(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6722956
(24)【登録日】2020年6月25日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】包装箱の貼着部加工方法
(51)【国際特許分類】
B31B 50/25 20170101AFI20200706BHJP
B31B 50/62 20170101ALI20200706BHJP
【FI】
B31B50/25
B31B50/62
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-124489(P2019-124489)
(22)【出願日】2019年7月3日
【審査請求日】2019年11月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592100739
【氏名又は名称】小倉美術印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166796
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 雅至
(72)【発明者】
【氏名】青山 明弘
【審査官】
米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭51−91221(JP,U)
【文献】
特開平10−211664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B31B 50/25−50/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板紙(51)の片面が難接着性の被膜(52)で覆われたシート材(50)から成り、重なり合ったシート材(50)の被膜(52)側の表面と板紙(51)側の裏面とを接着剤(G)で貼り着けて組み立てられる包装箱のブランクの加工に際し、シート材(50)の被膜(52)から板紙(51)の厚さ方向の途中まで、切刃部材(21)での切り込みにより、接着剤(G)を板紙(51)に浸透させるための半切線(62)を入れる包装箱の貼着部加工方法において、
前記シート材(50)の切込に際し、前記切刃部材(21)と、シート材(50)を切り込まずに押圧する押罫部材(22)とを交互に抱き合わせた刃罫複合部材(23)を使用し、
前記刃罫複合部材(23)をシート材(50)に押し付けることにより、前記切刃部材(21)による半切線(62)と、前記押罫部材(22)による押罫線(63)とが交互に並列して、前記刃罫複合部材(23)の押付部分が断続的な凹凸をなすと共に、全体的に窪んだ凹所(64)を形成し、その凹所(64)に接着剤(G)が溜まった状態で、シート材(50)同士を重ね合わせて貼り着けるようにしたことを特徴とする包装箱の貼着部加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、板紙の片面が難接着性の被膜で被覆されたシート材から組み立てられる包装箱の貼着部加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高価な医薬品等のパッケージとして、板紙の片面がアルミニウムを蒸着したフィルムの被膜で覆われたシート材から成る包装箱が使用されることがある。このような包装箱は、高級感を演出するため、平滑で金属光沢のある被膜が表面側となり、板紙の露出面が裏面側となるようにブランクを折り曲げて立体化され、重ね合わされたシート材の被膜と板紙とが接着剤で貼り着けられて封緘される(下記特許文献1参照)。
【0003】
上記包装箱では、重なり合うシート材の被膜側の面と板紙側の面とを貼り着ける際、被膜が難接着性であるため、封緘不良が発生しやすく、特に、内容物をカートナーで充填した後の封緘に際しては、シート材同士を内側と外側から挟み込んで強く押し付けることができないため、封緘状態での貼着部の剥がれを防止する対策を講じておく必要がある。
【0004】
その対策として、ブランクの加工段階で、
図5に示すように、板紙51の片面が蒸着フィルムから成る被膜52で覆われたシート材50に対して、シート材50の被膜52から板紙51の厚さ方向の途中まで、ホットメルト等の接着剤を浸透させるための半切線65を複数本入れておくことが考えられる。なお、シート材50を貫通する全切線ではなく、半切線65とするのは、全切線とした場合、シート材50の裏面の板紙51が膨出し、カートナーでの包装時に引っ掛かりが生じる恐れがあるためである。
【0005】
ここで、シート材50に半切線65を入れる際、シート材50の切込に通常使用する切刃部材31は、両側面が平行なシャンク部31aから漸次細くなるテーパー部31bの先端が尖った形状となっている。
【0006】
この切刃部材31により、シート材50をブランクの打抜装置で所定深さDまで切り込んだとき、切刃部材31は、シート材50にテーパー部31bの尖った先端から突入するが、シャンク部31aまでシート材50に没入することはない。
【0007】
このため、
図5(5A)に示すように、切刃部材31のシャンク部31aの厚さXに対して、
図5(5B)に示すように、半切線65の開口幅W3が小さくなり、
図5(5C)に示すように、このような開口幅W3の半切線65に入り込んだ接着剤Gを板紙51に浸透させて、重なり合ったシート材50の被膜52側の表面と板紙51側の裏面との接着力の強化を図ることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2019−18899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記のように、半切線65の開口幅W3が切刃部材31のシャンク部31aの厚さXよりも小さくなっていると、半切線65で露出した板紙51の繊維に粘度の高いホットメルトの接着剤が十分浸透せず、シート材50同士の接着力を十分に強化する効果が得られないという現状がある。
【0010】
そこで、この発明は、重なり合ったシート材の難接着性の被膜側の表面と板紙側の裏面とを強力に接着できる包装箱の貼着部加工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、この発明は、板紙の片面が難接着性の被膜で覆われたシート材から成り、重なり合ったシート材の被膜側の表面と板紙側の裏面とを接着剤で貼り着けて組み立てられる包装箱のブランクの加工に際し、シート材の被膜から板紙の厚さ方向の途中まで、切刃部材での切り込みにより、接着剤を板紙に浸透させるための半切線を入れる包装箱の貼着部加工方法において、次のような手段を講じたのである。
【0012】
すなわち、前記シート材の切込に際し、前記切刃部材と、シート材を切り込まずに押圧する押罫部材とを交互に抱き合わせた刃罫複合部材を使用し、
前記刃罫複合部材をシート材に押し付けることにより、前記切刃部材による半切線と、前記押罫部材による押罫線とが交互に並列して、前記刃罫複合部材の押付部分が断続的な凹凸をなすと共に、全体的に窪んだ凹所を形成し、その凹所に接着剤が溜まった状態で、シート材同士を重ね合わせて貼り着けるようにしたのである。
【発明の効果】
【0013】
この発明に係る包装箱の貼着部加工方法
では、切刃部材と押罫部材とを交互に抱き合わせた刃罫複合部材を使用
し、シート材の被膜側の面への刃罫複合部材の押し付けに伴い、半切線と押罫線とが交互に並んだ凹所を形成し、その凹所に接着剤が溜まった状態で、シート材同士を貼り着けるようにしているので、凹所の部分では難接着性の被膜の影響を受けることなく、連続的な広い面積で接着剤の接着力が発揮され、重なり合ったシート材の被膜側の表面と板紙側の裏面とを強力に接着できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】この発明
の実施形態に係る包装箱の封緘状態を示す斜視図
【
図4】同上のブランクの加工工程における(
4A)刃罫複合部材とその押付により凹所が形成されたシート材を示す断面図、(
4B)凹所に溜まった接着剤による重なり合ったシート材の貼着状態を示す断面図
【
図5】従来の切刃部材を使用したブランクの加工工程における(
5A)切刃部材のシート材への切込前の状態を示す断面図、(
5B)切刃部材のシート材への切込状態を示す断面図、(
5C)重なり合ったシート材の貼着状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明
の実施形態を
図1乃至
図4に基づいて説明する。
【0016】
図1及び
図2に示す包装箱は
、高価なドリンク剤のパッケージとして高級感を演出するため、板紙51の片面がアルミニウムの蒸着フィルムの被膜52で覆われたシート材50を材料とし、平滑で金属光沢のある被膜52が表面側となり、板紙51の露出面が裏面側となるように組み立てられて封緘されるものである。
【0017】
この包装箱のシート材50から成るブランクでは、
図3に示すように、正面板1の一側に一方の側面板2、背面板3及び継代片4が罫線を介して順次連設され、正面板1の他側に他方の側面板2が罫線を介して連設され、一対の側面板2の上端及び下端に罫線を介して受止フラップ5が、正面板1の上端及び下端に罫線を介して内蓋フラップ6が、背面板3の上端及び下端に罫線を介して外蓋フラップ7がそれぞれ連設されている。
【0018】
背面板3の上部には、切目と繋部が断続するミシン目状の切目線8が入れられて、その内側に開封用の押込部9が形成され、上方の内蓋フラップ6の先端には、罫線を介して再封緘用の差込片6aが連設されている。
【0019】
上方と下方の内蓋フラップ6には、封緘状態における外蓋フラップ7との接着力を強化するため、被膜52側の面に、半切線62と押罫線63とがそれぞれ複数本交互に並列して、これらが断続的な凹凸をなすと共に、その配列部分が全体的に窪んだ長方形状の凹所64が形成されている。
【0020】
凹所64は、
図4に示すように、ブランクの加工段階で、切刃部材21と押罫部材22とを交互に抱き合わせて打抜装置の抜型に装着された刃罫複合部材23を、シート材50に被膜52の表面から押し付けることにより形成される。
【0021】
刃罫複合部材23の切刃部材21は、シャンク部21aから漸次細くなるテーパー部21bの先端が尖った通常のものとし、押罫部材22は、先端が平面をなす角罫とし、押罫部材22の先端は、切刃部材21の先端よりも高低差gだけ引っ込んだものとする。
【0022】
ここで、
図4(4A)に示すように、切刃部材21と押罫部材22がそれぞれ全て同一のものである場合、切刃部材21のシャンク部21aの厚さX1に切刃部材21の本数を乗じると共に、押罫部材22の厚さX2に押罫部材22の本数を乗じ、これらの値を加えたものが刃罫複合部材23の厚さXtとなる。
【0023】
この刃罫複合部材23を使用して、打抜装置により刃罫複合部材23をシート材50に押し付けると、シート材50の被膜52側の表面には、刃罫複合部材23の切刃部材21による半切線62と、押罫部材22による押罫線63とが交互に並列して、刃罫複合部材23の押付部分が断続的な凹凸をなすと共に、全体的に窪んだ凹所64が形成され、刃罫複合部材23の厚さXtと同一の開口幅W2を有する凹所64の範囲内では、半切線62の部分で被膜52が破れ、板紙51の繊維が露出する。
【0024】
そして、
図4(4B)に示すように、シート材50を重ね合わせて貼り着ける際、凹所64の範囲にホットメルト等の流動性を有する接着剤Gを塗布すると、被膜52に接着剤Gが弾かれて散逸することなく、凹所64に接着剤Gが溜まった状態で、重なり合ったシート材50の被膜52側の表面と板紙51側の裏面とを強力に接着できる。
【0025】
そして、この実施形態に係る包装箱において、凹所64が形成されたシート材50は内蓋フラップ6に対応し、これに重なり合って貼り着けられるシート材50は外蓋フラップ7に対応する。
【0026】
上記ブランクを組み立てて商品を包装するには、
図2に示すように、正面板1、一対の側面板2及び背面板3を四角筒状に折り曲げて、継代片4を他側の側面板2の内面に貼り着け、箱内に商品を挿入すると共に、底面及び天面の各一対の受止フラップ5を内側へ折り曲げ、内蓋フラップ6を受止フラップ5に重ね合わせるように折り曲げ、天面側では、差込片6aを背面板3の内面沿いに折り曲げて押込部9に貼り着ける。
【0027】
その後、内蓋フラップ6の表面の凹所64にホットメルト等の接着剤Gを塗布し、
図1に示すように、外蓋フラップ7を内蓋フラップ6に重ね合わせるように折り曲げて貼り着けると、封緘が完了する。
【0028】
上記のような加工方法で凹所64を形成した包装箱では、凹所64に接着剤Gが溜まった状態で、内蓋フラップ6と外蓋フラップ7とを貼り着けるようにしているので、凹所64の部分では難接着性の被膜52の影響を受けることなく、連続的な広い面積で接着剤Gの接着力が発揮されるので、内蓋フラップ6と外蓋フラップ7とが強力に接着され、封緘不良の発生が防止される。
【0029】
なお、上記各実施形態では、それぞれの加工方法を包装箱の内蓋フラップ6と外蓋フラップ7の貼着部に適用する場合について例示したが、これらの加工方法は、他の貼着部に適用することもできる。また、上記のような形式の包装箱のほか、先端同士を突き合わせたフラップを、その裏側に重なるフラップに貼り着けるA式箱等の貼着部においても、これらの加工方法を適用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 正面板
2 側面板
3 背面板
4 継代片
5 受止フラップ
6 内蓋フラップ
6a 差込片
7 外蓋フラップ
8 切目線
9 押込部
11 切刃部材
11a シャンク部
11b テーパー部
11c 先丸部
21 切刃部材
22 押罫部材
23 刃罫複合部材
50 シート材
51 板紙
52 被膜
62 半切線
63 押罫線
64 凹所
G 接着剤
【要約】
【課題】重なり合ったシート材の難接着性の被膜側の表面と板紙側の裏面とを強力に接着できる包装箱の貼着部加工方法を提供する。
【解決手段】板紙51の片面が難接着性の被膜52で覆われたシート材50から成り、重なり合ったシート材50の被膜52側の表面と板紙51側の裏面とを接着剤Gで貼り着けて組み立てられる包装箱のブランクの加工に際し、シート材50の被膜52から板紙51の厚さ方向の途中まで、切刃部材での切り込みにより、接着剤Gを浸透させるための半切線61を入れる包装箱の貼着部加工方法において、切刃部材として、先端に先丸部を有するものを使用し、半切線61の両側に臨む部分で板紙51の繊維を幅広く露出させる。或いは、シート材50の被膜52側の面に半切線と押罫線とが交互に並んだ凹所を形成し、その凹所に接着剤が溜まった状態で、シート材50同士を貼り着ける。
【選択図】
図1