーP1に装着されている固定部材1とプレイヤーP2に装着されている固定部材1との距離)と、プレイヤーP2,P3間の距離L23と、プレイヤーP3,P1間の距離L31とが互いに等しくなるように、プレイヤーP1,P2,P3が整列する。プレイヤーP1に対して他のプレイヤーP2,P3の成す角度θと、プレイヤーP2に対して他のプレイヤーP1,P3の成す角度θと、プレイヤーP3に対して他のプレイヤーP2,P3の成す角度θとが互いに等しくなるように、プレイヤーP1,P2,P3が整列する。このとき、紐状体2にはプレイヤーP1,P2,P3のそれぞれに対して左右均等な張力が付与されており、プレイヤーP1,P2,P3はそれぞれ固定部材1を介して紐状体2の当該張力を感じることができる。なお、トレーニング用具100は、上述した距離L12、距離L23、および距離L31が任意の長さとなるように設けられていてもよいが、好ましくは固定部材1を装着した各プレイヤーP1,P2,P3が、常に一辺の長さが6mの正方形の領域内に位置するように設けられている。
【0022】
次に、上記のような初期位置に配置されたプレイヤーP1,P2,P3が、パス交換を開始する。このとき、まず1人のプレイヤーP1が移動すると、紐状体2の全体の長さは大きく伸び縮みせず、紐状体2に付与されていた張力が変化(増減)する。具体的には、プレイヤーP1がたとえばプレイヤーP2側に近づくとともにプレイヤーP3から離れるように移動すると、プレイヤーP2は、プレイヤーP1との間を接続している紐状体2の張力がプレイヤーP3との間を接続している紐状体2の張力と比べて弱まったことを固定部材1を介して感じることができる。一方、プレイヤーP3は、プレイヤーP1との間を接続している紐状体2の張力がプレイヤーP3との間を接続している紐状体2の張力と比べて強まったことを固定部材1を介して感じることができる。これにより、張力の変化を打ち消すためにプレイヤーP2はプレイヤーP1から離れるように移動し、プレイヤーP3はプレイヤーP1に近づくように移動することができる。このように、トレーニング用具100の複数の固定部材1を装着した複数のプレイヤーは、互いの相対的な位置関係の変化(他のプレイヤーの動き)を紐状体2の張力の変化として感じることができる。そのため、トレーニング用具100によれば、パス交換などの連携動作において、各プレイヤーに互いの相対的な位置関係の変化を常に意識させる訓練を効果的に行うことができる。
【0023】
さらに、トレーニング用具100によれば、図3に示されるように、プレイヤーP1,P2,P3によるパス交換を遮るために自由に動くことができるプレイヤーP4を交えたトレーニングを行うことができる。この場合、初期位置として、プレイヤーP1,P2,P3のそれぞれは、プレイヤーP4を中心とする正三角形の頂点を成すように整列する。プレイヤーP4は、トレーニング用具100の紐状体2が形成する略正三角形の中を自由に動いて、プレイヤーP1,P2,P3によるパス交換を遮ることができる。トレーニング用具100はこのように使用されることにより、プレイヤーP1,P2,P3に、プレイヤーP4の位置の変化(動き)と、互いの相対的な位置関係の変化(動き)とを同時にかつ常に意識させる訓練を効果的に行うことができる。
【0024】
上記トレーニング用具100において、複数の固定部材1間は、環状に設けられた1本の紐状体2により接続されている。これにより、複数の固定部材1間の相対的な位置関係の変化を1本の紐状体2に付与される張力の変化として、複数の固定部材1の各々の着用者に知覚させることができる。
【0025】
上記トレーニング用具100において、接続部3は紐状体2に対し滑り止め可能に設けられているのが好ましい。たとえば、接続部3において紐状体2と接する部分の表面は、ベルト部4の表面より紐状体2に対する摩擦係数が高く設けられているのが好ましい。このようにすれば、紐状体2は、複数の固定部材1間で張力が付与された状態において、接続部3に対する滑りの発生が抑制されている。そのため、複数の固定部材1間の紐状体2の長さを略一定とすることができ、プレイヤーP1,P2,P3のうちの2者間での相対的な位置の変化を当該2者間を接続する紐状体2の部分の張力変化としてより効果的に当該2者に知覚させることができる。
【0026】
上記トレーニング用具100において、紐状体2を構成する材料は、弾性体を含むのが好ましい。このようにすれば、紐状体2は、複数の固定部材1間の相対的な位置関係の変化により伸縮可能であるため、複数の固定部材1間の相対的な位置関係の変化量に応じた張力を発生させることができる。また、このようにすれば、紐状体2のある2点間が引っ張られたときにも引っ張る力と同等の反力が直ちに生じることが無いため、安全にトレーニングを行うことが可能である。
【0027】
上記トレーニング用具100は、3つ以上の固定部材1を備えているのが好ましい。このようにすれば、1人の相手方プレイヤーに対し3人のプレイヤーが連携してパス交換などの動作に絡む数的優位の状態において、それぞれ固定部材1を装着した3人の着用者に対し同時に上述のような連携動作の訓練を効果的に行うことができる。
【0028】
なお、トレーニング用具100は、2つの固定部材1を備えていてもよい。この場合、該トレーニング用具100は、2つの固定部材1を取り付けた2人の着用者と、たとえば地面に固定されたポールまたは地面上を所定のルールで動くように設定されたポールなどとが紐状体2により接続された状態で、これらが略正三角形を維持するように使用され得る。このようにしても、当該2人の着用者に対し同時に上述のような連携動作の訓練を効果的に行うことができる。
【0029】
図4は、実施の形態1に係るトレーニング用具100の変形例を説明するための図である。図4に示されるトレーニング用具101は、基本的には図1に示されるトレーニング用具100と同様の構成を備えるが、接続部3がストッパー8を有している点で異なる。
【0030】
ストッパー8は、接続部3において、板状部5の主面5A上に設けられている。図5(a)および(b)は、ストッパー8を説明するための斜視図である。図5(a)に示されるように、ストッパー8は、板状部5の主面5Aに接続される面8Bを有しており、当該面8Bに垂直な方向に突出している部分には、第1の溝部81と、第1の溝部81に連なる第2の溝部82が形成されている。具体的には、ストッパー8は、面8Bに対して突出している2つの頂部83,84を有し、2つの頂部83,84間には、側面形状が円弧状であり面8B側に凹んでいる第1の溝部81が形成されている。第1の溝部81において面8B側に位置する部分(2つの頂部83,84間の中央部)には、面8B側にさらに凹んでいる第2の溝部82が形成されている。図5(b)に示されるように、ストッパー8は、紐状体2の延在方向に垂直な方向における第2の溝部82の幅が紐状体2の幅(太さ)と同等以下となるように設けられており、かつ、紐状体2の延在方向に垂直な方向における第1の溝部81の幅が第2の溝部82の幅以上となるように設けられている。これにより、ストッパー8は、第2の溝部82において紐状体2を挟持することができる。
【0031】
このようにすれば、ストッパー8により、紐状体2が固定部材1の接続部3に対して摺動することを抑制することができる。そのため、それぞれ固定部材1を装着した2者間の相対的な位置関係が変化して当該2者間を接続する紐状体2に付与された張力に変化が生じたときにも、紐状体2が固定部材1に対して摺動することによって紐状体2の張力変化が減じられることが抑制されている。そのため、当該2者は、たとえば相対的な位置の変化が僅かであっても、当該変化を紐状体2の張力変化としてより効果的に知覚することができる。すわなち、ストッパー8を備えるトレーニング用具101によれば、パス交換などの連携動作において、各プレイヤーに互いの相対的な位置関係の変化を常に意識させる訓練を、上述したトレーニング用具100と比べてより効果的に行うことができる。
【0032】
ストッパー8に、紐状体2の延在方向に垂直な方向における幅が第2の溝部82の幅以上となるように設けられている第1の溝部81が形成されていることにより、紐状体2を第2の溝部82に容易にはめ込むことができる。
【0033】
なお、ストッパー8は、紐状体2の延在方向に沿った紐状体2と接続部3との摺動を抑制可能に設けられている限りにおいて、図5に示される構成に限られず任意の構成を有していればよい。
【0034】
トレーニング用具101において、接続部3は滑り止め部7を有さずにストッパー8のみを有していてもよい。このようにしても、ストッパー8により紐状体2と接続部3との摺動を抑制することができるため、2者間での相対的な位置の変化を当該2者間を接続する紐状体2の部分の張力変化としてより効果的に当該2者に知覚させることができる。
【0035】
また、滑り止め部7は、板状部5の主面5A上に別体として形成されているが、これに限られるものでは無い。たとえば、板状部5の主面5Aの少なくとも一部が、トレーニング用具100の他の部分(たとえば板状部5の主面5A、カバー部6の外周面または第1および第2ベルト部41,42の表面など)と比べて紐状体2に対し高い摩擦係数を有するように設けられていてもよい。このようにしても、紐状体2と複数の固定部材1との間での摺動を抑制することができるため、複数の固定部材1の相対的な位置関係が変化したときに、当該複数の固定部材1に接続された紐状体2の張力を変化させることができる。
【0036】
(実施の形態2)
次に、図6および図7を参照して、実施の形態2に係るトレーニング用具110について説明する。図6は、実施の形態2に係るトレーニング用具110を説明するための正面図である。図7は、実施の形態2に係るトレーニング用具110の使用状態を説明するための図である。実施の形態2に係るトレーニング用具110は、基本的には実施の形態1に係るトレーニング用具100と同様の構成を備えるが、複数の固定部材1間が互いに分離して設けられた複数本の紐状体2により接続されており、1本の紐状体2は2つの固定部材1間の各接続部3に固定されている点で異なる。
【0037】
紐状体2は、固定部材1の数と等しい数だけ備えられている。図7を参照して、たとえば3つの固定部材1を備えるトレーニング用具110は、3本の紐状体2,2b,2cを備えている。各紐状体2は、基本的には実施の形態1における紐状体2と同様の構成を備えていればよいが、たとえば各紐状体2a,2bは接続部3に固定されるための第1固定具21,22をそれぞれ含んでいる。各紐状体2a,2bにおいて、第1固定具21,22は任意の場所に設けられていればよいが、たとえば各紐状体2a,2bの両端部にそれぞれ設けられている。第1固定具21,22はたとえば環状体として構成されている。3本の紐状体2a,2b,2cは、それぞれ同一の構成を備えているのが好ましい。すなわち、3本の紐状体2a,2b,2cを構成する材料は同一であり、かつ3本の紐状体2a,2b,2cの長さはそれぞれ一定であるのが好ましい。
【0038】
接続部3は、第1固定具21,22と接続可能に設けられている第2固定具23,26を有している。第2固定具23,26は、それぞれ第1固定具21,22と係合可能に設けられているフック部24,27と、一端がフック部24,27に接続されているとともに他端が板状部5と接続されている伸縮部25,28とを有している。第2固定具23,26は、接続部3において任意の場所に設けられていればよいが、たとえば紐状体2の延在方向における板状部5の主面5Aの中央部において上記他端が接続されている。
【0039】
図7に示されるように、トレーニング用具110は、基本的に実施の形態1に係るトレーニング用具100と同様に使用され得る。すなわち、トレーニング用具110は、3つの固定部材1をそれぞれ装着した3人のプレイヤーP1,P2,P3が正三角形の頂点を成すように(3本の紐状体2a,2b,2cがそれぞれ正三角形の各1辺を構成するように)初期状態が設定される。このとき、3本の紐状体2a,2b,2cには、それぞれ均等な張力が付与されている。その後、プレイヤーP1,P2,P3が、パス交換を開始する。
【0040】
このようにしても、トレーニング用具110の複数の固定部材1を装着した複数のプレイヤーは、互いの相対的な位置関係の変化(他のプレイヤーの動き)を複数本の紐状体2a,2b,2cに付与される張力の変化として感じることができる。そのため、トレーニング用具110によれば、パス交換などの連携動作において、各プレイヤーに互いの相対的な位置関係の変化を常に意識させる訓練を効果的に行うことができる。
【0041】
なお、トレーニング用具110において、接続部3はカバー部6を有していなくてもよい。また、図示しないが、紐状体2cについても、同様に接続部に固定されるための固定具を含んでいる。
【0042】
上述のように、1本の紐状体2と該紐状体2に接続されるために好適な構成を有する固定部材1とを備える実施の形態1に係るトレーニング用具100と、複数本の紐状体2と該複数本の紐状体2に接続されるために好適な構成を有する固定部材1とを備える実施の形態2に係るトレーニング用具110とは、それぞれ異なる構成を備えている。しかし、図8を参照して、着用者らが、1本の紐状体2、または複数本の紐状体2のいずれを用いるか選択可能に設けられているトレーニング用具120としてもよい。
【0043】
トレーニング用具120における複数の固定部材1は、基本的には実施の形態1に係るトレーニング用具100における固定部材1と同様の構成を備えるが、さらに実施の形態2に係るトレーニング用具110の固定部材1に設けられている第2固定具23,26をさらに備えている点で異なる。
【0044】
トレーニング用具120において1本の紐状体2を備える場合、固定部材1は、実施の形態1に係るトレーニング用具100と同様に、接続部3に設けられた滑り止め部7と紐状体2とが接続される。これにより、実施の形態1に係るトレーニング用具100と同様の効果を奏することができる。
【0045】
一方、トレーニング用具120において複数本の紐状体2を備える場合、固定部材1は、実施の形態2に係るトレーニング用具110と同様に、接続部3に設けられた第2固定具23,26と複数本の紐状体2に設けられた第1固定具21,22(図6参照)とが接続される。これにより、実施の形態2に係るトレーニング用具110と同様の効果を奏することができる。
【0046】
トレーニング用具120は、第2固定具23,26のフック部24と係合可能に設けられている第3固定具31をさらに備えているのが好ましい。第3固定具31は、たとえば板状部5上においてカバー部6に覆われていない領域であって、紐状体2と重ならない領域に設けられているのが好ましい。さらに、第2固定具23,26は、接続部3において紐状体2と重ならない領域に設けられているのが好ましい。
【0047】
このようにすれば、図8に示されるように、トレーニング用具120が1本の紐状体2を備える場合であっても、固定部材1の接続部3において第2固定具23,26が紐状体2と干渉することを防止することができる。その結果、トレーニング用具120は、複数の固定部材1間の相対的な位置の変化を紐状体2の張力変化として着用者らにより正確に知覚させることができる。
【0048】
(実施の形態3)
次に、図9を参照して、実施の形態3に係るトレーニング用具130について説明する。図9は、実施の形態3に係るトレーニング用具110を説明するための正面図である。実施の形態2に係るトレーニング用具130は、基本的には実施の形態1に係るトレーニング用具100と同様の構成を備えるが、滑り止め部7を備えていない点で異なる。
【0049】
トレーニング用具130において、複数の固定部材1は、環状に設けられた1本の紐状体2との摺動が抑制されることなく接続されている。言い換えると、トレーニング用具102において、接続部3において紐状体2と接する部分の表面の紐状体2に対する摩擦係数は、トレーニング用具130の他の部分の紐状体2に対する摩擦係数と同等もしくはそれ以下である。摩擦係数を下げる方法としては、接続部3において紐状体2と接する部分の表面にポリエチレンフィルム等をラミネート加工する方法、または、当該表面にろうなどのワックスを塗布するワックス加工などが採用可能である。
【0050】
このようなトレーニング用具130であっても、各固定部材1を装着した複数のプレイヤーが初期位置として正三角形の頂点を成すように整列されて紐状体2に張力が付与されていれば、互いの相対的な位置関係を変化させた場合、頂点に位置する固定部材1の接続部3と該接続部3においてその延在方向を曲げている紐状体2との間には摩擦が発生する。そのため、複数の固定部材1間の相対的な位置関係の変化により、紐状体2は一部が複数の固定部材1との摩擦により引っ張られ、複数の固定部材1は紐状体2から反力を受ける。そのため、各固定部材1を装着した複数のプレイヤーは、相対的な位置の変化を知覚することができる。そのため、トレーニング用具130によれば、パス交換などの連携動作において、各プレイヤーに互いの相対的な位置関係の変化を常に意識させる訓練を効果的に行うことができる。
【0051】
なお、上述した実施の形態1〜3に係るトレーニング用具100,101,110,120,130において、複数の固定部材1は正三角形の頂点を成すように初期位置が設定される使用状態に限られるものでは無く、任意の多角形状の頂点を成すように初期位置が設定され得る。そして、トレーニング用具100,101,110,120,130によれば、当該初期位置に対する相対的な位置の変化を、張力変化として複数の着用者に同時に知覚させることが可能である。たとえば、それぞれ固定部材1を装着した4人のプレイヤーが菱形の頂点を成すように初期位置を設定し、当該菱形の中に1人または2人の相手方プレイヤーを配してトレーニングを実行してもよい。
【0052】
今回開示された各実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、複数人が連携して動くことが求められる球技について、連携動作を訓練するためのトレーニング用具に好適である。
【符号の説明】
【0054】
1 固定部材、2 紐状体、3 接続部、4 ベルト部、5 板状部、5A,7A 主面、6 カバー部、7 滑り止め部、8 ストッパー、100,101,110,120 トレーニング用具、21,22 第1固定具、23,26 第2固定具、24,27 フック部、25,28 伸縮部、31 第3固定具、41,42 第2ベルト部、43 第3ベルト部、81 第1の溝部、82 第2の溝部、83,84 頂部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9