特許第6722998号(P6722998)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アサヒ飲料株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6722998
(24)【登録日】2020年6月25日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】茶飲料
(51)【国際特許分類】
   A23F 3/14 20060101AFI20200706BHJP
   A23L 2/38 20060101ALI20200706BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20200706BHJP
【FI】
   A23F3/14
   A23L2/38 J
   A23L2/00 B
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-221220(P2015-221220)
(22)【出願日】2015年11月11日
(65)【公開番号】特開2017-85987(P2017-85987A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年9月12日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ウェブサイト「http://www.asahiinryo.co.jp/company/newsrelease/2015/pick_0731.html」にて、平成27年7月31日掲載。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成27年9月29日 アサヒ飲料株式会社が「茶飲料」を販売した。
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(72)【発明者】
【氏名】佐山 美奈穂
(72)【発明者】
【氏名】山本 なつ美
【審査官】 鈴木 崇之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−342232(JP,A)
【文献】 特開2010−252697(JP,A)
【文献】 特開2010−193831(JP,A)
【文献】 特開2009−017867(JP,A)
【文献】 特開2012−143230(JP,A)
【文献】 特開2011−087526(JP,A)
【文献】 特開2008−237066(JP,A)
【文献】 特開2015−008704(JP,A)
【文献】 このお茶は2つの意味で「W]の称号にあたいする!成分2倍!アサヒ「食事と一緒に十六茶W(ダブル)」,日刊アメーバニュース,2014年 4月19日,インターネットURL<https://web.archive.org//web/20141229070219/httmp://news.ameba.jp/20140419-78/>, 検索日:2019-06-17
【文献】 別府秀彦, 他,難消化性デキストリン含有食品「健糖楽茶」のショ糖負荷試験による血糖値抑制効果の検討,生活衛生,2009年,Vol. 53, No. 3,pp. 153-159
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F 3/00−5/50
A23L 2/00−2/84
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
難消化性デキストリンの含有量が5g/L以上であり、
カフェインの含有量が5mg/L以下(0を含む)であり、
スターチの含有量が170mg/100ml以上であり、
焙煎された大麦の抽出液、焙煎されたハトムギの抽出液、及び、焙煎された植物葉の抽出液を含み、
前記スターチが、前記焙煎された大麦の抽出液、前記焙煎されたハトムギの抽出液、及び、前記焙煎された植物葉の抽出液に由来する、
茶飲料。
【請求項2】
OD420nmにおける吸光度が0.2以上1.0以下である、請求項1に記載の茶飲料。
【請求項3】
前記飲料が容器詰めである、請求項1又は2に記載の茶飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
難消化性デキストリンは、整腸作用、血糖値上昇抑制作用、中性脂肪上昇抑制作用を有することが知られており、飲料をはじめとする様々な食品に配合されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、難消化性デキストリンとコラーゲンとを含有する、緑茶、麦茶等の飲料が開示されている。該飲料は、難消化性デキストリンの作用に加え、コラーゲンを含むことにより美容への効果を高めることができるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−19764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
難消化性デキストリンやコラーゲンのような機能性を有する成分は、健康面においては有効である一方で、成分によっては特有の臭いや味を有する場合があり、このような成分を飲料に配合することで、その成分特有の臭いや味を飲料に与えてしまう可能性がある。
【0006】
例えば、上記特許文献1には、コラーゲンが特有の臭いや味を有することが記載されており、さらに、特許文献1においては、コラーゲンを緑茶や麦茶等の飲料に配合することで、コラーゲン特有の臭いや味を抑制できることが記載されている。
【0007】
しかしながら、難消化性デキストリンも独特の糊のような味を有する。特許文献1に記載の飲料は、コラーゲン特有の臭いや味を抑制することができるが、難消化性デキストリンの糊のような味を抑制できるものではない。
【0008】
他方、カフェインは香りや味のマスキング効果を有することが知られており、カフェインを飲料中に多量に含むことで、難消化性デキストリンの糊のような味を抑制しうるとも考えられる。
【0009】
しかしながら、カフェインを飲料中に多量に含むと、カフェイン自体の味が強くなるため、カフェインの味が苦手な人の嗜好に合わないという問題がある。
【0010】
本発明は以上の実情に鑑みてなされたものであり、カフェインの含有量を低く抑えつつ、難消化性デキストリンの有する糊のような味を抑制可能な茶飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、所定量の難消化性デキストリンを含む茶飲料において、所定量のスターチが含有されることにより、難消化性デキストリンの有する糊のような味を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0012】
(1) 難消化性デキストリンの含有量が5g/L以上であり、カフェインの含有量が30mg/L以下(0を含む)であり、スターチの含有量が170mg/100ml以上である、茶飲料。
【0013】
(2) 難消化性デキストリンとスターチとを含み、カフェインの含有量が30mg/L以下(0を含む)であり、
前記難消化性デキストリンの含有量に対する前記スターチの含有量の質量比が、0.085以上である、茶飲料。
【0014】
(3) 穀物の抽出液を含む、(1)又は(2)に記載の茶飲料。
【0015】
(4) 前記穀物が、ハトムギ及び大麦からなる群から選択される1種以上を含む、(3)に記載の茶飲料。
【0016】
(5) 前記穀物が、焙煎された穀物である、(3)又は(4)に記載の茶飲料。
【0017】
(6) OD420nmにおける吸光度が0.2以上1.0以下である、(1)から(5)のいずれかに記載の茶飲料。
【0018】
(7) 前記飲料が容器詰めである、(1)から(6)のいずれかに記載の茶飲料。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、カフェインの含有量を低く抑えつつ、難消化性デキストリンの有する糊のような味を抑制可能な茶飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0021】
本発明の茶飲料は、難消化性デキストリンの含有量が5g/L以上であり、カフェインの含有量が30mg/L以下(0を含む)であり、スターチの含有量が170mg/100ml以上である。または、本発明の茶飲料は、難消化性デキストリンの含有量に対するスターチの含有量は、質量比で0.085以上である。カフェインの含有量が30mg/L以下であることによって、カフェインの含有を感じさせることがなく、カフェインの味が苦手な消費者の嗜好にも合う茶飲料を得ることができる。また、カフェインを含有しないことによって、カフェイン自体の摂取を好まない消費者にとっても、安心して飲むことができる茶飲料を得ることができる。また、スターチの含有量がこの範囲であることにより、茶飲料の風味を損なうことなく、難消化性デキストリンによる糊味の抑制効果を十分に発現することができる。
【0022】
茶飲料中のカフェインの含有量は、30mg/L以下であり、20mg/Lがより好ましく、10mg/L以下がより好ましく、5mg/L以下がより好ましく、1mg/L以下がより好ましく、0が最も好ましい。後述するように、スターチの含有により、カフェインの含有による抑制効果を期待せずとも、難消化性デキストリンが有する糊のような味を抑制することができる。よって、カフェインの摂取を好まない消費者が飲用しやすく、且つ、難消化性デキストリンが有する糊のような味を抑制することができることから、カフェインの含有量は少ない方がより好ましい。
【0023】
上記難消化性デキストリンは、水溶性食物繊維の一種であり、デンプンをアミラーゼにより加水分解し、未分解の難消化性成分を集めたものである。本発明の茶飲料は、難消化性デキストリンを5g/L以上含有することによって、整腸作用、血糖値上昇抑制作用、中性脂肪上昇抑制作用等の健康保持増進効果を得ることができる。しかし、この難消化性デキストリン単独では、特有な糊のような味を有する。これに対し、本発明の茶飲料においては、後述するようにスターチを170mg/100ml以上含有するか、又は、難消化性デキストリンの含有量に対するスターチの含有量が、質量比で0.085以上であることによって、難消化性デキストリンが有する糊のような味を抑制することができる。この茶飲料は、カフェインを含まなくても、もしくはその含有量が少なくても、コーンスターチを含有することにより、難消化性デキストリンが有する糊のような味を抑制する効果を十分に発現することができるのである。よって、カフェインの味が苦手な消費者もカフェインの摂取を好まない消費者にも、難消化性デキストリンによる上述した健康保持増進効果を得ることができる。
【0024】
難消化性デキストリンの含有量は、5g/L以上であり、5g/L〜30g/Lが好ましく、10g/L〜25g/Lがより好ましい。難消化性デキストリンは健康保持増進効果を有するため、この健康保持増進効果をより得るためには、なるべく多くの量の難消化性デキストリンを茶飲料に配合した方が好ましい。一方で、上述の通り、難消化性デキストリンは特有な糊のような味があるため、多量の難消化性デキストリンを茶飲料に配合すると、その糊のような味がより強くなってしまう。しかしながら、上述したように、本発明においては、スターチの含有により、難消化性デキストリンが有する糊のような味を抑制できることから、健康保持増進効果を期待できる難消化性デキストリンをより多く含有させることができる。この観点から、難消化性デキストリンの含有量は、5g/L以上、さらに10g/L以上であることが好ましい。また、スターチの含有によって難消化性デキストリンが有する糊味を抑制することができるが、スターチの含有量を所定量以下に抑えて嗜好性のバランスに優れた飲料を得るという観点から、難消化性デキストリンの含有量は30g/L以下、さらに25g/L以下であることがより好ましい。また、スターチの含有量は、糊味を抑制できる穀物の焙煎度の指標としても用いることができる。つまり、後述する穀物を焙煎するときに、抽出液を配合した飲料中のスターチの含有量が上記の範囲内(例えば、170mg/100ml以上等)になるように穀物を焙煎することで、自ずと、難消化性デキストリンが有する糊のような味を抑制することができる。
【0025】
上記スターチは、従来公知の方法で精製されるデンプンであり、特に限定されるものではないが、例えば麦、トウモロコシ等の穀物由来のデンプンを用いることができる。また、飲料中のスターチは、後述するように、穀物の焙煎により生成されるスターチであってよい。スターチの茶飲料中の含有量は、170mg/100ml以上であり、190〜260mg/100mlが好ましく、210〜250mg/100mlであることがより好ましい。スターチの含有量がこの範囲であることにより、茶飲料の風味を損なうことなく、上述した難消化性デキストリンによる糊味の抑制効果を発現しやすくなる。または、難消化性デキストリンの含有量に対するスターチの含有量は、質量比で0.085以上であり、質量比で0.100以上0.500以内であることが好ましく、質量比で0.100以上0.485以内であることがより好ましい。スターチの含有量がこの範囲であることにより、茶飲料の風味を損なうことなく、難消化性デキストリンによる糊味の抑制効果を十分に発現することができる。
【0026】
なお、茶飲料中のカフェインの含有量は、超高速液体クロマトグラフィー法(UHPLC法)により測定することができる。カフェインの含有量が0(ゼロ)とは、UHPLC法で測定した際に測定限界未満である場合又はカフェインを含まない場合を意味する。超高速液体クロマトグラフィーの分析条件は実施例に記載の通りである。茶飲料中の難消化性デキストリンの含有量の測定は、「特定保健用食品(規格基準型)制度における規格基準」における別紙「成分規格」の「難消化性デキストリン」の項目における「定量法」において定められた液体クロマトグラフィーを用いた方法により行う(http://www.caa.go.jp/foods/pdf/syokuhin1348.pdf、別紙の3〜4頁を参照)。
茶飲料中のスターチの含有量は、酵素法により特定する。
【0027】
また、本発明の茶飲料は、穀物の抽出液を含むことが好ましい。穀物としては、特に限定されるものではないが、例えば、ハトムギ、大麦、小麦、麦芽等の麦類、玄米等の米類、黒豆等の豆類、トウモロコシ等を用いることができる。これらは単独でも用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。難消化性デキストリンによる糊のような味を抑制する観点から、これら穀物の中でも、麦類が好ましく、特にハトムギや大麦が好ましく用いられる。ハトムギや大麦は、炭水化物栄養価が高く、米や他の麦に比べタンパク質を多く含むため、体内の新陳代謝を活発化させることが知られており、好ましく用いられる。また、ハトムギは、抗潰瘍性成分としてのコイクセノライドと、ひきつけを抑制する成分としてのコイクソールとを含有する。ハトムギの効用としては、抗酸化作用、美肌作用、イボとり作用等が知られており、好ましく用いられる。
【0028】
また、上記穀物は、焙煎された穀物であることが好ましい。穀物を焙煎することにより、穀物に含まれる糖とタンパク質とのメイラード反応が生じやすくなり、香味や褐色が増強され、嗜好性の高い飲料を得ることができる。さらに穀物の焙煎の度合いに応じて、スターチを生成できるため、この穀物由来のスターチによっても、難消化性デキストリンによる糊味を抑制する効果を奏することができる。
【0029】
本発明の茶飲料は、420nmにおける吸光度(OD420nm)が0.2以上1.0以下、0.25以上0.95以下であることがより好ましく、0.3以上0.9以下であることがさらにより好ましい。茶飲料の吸光度(OD420nm)は、焙煎の度合いの指標として用いることができる。420nmにおける吸光度(OD420nm)が上記範囲であることにより、焙煎の度合いが適正で、嗜好性の高い飲料を得ることができる。なお、本実施形態において、吸光度(OD420nm)は、紫外・可視分光強度計(製品名:分光光度計オートシッパ U−5100形、株式会社日立ハイテクノロシリーズ製)により測定した。
【0030】
<焙煎方法>
穀物の焙煎方法は特に限定されず、一般的な焙煎方法を採用可能である。一般的な方法としては、熱風焙煎、砂炒焙煎、遠赤外焙煎等が挙げられる。通常、熱風焙煎が好ましいとされている。これは、熱風焙煎であれば熱伝導効率が良く、表面から中心まで均一に焼けるためである。熱風焙煎で充分に焙煎をすれば、他の焙煎方法を採用する場合と比較して、香ばしく、色の濃い抽出液が得られる傾向にある。
【0031】
また、焙煎の条件も特に限定されず、所望の焙煎の程度に応じて、適宜、焙煎時間や焙煎温度を調整することができる。充分に焙煎された穀物を使用することで、非常に香ばしく且つ色の濃い抽出液を得ることができる。一般的に焙煎時間は3分以上120分以下、焙煎温度は100℃以上400℃以下であるが、穀物の焙煎により生じるスターチは、上述の通り、難消化性デキストリンによる糊のような味を抑制するための指標となる。そのため、焙煎された穀物の抽出液を配合した飲料中のスターチの含有量が、例えば、170mg/100ml以上等になるような焙煎条件(焙煎温度、焙煎時間)により穀物を焙煎してもよい。充分に焙煎された穀物を使用することで、非常に香ばしく且つ色の濃い抽出液を得ることができ、難消化性デキストリンによる糊のような味を抑制する効果も大きい。
【0032】
<抽出方法>
上述した穀物の抽出方法は特に限定されず、水蒸気蒸留、液化炭酸ガス抽出、アルコール抽出、熱水抽出等の従来公知の抽出方法を用いることができる。また、抽出に用いる抽出溶媒の種類は、特に限定されるものではないが、脱イオン交換処理精製したもの又は蒸留水を用いることが好ましい。これらは、安価、手軽であり、且つ安全に調整し抽出設備に供することができる。なお、水以外の抽出溶媒としては、エタノールやその他の親水性有機溶媒が挙げられる。
【0033】
抽出溶媒に対して、抽出効率化の目的で、食品添加物のいわゆる炭酸塩、リン酸塩、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩等を適宜添加してもよい。
【0034】
一度の抽出に用いる、焙煎された穀物の使用量は、特に限定されないが、抽出に用いる水1L当たりの穀物の使用量が少なくなるほど得られる抽出液の量は香味や色が薄くなり、穀物の使用量が多くなるほど得られる抽出液の香味や色は濃くなる。このため、焙煎された穀物から香味や色を引き出すために最適な量に調整することが一般的である。
【0035】
抽出液を得る際の抽出条件は特に限定されないが、抽出条件の中でも抽出温度、抽出時間、pH等の抽出条件は、抽出液に含まれる成分の種類や含有比に影響を与える。
【0036】
抽出温度は特に限定されないが、80℃以上100℃以下であることが好ましい。上記温度範囲で抽出を行えば、抽出効率が高い。抽出時間も特に限定されないが、抽出時間は5分以上1時間以下の範囲内で行うことが好ましい。上記抽出時間で抽出液を得れば、熱による風味変化や香気成分の散逸を抑えつつ、香味や色等の所望の成分を抽出しやすい傾向にある。これにより、嗜好性に優れた茶飲料を得やすく、且つ難消化性デキストリンによる糊のような味を抑制する効果を得られやすい。抽出時のpHも特に限定されるものではないが、pH4以上pH9以下、特にpH5以上pH8以下の範囲で調整することが好ましい。pHが上記範囲にあれば、抽出効率を上昇させることが可能である。
【0037】
なお、抽出方法として、液化炭酸ガス抽出を採用する場合には、抽出温度ではなく抽出圧力が抽出の程度に影響を与える。抽出圧力の条件は特に限定されないが、10MPa以上30MPa以下の範囲から設定されることが好ましい。10MPa未満の条件では圧力が低すぎて、充分に香味や色を引き出せない可能性があるが、上記範囲の抽出圧力であれば、香ばしく色の濃い茶飲料が得やすい。上記範囲の抽出圧力であれば、香ばしく色の濃い嗜好性に優れた茶飲料を得やすく、且つ難消化性デキストリンによる糊のような味を抑制する効果を得られやすい。
【0038】
また、本発明の茶飲料には、例えば、植物葉の抽出液を加えてもよい。植物葉としては、特に限定されるものではないが、例えば、明日葉、グァバ、柿、笹、クコ、よもぎ、アマチャヅル、桑、杜仲葉、シソ、びわ、大麦若葉、仙草、ドクダミ、オオバコ、ギムネマ、ルイボス、ラフマ、タンポポ、ペパーミント、モロヘイヤ、イチョウ、松葉、蓮、及びオリーブ等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これら植物葉は焙煎されたものでもよい。植物葉の抽出や焙煎は、上述の穀物の焙煎方法、抽出方法と同様の方法を用いてもよい。
【0039】
本発明の茶飲料には、上記以外の従来公知のいずれの成分を加えてもよい。このような成分としては、例えば、香料、増粘剤、甘味料、乳化剤、機能性成分、保存料、安定剤、酸化防止剤、ビタミン類、ミネラル分、Ph調整剤等が挙げられる。これらの成分の添加量は、得ようとする効果に応じて適宜調整できる。
【0040】
本発明の茶飲料の提供形態は、特に限定されないが、常温で長期保存可能な状態で容器詰めされることが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET)等のプラスチックボトル、スチールやアルミ等の金属缶、紙パック、パウチ容器等の密閉容器に茶飲料を充填封入して提供することができる。
【0041】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0042】
(実施例1)
下記の表1に示すように、茶飲料中の難消化性デキストリンの含有量が20g/L、焙煎された大麦の含有量が4.0g/L、焙煎されたハトムギの含有量が5.0g/L、焙煎された植物葉(グアバ、明日葉、柿)の含有量が0.4g/Lであり、スターチの含有量が188.7mg/100ml、420nmにおける吸光度が0.283となるように、穀物及び植物葉の抽出液を配合した茶飲料を調整した。なお、穀物(大麦、ハトムギ)及び植物の抽出液を得るに際しては、熱風焙煎法により、焙煎温度200℃、焙煎時間30分で焙煎した後、蒸留水により抽出温度90℃、抽出時間20分で抽出した。なお、茶飲料中のカフェイン量は、超高速液体クロマトグラフィー法(UHPLC法)により下記の分析条件により測定した。
HPLC装置:株式会社島津製作所 超高速液体クロマトグラフィー Nexera
カラム:Agilent ZORBAX EclipsePlus C18 粒子径1.8μm×内径3.0mm×長さ100mm
移動相A:0.17%リン酸含む超純水
移動相B:0.17%リン酸含むメタノール
検出:UV 230nm
試料注入量:3μl
送液量:1.2mL/分
カラムオーブン温度:45℃
測定波長:280nm
【0043】
(実施例2)
茶飲料中のスターチの含有量が212.1mg/100mlで、420nmにおける吸光度が0.396である以外は、実施例1と同様に茶飲料を調整した。なお、本実施例での吸光度の差異は、焙煎強度の差異によるものである。
【0044】
(実施例3)
茶飲料中のスターチの含有量が215.5mg/100mlで、420nmにおける吸光度が0.584である以外は、実施例1と同様に茶飲料を調整した。なお、本実施例での吸光度の差異は、焙煎強度の差異によるものである。
(比較例1)
茶飲料中のスターチの含有量が159.2mg/100mlで、420nmにおける吸光度が0.264である以外は、実施例1と同様に茶飲料を調整した。なお、本実施例での吸光度の差異は、焙煎強度の差異によるものである。
【0045】
【表1】
【0046】
(官能性評価)
実施例1〜3及び比較例1の茶飲料について、訓練されたパネラーによりおいしさ、糊のような味を感じるか、官能性評価を行った。その結果を以下の表2に示す。評価は、おいしさについては、特に感じるものを◎、感じるものを○、感じないものを×とした。糊のような味については、気にならないものを○、若干気になるが、あまり気にならないものを△、気になるものを×とした。
【0047】
【表2】
【0048】
表2の結果から、スターチの含有量が170mg/100ml以上である実施例1〜3では、スターチの含有量が170mg/100ml未満となる比較例1に比べ、難消化性デキストリンによる糊味を気にならないレベルまで低減でき、おいしさの点で優れていることがわかる。