特許第6722997号(P6722997)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6722997
(24)【登録日】2020年6月25日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】天井枠吊り下げ構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 9/18 20060101AFI20200706BHJP
【FI】
   E04B9/18 A
【請求項の数】6
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-220219(P2015-220219)
(22)【出願日】2015年11月10日
(65)【公開番号】特開2017-89218(P2017-89218A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年10月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】594062260
【氏名又は名称】株式会社佐藤型鋼製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100092875
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 孝治
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 公章
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−249184(JP,A)
【文献】 特開2014−001504(JP,A)
【文献】 特開2004−278596(JP,A)
【文献】 実開昭61−184010(JP,U)
【文献】 実開平03−075209(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/18 − 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の構造体に対して天井枠を吊り下げる天井枠吊り下げ部材を軽量の角形鋼材により形成するとともに、該角形鋼材の上端部を角形鋼材取り付け金具を介して上記建物の構造体に取り付けることにより天井枠を吊り下げるようにしてなる天井枠吊り下げ構造であって、上記建物の構造体が水平方向の角形鋼材取り付け縁部を有するとともに、上記角形鋼材取り付け金具が、上記角形鋼材の上端部に対して連結一体化される方形箱形構造の取り付け金具本体と、該取り付け金具本体の左右両側壁部分に上記建物の構造体の水平方向の角形鋼材取り付け縁部に向けて開口された断面コ字形の嵌合口と、該嵌合口の上部側または下部側に設けられ、同嵌合口の上記建物の構造体の角形鋼材取り付け縁部への嵌合後において上方側から下方側または下方側から上方側に螺合され、当該取り付け金具本体を上記建物の構造体の角形鋼材取り付け縁部に対して固定する締結ボルトと、上記取り付け金具本体の底部に一体に設けられた角形鋼材連結ブラケットとからなり、上記取り付け金具本体の底面に上記角形鋼材の上端面を当接させた状態において、上記連結ブラケットを介して連結することにより、上記角形鋼材を同軸構造に連結一体化していることを特徴とする天井枠吊り下げ構造。
【請求項2】
角形鋼材が、断面筒型構造の角形鋼材であることを特徴とする請求項1記載の天井枠吊り下げ構造。
【請求項3】
角形鋼材が、断面C字形のチャンネル構造のリップ溝形鋼材であることを特徴とする請求項1記載の天井枠吊り下げ構造。
【請求項4】
角形鋼材が、断面コ字形のチャンネル構造の溝形鋼材であることを特徴とする請求項1記載の天井枠吊り下げ構造。
【請求項5】
角形鋼材が、断面アングル構造の等辺山形鋼材であることを特徴とする請求項1記載の天井枠吊り下げ構造。
【請求項6】
連結ブラケットは、ボルト挿通孔を備えたヒンジ構造の連結ブラケットよりなることを特徴とする請求項1,2,3,4又は5記載の天井枠吊り下げ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、軽量鋼材を用いて建物の構造体に対して天井枠を吊り下げる天井枠吊り下げ構造に関し、さらに詳しくは同天井枠吊り下げ構造における軽量鋼材の建物構造体に対する取り付け金具の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に天井の下地構造の一部を形成する天井枠は、例えば複数本の野縁と該野縁が取り付けられる複数本の野縁受けとからなり、それら野縁および野縁受けを格子状に組み合わせ、同野縁および野縁受けの上下に交叉する部分を所定の接合金具で相互に接合固定することによって一体に構成されている。
【0003】
そして、天井の高さ(ふところ高さ)に応じた所定の長さの吊りボルトを用い、例えば野縁受けの所定部分に当該吊りボルトの下端を、また上階床スラブ等の建物の構造体の所定の取り付け部分に当該吊りボルトの上端をそれぞれ所定の取り付け金具(吊り金具)を介して取り付けることにより、建物の構造体の天井設置部に吊り下げるようにしていた。
【0004】
また、上記天井枠を構成する野縁及び野縁受けには、断面コの字型の溝形鋼(チャンネル材)や角筒が用いられ、また上記吊りボルトには軸状のロッド部材が用いられ、さらに上記吊りボルト取り付け金具には、断面コ字形の係止金具(下部側)や箱型の結合金具(上部側)が用いられていた(例えば、特許文献1、特許文献2の天井下地構造の構成を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−50784号公報
【特許文献2】特開2013−68066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1、2に示されているような、単にロッド構造の吊りボルトの下端部を断面コ字形の係止金具を用いて天井枠に係止する一方、同ロッド構造の吊りボルト上端を単に箱型の結合金具を介してH形鋼の水平縁部などの建物構造体に吊り下げるようにした天井枠吊り下げ構造の場合、吊りボルト自体の曲げ剛性および吊り下げ強度、建物の構造体と吊りボルトとの連結強度、吊りボルトと野縁受け(または野縁)との連結強度等が低く、天井枠吊り下げ時の耐震性に欠ける欠点がある。
【0007】
例えば地震発生時の加振力には、縦揺れによる上下垂直方向の振動、横揺れによる水平方向の振動があり、実際には、それらの振動がさらに複雑に組み合わされたものとなる。したがって、上記吊りボルトや吊りボルト取り付け金具には、垂直方向の荷重に加えて、水平方向の荷重も加わることになり、それら両方向の荷重に対して十分な耐震力があることが要求される。
【0008】
しかるに、上記ロッド構造の吊りボルトや単なる断面コ字形の係止金具、単なる箱型の結合金具だけでは、そのような要求に応えることはできない。
【0009】
本願発明は、このような課題を解決するためになされたもので、吊りボルトに変えて軽量の角形鋼材を用いることによって、天井枠吊り下げ部材部分の断面積を有効に拡大するとともに、垂直方向の荷重に対する強度と水平方向の剛性をそれぞれ向上させ、また該角形鋼材よりなる吊り下げ部材を建物構造体であるH形鋼の水平縁部に取り付ける取り付け金具を、水平縁部への嵌合口を備えた方形箱形の取り付け金具により構成し、該方形箱形の取り付け金具に同軸一体構造に強固に連結することによって、上記角形鋼材単独でも水平方向の揺れを生じさせない形で天井枠を建物構造体に吊り下げることによって、上記天井枠の基本的な吊り下げ強度、耐震性を向上させる一方、さらに角形鋼材取り付け金具部分の建物構造体に対する取り付け強度を向上させることにより、より一層天井枠の吊り下げ強度、耐震性を向上させた天井枠吊り下げ構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明の天井枠吊り下げ構造は、上記の課題を解決するために、次のような課題解決手段を備えて構成されている。
【0011】
(1)第1の課題解決手段
まず本願発明の第1の課題解決手段における天井枠吊り下げ構造は、 建物の構造体に対して天井枠を吊り下げる天井枠吊り下げ部材を軽量の角形鋼材により形成するとともに、該角形鋼材の上端部を角形鋼材取り付け金具を介して上記建物の構造体に取り付けることにより天井枠を吊り下げるようにしてなる天井枠吊り下げ構造であって、上記建物の構造体が水平方向の角形鋼材取り付け縁部を有するとともに、上記角形鋼材取り付け金具が、上記角形鋼材の上端部に対して連結一体化される方形箱形構造の取り付け金具本体と、該取り付け金具本体の左右両側壁部分に上記建物の構造体の水平方向の角形鋼材取り付け縁部に向けて開口された断面コ字形の嵌合口と、該嵌合口の上部側または下部側に設けられ、同嵌合口の上記建物の構造体の角形鋼材取り付け縁部への嵌合後において上方側から下方側または下方側から上方側に螺合され、当該取り付け金具本体を上記建物の構造体の角形鋼材取り付け縁部に対して固定する締結ボルトと、上記取り付け金具本体の底部に一体に設けられた角形鋼材連結ブラケットとからなり、上記取り付け金具本体の底面に上記角形鋼材の上端面を当接させた状態において、上記連結ブラケットを介して連結することにより、上記角形鋼材を同軸構造に連結一体化していることを特徴としている。
【0012】
このような構成の場合、まず天井枠部分から建物構造体部分まで延びて天井枠を吊り下げる天井枠吊り下げ部材部分が、同軸一体構造に連結された角形断面構造の角形鋼材および方形箱形構造の角形鋼材取付金具本体により形成されている。すなわち、天井枠部分から建物構造体部分まで延びる天井枠吊り下げ部材部分が、全体として角形断面の構造体(実質的に所定の断面積を有する1本の角形部材)となり、この角形断面の構造体を介して天井枠が建物の構造体の水平縁部から吊り下げられることになる。
【0013】
しかも、建物の構造体の水平縁部に取り付けられる角形鋼材取付金具は、その方形箱形構造の取り付け金具本体の底面に対して角形鋼材の上端面を当接させた状態において連結ブラケットを介して連結することにより、角形鋼材を同軸構造に連結一体化している。
【0014】
その結果、同角形断面の構造体よりなる天井枠吊り下げ部材部分は、全体として、吊り下げボルトの場合に比べて、垂直部材としての軸方向の引張り、圧縮強度が大きく向上するとともに、断面積がXY両水平面方向に有効に拡大される結果、軸直交方向の曲げ強度、剛性が大きくアップする。
【0015】
したがって、天井枠吊り下げ部材部分の地震発生時の縦揺れ、横揺れに対する耐震力が有効に向上する。
【0016】
また、同構成の場合、角形鋼材を連結する角形鋼材取り付け金具の角形鋼材連結ブラケットは、取り付け金具本体の底部に設けているので、当該角形鋼材取り付け金具と反対側の建物の構造体の取り付け縁部に取り付けた補助金具との間で連結ロッドを介して連結する場合にも、連結部が連結ロッドと干渉しない。
【0017】
(2)第2の課題解決手段
次に本願発明の第2の課題解決手段における天井枠吊り下げ構造は、上記本願発明の第1の課題解決手段の構成において、上記角形鋼材が、断面筒型構造の角形鋼材であることを特徴としている。
【0018】
このように、天井枠を吊り下げる角形鋼材が、断面筒形構造の角形鋼材よりなる場合、XY両方向に延びる閉断面構造の筒壁よって吊り下げ部材の断面積がXY両方向に有効に拡大され、それら閉断面構造の方形の端面が角形鋼材取り付け金具本体の底面につき合わされる形で、連結ブラケットにより同軸構造に連結一体化されるので、角形鋼材取り付け金具本体を一体化し、同角形鋼材取り付け金具本体を介して建物構造体の水平方向の取り付け縁部に取り付けた後の軸直方向の剛性が大きく向上する。
【0019】
(3)第3の課題解決手段
次に本願発明の第3の課題解決手段における天井枠吊り下げ構造は、上記本願発明の第1の課題解決手段の構成において、上記角形鋼材が、断面C字形のチャンネル構造のリップ溝形鋼材であることを特徴としている。
【0020】
このように、天井枠を吊り下げる角形鋼材が、断面C字形のチャンネル構造のリップ溝形鋼材よりなる場合、XY両方向に延びる3片と開口部側のリップ部によって吊り下げ部材の断面積がXY両方向に有効に拡大され、それら3片および縁部が角形鋼材取り付け金具本体の底面につき合わされる形で、連結ブラケットにより同軸構造に連結一体化されるので、角形鋼材取り付け金具本体を一体化し、同角形鋼材取り付け金具本体を介して建物構造体の水平方向の取り付け縁部に取り付けた後の軸直行方向の剛性が有効に向上する。
【0021】
(4)第4の課題解決手段
次に本願発明の第4の課題解決手段における天井枠吊り下げ構造は、上記本願発明の第1の課題解決手段の構成において、上記角形鋼材が、断面コ字形のチャンネル構造の溝形鋼材であることを特徴としている。
【0022】
このように、天井枠を吊り下げる角形鋼材が、断面コ字形のチャンネル構造の溝形鋼材よりなる場合、XY両方向に延びる3片によって吊り下げ部材の断面積がXY両方向に有効に拡大され、それら3片が角形鋼材取り付け金具本体の底面につき合わされる形で、連結ブラケットにより同軸構造に連結一体化されるので、角形鋼材取り付け金具本体を一体化し、同角形鋼材取り付け金具本体を介して建物構造体の水平方向の取り付け縁部に取り付けた後の軸直交方向の剛性が有効に向上する。
【0023】
(5)第5の課題解決手段
次に本願発明の第5の課題解決手段における天井枠吊り下げ構造は、上記本願発明の第1の課題解決手段の構成において、上記角形鋼材が、断面アングル構造の等辺山形鋼材であることを特徴としている。
【0024】
このように、天井枠を吊り下げる角形鋼材が、断面アングル構造の等辺山形鋼材よりなる場合、XY両方向に延びる2片によって吊り下げ部材の断面積がXY両方向に有効に拡大され、それら2片が角形鋼材取り付け金具本体の底面につき合わされる形で、連結ブラケットにより同軸構造に連結一体化されるので、角形鋼材取り付け金具本体を一体化し、同角形鋼材取り付け金具本体を介して建物構造体の水平方向の取り付け縁部に取り付けた後の軸直交方向の剛性が有効に向上する。
【0025】
(6)第6の課題解決手段
次に本願発明の第6の課題解決手段における天井枠吊り下げ構造は、上記本願発明の第1の課題解決手段の構成において、連結ブラケットは、ボルト挿通孔を備えたヒンジ構造の連結ブラケットよりなることを特徴としている。
【0026】
このように、連結ブラケットがボルト挿通口を備えたヒンジ構造の連結ブラケットにより構成されていると、上述した各種形状の角形鋼材に応じ、当該ヒンジブラケットの数や形状、取り付け位置を適切にアレンジして当該角形鋼材を連結することができるようになり、より有効に連結強度、支持剛性をアップすることができるようになる。
【発明の効果】
【0027】
以上の結果、本願発明によると、天井枠吊り下げ部材部分全体の天井枠吊り下げ強度および吊り下げ部材と吊り下げ部材取り付け金具との連結強度、吊り下げ部材取り付け金具の建物構造体への取り付け強度の何れもが大きく向上する。
【0028】
その結果、天井下地全体の耐震性が大きく向上し、より耐震性の高い天井枠吊り下げ構造を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本願発明の第1の実施の形態に係る天井枠吊り下げ構造を示す建物構造体(H形鋼)、取り付け金具、吊り下げ部材(軽量鋼材よりなる角形筒)、補助金具部分の斜視図である。
図2】同天井枠吊り下げ構造を示す建物構造体(H形鋼)、取り付け金具、吊り下げ部材(軽量鋼材よりなる角形筒)、補助金具部分の側面図である。
【0030】

図3】同天井枠吊り下げ構造を示す建物構造体(H形鋼)、取り付け金具、吊り下げ部材(軽量鋼材よりなる角形筒)部分の正面図である
図4】同天井枠吊り下げ構造における吊り下げ部材(軽量鋼材よりなる角形筒)取り付け金具の構造を示す右斜め上方から見た斜視図である。
図5】同天井枠吊り下げ構造における吊り下げ部材(軽量鋼材よりなる角形筒)取り付け金具の構造を示す右斜め下方から見た斜視図である。
図6】同天井枠吊り下げ構造における吊り下げ部材(軽量鋼材よりなる角形筒)取り付け金具の構造を示す中央断面図である。
図7】同天井枠吊り下げ構造における吊り下げ部材(軽量鋼材よりなる角形筒)の構造を示す右斜め上方から見た一部切断斜視図である。
図8】同第1の実施の形態の天井枠吊り下げ構造における吊り下げ部材(軽量鋼材よりなる角形筒)取り付け金具の変形例の構造を示す右斜め上方から見た斜視図である。
図9】同第1の実施の形態の天井枠吊り下げ構造における吊り下げ部材(軽量鋼材よりなる角形筒)取り付け金具の一部を変形した変形例の構造を示す側面図である。
図10】同第1の実施の形態の天井枠吊り下げ構造における吊り下げ部材(軽量鋼材よりなる角形筒)取り付け金具の変形例の構造を示す中央断面図である。
図11】同第1の実施の形態の天井枠吊り下げ構造における吊り下げ部材(軽量鋼材よりなる角形筒)取り付け金具の変形例の構造における建物構造体(H形鋼)水平縁部の押さえ板部分の構成を示す拡大側面図である。
図12】本願発明の第1の実施の形態に係る天井枠吊り下げ構造において、吊り下げ部材取り付け金具を斜め補強部材(ブレース材)の取り付けに利用するようにした場合の構成を示す斜視図である。
図13図12の構成を採用する場合において、斜め補強部材(ブレース材)にも吊り下げ部材と同様の軽量鋼材よりなる角筒を使用し、その上端に連結金具を設けて連結する場合の連結金具部分の構成を示す右斜め上方から見た斜視図である。
図14図12のように、吊り下げ部材取り付け金具を斜め補強部材(ブレース材)の取り付けに利用するようにした場合において、その連結金具の一部を変形した場合の構成を示す斜視図である。
図15図14の構成を採用した場合における連結金具部分の構成を示す右斜め上方から見た斜視図である。
図16】本願発明の第2の実施の形態に係る天井枠吊り下げ構造を示す建物構造体(H形鋼)、取り付け金具、吊り下げ部材(軽量鋼材よりなるリップ溝形鋼)、補助金具部分の斜視図である。
図17】同天井枠吊り下げ構造を示す建物構造体(H形鋼)、取り付け金具、吊り下げ部材(軽量鋼材よりなるリップ溝形鋼)、補助金具部分の側面図である。
図18】同天井枠吊り下げ構造において使用される吊り下げ部材取り付け金具部分の構成を示す右斜め下方から見た斜視図である。
図19】本願発明の第3の実施の形態に係る天井枠吊り下げ構造を示す建物構造体(H形鋼)、取り付け金具、吊り下げ部材(軽量鋼材よりなる溝形鋼)、補助金具部分の右斜め下方から見た斜視図である。
図20】同天井枠吊り下げ構造を示す建物構造体(H形鋼)、取り付け金具、吊り下げ部材(軽量鋼材よりなる溝形鋼)、補助金具部分の側面図である。
図21】本願発明の第4の実施の形態に係る天井枠吊り下げ構造を示す建物構造体(H形鋼)、取り付け金具、吊り下げ部材(軽量鋼材よりなる等辺山形鋼)、補助金具部分の右斜め下方から見た斜視図である。
図22】同天井枠吊り下げ構造を示す建物構造体(H形鋼)、取り付け金具、吊り下げ部材(軽量鋼材よりなる等辺山形鋼)、補助金具部分の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付の図面を参照して、本願発明に係る天井枠吊り下げ構造を実施するための幾つかの具体的な実施の形態について詳細に説明する。これら本願発明の各実施の形態に係る構成では、何れの場合にも、天井枠が吊り下げられる建物の構造体として、例えば水平な取り付け縁部を備えたH形鋼が採用されており、同H形鋼の水平な取り付け縁部に対して取り付けるのに適したものとして構成されている。
【0032】
<第1の実施の形態>
まず添付の図1図15は、本願発明の第1の実施の形態に係る天井枠吊り下げ構造を示しており、同構造における、建物構造体であるH形鋼の構成、該H形鋼の水平な取り付け縁部に天井枠を吊り下げる天井枠吊り下げ部材の構成、該天井枠吊り下げ部材の上端を上記H形鋼の取り付け縁部に取り付ける吊り下げ部材取り付け金具の構成、上記天井枠と上記H型鋼部分とを上記吊り下げ部材取り付け金具を利用して斜めに連結する斜め補強材であるブレース材および連結金具の構成、それらの変形例の構成などが示されている。
【0033】
以下、これら各部分の構成と作用について、対応する図面を参照して詳細に説明してゆく。
【0034】
(1)天井下地部分の構成について
この発明の実施の形態における天井下地は、特に図示はしていないが、例えば複数本の野縁およびこれら複数本の野縁を格子状に取り付ける野縁受けよりなる天井枠と、この天井枠を例えば建物の上階床下面に設けられた建物構造体であるH形鋼の水平方向の取り付け縁部に吊り下げる複数本の吊り下げ部材と、これら複数本の吊り下げ部材間を斜め方向に連結する複数本の斜め補強材であるブレース材などから構成されている。
【0035】
このような天井枠部分の構成については、例えば本件出願人の出願である特願2015−120940号の図1図2の構成と同様である。
【0036】
この実施の形態の場合にも、野縁および野縁受けは、それぞれ上下に長い断面長方形上の金属製の角筒部材よりなり、それら断面長方形上の金属製の角筒部材よりなる野縁と野縁受けとは、後述する吊り下げ部材下端との連結部を除く相互の交差部(重ね合わせ部)において、例えば断面コの字型の座金(上部側および下部側)を設け、それらの間を連結ボルトで上下方向に連結引張することにより強固に固定されるようになっている。
【0037】
これら野縁および野縁受けには、もちろん従来のチャンネル型の鋼材の採用も可能であり、求められる用途、強度によって使い分けられる。
【0038】
他方、上記野縁と野縁受けとの各交差部の内の所定の位置の交差部部分には、当該天井枠を吊り下げるための上記吊り下げ部材の下端側が天井枠取り付け金具を介して取り付けられるようになっている。
【0039】
上記天井枠は、上記複数本の吊り下げ部材および複数本の斜め補強材(ブレース材)によって、上記建物の構造体であるH形鋼の水平方向の取り付け縁部に吊り下げられる。
【0040】
このようにして、上記天井枠の上記H形鋼の水平方向の取り付け縁部に対する吊り下げ施工が完了した後においては、例えば上記野縁の下面側に対して必要な天井仕上げ用のボード等が取り付けられる(天井仕上げ用のボード等の取り付け構造については、例えば特開2013−68066号公報を参照)。
【0041】
(2)H形鋼部分の構成について(図1図3を参照)
この実施の形態における建物構造体は、上述のようにH形鋼により構成されている。このH形鋼10は、例えば図1図3に示されるように、Hを横に寝かせた構造に配置され、上下両端側の水平な縁部10a、10bの中央部同士をI形の連結部で連結した強度の高い構造のものとなっている。
【0042】
そして、上記上下両端側の左右両方向に均等に伸びる水平縁部10a、10bが各々天井枠吊り下げ用の取り付け縁部として機能するが、この実施の形態の場合には、下方側の水平縁部10aが取り付け縁部として選ばれている。そこで、以下では、この下方側の水平縁部10aを取り付け縁部10aと表現することにする。
【0043】
(3)天井枠吊り下げ部材部分の構成について(図1図3図7を参照)
次に、上記複数本の天井枠吊り下げ部材は、図1図3および図7において、符号2、2・・で示されている。この天井枠吊り下げ部材2、2・・は、例えば図1図3に示されるように、上下方向に延びる天井枠吊り下げ用の垂直部材であり、その点では従来のロッド部材である所定の軸径の吊りボルトと同じであるが、この実施の形態における吊り下げ部材2、2・・は、軽量な角形鋼材、より具体的には、例えば図7に示されるような、断面方形(長方形又は正方形)の軽量鋼材よりなる角形の筒体(軽量角形鋼管)により形成されており、筒体の筒壁部は全体として必要にして十分な強度および肉厚のものに形成されている。
【0044】
この断面方形の角形の筒体としては、種々の構造のものが考えられるが、この実施の形態の場合には、例えば図7に詳細に示すように、金属板を断面方形に曲げ加工(例えばロールフォーミング)し、両側縁2a,2b部分を角部の一側A部分で相互にS字形に抱き合わす形で連結し、一方側の側縁の隣接部内側に折り曲げリブ2cを設けることにより抱き合わせ部をカシメ付けて、圧縮強度の高い閉断面構造の角形の筒体に一体化したものとなっている。
【0045】
この天井枠吊り下げ部材2は、以下に述べるように、その上端側を上記H鋼10の取り付け縁部10aに対して嵌合固定される天井枠吊り下げ部材取り付け金具61の下部に設けられている左右一対の連結用ブラケット50a、50bに対してボルト51を介して連結されるので、同上端部には当該ボルト51挿通用のボルト穴2d、2dが設けられている。
【0046】
(4)天井枠吊り下げ部材取り付け金具の構成について(図1図6、特に図4図6を参照)
上記のように、この実施の形態では、天井枠を取り付ける建物側の構造体がH形鋼10、10・・よりなっており、同H形鋼10、10・・の水平方向の取り付け縁部10a,10a・・に対して天井枠を吊り下げる天井枠吊り下げ部材2が、閉断面構造の金属製の角形筒体により構成され、従来の吊りボルトに比べて、断面積が大きく、かつ対圧縮荷重強度および曲げ剛性が高い垂直部材を構成していることが特徴である。
【0047】
そこで、これに対応して、同吊り下げ部材2の上端側を上記建物側のH形鋼10の水平方向の取り付け縁部10aに取り付ける天井枠吊り下げ部材取り付け金具61も、当該金属製の角形筒体よりなる天井枠吊り下げ部材2と断面方形構造の筒状に連結一体化されて、対圧縮強度、曲げ剛性の高いものとなるように、例えば、次のように構成されている。
【0048】
すなわち、該天井枠吊り下げ部材取り付け金具61は、例えば図1図3および図4図6に示すように、上記所定の外径を有する断面方形の金属製の角形筒体により構成される天井枠吊り下げ部材2上端の断面積および断面形状に対応して安定した当接状態で突き合わされ、上下方向(軸方向)に角形構造に連結一体化される底壁面(締結座部)610を有した方形箱形(前面側のみが開口した直方体形状)の取り付け金具本体61aと、該方形箱形の取り付け金具本体61aの前面側(上記H形鋼10の取り付け縁部10a側)に開口された前後方向に所定の深さの断面コ字形の嵌合口61b,61bと、該断面コ字形の嵌合口61b,61bの前後方向中央部の上壁面611側に位置して上方側から下方に貫通して設けられた締結ボルト螺合孔61iと、上記H形鋼10の取り付け縁部10aへの取り付け時において、上記締結ボルト螺合孔61iに上方側から下方側に向けて挿入螺合され、上記方形箱形の取り付け金具本体61aを上記H形鋼10の取り付け縁部10aに対して固定する締結ボルト61cとから構成されている。また、背面側には、後述する連結ロッド70の挿通孔61eが設けられている。
【0049】
そして、上記締結ボルト61cは、例えばスプリングワッシャー61jおよび緩み止めナット61hを介して上記締結ボルト螺合孔61iに螺合されるようになっており、ボルト締結時の緩み等が生じないように構成されている。
【0050】
また、上記断面コ字型の嵌合口61b,61bは、上記取り付け金具本体61aの前面側開口部左右の両側壁612,612を後方側に所定の深さ切り欠くことによって形成されている(一応、図中では、断面コ字形に切り欠いた左右両側壁612,612に対応するものとして、左右2組の符号61b、61bを入れて示している)。
【0051】
この実施の形態の場合、上記H形鋼取り付け縁部10aへの嵌合口61b,61bは、当該取り付け金具本体61aの側面から見た時の少なくとも前後方向約前半分部分に設けられている一方、底面610の略全体部分が上記角形の筒体よりなる天井枠吊り下げ部材2の上端面に当接しており、同当接状態において連結ブラケット50a、50bを介してボルト51により、天井枠吊り下げ部材取り付け金具61と天井枠吊り下げ部材2が強固に連結一体化されている。
【0052】
この結果、天井枠吊り下げ部材取り付け金具61と天井枠吊り下げ部材2が、実質的に1本の角形筒構造の剛体となり、天井枠吊り下げ部材取り付け金具61のH鋼取り付け縁部10aへの強固な取り付け状態と相俟って、極めて強固に、かつ水平方向の加振力に対しても強い状態で天井枠が吊り下げられることになる。
【0053】
上記のように天井枠吊り下げ部材2が連結される連結ブラケット50a、50bは、例えば箱型の天井枠吊り下げ部材取り付け金具61底面部の左右両側に位置して、所定寸法下方に長く延び、先端部が略半円形状(方形の形状でも良い)となったヒンジブラケット構造のものにより形成されており、その先端側半円形状の中心軸部分に位置して、ボルト挿通孔52、52が形成されている。
【0054】
(5)天井枠吊り下げ部材取り付け金具の一部変形例の構成について
以上の構成における天井枠吊り下げ部材取り付け金具61では、嵌合部におけるH形鋼取り付け縁部10a上面との締結ボルト61cによる締結を、締結ボルト61cのボルト軸61kの先端部61dでのみ押圧して締結力を作用させるようになっている。
【0055】
このため、H鋼取り付け縁部10a下面側では取り付け金具本体61aの開口部両側壁612,612間の広い面積で支承されるにも拘わらず、上面側では点接触に近い状態でしか押圧されないことになり、水平方向の加振力が与えられた時に上面側での固定力に欠けることになり、全体としての締結固定力も低いものとなる。
【0056】
そこで、そのような問題を解決する一つの変形例(改良例)として、例えば図8図10に示すように、上記締結ボルト61cのボルト軸61kの下端に所定の面積の押さえ板61fを設けて上面側での押圧面積を拡大させる構成も採用される。
【0057】
この締結ボルト61cのボルト軸61k下端の押さえ板61dは、例えば円板状に形成されているとともに(もちろん、方形板でも構わないが)、その直径を上記取り付け金具本体61aの左右両側壁612,612間の幅いっぱいに亘る寸法のものに形成することによって、上記嵌合口部61b、61bの左右両側壁612,612間に対応した十分に広い押圧面積のものに形成している。
【0058】
また、それに加えて、図10および図11に詳細に示しているように、当該押さえ板61dの厚さaを十分に大きな板厚(例えば12mm)のものとし、それに対して十分な深さb(例えば11mm)のボルト螺合溝61mを形成し、同ボルト螺合溝61mに対して、上記締結ボルト61cのボルト軸61kの先端61dを十分な長さbだけ螺合して、軸直行方向への傾動が生じないように相互に確実に係合するようにしている。
【0059】
しかも、上記ボルト螺合溝61mの先端(下端)から下方への所定の長さc部分61n(例えば1mm)の孔径は、上記ボルト螺合溝61m部分の孔径よりも所定寸法小さい孔径のものとして、上記螺合された締結ボルト61cのボルト軸61kが適切な螺合深さ位置で当該押さえ板61fに対して確実かつ強固に係止固定されるようになっている。
【0060】
そして、これらの構成の組み合わせにより、上記締結ボルト61cのボルト軸61k下端側の押さえ板61fとの間で、上記H形鋼10の取り付け縁部10aを上下両面側で挟み込む強固な挟着力が確実に確保、実現されるようにしている。
【0061】
また、その場合において、必要に応じ、上記断面コ字形に切り欠いた左右両側壁612,612間を連結する補強板を設けて断面コ字形に切り欠いた左右両側壁612,612の変形(倒れ)を防止し、それによって締結時におけるH形鋼取り付け縁部10a上下両面への締結力を高めて、より確実かつ強固な締結状態を実現する構造も採用される。
【0062】
(6)天井枠吊り下げ部材取り付け金具に対応した補助金具の構成について
この実施の形態の場合、上記天井枠吊り下げ部材取り付け金具61には、さらに上記H鋼10のI部を挟んで反対側の取り付け縁部10aには、当該天井枠吊り下げ部材取り付け金具61と同様の構造の補助金具64が設けられている。
【0063】
すなわち、この補助金具64も、例えば図1図3に示すように、方形箱形(前面側の全体が開口した直方体形状)の補助金具本体64aと、該方形箱形の補助金具本体64aの前面側(上記H形鋼10の取り付け縁部10a側)に開口された前後方向に所定の深さの断面コ字形の嵌合口64b,64bと、該断面コ字形の嵌合口64b,64bの前後方向中央部の上壁面に位置して上方側から下方に設けられ、取り付け時において上方側から下方側に向けて挿入螺合され、上記方形箱形の補助金具本体64aを上記H形鋼10の反対側の取り付け縁部10aに対して固定する締結ボルト64cとから構成されており、上記断面コ字の嵌合口64b,64bは、上記補助金具本体64aの前面側開口部左右の両側壁を後方側に所定の深さ切り欠くことによって形成されている。
【0064】
そして、上記天井枠吊り下げ部材取り付け金具61と上記補助金具64とは、例えば図1図3に示されるように、それぞれの嵌合口61b,61bと64b,64bを同一水平面方向に対向させた状態において、相互に左右2本の連結ロッド70、70(頭部70a,70a、先端70b,70b、ナット70c,70c)で強く引張して連結されるようになっている。
【0065】
これにより、上記天井枠吊り下げ部材取り付け金具61は、より確実、かつ強固にH形鋼10の取り付け縁部10aに固定される。
【0066】
すなわち、このような構成によれば、上記図1図13の連結固定状態では、天井枠を吊り下げる天井枠吊り下げ部材2の上記取り付け金具61が上記補助金具64によって確実に嵌合方向に引張固定されるようになり、上記天井枠吊り下げ部材2の取り付け金具61に非嵌合方向への外力が作用したとしても、外れるようなことが無くなり、さらにH形鋼取り付け縁部10a、10a両端側の2か所で逆方向に嵌合固定されるようになることから、嵌合状態自体も一層強固になる。
【0067】
例えば同構成の場合、図2に示す構成から明らかなように、上記天井枠吊り下げ部材2に対して水平な矢印A1方向の力が作用したとすると、上記天井枠吊り下げ部材取り付け金具61の嵌合部を介して、上記H形鋼10の取り付け縁部10aには矢印A2方向の押圧力、連結ロッド70、70部分には矢印A3方向の引張力が作用する。
【0068】
しかし、H形鋼10の取り付け縁部10aは支持剛性が高いため動かず、連結ロッド70、70部分に大きな引張力A3が作用することになる。したがって、もし補助金具64がなく、連結ロッド70、70もないとしたら、上記天井枠吊り下げ部材取り付け金具61の嵌合部の嵌合状態が悪化し、ケースによっては嵌合状態が外れるということも考えられる。
【0069】
ところが、以上のように天井枠吊り下げ部材取り付け金具61と補助金具64の2組の金具を用いて2か所で対向方向に嵌合固定し、しかも、左右に所定の幅を置いてそれらを2本の連結ロッド70、70で対向方向に連結していると、上記大きな引張力A3による嵌合部の変形を補助金具64および連結ロッド70,70が確実に阻止し、より確実な嵌合状態を維持することができるようになる。その結果、天井枠吊り下げ部材2の上記A1方向への移動も抑制される。
【0070】
他方、これとは逆に上記天井枠吊り下げ部材2に対して水平な矢印B1方向の力が作用したとすると、上記天井枠吊り下げ部材取り付け金具61の嵌合部を介して、上記H形鋼10の取り付け縁部10aには矢印B2方向への引張力、連結ロッド70、70部分には矢印B3方向の押圧力が作用する。
【0071】
しかし、H形鋼10の取り付け縁部10aは支持剛性が高いため動かず、連結ロッド70、70部分には大きな押圧力B3が作用することになる。したがって、もし上記補助金具64および連結ロッド70、70がないとしたら、やはり上記天井枠吊り下げ部材取り付け金具61の嵌合部の嵌合状態が悪化し、ケースによっては嵌合状態が外れるということも考えられる。
【0072】
ところが、以上のように天井枠吊り下げ部材取り付け金具61と補助金具64の2組の金具を用いて2か所で嵌合固定し、しかも、左右に所定の幅を置いてそれらを2本の連結ロッド70、70で連結していると、上記大きな押圧力B3が上記連結ロッド70、70および補助金具64により阻止されるので、同押圧力B3による嵌合部の変形を阻止し、確実な嵌合状態を維持することができるようになる。
【0073】
その結果、天井枠吊り下げ部材2の上記B1方向への移動も抑制される。これらの結果、上記複数本の天井枠吊り下げ部材2、2・・の横揺れが生じにくくなり、耐震性が向上する。
【0074】
なお、以上のように、天井枠吊り下げ部材取り付け金具61と補助金具64の2組の金具を用いて2か所で対向方向に嵌合固定し、しかも、左右に所定の幅を置いてそれらを2本の連結ロッド70、70を用いて対向方向に連結すると、大きな引張力による嵌合部の変形を補助金具64および連結ロッド70,70が確実に阻止し、より確実な嵌合状態を維持することができるようになるが、この場合、上記連結ロッド70、70は、必ずしも常に2本必要な訳ではなく、相互の中央部に1本の連結ロッド70を設ける構成でも十分に同様の効果を実現することができる。
【0075】
(7)天井枠吊り下げ部材取り付け金具を利用した斜め補強材の連結構造について
上記のように構成された天井枠吊り下げ部材取り付け金具61は、その取り付け金具本体61a下部側の左右一対の連結ブラケット50a、50bを利用して、例えば図12に示すように、下部側天井枠(野縁受けを形成する角筒)との間に斜め補強材(ブレース材)4を連結することも可能である。
【0076】
この実施の形態の場合、この斜め補強材4も上記天井枠吊り下げ部材2と同様の断面方形の軽量鋼材よりなる金属製の角形筒(図7の構成のもの)が採用されており、その上端部には、例えば図13に示すような断面コの字の連結金具73が取り付けられ、該連結金具73を介して上記天井枠吊り下げ部材61下部の連結ブラケット50a、50bの両側(外側)に重合される形で嵌合され、ボルト51を介して連結されるようになっている。
【0077】
この連結金具73は、例えば図13から明らかなように、断面コ字形の連結金具本体73bの左右両側壁部分に、上記角形筒よりなる斜め補強材4の左右両側壁面に対してネジ止めするためのドリルネジ挿通孔74a、74a・・を備えて構成されており、その内側の凹溝部を当該斜め補強材4の上壁面および左右両側壁面部分に嵌合して、図12のように締結固定して一体化する。
【0078】
そして、上記ドリルネジ挿通孔74a、74a・・が形成された上記左右両側壁部の先端側に長く伸びて設けたボルト挿通孔73e、73eを有するヒンジブラケット(連結片)73a、73a部分を、上記ボルト挿通孔52、52を有する上記天井枠吊り下げ部材取り付け金具61下部の左右一対の連結ブラケット50a、50bの外側に嵌合し、相互のボルト挿通孔73e、73eと52、52を同軸位置に合わせてボルト51を挿通し、他端側をナット52で締めて図12のように連結する。これにより、斜め補強材4が容易、かつ確実に連結設置されるようになる。
【0079】
この斜め補強材取り付け用の取り付け金具61は、当然ながら、上記天井枠吊り下げ部における取り付け金具61、61・・とは別に準備し、天井枠吊り下げ用の取り付け金具61、61・・と干渉しない位置を利用して設置される。
【0080】
このように、天井枠側野縁受け(図示省略)と建物構造体側H鋼10との間において、斜め補強材取り付け用の取り付け金具61を介し、上下対角線方向に圧縮荷重の高い角筒よりなる斜め補強材(ブレース材)4、4・・を配設すると、同じく圧縮荷重の高い角筒よりなる天井枠吊り下げ部材2、2・・と同じく角筒よりなる野縁受けとの間で直角三角形を形成する一層強固な補強構造体が実現されることになる。
【0081】
したがって、ぶどう棚としての天井枠強度、同天井枠の吊り下げ強度がさらに向上するとともに、地震発生時の水平方向の加振力に対する耐震強度が大きく向上する。
【0082】
このように斜め補強材取り付け金具61として利用する場合においても、必要に応じて、上述した補助金具64を組み合わせて、H鋼10の左右両取り付け縁部10a、10aに連結固定する構造が採用される。
【0083】
(8)天井枠吊り下げ部材取り付け金具および斜め補強材取り付け金具の構成材料について
なお、この実施の形態の場合、上記構成の天井枠吊り下げ部材取り付け金具61および斜め補強材取り付け金具61は、それぞれ一例として、例えば鋳鋼またはダグタイル鋳鉄により一体に成型して構成される。
【0084】
前者のように、上記天井枠吊り下げ部材取り付け金具61および斜め補強材取り付け金具61について、鋳鋼による一体成型構造を採用すると、当該各取り付け金具61、61の製作が容易で、しかも低コストに実現できるようになる。また、鋳鋼は、それ自体強度が高いので、同鋳鋼を用いて各取り付け金具61、61を一体成型すると、当該各取り付け金具61、61が、上記のように、方形箱形の取り付け金具本体61aにより構成され、内部が空洞で、上記H形鋼10の取り付け縁部10aへ嵌合するための嵌合口61b,61bや締結ボルト61cの挿通孔、連結ブラケット50a、50bなどがあっても、鋼板を板金加工し、溶接することによって形成した場合のような、強度不足、それを解決するための補強部材による補強が不要となる(補強部材を用いたものとして、本件出願人の出願である特願2014−71636の図9の構成を参照)。また、鉄板溶接の場合のような溶接強度のばらつき、製造コストのアップも生じない。
【0085】
この場合、上記対応する補助金具64についても同様の構成であるため、同様にして鋳鋼により一体成型されたものが使用される。
【0086】
この場合における鋳鋼材しては、例えばJIS−G5101の炭素鋼鋳鋼品SC360、SC410、SC450、SC480の内、SC450が適している。この鋳鋼材SC450の場合、引張り強さが450N/mm2、伸び率が19%で、強度および靭性を兼備している。したがって、一般の鋳鉄のような脆さがなく、地震荷重のような衝撃負荷が加わった場合にも十分に耐えることができ、上述のような嵌合口61b、61b、連結ブラケット50a、50bを設けた場合にも十分に有効な強度を保持させることができる。
【0087】
また、同鋳鋼のほかに、例えばダグタイル鋳鉄(FCD450)の採用も可能である。その場合にも、上記鋳鋼と同様の性能を得ることができる。
【0088】
(9)斜め補強材連結金具の一部の構成の変形例について
以上の斜め補強材連結金具73の構成では、例えば図12の構成から明らかなように、上記連結金具本体73bのドリルネジ挿通孔74a、74a・・のある左右両側壁部の先端側に長く伸びて設けたボルト挿通孔73e、73eを有するヒンジブラケット(連結片)73a、73a間にはボルト締結時の支承部がなく、天井枠吊り下げ部材取り付け金具61側の連結ブラケット50a、50bに対してボルト締結時の締結力を支承させるようになっている。そのため、必ずしも支承力が十分でない問題がある。
【0089】
そこで、このような問題を解決する構成として、例えば図14および図15に示すように、上記連結金具本体73bの左右両側壁部の先端側に長く伸びて設けたボルト挿通孔73e、73eを有するヒンジブラケット(連結片)73a、73a間にボルト締結時の締結力を支承する補強用のパイプ部75を設け、同パイプ部75を設けて相互に連結一体化したヒンジブラケット73a、73aを上記天井枠吊り下げ部材取り付け金具61側の連結ブラケット50a、50bの内側に嵌合してボルト51締結時の締結力を支承させる構成も採用される。
【0090】
このようにして、上記天井枠吊り下げ部材取り付け金具61側の連結ブラケット50a、50b間をボルト51およびナット52で締結するようにすると十分に大きな締結力で締結できるようになり、斜め補強材4と斜め補強材取り付け金具(天井枠吊り下げ部材取り付け金具)61との連結強度、ひいては斜め補強材4とH鋼10との連結強度が高くなる。また、上記天井枠吊り下げ部材取り付け金具61の連結ブラケット50a、50bの内側への変形も防止することができる。
【0091】
<第2の実施の形態について>
以上の第1の実施の形態に係る天井枠吊り下げ構造では、角形鋼材よりなる天井枠吊り下げ部材2として、軽量鋼材よりなる断面方形の角形筒(図7)を採用し、その上端部を天井枠吊り下げ部材取り付け金具61下部の左右一対の連結ブラケット50a、50bの内側に嵌合してボルト51で連結するようにした。
【0092】
しかし、上記天井枠吊り下げ部材2を構成する角形鋼材は、このような断面方形の角形筒のみに限らず、例えば図16および図17に示すような、断面C字形のリップ溝形鋼材よりなる角形鋼材によって構成することもできる。
【0093】
このような断面C字形のリップ溝形鋼材の場合にも、本体壁側ウエブ部2eの側壁部を介した反対側面に所定幅の一対のリップ部(フランジ部)2f、2fを有するために、上記角形筒のような閉断面ではないが、それに近い十分な対圧縮荷重を有し、有効な天井枠強度向上作用、有効な天井枠吊り下げ強度向上作用、地震発生時の水平方向の加振力に対する有効な耐震力向上作用を実現することができる(図17に示す図2と同様の矢印A1〜A3およびB1〜B3を参照)。
【0094】
そして、この場合には、上記1枚壁である幅広のウエブ部2eの上端にボルト挿通孔を形成してボルト51を挿通すれば良いので、天井枠吊り下げ部材取り付け金具61側の連結ブラケット50は、例えば図18に示すように、当該取り付け金具本体61aの底部中央に1枚設けてボルト挿通孔52を形成すれば足りるので、構成や取り付けが簡単になる。
【0095】
しかし、それでいながら、上記取り付け金具本体61aの底面と天井枠吊り下げ部材2の上端面とは、断面C字形の広い当接面積を有して突き合わされるから、連結後の一体化度は高く、連結部における軸直交方向への曲げ変形も生じにくくなる。
【0096】
<第3の実施の形態について>
以上の第1の実施の形態に係る天井枠吊り下げ構造では、角形鋼材よりなる天井枠吊り下げ部材2として、軽量鋼材よりなる断面方形の角形筒(図7)を採用し、その上端部を取り付け金具61下部の左右一対の連結ブラケット50a、50bの内側に嵌合してボルト51で連結するようにした。
【0097】
しかし、上記天井枠吊り下げ部材2を構成する角形鋼材は、そのような断面方形の角形筒のみに限らず、例えば図19および図20に示すような、断面コ字形のチャンネル部材である溝形鋼材によって構成することもできる。
【0098】
このような断面コ字形のチャンネル部材である溝形鋼材の場合にも、本体壁側ウエブ部2eとその両側にあってアングル状に(XY方向に)直交する側壁部を有するために、閉断面ではないが十分な対圧縮荷重を有し、有効な天井枠強度向上作用、有効な天井枠吊り下げ強度向上作用、地震発生時の水平方向の加振力に対する有効な耐震力向上作用を実現することができる(図20に示す図2と同様の矢印A1〜A3およびB1〜B3を参照)。
【0099】
そして、この場合にも、上記実施の形態2の構成の場合と同様に、上記1枚壁である幅広のウエブ部2eの上端にボルト挿通孔を形成してボルト51を挿通すれば良いので、天井枠吊り下げ部材取り付け金具61側の連結ブラケット50は、当該取り付け金具本体61aの底部中央に1枚設けてボルト挿通孔52を形成すれば足りるので、構成や取り付けが簡単になる。
【0100】
しかし、それでいながら、上記取り付け金具本体61aの底面と天井枠吊り下げ部材2の上端面とは、断面コ字形の広い当接面積を有して突き合わされるから、連結後の一体化度は高く、連結部における軸直交方向への曲げ変形も生じにくくなる。
【0101】
<第4の実施の形態について>
以上の第1の実施の形態に係る天井枠吊り下げ構造では、角形鋼材よりなる天井枠吊り下げ部材2として、軽量鋼材よりなる断面方形の角形筒(図7)を採用し、その上端部を取り付け金具61下部の左右一対の連結ブラケット50a、50bの内側に嵌合してボルト51で連結するようにした。
【0102】
しかし、上記天井枠吊り下げ部材2を構成する角形鋼材は、そのような断面方形の角形筒のみに限らず、例えば図21および図22に示すような、断面鉤形のアングル部材よりなる等辺山形鋼材によって構成することもできる。
【0103】
このような等辺山形の鋼材よりなるアングル部材の場合にも、いずれか一方の本体壁2hとそれにアングル状に(XY方向に)直交する他方の側壁部2hを有するために(相互の直交部を2gで示す)、上記角形筒のような閉断面ではないが、十分な対圧縮荷重を有し、有効な天井枠強度向上作用、有効な天井枠吊り下げ強度向上作用、水平方向の加振力に対する有効な耐震力向上作用を実現することができる(図22に示す図2と同様の矢印A1〜A3およびB1〜B3を参照)。
【0104】
そして、この場合にも、上記実施の形態2、実施の形態3の構成の場合と同様に、上記1枚壁であるいずれか一方側の側壁部2hの上端にボルト挿通孔(2d:図示省略)を形成してボルト51を挿通すれば良いので、天井枠吊り下げ部材取り付け金具61側の連結ブラケット50は、当該取り付け金具本体61aの底部中央に1枚だけ設けて対応するボルト挿通孔52を形成すれば足りるので(図18参照)、構成や取り付けが簡単になる。
【0105】
しかし、それでいながら、上記取り付け金具本体61aの底面と天井枠吊り下げ部材2の上端面とは、断面鉤形のXY方向に広い当接面積を有して突き合わされるから、連結後の一体化度は高く、連結部における軸直交方向への曲げ変形も生じにくくなる。
【符号の説明】
【0106】
2は、天井枠吊り下げ部材
4は、斜め補強材(ブレース材)
10は、H形鋼
10aは、H形鋼の水平方向の取り付け縁部
50は、連結ブラケット
50aは、連結ブラケット
50bは、連結ブラケット
51は、ボルト
52は、ナット
61は、天井枠吊り下げ部材取り付け金具
61aは、取り付け金具本体
61bは、嵌合口
61cは、締結ボルト
61fは、押さえ板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22