(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6723072
(24)【登録日】2020年6月25日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】塵芥収集車の塵芥投入箱
(51)【国際特許分類】
B65F 3/00 20060101AFI20200706BHJP
B60P 3/00 20060101ALI20200706BHJP
【FI】
B65F3/00 B
B60P3/00 Q
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-101511(P2016-101511)
(22)【出願日】2016年5月20日
(65)【公開番号】特開2017-206380(P2017-206380A)
(43)【公開日】2017年11月24日
【審査請求日】2018年10月16日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】弘津 智史
【審査官】
石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】
実用新案登録第2514011(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65F 3/00−3/28
B60P 1/273
B60P 3/00
B62D 33/037
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塵芥収集車の塵芥収容箱に連設され、塵芥投入口から投入された塵芥を該塵芥収容箱に押し込む塵芥積込装置が内蔵された塵芥収集車の塵芥投入箱において、
上記塵芥投入口の上方に設けられ、車幅方向に延びる上端部の揺動軸を中心に開閉可能なルーフカバーと、
該塵芥投入口と該ルーフカバーとの間に設けられて車幅方向に延びる後面スペース部と、
上記ルーフカバーを閉じた状態で、該ルーフカバーの下端部を上記後面スペース部に固定するロック機構とを備え、
上記ロック機構は、
上記ルーフカバーの回動方向と直交する方向を締付方向とすると共に上記後面スペース部に取り付けられる留め金具を有し、
上記留め金具は、上記後面スペース部の車幅方向両側に設けられる被係合部と、該被係合部に引っ掛ける係合部を有するツマミ部とを備え、
上記ルーフカバーの下端部における車幅方向両側には、該ルーフカバーから下方に突出する固定片が設けられ、
上記被係合部と上記後面スペース部との間で上記固定片を挟み込むようにして上記係合部を引っ張ることにより、上記ルーフカバーを上記後面スペース部に対し固定するように構成した
ことを特徴とする塵芥収集車の塵芥投入箱。
【請求項2】
請求項1に記載の塵芥収集車の塵芥投入箱において、
上記被係合部は、上記後面スペース部に沿う上下方向を軸心として揺動自在なフック部を有し、該フック部を車幅方向に引っ張るとその力のモーメントにより上記固定片を固定するように構成した
ことを特徴とする塵芥収集車の塵芥投入箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塵芥収集車の塵芥収容箱に連設され、塵芥投入口から投入された塵芥を該塵芥収容箱に押し込む塵芥積込装置が内蔵された塵芥収集車の塵芥投入箱に関し、特にそのルーフカバーの固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば特許文献1に示すように、塵芥投入箱の後部には塵芥投入口が設けられている。そして、塵芥投入口の上方には、塵芥投入箱内部の点検等のために開閉可能なルーフカバー(上部カバー)が設けられ、このルーフカバーと塵芥投入箱との間には、ルーフカバーに連設されるようにして、リアランプとそのランプカバーとが設けられていた。ルーフカバーとランプカバーとは塵芥投入箱の後方下傾状の後面を形成していた。ルーフカバーは、車幅方向に延びる上端側の揺動軸を中心に上下方向に開閉可能となっており、走行時にがたつかないように固定する必要がある。そこで、従来はルーフカバーをランプカバーに対して留め金具で固定するようにしていた。留め金具は、ルーフカバーから大きく突出しないようにするため、塵芥投入箱の後方下傾状の後面に沿う上下方向に取り付けられていた。また、留め金具の締付方向は、当該後面に沿う上下方向であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−170074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のルーフカバーの固定構造では、ルーフカバーを十分に固定できず、がたついたり、開いてしまったりするおそれがあった。
【0005】
具体的に説明する。従来では、留め金具は、塵芥投入箱の後方下傾状の後面に沿う上下方向の一方側を締付方向とし、他方側を緩める方向としていた。車両走行時の路面の凹凸による塵芥投入箱の振動方向は主に上下方向なので、車両走行時には留め金具が締付方向だけでなく緩める方向にも大きく揺れ動かされていた。これにより留め金具によるロックが外れてしまうおそれがあった。
【0006】
また、上記後面に沿う留め金具の締付方向に対し、ルーフカバーの閉状態から開く方向は、当該後面に対し略垂直な方向だったので、留め金具の締付方向とルーフカバーの開く方向とがずれていた。そのため、車両走行時に留め金具がルーフカバーによって締付方向と異なる方向に揺れ動かされ、これが留め金具によるロックが外れようとする動きを助長させていた。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、塵芥投入箱に設けたルーフカバーを堅固且つ確実に固定できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、この発明では、留め金具の締付方向を車幅方向とした。
【0009】
具体的には、第1の発明では、塵芥収集車の塵芥収容箱に連設され、塵芥投入口から投入された塵芥を該塵芥収容箱に押し込む塵芥積込装置が内蔵された塵芥収集車の塵芥投入箱を前提とする。
【0010】
そして、上記塵芥収集車の塵芥投入箱は、
上記塵芥投入口の上方に設けられ、車幅方向に延びる上端部の揺動軸を中心に開閉可能なルーフカバーと、
該塵芥投入口と該ルーフカバーとの間に設けられて車幅方向に延びる後面スペース部と、
上記ルーフカバーを閉じた状態で、該ルーフカバーの下端部を上記後面スペース部に固定するロック機構とを備え、
上記ロック機構は、
上記ルーフカバーの回動方向と直交する車幅方向を締付方向とすると共に上記後面スペース部に取り付けられる留め金具を有する。
【0011】
上記の構成によると、車両走行中の路面の凹凸による塵芥投入箱の主な振動方向である上下方向に対し、留め金具の締付方向が、この上下方向と直交する車幅方向となる。これにより、上下方向と比較して比較的小さな振動方向である車幅方向に留め金具の締付方向を合わせることができ、車両走行中の振動により留め金具によるロックが外れるトラブルを防ぐことができる。
【0012】
第2の発明では、第1の発明において、
上記留め金具は、上記後面スペース部の車幅方向両側に設けられる被係合部と、該被係合部に引っ掛ける係合部を有するツマミ部とを備え、
上記ルーフカバーの下端部における車幅方向両側には、該ルーフカバーから下方に突出する固定片が設けられ、
上記被係合部と上記後面スペース部との間で上記固定片を挟み込むようにして上記係合部を引っ張ることにより、上記ルーフカバーを上記後面スペース部に対し固定するように構成した。
【0013】
上記の構成によると、ルーフカバーの必要最小限の部分だけ延長させてルーフカバーの固定が行える。また、ルーフカバーの下端部における車幅方向両側に固定片を設けているので、ルーフカバーの後面スペース部に対する取付部分が車両後方から見て目立たなくすることができる。これにより、質量及びコストを抑えて見映えのよいロック機構が得られる。
【0014】
第3の発明では、第2の発明において、
上記被係合部は、上記後面スペース部に沿う上下方向を軸心として揺動自在なフック部を有し、該フック部を車幅方向に引っ張るとその力のモーメントにより上記固定片を固定するように構成した。
【0015】
上記の構成によると、ルーフカバーの回動方向と留め金具の締付方向とが全く異なっているにも関わらず、留め金具の車幅方向の締付力を揺動するフック部の力のモーメントにより十分に固定片に伝達することができる。これにより、ルーフカバーを堅固且つ確実に固定できる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、塵芥収集車の塵芥投入箱に車幅方向に延びる揺動軸を中心に開閉可能なルーフカバーを後面スペース部に固定するロック機構を設け、ロック機構は、ルーフカバーの回動方向と直交する車幅方向方向を締付方向とすると共に上記後面スペース部に取り付けられる留め金具を備えるようにしたことにより、ルーフカバーを堅固且つ確実に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1C】左側のロック機構及びその周辺を拡大して示す背面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る塵芥収集車を示す側面図である。
【
図5】ルーフカバーの開閉構造の概略を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図2及び
図3は、本発明の実施形態の塵芥投入箱5を備えた塵芥収集車1を示す(
図3は塵芥投入箱5の下方を省略している)。この塵芥収集車1は、走行可能な車台2を備え、この車台2には、運転室3と、塵芥収容箱4とが搭載され、その塵芥収容箱4の後方に塵芥投入箱5が連設されている。
【0020】
詳しくは図示しないが、塵芥投入箱5は、塵芥収容箱4の上端に設けた回動軸を中心に回動シリンダを伸縮させることで、塵芥収容箱4の後方開口を開閉可能となっている。詳しくは図示しないが、この塵芥投入箱5の内部には、後方に設けた塵芥投入口6から投入された塵芥を塵芥収容箱4に押し込む塵芥積込装置が内蔵されている。例えば、摺動板を上下に摺動し、圧縮板を前後に揺動するプレス式の塵芥積込装置でもよいし、回転板式や遊星歯車式の塵芥積込装置であってもよい。塵芥投入箱5は、塵芥投入口6の上縁部裏側に沿って上下にスライド移動可能な開閉扉7で覆われる。
【0021】
塵芥投入箱5の側壁は、
図2〜
図4に示すように、車幅方向両側に設けたヒンジ部を中心に開閉可能なサイドカバー8で覆われて見映えがよくなっている。具体的には、このサイドカバー8は、例えば、樹脂成形品で形成されており、塵芥投入箱5の左右側壁に上下に間隔を空けて設けた複数のサイドカバー用ヒンジ部8aで開閉可能となっている。そして、後端側において例えば3つのサイドカバー用留め金具8bで、塵芥投入箱5の後壁における塵芥投入口6周縁に固定できるようになっている。
【0022】
そして、塵芥投入口6の上方には、車幅方向に延びる上端部の揺動軸9a(
図5に示す)を中心に開閉可能なルーフカバー9が設けられている。ルーフカバー9は、下方に行くほど厚みが増す形状であり、下端部左右両側には、アール部9eが形成されている。各アール部9eには、アール部9eと一体の薄板部9fがアール部9eから外方突出状に連設されている。
【0023】
塵芥投入口6とルーフカバー9との間には、車幅方向に延びる後面スペース部5aが設けられている。すなわち、塵芥投入口6の上縁部には、車幅方向に延びて塵芥投入箱5の左右側壁を繋ぐ金属板部材が設けられている。後面スペース部5aは、このある程度剛性の確保された金属板部材の背面側で構成されている。
図1A〜
図1Cに示すように、塵芥投入箱5には、ルーフカバー9を閉じた状態で、このルーフカバー9を後面スペース部5aに固定するルーフカバーロック機構10が設けられている。
【0024】
具体的には、ルーフカバーロック機構10は、ルーフカバー9の下端部における車幅方向両側に設けた一対の固定片9bを備えている。固定片9bの形状は特に限定されないが、
図1Aに示すように、板材で構成すると構造が簡単である。本実施形態では、固定片9bは、ルーフカバー9の薄板部9fに取付ボルト9cで脱着可能に取り付けられている。このようにすることで、ルーフカバー9は軽量で成形が容易な樹脂成形品で構成し、固定片9bは強度の高い金属製部材とすることができる。
一対の固定片9bは、後面スペース部5aにそれぞれ設けられた被係合部11で挟持されるようになっている。具体的には、被係合部11は、後面スペース部5aに固定されるベース部11cと、ベース部11cに支持されると共に後面スペース部5aに沿う上下方向を軸心方向とする揺動軸11aと、この揺動軸11aによって揺動軸11aの軸心まわりに回動自在に支持されるフック部11dとを有している。フック部11dは、例えばコイルバネ11bで上方に(開く方向に)付勢されている。一方、後面スペース部5aの被係合部11の車幅方向内側には、被係合部11のフック部11dに引っ掛ける、棒鋼等よりなるU字状の係合部12を有し、この係合部12を引っ張って固定する留め金具13がそれぞれ固定されている。留め金具13は、ルーフカバーロック機構10の構成要素である。留め金具13は、ルーフカバー9の回動方向と直交する車幅方向を締付方向とするようにしている。特に本実施形態では、留め金具13の締付方向は、車幅方向内側を向いている。つまり、各留め金具13は、車幅方向内側にツマミ部13aを有し、基端側が揺動ピン13bを中心に揺動可能に構成されると共に、上記係合部12が揺動可能に支持されている。この係合部12をフック部11dに掛けた状態で、このツマミ部13aを車幅方向内側にそれぞれ引っ張ることで、係合部12がフック部11dを引っ張り、フック部11dが揺動軸11aを中心に揺動されて固定片9bを挟持した状態でロックされるようになっている。この状態では、再びツマミ部13aを上方に持ち上げない限り、フック部11dは開かない。フック部11d、係合部12、ツマミ部13aは、例えばSUS304で構成されており、フック部11dの固定片9bを押圧する部分には、クッションゴムが取り付けられている。このクッションゴムは、固定片9b側に取り付けてあってもよい。なお、留め金具13の締付方向は、それぞれ車幅方向外側を向いていてもよい。
【0025】
図5に示すように、ルーフカバー9は、その裏面に設けた連結部9dにおいて、ダンパ14の一端が連結されている。ダンパ14の他端は、ダンパ支持ブラケット15を介して塵芥投入箱5の車幅方向に延びるクロスバー5bに支持されている。
【0026】
このダンパ14は、ルーフカバー9を開く方向にアシスト力を発生する。しかし、走行時に大きく揺れる等により、ルーフカバー9を開こうとする力が加わることがある。特にルーフカバー9は、左右にずれようとする力よりも、上方へ開こうとする力の方が大きい。
【0027】
本実施形態では、
図1Bに示すように、ルーフカバーロック機構10の係合部12をフック部11dに係合させると、後面スペース部5aに固定片9bが押さえ付けられる。そして、車両走行中の路面の凹凸による塵芥投入箱の主な振動方向である上下方向に対し、留め金具13の締付方向がこの上下方向と直交する車幅方向となる。これにより、上下方向と比較して比較的小さな振動方向である車幅方向に留め金具13の締付方向を合わせることができ、車両走行中の振動により留め金具13によるロックが外れるトラブルを防ぐことができる。
【0028】
また、必要最小限の部分だけ延長させてルーフカバー9の固定が行える。また、ルーフカバー9の下端部における車幅方向両側に固定片9bを設けているので、ルーフカバー9の後面スペース部5aに対する取付部分が車両後方から見て目立たなくすることができる。これにより、ルーフカバーロック機構10を質量及びコストを抑えて見映えのよいものとすることができる。
【0029】
なお、本実施形態では、被係合部11と留め金具13とは、ルーフカバー9のアール部9eの真下に位置すると共に、アール部9eの車幅方向長さ内に収まるように配設されている。これにより、よりいっそうルーフカバー9の後面スペース部5aに対する取付部分が車両後方から見て目立たず、見映えがよくなっている。
【0030】
また、本実施形態では、ルーフカバー9の回動方向と留め金具13の締付方向とが全く異なっているにも関わらず、留め金具13の車幅方向の締付力を揺動するフック部11dの力のモーメントにより十分に固定片9bに伝達することができる。これにより、ルーフカバーを堅固且つ確実に固定できる。
【0031】
以上説明したように、本実施形態に係る塵芥投入箱5によれば、ルーフカバー9を堅固且つ確実に固定することができる。
【0032】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0033】
1 塵芥収集車
2 車台
3 運転室
4 塵芥収容箱
5 塵芥投入箱
5a 後面スペース部
6 塵芥投入口
7 開閉扉
8 サイドカバー
8a サイドカバー用ヒンジ部
8b サイドカバー用留め金具
9 ルーフカバー
9a 揺動軸
9b 固定片
9c 取付ボルト
9d 連結部
9e アール部
9f 薄板部
10 ルーフカバーロック機構
11 被係合部
11a 揺動軸
11b コイルバネ
11c ベース部
11d フック部
12 係合部
13 金具
13a ツマミ部
13b 揺動ピン
14 ダンパ
15 ダンパ支持ブラケット