(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、「本実施形態」と略記する)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0014】
本実施形態に係る蓄電デバイス用セパレータ(以下、単に「セパレータ」ともいう)に含まれる樹脂層は、ポリオレフィン微多孔膜上に形成され、下記(a)及び(b):
(a)膨潤状態のイオン伝導率が0.1mS/cm以上10mS/cm以下である熱可塑性ポリマー(以下「(a)」と略記する);及び
(b)スルホニル基を有する熱可塑性ポリマー(以下「(b)」と略記する);
から成る海島状異相構造を有する。
(a)及び(b)の海島状異相構造を有する樹脂層を形成することで、高いイオン伝導性を有し、かつ、電極に対する高い接着剥離強度を有するセパレータを得ることができる。
【0015】
<ポリマー重量比>
本実施形態に係る樹脂層は、(a)と(b)のポリマーが、(a):(b)の重量比で9:1〜1:9の範囲にあることが好ましく、8:2〜6:4の範囲にあることがより好ましい。(a)と(b)のポリマーが前述の重量比で存在することにより、(a)の樹脂層中に、(b)の樹脂が島状に存在するような相分離構造が形成される。これにより、(a)の高いイオン伝導性を有し、電極に対する高い接着剥離強度も有するような樹脂層を有するセパレータを得ることができる。ここで、(a)のポリマーは1種に限らず、2種以上であってもよく、(b)のポリマーも1種に限らず、2種以上を用いてもよい。
【0016】
<海島異相構造>
本実施形態に係る樹脂層は、(a)のポリマーと(b)のポリマーとが面方向に海島状に存在する層である。海島状としては、特に限定されないが、例えば、線状、ドット状、格子目状、縞状、亀甲模様状などが挙げられる。この中でも、イオン伝導性を確保し、かつ電極との均一接着性を確保する観点から、ドット状がより好ましい。特に(a)のポリマーが海状に存在しており、(b)のポリマーがドット状(島状)に存在していることがさらに好ましい。中でも、(b)のポリマーが球状又は粒状であることがより好ましい。これにより、球状又は粒状の(b)の樹脂が、電極に対する接着点となることで、イオンの伝導性を妨げず、高い接着剥離強度を有するセパレータを得ることができる。ここで、球状又は粒状とは、セパレータの厚み方向断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察像もしくはエネルギー分散型X線分析(EDX)観察像にて、(b)のポリマーが球状もしくは粒状の輪郭を持った状態のことを指し、球状であっても、つぶれた球状であっても、多角形状であってもよい。
【0017】
また、(b)のポリマーがドット状に存在する場合、ドットの形状、大きさ及びドットの間隔は、特に限定されないが、イオン伝導性を確保し、かつ電極との均一接着性を確保する観点から、ドットの大きさは0.1μm以上100μm以下、ドットの間隔は0.1μm以上100μm以下であることが好ましく、中でもドットの大きさは0.5μm以上5μm以下、ドットの間隔は0.5μm以上5μm以下であることがより好ましい。
【0018】
熱可塑性ポリマーのドットの平均長径は、ポリマー塗工液のポリマー濃度、ポリマー溶液の塗布量及び塗工方法、又は塗工条件を変更することにより調整することができる。
【0019】
本実施形態に係る樹脂層において、セパレータの最表面に露出している(a)のポリマーと(b)のポリマーの面積比は、特に限定されないが、下式:
Sb(%)=
100×(b)の面積÷{(a)の面積+(b)の面積}
により定義される、(b)のポリマーの露出面積比Sbが、5%以上90%以下であることが好ましく、10%以上40%以下であることがさらに好ましい。
ここで、(a)及び(b)の面積は、セパレータ最表面のSEMまたはEDXによる観察によって測定される。
【0020】
<膨潤状態>
本明細書では、熱可塑性ポリマーが蓄電デバイスの電解液に浸漬され膨潤した状態を以下、「膨潤状態」と略記する。蓄電デバイスの電解液(以下「電解液」と略記する)としては、特に限定されるものではないが、電解質を有機溶媒に溶解した非水電解液を用いることができ、有機溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等が、電解質としては、例えば、LiClO
4、LiBF
4、LiPF
6等のリチウム塩が挙げられる。また、上記電解液には微量の添加剤が含まれていてもよく、添加剤としては、例えばビニレンカーボネートが挙げられる。
【0021】
本実施形態におけるポリマーの膨潤状態とは、本実施形態に係るポリマーが前記の電解液中に浸漬され、電池製造工程で、接着力発現の為に加えられる或る熱履歴を経て、形状変化がそれ以上起こらなくなった状態を指すが、例えば後述するポリスルホン及びポリフッ化ビニリデンの樹脂層を有するセパレータを、100℃の電解液中に2分間浸漬した後、25℃の電解液中に24時間以上浸漬された状態を指す。
【0022】
<高イオン伝導性ポリマー>
(a)高イオン伝導性を有する熱可塑性ポリマーのイオン伝導率は、膨潤状態で0.1mS/cm以上10mS/cm以下であることが好ましく、中でも0.4mS/cm以上10mS/cm以下であることが好ましい。(a)熱可塑性ポリマーのイオン伝導率は、後述する実施例に記載の方法で測定される。
【0023】
(a)高イオン伝導性を有する熱可塑性ポリマーとしては、特に限定されないが、例えば、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素含有ポリマー;ポリビニルピロリドン、アクリルポリマー等が挙げられる。
【0024】
<フッ素含有ポリマー>
フッ素系ポリマーは、特に限定されないが、例えば、フッ化ビニリデンのホモポリマー、これと共重合可能なモノマーとのコポリマーが挙げられる。中でも、フッ化ビニリデンのホモポリマー、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレンコポリマー、フッ化ビニリデン/テロラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー等が好ましい。
【0025】
<アクリルポリマー>
アクリルポリマーは、特に限定されないが、例えば、アクリレートモノマー又はメタクリレートモノマーを重合して成るモノマー単位を含むポリマーが挙げられる。
【0026】
<スルホニル基を有する熱可塑性ポリマー>
本実施形態に係る(b)熱可塑性ポリマーは、スルホニル基を有する。スルホニル基はリチウムイオン電池の活物質と相互作用の強い官能基である。これにより、リチウムイオン電池中で熱可塑性ポリマーは電極活物質に強固に接着し、電極に対する高い接着剥離強度を実現することができる。接着剥離強度の求め方は後述の実施例で説明する。
【0027】
(b)スルホニル基を有する熱可塑性ポリマーとしては、特に限定されないが、ポリスルホン系の樹脂が好ましく、中でも、ポリスルホン、ポリフェニルスルホンが特に好ましい。
【0028】
(b)熱可塑性ポリマーの分子量としては、特に限定されるものではないが、ワニス溶媒への溶解性及び成膜性の観点から、重量平均分子量が10万以上100万以下であることが好ましい。前記分子量は、後述の実施例に示された方法で測定することができる。
【0029】
<ポリオレフィン微多孔膜>
本実施形態に係るポリオレフィン微多孔膜について説明する。本実施形態に係るポリオレフィン微多孔膜としては、特に限定されないが、例えば、ポリオレフィンを含有するポリオレフィン樹脂組成物から構成される多孔膜が挙げられ、ポリオレフィン樹脂を主成分とする多孔膜であることが好ましい。本実施形態では、ポリオレフィン微多孔膜は、ポリオレフィン樹脂の含有量について特に限定されないが、蓄電デバイス用セパレータとして用いた場合のシャットダウン性能などの点から、多孔膜を構成する全成分の質量分率の50%以上100%以下をポリオレフィン樹脂が占めるポリオレフィン樹脂組成物から成る多孔膜であることが好ましい。ポリオレフィン樹脂が占める割合は60%以上100%以下がより好ましく、70%以上100%以下であることが更に好ましい。
【0030】
ポリオレフィン樹脂とは、特に限定されないが、通常の押出、射出、インフレーション、ブロー成形等に使用するポリオレフィン樹脂をいい、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のホモポリマー及びコポリマー、並びに多段ポリマーを使用することができる。また、これらのホモポリマー及びコポリマー、並びに多段ポリマーから成る群から選ばれるポリオレフィンを単独で、又は混合して使用することもできる。
【0031】
ポリオレフィン樹脂の代表例としては、特に限定されないが、例えば、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、アタクティックポリプロピレン、エチレン−プロピレンランダムコポリマー、ポリブテン、エチレンプロピレンラバー等が挙げられる。
【0032】
本実施形態に係るセパレータを電池セパレータとして使用する場合には、低融点であり、かつ高強度であることから、特に高密度ポリエチレンを主成分とする樹脂を使用することが好ましい。
【0033】
また、多孔膜の耐熱性向上の観点から、ポリプロピレンと、ポリプロピレン以外のポリオレフィン樹脂を含む樹脂組成物から成る多孔膜を用いることがより好ましい。
【0034】
ここで、ポリプロピレンの立体構造に限定はなく、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン及びアタクティックポリプロピレンのいずれでもよい。
【0035】
ポリオレフィン樹脂組成物中の総ポリオレフィンに対するポリプロピレンの割合は、特に限定されないが、耐熱性と良好なシャットダウン機能の両立の観点から、1〜35質量%であることが好ましく、より好ましくは3〜20質量%、さらに好ましくは4〜10質量%である。
この場合、ポリプロピレン以外のポリオレフィン樹脂に限定はなく、例えば、エチレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のオレフィン炭化水素のホモポリマー又はコポリマーが挙げられる。具体的には、ポリプロピレン以外のポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリブテン、エチレン−プロピレンランダムコポリマー等が挙げられる。
微多孔膜の孔が熱溶融により閉塞するシャットダウン特性の点から、ポリプロピレン以外のポリオレフィン樹脂として、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン等のポリエチレンを用いることが好ましい。これらの中でも、強度の観点から、JIS K 7112に従って測定した密度が0.93g/cm
3以上であるポリエチレンを使用することがより好ましい。
【0036】
ポリオレフィン微多孔膜を構成するポリオレフィン樹脂の粘度平均分子量は、特に限定されないが、3万以上1200万以下であることが好ましく、より好ましくは5万以上200万未満、さらに好ましくは10万以上100万未満である。粘度平均分子量が3万以上であると、溶融成形の際のメルトテンションが大きくなり成形性が良好になると共に、ポリマー同士の絡み合いにより高強度となる傾向にあるため好ましい。一方、粘度平均分子量が1200万以下であると、均一に溶融混練をすることが容易となり、シートの成形性、特に厚み安定性に優れる傾向にあるため好ましい。さらに、粘度平均分子量が100万未満であると、温度上昇時に孔を閉塞し易く、良好なシャットダウン機能が得られる傾向にあるため好ましい。なお、例えば、粘度平均分子量100万未満のポリオレフィンを単独で使用する代わりに、粘度平均分子量200万のポリオレフィンと粘度平均分子量27万のポリオレフィンの混合物であって、その粘度平均分子量が100万未満の混合物を用いてもよい。
【0037】
本実施形態におけるポリオレフィン微多孔膜は、任意の添加剤を含有することができる。このような添加剤は、特に限定されず、例えば、ポリオレフィン以外のポリマー;無機粒子;フェノール系、リン系、イオウ系等の酸化防止剤;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸類;紫外線吸収剤;光安定剤;帯電防止剤;防曇剤;着色顔料等が挙げられる。
【0038】
これらの添加剤の合計含有量は、ポリオレフィン樹脂組成物100質量部に対して、0.001質量部以上、20質量部以下であることが好ましく、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
【0039】
<塗工層>
本実施形態に係る熱可塑性ポリマー樹脂層は、ポリオレフィン微多孔膜上に海島異相構造を形成しており、イオン伝導性を確保しつつ、高い接着剥離強度を実現することができる。それらの観点から、塗工目付量は、0.05g/m
2以上5.0g/m
2以下であることが好ましく、ポリオレフィン微多孔膜と樹脂層の合計厚みは5μm以上25μm以下であることが好ましい。
【0040】
本実施例の樹脂層は、有機物及び/又は無機物で構成されるフィラーを含んでいてもよい。
【0041】
<ポリマー溶解方法>
本実施形態に係る熱可塑性ポリマーは、塗工に先立ち溶媒に溶解される。溶解方法は特に限定しないが、ポリフェニルスルホンのポリマー溶液を作る場合、ポリマーと溶媒を所定の容器に入れ、撹拌しながら溶解する。ポリマーが常温で溶解しない場合、ポリマーを加熱することにより溶解させる。
【0042】
溶媒の種類は、熱可塑性ポリマーが可溶である溶媒であれば特に限定されるものではないが、例えばポリマーがポリフェニルスルホンの場合は、具体的には、N−メチル−2−ピロリドン(以下「NMP」と略記する)等のN−アルキルピロリドン類;及びN,N−ジメチルアセトアミド(以下「DMAc」と略記する)、N,N−ジメチルホルムアミド(以下「DMF」と略記する)等の鎖状アミド系溶媒の中から選ばれる少なくとも一種の溶媒が挙げられる。中でも、溶解性と工業的ハンドリング性の観点から、N−メチル−2−ピロリドンが好ましい。
【0043】
溶解温度は、使用する溶媒の種類又はポリマーの比率によって異なるが、通常は10℃以上100℃以下、好ましくは20℃以上30℃以下である。
【0044】
溶解時間は、溶媒の種類、ポリマーの比率、又は溶解温度によって異なるが、通常、1時間〜24時間の範囲である。
【0045】
<ポリマーブレンド方法>
本実施形態に係る熱可塑例ポリマーは、前記の溶解工程を経た後、複数種類がブレンドされる。ブレンド方法は特に限定されるものではないが、溶媒種及びポリマー濃度を同一として混合し撹拌することが好ましい。またブレンド工程では相溶化剤を用いてもよい。
【0046】
前記ブレンド工程後の溶液中の(a)と(b)のポリマー濃度比は、重量比で9:1〜1:9の範囲にあることが好ましく、8:2〜6:4の範囲にあることがより好ましい。
【0047】
<塗工方法>
前記ブレンド後の熱可塑性ポリマー溶液をポリオレフィン微多孔膜に塗工する方法に関して、本実施形態において好ましい目付量、厚み、及び/又は透気度を実現できる方法であれば特に限定はない。塗工方法としては、例えば、グラビアコーター法、小径グラビアコーター法、リバースロールコーター法、トランスファーロールコーター法、キスコーター法、ディップコーター法、ナイフコーター法、エアドクターコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、スクイズコーター法、キャストコーター法、ダイコーター法、スクリーン印刷法、スプレー塗布法、スプレーコーター塗布法、インクジェット塗布が挙げられる。これらのうち、熱可塑性ポリマーの塗工形状の自由度が高く、好ましい面積割合を容易に得られる点でグラビアコーター法又はスプレー塗布法が好ましい。
【0048】
塗布後に塗布膜から溶媒を除去する方法については、多孔膜に悪影響を及ぼさない方法であれば特に限定はないが、塗布膜を熱可塑性ポリマーの貧溶媒中に浸漬し、熱可塑性ポリマーを凝固及び相分離させると同時に溶媒を抽出する方法が挙げられる。
【0049】
<貧溶媒>
貧溶媒は、ポリマー溶液に使用される溶媒の種類又はポリマーの種類によって異なるが、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール系溶媒、水などであり、中でも工業的ハンドリング性の観点から、水が好ましい。
【0050】
また、凝固後の塗膜の均一性の観点から、貧溶媒はポリマー溶液の溶媒と均一に混ざり合う溶媒であることが好ましい。ここで「均一に混ざり合う」とは、2つ以上の溶媒を混合して1日静置しても界面が現れないことをいう。例えば、NMPに対しては、水が均一に混ざり合う溶媒として挙げることができる。
【0051】
また貧溶媒は、ポリマー溶解で使用する溶媒と均一に混ざり合うならば、単一の溶媒を用いてもよいし、2種類以上の溶媒を混合して用いてもよいが、凝固後の塗膜の均一性の観点から、水もしくは水とNMPの混合溶媒を用いるのが好ましい。
【0052】
上記で説明された方法により製造された本実施形態に係るセパレータは、電極との密着性とハンドリング性に優れ、蓄電デバイス用セパレータとして好適に使用できる。
【0053】
<剥離強度>
本実施形態に係るセパレータは、電解液の存在下で電極と積層され、所定の温度と圧力を加えることで、電極との接着力を発現する。温度100℃及び圧力10MPaでセパレータを正極及び負極と2分間加圧した後の90°剥離強度は、それぞれ3gf/cm以上が好ましい。また、90°剥離試験後のセパレータ表面に電極活物質が転写し、面積割合に換算して10%以上付着することが好ましい。90°剥離強度は、実施例の記載の方法により測定することができる。
【0054】
剥離強度が上記の範囲にあるセパレータは、後述の蓄電デバイスへ適用する際に、電極とセパレータとの密着性に優れる点で好ましい。
【0055】
<塗工目付>
蓄電デバイス用のセパレータの樹脂層の目付量は、接着剥離強度とイオン伝導度の観点から、好ましくは0.05g/m
2以上5.0g/m
2以下、より好ましくは0.1g/m
2以上3.0g/m
2以下、さらに好ましくは0.5g/m
2以上2.0g/m
2以下である。
【0056】
<膜厚>
蓄電デバイス用のセパレータの膜厚は、膜強度確保とイオン伝導度の観点から、好ましくは5μm以上25μm以下、より好ましくは8μm以上20μm以下、さらに好ましくは10μm以上15μm以下である。この膜厚は、セパレータが、上記で説明されたポリオレフィン微多孔膜と上記で説明された樹脂層から成る場合にはオレフィン微多孔膜の最大厚と樹脂層の最大厚の合計値でよく、セパレータがポリオレフィン微多孔膜及び樹脂層以外の層を含む場合には、セパレータの最大厚でよい。
【0057】
<積層体>
本実施形態に係る積層体は、前記セパレータと電極とが積層したものである。本実施形態に係るセパレータは、電極と接着することにより積層体として用いることができる。ここで、「接着」とは、セパレータと電極との90°剥離強度が3gf/cm以上であることを言う。
【0058】
積層体は、捲回時のハンドリング性及び蓄電デバイスのレート特性が優れ、さらには、熱可塑性ポリマーとポリオレフィン微多孔膜との接着性及び透過性にも優れる。そのため、積層体の用途としては、特に限定されないが、例えば、非水電解液二次電池等の電池、又はコンデンサー、キャパシタ等の蓄電デバイス等に好適に使用できる。
【0059】
本実施形態に係る積層体に用いられる電極としては、後述の蓄電デバイスの項目に記載される電極を用いることができる。
【0060】
本実施形態に係るセパレータを用いて積層体を製造する方法は、特に限定されないが、例えば、本実施形態に係るセパレータと電極とを重ね、必要に応じて加熱及び加圧して、製造することができる。また、電極とセパレータとを重ねた後に、円又は扁平な渦巻き状に捲回して得られる捲回体に対して加熱及び加圧することで製造することもできる。
【0061】
また、積層体は、正極−セパレータ−負極−セパレータ、又は負極−セパレータ−正極−セパレータの順に平板状に積層し、必要に応じて加熱及び/又はプレスして製造することもできる。
【0062】
より具体的には、本実施形態に係るセパレータを幅10mm〜500mm(好ましくは80mm〜500mm)、長さ200m〜4000m(好ましくは1000m〜4000m)の縦長形状のセパレータとして調製し、調製されたセパレータを、正極−セパレータ−負極−セパレータ、又は負極−セパレータ−正極−セパレータの順で重ね、必要に応じて加熱及び加圧して製造することができる。
【0063】
積層体又は捲回体の加熱温度は40℃〜120℃であることが好ましい。積層体又は捲回体の加熱時間は5秒〜30分であることが好ましい。積層体又は捲回体の加圧圧力は1MPa〜30MPaであることが好ましい。積層体又は捲回体の加圧時間は5秒〜30分であることが好ましい。
【0064】
<蓄電デバイス>
本実施形態に係るセパレータは、電池、コンデンサー、キャパシタ等におけるセパレータ又は物質の分離に用いることができる。特に、セパレータを非水電解液電池のために用いた場合に、電極への密着性と優れた電池性能を付与することが可能である。
【0065】
以下、蓄電デバイスが非水電解液二次電池である場合についての好適な態様を説明する。
【0066】
本実施形態に係るセパレータを用いて非水電解液二次電池を製造する場合、正極、負極、及び非水電解液に限定はなく、公知のものを用いることができる。
【0067】
<電極>
非水電解液二次電池の正極材料は、特に限定されないが、例えば、LiCoO
2、LiNiO
2、スピネル型LiMnO
4、オリビン型LiFePO
4等のリチウム含有複合酸化物等が挙げられる。
【0068】
負極材料は、特に限定されないが、例えば、黒鉛質、難黒鉛化炭素質、易黒鉛化炭素質、複合炭素体等の炭素材料;シリコン、スズ、金属リチウム、各種合金材料等が挙げられる。
【0069】
非水電解液は、特に限定されないが、電解質を有機溶媒に溶解した電解液を用いることができ、有機溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等が、電解質としては、例えば、LiClO
4、LiBF
4、LiPF
6等のリチウム塩が挙げられる。
【0070】
本実施形態に係るセパレータを用いて蓄電デバイスを製造する方法は、特に限定されないが、蓄電デバイスが二次電池の場合、例えば、本実施形態に係るセパレータを幅10〜500mm(好ましくは80〜500mm)、長さ200〜4000m(好ましくは1000〜4000m)の縦長形状のセパレータとして調製し、調製されたセパレータを、正極−セパレータ−負極−セパレータ、又は負極−セパレータ−正極−セパレータの順で重ね、円又は扁平な渦巻状に捲回して捲回体を得て、得られた捲回体を電池缶内に収納し、更に電解液を注入することで製造することができる。この際、捲回体に対して加熱及び加圧を行うことで上述の積層体を形成してもよい。また、上記捲回体として上述の積層体を円又は扁平な渦巻き状に捲回したものを用いて製造することもできる。また、蓄電デバイスは、正極−セパレータ−負極−セパレータ、又は負極−セパレータ−正極−セパレータの順に平板状に積層したもの、又は上述の積層体を袋状のフィルムでラミネートし、電解液を注入する工程と、場合によって加熱及び/又はプレスを行う工程を経て製造することもできる。上記の加熱及び/又はプレスを行う工程は、前記電解液を注入する工程の前および/または後に行うことができる。
【0071】
<レート特性>
本実施形態に係るセパレータを用いた非水系電解液二次電池は、良好なレート特性を提供することができる。特に非水系電解液二次電池が高いイオン伝導性を有することで、レート特性に優れるものである。ここで、本明細書におけるレート特性は、後述する実施例における測定法に準じて測定される値である。
【0072】
なお、上述した各種パラメータの測定値については、特に断りの無い限り、後述する実施例における測定法に準じて測定される値である。
【実施例】
【0073】
以下、実施例及び比較例について説明する。なお、本実施形態はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定するものではない。
なお、実施例中の物性は以下の方法により測定した。
【0074】
(1)粘度平均分子量(Mv)
ASTM−D4020に基づき、デカリン溶剤における135℃での極限粘度[η]を求め、ポリエチレンのMvは次式により算出した。
[η]=6.77×10
−4×Mv
0.67
ポリプロピレンのMvは次式より算出した。
[η]=1.10×10
−4Mv
0.80
【0075】
(2)重量平均分子量(Mw)
熱可塑性ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、下記の条件により測定した。
溶媒:N,N−ジメチルホルムアミド(和光純薬工業社製、高速液体クロマトグラフ用)に対して、測定直前に24.8mmol/Lの臭化リチウム一水和物(和光純薬工業社製、純度99.5%)、及び63.2mmol/Lのリン酸(和光純薬工業社製、高速液体クロマトグラフ用)を加えたもの
検量線:スタンダードポリスチレン(東ソー社製)を用いて作成
カラム:TSK−GEL SUPER HM−H
流速:0.5ml/分
カラム温度:40℃
ポンプ:PU−2080(JASCO社製)
検出器:RI−2031Plus(RI:示差屈折計、JASCO社製)及びUV−2075Plus(UV−VIS:紫外可視吸光計、JASCO社製)
【0076】
(3)膜厚(μm)
セパレータから10cm×10cmのサンプルを切り出し、格子状に9箇所(3点×3点)を選んで、膜厚を微小測厚器(東洋精機製作所(株) タイプKBM)を用いて室温23±2℃で測定した。9箇所の測定値の平均値をセパレータの膜厚(μm)とした。
【0077】
(4)90°剥離強度(gf/mm)
a.正極の作成
正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO
2)を92.2質量%、導電材としてリン片状グラファイトとアセチレンブラックをそれぞれ2.3質量%、及びバインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)3.2質量%をN−メチルピロリドン(NMP)中に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを正極集電体となる厚さ20μmのアルミニウム箔の片面にダイコーターで塗布し、130℃で3分間乾燥後、ロールプレス機で圧縮成形した。この時、正極の活物質塗布量は250g/m
2、活物質嵩密度は3.00g/cm
3になるようにした。
【0078】
b.負極の作成
負極活物質として人造グラファイト96.9質量%、及びバインダーとしてカルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩1.4質量%とスチレン−ブタジエン共重合体ラテックス1.7質量%を精製水中に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを負極集電体となる厚さ12μmの銅箔の片面にダイコーターで塗布し、120℃で3分間乾燥後、ロールプレス機で圧縮成形した。この時、負極の活物質塗布量は106g/m
2、活物質嵩密度は1.35g/cm
3になるようにした。
【0079】
c.90°剥離強度(gf/mm)測定
上記正極及び負極を幅20mm、長さ40mmにカットする。この電極上にエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートを1:2の比率(体積比)にて混合し、LiPF
6を1mol/Lの濃度で溶解した電解液を電極が浸る程度にたらし、この上にセパレータを重ねた。この積層体をアルミジップに入れ、100℃及び10MPaの条件下で、2分間プレスを行うことで試験用サンプルを得た。得られたサンプルの90°剥離強度を、イマダ(株)製の縦型電動計測スタンドMX−500Nを用いて、JIS Z 0237に準じて引張速度10mm/分で測定した。正極及び負極のそれぞれに対して、前記セパレータの剥離強度を下記評価基準で評価した。
○(良好):剥離強度が、3gf/mm以上
△(許容):剥離強度が、1gf/mm以上3gf/mm未満
×(不良):剥離強度が、1gf/mm未満
【0080】
(5)密着性試験
上記で説明された90°剥離強度(gf/mm)測定方法において、電極から剥した後のセパレータについて、セパレータ表面に転写している電極活物質の付着面積割合より、密着性を評価した。
○(良好):セパレータの30%以上に電極活物質が付着した場合。
△(許容):セパレータの10%以上30%未満に電極活物質が付着した場合。
×(不良):セパレータの10%未満に電極活物質が付着した場合。
【0081】
(6)レート特性(%)
セパレータと、90°剥離強度(gf/mm)測定のために作製された電極との積層体を作製する。この積層体をアルミジップに入れ、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートを1:2の比率(体積比)にて混合し、LiPF
6を1mol/Lの濃度で溶解した電解液を注液し、100℃及び10MPaの条件下で、2分間プレスを行うことで非水系二次電池を作製した。
【0082】
得られた電池について、東洋テクニカ(株)製のポテンショ/ガルバノスタットを使用し、後述の手順でレート特性を評価した。
【0083】
0.2Cの電流値で電池電圧が4.20Vになるまで定電流充電を行い、次いで4.20Vでの定電圧充電を行う定電流−定電圧充電を行った。なお、充電終了までの総充電時間は15時間とした。
【0084】
次いで、0.5Cの電流値で電池電圧が3Vになるまで定電流放電を行って、放電容量を求めた(これらの容量を「0.5C放電容量」という。)。次いで、前記と同じ条件で定電流−定電圧充電を行った後、2Cの電流値で電池電圧が3Vになるまで放電を行って、放電容量を求めた(これらの容量を「2C放電容量」という。)。
得られた放電容量より、放電容量維持率を以下の式に基づいて求めた。
【数1】
【0085】
得られた放電容量維持率をレート特性の指標として、レート特性を下記の基準で評価した。
○(良好):放電容量維持率(2C)が、80%以上
△(許容):放電容量維持率(2C)が、60%以上80%未満
×(不良):放電容量維持率(2C)が、60%未満
【0086】
(7)引張弾性率(MPa)
熱可塑性ポリマーの塗工ポリマー溶液を、ガラス基板上にバーコーターを用いて塗工し、乾燥及び減圧乾燥させることにより、溶媒を除去し、厚み0.03mmの熱可塑性ポリマー無孔膜を得た。尚、ポリマー溶液は後述する各々の熱可塑性ポリマーのセパレータ製造例に記載する方法で調製することができる。
【0087】
前記熱可塑性ポリマー無孔膜を100℃の電解液に2分間浸漬した後、電解液に浸漬させた状態で25℃に冷却し24時間保持し、電解液に膨潤させた。ここで浸漬時の樹脂無孔膜と電解液の比率は、無孔膜が10質量部、電解液が90質量部とした。膨潤状態の膜を、幅10mm、長さ80mmにカットし、測定用サンプルを得た。尚、電解液は、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートを1:2の比率(体積比)にて混合した溶媒に、LiPF
6を1mol/L溶解した物を用いた。
【0088】
測定用サンプルの引張弾性率を、イマダ(株)製の縦型電動計測スタンドMX−500Nを用いて測定した。サンプルはチャック間を30mmとし、測定は温度25℃、引張速度30mm/分で行った。
引張弾性率(MPa)は、応力−歪曲線において、伸度が1〜4%間の近似直線の傾きを求め、試験前のサンプルの断面積で除することで求めた。ここで伸度(%)は、伸び量をチャック間距離で除して、100を乗じる事で求めた。
【0089】
(8)イオン伝導率(mS/cm)
上記で説明された引張弾性率(MPa)の測定方法に従って、前記ポリマー無孔膜を100℃の電解液に2分間浸漬した後、電解液に浸漬させた状態で25℃に冷却し24時間保持し、電解液に膨潤させた。膨潤状態のポリマー無孔膜を2枚のステンレス鋼板で挟み、電解液を注液し、2枚のステンレス鋼板がそれぞれコインセルの正極端子、負極端子に電気的に接続される様にコインセルに組んだ。その様なセルを、ポリマー無孔膜を入れる枚数を1枚、2枚、3枚と変えて作り分けた。
【0090】
25℃の室内にて、交流インピーダンス法によって、振幅10mVで周波数1MHz〜100Hzの交流インピーダンスを測定した。ナイキスト線図において、得られた波形の実軸との交点の値(実軸切片)を読み取り、セルのバルク抵抗を求めた。測定されたセルのバルク抵抗値に、ポリマー無孔膜の有効面積を乗じて面積当たりの抵抗値に換算し、その値をポリマー無孔膜の枚数に対してプロットした近似直線の傾きで、ポリマー無孔膜1枚当たりの抵抗値を求めた。さらに、セパレータ1枚当たりの抵抗値を、ポリマー無孔膜面積及び膜厚により規格化することで、ポリマーのイオン伝導率を求めた。
【0091】
<実施例1>
粘度平均分子量25万、融点137℃の高密度ポリエチレン1を14.25質量部、粘度平均分子量70万、融点137℃の高密度ポリエチレン2を14.25質量部、粘度平均分子量40万、融点163℃のポリプロピレン1.5質量部、及び酸化防止剤としてテトラキス−[メチレン−(3’、5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを0.2質量部配合し原料配合物を調製した。
【0092】
各配合物は口径25mmL/D=48の二軸押出機フィーダーを介して投入した。さらに、流動パラフィン68質量部をサイドフィードでそれぞれの押出機に注入し、押出量が1時間当たり16kgとなるように調整し、200℃及び200rpmの条件下で混練した後、Tダイから200℃の条件で押出した。ただちに、40℃に調温したキャストロールで押出物を冷却固化させ、所望の厚みのシートを成形した。このシートを同時二軸延伸機にて123℃で7×7倍に延伸した。その後、延伸シートを塩化メチレンに浸漬して、流動パラフィンを抽出除去した後に乾燥し、テンター延伸機により横方向に127℃で1.4倍に延伸した。その後、この延伸シートを幅方向に緩和して熱処理を行い、ポリオレフィン微多孔膜を得た。その際、緩和率は13%とした。
【0093】
(塗工ポリマー溶液の調製)
重量平均分子量70万、ガラス転移点186℃のポリスルホンを5質量部と、N−メチルピロリドンを95質量部とを混合し、25℃にて24時間撹拌し溶解して、ポリスルホン溶液を得た。重量平均分子量100万、ガラス転移点−34℃のポリフッ化ビニリデンを5質量部と、N−メチルピロリドン95質量部とを混合し、25℃にて24時間撹拌し溶解して、ポリフッ化ビニリデン溶液を得た。ポリフッ化ビニリデン溶液70質量部と、ポリスルホン溶液30質量部とを混合し、25℃にて1時間撹拌して、塗工ポリマー溶液を得た。
【0094】
上記で得られたポリオレフィン微多孔膜上に、前述の調製法で得た塗工ポリマー溶液をバーコーターを用いて塗布し、水95質量部とN−メチルピロリドン5質量部を混合した凝固液中に浸漬することで、ポリマーを凝固させ、溶媒を抽出した。60℃にて凝固体を乾燥して水を除去した。さらに、乾燥後の凝固体のもう片面にも同様にして塗工液を塗工、凝固、乾燥させた後、60℃及び−0.1MPaの条件下で減圧乾燥させることにより、蓄電デバイス用セパレータを得た。得られたセパレータの物性及び評価結果は表1に示す。ここで特筆すべきことは、表2に示される様に、ポリスルホン又はポリフッ化ビニリデンの様な単体では引張弾性率の低い樹脂でも、本実施例の様に海島異相構造とすることで、理由は定かではないが接着力を発現する事である。
【0095】
得られたセパレータの表面について、(株)日立ハイテクノロジーズ社製、電界放出形走査電子顕微鏡SU−8220を用いて、加速電圧0.5kVでSEM測定を行った。得られたSEM観察像を
図1に示す。海状の(a)ポリフッ化ビニリデン及び島状の(b)ポリスルホンから成る樹脂層の海島状異相構造が確認される。ポリフッ化ビニリデンとポリスルホンの露出面積比Sbは11%であった。
【0096】
さらに、前記セパレータを正極及び負極と積層し、この積層体をアルミジップに入れ、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートを1:2の比率(体積比)にて混合し、LiPF
6を1mol/Lの濃度で溶解した電解液を注液し、100℃及び10MPaの条件下で、2分間プレスを行うことで非水系二次電池を得た。得られた非水系二次電池のレート特性の評価結果は表1に示す。また、得られた非水系二次電池のセパレータと負極の界面部の断面を(株)日立ハイテクノロジーズ社製イオンミリング装置E−3500plusを用いて、BIB(Broad Ion Beam)加工により露出させ、(株)日立ハイテクノロジーズ社製、電界放出形走査電子顕微鏡SU−8220を用いて、加速電圧1.0kVでSEM測定を行った。得られたSEM観察像を
図2に示す。
図2から、セパレータと負極の界面と、海状の(a)ポリフッ化ビニリデン及び島状(球状)の(b)ポリスルホンから成る樹脂層の海島状異相構造とが確認される。
【0097】
<実施例2>
塗工ポリマー溶液を、下記の方法によって得た以外は、実施例1と同様にして、蓄電デバイス用セパレータ及び非水系二次電池を得た。得られたセパレータの物性及び評価結果、並びに非水系二次電池の評価結果を表1に示す。
【0098】
(塗工ポリマー溶液の調製)
重量平均分子量55万、ガラス転移点220℃のポリフェニルスルホンを5質量部、及びN−メチルピロリドンを95質量部混合し、25℃にて24時間撹拌し溶解して、ポリフェニルスルホン溶液を得た。重量平均分子量100万、ガラス転移点−34℃のポリフッ化ビニリデンを5質量部、N−メチルピロリドン95質量部混合し、25℃にて24時間撹拌し溶解して、ポリフッ化ビニリデン溶液を得た。ポリフッ化ビニリデン溶液70質量部とポリフェニルスルホン溶液30質量部を混合し、25℃にて1時間撹拌し、塗工ポリマー溶液を得た。
【0099】
<比較例1>
塗工ポリマー溶液を、下記の方法によって得た以外は、実施例1と同様にして、蓄電デバイス用セパレータ及び非水系二次電池を得た。得られたセパレータの物性及び評価結果、並びに非水系二次電池の評価結果を表1に示す。また得られた塗工ポリマー溶液を塗工して得た無孔膜の膨潤状態の引張弾性率及びイオン伝導率を表2に示す。
【0100】
(塗工ポリマー溶液の調製)
重量平均分子量100万、ガラス転移点−34℃のポリフッ化ビニリデン5質量部を、N−メチルピロリドン95質量部と混合し、25℃にて24時間撹拌し、塗工ポリマー溶液を得た。
【0101】
<比較例2>
塗工ポリマー溶液を、下記の方法によって得た以外は、実施例1と同様にして、蓄電デバイス用セパレータ及び非水系二次電池を得た。得られたセパレータの物性及び評価結果、並びに非水系二次電池の評価結果を表1に示す。また得られた塗工ポリマー溶液を塗工して得た無孔膜の膨潤状態の引張弾性率及びイオン伝導率を表2に示す。
【0102】
(塗工ポリマー溶液の調製)
重量平均分子量70万、ガラス転移点186℃のポリスルホン10質量部を、N−メチルピロリドン90質量部と混合し、25℃にて24時間撹拌し、塗工ポリマー溶液を得た。
【0103】
<比較例3>
塗工ポリマー溶液を、下記の方法によって得た以外は、実施例1と同様にして、蓄電デバイス用セパレータ及び非水系二次電池を得た。得られたセパレータの物性及び評価結果、並びに非水系二次電池の評価結果を表1に示す。
【0104】
(塗工ポリマー溶液の調製)
重量平均分子量100万、ガラス転移点−34℃のポリフッ化ビニリデン5質量部とN−メチルピロリドン95質量部を混合し、25℃にて24時間撹拌し溶解して、ポリフッ化ビニリデン溶液を得た。重量平均分子量15万、ガラス転移点94℃のポリアクリロニトリル5質量部とN−メチルピロリドン95質量部を混合し、25℃にて24時間撹拌し溶解して、ポリアクリロニトリル溶液を得た。ポリフッ化ビニリデン溶液70質量部とポリアクリロニトリル溶液30質量部を混合し、25℃にて1時間撹拌し、塗工ポリマー溶液を得た。
【0105】
<比較例4>
塗工ポリマー溶液を、下記の方法によって得た以外は、実施例1と同様にして、蓄電デバイス用セパレータ及び非水系二次電池を得た。得られたセパレータの物性及び評価結果、並びに非水系二次電池の評価結果を表1に示す。
【0106】
(塗工ポリマー溶液の調製)
重量平均分子量15万、ガラス転移点94℃のポリアクリロニトリル5質量部とN−メチルピロリドン95質量部を混合し、25℃にて24時間撹拌し溶解して、ポリアクリロニトリル溶液を得た。重量平均分子量70万、ガラス転移点186℃のポリスルホン5質量部を、N−メチルピロリドン95質量部と混合し、25℃にて24時間撹拌し溶解して、ポリスルホン溶液を得た。ポリアクリロニトリル溶液70質量部とポリスルホン溶液30質量部を混合し、25℃にて1時間撹拌し、塗工ポリマー溶液を得た。
【0107】
<比較例5>
塗工ポリマー溶液を、下記の方法によって得た以外は、実施例1と同様にして、蓄電デバイス用セパレータを得た。得られたセパレータの物性及び評価結果を表2に示す。また得られた塗工ポリマー溶液を塗工して得た無孔膜の膨潤状態の引張弾性率及びイオン伝導率を表2に示す。
【0108】
重量平均分子量55万、ガラス転移点220℃のポリフェニルスルホンを10質量部、及びN−メチルピロリドンを90質量部混合し、25℃にて24時間撹拌し、塗工ポリマー溶液を得た。
【0109】
<比較例6>
塗工ポリマー溶液を、下記の方法によって得た以外は、実施例1と同様にして、蓄電デバイス用セパレータを得た。得られたセパレータの物性及び評価結果を表2に示す。また得られた塗工ポリマー溶液を塗工して得た無孔膜の膨潤状態の引張弾性率及びイオン伝導率を表2に示す。
【0110】
(塗工ポリマー溶液の調製)
重量平均分子量15万、ガラス転移点94℃のポリアクリロニトリル10質量部とN−メチルピロリドン90質量部を混合し、25℃にて24時間撹拌し溶解し、塗工ポリマー溶液を得た。
【0111】
下記表1に本実施例及び比較例のセパレータ及び非水系二次電池の物性及び評価結果を示す。下記表2に、本実施例及び比較例で用いた樹脂を1種で用いた場合のセパレータの評価結果及び樹脂の物性評価結果を示す。
【0112】
【表1】
【0113】
【表2】