特許第6723213号(P6723213)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6723213-通信用電線、及び、ワイヤハーネス 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6723213
(24)【登録日】2020年6月25日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】通信用電線、及び、ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H01B 11/04 20060101AFI20200706BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20200706BHJP
【FI】
   H01B11/04
   H01B7/00 301
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-210791(P2017-210791)
(22)【出願日】2017年10月31日
(65)【公開番号】特開2019-83156(P2019-83156A)
(43)【公開日】2019年5月30日
【審査請求日】2019年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 ゆりえ
(72)【発明者】
【氏名】八木 大亮
【審査官】 北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】 特表2016−534516(JP,A)
【文献】 特開2017−147067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 11/04
H01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の導体芯線が螺旋状に束ねられたツイストペア線と、前記ツイストペア線の外周を覆う筒状の樹脂製の保護層と、を備えた通信用電線であって、
前記ツイストペア線は、
該通信用電線の軸線に直交する方向において前記保護層に対して相対移動不能であるように、前記保護層の内面に当接し、
前記保護層は、
該通信用電線の軸線に直交する断面における前記一対の導体芯線の中心間の距離である導体間距離に対する、前記保護層の厚さの比が、1以上であるように、構成され、前記厚さは、前記断面において前記内面から前記保護層の外面まで径方向に計測され、
前記保護層の厚さは、前記厚さが複数の値を含むように前記保護層の周方向において変化し、前記比は、前記複数の値のうちの最小値により決定される、
通信用電線。
【請求項2】
請求項1に記載の通信用電線において、
前記保護層が、前記断面において長穴形状の形を有する内部空間を有する、
通信用電線。
【請求項3】
請求項1に記載の通信用電線において、
前記保護層が、前記ツイストペア線の前記外周を隙間なく覆う、
通信用電線。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の通信用電線と、一又は複数の電線と、が束ねられたワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の導体芯線が螺旋状に束ねられたツイストペア線を備えた通信用電線、及び、その通信用電線を用いたワイヤハーネス、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車用のワイヤハーネス等において、制御装置(ECU等)と電装品との接続などの目的で用いられる通信用電線として、一対の導体芯線が螺旋状に束ねられたツイストペア線(撚り対線)が用いられている。この種の通信用電線は、一般に、要求される通信性能およびノイズ対策性能(EMC性能)等を満たすべく、ツイストペア線が所定の特性インピーダンスを有するように設計される。
【0003】
例えば、従来の通信用電線の一つでは、ツイストペア線が所定の特定インピーダンスを有するように設計された上で、ツイストペア線とコネクタとの接続箇所にてツイストペア線の撚りが解かれることに起因して特性インピーダンスが増大すること抑制するべく、その接続箇所の周辺に誘電体が配置されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−045982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、実際に通信用電線が使用される際、通信用電線が他の電線と束ねられて用いられる場合や通信用電線が金属部材に接するように設置される場合のように、通信用電線の近傍に導体が存在する場合がある。このような場合、ツイストペア線を構成する導体芯線とその導体とが電磁界的な結合を持つことに起因し、ツイストペア線の特性インピーダンスが設計値よりも低下することがある。特定インピーダンスの低下は、通信用電線の通信性能等の変動の原因となり得るため、好ましくない。
【0006】
一方、このような特性インピーダンスの低下を抑制するべく、ツイストペア線を覆うように編組導体などのシールド層を設けることが考えられる。しかし、通信用電線にシールド層を追加すると、通信用電線の製造コストが高まることになる。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、通信用電線の通信性能などの変動の抑制と製造コストの低減とを両立可能な通信用電線、及び、ワイヤハーネス、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、本発明に係る「通信用電線」及び「ワイヤハーネス」は、下記(1))を特徴としている。
(1)
一対の導体芯線が螺旋状に束ねられたツイストペア線と、前記ツイストペア線の外周を覆う筒状の樹脂製の保護層と、を備えた通信用電線であって、
前記ツイストペア線は、
該通信用電線の軸線に直交する方向において前記保護層に対して相対移動不能であるように、前記保護層の内面に当接し、
前記保護層は、
該通信用電線の軸線に直交する断面における前記一対の導体芯線の中心間の距離である導体間距離に対する、前記保護層の厚さの比が、1以上であるように、構成され、前記厚さは、前記断面において前記内面から前記保護層の外面まで径方向に計測され、
前記保護層の厚さは、前記厚さが複数の値を含むように前記保護層の周方向において変化し、前記比は、前記複数の値のうちの最小値により決定される、
通信用電線であること。
(2)
上記(1)に記載の通信用電線において、
前記保護層が、前記断面において長穴形状の形を有する内部空間を有する、
通信用電線であること。
(3)
上記(1)に記載の通信用電線において、
前記保護層が、前記ツイストペア線の前記外周を隙間なく覆う、
通信用電線であること。
(4)
上記(1)から上記(3)の何れか一項に記載の通信用電線と、一又は複数の電線と、が束ねられたワイヤハーネスであること。
【0009】
上記(1)〜(3)の構成の通信用電線によれば、通信用電線の近傍に導体が存在する場合であっても、上述したシールド層を用いることなく、ツイストペア線の特性インピーダンスの低下を抑制できる。具体的には、発明者が行った実験等によれば、ツイストペア線の外周を覆うように保護層を設け、且つ、一対の導体芯線の中心間の距離(導体間距離)に対する保護層の厚さの比が1以上であれば(即ち、保護層の厚さが、導体間距離以上であれば)、ツイストペア線の導体芯線の太さによらず、特性インピーダンスの設計値からの低下を許容範囲内に抑えられることが分かった。
【0010】
更に、上記()の構成のワイヤハーネスによれば、通信用電線と他の電線とを密接させて束ねても、上述した理由により、通信用電線の通信性能等の変動を抑制できる。
【0011】
なお、保護層が厚いほど、ツイストペア線の導体芯線と周辺の導体との距離が大きくなるため、周辺の導体が特定インピーダンスに及ぼす影響は小さくなる。しかし、不用意に保護層を厚くすると、通信用電線が過度に太くなり、通信用電線の取扱いが困難になる。ここで、上記構成の通信用電線は、特定インピーダンスの低下の抑制および通信用電線の取扱いの容易さの双方の観点から、保護層の厚さの最適値を提供できる点に特に意義がある。更に、種々様々な太さの導体芯線に対し、同一の判断基準に従って保護層の厚さを定め得る点にも意義がある。
【0012】
また、ツイストペア線を外部からの衝撃などから保護することを主目的とする場合(通常の保護層の場合)、通常、上記構成の保護層の厚さの条件(導体間距離に対する保護層の厚さの比が1以上)を満たすほどに保護層を厚くすることはない。例えば、一般的な保護層の場合、導体間距離に対する保護層の厚さの比は約0.4程度である。
【0013】
したがって、本構成の通信用電線およびワイヤハーネスによれば、通信用電線の通信性能などの変動の抑制と製造コストの低減とを両立可能である。
【発明の効果】
【0014】
上述したように、本発明によれば、通信性能などの変動の抑制と製造コストの低減とを両立可能な通信用電線およびワイヤハーネス、を提供できる。
【0015】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の実施形態に係る電線の斜視図である。
図2図2は、図1のA−A断面図であり、図1に示す電線の各部の寸法を説明するための図である。
図3図3(a)は、図1に示す電線の周囲の全周に亘って複数本の他の電線を互いに平行に延びるように束ねて配置した場合における、図2に対応する断面図であり、図3(b)は、図3(a)に示す場合において、値「c/D」とツイストペア線の特性インピーダンスとの関係を測定した実験の結果を示すグラフである。
図4図4(a)は、本発明の実施形態の変形例に係る電線の図2に対応する断面図であり、図4(b)は、本発明の実施形態の他の変形例に係る電線の図2に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る通信用電線1及びワイヤハーネス2について説明する。
【0018】
図1及び図2に示すように、通信用電線1は、一対の導体芯線11が螺旋状に束ねられたツイストペア線10と、ツイストペア線10の外周を覆う筒状(円筒状)の樹脂製の保護層20と、を備えている。
【0019】
一対の導体芯線11の各々は、典型的には、自動車用のワイヤハーネス等において制御装置(ECU等)と電装品とを接続し、差動信号を伝送する目的に使用され得る。通信用電線1は、ツイストペア線10の外周にシールド層を有さないので、ツイストペア線の外周にシールド層を有する電線と比べて安価である。
【0020】
ツイストペア線10を構成する導体芯線11の各々は、1本の線状の導体線12と、導体線12の外周に接触するように導体線12を覆う樹脂製の絶縁層13と、を有する。一対の導体芯線11は、螺旋状に撚り合わされている。このツイストペア線10は、通信用電線1の軸線に直交する方向において(即ち、図2に示す断面の面内方向において)保護層20に対して相対移動不能であるように、保護層20の内面に当接している。導体線12を構成する材料としては、例えば、銅、銀、錫、銅合金、銀合金又は錫合金を含む材料が挙げられる。一対の導体芯線11を撚り合わせてツイストペア線10を形成する具体的手法は、特に限定されない。例えば、周知のツイスト装置を使用して一対の導体芯線11を撚り合わせてもよいし、作業者による手作業で一対の導体芯線11を撚り合わせてもよい。
【0021】
保護層20は、本例では、図2に示すように、通信用電線1の軸線に直交する断面の形状が円形である内部空間を有する。この内部空間の中に、ツイストペア線10の外周面の一部(図2における左右方向の両端部)が保護層20の内面に当接した状態にて、ツイストペア線10が配置されている。ツイストペア線10と保護層20とが当接する箇所以外の箇所では、保護層20の内面と、ツイストペア線10と、の間には所定の隙間が存在する。ツイストペア線10を覆うように保護層20を設ける具体的手法は、特に限定されない。例えば、ツイストペア線10を覆うように筒状の保護層20を押出成形することにより、保護層20を設けることができる。
【0022】
以下、説明の便宜上、図2に示すように、導体線12の直径をa、絶縁層13の厚さをb、保護層20の厚さをc、通信用電線1の軸線に直交する断面における一対の導体芯線11の中心間の距離である導体間距離をDとする。なお、このとき、導体間距離Dは「a+2b」として算出され得る。
【0023】
通信用電線1に含まれるツイストペア線10は、一般に、要求される通信性能およびノイズ対策性能(EMC性能)等を満たすように所定の特性インピーダンスを有するように設計される。そして、このように設計されたツイストペア線10を備えた通信用電線1は、例えば、自動車用のワイヤハーネスに使用される。このとき、通信用電線1の周囲に他の電線を束ねて配置した状態で使用される場合、及び、周辺の金属部材(車体パネル等)に接した状態で使用される場合がある。ツイストペア線10の周辺に導体(他の電線の導体芯線、車体パネル等)が存在する場合、ツイストペア線10を構成する導体線12と周辺の導体とが電磁界的な結合を持つことから、ツイストペア線10の特性インピーダンスの実際値が、事前に定めた設計値Zよりも低下する場合がある。このような特性インピーダンスの低下は、通信用電線1の通信性能等の変動の原因となり得るため、好ましくない。
【0024】
このような特性インピーダンスの低下を抑制するためには、ツイストペア線の外周に編組導体などのシールド層が設けることが知られている。しかし、シールド層を追加する分、ツイストペア線を含む電線の製造コストが高まることになる。
【0025】
そこで、発明者は、シールド層を追加することなくこのような特性インピーダンスの低下を抑制するための方策を見出すべく、種々の実験等を重ねた。その結果、発明者は、ツイストペア線10の周辺に導体が存在する場合において、保護層20の厚さcに着目すると共に、導体間距離Dに対する保護層20の厚さcの比(=c/D)と、特性インピーダンスの実際値と、の間に強い相関があることを見出した。以下、図3(a)及び図3(b)を参照しながら、この相関性を説明するための実験について説明する。
【0026】
まず、実験に用いる導体線12として、太さ(直径aに相当)が異なる3種類のサンプルが準備された。各サンプルの導体線12の太さは、0.13sq、0.22sq、及び、0.35sqである。更に、それら導体線12を用いたツイストペア線10に対し、厚さcが異なる保護層20を設けた(即ち、値c/Dが異なる)複数の種類の通信用電線1が準備された。なお、絶縁層13は断面が正円の円筒形状を有し、その厚さbは周方向の場所によらず均一である。
【0027】
通信用電線1の周辺に導体を存在させるため、図3(a)に示すように、準備した複数種類の通信用電線1について、複数の他の電線30が、通信用電線1の周囲の全周に亘って互いに平行に延びるように束ねて配置された。他の電線30としては、太さが0.13sqの導体芯線31と、導体芯線31の外周に接触するように導体芯線31を覆う絶縁層32と、からなる電線が使用された。なお、このような通信用電線1と他の電線30との位置関係は、通信用電線1を用いてワイヤハーネス2を構成した状態を想定している。
【0028】
この状態にて、複数種類の通信用電線1について、周知の手法を用いてツイストペア線10の特性インピーダンスが順に測定された。なお、本例では、ツイストペア線10の特定インピーダンス(設計値)が100Ωとなるように、ツイストペア線10が設計されている。
【0029】
その結果、図3(b)に示すように、導体線12の太さが3種類のうち何れの場合であっても、値c/Dが1未満の場合、値c/Dの増加に対する特性インピーダンスの増加勾配が相対的に大きく、値c/Dが1以上の場合、値c/Dの増加に対する特性インピーダンスの増加勾配が相対的に小さくなっている。換言すると、値c/D=1を境に、値c/Dの増加に対する特性インピーダンスの増加勾配が大きく変化している。
【0030】
更に、発明者は、図4(a)及び図4(b)に示すように、保護層20の形態が異なる通信用電線1についても、同様の実験を行った。具体的には、図4(a)に示すように、保護層20が、通信用電線1の軸線に直交する断面の形状が長穴形状の内部空間を有している例、及び、図4(b)に示すように、保護層20が、ツイストペア線10の周囲を隙間なく覆うようにツイストペア線10を覆っている例について、同様の実験を行った。
【0031】
その結果、図示は省略するが、図4(a)及び図4(b)のいずれの例においても、図3(b)に示す結果と同様の結果が得られた。具体的には、保護層20の厚さが最も小さい箇所(厚さcとして図示されている箇所)の厚さに関し、値c/D=1を境に、値c/Dの増加に対する特性インピーダンスの増加勾配が大きく変化した。
【0032】
以上のように、この実験の結果、保護層20の厚さが最も小さい箇所の厚さcと導体間距離Dとについて、値c/Dが1未満(即ち、保護層20の厚さc<導体間距離D)であれば、ツイストペア線10の周りにおける導体の存在に起因して特性インピーダンスが設計値Zから大きく低下し易い。これに対し、値c/Dが1以上(即ち、保護層20の厚さc≧導体間距離D)であれば、ツイストペア線10の導体線12の太さによらず、且つ、シールド層を必要とすることなく、ツイストペア線10の周りに導体が存在する場合であっても、特性インピーダンスの設計値Zからの低下を所定の許容範囲内(本例では、設計値の90%以上の特性インピーダンスを維持できる範囲内)に抑え易くなることが判明した。
【0033】
この現象は、保護層20の厚さcが導体間距離D以上となると(保護層20の厚さが相対的に十分に大きくなると)、ツイストペア線10を構成する導体線12と周辺の導体(電線30の導体芯線31)との電磁界的な結合が妨げられ易くなって、特性インピーダンスの低下が抑制されることに起因する、と考えられる。但し、不用意に保護層20を厚くすると、通信用電線1が過度に太くなり、通信用電線1の取扱いが困難になる。ここで、本発明は、特定インピーダンスの低下の抑制および通信用電線1の取扱いの容易さの双方の観点から、保護層20の厚さの最適値を提供できる点に特に意義がある。更に、種々様々な太さの導体芯線11に対し、同一の判断基準に従って保護層20の厚さを定め得る点にも意義がある。なお、保護層20の厚さcの上限値は、例えば、通信用電線1の取扱い(例えば、曲げ剛性および可撓性)を考慮して決定され得る。
【0034】
以上、本発明の実施形態に係る通信用電線1によれば、ツイストペア線10の外周を覆う保護層20の厚さcを調整することで、一般に用いられるシールド層を使用することなく、ツイストペア線10の特性インピーダンスの低下を抑制することが可能である。具体的には、一対の導体芯線11の中心間の距離(導体間距離)Dに対する保護層20の厚さcの比(値c/D)が1以上であれば(即ち、保護層20の厚さc≧導体間距離Dであれば)、ツイストペア線10の導体線12の太さによらず、且つ、シールド層を必要とすることなく、ツイストペア線10の周りに導体が存在する場合であっても特性インピーダンスの設計値からの低下を所定の許容範囲内に抑えられることが分かった。
【0035】
<他の態様>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0036】
例えば、上記実施形態では、いずれの例においても、保護層20の外形は円形であった。しかし、上述した保護層20の厚さが最も小さい箇所の厚さcと導体間距離Dとの関係を満たす限り、保護層20の外形は他の形状(例えば、楕円および多角形など)であってもよい。また、必要に応じ、ツイストペア線10の撚り形状を維持するための押え巻き部材、及び、ツイストペア線10と保護層20との間の内部空間を埋めるための介在物などを、通信用電線1に追加してもよい。
【0037】
ここで、上述した本発明に係る通信用電線1及びワイヤハーネス2の特徴を以下(1)及び(2)に簡潔に纏めて列記する。
(1)
一対の導体芯線(11)が螺旋状に束ねられたツイストペア線(10)と、前記ツイストペア線(10)の外周を覆う筒状の樹脂製の保護層(20)と、を備えた通信用電線(1)であって、
前記ツイストペア線(10)は、
該通信用電線(1)の軸線に直交する方向において前記保護層(20)に対して相対移動不能であるように、前記保護層(20)の内面に当接し、
前記保護層(20)は、
該通信用電線(1)の軸線に直交する断面における前記一対の導体芯線(11)の中心間の距離である導体間距離(D)に対する、前記断面における該保護層(20)の厚さが最も小さい箇所の厚さ(c)の比(c/D)が、1以上であるように、構成されている、
通信用電線。
(2)
上記(1)に記載の通信用電線(1)と、一又は複数の電線と、が束ねられたワイヤハーネス(2)。
【符号の説明】
【0038】
1 通信用電線
2 ワイヤハーネス
10 ツイストペア線
11 導体芯線
20 保護層
c 保護層の厚さ
D 導体間距離
図1
図2
図3
図4